武内P「台風、ですね」
武内P「タクシーを呼ばれては?」
楓「貴方はどうするんですか?」
武内P「いえ、私は電車で……」
楓「だったら、私も負けていられません」
武内P「……あの、何故張り合う必要が?」
武内P「あの、駅は逆方向では」
楓「……」
バシバシ!
武内P「……すみません」
楓「私は、共に歩んでいこうと思います」
武内P「……」
楓「ファンの方達と、笑顔で!」
武内P「通行人の方は、ほとんど居ませんが……」
楓「大丈夫です。傘が、私を守ってくれます」
武内P「あの、物凄い横殴りの雨なのですが」
楓「……」
バシバシ!
武内P「……すみません」
楓「此処は、ライトが暗すぎるわね」
武内P「……台風、ですから」
楓「はい、どうぞ」
武内P「……部長が、車で送ってくださると」
楓「!?」
武内P「……」
楓「!!?」
武内P「……お断り、しておきます」
楓「まあ、せっかくでしたのに……」
武内P「……」
楓「ええ」
武内P・楓「……」
ズバンッ!
武内P「……一瞬、でしたね」
楓「……傘、壊れちゃいまいたね」
武内P・楓「……」
楓「それしか、無さそうですね」
武内P「料金は、私が出しますので……」
楓「まあ、送ってくださるんですか?」
武内P「いえ、あの、逆方向なので……」
楓「まあ、送ってくださるんですか?」
武内P「……」
楓「駅? え、聞こえません」
武内P「……」
楓「料金は、私がおもちします」
武内P「私は、駅まで歩いてすぐなので……」
楓「駅? え、聞こえません」
武内P「……」
楓「風が強くて、よく聞こえません」
武内P「タクシーを呼びました。すぐ、来るかと」
楓「お手数をおかけしました」
武内P「……」
楓「……?」
武内P「っ……!」
ダッ!
楓「!? 待ってください!」
ダッ!
武内P「何故、追ってくるんですか!?」
楓「逃げるからです!」
楓「……ふぅ……ふぅ……!」
武内P「……高垣さん、タオルを」
楓「ありがとう……ふぅ……ございます」
武内P「あの、私は電車で帰りますから」
楓「……ああ、誰かさんのせいで濡れてしまったわ」
武内P「私のせい、ですか!?」
楓「それに、急に走って疲れちゃいました」
武内P「……!?」
武内P「……わかりました。タクシーが来るまで、此処に」
楓「?」
武内P「私は電車で帰りますからね?」
楓「タクシーが来るのに、ですか?」
武内P「はい」
楓「もう、ワガママを言って私を困らせて、楽しいですか?」
武内P「!? 待ってください! その発想はおかしいです!」
武内P「いえ、それは――」
楓「くしゃみ!」
武内P「? あの、今のは?」
楓「あっ、間違えちゃった」
武内P「?」
楓「はっくしょん!」
武内P「高垣さん、酔ってるんですか!?」
楓「うふふっ、最初から素直になれば良いんです」
武内P「……最初から、素直だったつもりです」
楓「あっ、タクシーが来ましたよ」
武内P「……」
楓「これで、やっと帰れますね」
武内P「……そう、ですね」
武内P「……」
楓「私が乗りこんだ瞬間、走りだすつもりでしたよね」
武内P「……」
楓「……」
武内P「いえ、そんな事はありません」
楓「はい、先に乗ってください」
武内P「……」
楓「反対側のドアから降りても、無駄ですよ」
武内P「……何故、でしょうか」
楓「私、一度やってみたかったんです」
武内P「……何をですか」
楓「前の男を追ってください、って」
武内P「……!」
楓「うふふっ♪」
楓「はい、乗ってください」
武内P「……」
楓「……!」
ぐいぐい!
武内P「乗ります。乗りますから、押し込まないでください!」
楓「よろしい」
武内P「……」
バタンッ
楓「あっ、少し寄る所が」
武内P「構いませんよ。まだ、時間も早いですし」
楓「ありがとうございます」
楓「運転手さん、この住所にお願いします」
武内P「スマートフォンに表示しておくとは、準備が良いですね」
楓「はい。台風ですし、せっかくの機会ですから」
武内P「? どこに行くつもりで――」
武内P「――近くの居酒屋の住所じゃないですか!」
楓「タイ風、ですよ」
おわり
「っ……!?」
ガン、ガンとバスの車体にまた衝撃が加えられた。
その衝撃を与えてくる影の正体は――怪人。
頭部がウサギ、と言えば可愛らしいが、
その顔は醜く、残忍な性格を隠すことなくこれでもかと表している。
「……」
プロデューサーさんが、ゆっくりと立ち上がった。
揺れる車内を悠然と歩く姿に、私達は息を飲んだ。
「新田さん」
唐突にかけられた、声。
その声はいつものように低く、落ち着いている。
私達が何かした時の方が、焦ってるんじゃないかしら。
「は、はいっ!」
思考して、返事をするのが遅れてしまった。
きっと、プロデューサーさんは大事な事を言う。
プロジェクトのリーダーとして、聞き逃す訳にはいかない事を。
「私は、此処を離れます」
「離れるって……何を言ってるんですか?」
今も、バスは高速で走り続けている。
止まったら、ウサギの怪人によって私達は終わりだ。
だから、離れるなんて、出来ないはずなのに……。
「皆さんをお願いします」
そう言うと、プロデューサーさんは上着のボタンをプチリプチリと外し、上着を翻した。
「……」
プロデューサーさんの腰元では、大きな銀色のベルトが、輝きを放っていた。
「私が、奴を倒します」
右のポケットからスマートフォンを取り出した。
ホームボタンを素早く三回押し、画面を起動。
流れるように、暗証番号を画面を見ずに打ち込んでいく。
――3――4――6!
『LIVE――』
スマートフォンから、どこかで聞いたことのある女性の声が聞こえた。
あの声は、確か……。
プロデューサーさんは、スマートフォンを銀色のベルトにかざし、
「変身ッ!」
言った。
『――START!』
プロデューサーさんの体を光が包み込んでいく。
光の粒子はやがて形を成していき、鎧を纏わせた。
鎧は黒を基調としたもので、所々白い箇所もあり、まるでスーツのよう。
すっぽりと全身を覆うその鎧の胸元では、
ピンクと、ブルーと、イエ口ーの宝石のような物が輝きを放っている。
プロデューサーさんが今、どんな顔をしているのかは、
目付きの悪いぴにゃこら太のようなフルフェイスに覆われ、見ることは出来ない。
「……」
だけど私は、確かにその向こう側に希望を見た。
「だ、だけど……相手は物凄い速さで走ってるんですよ!?」
今のプロデューサーさんは、とても強そうに見える。
けれど、あのウサギの怪人よりも早く走れるというのか。
あんな、高速で動く相手をどうやって……。
「はい。ですが――」
カツン、カツンと歩く音が車内に響く。
私達は、息を飲んで続くプロデューサーさんの言葉を待った。
「――私一人では、ありませんので」
プシュウ、と音を立ててバス前方の出入り口が開いた。
ウサギの怪人から逃げるため、景色が物凄い速さで流れていく。
プロデューサーさんは、
「ピニャコラッター!」
そう言うと、バスの車外へ躍り出た。
いくら鎧を着ているとは言え、この速さで車外に出たらただでは済まない。
そう思った私達の耳に届いた、低い、低い音声。
『ぴにゃぴっぴ』
大きな、黒い影。
その、巨大な黒い影はプロデューサーさんと地面の間に潜り込むと、
プロデューサーさんの体を乗せ、疾風のように走り出した。
『Unit debut!!』
「……」
吹き付ける風も、スーツのおかげでほとんど影響は無い。
ピニャコラッターも、今か今かと暴れる時を待っている。
エンジンのあげる唸り声が、今はとても頼もしい。
「さあ、行きましょう」
『ぴにゃー』
私が声をかけると、ピニャコラッターが返事をした。
このマシンは、ただの大型のバイクではない。
人工知能を搭載した、正に、相棒とも呼ぶべき存在だ。
「……!」
『ぴ~――……』
速度を落として左足を地面に付き、少々強引にUターン。
スーツを纏った私の脚は、彼の重量を支えきる。
それに、こんな所で倒れる訳にはいかない。
「ふっ!」
『――にゃ~!』
彼も、私も。
ターン終了と同時に、急加速。
地面についていた左足が、アスファルトに擦れ火花を上げた。
高速道路を逆走し、すぐに目標を捉えた。
「UUUUKYUUUUUUU!!」
私達は、バスに体当たりをせんとしていたウサギの怪人に、
「善処します!」
『ぴにゃっぴ!』
速度を緩めること無く、全力で突撃した。
「おおおおっ!」
『ぴにゃ~っ!』
高速で走る二つの物体の、正面衝突。
勝ったのは、
「GYUUUUUUUU!?」
私達だ。
当然の結果です。
何故なら、私達は一人ではないのだから。
「……!」
『ぴにゃっぴ!』
「GYUUUU!? GYUUUUUOO!?」
ピニャコラッターは、ウサギの怪人をその前方に乗せ、バスから引き離していく。
ウサギの怪人が暴れて脱出しようともがくが、それは叶わない。
「少し、お時間を頂けますか」
「GYUUUUU!? GYUUAAAA!?」
私の両手が、ウサギの怪人を捕らえて離さないからだ。
『ぴにゃっ!』
運転をピニャコラッターに任せ、距離を稼ぐ。
ここまで来れば、もう心配は無いだろうか。
「ピニャコラッター!」
『ぴにゃぴっぴ』
私の声を聞いたピニャコラッターは、壁を駆け登る。
私達は一塊となり、高速道路の外へと飛び出した。
一塊だった私達の影が、空中で二つに分かれる。
それは当然、私達と、ウサギの怪人にだ。
「……」
ピニャコラッターの上に立ち、彼を足場にして跳び、
「――企画!」
「GYUUUAAA!?」
『CooL!!』
ブルーの光を纏った右の脚をウサギ怪人の頭部に見舞う。
やはり、不安定な体勢で放った一撃では、あまり効果は望めない。
「――検討中です!」
「UUUKYUUAAA!?」
『Cute!!』
しかし、それでも私は追撃の手を緩める事はない。
ピンクの光を纏った拳をウサギ怪人の腹部に突き刺しつつ、地面に叩きつける。
落下の衝撃が合わさったそれでも、仕留めるには至らなかった。
「KYUUUUUUUUU!!」
「ぐおっ!?」
私の下で、ウサギ怪人が力を振り絞り、暴れた。
あの速度が出せるだけの脚だ。
その脚力は相当なもので、蹴り上げられた拍子に距離を空けられてしまう。
「――待ってください!」
しかし、ここで逃がすわけにはいかない。
ここで逃したら、いつ、またアイドル達にその牙を向けるかわからないのだから。
『Passion!!』
私に背を向けて逃走を図ろうとしたウサギ怪人の脚を
銃の形にしていた私の左手から放たれたイエ口ーの光が撃ち抜いた。
「KYUUU……KYUUUUU!!」
それでも、奴は諦めなかった。
最初の時の速さは見る影もないが、それでも、走り出す。
一瞬、このまま逃してやろうと、そんな思いに駆られた。
「……」
だが、それは出来ない。
彼は怪人で、アイドルから笑顔を……その生命を奪おうとする者。
そして私は、そんな彼女達を守る……プロデューサーなのだから。
「ピニャコラッター!」
『ぴにゃぴっぴ』
呼ぶのが遅い、と言わんばかりに、ピニャコラッターが横に走り寄る。
その背に跨り、私達は一つとなる。
怪人を――倒すために。
『Tricoloooooor!!』
ピンク、ブルー、イエ口ーの3つの光を纏った‘私’は、ウサギの怪人に突撃した。
3つの光の尾を引きながら、私はウサギの怪人を粒子にした感触を味わっていた。
『ぴにゃ~……』
そんな私に、ピニャコラッターが声をかけてくる。
彼のボディーを労るように撫でると、彼の鳴き声は止んだ。
なくのはやめろ、ピニャコラッター。
私達は、笑顔を守ったのだから。
「新田さん、ありがとうございました」
合流したプロデューサーさんが、頭を下げてきた。
それは、いつものとても丁寧なお辞儀。
だけど、その表情はなんだか……。
「いっ、いえ……」
「……」
プロデューサーさんがこんな表情をする理由が、私にはわからない。
それなのに、今は、この人を放っておいては駄目な気がする。
「こちらこそ、ありがとうございました!」
でも、こんな時にどんな顔をしたらいいかわからない。
アイドルとして、リーダーとして、一人の人間として。
こんな顔をしている人に、どんな表情を向ければ良いの?
「……」
顔を上げて、プロデューサーさんを見る。
私のそんな思いを察したのか、プロデューサーさんは右手を首筋にやって、困った顔をした。
「……新田さん」
「……」
教えてください、プロデューサーさん。
「笑顔です」
「っ!?」
思っていた事をズバリ言い当てられ、ビックリしちゃった。
「皆さんの笑顔のため、私はプロデューサーになったのです」
だから、笑っていてください。
そう言って笑ったプロデューサーさんの笑顔は、とても下手で、泣いている様に見えた。
おわり
「シンデレラガールズ」カテゴリのおすすめ
「ランダム」カテゴリのおすすめ
コメント一覧 (14)
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- 2018年10月07日 00:59
- 名護さんは最高です!!!
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- 2018年10月07日 01:06
- ガシャっていうのは、呪いと同じなんだ。
呪いを解くには、ガシャを回すしかない。
けど、途中で自引きを挫折した者は、一生呪われたまま…らしい。
…智絵里の…罪は重い…!
-
- 2018年10月07日 02:16
- 俺にはSRもSSRもない
だけどガチャを引き続けることはできる!
-
- 2018年10月07日 02:32
- 俺は必ず……ちゃまを手に入れてみせる……!
桃華は……ちゃまはなぁ!
俺の母親になってくれるかもしれない女なんだよ!
俺を救ってくれるかもしれない女なんだ!
-
- 2018年10月07日 03:16
- 人は必ず泣きながら生まれてくる。
これはどうしようもないことだが、爆死したときに泣くか笑うかは本人次第。
-
- 2018年10月07日 03:47
- …此処がネガの世界か。
-
- 2018年10月07日 13:13
- ※4
お前、(爆)死にたいんだってなぁ……?
-
- 2018年10月07日 16:23
- 頭はエグゼイド、胸がオーズ仕様。
ベルトは電王で腕や足にファイズ様なラインが入ってる。
しかも愛機はバトルホッパーを彷彿とさせる…。
やべぇ、無限に想像膨らむわ
-
- 2018年10月07日 16:27
- 夏樹「宇宙キターーーー!!」
-
- 2018年10月07日 20:19
- 都/頼子「さぁ、おまえの罪を数えろ!」
-
- 2018年10月08日 00:24
- 君は何故ユニットに拘る!
無課金として生き、担当だけを受け入れれば、爆死の運命から救われるのに!
君は爆死が怖くないのか‼︎
怖いさ...だから一生懸命引いてんだよ...!
ユニットを揃えるために...‼︎
-
- 2018年10月08日 07:05
- Form-Co: 格闘特化フォーム。右拳と左つま先が蒼い。
Form-Cu: 武器使用フォーム。右手に光剣&左手甲にビームシールド展開可。
Form-Pa: 射撃特化フォーム。2丁拳銃→連結でショットガン→アタッチメント追加でスナイパーライフル
・・・妄想が捗るな。ふぅ。
-
- 2018年10月09日 18:25
- もう※欄中ライダーまみれや
あれ?なんか一人聞き覚えがあるような?