「愛され体質の後輩と愛でたい先輩」
先輩「あら、どうしたの」
後輩「先輩が見えたので来ちゃいました」
先輩「そうなの、わざわざ」
後輩「えへへ」
先輩「……」
先輩(ああ……)
先輩(……愛でたい)
先輩「うん、私おかしいのかな……」
先輩「最近彼女のことを思うとなんというか、その……」
友「心が熱くなる、と」
先輩「え、わかる!? そう、そうなの!」
友「夏バテかもしれないわよ」
先輩「確かにもうすぐ夏だけど、流石に早すぎないかしら……?」
先輩「お、面白がらないで。私は真剣なんだから」
友「で、これからどうするのよ」
先輩「え? どうするって……」
友「だーかーら、その娘とどうなりたいわけ?」
先輩「うぇ!?/// や、う、それは……」
友「ほらほら~言ってみなさいよ~」
先輩「……愛でたい」
友「ん?」
先輩「思う存分、愛でたい!」
先輩「私は本気」
友「うん、めちゃくちゃ伝わる」
友「それで、その娘とはどういう関係なの?」
先輩「……」
友「ん、何よ急に黙り込んで」
先輩「……その娘がハンカチを落としたから、拾ってあげたの」
友「うん」
先輩「……それだけ」
先輩「だ、だって、私帰宅部だし」
友「知ってるわよ?! あんたにそもそも下の子の友人がいることに私は驚いてたんだから」
先輩「友はいいなぁ、たくさん友達いて」
友「そりゃ部活入ってたらある程度は友達できるわよ! あんたにも入れって私は去年も言いました!」
先輩「うう……」
友「はぁ……とにかく、その娘のとこ行くわよ」
先輩「ほ、本気で言ってる?」
友「当たり前でしょ、嘘ついてどうすんのよ、ほら」
先輩「うう……」
先輩「友、やっぱりやめよう?」
友「なんでよ」
先輩「……私、名前しか知らないから」
友「そうね」
先輩「クラスだってわからないし……」
友「大丈夫よ、なんとかなるなる」
先輩「で、でも……」
友「あーもーうっさい! 黙ってついてきなさい!」
先輩「ううう……」
*「はい?」
友「あのさ、後輩ちゃんって知ってる?」
*「あ、私のクラスの娘ですよ」
友「おっ! そっか、ありがとう!」
友「クラスわかったわよ」
先輩「ほ、本当に会うの……?」
友「ここまで来て会わないわけないでしょ? ほら、行くわよ」
先輩「ううう……」
後輩「あれ、先輩?」
後輩「あ、やっぱり! どうしたんですか、こんなところで」
先輩「あ、いや……」
友「あなたに会いに来たのよ」
先輩「!?」
後輩「え、私にですか?!」
友「ね?」
先輩(『ね?』じゃないわよ……!)
後輩「どうしてですか? 私に何か御用ですか?」
先輩(……くぅ、首を傾げる仕草……可愛い)
友(うわー、これは可愛いわ……っと、まずいまずい)
友「最近よく挨拶するようになったけど、もう少しあなたのことを知りたいらしくてね」
先輩「と、友!」
後輩「え! 私のことですか……?」
先輩「……」コクリ
先輩(き、気持ち悪がられちゃったかしら……?)
後輩「……嬉しいです! 私も先輩と、もっと仲良くなりたいです!」
友(あ、落ちた)
先輩「そ、そそそ、そうなの……よ、良かったわ」
後輩「えへへ、両想いですね♪」
先輩「両想い?!?!?!?!?」
後輩「はい♪」
友(この娘、天然のジゴロね……)
友「はいはい」
先輩「わ、私の携帯の中に……か、彼女の……連絡先が」
友「そこまで言うようなもん?」
先輩「信じられない、さっきまで名前しか知らなかったのに……」
後輩『私の連絡先です! 先輩だったらいつでも大歓迎ですっ』
先輩「……ああああああ」
友「うるさっ!!」
友「はいはい。いつものことよ」
友「それにしてもあの娘、可愛かったわね」
先輩「わかる!? そうなの、そうなのっ」
友「仕草も声も表情も完璧というか」
先輩「そう、そうなの!」
友「私から見ても魅力的だったなぁ」
先輩「うんうん」
友「競争率高そうね」
友「うん。あんな娘、男子が黙ってるはずないじゃん」
先輩「ま、待ってよ。この世界に男子なんているの? まだ登場人物全員女の子しかいないのに?」
友「メタな発言はやめて。共学だよウチは」
先輩「……競争率、高そう?」
友「間違いなくね。男女共に仲良くできそうだし、とにかく愛嬌がめちゃくちゃ良いし」
友「いわゆる、愛され体質とみた」
先輩「絶対嫌」
友「おっ」
先輩「わ、私はあの娘を愛でたい」
先輩「誰かがじゃなく、私が愛でるの」
友「よく言った! それで、これからどうするの?」
先輩「ま、またそれ……?」
友「当たり前じゃない。思い立ったらすぐ行動しないと」
先輩「え、えーっと……」
友「うん」
先輩「…………」
友「…………」
先輩「……ど、どうしたらいいのかな?」
友『まずは連絡先もらったんだから連絡しなさい! そこからよ』
先輩「と言われても~~……」
先輩(ベッドの上でもう何十分も時間が経ってる……)
先輩「はぁ……」
先輩「……と、とりあえず連絡先を確認して……」
ピッ
先輩「あ」
PLLLLLL PLLLLLL
先輩(ま、間違えて電話かけちゃった!)
先輩(もうこれ、あっちに通知行っちゃったかしら?)
先輩(切ったら、悪いし……)
後輩『はい、後輩です』
先輩「!!!」
後輩『もしもし?』
先輩「あ……えっと……」
後輩『あれ……もしかして、先輩ですか?』
後輩『えへへ、声でわかりました!』
先輩(声だけで……///)
後輩『早速かけてきてくださって嬉しいです! 何か御用ですか?』
先輩「いや、えっと、あの……」
後輩『?』
先輩「きょ、今日は連絡先を教えてくれてありがとう」
後輩『こちらこそ! でも、ビックリしちゃいました』
先輩「? なにが」
後輩『今日、たくさんの人に連絡先を聞かれたので』
後輩『先輩以外の人からも、連絡先教えて欲しいって言われたんです! 5、6人くらい?』
先輩「そ、それは誰に?」
後輩『? クラスの男子とか、他クラスの女の子とかです』
先輩「!!!」
友『あの娘間違いなく人気になるわよ。早く手を打っとかないとね』
後輩『どうしましたか先輩?』
先輩「くじけそう」
友「はぁ……」
先輩「……私以外からも連絡先交換したんだって。しかも男もいる」
友「まあ、仕方ないわよ、あんなに可愛いんだもん」
先輩「でも……」
友「あの娘、部活は入ってるの?」
先輩「え……入ってないって言ってたと思う」
友「ならチャンスじゃない」
先輩「チャンス?」
友「梅雨が明けて、夏がやってきたな~と思ったらとんでもないビッグイベント到来でしょ?」
先輩「……夏休み!」
先輩「か、彼女なんて気が早い……///」
友「girl friendじゃなくてsheの方なんだけど?」
友「とにかく。それくらい人気があるってんなら、もう夏の予定バンバン埋まってるかもしれないわよ」
友「さっさと予定聞いて、夏休みはあんたで埋め尽くしなさい!」
先輩「は、はいっ」
友「うん、良い返事。私は夏休み部活漬けだから、ほとんど力になれません」
先輩「そ、そんな……」
友「この世の終わりみたいな顔しないの」
友「頑張ってポンコツお嬢様」
先輩「ぽ、ポンコツじゃないわよ……!」
友「あら、そうだったかしらね」
先輩「ううう……はぁ」
友「じゃあ、早速行くわよ」
先輩「え?」
友「後輩ちゃんのとこよ。ほら、さっさと立つ!」
先輩「えええええ……」
先輩「あっ……」
後輩「昨日はありがとうございました! 2時間あっという間でしたね」
友「へ~2時間?」
先輩「///」
後輩「それで、私に御用ですか?」
先輩「あ、そ、その」
友「夏休みの予定とかって、決まってる?」
後輩「予定ですか?」
友「ほら」
先輩「あっ……その、良かったらどこかご一緒できたらなと思って……」
後輩「え! 本当ですかっ」
友(お、良い反応)
後輩「えっと、今すぐにはわからないので、手帳持ってきます!」タタタッ
先輩「……」
友「良い感じじゃないっ」
先輩「う、うん……」
先輩(予定、本当にビッシリ入ってる……!)
友(これは想像以上ね……)
後輩「……どうでしょうか?」
先輩「うん、じゃあこの日にしましょう?」
後輩「はいっ! やったっ」
先輩(『やったっ』……嬉しい)
後輩「えっと、3人でどこか行くんですか?」
友「ん? あー、ごめん。私は部活あるから行けないんだ」
後輩「そうなんですか……残念です」
友「あはは、また今度ね。……ど、どうしたのよ?」
先輩 ズーン
友(あんたには説明したでしょーが!)
友「もー、私行く前に言ったじゃん」
先輩「そ、そんなことより」
友「ん、何よ?」
先輩「……残念って」
友「へ? ……ああ、あんなのお世辞よ、気にしないの」
先輩「うん……」
友(ほんっと、気が小さいんだから)
友「そうね。大体予定入ってたわね」
先輩「あの中に男子との予定も……」
友「まあ、無いとは言い切れないわね」
先輩「……」
友「落ち込まない! とにかく、約束できただけでも良かったでしょ」
友「遅れてたら夏休み中に会えなかったかもしれないのよ?」
先輩「……確かに」
友「ね? 頑張りましょ」
先輩「……」
先輩(気づかなかった……)
先輩(まさか出かける日が)
先輩(夏休み初日だったなんて)
後輩「先輩~」
先輩「あら。……!」
後輩「お待たせしちゃいましたか? ごめんなさいっ」
先輩(私服、良い……!)
先輩「え、ええ。そうね」
後輩「ふふっ、まさか夏休みのスタートに、先輩と遊べるなんて思ってなかったです!」
先輩「わ、私も……」
後輩「えへへ、嬉しいなぁ」
先輩「……///」
先輩(初日からこんなに幸せで、生きていられるかしら)
先輩「ええ、もちろん」
後輩「やったっ。先輩みたいに、綺麗でオシャレな人とお洋服見れるの嬉しいな♪」
先輩(こっちも、可愛い貴女と一緒にいられて幸せ……)
後輩「それじゃあ行きましょっ」
先輩「ええ」
後輩「最近すっかり暑くなりましたね」
先輩「うん」
後輩「汗拭いても拭いても出てきちゃいます」
先輩(まつ毛、長い……唇ぷるぷる……目パッチリ……首筋すっきり……)
先輩(汗が、更に良さが倍増してる……)
後輩「……先輩?」
先輩「!?」(か、顔近っ!)
後輩「……ボーっとしてました?」
先輩「え? あ、う……そ、そうみたい」
先輩「そうね」
後輩「ということで……じゃじゃーん!」
先輩「水筒?」
後輩「はい! 麦茶作って淹れてきたんです」
先輩「へえ」(家庭的……!)
後輩「良かったら、飲みます?」
後輩「自分だけ飲むのもなと思ったので! 淹れ立てなので冷たくて美味しいですよ?」
先輩「じゃ、じゃあいただこうかしら」
後輩「はい!」スッ
先輩「……」
後輩「あ、ちょっと待ってください!」
ゴクッ
先輩「!」
後輩「……うん、味ちょうど良くできてました! 改めて、どうぞっ」
後輩 ニコニコ
先輩(これ、か、間接キスでは!?)
先輩「……い、いただきます」
後輩「はいっ!」
先輩「……」
ゴクゴクゴクッ
先輩「ぷはっ……」
先輩(……冷たくてとっても美味しい……)
先輩「うん、ひんやりしてて美味しいわ」
後輩「良かった~!」
先輩「ありがとう。おかげで元気出たかも」
後輩「本当ですかっ。また喉乾いたらすぐ言ってくださいね」
先輩「ええ、了解よ」
後輩「……あ」
先輩「?」
後輩「間接キス、でしたね///」
先輩「……///」
先輩(ほんと、反則……)
先輩「別世界ね」
後輩「お洋服屋さんに来て最初の感想が涼しいになっちゃった!」
先輩「ふふ、仕方ないわ。この暑さだから」
後輩「そうですね……あっ!」
先輩「ん?」
後輩「見てくださいっ、この服!」
先輩「あら、可愛いわね」
後輩「先輩に似合いそう!」
後輩「はいっ! 綺麗な先輩に、とっても似合うかなって!」
先輩(好き……)
後輩「あとこの色も、先輩の白い肌に映えると思いますし」
先輩(好き……)
後輩「って、急に話し出しちゃってごめんなさい。それくらい似合いそうだったので」
先輩(好きっ!!!)
後輩「本当ですか! やったっ」ピョン
先輩(反応がいちいち可愛い)
後輩「じゃあ早速試着室行きましょう!」
先輩「ええ」
後輩「楽しみ楽しみ」
先輩「あなたは、何か見なくてもいいの?」
後輩「この服を着てる先輩のこと考えたら、私のことなんて後回しです♪」
先輩(尊い)
後輩「外で待ってるので、ゆっくり試着してくださいっ」
先輩「ええ」
先輩(……良かった、サイズ合うわね)
先輩「……」
先輩「似合ってるといいなぁ……」
後輩「はいっ!」
シャーッ
先輩「ど、どうかしら?」
後輩「……」
先輩「……?」
後輩「あっ、ごめんなさい! 見惚れちゃって」
先輩「み、見惚れて……」
後輩「そ、その……すっごく綺麗で、言葉にならないというか……綺麗ですっ!」
先輩(絶対買おう)
先輩「ううん、あんなに褒めてもらえると思ってなかったから、嬉しかった」
後輩「本当に、本当に似合ってました!」
先輩「も、もう……いいから///」
後輩「えへへ」
先輩(天使のような笑顔……)
後輩「ちょっと大人っぽいのに挑戦してみました! どうでしょう?」
先輩「うん、とっても可愛いわ」
後輩「こんな可愛いの、似合いますかね……?」
先輩「……すごく似合ってる!」
後輩「サロペットです~! 夏にはちょっと暑いかな?」
先輩(……ダメ、好き……可愛い……)
先輩「ご、ごめんなさい、どれもとても似合っているから」
後輩「……本当ですか?」
先輩「も、もちろん!」
後輩「……えへへっ」
先輩(この笑顔で何度私を萌え殺す気なの……!)
先輩「あら、どれで悩んでるの?」
後輩「これとこれです! どれも先輩に褒めてもらえたので悩んだんですけど、二つまで絞ったんですが……」
後輩「先輩、選んでもらってもいいですか?」
先輩「えっ、私でいいの?」
後輩「はい! 先輩が選んでくれた方がむしろ嬉しいです!」
先輩(せ、責任重大……!)
先輩(ど、どうしよう……)
後輩「……」
先輩「わ、私は、こっちかな……」
後輩「わぁ~! 私もそっちだと思ってました!」
先輩「そ、そうなの?」
後輩「はい! えへへ、先輩と以心伝心かもっ」
先輩(もう結婚して欲しい)
後輩「先輩も、さっき着た服買ってくれたんですね!」
先輩「え、ええ。あんなに褒められたらね」
後輩「も、もしかして無理させちゃいました?!」
先輩「そんなことないわよ!? とっても嬉しかったから、また着たいなと思って」
後輩「嬉しい~~!! だってだって、まだずっと頭の中にその服を着てる先輩が……」
先輩(好き……)
先輩「あら、もうそんな時間なのね」
後輩「はいっ。何食べますか?」
先輩「とりあえずフードコートに向かいましょう」
後輩「了解ですっ」
先輩(二人きりでご飯……嬉しい)
先輩「夏休みね」
後輩「ですね! 子ども大好きなのでわちゃわちゃしてるの見ると嬉しくなっちゃいます」
先輩「そうなの」
後輩「はいっ! 可愛いですっ」
先輩「……」
後輩 ニコニコ
先輩「うふふ、可愛い」
後輩「……」
先輩(うう……)
後輩「そうですね! 子どもは可愛いですよね~~」
先輩「えっ!? あ、そ、そうねっ」
先輩(よ、良かった! 子ども達に言ったと思ったみたい)
後輩「そうですね~、なんだかガッツリって気分じゃないかもです! カフェとかで軽食でも良さそうですね」
後輩「先輩とゆっくりお話したいし」
先輩(絶対にカフェ、カフェしか見えないわ、カフェ以外の選択肢はもう私の中にないっ)
後輩「どうですか?」
先輩「ええ、カフェにしましょう」
後輩「はいっ♪」
後輩「はい~。フードコートはエアコン弱めでしたね」
先輩「ね。それに人も多いからとっても暑く感じたわ」
後輩「ですねっ」
「ご注文はいかがいたしますか?」
先輩「サンドイッチセット一つ。ドリンクはアイスコーヒーで」
後輩「……!!」
「ミルクはいかがいたしますか?」
先輩「あ、要らないです。……どうしたの?」
後輩「あっ、いえっ……わ、私も同じもので、ドリンクはオレンジジュースで」
「かしこまりました」
先輩「ん?」
後輩「アイスコーヒーなんて、とっても大人ですね!」
先輩「え、そ、そう?」
後輩「はい! しかもブラック!」
先輩「確かに、珍しいかも?」
先輩「昔からここには来てたのよ。勉強のためにね。それで、一番安かったのがコーヒーだったから」
後輩「……そうなんですね」
先輩「うん。サンドイッチもとても美味しいから。久しぶりに食べられて嬉しいわ」
後輩「良かったですっ。えへへ」
先輩(貴女と一緒だから、余計にね……)
先輩「あら、そうなの」
後輩「お父さんとよく一緒に来てました」
先輩「うふふ、小さい頃?」
後輩「最近でもよく行きます!」
先輩「そうなの。仲が良いのね」
後輩「はいっ。先輩はどうなんです?」
先輩「私は……うーん、仲は良いけど」
先輩「すっごく過保護なのよね」
先輩「ええ。今日も出る時にとっても心配してたわ」
先輩「『暑いから気をつけろよ』、『何時に帰ってくるんだ?』、『事故には気をつけて』、『忘れ物ないか?』」
先輩「有難いけどね、心配されるのは」
後輩「……先輩って、とっても素敵な人なんだなって思います」
先輩「え?」
後輩「そんなに気にかけてくれる素敵なご両親がいるんですもん。先輩も間違いなく素敵ですっ」
先輩「///」
後輩「あの、先輩」
先輩「? 何かしら」
後輩「友先輩とは、どんな間柄ですか? なんだかとっても親しく見えたので!」
先輩「友? 幼馴染なのよ。小中高ずっと一緒の」
後輩「え! そうなんですか! 通りで仲良しなんですね~」
先輩「そうなのよ」
後輩「友先輩って水泳部ですよね? とっても速いって聞きました!」
先輩「そうね。昔から水泳が大好きだったからね」
先輩「あら、そうなの?」
後輩「でも、やっぱり夏はプールとか、海とか行きたいですよねっ」
先輩(プール、海……!?)
後輩「先輩?」
先輩「え!? そ、そうね」
後輩「先輩は、泳ぐの得意ですか?」
後輩「ふむふむ」
先輩「夏はやっぱり、行きたくなるわね」
後輩「……私も、泳げるようになりたいです!」
先輩「うふふ、頑張ってね」
後輩「そ、その……」
先輩「?」
後輩「一緒に、行きませんか? プール……」
後輩「良かったら、泳ぎも教えて欲しいです」
先輩「お、教える?」
後輩「はい! 今年こそは泳げるようになって、海にも行きたいです!」
後輩「だから……一緒に!」
先輩「で、でも、手帳にはいっぱい予定入ってたじゃない?」
後輩「はい! でも、泳げるようになりたいから……予定も再調整します!」
後輩「だ、ダメですか?」
先輩(むしろ全然良いのだけれど……)
先輩(いつでも会えるように極力予定は入れないようにしてたし)
先輩(我ながら、気持ち悪いけれど……)
後輩「それじゃあ、この日とかは?」
先輩「ええ、もちろん大丈夫よ」
後輩「やったっ! あ、あと……」
先輩「?」
後輩「友先輩も、誘ってもらえませんか?」
友「……で、なんで私はあんたに呼び出されたわけ?」
先輩「電話しても繋がらないんだもん」
友「いやぁ、部活で疲れて、帰ったら寝ちゃうんだわ」
先輩「でしょうね、今日だって部活があるものね。だからわざわざ学校に出向いたのよ」
先輩「あなたに会いにね」
友「よくやるわ。それで、話は?」
先輩「後輩ちゃんと、デートしたの」
友「知ってるわよ。良かったわね。どうだったの?」
先輩「最高だったわ。至福の時ってああいうことを言うんだろうって」
友「へえ。最高の夏休みスタートじゃない」
友「わーお。なになに、海でも行くの?」
先輩「……それで、よ」
友「ん?」
先輩「あなたの予定を聞こうと思って来たの」
友「私の? なんで」
先輩「あの娘が友とも一緒に行きたいって言ってるから……」
先輩「だ、だから……あの娘が、友とも、一緒に行きたいって」
友「さっき言ったからそれはわかるわよ。でも、なんで私?」
先輩「気に入られてるんじゃないの?」
友「出た、ネガティブ思考。自分の嫌な方向に話を持っていかないの」
友「単純に、泳ぎ教えてもらうなら、経験者の方が良いってだけでしょ」
友「なんて?」
先輩「仲良いの? とか」
友「そりゃ普通に話をする上で出る質問でしょ! 気にしないのっ!」
先輩「そ、そうなのかしら……」
友「気にしない。大丈夫。で、いつを指定されたの?」
友「……あらま、ちょうど休みの日だわ」
先輩「えっ」
友「良かったわね~私含めて3人デートよ」
先輩「……」うるうる
友「涙目にならないの。むしろ手助けする人が来てくれるんだから有り難く思いなさいよ」
先輩「う、うん……」
友「はぁ……」
友(先が思いやられるわ)
先輩「も、もしもし」
後輩『先輩!』
先輩「あの、この前のプールの話なのだけれど」
後輩「はい」
先輩「友、その日ちょうどお休みで、プール来れるみたい」
先輩「え、ええ。電話でつかまらなかったからわざわざ学校まで行ってね」
後輩「が、学校まで!?」
先輩「? ええ」
後輩「……お手を煩わせてしまってごめんなさい! ありがとうございますっ」
先輩(あなたのためだったらなんでもするもの……)
後輩『……』
先輩「?」
後輩『……そうですね! 水泳部の方が来てくれたら、百人力ですねっ』
先輩(……今、ちょっとだけ間があったような?)
後輩『えへへ……』
先輩(声だけでも可愛い……好き……)
プツッ
先輩「……次はプールかぁ」
先輩(この前一緒に見た水着なのかしら……)
先輩(私、あんな可愛い水着姿の彼女を直視できるかしら……心臓が痛い)
先輩(キュン死にさせられてしまうかもしれないっ!)
友『……なによぉ』
先輩「緊張して眠れないの」
友『私はずーっと部活でとっても眠いのよ……むにゃ』
先輩「わかってるけど……私もこの数日間緊張してたのよ……」
友『それにあんたねぇ』
先輩「な、何?」
友『部活休みの日まで泳がされる私の身にもなりなさい』
友『何はともあれ、まずは後輩ちゃんを泳げるようにすることが先決ね』
先輩「その点に関しては問題ないと思ってるんだけど」
友『あら、そうなの』
先輩「友、教え方上手だし。優しいし」
友『褒めても何も出ないわよ~嬉しいけどさ』
先輩「友のおかげで私も泳げるようになって、更に泳ぐの好きになったし」
友『あ~、そうだったそうだった』
友『あはは、ずっと泳いでるから忘れたわそんなこと』
先輩「だから、後輩ちゃんも泳ぐの好きになって欲しいなって、思うの」
友『そうね~。そしたら次は海も行けるわね』
先輩「う、海……」
後輩《先輩……オイル、塗ってもらっていいですか?》
先輩「……ふふ」
先輩「あ、う、うん……」
友『まあ、明日は私なりにサポートするからさ、心配しなさんな』
先輩「うん! 友、ありがとう。おやすみなさい」
友『はいはい、おやすみ。ふわぁぁ……』
プツッ
先輩「……頑張ろっ」
友「プールだ~」
先輩「後輩ちゃん、まだかしら」
友「もうすぐ来るって。あ、噂をすれば」
後輩「先輩、友先輩~」
先輩「!??!??!?」
友(リアクションがあからさまねぇ)
後輩「はぁはぁ……ごめんなさい、手間取っちゃって」
先輩「うふふ、平気よ」
友(冷静な顔だけはいっちょ前ねえ)
先輩(水着、最高……!)
友「いいのよ」
先輩(むむむ……)
後輩「先輩も、私のワガママに付き合ってくださってありがとうございますっ」
先輩「え、ええ。気にしなくてもいいのよ」
先輩(こちらこそ、ありがとう……!)
友(いつも以上に笑顔ね)
友「ああ、話は大体コイツから聞いてるから」
先輩「こ、コイツって言わないでよ」
友「そんなこと気にするタチなの?」
先輩「そうじゃないけれど……」
友「後輩ちゃん、今日で泳ぐの楽しくなってくれたら嬉しいかな、私は」
後輩「は、はい! がんばります!」
先輩(頑張って……!)
後輩「む、難しいです……」
友「なるほどね、それじゃあ……大きく息吸って~」
先輩(……!? ちょっと、友、手つないで……)
先輩(……ズルい)
後輩「あ、あれ? 私、泳げましたか今?」
友「そうそう。その感覚でもっかい言ってみよ~」
先輩(……ま、まあ、これは教えてるから仕方ないわよね、うん……)
後輩「う、嘘! もう泳げるようになりました!」
友「でしょ!! こんなの教え方次第だもん」
後輩「すごいです! 友先輩!」
先輩(むむむむ……)
友「……っと、そろそろ三人で遊ぶ?」
後輩「あっ! 先輩ごめんなさい!」
先輩「全然良いのよ……」
後輩「はい! 楽しいです!」
先輩「友、やっぱり凄いわね」
友「そりゃね。暇があったら子どもにも教えてるんだから」
先輩「あら、初耳」
友「この話するの何度目かだと思うけど?」
先輩「あら、そうだったかしら?」
友「あんたね~、ま、いいわ」
後輩「そ、そうなんですか?」
先輩「ちょっと! 言ってるじゃない!」
友「あら~? 言わないつもりだったんだけどな~?」
先輩「意地悪!」
友「はいはい、意地が悪い友達持って可哀想ね~!」
先輩「反省して!」
友「いいじゃない別に隠してるわけじゃないでしょ!」
先輩「そ、そうだけど……」
友「ならいいじゃない! 変にカッコつけようとしないの」
先輩「……うう」
先輩・友(あ)
後輩「……な、仲が良いんですねっ」
友「あ、あはは! 幼馴染だからね~」
後輩「あはは……」
先輩(つ、ついいつもの感じで話しちゃったわ……)
先輩「だ、大丈夫よ、大丈夫……」
先輩(……な、はず)
後輩「え、えっと……気を取り直して遊びましょう!」
先輩「ええ! そうねっ」
友「よ、よーし! 思いっきり満喫しよー!」
後輩「ふふっ」
先輩(良かった、特に変わりなさそう……?)
先輩(私と友が仲良くしてたら、会話に入りづらいわよね……)
先輩(というか、やっぱり水着が最高ね……)
先輩「うう……」
後輩「先輩?」
先輩「わ、私、高所恐怖症……」
友「なになに、ビビってんの?」
先輩「あなたは知ってるでしょっ!」
友「だけどさ、いい加減大人になりなよ~」
先輩「大人の基準じゃないでしょ、これは……」
友「あ、そっか。そもそもプールとかもほとんど来たことないわよね」
後輩「そうです! だから初体験ですっ!」
先輩(初体験……?!)
友(なーに考えてんだか)
後輩「だから、ワクワクドキドキです!」
友「いいわね~初々しくて」
先輩(なんて好奇心に溢れてるのかしら……素敵)
先輩「……」
友「えーっと、しがみつくのやめてくれない?」
先輩「だ、だって……!」
後輩「せ、先輩大丈夫ですか?」
先輩(な、情けない……)
友「どうする? やめとく?」
先輩「!」ぶるぶるっ
友(めちゃくちゃ首を横に振ってるけど、ほんとうに行けるのかしら……)
先輩(死なない? これ……)
後輩「せ、先輩……」
友(いいとこ、見せるしかないわよ……!)
後輩「……」
先輩「……い、行くわ!」
友「よし! よく言った! 行くわよ」
友「後輩ちゃんは大丈夫?」
後輩「は、はい!」
友「……じゃあ、行くわよ!」
友(ヒャッホー!)
後輩(すごっ……でも、楽しい!)
先輩(……)
ゴゴゴゴゴドッパーン!
友「ぷはっ! 最高!」
ゴゴゴゴゴトパーン!
後輩「ぷはっ……気持ちいいです!」
友「でっしょ~! あ、次つっかえちゃうからさっさと離れるわよ~」
後輩「はい!」
友「お、来たわね」
後輩「先輩っ」
先輩「……」
しーん
友「……ん?」
後輩「浮き上がって……来ない!?」
友「あのバカ! 後輩ちゃん、係の人呼んできて! 助けてくる!」
後輩「は、はい!」
友「もー無理して!」
友(……息してない! 水飲んじゃってるかも!)
友「おらっ!」ぐりっ
先輩「んっ……! こほっ!」
友(口から水が出てきた! 何やってんのよもぉ~!)
友「息はまだ戻ってこないか……!」
後輩「友先輩! 係の人呼んでき……」
友「すぅぅ……はむっ」
後輩「……!!」
友「……」
先輩「ん……」
友「あっ! 意識戻った……?」
友「バカね、無理するからよ」
先輩「……?」
後輩「せ、先輩……!」
先輩「え!? 私、ウォータースライダー……」
友「したわよ。それで現在に至るわけ」
先輩(ど、どういうこと……?)
先輩「状況がサッパリ……」
後輩「あ、来てくださってありがとうございました! 大丈夫だったみたいです!」
先輩「?」
友「あんた、溺れたのよ」
先輩「ええっ!?」
友「ね~」
先輩「え、えっと……心配かけてごめんなさい……」
友「良いわよ、無事だったんだし」
後輩「そうですっ、本当に無事で良かった……」
先輩(うう。だいぶ心配させちゃったみたいね……)
後輩「はいっ!」
先輩「え、ええ」
友「流れるプールでゆらゆら気持ちよく泳ぎましょ~」
後輩「はいっ」
先輩「……」
後輩「せ、先輩っ、冷たくて気持ちいいですよ~」
先輩「えっ。あ、そうね」
先輩(沈んでる私に気を遣ってくれてる……なんて優しいのかしら)
先輩「後輩ちゃん」
後輩「は、はい?」
先輩「ありがとう」
後輩「えっ?」
先輩「ううん、気にしないで」
後輩「? ……わかりましたっ」
先輩「ほんと、友は気持ちよく泳ぐわね……」
友「ふふん、褒め言葉ありがと」
後輩「せ、先輩たちっ! はやいです~」
先輩「あら! ごめんなさい、先に行っちゃって……」
ぎゅっ
先輩「!?」
後輩「ぷはっ…… ハッ! ごめんなさい」
先輩「……」
友(うわ、嬉しさの余り固まってる)
先輩「!」(近っ! 上目遣いっ! 水着!)
後輩「……」
友(見てられないわ、まったく……)
先輩(生きてて良かった……)ぷか~
友「ちょ、ちょっと!? また溺れる気!?」
友「日が沈んできたわね」
先輩「そうね、そろそろ時間かしら」
後輩「ええっ、残念です……」
先輩「ま、また行きましょう?」
後輩「本当ですか!? やったっ♪」
先輩(あなたとなら何度だって行くわ……)
先輩「な、なによ?」
友「誘わなくていいの? アレ」
先輩「えっ……あっ!!
先輩(よ、よし……!)
先輩「あ、あの、後輩ちゃん」
後輩「はい?」
後輩「夏祭り? あの花火とか打ち上がったりする、大きなお祭りのことですか?」
先輩「そ、そう! あ、あのね良かったら一緒に……えっと、予定が空いてたらでいいんだけれど」
後輩「え……」
先輩「だ、ダメかしら……?」
後輩「……」
先輩「も、もちろん! 友もいるわ! 三人で……どうかしら?」
後輩「……」
後輩「違う人と行く予定があるので、遠慮しておきます」
先輩「!!!」
後輩「ぜ、是非お二人で、行ってください」
後輩「誘ってくださったのに、ごめんなさい」
先輩「……」
友(あちゃ~……)
友(こりゃちょっと立ち直れなさそうね)
後輩「あの、今日は本当にありがとうございました!」
後輩「泳げるようになれましたし、これで夏の楽しみが一つ増えました!」
後輩「先輩達のおかげですっ」
友「あはは~そりゃどうも~」
先輩「……」
友(……困ったわねぇ)
先輩「……」
友「……」
先輩「誰と行くんだと思う?」
友「知らないわよ、聞けば良かったじゃない」
先輩「……そうよね、あんなに予定が入ってたら夏祭りなんて絶対行くわよね」
友「そうね~」
先輩「……男子だったらどうしよう」
友「そうねぇ……」
友「ちょっと、泣かれても困るわよ」
先輩「でも……うう」
友「気持ちはわかるわよ? でももうこれは仕方ないじゃない」
先輩「うん……」
友「とりあえず、夏祭りは楽しみましょ? 花火観たら気分も晴れるといいわね」
先輩「……友」
友「ん?」
先輩「優しい~ううっ……」
友「はいはい……」
友「やっほ」
先輩「……」
友「なーによその顔は。もっと楽しそうな顔しなさいよ」
先輩「これが精一杯……」
友「あらそう。……部活以外の休み、ほとんどあんたと会ってる私はどんな気持ちで夏祭りを楽しめば良いのかしら?」
先輩「うっ……」
友「まあ、自然と元気になるわよ。ほら、行くわよ」
先輩「ええ……」
友「ひゃー! 今年も大盛況ね」
先輩「そうね」
友「はぐれないでよ?」
先輩「だ、大丈夫よ」
友「毎年、絶対はぐれてるのに?」
先輩「……頑張るわ」
先輩「あなたが人混みをスイスイいっちゃうからじゃない」
友「あんたがノロいのよ~」
先輩「私が浴衣だからってのもあるでしょ」
友「そうね。私は浴衣着ないしね」
先輩「少しは気を遣ってほしい」
友「うん、考えとく!」
先輩(絶対ウソ……)
先輩「うう……」
友「準備はいい? 行くわよ~」
先輩「頑張る」
友「……よっと、いないと思ったら背の低い子どもとかがいて危なっかしいわね」
先輩「……」
友(無心で避けてるわね)
先輩「私をなんだと思ってるのよ……」
友「アハハ」
先輩「………?」
先輩(あれは、後輩ちゃん……!?)
先輩「後輩ちゃん!」
後輩「……」
先輩(聞こえてない……!)
先輩「はぁ……あ、アレ?」
友「よっし、通れた~! ……ってあら?」
友「……」
先輩「またはぐれた……」
友「……またはぐれたか」
ピロリン♪
先輩「ん……友からだわ」
友『いつものとこ集合』
先輩「な、なるほど……それならわかるわね」
先輩「とりあえず向かいましょう」
先輩(それにしても、後輩ちゃん……)
先輩(誰と一緒にいたのかしら……)
先輩「……ふふ」
先輩(当たり前よね、彼女は大人気)
先輩(とっても愛され体質の、女の子なんだから……)
先輩「はぁ……」
先輩(花火を見て、スッキリするといいんだけれど)
先輩(……できるかしら)
先輩(やっぱり、浴衣でここまで来るのはキツイわね)
先輩「友はとっくに着いてるだろうけど……ん?」
先輩(あれって……)
先輩「……」
先輩(後輩ちゃん!?)
友「……」
先輩「えっと……あ、あれ?」
友「あー……グッドタイミングで来たわね」
先輩「え、ど、どういうこと?」
先輩(……というか)
先輩(どういう状況?)
先輩「えっ!?」
友「……まあ、わかるから。またね」
先輩「ど、どういうこと……? ちょ、ちょっと!」
先輩(……行っちゃった……)
後輩「……」
先輩「え、えっと。久しぶり、後輩ちゃん」
先輩「……」
後輩「……」
先輩「……」
後輩「……」
先輩(……何故か気まずい)
先輩「ん?! は、はい??」
後輩「……先輩は、友先輩と、付き合ってるんですか?」
先輩「へっ!? つ、付き合ってる?!」
後輩「……」
先輩「そ、そんなことあるわけないじゃない。友達よ、友達」
後輩「……でも、先輩と友先輩は、とっても仲良しで、たくさんお話して……」
先輩「……」
後輩「こんなところに、二人で一緒にいるなんて……」ポロポロッ
先輩「こ、後輩ちゃん!?」(泣いてる!?)
先輩「こ、恋人じゃない!」
後輩「じゃあ、なんですか!?」
先輩「し、親友よ! 友とは!」
後輩「じゃあ、先輩には恋人はいないんですか!?」
先輩「い、いないわ! 生まれてこの方一度も!」
後輩「……じゃあ、私と付き合ってください!」
先輩「………………」
先輩「………………へ!?」
後輩「初めてハンカチを拾ってくれたあの日からずっと」
後輩「先輩のことがずっと頭から離れなくって」
後輩「でも、こんなこと言われたら嫌われちゃうかもしれないと思って……」
後輩「そんな私にずっと優しくしてくれて」
後輩「勘違いするくらい、私舞い上がって……」
後輩「……ううぅ」ポロポロポロポロ
後輩「ごめんなさい、気持ち悪いですよね……こんなこと、急に言われたら」
後輩「先輩の前では、良い子にしてようと思ってたのに……できなかった……な……」
後輩「ごめんなさい、私は、これで……」
先輩「ま、待って後輩ちゃん!」
後輩「……!」
ヒュ~~~~~~
先輩「わ、私もあなたのこと……!」
先輩「好きよ!」
ドーーーーーーーーン
先輩「あ……」
後輩「……」
先輩「は、花火、始まっちゃったみたいね……あはは」
後輩「……先輩……」
先輩「……?」
後輩「先輩ぃ~~~~!!!」ぎゅうぅ
先輩「わっ、えっ、ちょっと!?///」
後輩「私も、好きです、好きですっ大好きです~~~~!!」
先輩(ギュってされてるのと気温のせいですっごくクラクラする~~~!)
【謝罪】
9月に終わらせるつもりでしたがもうちょっとだけかかりそうです。
上旬には終わる……というか終わらせるのでよろしゅう。
それでは!
先輩「……落ち着いた?」
後輩「はい……」
先輩「良かった」
後輩「……はっ! 先輩!」
先輩「な、なに?!」
後輩「花火! 観ないと!」
先輩「えっ!? ああ、そうね!」
後輩「綺麗……」
先輩「ええ、とっても」
後輩「それにしても、こことっても良く観えますね」
先輩「ええ。穴場なのよ」
後輩「……むむ」
先輩「?」
後輩「友先輩と二人で観ようとしてたんですか?」
先輩「後輩ちゃんと三人で観ようと思ってたのよ? 断られたけど……」
先輩「そういえば、一緒に来た子のこと、いいの?」
先輩「うん」
後輩「嘘、だったんです」
先輩「えっ」
後輩「先輩と友先輩が仲良くって、私はお邪魔かなと思って」
後輩「それで、断るために嘘ついちゃいました」
先輩「そ、そうだったの……」
後輩「ごめんなさい……」
先輩「ううん、いいわ」
先輩「今こうして、二人で観れてるんですもの」
後輩「えへへ」
先輩「それにしても、両想いだったなんて信じられないわ」
後輩「私もですっ」
先輩「ふふっ」
後輩「先輩、もっと、近くにいってもいいですか?」
先輩「ええ、もちろん」
後輩「やったっ。……」
先輩(幸せね……)
後輩「はひっ!?///」
先輩「あ、ごめんなさい。可愛くってつい」
後輩「はわわ……すっごくドキドキしました」
後輩「好きな人に頭撫でられるのって、凄く落ち着きますね」
先輩「は、恥ずかしいこと言わないで……」
後輩「えへへ、ごめんなさいっ」
先輩(ぎゅううってしたい)
後輩「……そういえば、浴衣、似合ってますか?」
先輩「ああ、暗くてよく見えてなかったわ……ちょっと明かりのあるところに行きましょう」
後輩「はいっ」
先輩「……」
後輩「……」
先輩(どうしよう、可愛すぎて言葉が出ない)
後輩「ど、どうですか?」
後輩「?」
先輩「……す、すき……」
後輩「……すき?」
先輩 コクコク
後輩「えへへぇ……」
先輩(その照れた顔も、本当に、大好き……)
後輩「はい?」
先輩「私達、付き合うってことでいいのかしら?」
後輩「えっ! ……付き合ってくれるんですか?」
先輩「こ、後輩ちゃんが良ければ……」
後輩「もちろんです! ずっと、一緒にいたいです」
先輩「そう。……じゃあ、これから、よろしくね?」
後輩「はいっ! 先輩っ」
先輩「あ、ありがとう」
後輩「好きです、先輩」
先輩「うん、私も……」
後輩「ささ、花火観ましょ!」
先輩「そうね。……って、静かね?」
後輩「あれれ……終わっちゃった?」
先輩「終わったみたいね」
後輩「……あはは、また来年一緒に観ましょっ」
先輩「ええ、もちろん」
先輩(これから、一緒にたくさん経験できるのね)
後輩「先輩、帰りましょ?」
先輩「ええ」
後輩「その……」
先輩「?」
後輩「手、握ってもいいですか?」
先輩「! もちろん」
後輩「えへへ……ありがとうございますっ」
ぎゅっ
後輩「ふふっ……」
先輩「うふふ……」
おしまい。
スピンオフ2つ書いたら終わります!
それでは~
友「……」
先輩「……」
友「とりあえず、あんたのその満足げな顔で、夏休みが最高だったってことがわかったわ」
先輩「う、うん。後輩ちゃんとも、付き合うことにもなったわ」
友「良かったわね~?」
先輩「そ、そうね……」
友「はいはい。あんまり気にしてないわよ」
友「それに、結果オーライだったわけだしさ」
先輩「う、うん……」
先輩「でも、一つ気になってることがあって」
友「ん、何よ」
友「そうね」
先輩「『わかるから』とか言っていたけれど、なにか教えて欲しくって」
友「ああ、それのこと?」
先輩「うん」
友「いいわ、教えてあげる」
友「毎年毎年、なんでこんなにはぐれるのよ……」
友「花火始まっちゃうわよ、もう」
カラン カラン
友(ん、下駄の音……)
友「思ったより早かったわね……って、あら?」
後輩「……」
友「あれれ、後輩ちゃんじゃない」
友「うん。あれ、友達と一緒なんじゃないの?」
後輩「いえ、一人ですっ」
友「ああ、そうなの。浴衣、可愛いじゃない」
後輩「ありがとうございます!」
後輩「あの、そんなことよりっ」
友「ん?」
後輩「友先輩に、ちょっと聞きたいことがあるんです」
後輩「その……」
友「……」
後輩「先輩とは……ど、どんな関係なんですか?」
友「え? 普通に友達だけど」
後輩「……そ、そうじゃなくて」
後輩「好き、なんですか?」
後輩「……」
友(あー、なるほどねぇ)
友「好きだったら、どうなの?」
後輩「!」がーん
友(わかりやすっ)
後輩「わ、私……」
友「……」
後輩「せ、先輩のこと……取られ、たく、ないです……」うるうる
後輩「先輩が助かってくれて良かったのに、なんだか複雑な気持ちになって」
後輩「ずっと、モヤッとしてて」
後輩「友先輩に、私は敵わないって、それで……」
友「だから夏祭り断ったの?」
後輩「えっ」
友「言わなくてもわかるわよ。そういうことでしょう?」
友「なるほどねぇ……」
後輩「……」
友「素直に自分の気持ちを伝えることが一番だと思うわよ?」
友「じゃなかったら、私に取られちゃうかも、ね?」
後輩「!」
友(これで一歩踏み出せるといいんだけど)
先輩「えっと……あ、あれ?」
友「あー……グッドタイミングで来たわね」
先輩「な、なるほどね……」
友「まあこうなってくれてよかったわよ。おかげで花火ぜんっぜん観れなかったけどね」
先輩「ご、ごめんなさい……」
友「いいわよ。今度甘いもの奢ってくれればよし」
先輩「奢る奢る! いつでも奢るわ!」
友「じゃあ今日の放課後! 水泳部休みなんだよね」
先輩「あっ……」
友「なによ」
先輩「ご、ごめん、今日の放課後は、後輩ちゃんと……」
友「……はぁ」
その後①、おしまい。
次回、デートに行こう。
お楽しみに。
後輩「はーい!」
先輩「……」
男子「後輩、ちょっといいか?」
後輩「なぁにー?」
先輩「……」
先生「後輩ちゃん、ちょっとちょっと!」
後輩「はいはいなんでしょー!」
先輩(……すごいわね)
先輩「う、うん。相変わらずの人気っぷりね」
後輩「そんなことないですよっ」
先輩「あの短時間でこんなに声かけられること、ないと思うけれど」
後輩「そうなんですか? いつもこんな感じなので」
先輩「そ、そうなのね……」
後輩「えっ、なんでですか?」
先輩「後輩ちゃん、男女問わず好かれてるから」
先輩「私よりも素敵な人が現れたらと思うと……」
後輩「先輩!」
先輩「え、なに?」
後輩「えいっ!」ぎゅっ
後輩「わ~先輩の手、あったかい♪」
先輩(うう、可愛い……!)
後輩「先輩、手が暖かい人は心が冷たいらしいですよ!」
後輩「あ、じゃあ今先輩は心が冷たくなってるんじゃないですか!」
先輩「えっ!」
後輩「心臓の音、聴かせてください!」
先輩「ええっ!?/// は、恥ずかしいわっ!」
後輩「ふふふっ、あんまり心配しないでくださいっ」
後輩「先輩とこうして一緒に帰るために、色々頑張ってきたんですから」
先輩(……好き)
先輩「うう……好き」
後輩「はいっ私も大好きです!」
先輩「はぁ……心配性でごめんね」
後輩「私だって、先輩を取られたらどうしようって思ってるんですよ」
後輩「やっぱり友先輩は……怪しいですっ……」
先輩「怪しくない怪しくない!」
後輩「信じられないというか、その……」
後輩「友先輩には、私、敵わないから……」うるうる
先輩「うわわ、泣かないでっ、大好きなのはあなただけよ」
後輩「……えへへっ」ごしごし
後輩「友先輩に取られないように、がんばります!」えっへん
先輩(そもそも友取らないわよ……)
先輩「なにかしら?」
後輩「あの、そろそろですね」
先輩「ええ」
後輩「私と先輩が付き合ってること、言いたいです」
先輩「ええっ!?///」
先輩(考えただけでドキドキする……!)
後輩「ダメ、ですか?」
先輩「い、一旦落ち着きましょう、後輩ちゃん」
後輩「で、でも」
後輩「まだ、私達キスもしてないじゃないですか」
先輩「……」
先輩「……」
先輩「……」
先輩「……き、キス?」
後輩「手を握るくらいですよ?」
先輩「……そ、そうだけど……」
後輩「私、もっと先輩とイチャイチャしたいんです!」
先輩「ううぅ~……///」
後輩「ダメですか?」
先輩「だ、ダメじゃないけど! ダメじゃないけど……」
先輩「え゛!?」
後輩「……」
先輩(ああ、唇尖らせてる……!)
先輩(可愛い……可愛い……!)
後輩「……」
先輩「……」
後輩「なーんて!」ニコッ
後輩「キスしたいですけど、私は、先輩にキスされたいんです」
後輩「だから、先輩がその気になるまで、待ちますね?」
先輩(こ、この娘は……)
先輩(私の心を掴んで離してくれない……!!)
先輩「え、ええ」
後輩「……えへへ」
先輩「……うふふ」
後輩「あ、そうだ先輩!」
先輩「ん、なにかしら?」
後輩「デート、したいです!」
後輩「はい! 遊園地とか、行きませんか?」
先輩「い、行きたいわね……」
後輩「ね! おそろいの耳つけて、アトラクション乗って、パレード観て……」
後輩「えへへっ……」
先輩(考えただけで最高じゃない……!)
先輩「い、行きましょう! 私、とっても行きたくなった!」
後輩「やたっ♪ 決まりですねっ」
先輩「そうね、私はいつでもいいけれど」
後輩「じゃあ、今週のおやすみ!」
先輩「す、凄く急!」
後輩「思い立ったらすぐ行動ですっ!」
先輩「……そうね、すぐに行きましょう!」
後輩「この時期なら、ハロウィンシーズンですね♪」
後輩「あ、仮装とかしていきますか?」
先輩「そ、それもまた急!」
先輩「はぁ」
先輩(やっぱり、二人で出かけるのはまだまだ慣れないわね)
後輩「先輩~~!」
先輩「あ、きたきた」
後輩「はぁはぁ……おはよーございます!」
先輩「おはよう」
先輩「そうね、すっかり秋」
後輩「先輩の秋服……」じー
先輩「へ、変かしら?」
後輩「いえ! でも独り占めしたいくらい素敵ですっ」
先輩「……/// 後輩ちゃんも、可愛いわ」
後輩「わーい♪ やっぱり好きな人に褒められると、嬉しいですねっ」
先輩「そ、そう……///」
先輩(好き~……)
先輩「そうね」
後輩「楽しみだな~♪ あ、写真もいっぱい撮りましょうね?」
先輩「ええ」
後輩「先輩の可愛い表情、いっぱい撮っちゃいますっ」
先輩「そ、そんなこと頑張らなくていいのよ……?」
先輩「大人気ね」
後輩「先輩、早く行きましょ~!」ぎゅっ
先輩「うわわ!」
後輩「えへへ、急いで急いでっ」
先輩「う、うんっ……!」
先輩(強引に手を引っ張られるのも、悪くないかも……)
先輩「そうね。あら、いっぱいあるのね」
後輩「先輩は、ここ来たことあります?」
先輩「うーん、たまに」
後輩「もしかして、友先輩と……?」
先輩「う……ご、ごめんね、友以外、友達がいなくて……」
後輩「先輩には恋人がいるのにな~?」
先輩「そ、そうね」
後輩「えへへ」
先輩「うふふ……」
先輩「うさ耳?」
後輩「はいっ」ぴょこ
先輩「―――」
先輩(ハッ、危ない、可愛くて危うく死ぬところだった)
後輩「うーん、ちょっと違うかなぁ」
先輩「そ、そうかもね」
先輩(命がいくらあっても足りないわ……)
先輩「それは?」
後輩「黒猫です!」
先輩「か、可愛い……」
後輩「にゃんっ♪」
先輩「!?!?!?!?」
後輩「えっ、先輩どうしました?」
先輩「好き……すっごく好き……」
後輩「え……あ……う……///」
後輩「あ、あはは……て、照れちゃいます……」
先輩「い、命がいくつあっても足りないかもしれない……」
後輩「そ、そんなに気に入ってくれました?」
先輩 コクコク
後輩「……もー、先輩褒め上手なんだからっ」
先輩(いや、本当に可愛い……好き……)
先輩「わ、私も着けるの?」
後輩「はい、もちろん!」
先輩「ど、どうしようかしら……」
後輩「あっ、これとか!」
先輩「それは?」
後輩「犬耳ですね、着けてみてくださいっ♪」
先輩「うん」
後輩「わぁぁぁ……!!」
先輩「!」
後輩「か、可愛い~っ!」
先輩「そ、そう?」
後輩「お手っ」
先輩「えっ、はい」
後輩「よしよーし!」
先輩「……ちょ、ちょっと……///」
先輩「……あ、頭を撫でてたわ」
後輩「ご、ごめんなさいっ! い、嫌でしたよね……?」
先輩「……」
後輩「……」
先輩「……わ、悪く、ないわね」
後輩「ほんとですか?」ニコッ
先輩(むしろ、ドキドキしたわ……)
後輩「よーし、じゃあ買いに行きましょっ」
先輩「ええ」
先輩「あっ、私が出すわよお金」
後輩「だいじょーぶです!」
先輩「そ、そう?」
後輩「先輩に褒めてもらえたから、自分で買いたくて……」
先輩(どこまでも果てしなく可愛い娘……!)
後輩「よーし、楽しむ気分、更に増し増し! いきますよー!」
先輩「うんっ」
後輩「さて、何から乗りますか?」
先輩「うーん、何かしら」
後輩「やっぱり、ジェットコースターですね!」
先輩「え゛」
後輩「?」
後輩「あっ、そうなんですね……」
先輩「う、うん……」
後輩 しゅん
先輩(ああ、あからさまに残念そう……)
後輩「じゃあ、何乗りますか?」
先輩「ま、待って後輩ちゃん」
後輩「えっ」
先輩「私……乗るわ」
先輩「後輩ちゃん、乗りたいんでしょう?」
後輩「……」こくり
先輩「それなら、私も乗りたい」
先輩「後輩ちゃんとなら、乗りたい」
後輩「先輩……!」
先輩「……」
先輩(とは言ったものの……)
先輩(怖い!!)
後輩「先輩、ジェットコースター苦手なんですか?」
先輩「そ、そうね……得意ではないわ」
後輩「……あっ、そういえばウォータースライダーも……」
先輩「ええ、その類が苦手みたい……」
先輩「ジェットコースターは溺れないから大丈夫だとは思うけれど……」
先輩(人口呼吸……)
※妄想中
先輩「……///」
先輩(想像しただけでダメっ!! 恥ずかしい!)
先輩「うう……」
後輩「大丈夫ですか?」
先輩「大丈夫……なはず」
後輩「や、やっぱりやめます?」
先輩「が、頑張る~」
後輩「は、はい~~」
先輩「……こ、これで平気かしら!?」
後輩「はいっ!」
先輩「外れたりしない!?」
後輩「大丈夫です! ほら!」グッ
後輩「力いっぱい引いても取れません!」
先輩「な、なら行ける! かも……」
「それでは、元気にいってらっしゃーい!」
先輩「ひっ!!」
後輩「大丈夫です!」
先輩「ううっ、ううぅ!」
後輩「先輩っ!」ぎゅっ
先輩「!」
後輩「私がついてます!」
先輩「後輩ちゃん……」
ガタンガタンガタンッ……
先輩「ううう……!」
後輩 わくわく
先輩(後輩ちゃんとっても楽しそう…)
後輩 ぎゅぅぅ
先輩「んっ……」
先輩(手、すっごく強く握られてる……)
先輩(く、来る……!)
ガタッ
先輩「へっ?!」(止まった……?)
後輩「先輩っ」
先輩「にゃ、にゃに!?」
後輩「行きますよ♪」
ガゴーーーーーーー!!!
後輩「キャーーーー!!」
先輩「」
先輩「怖かった怖かった怖かった……」
後輩「だ、大丈夫ですか、先輩?」
先輩 うるうる
後輩「……か、可愛い……!」
先輩「怖かった……」
後輩「怖がってる先輩、とっても可愛いです……」
先輩(怖かった……)
後輩「落ち着きました?」
先輩「う、うん……」
後輩「えへへ、先輩……」
先輩「なに?」
後輩「怖いのに、私と一緒だから、乗ってくれたんですよね?」
先輩「う、うん……」
後輩「嬉しいです、そういうの」
先輩「……///」
先輩「う、うーんそうねぇ……」
後輩「私はなんでも!」
先輩「あら、そう。じゃあ……」
先輩「あ、ハロウィンだし、お化け屋敷とか行ってみる?」
後輩「……」
先輩「?」
後輩「お、おばけ……」うるうる
先輩「!?」
後輩「……」コクコク
先輩(もう既に涙目じゃない……)
後輩「い、行きますか?」
先輩「ううん、苦手ならやめておきましょう。無理する必要はないわ」
後輩「で、でも……」
先輩「他にもたくさんあるんだし、ね?」
後輩「……先輩!」
先輩「?」
後輩「私、頑張ります! お化け屋敷……頑張ります!」
先輩(震え止まってないけれど……)
後輩「はい! 先輩だって、私の為に無理してくれたんですから」
後輩「私も、先輩とならお化け屋敷、行ける、はず!」
先輩「後輩ちゃん!」
後輩「先輩となら、へっちゃらです!」
先輩(好き、好き過ぎる)
先輩「そうね、あまり怖くないかも」
後輩「す、すごい!」
先輩「でもジェットコースターは怖いのよね……」
後輩「私と正反対ですね」
先輩「正反対ね……」
先輩「え、正反対なのに?」
後輩「はい。……だって」
後輩「お互いに、補えるじゃないですかっ」
後輩「先輩の苦手なこと、私がやっちゃいます!」
先輩「……後輩ちゃん」
後輩「えへへ」
先輩「うふふ」
先輩(結婚しましょうね……)
後輩「へ、へえ……」
先輩「ハロウィン仕様って、怖いのかしら……?」
後輩「た、確かに! これなら行けるかも……?」
先輩「そうね、そう信じて入りましょう」
後輩「はいっ!」
後輩「」
先輩「後輩ちゃん!? まだ中に入ってないわよ」
後輩「はっ……」
先輩(受付の時点で怖がってる……)
後輩 ぷるぷるぷる
先輩(どうしよう、怖がってる姿が愛らしい……愛でたい……)
ギィィィィィ……
先輩「い、行くわよ後輩ちゃん」
後輩「は、はいぃぃ」
先輩(こ、ここは私がリードしないと!)
ぎゅっ
後輩「!」
先輩「手、離さないようにね?」
後輩「は、はいっ!」
先輩「そうね……」
後輩「先輩の手……あったかいです」
先輩「そうかしら」
後輩「安心します……」
先輩「良かった。……さ、進みましょう」
後輩「……」
先輩(特に仕掛け、ないわね)
バッ
先輩「!」
後輩「キャーーッ!!!」
ぎゅっ
先輩「!!?!?!?!?!」
後輩「て、手が! 手が出てきましたぁ!」
先輩「だだだだ、大丈夫よ! 大丈夫!」
先輩(そんなことより抱きつかれてて、どど、ドキドキするっ!)
後輩「ううう……」
先輩「あ、あの、動けないんだけど……」
後輩「は、離れないでください……」
先輩「!!」
先輩(上目遣い……ズルいっ!)
後輩「……」
先輩「……後輩ちゃん?」
後輩「ずっとこのままがいいです……」
先輩「…………」
先輩(お、襲いたい……)
後輩「……」
先輩「出てからもさせてあげるから、とりあえず出ましょうね?」
後輩「は、はいぃ……」
先輩「うん。ささ、行くわよ――」
ぎゅっ
先輩「ひゃい!?」
後輩「……これでも、いいですか?」
先輩(う、腕に、抱きつかれた……!)
先輩「い、行きましょうか?」
後輩「はい……」
先輩(後輩ちゃんの、胸の感触が……こ、こんなんに感じるものなの……?)
先輩(好きな人だから、余計に、なのかしら……)
後輩「先輩?」
先輩「な、なに?!」
後輩「えっと、行かないんですか……?」
後輩「はいぃ」
先輩「……」
後輩「……」
先輩(後輩ちゃんの心臓の音が……ダイレクトに……)
ウワ~~~!!
後輩「きゃーーー!!」
先輩「わわっ」
ぎゅぅ
先輩(はい、幸せっ……!!)
後輩「は、はいぃ……」びくびく
先輩(ここは、落ち着かせてあげなきゃ……)
先輩(ちょっと、大胆だけど……)
なでなで
後輩「! 先輩……?」
先輩「よしよし、怖いでしょうけど、もう少し頑張りましょうね?」
後輩「……」こくり
先輩(落ち着いた、かしら?)
後輩「ふわぁぁぁぁ……」
先輩「頑張ったわね、後輩ちゃん」
後輩「は、はいぃ……腰抜けちゃいました」
先輩「うふふ」
後輩「あ、あの……先輩」
先輩「なにかしら?」
後輩「頑張ったから……その、」
後輩「なでなで、されたいです」
先輩(な、なにこの可愛い存在は……)
先輩(思わず抱きしめたくなるような……)
後輩「……」
先輩(どうして目を閉じるの!?)
後輩「……」
先輩「……」
なでなで
後輩「……えへへ」
先輩(可愛さで即死)
後輩「わーい!」
先輩「こ、後輩ちゃん! 速度、もうちょっと抑え……!!!」
後輩「キャーーー!!」
先輩「」
メリーゴーラウンド
後輩「先輩、もっと近づいてくれないと危ないですよ」
先輩「べ、別々に乗っても良かったんじゃないかしら……?///」
後輩「それじゃあ乗る意味ないですよ! ほらっ」
先輩「うう……」
先輩(近い、近すぎるっ……! 恥ずかしい! 良い香り……!)
先輩「美味しい?」
後輩「はい! ハンバーグ美味しいですねっ」
先輩「ええ。ここで食べて正解だったわね」
後輩「プレートも可愛いです♪」
先輩「……あら、口にソースついてるわよ」
後輩「あっ。……んっ」
先輩「……?」
後輩「とってくださいっ」
先輩(待って……)
先輩「い、いいの?」
後輩「どうしてですか? 先輩に甘えたいです」
先輩「あ、甘え……/// わかったわ、取るわね」
後輩「んっ……ありがとうございますっ」
先輩「……///」
後輩「はむっ……うんっ、ごちそうさまでした♪」
先輩「綺麗に食べたわね」
後輩「食べるの遅くてごめんなさい、先輩のも片付けてきますっ」
先輩「いいのよ。ありがとう」
先輩(気が利くし、本当に素敵な娘……)
先輩「だいぶ暗くなってきたわね」
後輩「そうですね、もうすぐ真っ暗になっちゃいそう」
先輩「今日はこのくらいにしておく?」
後輩「ええっ、もっと先輩と一緒にいたいです……」
先輩「わ、私も一緒にいたいわ……」
先輩「?」
後輩「一番大事な乗り物忘れてました!」
先輩「なにかしら」
後輩「えへへ、アレです!」びしっ
先輩「……アレ?」
後輩「観覧車!」
ゴウンゴウンゴウンゴウン……
後輩「あの、乗ってから聞いてしまって悪いんですけど」
先輩「なに?」
後輩「先輩、高いところ大丈夫ですか?」
先輩「落ちたりしなければ平気、かしら」
後輩「良かったぁ……ちょっと心配してました」
先輩「ありがとう、大丈夫よ」
後輩「はいっ! それにしてもこの観覧車、飾り付けされててとっても素敵ですね」
先輩「ええ。この観覧車自体がイルミネーションのようになってるみたいね」
先輩「どうしたの?」
後輩「やっと、先輩と二人きりになれたな~って」
先輩「え……/// そ、そうね」
後輩「……先輩っ!」
先輩「な、なに?」
後輩「私たち、観覧車の中で、二人きりなんですよ!」
後輩「だから、その……」
後輩「……隣に行っても、いいですか?」
先輩「えっ!? あ、う、うん……」
後輩「……それじゃあ」すくっ
ぐらっ
後輩「きゃっ」
先輩「!」
がしっ
後輩「あっ……」
先輩「だ、大丈夫?」
先輩(思わず掴んじゃった)
後輩「は、はい……ありがとうございますっ」
先輩「……」
先輩(ち、近い……)
後輩「……先輩」
先輩「なに?」
後輩「すっごく、近いですね……///」
先輩「え、ええ……そうね……///」
先輩「?」
後輩「その人とは話もしたことがなかったんですけど」
後輩「横顔がとても綺麗で、すっごく存在感のある人で」
後輩「いつも気になって、見かけるとずっと目で追っちゃうくらいで」
先輩「……」
先輩「お洋服買った日?」
後輩「はい。その時に私、そのカフェによく行ってたって言ったじゃないですか」
先輩「うん。覚えてるわ」
後輩「その人は、いつもそのカフェの窓際の席でお勉強をしていた綺麗な人なんです」
後輩「黙々と勉強に打ち込んで、ただペンのなぞる音だけがテンポよく聞こえてくるんです」
後輩「その人はいつも、ブラックコーヒーを頼んでました」
先輩「……え」
先輩(それって……?)
後輩「先輩が、その人だったって」
先輩「!」
後輩「私、昔からの憧れの人と今こうして、お話しして、一緒にいられてるんです」
ぎゅっ
先輩(また、腕を抱かれた……)
後輩「……私のドキドキ、伝わりますか?」
先輩「!」
先輩(お化け屋敷の時よりも、伝わる激しい心臓の音……)
先輩「すっごく、ドキドキしてるわね……」
先輩「……///」
後輩「先輩……」
先輩「……うん」
後輩「……」
先輩「……目を閉じて」
後輩「はい……」
後輩「……んっ……」
先輩「……」
後輩「……えへへ」
後輩「やっと、キスしてくれましたね」
先輩「……遅くなって、ごめんね」
後輩「そんなことないです……嬉しくて、たまらないです」
後輩「あっ、先輩見てくださいっ」
先輩「えっ。……わぁ……!」
後輩「パレードです!」
先輩「ここからだと全体がよく見えていいわね。綺麗……」
後輩「キラキラしてて素敵ですっ」
後輩「……先輩っ」
先輩「ん、なに?」
後輩「……ギュゥって、して欲しいですっ」
先輩「ぎゅ、ギュゥ……?」
後輩「はいっ」
先輩「……わ、わかったわ」
後輩「……ふわぁ」
先輩「……」
後輩「あったかい……先輩の良い香りがします」
先輩「そ、そんな感想言わなくていいのっ……///」
後輩「せんぱぁい……」
先輩「ん……?」
後輩「キスぅ……」
先輩「/// うん……」
後輩「ふふふーん♪」
先輩「……」
後輩「先輩、どうしたんですか?」
先輩「う、腕から、離れないのね」
後輩「え、ダメですか……?」
先輩「ううん、ダメじゃない。むしろ嬉しいわ」
後輩「えへへっ……」
先輩「なにかしら?」
後輩「先輩のこと、憧れの人だったから好きになったんじゃありません」
後輩「きっと憧れの人じゃなくたって、ハンカチを拾ってくれたあの日から、ずっと私は好きですから」
先輩「……///」
後輩「でも、それよりももっと好きだったんですけどねっ」
先輩(……私もよ、後輩ちゃん)
先輩(ハンカチを手渡したあの日から、ずっとあなたのことばかり考えてたのだから)
先輩「うん?」
後輩「先輩の唇、柔らかかったぁ……」
先輩「ちょっ!/// 何を言い出すのっ!」
後輩「えへへっ、これからたっくさんしてもらえるんだなと思って、嬉しくなっちゃいました!」
先輩「も、も~……///」
後輩「先輩、写真撮りましょっ!」
先輩「うん」
後輩「観覧車をバックに……」
後輩「先輩っ、こっち来てくださいっ」
先輩「うん」
後輩「……もっともっと近づいてくださいっ♪」
先輩「う、うん///」
先輩「うんっ」
後輩「はいっチーズ……」
ちゅっ
先輩「へ!?」
パシャッ
先輩「こ、後輩ちゃん、今の……」
後輩「えへへ、不意打ちでしちゃいましたっ」
先輩(……頬に、まだ感触が……)
後輩「ほら、見てください先輩っ」スッ
先輩(わ、私……き、キスされてる……!)
先輩「そうね……」
後輩「待受に設定っと……」
先輩「ええっ!?」
後輩「えっ、ダメですか?」
先輩「い、いや、ダメじゃない、けど……は、恥ずかしくない……?」
先輩「そ、そうなの……」
後輩「……あの、はしたない娘って、思われましたか……?」
後輩「幻滅、しちゃいました……?」
先輩「!」
後輩 うるうる
先輩(……もーどうにでもなれっ!!)
ぎゅっ
先輩「あなたの全部が好き! だから、そんな悲しいこと言わないでっ!」
後輩「……先輩///」
先輩「……」
後輩「……あ、あの、先輩?」
先輩「な、なに? は、離さないわよ……」
後輩「人がいっぱい、見てますよ?」
先輩「ぴゃっ!?///」バッ
先輩(ああああああああ……///)
後輩「先輩」
先輩「……な、なに?」
後輩「これからも、末永くよろしくお願いします♪」
おしまい
友「でさ~……アレ、今何時?」
先輩「えーーっと……」トンッ
先輩「14時回ったところね」
友「……ほっほー」
先輩「?」
友「いやあ、ほっぺにチューされてる写真、待受にしてんのね」
友「ラブラブじゃな~い?」
先輩「……///」
ほんとにおしまい
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コメント一覧 (3)
-
- 2019年11月21日 06:06
- 題名の時点で気持ち悪い
-
- 2019年11月21日 11:44
- この世界がどうので読む気なくしました。さようなら。
君に愛されたいと願っ ていたい