李衣菜「I'm searching for the truth」
みく「サイコーだにゃー!!」
ワアアアアアアアアアアアアアアアアア
~ライブ後~
李衣菜「ふー、今日も楽しかったー!」
みく「今日の李衣菜ちゃん、絶好調だったにゃ」
李衣菜「みくちゃんこそ、今日の猫パンチいいキレだったよ。他のアイドルに負けてなかった」
みく「合同ライブだからね、いつもより気合入れないといけないのにゃ!」
夏樹「だりー、みく、お疲れ」
李衣菜「なつきち! 今日の私どうだった!」
夏樹「おう、最高にかっこよかったよ」
李衣菜「えへへ~、やっぱり?」
みく「いまの李衣菜ちゃんはむしろカワイイだけどね」
李衣菜「えー、みくちゃんそれ言う?」
みく「いうにゃ~」
李衣菜「ぶー……」
夏樹「まあまあ。でも、ステージでのだりーは確かにロックだったぜ」
李衣菜「なつきち!」
夏樹「あ、はい。じゃ、次はアタシの番だな。行ってくるよ、だりー、みく」
みく「がんばるにゃ!」
李衣菜「なつきちも、ロックに決めてきてよ!」
夏樹「おう!」
夏樹『よーし、今日はスペシャルなメンバーで行くぜ!』
李衣菜「あれ、今日なつきちって一人だよね」
みく「346からは一人だにゃ。なんでも『ドリームバンド』を組んだって言ってたにゃ」
李衣菜「ドリームバンド……」
伊瀬谷四季『黄昏た時の中で』
ジュリア『Should I laugh or should I cry』
夏樹『階段を登ろう 叫べ東京!!』
李衣菜「何……あれ」
みく「李衣菜ちゃん、『私もあそこに入りたい―!』とか言わないと思ったら、まさか知らなかったの?」
李衣菜「うん」
みく「今回の合同ライブの目玉、765、346、315三事務所の越境バンドだにゃ」
李衣菜「私は……」
みく「李衣菜ちゃん……ほ、ほら。李衣菜ちゃんはいつか、ゆっくりでも進んで行けばいいのにゃ! 夏樹ちゃんも「自分がロックだと思えばそれがロックだ」って言ってたし」
李衣菜「ごめんみくちゃん、私、もう出番ないし、ちょっと先帰るね」
みく「……見ていかなくて、いいの?」
李衣菜「うん。……これ以上見てたら、多分私、泣くから」
李衣菜「ロックかぁ……」
「多田さん」
李衣菜(私もやっぱりギター弾けた方がいいよね……こう、ギターソロをバシッとやれるくらいの)
「多田さーん」
李衣菜(帰り、ギタースコアとか買ってこうかな。いや、私はまず入門書……家に何冊あるんだっけ)
「多田さん!」
李衣菜「うわっと!? えっと、何?」
同級生「あの、プリント……」
李衣菜「あ、ごめん。つい考えごとしてて」
「どうする?」「進学でしょ?うちの学校だし」「私H政大」「もう決めてるの?」「俺はT大一本!」「お前浪人覚悟かよwwwwww」
李衣菜(みんな進学するんだ)
李衣菜(私は……やっぱり、アイドル一本のほうがロックだよね)
李衣菜(こう、高校出て仕事に専念! のほうが)
李衣菜(そうだ、CPの皆に相談しよっと)
~事務所~
卯月「進路、ですか?」
かな子「李衣菜ちゃんたちも貰ったんだ、希望調査」
李衣菜「うん。みんなはどうしたのかなーって」
杏「杏はそもそも貰ってすらないけどね~」
きらり「でも、杏ちゃんも将来のこと、考えないとだめだよぉ?」
杏「いずれ引退で印税生活、でいいよ」
きらり「もぉ~☆」
李衣菜「きらりちゃんはさ、進路どうするの?」
きらり「あのね。きらりは、フレデリカちゃんと同じ短大にしようかなぁって」
かな子「フレデリカさんと同じところだと、デザイン系?」
きらり「うん☆ きらり、もーっと可愛くて、にょわー! ってしたお洋服とかアクセサリーとか作りたいから、その勉強したいなーって」
卯月「きらりちゃん、将来のことしっかり考えてるんですね」
かな子「なら私は調理の専門学校にしようかな」
杏「実益を兼ねて?」
かな子「た、確かに授業で美味しいもの食べられそうだけど……いろんな料理とか栄養の資格を持っておけば、料理番組を持った時に役に立つかなって」
卯月「なるほど~」
李衣菜「卯月ちゃんは? どうしたいの?」
卯月「私ですか……今が楽しすぎて、考えたこともなかったです!」
かな子「卯月ちゃんらしいね」
杏「そのままずっとアイドル続けてそうじゃない?」
李衣菜「確かに」
きらり「で、李衣菜ちゃんはどうすゆの?」
かな子「アイドル一本?」
杏「それでいいんだ……」
卯月「が、頑張ることに変わりはないですから!」
杏「無理しなくていいよ……ていうか、周りがどうするかで決めてる時点で、それロックなの?」
きらり「杏ちゃん」
杏「別に、タダの正論だし……李衣菜ちゃんはさ、どうしたいの? 周りじゃなくて、李衣菜ちゃん」
李衣菜「私、私は……」
未央「おっはよー! 友情番長本田未央様のお通りだ!!!」
凛「おはよう。李衣菜、次美波とレッスンだよ」
李衣菜「え、あ、そうだった、ね! 今行く今行く! ごめん、答え、考えとくね!」
卯月「あ、はい!」
かな子「レッスン、頑張ってね!」
卯月「凛ちゃんも行ってらっしゃい!」
凛「うん。行ってくる」
李衣菜「将来、やっぱりロックのためにはアイドル一本、だよね」
杏『李衣菜ちゃんはさ、どうしたいの?』
李衣菜「……うん。私は、私が決めた。なつきちに並べるアイドルになるために、ロック一本アイドル一本! そのためにもやっぱりギターの練習練習!」
ピロリン
李衣菜「ん、ラ〇ン? みくちゃんから……」
みくライ〇『李衣菜ちゃん、大変!』
李衣菜〇イン『どうしたの?』
みくラ〇ン『ブーブーエスラジオにするにゃ!』
李衣菜(ブーブーエスラジオ? 確か今765のジュリアちゃんがメインでやってたような)スマホソウサ
ジュリア『ああ、この前の合同ライブが前振りってやつだな』
夏樹『いいメンバーだと思うよ、しっくり来たし』
四季『ハイパー盛り上がっていくっす!』
李衣菜(これって、この前のメンバー?)
夏樹『というわけで、3事務所の越境ロックバンド『Master Rocker』、1stシングルは再来月発売の予定だ』
四季『それ引っ提げてのミニライブもやるから、よろしくっす!』
ジュリア『というわけで、次の曲はそんなあたし達MRのメンバー全員の尊敬するバンド、フラフラの『Reスタート』だ」
李衣菜「…………なつきち?」
李衣菜「電話は……あれ、録音だから大丈夫だ」
夏樹『どうした? だりー』
李衣菜「どうしたじゃないよなつきち! ラジオ聞いたよ!!」
夏樹『ああ、驚いたろ。完全サプライズでさ』
李衣菜「……ひどいよ、なつきち」
夏樹『だりー?』
李衣菜「私が頑張って、これからロック一本で頑張ろうって思ったところで、私よりどんどん先に行っちゃって。追いつけないじゃん!」
夏樹『……ああ、そうだな』
李衣菜「……なつきち?」
夏樹『アタシに追いつきたいなら、だりー……アタシを捨てろ』
李衣菜「え?」
夏樹『アタシと一緒だと、だりー、お前はいつまでもアタシには追い付けないよ』
夏樹『悪い。もう電車乗るから、後でな? だりー』
ピッ
李衣菜「一緒だと、追いつけない?」
李衣菜(じゃあ、どうすればいいのさ)
李衣菜(なつきちに追いつくためには、ロックなアイドルになるにはどうすればいいんだろう)
李衣菜(そもそも……ロックって、なんなんだろう)
李衣菜(なつきちは『お前がロックだと思えばそれがロックだ』って言ってたし、アスタリスクが私にとってのロック……だけど)
李衣菜(それじゃ、ダメなんだ。今までのロックはもう『ロックじゃない』んだ)
李衣菜(ロックって、もともとは既存概念への反抗、だっけ)
李衣菜(……既存概念への反抗?)
夏樹『アタシと一緒だと、だりー、お前はいつまでもアタシには追い付けないよ』
李衣菜(……そう、なの?)
李衣菜「なつきちそのものが、私の既存概念になってた?」
李衣菜「なつきちに並ぶためには、私だけのロック、いや、私だけの音楽を見つけないと、ダメ?」
李衣菜「そのためには……」
飛鳥「で、なんで相談者がボクなんだ」
李衣菜「いや、CPの部屋に来て一番に会った人に話そうって決めてて」
飛鳥「蘭子と待ち合わせのつもりが、奇妙な来客、と言ったところか」
李衣菜「ダメなら他の子に聞くけど」
飛鳥「いや、いい。……ボクとしても、今の話は興味があった」
李衣菜「そう?」
飛鳥「ああ、ロックとは何か。そもそもその単語自体が既に作られた『既成概念』なのかもしれない……だから李衣菜の自分の音楽を探すことは何も間違ってはいないはずだ」
李衣菜「そう!?」
飛鳥「そんなに近づかなくてもいいだろう……とにかく。その『自分だけの音楽』に至る方法が知りたいわけだ」
李衣菜「うん、うんそうなの!」
飛鳥「……ボクにもわからない」
李衣菜「へ?」
飛鳥「そもそもボクは李衣菜より3歳年下なんだ、観測てきた世界の数がまず違うさ」
李衣菜「そ、そう言えば」
飛鳥「ただ、そのセカイへ至るためには、この場所は少し、窮屈かもしれない」
飛鳥「言ってしまえばここは今までと同じ場所。退屈な観測慣れたセカイに過ぎない。新しい自称を認識って、次の世界に至るためには、飛ぶ場所を変えることも必要だと思わないかい?」
李衣菜「飛ぶ場所を……そういうことか!」
飛鳥「何を考えたのかは知らないが、一言、加えておこう」
李衣菜「ん?」
飛鳥「ヴァスコ・ダ・ジョロキアの言葉だ『何かを得るためには何かを捨てなくてはならない』……次の世界に行くためには、李衣菜にとって何かが重石になるかもしれない」
李衣菜「……ありがと、飛鳥ちゃん!」ダダッ
飛鳥「別に、興味深い事象を聴けたからね」
蘭子「流石我が魂の友飛鳥!」
飛鳥「ら、蘭子!? いつからいたんだ」
蘭子「二重奏の始まりし時(最初からいたよ?)」
飛鳥「なら言ってほしかったよ」
~346プロ、屋上庭園~
李衣菜「……やっぱり、ここじゃダメか」
李衣菜(ここにいたら、仲間がいて、プロデューサーがいて、ファンの皆がいる)
李衣菜(みくちゃんがいる、未央ちゃんがいる、なつきちがいる)
李衣菜(だから、ダメなんだ)
李衣菜「何かを得るためには何かを捨てる。私だけの音楽を見つけるためには……覚悟を決めるために、何かを捨てないと」
李衣菜「私が、捨てるものは」
武内P「多田さん、話と言うのは」
李衣菜「プロデューサー、迷惑を承知で言うよ?」
李衣菜「アイドル活動を、無期限休止したいの」
李衣菜「ううん、違うの。ちょっと、武者修行の旅に」
P「ライブツアーのことでしょうか。であれば年内は無理でも来年をめどに」
李衣菜「それも違う。私、高校を出たら一人で旅に出る」
P「旅、ですか?」
李衣菜「うん。ギター弾けるようになって、一人でいろんなとこ回って、音楽の修行」
P「……それならアイドルを休止しなくても、むしろこの事務所の方が整った環境で」
李衣菜「それじゃダメなの!」
李衣菜「そのために、ここじゃない場所で、アイドル多田李衣菜じゃない自分でいろんな音楽を知りたい」
李衣菜「……それで、私だけの音楽を引っ提げて、ステージに立ちたい」
P「……しかし」
李衣菜「プロデューサーの気持ちもわかるよ。昔のこと、部長から聞いたし」
P「…………」
李衣菜「でも、私ももっと高くに飛びたい。アーニャちゃんや凛ちゃんがクローネで新しい挑戦をしたみたいに、誰も知らない音楽を見つけたいの」
P「……」
李衣菜「お願い! プロデューサー」
P「わかり、ました。それでは高校卒業をめどに休止をできるようスケジュールを調整しておきます」
李衣菜「プロデューサー……ありがとう」
みく「もう。李衣菜ちゃんどこにいっちゃったにゃ? もうレッスン始まるのに」
P『それでは、ユニットのほうは』
みく「ん、Pチャン?」
李衣菜『あ、そっちのほうなんだけど……』
みく「李衣菜ちゃんも?」
李衣菜『アスタリスクも、無期限休止にして欲しい』
みく「…………にゃ?」
P「前川さん?」
李衣菜「みくちゃん!?」
みく「李衣菜ちゃん……どういうこと? アスタリスクの活動休止って」
李衣菜「みくちゃん……ごめん。私、高校出たらちょっと武者修行に」
みく「じゃあ何年って決めればいいじゃん! そもそもなんで! ここじゃダメ? みくとじゃダメ?」
李衣菜「みくちゃん」
みく「ッ!」
李衣菜「私は、ここじゃあ今まで通りのことしかできないの」
李衣菜「もっと強くなりたい……多田李衣菜だけの音楽が欲しい」
李衣菜「そのために……いつになるかはわからないし、無期限ってことで」
みく「李衣菜ちゃん知らないの? アイドルの無期限活動休止の意味」
李衣菜「え?」
みく「解散、引退……そういう、ことなんだにゃ」
李衣菜「みくちゃん、ねえ、聞いて?」
みく「もういいにゃ!」
P「前川さん、多田さんの話を」
李衣菜「絶対帰って」
みく「無期限活動休止なんてはぐらかさなくていいよ」
みく「アスタリスクは今日をもって解散だにゃ! 正真正銘、未来永劫再結成なしの解散! 李衣菜ちゃんなんてどこにでも行っちゃえ!」
パン!
李衣菜「……痛っ」
みく「Pチャン、今日みくもう帰るね。ちょっとの間レッスンもお休みするにゃ」
P「前川さん」
みく「あの日なの! 女の子に言わせないで!」
バタン!
李衣菜「……嫌われ、ちゃったね」
P「多田さん」
李衣菜「覚悟が、中途半端だったのかなー。私、どっかで『ダメならここに帰ってくればいい』って思ってたのかも」
P「……帰る場所があるほうが、力を発揮できることもあるはずです」
李衣菜「そういうこともあるよね。でも、今の私はそれじゃダメみたい」
李衣菜「ごめんプロデューサー。迷惑かけるけど」
李衣菜「多田李衣菜は今日をもってアイドルを引退するよ。……私は、自分だけの音楽を見つけるために、『アイドル』を、『多田李衣菜』を捨てる」
李衣菜「うう、お腹空いた……」
李衣菜「ギターと服だけもって家出したはいいけど、お金も移動費と漫喫の泊りでなくなっちゃったし」
李衣菜「バイトしようにも17歳で家出してる女の子なんて、誰も雇ってくれないもんな……」
李衣菜「戻るのは……あんなこと言った手前無理だし」
李衣菜「でも、もう、お腹空いて死ぬ……」パタン
~~~~
「おーい、大丈夫か?生きてるか?」
李衣菜「ん、ん?」
「お、生きてた」
李衣菜「えっと、ここは?」
「ライブハウス『ハイロウサイダー』だよ」
李衣菜「あれ、私倒れて」
「おう、それで俺が助けた」
李衣菜「あ、ありがとうございます!」
グ~
李衣菜「あ……///」
「ナハハ、腹減ってんの?」
李衣菜「は、はい。何も食べてなくて」
「んじゃ、これ食いな、ソイジョイ」
李衣菜「ありがとうふぉんググッ!」
「ああ、急ぎすぎだって。ほら水」
「今時珍しいな、ギター一本で何してたんだ?」
李衣菜「えっと、ちょっと武者修行を」
「武者修行? いい馬鹿だな、気にいったよ」
李衣菜「えっと、ありがとうございます」
「どこ住んでんの? アパート? それとも漫喫?」
李衣菜「この前まで漫喫にいたんですけど、お金なくなっちゃって」
「バイトとかは?あ、音楽だけで食っていくクチ?」
李衣菜「あの、私、高校卒業前に全部放り出して家出してきちゃって……」
「おっ、スゲー、パンク役満」
李衣菜「帰るところもないし、働こうにもどこも採ってくれなくて」
「まあ、このご時世だもんな……」
「よし、その心意気に乗じて、君、うちで働かないか?」
李衣菜「え?」
「ウチのライブハウスで住み込みでどうだい? 鍵のかかる倉庫が一個あるからそこで寝起きになるし、風呂も近くの風呂屋になるけど」
李衣菜「……いいんですか? 私、まだギター弾けないけど」
「マジで? もっと気に入ったわ、とりあえず飛び出す。俺の若いころそっくり! よし決定。身分証明もなにもいらん、ここのスタッフになりな! えっと名前は……」
李衣菜「えっと、ただ……」
「タダ?」
李衣菜(……いや、もっと捨てないと)
李衣菜「ただのルリコ、苗字はないって意味で、ルリコです。るーりぃって呼んでください」
ルリコ「はい、よろしくお願いします。マーシーさん」
マーシー「早速仕事……って言っても夕方まで客もスタッフもバンド連中も来ないし、ここで前座くらいはできるようにギターの練習をするか」
ルリコ「いいんですか?」
マーシー「おう、でも……俺の指導はスパルタ式だぜ?」
~夜~
ルリコ「し、死ぬかと思った……」
ルリコ「マーシーさんバシバシ教えてくるんだもん……」
ルリコ「でも、今までの何倍もギター弾けるようになったかも」
ルリコ「……まず、一歩」
ルリコ「疲れたし、今日は寝よっと」
「……なつきち……私、やるからね」
ルリコ「灼熱の 恋のメロディ~!」
マーシー「よーし、だいぶできてきたじゃねーか」
ルリコ「ハァ、ハァ……」
マーシー「これで唄もギターも合格点。お前はもういつステージに出ても恥ずかしくないロッカーだよ、るーりぃ」
ルリコ「そう、ですか?」
マーシー「一年でここまで来られれば上々だ。パンククラシックロックUKプログレ……いろんなロックを網羅したんだぜ?」
ルリコ「そうか……私、やっとロックになれたんだ」
マーシー「ま、これからだけどな」
ルリコ「え?」
マーシー「こっからお前をただのロッカーから『本物のロッカー』に鍛える。るーりぃ、お前サックス吹けるようになれ」
ルリコ「さ、サックス?」
ルリコ「……まさか」
マーシー「ロックが退屈なオンガクから生まれたように、お前も生むんだよ……退屈な『ロック』からな」
ルリコ(……これって、チャンス、なのかな)
マーシー「まあるーりぃがこのままでいいってんならいい『やります!』……お?」
ルリコ「私だけの音楽を見つけるために、私やります!」
マーシー「こっからもっとキツくなるぜ?」
ルリコ「ジョートー!」
マーシー「オーケー。んじゃ、まずはマウスピース吹けるようになれ」
ルリコ「……う、うん」
ルリコ(……何年かかるのかな)
李衣菜(ルリコと名前を変えてからの私の音楽修業は、行き倒れたあの日から四年にわたって行われた……本当、よく家出したままやれてるよね)
李衣菜(その間に私も成人したし、テレビの向こうで皆はどんどん実力をつけていた)
李衣菜(みくちゃんもソロだったり新しいユニットだったりで活躍してる)
李衣菜(なつきちの越境ユニットは期間限定だったけど、その後も順調に個人の人気を高めたなつきちは、五大ドームツアーも成功させた)
李衣菜(私? 私李衣菜、いやルリコはというと……)
~~~♪
イイゾールーリィ!オウエンスルヨ!
ルリコ「皆ありがとう! じゃ、今日のメイン『ワザモノクリムガン』もよろしくぅ!」
マーシー「るーりぃ、お疲れ」
ルリコ「私も結構やるようになったでしょ」
マーシー「おう、お前もかなり人気出てきたもんな。メインでここ満員行けるくらいだし」
ルリコ「そう?」
マーシー「ああ……でももったいないな、ここまでくると」
ルリコ「へ?」
マーシー「持ち歌があればお前、ルックスもいいし歌もうまいからメジャーも夢じゃないってのに。その外見があれば売れるぜ」
ルリコ「そ、そう?」
李衣菜(私がアイドルだったってこと、ばれてないよね……ステージに上がっても大丈夫なように髪染めてカラコンまでいれたのに)
マーシー「……そういえば、お前だけ音楽、見つかったか?」
ルリコ「私だけの、音楽」
マーシー「何度も言ってたし、ほぼ全ジャンルの音楽は網羅したぜ?」
ルリコ「……マーシー」
マーシー「どうした」
ルリコ「あのね、ステージでギター思いっきり弾いて歌ってると、胸の中で何かがざわってするんだ」
マーシー「ほう」
ルリコ「もっと歌え! もっと叫べ! 私はルーリィだ! って」
マーシー「ならそれが、お前の音楽じゃねえの」
マーシー「音楽ってのは魂の叫びだ。UKだのプログレだのクラシックだのかっこつけても、結局は同じ。自分の胸の中をぶちまければそれが音楽」
マーシー「…………」
ルリコ「あ、あれ? 違った?」
マーシー「いや、何も間違ってねえよ……るーりぃ、お前、合格だ。自分なりの答え、出たじゃねえか」
ルリコ「あ、あ、うわああああほんとだああああああああ!!!!!」
マーシー「今気づいたのかよ」
ルリコ「やっと見つかったんだ! 私だけの音楽! やっと、並んで立てる!」
マーシー「並び立つ?そりゃねえよ」
ルリコ「?」
マーシー「その答えに立ったお前はもうオンリーワンだ。ナンバーワンでオンリーワンだ……ここはもう大丈夫だな、るーりぃ」
マーシー「もういるべき場所に戻れ、お前は十分すぎるミュージシャンだ」
ルリコ「マーシー……うん。今までありがとう!もう、よし、明日いや今日東京に戻る! 今から新幹線乗る!」
マーシー「おう。期待してるぜ。お前がいる場所はもっと輝くステージの上、だからな……頑張れよ、李衣菜」
ルリコ「行ってくるねマーシー! ……ん? 今李衣菜って」
マーシー「なんのことだか」
夏樹「……」
P「木村さん」
夏樹「プロデューサー?」
P「何か、考え事をしているようだったので」
夏樹「いやさ、今日でだりーがいなくなって四年なんだ」
P「そういえば、そうですね」
夏樹「アンタも大変だったよな、色々後始末に追われて。親御さんにも頭下げまくってさ」
P「彼女は、私の担当アイドルですから」
夏樹「みくのケアもして」
P「あれは、私が招いたことでもあります」
夏樹「……だりー、今どこで何してんだろうな」
P「きっと、星を見つけているはずです」
夏樹「星はどこでも輝ける、だっけか?」
P「はい」
夏樹「だな」
ガタッ!
スタッフ「美城さん大変です!!」
スタッフ「今前川さんの出番だったんですが、彼女を押しのけてステージに乱入してきた人が」
夏樹「おいおい、またロックだな」
スタッフ「青い髪でヘッドホンをつけて、ギターを持った女性で……」
夏樹「ん?」
P「……まさか」
李衣菜『いえーーーーーーーーーーーーーい!!』
みく「……李衣菜ちゃん?」
李衣菜『通りすがりのミュージシャン、歌います! 曲は……『Twiligt Sky』』
夏樹「……やっぱりだりーだ」
P「……多田さん」
~~♪
李衣菜『どこまでも広がるグラデュエーション ゆっくりとオレンジが燃える』
夏樹「ギターの弾き語りとか、あいつ、四年でしっかり成長してるじゃねーか。……アタシの手を離れて本物のロッカーになってる」
李衣菜『心を追いかけてく~』
スタッフ「すぐやめさ」
みく「このままでお願いします!」
スタッフ「前川さん?」
みく「このままで……この曲だけはお願いします!」
P「私からも、お願いします」
夏樹「だりー……この四年でお前は何を見てきたんだ」
李衣菜『鍵かけた放課後グラデュエーション いつまでも続くと信じてた』
~~♪
みく「李衣菜ちゃん、ギター」
P「これは……」
夏樹「おいおい、アタシより上手いじゃねーか」
李衣菜『これが、私の音楽。私の原点……ロックじゃない、私だけの『リーナイズム』だ!!
上手く歌うんじゃなくて 心を込めて歌うよ 世界でたった一つの 君に伝わりますように』
李衣菜『一度きりの旅だから 自分だけの旅だから 好きなもの集めるんだ 間違ったっていいんだ
忘れないこの気持ちも 忘れないこの痛みも! ねえ感じていたいんです』
李衣菜『連なって輝く 止めてもあふれる』
李衣菜『I love You! Becouse you are you!!!』
李衣菜『ありがとー! じゃあ、お邪魔しましたー!』
ワアアアアアアアアアアアア!!!
李衣菜「ふう……」
みく「李衣菜ちゃん」
李衣菜「みくちゃん」
ダキッ!
みく「李衣菜ちゃん遅すぎにゃ!」
李衣菜「いや、遅いも何も……」
夏樹「だりー、おかえり」
李衣菜「なつきち! どうだった?」
夏樹「ああ、アタシを超えたよ……えっと、リーナイズム?だっけ」
李衣菜「うん。ロックじゃない、私だけの音楽って思ったら、結局ここに戻ってきちゃった」
夏樹「でも、違う。だろ?」
李衣菜「そう。私が今まで集めてきたもの全部が詰まった歌。……一度ここを離れたから見つけられたモノ」
李衣菜「プロデューサーには迷惑かけちゃったけどね。今回も」
P「いえ……あなたの輝く姿を、また見られた、それだけで十分です」
李衣菜「へへっ、ならいいかな。あ、後でえらい人に謝る時一緒に行くよ」
李衣菜「だよねー」
P「それとは別に、多田さん……」
李衣菜「ん?」
P「今一度……アイドルの世界に、興味はありませんか?」
李衣菜「いいね、コレ引っ提げてまたアイドルやるのも、面白いし!」
李衣菜「プロデューサー、これからもリーナイズムで歌うリーナをよろしく!!」
深夜のノリで書いたらもう朝だね。TrySailの事前物販買い物してから寝るよ。誰かがまとめてくれたらそれはそれでとてもうれしいなって
え、この時間は誰も読まない?
(*>△<)<ナーンナーンっ
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李衣菜「I'm sarching for the truth」
http://ex14.vip2ch.com/test/read.cgi/news4ssnip/1480626274/
李衣菜「I'm sarching for the truth」
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- 杏子「さやかー、散歩の時間だぞ」さやか「あんあん!」
コメント一覧 (17)
-
- 2016年12月02日 14:17
- 急に李衣菜の足が伸びてびっくりした
-
- 2016年12月02日 15:04
- ゴーカイジャーを観ていた飛鳥ちゃんかわいい
-
- 2016年12月02日 16:22
- 悪役の名言をドヤ顔で使う飛鳥ちゃん可愛い。こいつ李衣菜Pに見せかけた飛鳥Pだろ俺の占いは当たるんだ
-
- 2016年12月02日 16:56
- 李衣菜はなんだかんだ進路キッチリ決めてそう
-
- 2016年12月02日 18:28
- 未央出さなくてよかっただろ
まぁ読んでないんだけどね
-
- 2016年12月02日 18:50
- 色々驚かされたSSだった・・・見事冒険を乗り越えた作者とりーなに拍手!
-
- 2016年12月02日 18:52
- ※5
暇なんだな
-
- 2016年12月02日 20:45
- このだりー
スゲー美脚そう
-
- 2016年12月02日 22:56
- なんか胸が千早になってニコニコでゲーム動画放送してそうな偽名だな
-
- 2016年12月02日 22:59
- 李衣菜のいい意味での無軌道さがいっぱい詰まったロックなSSだった。
アニメとかじゃ育ちの良さの方が目立ったけど、何かきっかけがあればすぐにこういう風に転じそうなのも李衣菜だよなぁ。
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- 2016年12月03日 01:11
- 青木が青木に唆されて家出してる
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- 2016年12月03日 07:28
- マーシー出すならヒロトも出せよぉ!
って思ったけどヒロトのあの性格をssでどう再現できるのか考えてみたら出さなくて正解だったか
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- 2016年12月03日 10:29
- りーなデカくなったな
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- 2016年12月03日 12:14
- 欲しいものは全てこの手で掴み取る。
それが海ぞk…ロックってもんだろ!
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- 2016年12月03日 18:55
- わりと好き
あとマーシーの元ネタ分かんない誰か教えて
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- 2016年12月04日 00:08
- ※15
多分真島昌利。ライブハウスの名前もハイロウズ+サイダー(クロマニヨンズ)だし。
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- 2016年12月04日 01:34
- >>飛鳥「ヴァスコ・ダ・ジョロキアの言葉だ『何かを得るためには何かを捨てなくてはならない』……次の世界に行くためには、李衣菜にとって何かが重石になるかもしれない」
遠い地に旅立つ人に送る言葉としては最高に嬉しいプレゼントだね。
夢を叶えるために家族のいる故郷から旅立った自分には胸に響く言葉だわ。