橋田鈴「久しぶりだね。岡部倫太郎」岡部「え・・・?」
- 2018年11月09日 02:10
- SS、シュタインズ・ゲート
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岡部「ま、まさか・・・」
鈴「それとも・・・バイト戦士と名乗った方がいいかな?」
岡部「お前、鈴羽か!?」
鈴「はは。お前って事はないんじゃないかな?君よりずっとずっと年上なんだけど」
岡部「え、あ、すまん・・・いや、すみません?ええっと・・・」
鈴「ぷ。あはは!!なーんて冗談だよ。昔のように・・・というのも違うのかな?君にとっては昨日の事だけど、
私にとっては・・・何十年ぶりだから・・・まぁいつも通りに接してよ」
岡部「そ、そうか・・・ちょっと・・・いやかなり違和感があるが・・・そ、それで鈴羽がどうしてここに・・・
って、あ!そうか! IBN5100を届けに!?」
鈴「うん。それも勿論あるんだけどさ。ちょっと、君に、言いたい事があるんだ・・・聞いてくれるかい?」
岡部「え?」
鈴「ちょっと目を閉じてくれないかな? 岡部倫太郎」
岡部「!?」
鈴「あっはっは。それじゃ、ちょっと来てくれないかな? IBN5100を君に渡すよ」
岡部「何をしたんだ鈴羽!?今・・・」
鈴「まぁいいじゃないか。さっさと行くよ」
鈴「ちょっと古くなってるけどさ。まだまだ乗れるよ」
岡部「ずっと持ってたのか・・・」
鈴「変かな? さ、じゃあ漕いでよ」
岡部「は? どこに行くのかは知らんが、まさか二人乗りでか?」
鈴「別にそんな遠くないしさ、いいじゃんか。さ、いくよ!」
鈴「ははは!うーん、風が気持ちいいねー!」
岡部「バイト戦士!どこに向かえばいいんだ!はぁはぁ・・・」
鈴「駅の方に向かってー!」
岡部「はぁはぁ・・・まさかまたこうやって自転車を漕ぐ事になるとはな・・・!!」
鈴「また、か・・・・・・そうだね・・・懐かしいなぁ・・・」
岡部「はぁはぁ・・・やっと息が収まってきたな・・・うむ、無論だ。ついこの間、来たばっかりだからな」
鈴「あの時はありがとね」
岡部「ん?」
鈴「本当に参ってたからさ・・・父さんに会えるか全然分からなくてさ・・・君の言葉で、けっこう勇気づけられたんだよね」
岡部「・・・そんなのは当然だ。お前はラボメンだからな」
鈴「今でも?」
岡部「ずっとだ」
岡部「それで・・・IBN5100は?」
鈴「・・・ん?じゃあ行こうか。はい、また漕いでねー!」
岡部「・・って、ここへは何しに来たんだ?」
鈴「まぁまぁ細かい事は気にしない気にしない。さ、今度はあっちに向かって!」
岡部「逆方向ではないか!」
鈴「あはは~♪」
鈴「ぜんぜん大した事ないって。まったく、相変わらず体力ないんだからな~。もっと鍛えたほうがいいよ?」
岡部「余計なお世話だ!・・・それで、ここがバイト戦士の家なのか?」
鈴「小さいけどね。でも住めば都ってね・・・自転車そこに置いておいて。えーっと、鍵は・・・」
岡部「しかし・・・秋葉原からこんな近くに住んでるとはな・・・いや、考えてみれば当然か・・・」
鈴「よし。じゃ、岡部倫太郎。さぁ入って入って」
岡部「あぁ。それじゃ、お邪魔します」
鈴「どうしたの?」
岡部「いや・・・綺麗に整頓されてるなと思ってな・・・」
鈴「酷いなぁ。掃除ぐらいきちんとしてるって」
岡部「う、うむ・・・」
鈴「もう、今度はどうしたの?」
岡部「(普通に下着が部屋干しされてるぞ・・・どうすればいいんだ・・・)」
岡部「あ、お構いなく・・・」
鈴「? 変な岡部倫太郎」
岡部「(適当と言われてもな・・・狭いからどこに座っても下着に目が行ってしまう・・・)
岡部「(とりあえず背中を向けて座ってるか・・・)」
岡部「(それにしてもバイト戦士は年をとってもバイト戦士だな・・・あんまり変わってない感じがする・・・)」
岡部「(ついさっき、別れたばかりで、またすぐに会ったっていう風だ・・・)
岡部「(下着も年上って感じでもなくバイト戦士に似合いそうな健康的なスポーティな・・・)」
岡部「(って下着は関係ない!)」
鈴「お待たせ~」
鈴「うん? どうしたのかな?」
岡部「・・・・・・・なんだ・・・その格好は・・・」
鈴「うーん、この服も何年ぶりかな。久しぶりに着てみると、けっこういいもんだね♪」
岡部「・・・」
鈴「さっきまでのワイシャツにジーパンってのも悪くないんだけどね、やっぱり君の前ではこっちの方がいいと思ってね」
岡部「(あのヴィンテージもののジャージに、スパッツだと・・・!?スパッツだと・・・!?)」
50くらい?
鈴「はい、お茶」
岡部「あ、ああ・・・すまん」
鈴「ずずっ・・・いやぁこの年になるとさ、お茶が美味しくて美味しくて・・・」
岡部「う、うむ・・・ちなみに今、いくつなんだ?」
鈴「ん?53」
岡部「そうか・・・53か・・・」
鈴「?」
鈴「ふぅ・・・あ、お茶おかわり飲む?」
岡部「ああ頂きます・・・」
鈴「・・・・・・ずずっ」
岡部「・・・・・・・ずずっ」
鈴「ふぅ・・・それで、何だったっけ?」
岡部「IBN5100だっ!」
岡部「そうだ・・・!その為に、俺はタイムリープし、バイト戦士は過去に、」
鈴「ねぇ岡部倫太郎」
岡部「なんだ!」
鈴「ちょっとお願いがあるんだけど」
岡部「なに?」
鈴「そのさ、バイト戦士って呼ぶの、やめてくれないかなーって」
岡部「悪かった。気を悪くしたか?」
鈴「や、そういう訳じゃあ、ないんだよねぇ」
岡部「? おかしなバイト」「ストップ!」
岡部「!」
岡部「あ、ああ・・・すまん・・・怒ったか?」
鈴「大事な事なんだよ」
岡部「分かった。・・・・・・・・・鈴羽・・・・・・これでいいか?」
鈴「うん♪」
鈴「ま、今は橋田鈴って名乗ってるんだけどね」
岡部「え、ああ、橋田っていうと、ダルか」
鈴「そう。父さんの名字。父さん・・・橋田至は元気かな?」
岡部「ああ。さっきもラボを出るとき、パソコンの前で何やら張り切ってたぞ」
鈴「ははは。変わってないなぁ。うん、元気なら何より」
岡部「・・・会わないのか?」
鈴「いいよ。うん。いいんだ」
鈴「さってと、IBN5100だったね。ちょっと運ぶの手伝ってくれないかな?すっごい重いんだ、あれ」
岡部「・・・ああ、分かった」
鈴羽「こっちだよ」
岡部「・・・(鈴羽の後姿・・・背も体型もあんまり変わってないな・・・髪の毛は少し艶が無くなったような・・・)
岡部「・・・(若かった頃より、なんだろうか・・・何かが・・・あの頃の鈴羽に無かったものが・・・)
鈴羽「ねぇ岡部倫太郎」
鈴羽「・・・いや、これだよ。これがIBN5100」
岡部「これが・・・・・・これさえあれば・・・!」
鈴羽「うん。世界線が変わって、ディストピアの未来は無くなる。」
岡部「鈴羽・・・ありがとう」
鈴羽「え?」
岡部「これでまゆりが・・・まゆりが救える!」
鈴羽「・・・うん」
鈴羽「後で車で運ぶよ。レンタカーを借りてるんだ」
岡部「免許もってるのか?」
鈴羽「あまり名前が他所に残るような真似はしたくなかったんだけどね。下手に動くと、未来にどんな影響があるか分からないから。
でも車を動かせると色々と便利だからね」
岡部「そうか・・・すまないな」
鈴羽「気にしないで」
岡部「(・・・未来にどんな影響があるか分からない、か・・・。IBN5100が手に入るっていうから、浮かれてて気にしてなかったが、
あの時、過去へと飛んでいった鈴羽は・・・1975年からこれまでに、どんな生活を送ってきたんだろうか・・・)
鈴羽「さてと。それじゃ車もってくるから、家でゆっくりしてて」
岡部「なぁ鈴羽!」
鈴羽「ん?」
岡部「その・・・なんだ・・・なんと言えばいいのか分からないけど、俺は、その、お前は」
鈴羽「ふぅ・・・」
岡部「なんだ・・・?」
鈴羽「いや、ね?年をとると、けっこう相手の考える事が分かるもんなんだな~ってさ。それとも岡部倫太郎だからかな?」
岡部「なに?」
鈴羽「寂しかったよ」
どこにも誰もいなくて。IBN5100を手にいれる為に行動してる時も、もしかしたらSERNに目を
付けられてるんじゃないかと怖くなったりしてさ。どんな些細な行動がきっかけになって、
未来が大きく変わるか想像もつかないから、なるべく人と関わったりしないようにしてさ。
もしかしたら自分の全ては間違っているかもしれない、なんて不安になったりもして。
それでも使命を果たすんだって思えば、力が湧いてきて、頑張ろうって気にもなって・・・。
でもある時、ふっとどうしようもなく、ああ自分は孤独なんだって・・・寂しくなったりもしてね。
そんな時は・・・」
鈴羽「そんな時はね、君と・・・君たちと過ごしたあの日々を思い出すんだ。ブラウン管工房にバイトとして入って、
未来ガジェット研究所のラボメンになった、短かったけど楽しかった、君たちとの思い出を」
鈴羽「うん。本当に感謝してる。ありがとう、岡部倫太郎」
岡部「気にするな」
鈴羽「君に会えて本当に良かったよ・・・覚えてる?」
岡部「何がだ?」
鈴羽「父さんを探して秋葉原中を駆け回っているときにさ、ぜんぜん手がかりも何も見つからなくて、
挫けそうになっている時に、岡部倫太郎、凄い剣幕で怒ってたよね?諦めるんじゃないって」
岡部「もちろん覚えてるさ・・・あの時は悪かったな」
鈴羽「あの時も言ったけど、あたし、嬉しかったんだよね。未来では、あんな風に感情を大きく表に出す人はいないから。
怒鳴られて、がつーんって来て、少ししたら胸がドキドキしてきてさ」
俺得
鈴羽「岡部倫太郎の事を考えると、胸が熱くなるんだ。なんでだろうって考えて、分からなくてね。
壊れたタイムマシンを父さんが直してたり、その父さんを探したりしてどたばたしてたから
深く考えなかったけど・・・でも思い返してみれば、いつだって岡部倫太郎は、あたしの味方だったんだって気づいて。
ラボに誘ってくれたのもそうだし、父さんが見つからなくて悩んでた時も励ましてくれたし。
ねぇ岡部倫太郎、あたしがどれだけ岡部倫太郎に助けられたか、分かるかな?」
岡部「鈴羽・・・」
鈴羽「長かったよ・・・。この35年間、本当に。でも、」
鈴羽「また君たちに・・・君に会えるって・・・そう思えたから、頑張ってこれたんだ」
岡部「・・・」
岡部「(若かった頃の鈴羽に無くて・・・今の鈴羽にあるもの・・・それは、長い年月を経て積み重なった・・・孤独・・・そして寂しさ・・・)
鈴羽「あはは、なんだか湿っぽい話をしちゃったねぇ。遅くなったけど、IBN5100を・・・」
岡部「鈴羽」
岡部「鈴羽・・・」
鈴羽「ちょ、ちょっと、岡部倫太郎、どうしちゃったのさ、いきなり抱きついてきてっ」
岡部「鈴羽・・・すまない・・・」
岡部「お前に・・・こんな・・・こんな過酷な生き方を・・・押し付けて!」
岡部「何十年もずっと一人で闘い続けるなんて・・・あんまりだろう!」
鈴羽「・・・岡部倫太郎・・・・・・」
岡部「(ジャージだって間近で見ると、こんなにも古ぼけてしまっている)」
岡部「(鈴羽は女の子だったんだ。強い戦士だが、それでも一人の時には、寂しさに泣いてしまう・・・)」
岡部「俺は鈴羽に・・・どれだけの犠牲を・・・」
鈴羽「それは違うよ岡部倫太郎。あたしの使命は、あたしが選んだこと。君は、関係ない」
岡部「関係ないはずが!」
鈴羽「無いよ。罪悪感も責任も君が感じる必要なんて、ないんだ。だからさ、泣かないで、岡部倫太郎」
鈴羽「ふふっ。君は、いい奴だねっ、岡部倫太郎っ」
岡部「鈴羽・・・」
鈴羽「もう少しこのまま抱きしめててくれない?なんだか今さ、凄く、胸が熱いんだよ」
岡部「ああ・・・」
鈴羽「・・・」
岡部「・・・」
鈴羽「・・・・・・・・・・・ぐすっ・・・うっ・・・うぅ・・・あぁぁ・・・」
岡部「・・・・・・」ギュッ
岡部「それはお互い様だろう」
鈴羽「目の下に、まだ泣いたあと残ってる。拭いてあげるよ」
岡部「ああ、済まない」
鈴羽「んー・・・岡部倫太郎、もうちょっと頭下げて、顔を寄せてくれない?」
岡部「ん?これで届くか?」
鈴羽「チュッ」
岡部「!?」
岡部「す、鈴羽・・・!?お前、今の、いや二回目って・・・やっぱりさっきの!」
鈴羽「んー・・・なんだか若さを貰った気がするよ・・・ありがと、岡部倫太郎♪」
岡部「あ、どういたしまして・・・って違う!今のは、やっぱり、その」
鈴羽「岡部倫太郎。君が好き」
鈴羽「こうしてまた会えて・・・嬉しかった。抱きしめて貰えて、君があたしの35年間の為に泣いてくれて・・・」
鈴羽「ぐすっ・・・また泣いちゃうじゃんかよぉ・・・」
鈴羽「分かってる・・・岡部倫太郎には・・・椎名まゆりや瀬紅莉栖が・・・」
岡部「鈴羽。こっちを向くんだ」
鈴羽「!?」
岡部「・・・お返し、というところだ。やられっ放しは、性に合わんのでな」
鈴羽「お、岡部倫太郎、今の・・・!」
岡部「そういえば、二回だったな」
チュッ
鈴羽「・・・っ。んっ」
岡部「ふ、そういう鈴羽こそ」
鈴羽「い、いきなり強引過ぎない?」
岡部「お前が言うな!いきなり不意打ちをかましてきたのは誰だ!」
鈴羽「だってやり方知らなかったし・・・実はあたし、その初めてだったんだけど・・・男の人とキスするの」
岡部「なにぃ!?」
鈴羽「お、岡部倫太郎以外の人とは、そういう事したくなかったんだよ!悪い!?」
鈴羽「・・・・・・・岡部倫太郎はさ・・・その・・・年の差とかって、気にするほう?」
岡部「何?」
鈴羽「うわ今のナシ!ナシ!忘れてっ!」
岡部「・・・・・・(何だろうか、この胸の中に溢れる熱い気持ちは・・・)」
岡部「(俺は・・・)」
岡部「(俺は・・・・・・!!)」
鈴羽「あたしももう53だし・・・」
岡部「関係ない」
鈴羽「え?」
岡部「そんなことは関係ないっ!」
鈴羽「・・・っ」
岡部「今、ようやく気づいた。鈴羽の強いところが好きだ。ラボにいた時も、挫けそうになったり悩んでいたりしてても、
鈴羽と話しているといつの間にか気が晴れて、やっていくぞという気持ちが湧いてきた。俺も鈴羽にどれだけ助けられていた事か。
タイムマシンに関することも含めて、鈴羽がいなかったら俺はここまでやってこれなかった」
鈴羽「岡部倫太郎・・・」
岡部「もう一度、抱きしめさせてくれ。いいか?」
鈴羽「・・・うんっ」
岡部「そういう鈴羽だって・・・・人のこと言えないだろ」
鈴羽「うん・・・熱いよ・・・もうわけわかんないくらい感情が溢れててさ・・・嘘みたいだよ・・・」
鈴羽「未来に居た時はさ・・・恋愛とか、昔の映画で見たりするんだけど、ちっとも分からなかったんだよね・・・」
鈴羽「でも・・・今は凄くよく分かる。熱くて、あったかくて・・・こういう気持ちなんだね、人を好きになるって」
岡部「・・・鈴羽」
鈴羽「岡部倫太郎。ありがとう。あたし、幸せだよ」
・・
・・・
鈴羽「よっし、シャワーも浴びて着替えたし。今、車もってくるから」
岡部「・・・ああ」
岡部「・・・」
岡部「ふぅ・・・」
(鈴羽「岡部倫太郎・・・なんだか恥ずかしいな・・・胸、おかしくない?」)
(鈴羽「は、初めてだから・・・優しくしてくれると嬉しいかなーって」)
(鈴羽「えっと・・・その・・・においとか大丈夫だよね・・・?」)
(鈴羽「これ・・・舐めると気持ちいいんだよね?」)
(鈴羽「んっ・・・んんっ・・・!これ、苦いんだね・・・。飲んでみたけど」)
(鈴羽「ちょっと、そこ、汚いから・・・!?」)
(鈴羽「痛っ・・・。ううん、大丈夫だから・・・」)
(鈴羽「好き・・・好きだよっ・・・岡部倫太郎っ・・・」)
(鈴羽「はぁっ・・・はぁっ・・・はぁっ・・・」)
(鈴羽「なんだか・・・身体がバラバラになりそう・・・こんな激しい運動したの久しぶりだよ・・・あはは・・・」)
岡部「・・・・・・・・・・・・・」
鈴羽「ただいまー。って、どうしたの岡部倫太郎? にやにやしながら寝そべって」
鈴羽「ん?まぁね。若い頃に鍛えておいてよかったよ。まだまだいけそうな感じ」
岡部「・・・・・・」
鈴羽「・・・もう一回、する?あたしは平気だけど」
岡部「いや遠慮しておく・・・。IBN5100は?」
鈴羽「車は大丈夫。後はラボまで運ぶだけ」
岡部「・・・そうか」
岡部「・・・ああ」
鈴羽「・・・」
岡部「(これ以上、鈴羽と触れ合ったら・・・俺は・・・)」
岡部「(いや、とっくに・・・)」
岡部「ああ・・・」
鈴羽「・・・・・・」
岡部「・・・・・・」
岡部「(信号に捕まった・・・青になるまで何秒だろうか? あとどれぐらいの時間でラボにつくだろうか・・・)」
ギュッ
岡部「え?」
鈴羽「信号待ちの間だけでいいからさ。手、握ってていいかな」
岡部「・・・ああ」
岡部「・・・(俺も握り返す。無意識に、強い力が入る)」
岡部「・・・えっ!ミスターブラウンが!?」
鈴羽「そうそう。もう十年以上経つのかな?隣に引っ越してきてね。驚いたよ」
岡部「びっくりしたのはこっちの方だ・・・」
鈴羽「一度、煙草の不始末で家を燃やすところだったしね。危なかったなぁ、あれは」
岡部「何をしてるんだミスターブラウン・・・」
岡部「・・・・・・分かってる」
鈴羽「・・・・・・」
岡部「(二人で車からIBN5100を降ろす。作業は無言で、しかし手が触れ合っていた)」
鈴羽「ブラウン管工房は・・・閉まってるね。店長は不在かな」
岡部「・・・・・・・・」
鈴羽「さて、岡部倫太郎」
鈴羽「どうか、未来を変えてほしい」
岡部「・・・ああ」
鈴羽「・・・これで、あたしは使命を果たした事になるかな」
岡部「ああ。鈴羽は、立派に使命を果たしたんだ・・・・・・35年、本当にありがとう」
鈴羽「・・・・・・成功した」
岡部「うん」
鈴羽「成功した。成功した!成功した成功した成功した!やったー!!」
岡部「(目元に涙をにじませながら、成功したと繰り返す鈴羽は、生命力に満ち溢れた、
35年前の鈴羽に戻ったかのようだった)
鈴羽「だからさ、あたしを消す事に、躊躇しなくていいからね」
岡部「・・・っ!」
鈴羽「この世界線からIBN5100を使ってベータ世界線に移ったら、あたしは消える。向こうには、あたしは存在しないから」
鈴羽「でも・・・」「黙れよ!」
岡部「黙ってくれよ!頼むから、それ以上言わないでくれよ!」
岡部「頼むから・・・なぁ鈴羽・・・」
鈴羽「ならないよ・・・」
岡部「まだ他に方法が!」
鈴羽「あったら、とっくにそれを試してる」
鈴羽「椎名まゆりを救って、未来を変える。それにはこれしか・・・方法はない。だからあたしは1975年に飛んだ!」
岡部「・・・っ!クソっ!」
鈴羽「岡部倫太郎の事だけがどうしても諦められなかったから・・・だから、ただIBN5100を渡すだけでいいのに・・・」
鈴羽「辛くなるだけだって分かっていたんだけどさ・・・ごめんね・・・」
岡部「鈴羽・・・」
鈴羽「違う・・・辛いだけじゃない。岡部倫太郎に、好きって言って貰えて嬉しかった・・・幸せだったんだ・・・。
ごめんね、酷い女だよね」
鈴羽「ここで、別れよう」
鈴羽「じゃあね、岡部倫太郎!」
岡部「(追いかけようとしたが、足が動かなかった。俺も分かっていたのだ。もうどうする事もできないって事を)」
岡部「(俺は、まゆりを見捨てる事はできない。あの大切な幼馴染を見捨てる選択肢など、選べない)」
岡部「(まゆりを見捨てたとしても、そんな俺を鈴羽は絶対に許さないだろう)
岡部「(それに・・・IBN5100。これは、鈴羽の35年、その全てだ。今これを使わなかったら、鈴羽の35年はどうなる・・・)」
岡部「(俺はその場でしばらく立ち尽くしてから、IBN5100を運ぼうとした。が、かなり重くてそれは叶わなかった。)」
岡部「(助力を得るべく、ビルの階段を登り、未来がジェット研究所の扉を開けた。)」
岡部「(室内に居たまゆり、紅莉栖、ダルが同時に、開かれた窓の方を向いた。俺は自分の迂闊さを呪った)」
ダル「丸聞こえだお・・・」
紅莉栖「・・・」
まゆり「おかりん・・・」
岡部「(全身から力が抜けそうだったが、俺はなんとか踏ん張った)」
岡部「・・・とりあえず、ダル、来てくれ。IBN5100を運んでしまおう」
岡部「(・・・鈴羽はダルの娘だから・・・言いたい事は山ほどあるはずなのに・・・すまない・・・ダル・・・)」
まゆり「オカリン・・・あの、いいかな?」
岡部「なんだ・・・?」
まゆり「えーっと、まゆしぃ達はですね、盗み聞きをするつもりはなかったのです。その、窓からオカリンの声が聞こえてきて・・・」
岡部「俺の不注意だ。気にするな」
まゆり「それで・・・あの・・・まゆしぃを救うって・・・どういうこと?」
岡部「(思わず紅莉栖に目を向けてしまった。強い目で睨み返される。目は、こう語っていた。)」
岡部「(自分で全てを話せ、と)」
岡部「(俺はそうした)」
岡部「(まゆりは全てを知ると、カイチューを握り締め、何かに耐えるような表情を浮かべて、ソファーに座り込んでいる)」
岡部「(紅莉栖はそんなまゆりの隣で、何も言わずに、ただそばに寄り添っている)」
岡部「(開発室には、タイムリープマシンがあった)
岡部「(俺は決断しなければならない)」
岡部「(このアルファ世界線に残るか、ベータ世界線に向かうか。あるいは・・・)」
岡部「(タイムリープマシンを使って、同じ時間を永遠に繰り返すか・・・)」
岡部「(そして鈴羽とあの幸福な時間を過ごしたあと、また戻る・・・)」
岡部「(これを繰り返す。何度でも何度でも・・・)」
岡部「(・・・最善の策かもしれない、という誘惑。俺は立ち上がりかける。開発室に行こうとする。しかし、それは駄目だという理性の声もある。動けない。)」
岡部「(半端な姿勢のままでいると、)」
タタタタタッ!
岡部「(ラボに通じる階段を勢い良く駆け上がる音が聞こえてくる!)」
バンッ!
岡部「(扉が勢い良く開かれる。全員が、突然の闖入者を注視する。そこに立っていたのは・・・)」
岡部「・・・鈴羽っ!?」
鈴羽「父さんっ!橋田至!IBN5100は!?」
ダル「えっ!? あ、準備はできてるお!後はキーを押すだけで、」
岡部「・・・鈴羽っ!なぜお前がここに、」
鈴羽「・・・岡部倫太郎は、きっと決断できないと思ったから」
岡部「!」
鈴羽「優しい岡部倫太郎。ごめんね。あたしのせいだよね。だから、あたしが自分の手で―――!」
まゆり「鈴さぁん! 待って!」
岡部「(鈴羽の動きは素早かった。止める間のなくIBN5100が繋がれたパソコンの前に辿りつく。振り返る。)」
岡部「(まゆりと鈴羽の視線が合う。二人の間にどんな言葉が、感情が、やり取りされたのか、それは分からない)」
岡部「(俺は鈴羽が止まっている隙に、鈴羽に向かって走り出そうとして、背中に衝撃)」
岡部「(紅莉栖とダルが、二人がかりで俺を羽交い絞めにしていた)」
岡部「・・・紅莉栖 !ダル!なんでだ!離せ、離せよおおおぉぉぉぉ!!」
紅莉栖「岡部!阿万音さんは決断したのよ!きっとこうするのが一番正しいって!」
岡部「でもそれじゃ、鈴羽が!鈴羽が!」
岡部「(鈴羽がキーボードのエンターキーの上に指を添えた。そして最後に俺を見ると・・・)」
鈴羽「じゃあね岡部倫太郎!大好きだよ!」
岡部「(もう片方の手を大きく手を振りながら、鈴羽らしい、孤独も寂しさも感じさせない、最高の笑みを浮かべて、キーを押し込んだ)」
視界が歪み、世界が再構築されていく―――
岡部「(周りを見れば、まゆりもダルも、床に座り込む俺をきょとんと見下ろしていた。)」
岡部「(紅莉栖が居なくなっていた。その瞬間、俺は紅莉栖の存在もまた、永遠に失われてしまった事に気づく)」
岡部「(怒りと、悔しさと、様々な感情が胸の中で渦を巻く)」
岡部(「鈴羽に・・・自分で押させてしまった。自分の存在を消滅させる、最後のキーを。)」
岡部「(それはきっと恐怖を伴っただろう。なのに鈴羽は・・・あんな・・・笑顔で・・・)」
岡部「(俺はいつの間にか泣いていた。まゆりが「どうして泣いているの?」と訊ねた。何も知らない、無垢な表情で)」
岡部「(それでいいと思う。この日、まゆりは死ななかった。次の日も、死なないだろう。SERNに支配される事のない世界を生きていくだろう)」
岡部「(未来から一人やって来て、35年の長い孤独を耐えた、強い戦士が築いた世界を、きっと生きていくのだ)」
岡部・まゆり・ダル「!?」
岡部「(扉が勢い良く開けられた、そこに立っていたのは―――)」
岡部「鈴羽・・・?」
岡部「(なぜか軍人のような格好をした鈴羽が、そこに立っていた。室内を眺め、俺に視線を向けると、)」
鈴羽「・・・岡部倫太郎・・・?」
岡部「・・・っ!」
鈴羽「あれ・・・?いつもオカリンおじさんって呼んでた筈なのに、なんで呼び捨てにしたんだろう?」
鈴羽「あ!そうだオカ・・・ええい、岡部倫太郎でいいや!未来が大変なんだよ!一緒に来て!!」
岡部「(鈴羽がすっかり打ちのめされていた俺の手を握り締めて、駆け出す。懐かしい強引さで)」
岡部「未来が大変ってどういうことだ!」
鈴羽「第三次世界大戦が起きるんだよ!」
岡部「(階段を駆け下りる。そしてビルの前で立ち止まって、振り返り、)
鈴羽「力を貸して!」
岡部「ふふ、ははは・・・」
鈴羽「岡部倫太郎?」
岡部「(いったいどういう状況なのか、さっぱり分からない。鈴羽がなぜ、ここにいるのか。第三次世界大戦ってどういう事なのかもさっぱり)」
岡部「(なのに何故か、愉快な笑みが溢れてしょうがなかった。そして俺はこう答える。)
岡部「分かった、行こう鈴羽!」
それから俺たちはシュタインズゲートに到達する。そして―――
岡部の眼が見開かれる。流血による幻覚かと思う。
橋田鈴「久しぶりだね。岡部倫太郎」
岡部「え・・・?」
鈴「忘れてしまったかい?ついさっき、別れたばかりなんだけどな」
岡部「ま、まさか・・・」
鈴「それとも・・・ていうか、血を止めた方がいいね。急いで病院に行こう」
岡部「ま、待て・・・どういうことだ!何故、鈴羽が・・・」
鈴「未来で・・・53になったら不意に思い出したんだ・・・全部。そしたら居ても立ってもいられなくなって」
それでタイムマシンに乗って・・・」
岡部「リーディングシュタイナー・・・」
鈴「んー・・・やっぱり怪我、やばい事になってる。急ごう・・・っと、その前に」
岡部「え?」
鈴「今度は、眼を閉じなくてもいいよ。岡部倫太郎
終わり
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