神崎蘭子「魔月学園殺人事件」【堕天使探偵・第三幕】
これまでの事件↓
第一幕・悪魔館殺人事件
第二幕・魔神島殺人事件
※神崎蘭子が主演のドラマという設定なので、当たり前のようにキャラ崩壊
※グロテスク表現、猟奇殺人要素有り
※今回に限り事件関係者全員がCGアイドルです。
※名前は思いっきりそのまんまですが、一応彼女たちは仮名で出演しているという設定です。
※また、これまでと同じく容疑者達は全員苗字表記で進行しますので…
例:奏「○○」→速水「○○」となります。
※このSSを読むときは、部屋を明るくして、できるだけ離れて観てね!!探偵ランとのお約束だよ!!
プロローグ
ねぇ、知ってる? 桜の木の下には 女の子が眠ってるんだって
知ってるも何も 有名じゃん それ 他校の子だって知ってる話よ
ま、ここまではね
ここまでは?
七不思議の七番目『桜の木の下の眠り姫』には続きがあるの
へぇ どんなの?
眠り姫ってさ どうやったら起きると思う?
うーん…?
眠ってるってことしか皆知らないでしょ 実はね 眠り姫は 七不思議の守り神なの
?
ホントはずっと安らかに眠っていたいらしいんだけどね 七不思議の謎を暴こうとする人がいろいろ騒ぐと起きちゃうの
…起きたら何するの?
殺すの
えっ?
七不思議の謎を暴こうとした人を 全員殺しちゃうんだよ
1日目 朝 D県 聖月学園 1F 東校舎 中等部教室内
ワイワイ…ガヤガヤ…
クラリス「みなさん…お静かに…」
クラリス「本日は、みんなの新しい友人を紹介します」
クラリス「さ、入ってください」
ガラッ
ラン(神崎蘭子:以下、ラン)「…」
わぁ… 銀髪… 赤い目… なんか怖い…
ラン「…」
クラリス「さぁ、自己紹介をお願いします…」
ラン「真紅の羽根を持つ我が名は、堕天使、ラン(赤羽根 ランといいます)」
ラン「瞬くが如きの付き合いになろうが、宜しく頼む(短い間だと思いますが、よろしくお願いします)」
…
クラリス「彼女は、皆と同じ、天神様に仕えるシスターとしてこの学校に転校してきました」
クラリス「これも天神様の思し召し…みなさん、どうかランちゃんと仲良くしてあげてください」
ラン「…」
数日前 夜 D県 赤羽根のアパート 居間
ラン「がっこー?」ぐてー
赤羽根(赤羽根P:以下、赤羽根)「ここの大家さんにさ、怒られたんだよ…」
ラン「なにゆえ?」ごろんごろん
赤羽根「考えてもみろ…お前の外見は、どっからどーみても子供だ」
赤羽根「確実にどこかの学校に通ってなきゃおかしい見た目なんだ」
ラン「…」
赤羽根「だけど、俺が仕事に言ってる間、お前はどうしてる?」
ラン「どうって…」
赤羽根「平日の真っ昼間にだって、図書館で本読んだり、コンビニにプリン買いに行ったりしてブラついてるだろ」
赤羽根「加えてお前の、思いっきりゴシック系に銀髪な見た目…完全に不良少女だと思われてんだ」
ラン「し、心外なっ!(不良なんかじゃありませんよっ!)」
赤羽根「現にそう思われてんの!」
赤羽根「んで、保護者である俺がちゃんと面倒見ろって怒られたの!」
ラン「むー…」
赤羽根「そーいうわけで、来週から聖月学園ってとこに転校生としてお前を入学させるように頼んどいたから」
ラン「聖月学園…」
赤羽根「名前で分かる通りミッション系の学園だ。普通の学校よりは楽だろ?」
ラン「…」
赤羽根「どうした?なんか文句あっか?」
ラン「甘美な果実が私を待っている?(そこって毎日給食にプリンありますか?)」
赤羽根「何処さがしてもねーよそんな学校!!弁当は持ち込みだ!!」
1日目 放課後 D県 聖月学園 東校舎 1F 中等部教室内
ねえねえ!ランちゃん!その髪、地毛?
ラン「え?…えっと、その…」
かっこいー!ハーフなんだよねっ!?
ラン「…そ、そのぅ…」
フランス人?もしかして、ロシアかなっ?
ラン「あう…」
ラン(ど…どうごまかせばいいのっ!?)
ワーキャーワーキャー…
ラン「フッ…」ガタ…
?
ラン「禁忌の刻が訪れんっ!!」
ぴゅー…
…行っちゃった
??「…」
1日目 放課後 聖月学園 教会 礼拝堂
ラン「…」げっそり
ラン(こ、ここなら追ってこないかな…)
ラン「はぁ…」
ラン(疲れたー…根掘り葉掘り聞かれまくったー…一生分嘘をついた気がする…)
ラン(最初は結構楽しいかもって思ったけど…早くも心が折れてきたぁ…)
コツ…
ラン(教会の中…すごい豪華…巨大な十字架が吊るされてる…)
ラン「あ…」
兵藤(兵藤レナ)「…」
ラン(十字架の下で、誰か祈ってる…)
兵藤「あら?貴女は…転校生の…」
ラン「どうも…」
兵藤「熱心な信者なのね…転校早々、自主的に祈りに来るなんて」
兵藤「ウチの学園は戒律緩いから、聖書読んでる時に居眠りする生徒が多くて多くて…」
ラン(信者も何も娘だけれど…)
ラン「優れた規律で楽園が作れるのならば苦労は無い(戒律で学校の質が決まるわけではありませんよ)」
ラン「師事に値する先駆の徒こそが最高の財産だと私は思う(日々の感謝の祈りを忘れない教師がいてこそ、いい学校ができるんです)」
兵藤「ふふ…買い被りよ、私は感謝の為に祈ってたんじゃないわ」
兵藤「どちらかというと…贖罪…かしら」
ラン「…?」
1日目 放課後 聖月学園 教会前
バタン
ラン「贖罪…ふむ…?」
??「…見つけたワ」
ラン「えっ?」
??「確保おおおおおっ!!」ドドドドド
ラン「ひっ!?」
ガシィッ!!
ラン「ほぇええっ!?」
??「捕まえた!このまま連行するわヨー!!」ドタドタ
??「はいはーいっ!」バタバタ
ラン(何!?何!?怖い!!学校って怖い!!)
1日目 放課後 聖月学園 東校舎 ミス研部室
ラン「こ、拘束を解かねば…タダでは済まんぞっ(あの…なんで私、縛られてるんですか…?)」
黒髪「…この子が例の?」
金髪「そうヨ!アタシの黒魔術が的中したのヨ!」
金髪「三日月の夜が明けた時、二つのシッポを持った銀色のオオカミがアタシ達の味方になってくれるノ!」
金髪「きっと彼女の事を指しているに違いないワ!」
小柄「ぎ、銀の…お、オオカミ…?」
茶髪「一応連れて来たけど…ちょっと半信半疑だなぁ…」
黒髪「そもそも昨日は半月だったのだけれど…」
金髪「細かいコトは気にしないノ!」
黒髪「ふぅん…貴女が…ねぇ」
ラン「あ、あのっ!!」
一同「?」
ラン「ぶ、無礼であるぞっ…真名を名乗れぇ!(あ、あなたち一体誰なんですか?)」
1日目 放課後 聖月学園 東校舎 ミス研部室
黒髪「あ、そうだったわね…ごめんなさい」
黒髪「私達、ここでミステリー研究部っていう…まあ、色々な調査活動をやってるの」
ラン「み、みすてり…?」
速水(速水 奏)「私は部長の速水 奏。この学園の高等部。よろしく」
五十嵐(五十嵐 響子)「私は中等部の五十嵐 響子!一応美術部なんだけど、ミス研も掛け持ちしてるの!」
五十嵐「よろしくね!ランちゃん!」
白坂(白坂 小梅)「わ、私…同じ中等部…し、白坂…小梅…よ、よろしく…お願いし、します…」
コクラン(メアリー・コクラン)「アタシ、同じく中等部!メアリー・コクラン!アメリカからの飛び級なノ!」
コクラン「アナタがこの学園に来ることは、アタシがまるっとお見通しだったのヨ!」
コクラン「さあ!おとなしくアタシたちの仲間になりなさーイ!」
ラン「は…はい?…あの、その…」
??「ほら!部室に入りますよ!」
??「あのさあ、アタシはもう奏に今日抜けるって言ってあるんだけど」
??「私は全員集めてって言われたんですっ…!」
??「もー…じゃあちょっと顔見せたら直ぐ帰るからね」
ラン「??」
??「あれ?新入部員?」
??「もしかして、中等部で噂になってる転校生じゃないですか!?」
速水「そ。メアリーが引っ張ってきたのよ…いつぞやの占い関係でね」
コクラン「黒魔術ヨ!」
速水「菜々、有難う。これでメンバーは全員揃ったわね」
安部(安部 菜々)「私、高等部の安部 菜々!園芸部もやってるのであんまり顔出せないかもだけど、よろしくおねがいしますー!」
ラン「ど…どうも…」
ラン(さっきからずっと、入部する前提の言い方をされてるー!?)
城ヶ崎(城ヶ崎 美嘉)「…城ヶ崎 美嘉…高等部だけど、アタシは別にオカルトに興味があって入ったわけじゃないし」
城ヶ崎「部活動出席の内申目当てで居るだけだし、部活とか関係なくほとんど顔出すつもりもないから」
城ヶ崎「アタシの事は別に覚えなくてもいいよ」
ラン「…」
速水「それは困るわねぇ」
城ヶ崎「なんでさ?毎日部室で小説読んでるか占ってるかショボいことしかしてないじゃん」
速水「これまではね…でも、今日からは違うの」
城ヶ崎「え?」
速水「メアリーが、銀色のオオカミと解釈した子を連れてきた…これが何を意味するか分かるでしょ?」
速水「ついにあの件を、気兼ねなく調査することが出来るの」
城ヶ崎「それって…」
ラン「…?」
速水「聖月学園 七不思議の真相をね…!」
ラン(七不思議??)
城ヶ崎「え、あの話、冗談じゃなくて本気だったの?ちょっと、ヤバいって…」
城ヶ崎「一年前の一ノ瀬先輩のこと忘れたの?まだ行方不明のままなんだよ?」
城ヶ崎「もう一度七不思議を嗅ぎまわったら最後、今度こそアタシ達まで『眠り姫』に殺されちゃうかもしれない」
安部「そんなことあるわけないですってー」
城ヶ崎「菜々は未だこの学園に来てなかったから言えるんだよ…あのとき学園中大騒ぎになったんだから」
ラン(眠り姫…?)
コクラン「確かに、アタシの黒魔術だと、全員返り討ちになってしまうという予言だったワ…」
コクラン「デモ、三日前に示されたアタシの新しい黒魔術によれば…銀色のオオカミを仲間にすることで…」
コクラン「必ず七不思議の秘密を解き明かすことが出来るという兆候が表れてるノ!」
城ヶ崎「それがこの子だってーの?」
コクラン「そうなノ!」フンス
城ヶ崎「うさんくさー…」
ラン「…えっと…?」
速水「とにかく、ランちゃんを仲間に引き入れて、七不思議を調査することは部長命令。決定事項よ」
がしっ
ラン「!?」びくっ
速水「というわけでランちゃん、貴女も、私達に力を貸してほしいの…」
速水「メアリーの占い、よく当たるのよ。だから…貴女なら…きっと私達の心強い味方になってくれる…私はそう信じてる…」
コクラン「だ・か・ら!占いじゃないワ!黒魔術よ!」
速水「お願い…」
ラン「…」
ラン「興が乗らん(いきなりはちょっと…)」
速水「…」じっ…
ラン「…」
速水「そう…残念ね…」
ラン「…では、私はこれにて」
速水「メアリー、黒魔術の予言には続きがあったわよね?」
ラン「…」すたすた
コクラン「シッポがふたつの銀色のオオカミは、黄色くて、まん丸の満月が大好物なのヨ」
コクラン「大好き過ぎて、真っ黒な月の裏側まで食べちゃうそうなの」
コクラン「最初は何のコトか分からなかったケド…」
ラン「…」ピク
速水「私なりに推理してみたの…それが何なのか…そして気付いたの」
速水「まん丸で黄色い…そして、裏には黒いカラメルのある食べ物…そう…プリン…」
ラン「…」ピクピクッ
速水「カスタードプリン…焼きプリン…卵の殻に固められた風変わりなプリンまで種類は様々」
速水「それらを大、量、に!買って来てあるのだけれど…どうしようかしら…こんな数、私達だけじゃ食べきれないわねぇ…」
ラン「…」ふらふら
速水(揺れてる…)
安部(早くもなびきそうですね)
城ヶ崎(わかりやすすぎる)
速水「さぁ、新しい仲間も加わったということで、本日のミーティングを始めましょうか」ニコニコ
コクラン「オー!」
ラン「お、おー…」
速水「今日は新入部員であるランちゃんにミス研について詳しく教えてあげましょう」
速水「ミステリー研究部、通称ミス研は、いろんな場所で起こっている様々な怪奇現象の調査をしているの」
速水「具体的には…響子、最近の活動記録を」
五十嵐「あ、はいっ」
五十嵐「えっと…一番最近解決したのは…老舗旅館のポルターガイスト事件ですね」
五十嵐「旧館を改築してから、毎晩同じ時間に館が揺れるようになって、話題になった旅館を調査しました」
五十嵐「結果、改築により固有振動数が変わって、毎晩決まった時間に排水をする周辺工場の下水管と共振していたことが分かりました」
ラン「ほう…!」
五十嵐「といっても…一ノ瀬先輩が全部…その…」
ラン「一ノ瀬…さっきも話に上がってはいたが…」
速水「去年まで部長を務めていた人よ。一ノ瀬志希先輩は、ズバ抜けて博識で、類稀なる推理力の持ち主だったわ」
速水「でも、ある謎を調査している最中に行方をくらませてしまったの。その謎こそが…」
ラン「学園七不思議…」
速水「そ。この学園でまことしやかに囁かれている七つの怪談よ」
速水「七不思議は、とある厄介な存在によって、これまで誰も謎を解こうとしなかった不可侵領域だった」
ラン「厄介な存在…?」
城ヶ崎「眠り姫が目覚めちゃうって話」
ラン「…彼奴は何者だ?(さっきも聞きましたけど、その眠り姫って…)」
安部「聖月学園七不思議の七番目…『桜の木の下の眠り姫』の事です」
安部「彼女は西校舎側のぽつんと立っている桜の木の下で眠っているらしいんですけど…」
安部「七不思議の番人と言われていて、秘密を探る人間に反応して、殺してしまうんです」
安部「だから、みんな怖がって、誰も謎を解こうとはしなかったんですけど…」
速水「一ノ瀬先輩がこの謎に挑み、そして失踪した…」
速水「失踪するまでの調査内容は、去年の会報に書かれているわ」
城ヶ崎「ま、ざっくばらんな話が、七不思議を生徒から聞き出して一個ずつ確認してっただけなんだけどね」
速水「七つ全部を知ってる人は殆どいなくて、苦労したのを覚えてる…逆に、やたらと知名度のある怪談があったり」
速水「で、一つ二つと検証を始めた矢先に…」
ラン「消されたのか…(行方不明になってしまった…)」
速水「失踪して、もうすぐ一年になる…」
速水「美嘉もさっき言ってたけど、当時は眠り姫の仕業なんだって、学園中の噂になったの」
速水「調査が危険であることには変わりない…でも、私は一ノ瀬先輩の意思を継ぎたいと思ってる」
ラン「…」
ラン「いざ、封を解放せん(七不思議って…どんな内容なんですか?)」
速水「そうね…丁度いい機会だから、現地に行きながら詳しく解説しましょうか」
速水「今日の活動は、まず七不思議についての情報をメンバー間で共有することから始めましょう」
1日目 放課後 聖月学園 西校舎前
ラン「…」
速水「七不思議の一番目の舞台はここ…西校舎」
速水「幽霊が彷徨っていると言われている」
1「西校舎を彷徨う幽霊」
東校舎の教室から、西校舎を歩いている人影が見えるが、実際に行ってみると姿は見えない
だが代わりに、真っ白な足跡が、壁や床に大量についていた
ラン「…」
安部「鍵、借りてきましたーっ!」タタタ…
速水「生徒数の関係で、もうこの校舎は使われていないの」
速水「だから普段は施錠されてるんだけど…」ガチャガチャ…カチ
速水「職員室の先生に頼めば鍵を貸してくれるから、一応誰でも入れるわ」
城ヶ崎「文化祭の時に控室に使うこともあるしねー」
城ヶ崎「てかそのくらいしか西校舎に入る用事は無いんだけど」
ギィ…
速水「西校舎は二階建てで、教室と準備室…それに物置だけね」
速水「当の幽霊は足跡を付けるだけで危害を加えることは無いらしいけど…」
白坂「じ…地縛霊って、せ、説があるの…」
白坂「誰かに、こ…殺され、し、縛られて、き…西校舎から…出られ、ない…」
速水「昔ここは病院だったらしくて、それを改築したのが今の学園…」
速水「だから、かつて患者だった幽霊が化けて出ても不思議じゃない…のかもね」
ラン「ふむ…」
1日目 放課後 聖月学園 教会 礼拝堂
速水「毎日祈りを捧げる礼拝堂にも、二つ目の七不思議があるわ」
2「血に染まる十字架」
礼拝堂に吊るされた巨大な十字架が、礼拝堂の掃除をしていた生徒の上に落下し、串刺しにされる
十字架は、生徒の血で真っ赤に染まっていた
ラン「…」
安部「もしあの巨大な十字架が落ちて来たらって考えると…すごく怖いですね…」
速水「実際にあの十字架は落ちてきたのよ?」
安部「えっ!?」
コクラン「そうなノ!?」
城ヶ崎「それ、アタシも初耳」
速水「今から9年も前の事件だから、知らないのも当然よ…ましてや、菜々とメアリーもこの学園に転校してきて一年経ってないんだし」
速水「幸い無人だったから怪我人は居なかったらしいけど…原因は十字架を吊るしてたロープの老朽化だったらしくて、事件はそれっきり」
速水「現在はこまめに点検してるから、落ちる心配は無いわ」
ラン「…少し、解せんな(おかしくないですか?)」
速水「え?」
ラン「神の鉄槌にしては綺麗すぎる(あんな高い所から地面に激突したにしては、あの十字架…傷もへこみも無いみたいですけど)」
ラン「裁きの話はすべて真実なの?(本当にあの十字架が落ちたんですか?)」
安部「そういえば…」
速水「御明察…落下事件のあと、十字架は新しいものに交換したの」
速水「一度落ちてきた十字架をもう一度吊るすっていうのも縁起が悪いから、当然よね」
速水「ちなみに実際に落ちてきた方を見たいなら、外に出て正面扉の真上を見ると良いわ」
速水「勿体無いからってことで、この教会の入口屋根の上に飾ってあるから」
コクラン「あ、あのでっかいノ…」
1日目 放課後 聖月学園 東校舎 1F 地下室への扉前
速水「これが、地下室に通じてると言われてる扉よ」
速水「病院だった時の名残ね。でも、ここには誰も入れないの」
ラン「…」
3「開かずの地下室」
地下室に通じるといわれる扉は誰も開けることが出来ない
扉の先には怪物を閉じ込めた研究室があるといわれる
城ヶ崎「鉄扉には鍵がかかってて、誰もこれを開ける鍵を持っていない…って話」
速水「校舎として改築した時も開けられないまま手つかずだったそうよ」
速水「出入口はここしかないから、もし怪談通りの怪物がいるとしたらとっくに骨になってるでしょうけどね」
ガチッ…
ラン「…」
1日目 放課後 聖月学園 自転車置き場付近
速水「ここに、排水溝があるのだけれど、これが四つ目の不思議」
4「地獄からの叫び声」
二つの自転車置き場の間にある排水溝から声が聞こえてくる
それは地獄の住人の声であり、聴いたものは七日後に地獄に引きずり込まれ食べられてしまう
七日後までに一日一回、十字を切りながら身代わりとして食べ物を排水溝に落とすと、見逃してもらえるという
速水「七不思議の中でこの怪談の正体だけは、簡単に判明したの」
ラン「正体?」
コクラン「そういえばアタシ、やったことないわ、コレ!」
ラン「…」
コクラン「こうして、地面の鉄格子に耳を近づけていればいいんでショ?」
…ォ
コクラン「エ…?」
…ォォォオオオ
コクラン「ひ、ひょええええええっ!?」
ラン「!?」
コクラン「き、聞こえた!?聞こえちゃったワ!?」
コクラン「じ、地獄に引きずりこまれてしまうワ!?」アワワ…
コクラン「ひ、ひ、ひ」ゴソゴソ
コクラン「こ、これしか…ないケド…」
コクラン「あ、飴チャンで申し訳ないけれド、見逃してくださいナ!!」シュ、シュッ、ポイッ…
ラン「…」
コクラン「あ、あ、アーメン、ハレルヤ、ナンマイダー…」
ラン「…シルフの戯れか(…これ、風きり音では?)」
コクラン「へ?」
速水「そういうこと」
速水「よくよく聞いてみると、唸り声に聞こえるこの音は、風の通る音…誰かが聞き違っちゃったのね」
速水「ここは登下校時に生徒が必ず近づくから、音を聞いて叫び声だと誤解する生徒が後を絶たなかった…って寸法」
速水「今でもちょくちょく食べ物を落としていく生徒がいるわね」
ラン「ふむ…」
コクラン「び、びっくりして損したワ!!」
コクラン「…でも、みんながそんなにたくさん落としちゃって…詰まったりしないのカシラ?」
速水「音に変化は無いみたいだから、排水と一緒に流されてるんだと思うけど」
1日目 放課後 聖月学園 東校舎 1F 廊下
速水「この不思議に関しては、場所らしい場所は決まってないわ」
5「顔の無い女子生徒」
夜の廊下を歩いていると、誰かに呼び止められるが、誰の声なのか分からない
振り向くと声の主は、血まみれの、顔の無い女子生徒であった
五十嵐「振り向いたらそこには…って、定番ですけど恐いですね…」
速水「夜中に学校に行かないように教師が流した噂がだんだん怪談になった…って先輩は分析してた」
ラン「…」
1日目 放課後 聖月学園 東校舎 3F 図書室
6「図書室の赤色の本」
図書室の本を借りて自宅で読んでみると、1ページだけ真っ赤なページが見つかる
これは、本に吸われた自分の血の色で、直ぐに返しに行かないとすべてのページが血に染まり
本を借りた生徒は失血死してしまう
ラン「…」
速水「先輩は、全ての図書を確認したけど、見つけたのは指を切って付いた血痕ぐらいで、真っ赤なページは見つからなかったみたいね」
ラン「すごい執念だ…」
速水「先輩は細かい所でも、気になることはとことん追及する人だったから…」
速水「他校にも似たような怪談があったから、もしかしたらそこから伝わったのかもね」
1日目 放課後 聖月学園 西校舎横 桜の木
ラン「…」
速水「最後に、ここが…問題の眠り姫の桜」
7「桜の木の下の眠り姫」
西校舎側の校庭の桜の木の下には女の子が眠っている
七不思議の秘密を解き明かそうとする生徒がいると、目を覚まし、その人間を殺しに来る
速水「私達が対決することになる相手…というわけね…」
ラン「…」
五十嵐「七不思議の謎って…一体何なんだろう…?」
白坂「ぽ、ポピュラーな…例でいう、と、七つ全てを…し、知ってたり…」
白坂「か…隠された、八つ…め、目の、怪談を知ると、み、身に危険が迫るとか…そんなの、だけど…」
速水「危害を加える対象が既に怪談の一つに組み込まれているという点も、ほかの学校の怪談と比べて珍しいところなの」
速水「そこに何かが隠されていたりするのかも…」
ラン「むぅ…」
聖月学園七不思議
1・「西校舎を彷徨う幽霊」
東校舎の教室から、西校舎を歩いている人影が見えるが、実際に行ってみると姿は見えない
だが代わりに、真っ白な足跡が、壁や床に大量についていた
2・「血に染まる十字架」
礼拝堂に吊るされた巨大な十字架が、掃除をしていた生徒の上に落ちて来たことがある
十字架は、生徒の血で真っ赤に染まっていた
3・「開かずの地下室」
地下室に通じるといわれる扉は誰も開けることが出来ない
扉の先には怪物を閉じ込めた研究室があるといわれる
4・「地獄からの叫び声」
二つの自転車置き場の間にある排水溝から声が聞こえてくる
それは地獄の住人の声であり、聴いたものは七日後に地獄に引きずり込まれ食べられてしまう
七日後までに一日一回、十字を切りながら身代わりの食べ物を排水溝に落とすと、見逃してもらえるという
5・「顔の無い女子生徒」
夜の廊下を歩いていると、誰かに呼び止められるが、誰の声なのか分からない
振り向くと声の主は、血まみれの、顔の無い女子生徒であった
6・「図書室の赤色の本」
図書室の本を借りて自宅で読んでみると、1ページだけ真っ赤なページが見つかる
これは、本に吸われた自分の血の色で、直ぐに返しに行かないとすべてのページが血に染まり
本を借りた生徒は失血死してしまう
7・「桜の木の下の眠り姫」
西校舎側の校庭の桜の木の下には女の子が眠っている
七不思議の秘密を解き明かそうとする生徒がいると、目を覚まし、その人間を殺しに来る
??「速水、まさか本気で調査する気なの?」
速水「兵藤先生…」
兵藤「ミス研の顧問としては…激励すべきなんでしょうけど…」
兵藤「また一年前みたいになってしまうかもしれないと思うと…引き止めないわけにはいかないわね」
速水「私なら大丈夫ですよ、兵藤先生」
兵藤「一ノ瀬も同じ台詞を言って失踪したんだから…!」
速水「誰に言われようと、考えを変えるつもりはありません」
速水「それに、この七不思議を解き明かそうとしないままに、ただ謎から逃げるなんて、ミステリー研究部の名折れです」
ラン「…」
兵藤「…貴女、何でここに?」
ラン「あ…私は…」
安部「今日からミス研に入部する、転校生のランちゃんです」
ラン「どうも…」
兵藤「…ウチに入っちゃうんだ…小さな占い師の次は名探偵さんを引き入れたってワケ」
一同「!?」
兵藤「あ、知らなかったんだ…」
兵藤「この子、昨今の刑事事件によく捜査協力してるみたいなのよ」
速水「成程…メアリーの予言に現れるわけね…」
ラン「ふぇ?」
兵藤「入学届を出した、ランちゃんのいとこの刑事さん…最近新聞によく名前出てるから、気になって聞いてみたのよ」
兵藤「ゲレンデ館の殺人事件とか、孤島の事件とか…」
兵藤「そしたら、毎回この子が真相究明に役立ってるって、誇らしげに言ってたわ」
ラン「だ…堕天使の嗜みであるぞ(そ…それほどでも無いですよ)」
コクラン「当然ヨ!アタシの黒魔術が呼び寄せたんだもノ!!」フンス
白坂「す、すご…い」
速水「天才少女探偵…これは、心強い味方になる…」
城ヶ崎「ふぅん…」
五十嵐「かっこいい…!」
安部「わぁ…」
コクラン「アタシが!呼び寄せたノ!!」ズイッ
ラン「え…えへへへ」テレテレ
速水「このメンバーなら…本当に七不思議の謎が解き明かせるかもしれない…!」
速水「兵藤先生…!」
兵藤「速水…」
兵藤「…分かったわ。ほんの少しだけなら、調査する事を許可します。でも、必ず私を立ち会わせること。いいわね?」
兵藤「少しでも危険を感じたら、そのときは即刻止めてもらうから」
ラン「…」
ラン(兵藤レナ先生…)
五十嵐「良い先生だよ?一ノ瀬先輩がミス研を立ち上げたときから顧問をやってもらってるの」
五十嵐「子供の遊びにつきあってるだけって本人は言ってるけど」
コクラン「むむむー…」
コクラン「ELELOHIMELOHOELOHIM」
コクラン「SABAOTHELIONEIECH」
コクラン「ADIEREIECHADONAIJAH…」
五十嵐「こういうシスターにあるまじきことやってても、強く止めることはしないし…」
五十嵐「ちゃんと生徒の意見は尊重してくれてる人なの」
コクラン「SADAITETRAGRAMMATON」
コクラン「SADAIAGIOSOTHEOS」
コクラン「ISCHIROSATHANTON…」
五十嵐「でも…一ノ瀬先輩が失踪してからは…危ないことにはすごく敏感になってるかなぁ…」
ラン「…」
コクラン「…AGLA AMEN…」
コクラン「ムムム…ヘェーイ!!」
シーン…
白坂「こ、こない…ね…」
コクラン「オカシイわねー…呪文は合っているハズなんだけれど…」
白坂「にん、ぎょうは…大丈夫な、の?」
コクラン「四体とも正しいナラビのハズよ?笑う人形、泣く人形、怒る人形、眠る人形…」
コクラン「刺青をした悪魔が急かしていたらフニャフニャになっちゃうって書いてあるけど…そんなこと何も起こってないし…」
ラン(召還魔法陣…人の子にしては、意外といい線をいっているなぁ…)
コクラン「七不思議調査のガードマンにしてあげようと思ったのに…シッパイだわ」
1日目 放課後 聖月学園 校門
速水「明日、七不思議調査を本格的に始めるから、みんな宜しくね」
城ヶ崎「はいお疲れ」ヒラヒラ
安部「お疲れさまでーす!」
小梅「ま、またあした…」
コクラン「バーイ!」
五十嵐「お疲れさまです!」
ラン「闇に飲まれよ!」
スタスタ…
ラン「む?」
速水「…あら?もしかして、帰り道一緒?」
ラン「これもまた因果の流れか…(奇遇ですね)」
速水「ね、ランちゃんの解決した事件の事とか、色々教えてくれない?」
…
速水「ミス研の話を聞きたい?…最初は、一ノ瀬先輩、私、響子と小梅の4人だったわ」
速水「教室でこっくりさん遊びをしてた小梅と響子を、一ノ瀬先輩と見かけたのがそもそものきっかけ」
速水「それを先輩が、科学的に検証し始めて…いつの間にか周りを押し切りながら一気に部結成まで持ってったの」
速水「変わり者だったわ…だってね、なんで部活まで作ったのか質問したことがあったんだけど…」
―「魔法や超能力を『科学を知るものとして』信じたいからだよっ」
速水「笑っちゃうわよね…普通科学者はオカルトの存在を否定する立場なのにね」
速水「先輩は、あらゆる科学でも説明がつかないものの存在を、あえて探求しているみたいだった」
速水「あっという間に顧問の先生とか、部費を使った合宿の予定とかポンポンできちゃって」
速水「…でも、長くは続かなかった」
速水「これまで興味ないって言っていた学園七不思議を、突然調べるって言いだして…」
速水「私達が知らないところでも色々探ってたみたいだけど、ある日を境に失踪してしまった…」
ラン「…」
速水「そのあと美嘉が入部してきたの。彼女とは元々仲のいい友達」
速水「いつもあんな感じだけど、大事な時はいつも隣にいてくれるし、凄く面倒見がいいから」
速水「…多分美嘉は、私が先輩の後を追うんじゃないかって、未だ心配してるんだと思う」
ラン「…」
速水「メアリーと菜々が転校してきたのはその後。誘ったらノリノリで入部してもらって、それで今に至るわけ」
速水「そういうわけで、七不思議調査はミステリー研究部にとって、やりかけの宿題みたいなものね」
ラン(やりかけの宿題…か)
宜しくお願いします…
m(_ _)m
1日目 夜 D県 赤羽根のアパート 居間
ガチャ
ラン「帰ってきたか…(お帰りなさい)」
赤羽根「どうだったよ?学校は」
ラン「中々愉しめそうね(面白いところですね…学校って)」
赤羽根「だろー?行って良かっただろー?」
赤羽根「俺も出来ることなら学生の頃に戻ってみてーなー…」
ラン「…」
赤羽根「友達は出来たか?」
ラン「フッ…数多の軍勢が私を待っているわ(なんかたくさんできましたよ)」
赤羽根「上々じゃないか。よかったな。デビューは始めが肝心だ」
赤羽根「ま、お前黙ってりゃ可愛いし、ミステリアスだし、友達には困んねーだろーな」
ラン「それは聞き捨てならんなっ(どういう意味ですかっ)」
赤羽根「はははっ」
赤羽根「そうだ、入学祝いに…ほら、これ持っとけ」ポイ
ラン「…?」パシ
赤羽根「スマホだよ。今どきの学生には必需品だぜ?」
赤羽根「これからは昼間、学校行ってて俺の電話に出られなくなるだろ?仕事遅くなる時はそのスマホにかけるから、よろしく」
ラン「…ありがとう」
1日目 深夜 D県 赤羽根のアパート 居間
赤羽根「…」
ラン「…」スッスッ
赤羽根「…」
ラン「ほう…」スッスッ
赤羽根「…」
ラン「…」スッスッ
赤羽根「寝る時間だ。スマホやめ」ペシ
ラン「あぅ」
赤羽根「好奇心旺盛過ぎんだよお前は」
赤羽根(買って数時間で早くも後悔してきたぞ…)
2日目 昼 聖月学園 東校舎 1F 廊下
ラン「~♪」ピッ ススス…
ラン「これぞ我が神器…(いいもの買ってもらっちゃった~)」
??「駄目よ!!」
ラン「!?」ビクッ
速水「どうしてですか!?篠原先生!!」
兵藤「…」
篠原(篠原 礼)「七不思議調査なんて止めなさい!また死人を出すつもり!?」
速水「まだ一ノ瀬先輩が死んだと決まったわけじゃありません!」
篠原「いいえ!あの子は殺されたのよ!眠り姫に!」
兵藤「…」
兵藤「ほんの少しだけなら大丈夫よ…もしもの時は、絶対に私が止めるから…ね?」
篠原「レナも分かってるの!?あの七不思議よ!?」
兵藤「…礼」
篠原「もう昔のことだって、気が緩んでないかしら?もっと危機感を持ちなさい!」
速水「…」
ラン「…?」
ラン「あの…」
篠原・兵藤「!!」はっ
篠原「と…とにかく、そういうことだからっ」
兵藤「…速水、ごめんなさい」
コツコツ…
2日目 昼 聖月学園 東校舎 1F 廊下
ラン「我が盟主よ…さっきのは…」
速水「ランちゃん、貴女はどう思う?七不思議の謎っていったい何なのかしらね?」
速水「…私には、得体の知れない何かが隠されているような気がしてならないの」
ラン「…」
速水「思い返してみれば…先輩も、只ならない何かを感じてた…」
―「ココだけの話ね…学園七不思議の、とある話を聞いたとき、気付いたんだ」
―「これは単なる怪談じゃない…人の意思が混ぜられてる匂いがした」
―「何かを隠すために、アタシ達生徒を怖がらせてる誰かがいる…ってね」
―「アタシは超能力や魔法が好き。好きだからこそ、それを騙って他人を不幸にする連中が許せない」
―「魔法を信じる科学者として、この不思議は絶対に解明するよ」
奏「出端挫かれちゃった…さっきの話、聞いてたでしょ?」
奏「だから、今日の活動は、一旦お休みしましょう」
ラン「え?」
速水「篠原先生、結構権力強いから。最悪理事長まで引っ張ってきて反対しかねない」
速水「表立って動き過ぎたかもね…対策を考えなきゃ」
ラン「…相分かった」
2日目 昼休み 聖月学園 東校舎 1F 教室
もぐもぐ…
コクラン「ママの作ったオベントは最高ね♪」もきゅもきゅ
ラン(なんだか…鬼気迫る様子だったなぁ…)
五十嵐「あのー…聞いてる?ランちゃん」
ラン「へ?…う、うん」
五十嵐「篠原先生と兵藤先生はね、元々この学園の生徒だった人で、その時から仲がいいんだって」
コクラン「卒業してもココにいるなんて、ヨホドの天神様好きなんだと思うわネ…アタシは別にそんなでもないケド…」
ラン(本格的な黒魔術やっちゃうくらいだもんね…)
白坂「篠原先生は…と、とっても…怖い、と、言うか…厳しい、先生…だよ…」
コクラン「ローカ走るなって何度も怒られたワ」
ラン「ふむ…」
五十嵐「戒律に厳しいのはクラリス先生と一緒だけど、剣幕の強さが段違いだもんね…ところでランちゃん」
ラン「?」
五十嵐「ずっと気になってたんだけど…弁当箱いっぱいのそれ…何?」
ラン「禁断の果実(プリン)」
白坂「…」
コクラン「…」
五十嵐「…」
2日目 放課後 聖月学園 東校舎 1F 園芸部室前
ラン「同士よ!(菜々先輩!)」パタタ…
安部「活動一時中止の話ですか?今日活動しないって件はもう知ってるんで、大丈夫ですよ」
安部「ほら、携帯に連絡来ましたから。私はこれから園芸部室の方で準備するつもりです」
ラン「そ、そうか…」
安部「…気長に待ちましょう。先生に反対されたくらいでへこたれる奏ちゃんじゃありません」
安部「ミス研に入ってまだ一年経ってないですが、それくらいは奏ちゃんのことは知ってますから」
ラン「…」
安部「あ、そういえば私達、連絡先交換してませんでしたね!」
安部「ちょっと待っててくださいねー…えーっと…」ピッピッ
安部「…あれ?うーん…」
ラン「…」
安部「ごめんなさい、新しい機種に変えたばかりで…そっちの方から電話かけてもらってもいいですか…」
ラン「う、うむ…」
安部「この生徒手帳に書かれている番号でお願いします…」
ラン「…」スッスッ RRRR…
安部「あ、どうもでーす」ピッ
ラン「?」
ラン(手帳入れのこの写真は…)
安部「それ、こっちに転校したての頃の写真です」
安部「綺麗に撮ってもらえたので、手帳入れにしまって大切にしてるんですけど…」
ラン(でも、西校舎と教会が見えるこの配置は…)
ラン「まさか、隣に座するは…(隣の木ってもしかして…)」
安部「そうなんです…よりにもよって眠り姫の木で撮ったものだって後から教えられて…」
安部「心霊的なものが映らなかったのは幸いだったんでしょうか…」
安部「ミス研としては不運なのかも…」どよん
ラン「…」
安部「そうだ!ランちゃん、園芸部の活動、覗いてみませんか?皆部室に集まったら、花壇の手入れをする予定なんです」
安部「面白そうなら、そのまま入部しちゃっても大歓迎ですよ!ほら、入って!」
ガチャ…
ラン「うーむ…す、少しだけなら…」
2日目 放課後 聖月学園 東校舎 3F 図書室
速水「…」
速水(今まで、先輩が何故私達を置いて一人で色々調べ始めたのか、ずっと疑問に思ってたけど…)
速水(篠原先生の、七不思議に対するあの過剰な反応…もしかして、理由はそこにあったのかしら)
速水(結局、私も一人でこそこそと調べるしかないのかなぁ…)
速水(先輩は、恐怖を利用するために怪談を広めたと言っていた)
速水(だとしたら、謎の正体は必ず現地にあるはず…だと思うんだけど)
速水「…」
速水(?)
速水(辞典と辞典の間に、段差がある…)
速水(普通、こういう辞典って、規格や大きさを揃えてあるはずなのに…もしかしたら、この奥に何かが挟まって…)
ごそごそ…
速水(去年のミス研の会報…?ただの会報じゃない…ところどころ書き足されている!)
速水(これ、もしかして先輩の!?何でこんな場所に…)
聖月学園の怪談
「西校舎を彷徨う幽霊」
東校舎の教室から、西校舎を歩いている人影が見えるが、実際に行ってみると姿は見えない
だが代わりに、真っ白な足跡が、壁や床に大量についていた
―発生時期・推定28年前
―噂の原形・当時起こった初等部生徒の夢遊病事件。土足で西校舎を徘徊。
「血に染まる十字架」
礼拝堂に吊るされた巨大な十字架が、掃除をしていた生徒の上に落ちて来たことがある
十字架は、生徒の血で真っ赤に染まっていた
―発生時期・推定20~25年前
―噂の原形・8年前の落下事故とは無関係?「落ちそう」がどこかの段階で「落ちた」に転じる。
「地獄からの叫び声」
二つの自転車置き場の間にある排水溝から声が聞こえてくる
それは地獄の住人の声であり、聴いたものは七日後に地獄に引きずり込まれ食べられてしまう
七日後までに一日一回、十字を切りながら身代わりの食べ物を排水溝に落とすと、見逃してもらえるという
―発生時期・推定11年前
―噂の原形・付近の道路で発生した交通事故をきっかけに、風切り音が断末魔と結び付けられる。
「顔の無い女子生徒」
夜の廊下を歩いていると、誰かに呼び止められるが、誰の声なのか分からない
振り向くと声の主は、血まみれの、顔の無い女子生徒であった
―発生時期・西校舎の幽霊と対になるように発生
―噂の原形・当時の教師の方便である可能性が高い
「図書室の赤色の本」
図書室の本を借りて自宅で読んでみると、1ページだけ真っ赤なページが見つかる
これは、本に吸われた自分の血の色で、直ぐに返しに行かないとすべてのページが血に染まり
本を借りた生徒は失血死してしまう
―発生時期・推定22年前
―噂の原形・通り魔殺人の犠牲者生徒の貸出本。最終的に警察から学校へ返却されたものは血痕が付いてしまっており廃棄されたが、それを生徒が目撃した。
速水「…」
速水(発生時期と噂の原形…か)
速水(これだけじゃ、謎らしきものは見えてこないわね…あら?)
「開かずの地下室」
地下室に通じるといわれる扉は誰も開けることが出来ない
扉の先には怪物を閉じ込めた研究室があるといわれる
―発生時期・学園成立当時?怪物云々の件が伝わり始めたのは9年前
―噂の原形・不明。
「桜の木の下の眠り姫」
西校舎側の校庭の桜の木の下には女の子が眠っている
七不思議の秘密を解き明かそうとする生徒がいると、目を覚まし、その人間を殺しに来る
―発生時期・9年前
―噂の原形・不明。
七不思議の成立・9年前
女子生徒、美音の失踪時期・9年前
速水「今から10年前…生徒の失踪…?」
眠り姫=失踪者?
速水「…」
決行する日時は決まっている この学園の教員採用試験は 学園内で行われる
その日の夜間のみ 宿直をする教員がおらず 完全な無人の学園になる
眠り姫に会うために これほど条件の整った日は無い
変わり果てているであろう彼女に会うために…
速水「一体、先輩は何のことを書いてるの?」
パサ…
速水「あ…挟んであったのは…この子が、美音って生徒なのね」
速水「…」
速水「じょ、冗談…でしょ…?」
速水「これが…眠り姫の正体だっていうの…!?」
2日目 夜 D県 ファミリーレストラン 店内
ラン「禁断の果実を根こそぎ貰おうか(ココからココまでください)」
店員「あの…これ全部食後用のゼリーとプリンですが…」
ラン「構わん、出せ(ください)」
店員「…かしこまりました」
ラン「…」
ラン(早速仕事が遅くなるなんて…いいもん)
ラン(朝昼晩プリンで生活するだけだもん)
スマホ<ヴーッ、ヴーッ
ラン「!」
ラン「任務か?(速水さん?)」
速水『ランちゃん!突然で悪いんだけど、話があるの!』
ラン「え…?」
速水『あ…でも、こんな…こんな大変なコト、どう解決すれば…』
ラン「話が見えん、正しく詠唱せよっ(あの、一体どうしたんですか?)」
速水『とにかく今から学校、来れる?直ぐに部室に来てくれない?』
プツッ…
ラン「…?」
2日目 夜 聖月学園 東校舎 2F ミス研部室
ガラ…
ラン「…」こそこそ
ラン(あれ?誰もいない…)
コクラン「ウラメシヤ~」ドロン
白坂「うらめし、や~」ドロン
ラン「ふにゃああああああああ!?」ドンガラガッシャーン!
五十嵐「あ、あちゃー…」
城ヶ崎「盛大にすっころんだねぇ」
安部「あ、悪趣味ですよぉ…みんな…」
ラン「ど、同志たちよ…(あれ…?みんな…)」
五十嵐「ランちゃんも速水先輩に呼ばれてきたんだね?」
城ヶ崎「…今日は活動無くてラッキーって思ってたのに…暗くなってから呼び出しとか」
城ヶ崎「つか、なんで肝心の奏が居ないのよ、菜々」
安部「私に言われても…私も早めに寝たところを叩き起こされちゃって…」
ガラッ
??「何してるの貴女達ッ!!」
一同「!?」ビクッ
2日目 夜 聖月学園 東校舎 2F ミス研部室
五十嵐「和久井…先生…?」
和久井(和久井 留美)「もうこんな時間なのよ!?帰りなさい!!」
篠原「貴女達…どうして教室に残ってるのよ…」
白坂「わ、わたし、たち…先輩、に、よ…呼ばれて…」
コクラン「そうなのヨ!でも、速水センパイがまだ来ないノ!」
和久井「…貴女達も同じ理由?」
城ヶ崎「ま、概ね」
安部「はい…」
ラン「…」コクン
篠原「あの子ったら…言っても聞かないところは一ノ瀬とそっくりね…」
和久井「なら、速水には私達の方から言っておきます」
和久井「貴女達は早く帰りなさい。いいわね?」
ガラッ
一同「…」
城ヶ崎「…どうする?」
コクラン「アタシは、もう少しだけここにいるワ」
コクラン「きっとセンパイには何かリユウがあって呼んだんだとと思うノ」
小梅「わ、わたしも…まって、みる」
五十嵐「え、えぇーっと…」
城ヶ崎「一体どうしたってのよ…奏」
安部「私、とりあえず、お花を摘みに行ってきますね…」
安部「さっきの怒鳴り声で…ちょっと…」
五十嵐「私も…ちょっただけ、残ろうかな…」
ラン「…」
2日目 夜 聖月学園 2F 宿直室
ガラッ
ラン「…」
和久井「帰れと言ったはずよ」
和久井「これから私と篠原先生で速水を探してくるから…」ごそごそ
ラン「光を照らした刻は何時頃か?(最後の見回りは、何時にやったんですか?)」
和久井「ん?」
篠原「まだ夕方の…3時間くらい前かしら…二人で東館をぐるっと…」
ラン「極東のみだと?(西校舎は?)」
篠原「西校舎は施錠されている限り誰も入ることは出来ないから、見る必要が無いの」
篠原「というか私達は単なる宿直だから、見回りなんて最低限よ?もう務めて結構経つけど不審者なんてこの学園に入った事ないし…」
篠原「…鍵は念のために携帯しているけどね」ジャラ
ラン「確かに招かれざる客は居なかったのね?(念押ししますけど、その時に、ほかの生徒とかは…)」
和久井「見なかったと思うけど…」
ラン(速水先輩から電話を受けたのが一時間ほど前…)
ラン(だから、例えば宿直の監視を避けて隠れているなんてことはあり得ない…一体どこに…?)
スマホ<ヴーッ、ヴーッ
ラン「…!」
ラン(速水先輩からだ…!)
速水『ランちゃん!助けて!殺されちゃう!!』
ラン「!?」
ラン「お、応答しろ!我が同胞よっ!場所を示せ!!(先輩!?何処にいるんですか!?)」
速水『わからない…』
速水『多分、学校の何処か…教室…手足を縛られてて、うまく動けないの…っ』
ラン(学校の教室…?)
速水『…西校舎だわ』
ラン「え…?」
速水『間違いない!西校舎の教室よ…!早く!急いで!私が、わた…ッあ』
ラン「同胞よ!?(速水さん!?)」
速水『…ぁ…っが…ぅ』
ブツン
ラン「そんな…!」
和久井「な、なに…?」
篠原「どうしたの?」
ラン「我が盟主に危機が迫っているっ!!(速水先輩が危ない!!)」
ダッ!
2日目 夜 聖月学園 西校舎前
ラン「はっ、はっ」タタタ…
ガチャガチャ
ラン「封印か…くっ(鍵が…)」
和久井「篠原先生!」
篠原「ちょっと待って…」ジャラジャラ…
和久井「ほ…ホントに西館なの!?鍵がかかってるのよ!?」
白坂「どうした…の…?」
コクラン「事件かしラ!?」
五十嵐「なにかあったの!?」
城ヶ崎「どうしたのよっ!」
安部「な、なんですかこの騒ぎ…?」
ラン「西方に囚われし我等が盟主に危機が…!(速水先輩が危ないんです!西校舎に監禁されてるって電話が!)」
コクラン「なんですっテ!?」
2日目 夜 聖月学園 西校舎前
篠原「あった…!」
ガチャ…カチッ
ラン「我が盟主よ!(速水先輩!)」ダッ!
和久井「速水!」ダッ
安部「奏ちゃん!!」ダダッ
2日目 夜 聖月学園 西校舎 2F 教室内
ラン「…」
和久井「…」
兵藤「…」
コクラン「一階には誰もいなかったワ!そっちはドウ!?」
白坂「あ…!?」
五十嵐「ひっ…!?」
城ヶ崎「ちょっと…嘘でしょ…?なにこの…足跡…!?」
ラン(…教室の中には誰もいなかった)
ラン(でも、その代わりに…)
ラン(床…壁…天井…)
ラン(部屋全体に付けられた無数の白い足跡が…視界いっぱいに広がっていた…)
五十嵐「姿は無く、足跡だけ…第一の、不思議…」
安部「西校舎を…彷徨う…幽霊…!?」
コクラン「き…きっと…速水センパイはユーレイに連れていかれちゃったんだワ…!」
和久井「馬鹿言わないで!これは多分、速水の悪戯よ」
和久井「私も篠原先生からある程度話を聞いてる」
和久井「七不思議の調査とやらを篠原先生に反対されたから、こうやって驚かそうとしたんでしょう」
篠原「…」
和久井「篠原先生?」
ラン(悪戯…?本当にそうなのだろうか…)
3日目 朝 聖月学園 校門前
ラン「…」
ラン(結局…速水先輩は待ち合わせ場所の教室に来ることは無く、解散となった…)
ラン(でも…なんだろう…何か見落としているような…)
ラン(私には…あれが速水先輩の狂言だったとは、とても…)
五十嵐「ランちゃんっ!!」ダダッ
ラン「!」
五十嵐「大変なの!昨日の、足跡があった部屋に…!」
ラン「え…!?」
3日目 朝 聖月学園 西校舎 2F 教室内
教師「近付かないで!みんな!教室に戻りなさい!」
ザワザワ…ザワザワ…
ラン「…!?」
速水「」
ラン(そんな…)
教師「貴女も!戻って!見ちゃ駄目!」グイッ
ラン「…」
―ねぇ、知ってる? 桜の木の下には 女の子が眠ってるんだって
―眠り姫は 七不思議の守り神なの
―眠り姫は 誰かが七不思議の秘密を解き明かそうとした時に ひとりでに目覚めるの そして…
―七不思議の謎を暴こうとした人を 全員殺しちゃうんだって
ラン(眠り姫…)
ラン(一体…何者なんだ…?)
主演:神崎蘭子・赤羽根P(765プロ)
堕天使探偵ラン 魔月学園殺人事件
3日目 朝 08:11時点
A ラン
B 速水 奏(高等部生徒・ミス研部長)←DEAD
C 城ヶ崎 美嘉(高等部生徒・ミス研部員)
D 安部 菜々(高等部生徒・ミス研部員・園芸部と掛け持ち)
E 白坂 小梅(中等部生徒・ミス研部員)
F 五十嵐 響子(中等部生徒・ミス研部員・美術部と掛け持ち)
G メアリー・コクラン(中等部生徒・ミス研部員)
H クラリス(担任の教師)
I 兵藤 レナ(教師・ミス研の顧問)
J 篠原 礼(教師)
K 和久井 留美(教師)
3日目 放課後 聖月学園 西校舎 2F 教室内
ザワザワ…
み、見た!? 速水先輩の死体があった教室… 足跡だらけだったんだって!
まるで七不思議そっくりじゃん! 眠り姫がやったんだよ! 絶対!
やめて! 怖いこと言わないでよ!
七不思議の秘密を解き明かそうなんて考えるからだよ… 一年前だって ひとり行方不明になって…
コクラン「…」
白坂「…」
五十嵐「…」
城ヶ崎「奏…!」
安部「…」
ラン「…」
赤羽根「よう」ポン
ラン「来たか…!(赤羽根さん!?)」
赤羽根「とんだことになっちまったようだな」
赤羽根「この事件、俺が担当することになったよ」
赤羽根「周辺の刑事にも一応お前の話はしとくから、何か気になったことがあれば言ってくれ」
コクラン「あ、アナタがランちゃんの…」
赤羽根「…お?君達、ランの友達か?すまん、いつもこいつが世話になっている」
赤羽根「ドがつくほど個性的な奴だが、どうかこれからも仲良くしてやっ…ぐぐ!?」
ラン「軽口も過ぎれば寿命を縮めるぞっ!!(余計なお世話です!!)」
ラン「さぁ手始めに、手の内を全て明かしてもらおうか!我が相棒よ!(とにかく今までに、分かってることを全部話してください!)」
赤羽根「分かってる!言うから!!」
ざわざわ… こしょこしょ…
赤羽根「ん?」くる
キャー!
赤羽根「…??」
城ヶ崎「…あぁ、あの子たちは気にしなくていいから」
赤羽根「…まず、被害者である速水 奏が亡くなった時刻だが」
赤羽根「昨夜の夜9時から10時の間であると推定された」
ラン(やっぱり…速水先輩は私に助けを求めた直後に殺されたんだ…)
赤羽根「死因は紐の様なもので首を絞められた事による窒息死」
赤羽根「ただ、奇妙なことに、死体の衣服から、現場のあちこちに至るまで白い足跡が付着しているんだ」
赤羽根「なにかのメッセージだろうか…?」
白坂「な、七不思議…なの」
赤羽根「七不思議?」
五十嵐「この西校舎には、あちこちに足跡をつける幽霊が居るっていう怪談があるんです」
赤羽根「成程…被害者は七不思議になぞらえて殺されたってわけか」
赤羽根「だが、白い足跡の成分は炭酸カルシウム…校庭の線引きとかにも使うアレだ」
赤羽根「それに、手足にはひもで縛られた跡…首の痕も明らかに人為的なものだ」
赤羽根「霊現象でも何でもない…見立て殺人ってところだな」
赤羽根「それと、これ」
ラン「?」
赤羽根「被害者が強く握りしめていたものだ」
安部「十字架…ですね」
赤羽根「首に下げるやつで、生徒は全員持っているんだってな」
赤羽根「やっぱシスターって、自分が死ぬ間際でも神に祈るもの…なんだろうか」
ラン「天上からの伝言かも知れぬがな(あるいは何かのメッセージかもしれませんが)」
赤羽根「第一発見者は城ヶ崎 美嘉と安部 菜々」
赤羽根「君たちだな?」
安部「今朝、美嘉ちゃんと昨日の事を話し合ってたんです」
安部「奏ちゃん、朝になっても連絡つかなくて…足跡の部屋をもう一度確認しようと、鍵を借りて見てみたら…」
城ヶ崎「奏がこの部屋で、倒れてたってわけ…」
赤羽根「昨日の事ってのは…あぁ、ランから聞かされたあれか」
白坂「…」コォォ…
白坂「奏…先輩…お願い…答えて…」
白坂「私の…体を…貸します…から」
ラン「…」
赤羽根「…あの子はあの子で何やってんだ?」
コクラン「聞いて驚きなさいな!」
コクラン「コウメちゃんには、ネクロマンサーの才能があるのヨ!」
五十嵐「すっごい使い手なんですよっ!」
赤羽根「はぁ?そんなことできるわけないだろ…」
小梅「…」コォォ…
小梅「さぁ…貴女を…殺したのは…誰…?」
小梅「…」
赤羽根「雰囲気だけは…やべぇほど出てるが…」
城ヶ崎「で、どうなの?」
小梅「…わ、わからな、い」
ラン「…」
赤羽根「ま、そんなんで分かったら苦労せんわな」
コクラン「本当なのヨ!コウメちゃんは、ワタシみたいに最近パワーに目覚めたノ!」
コクラン「ひき逃げ事故の現場で幽霊を呼び出して、犯人だって当ててるんだかラ!!」
小梅「その時は、す、直ぐに呼び出せ、た、のに…なんで、だろ…」
赤羽根「…なんかアレだな、この娘たちは完全にお前の類友みたいだな、ラン」
ラン「どーいう意味だぁっ!」
赤羽根「ふむ…昨夜現場に居合わせたっていうラン達の話を総合すると…」
赤羽根「まず、君達全員が東校舎の宿直室付近に居た時間に、ランの携帯に助けを求める電話がかかってきた」
赤羽根「何かが締め上げられるような音と共に通話が切れ、直ぐに君達は西校舎に急行した」
赤羽根「鍵を開けて中に入ると、中に速水奏はおらず…代わりに、部屋中に白い足跡が付けられていた…」
赤羽根「扉や窓を確認してみたが、全て閉まっていた…いやいや、それっておかしくないか?」
赤羽根「この西校舎を出入りするためには、絶対に鍵が必要だ」
ラン「…」
赤羽根「だが、さっき見せてもらった貸し出し台帳を見る限り…一番最近、西校舎の鍵が貸し出されたのは一昨日…安部 菜々」
城ヶ崎「一昨日…あー、ランちゃんに七不思議の確認をした時かぁ…」
安部「その時は、教室に足跡なんて無かったですよね?」
赤羽根「昨日、犯人は鍵を使わずにどうやって西校舎を出入りしたんだろうか…?」
赤羽根「それこそ、煙や霧にでもなって壁を通り抜けたってことなのか…?」
コクラン「ユーレイよ!…やっぱりユーレイの仕業なんだワ!」
ラン「時に…(ちょっといいですか?)」
安部「へ?」
ラン「この解法式…昨夜の術と趣が違う様だが(この西校舎の鍵、昨日和久井さんが持ってたものと違いますよね?)」
赤羽根「何…?」
五十嵐「当たり前だよ、だって昨日先生が使ってたのは、宿直の人が持ち歩く鍵束の方だもん」
五十嵐「これは、職員室のキーストッカーにかかっている方の鍵なの」
ラン「つまり術式は二ツ備わっている…と(ということは、西校舎の鍵は二つあるってことですよね?)」
赤羽根「フッ…」
ラン「?」
赤羽根「謎は全て解けたッ!!」ババッ!
一同「!?」
赤羽根「犯人は!この、職員室にかかってた方の鍵を使って西校舎を出入りしたんだ!」
城ヶ崎「無理」
赤羽根「」
白坂「…」
コクラン「…」
五十嵐「…」
ラン「…」
赤羽根「え?え!?なんでだ!?」
白坂「このか、鍵が入ったキーストッカー、…夜は…し、閉まって…るの」
安部「つまり夜間に使える鍵は、宿直用の鍵束だけなんです」
3日目 放課後 聖月学園 東校舎 1F 職員室内
クラリス「鍵の管理、ですか?ええと…」
カチ ガチャ
クラリス「日中はこうしてキーストッカーのロックを開け、こちらのタグのついた鍵を用います」
クラリス「宿直用の鍵束もこの中に入れてますが、昼に此方を使う人は殆どいません」
赤羽根「…」
ラン「…」
クラリス「遅い時間になりますと、当日の宿直の先生方が、宿直用の鍵束を取り出し、それを使ってキーストッカーを施錠します」
ラン(日中はキーストッカーのみ、夜間は宿直が持っている鍵束のみ…)
赤羽根「昨日、キーストッカーの中にあった西校舎の鍵は、どんな状態でした?」
クラリス「一日中かけてあったと思います」
クラリス「現在あの西校舎は、文化祭、または大掃除の時でないと中に入りませんし…」
クラリス「生徒たちには普段立ち入らないように言ってありますから」
赤羽根「…ちなみに、一昨日の貸し出しについては咎めてないんですか?」
クラリス「あの子たちは一応部活動という名目のもとで中に立ち入っているので」
クラリス「…それ以外の平時においては、キーストッカーの中に西校舎の鍵がかかっているのは当たり前という認識で、もし無くなってたら必ず誰かが気付きます」
ラン「…」
赤羽根「なるほどな…振りだしに戻っちまったか」
赤羽根「まさか…マジで幽霊の仕業ってことは無いよな…?」
ざわざわ… こしょこしょ…
赤羽根「?」くる
キャー!
赤羽根「…」
赤羽根「ラン…あの生徒たち、なんなんだ?」
ラン「…さぁ?」
クラリス「気にしないでください、この学園は教師も含めて全員女性ですから」
クラリス「男性に免疫のない子たちは時たまああいう感じになるものです」
3日目 放課後 聖月学園 東校舎 1F 廊下
ざわざわ…こしょこしょ…
赤羽根「憧れのヒーローみたいに思われてんのかなぁへへへ…いでで!!」
ギュムムム
ラン「情!人!忘れるでないわっ!(美!千!香!さん!)」
赤羽根「わかってる!わかってるっつーの!」
ラン「…」じとー
赤羽根「美千香みたいな事言うなよーちょっとくらいデレついてもいいじゃんかよー」
ラン(こりゃー喧嘩も絶えないわー)
ラン「…」
ラン(昨日、西校舎は巨大な密室だった…)
ラン(でも眠り姫はその密室を複数回出入りしている…)
ラン(昨夜、犯人は一瞬にして、速水先輩の死体と一緒に消え…その後、死体を出現させた…どうやって…?)
警官「赤羽根刑事!」ダッ
赤羽根「どうした?」
警官「西校舎の物置に妙なものが…」
3日目 放課後 聖月学園 西校舎 1F 物置
赤羽根「これは…」
ラン「ゲート…か(引き戸ですね…)」
赤羽根「教室の引き戸と同型だな…一回り小さいが…これがどうした?」
警官「引き戸の裏に、血痕の様なモノが付着しています」
赤羽根「何!?」
ガラッ
赤羽根「…本当だ…と思ったら、これインクだぞ」
警官「えっ」
赤羽根「てか、そもそもガイシャは絞殺だったろーが!」
ラン「はぁ…」がっくり
ラン(あれ?でも…この引き戸、足跡に使われていた白い粉が少し付いてる…)
ラン(それに、他と比べて埃をあまり被っていない…誰かが最近持ち出した…?)
兵藤「それ、文化祭のお化け屋敷セットの一部じゃない」
赤羽根「!」
兵藤「教室を二重構造にするときに使ってたやつだけど…これが何か?」
赤羽根「いや…何でもないです…」
兵藤「…じゃ、ちょっとランちゃんを借りてもよろしいかしら」
赤羽根「?」
兵藤「ミス研の全員で集まって話をしたいの」
ラン「…」
3日目 放課後 聖月学園 東校舎 ミス研部室(視聴覚室)
コクラン「調査打ち切るノ!?まだ始まってもないわヨ!?」
兵藤「当たり前でしょう!もうこれ以上危険なことはさせません!」
白坂「…」
ラン「…」
兵藤「少しくらいならって…許可しようとしていた私がバカでした」
兵藤「今回の一件で、皆も学園七不思議が決して触れてはいけないタブーなのだと思い知った筈よ」
兵藤「金輪際、七不思議の調査を行うことを禁止…」
兵藤「そして…このミステリー研究部自体、廃部にすることも考えています」
安部「…」
五十嵐「…」
城ヶ崎「話はそれで終わり?帰って良い?」
兵藤「…良いわ」
城ヶ崎「ねぇ、兵藤先生」
城ヶ崎「なんか…私達に隠し事してない?」
兵藤「…」
城ヶ崎「一ノ瀬先輩も、奏も、謎を解こうとしたから眠り姫にやられたっていうのが皆の認識だけど」
城ヶ崎「なのに、この場で一番ビビってるの…先生だよ?」
兵藤「生徒を失うのが怖いだけよ…何も不自然じゃないでしょう」
城ヶ崎「違う。…先生は今、『次は自分かもしれない』って考えてる」
兵藤「…」
城ヶ崎「なんで?やっぱなんか知ってんじゃないの?」
兵藤「なんとでも言いなさい。とにかく、活動は休止」
3日目 放課後 聖月学園 2F 廊下
コクラン「アタシ…この部活…楽しくて気に入ってたの二…」
白坂「わた、し、も…なのに…は、廃部なん、て…」
五十嵐「仕方ないよ…二回もこんなことが起きちゃったんだもん…」
コクラン「だったらナオサラ!やられっぱなしはシャクなのよっ!」
ラン「…」
城ヶ崎「アタシも、納得いかない」
ラン「…」
城ヶ崎「あの二人は…奏は…ゼッタイに死んでいい人間なんかじゃなかった…」
城ヶ崎「眠り姫は、一体何の権利があって一ノ瀬先輩や奏を殺したっていうのよ」
城ヶ崎「そりゃ、アタシはサボってばっかだったから、知ったフウな口をきいてるみたいでカッコ悪いけどさ」
城ヶ崎「でも、でもさぁ…」
安部「…」
城ヶ崎「うまく言えないんだけどさ…こんなことになっても、奴に何もできないなんて、悔しいよ…」
安部「美嘉ちゃん…いまのところは、警察に任せるしかないですよ…」
一同「…」
3日目 放課後 聖月学園 廊下
篠原「本当に貴女じゃないのね?」
兵藤「何度も言わせないでよ…何で私が生徒を殺さなきゃいけないの」
兵藤「むしろ私は、口封じなんて最悪の結果にならないようにミス研の顧問を買って出たようなものなのよ」
兵藤「監視やガス抜きをしてるだけで、殺そうなんて考えたことは一度もない」
篠原「だったら、一体だれがやったっていうのよ…!」
篠原「一ノ瀬の失踪は、単なる偶然と考えることもできたけど、今度は違う!」
兵藤「…」
篠原「まさか…あの子…生きてたんじゃ…!?」
兵藤「そんな馬鹿な…もう10年も経ってるのよ?とっくにミイラになって…」
篠原「あの子が亡霊になって、私達に復讐しようとしてる…きっとそうに違いないわ!」
兵藤「だとしたら何で私達じゃなく、速水を殺したの?おかしいじゃない!」
篠原「でも…」
兵藤「…そこまで言うなら、確かめに行きましょう」
篠原「え…?」
兵藤「あの件だけは、絶対に警察に察知されるわけにはいかないし…幸いあの場所は現場の反対側…」
兵藤「明日の宿直、私と礼に変えてもらって、死体を確認するのよ」
篠原「確認って…」
兵藤「地下室に決まってるでしょう」
3日目 夜 D県 赤羽根のアパート 居間
赤羽根「確かに、およそ一年前…一ノ瀬志希という女子生徒が失踪しているな」
ラン「…」
赤羽根「調書によると、失踪日時は丁度聖月学園の教員採用試験があった日で、生徒は全員休みだった」
赤羽根「一ノ瀬志希は普段からよく行方をくらましては、ひょっこり現れることで有名だったらしいが…」
赤羽根「一ヶ月以上連絡せずにどこかに行くことは無かったらしい…で、そのときは失踪から一ヶ月半が経過…」
赤羽根「不審に思った家族が捜索願を出し、D県中大々的に捜索したが発見されなかったそうだ」
赤羽根「『眠り姫に殺されたのかも』と証言する生徒もいる」
ラン「…」
赤羽根「ちなみに、同じく眠り姫の仕業だと噂された失踪事件が過去にもう一件あったぞ」
ラン「もう一件…?」
赤羽根「今から10年も前だけどな…美音って名前の子らしい。生徒側の家族に問題があって、捜索願が相当遅れた事件だ」
赤羽根「失踪事件について警察が聞き込みした際、七不思議と眠り姫について証言している生徒がいる」
ラン「…」
赤羽根「…ん?」
ラン「何だ?」
赤羽根「証言している女子生徒の名前…教員名簿の中で見たことがある…学園の教師になっていたのか」
ラン「…其奴の名は?(…誰なんですか?)」
赤羽根「篠原 礼と、兵藤 レナ」
ラン「…」
4日目 早朝 聖月学園 教会 礼拝堂
兵藤(あの子が生きているなんてありえない)
兵藤(たとえ生きていたとしても、地下から出るには鍵が必要だし、その鍵は私達が隠している)
兵藤(誰かが外から鍵を使って、あの鉄扉を開けない限り、そんな事到底…)
兵藤(…あ)
兵藤(一ノ瀬が失踪したのって…まさか…)
ギシ…
兵藤「…?」
4日目 朝 聖月学園 1F 教室内
ガヤガヤ…
五十嵐「おはよう、ランちゃん」
ラン「煩わしい太陽ね(おはよう)」
白坂「お、おはよう…」
コクラン「ハァーイ!ねぇ!昨日アタシ考えたんだケド…」
コクラン「部室じゃなくて、学園の外に活動拠点を置くってアイデアはドウかしら?」
白坂「え…?」
コクラン「そしたら、センセーに邪魔されずに調査できると思うノ!」
五十嵐「今のところは警察に任せた方がいいと思うなぁ…」
五十嵐「ランちゃんのところの刑事さんも頑張ってくれているみたいだしさ」
コクラン「ダメよ!あの人顔がちょっとカッコイイだけで全然役に立ってないモン!!」
ラン「…」
コクラン「あ!ゴ…ゴメンナサイ…」
ラン「否定はせん(まぁ、本当のことですから…)」
ざわざわ…どよどよ…
ラン「…」
白坂「クラス中で…き、昨日の速水センパイの、こと、噂になって、る…ね」
クラリス「みなさん、お静かに…」
クラリス「今日は、私たちのクラスが初めに朝のお祈りをする日です」
クラリス「今から全員で教会に向かいますので、私の後について来てください」
ざわざわ…どよどよ…
クラリス「大丈夫ですよ、みなさん…どうか不安に押しつぶされないでください」
クラリス「毎日神に祈りを捧げ、善行を積んで過ごしていれば、神はきちんと悪いものから貴方達を守ってくれます」
ラン「…」
クラリス「貴女もですよ、ランちゃん」
ラン「…うん」
4日目 朝 聖月学園 1F 職員室前
クラリス「あら…教会の鍵は…?」
教師「兵藤先生ですよ、毎朝早くに教会に入って掃除してるじゃないですか」
クラリス「そうでしたね…すみません、忘れてました」
教師「あれ?でも、おかしいですね…そろそろ職員室に戻ってきてもいい時間なのですが…」
クラリス「ついでですから、このまま生徒たちを連れて呼びに行ってみます」
ラン「ふむ…?」
4日目 朝 聖月学園 教会 礼拝堂
ギィ…
クラリス「兵藤先生…これより、クラスの皆のお祈りを…」
ラン「なっ!?」
クラリス「っ!?」
兵藤「」
ひぃっ!? きゃああああああっ!?
クラリス「み、皆さん!見ないでください!見ないでぇっ!!」
ラン「くっ!」ダッ!
クラリス「ランちゃん!?危ないです!近づかないでっ!」
ラン(十字架に…心臓を貫かれている…)
クラリス「ああ…神よ…」がく…っ
ラン「き、気を確かに持て!聖女よ!(クラリスさん!?)」
クラリス「主よ…貴方の御許に召されし人びとに永遠の安らぎを与え…」
クラリス「貴方の、光の中で…憩わせてください…」
ラン「…」
ざわざわ…
なんで… 神様は私達を守ってくれるんじゃないの…?
ラン「…」
どよどよ…
私達… 眠り姫に… 殺されちゃうの… やだ… そんなの…
ラン(そんなこと…私が絶対にさせない…!)
ラン「闇に飲まれし真実は我が両腕で必ず掬い上げて見せる…!(犯人の正体は必ず私が暴いてみせる…!)」
ラン「天神の名の下に…!!(パパの名にかけて…!!)」
4日目 朝 08:45時点
A ラン
B 速水 奏(高等部生徒・ミス研部長)←DEAD
C 城ヶ崎 美嘉(高等部生徒・ミス研部員)
D 安部 菜々(高等部生徒・ミス研部員・園芸部と掛け持ち)
E 白坂 小梅(中等部生徒・ミス研部員)
F 五十嵐 響子(中等部生徒・ミス研部員・美術部と掛け持ち)
G メアリー・コクラン(中等部生徒・ミス研部員)
H クラリス(担任の教師)
I 兵藤 レナ(教師・ミス研の顧問)←DEAD
J 篠原 礼(教師)
K 和久井 留美(教師)
4日目 昼 聖月学園 教会 礼拝堂
赤羽根「おーい、念の為十字架本体にも指紋ついてないか確認しとけよー」
赤羽根「ったく…昨日の事件の調査も終わってないってのに…」
ラン「…」
赤羽根「お?ラン、授業はどうした?」
ラン「今はモノを学べる空気では無い(…午後から臨時休校になりました)」
赤羽根「…そうか」
ラン「包み隠さず全て話せ(詳しい状況を教えてください)」
赤羽根「なんだか、いつになくやる気じゃないか」
ラン「…」
赤羽根「こほん…死因は見ての通り、十字架に心臓を貫かれたことによるショック死だと推察される」
ラン(第一の殺人同様、見立て殺人か…)
赤羽根「被害者の死亡推定時刻は今朝7時50分丁度」
赤羽根「その時間既に数人の生徒と教師が学園内に居たが、教会の分厚い壁が防音壁の役割をしていたために、十字架が落下した音に気付かなかったらしい」
ラン「刻を其と言い切る根拠は?(やけに正確ですね)」
赤羽根「十字架を吊っていたロープに、朝7時50分に切断されるようになっているタイマー式の仕掛けがしてあったからだ」
赤羽根「犯人は、被害者が毎朝7時から8時の間、礼拝堂で祈りを捧げる事を知っていて、犯行に及んだんだろう」
ラン(タイマー…?)
赤羽根「罠は20分もあればセットできるものだが、問題は仕掛けたタイミングだな…」
赤羽根「まず、昨日の一時限目から六時限目までは、各クラスが交互にこの教会で聖書を読んでいた…」
赤羽根「唯一の出入口である教会の大扉は、教会の管理をする兵藤レナが昨日の夕方6時半に施錠し、今朝7時に教会の中に入るまで、閉められたままだ」
赤羽根「つまり生徒・教師関係なく、仕掛けるチャンスは全授業が終わった夕方4時半から6時半までの間しかないわけだ」
ラン「…して、刻の残滓は?(みんなのアリバイは?)」
赤羽根「判明している限りでは、こんなところか…」
>>3日目のミス研ミーティング終了時刻は夕方5時半で、それまでのミス研メンバーのアリバイは全員成立されているものとする
・城ヶ崎 美嘉
ミス研ミーティング後、直ぐに下校
6時前後に妹と外出している所を周辺住人が目撃している。また、目撃地点から学校まで30分の距離である
アリバイ成立
・安倍 菜々
ミス研ミーティング後、園芸部活動
部室の鍵当番を別の園芸部員に代わってもらい、その後皆で一緒に下校したと証言
当該園芸部員の話とも一致、アリバイ成立
・五十嵐 響子
ミス研ミーティング後、美術部に欠席を申し出て下校
下校時の姿を目撃した人間無し 両親は6時には帰宅していたと証言
学園から自宅まで30分の道のりだが、証人が家族の為、アリバイ不成立
・白坂 小梅
ミス研ミーティング後、直ぐに下校
メアリー・コクランと一緒に夕方5時45分発の電車に乗ったと証言
別の生徒の目撃証言もあり、アリバイ成立
・メアリー・コクラン
同上
etc...
・クラリス
昨日の宿直当番
もう一人の教師と一緒に学園を巡回していたものの、宿直用の鍵を持って30分程単独行動をしている時間がある
アリバイ不成立
・篠原 礼
兵藤 レナ、和久井 留美、その他複数人の教師と夜7時前後まで職員室で作業、その後帰宅
アリバイ成立
・和久井 留美
同じく夜7時前後まで作業をしていたが、4時半から5時までの視聴覚室での単独作業を証明できず
アリバイ不成立
etc...
ラン「…」
赤羽根「仕掛けのタイプから考えても一昨日以前から仕掛けられていたとは考えにくい」
赤羽根「容疑者を絞るなら、アリバイ不成立の人たちの中の誰かだな…」
スマホ<ヴーッ、ヴーッ
赤羽根「っと…もしもし…」
赤羽根「え?…じゃあこっちの件はどうすんですか?」
赤羽根「…はい、はい…了解」
ラン「…別件か」
赤羽根「ああ、すまん…多分帰りも遅くなる…」
赤羽根「何かあったら、各現場に二人ほど警官が待機してると思うから、そっちに言ってくれ」
ラン「…気張るがよい(いってらっしゃい)」
ラン「…」
ラン(犯人は何故兵藤先生の行動を予知することが出来たんだろう)
ラン(確かに朝7時から8時までの間、決まって彼女は礼拝堂に向かうわけだから、そこまでの予測は簡単だけど…)
ラン(礼拝堂の掃除も兼任している…一時間ずっと祈っているわけではないし、周囲の掃除をしている時間に落ちる可能性だってあった筈)
ラン(十字架の真下で祈るタイミングをピタリと当てることなんて…)
ラン(視線を感じる…?)
篠原「!」
サッ…
ラン(さっきの人は…篠原先生…)
4日目 昼 聖月学園 1F 教室
ラン(篠原先生…何か知ってそうな雰囲気だけど…)
ラン(闇雲に聞いたところで、はぐらかされるだけの様な気がする…)
城ヶ崎「あ、いたいた」
ラン「?」
城ヶ崎「荷物まだ残ってたからさ、待ってたの」
城ヶ崎「ちょっと、話したいことがあって…」
ラン「何用か?(なんでしょうか?)」
城ヶ崎「七不思議の事…ちょっと変なコトがわかってさ」
城ヶ崎「多分…貴女なら、何かの手がかりに繋げてくれると思うから…」
ラン「…」
城ヶ崎「調査は禁止されてるんじゃ…って言いたいんでしょ?もう今更だよ。禁止してた先生も、もう、居なくなっちゃったし」
城ヶ崎「それに…アタシ、やるなって言われたことはやりたくなっちゃう性分っていうかさ…」
城ヶ崎「謎解きなんてできる頭じゃないけど、誰かの役には立ちたいの。奏の仇を取りたい気持ちも…ちょっとあって」
ラン「…」
城ヶ崎「ま、それはともかく…昨日さ、友達に言って、色んな人に七不思議の事聞いてもらってたんだ」
城ヶ崎「そしたらさ、親とか大人連中はみんな七不思議なんて全然知らないっていうの。すっごい昔からありそうな怪談なのに」
ラン「む…?」
城ヶ崎「ただ…西校舎の幽霊とか、十字架の話とかは、みんな知ってたの。そういうのってあり得るのかな?」
ラン「示し合わせでもしない限り、雄叫びが同時に上がることなど無い(まぁ、全ての怪談が同時期に生まれるなんてことは無いですからね)」
ラン「七つ全てが揃いし時に、何者かが創成者を名乗り…(7つ怪談が生まれた時に誰かが適当にひっくるめて七不思議として…)」
ラン(…あれ?)
ラン「これが真理に繋がりし扉か!?(それ、詳しく教えてください!)」
城ヶ崎「ちょっと待ってね…えーっと…はい」サラサラ…
城ヶ崎「七不思議を知らない人に、知ってる怪談の事を聞いた結果、出てきた話はとりあえずこんだけ」
・旧校舎の幽霊・血塗れ十字架・地獄の叫び声・顔無し生徒・赤い本
城ヶ崎「聞いたトシまではちょっと分かんないなー…ギリ20代のパートの人が一番若かったかなぁ…?」
ラン「…」
ラン(そうだ…7つ出来ないと七不思議じゃないんだ…それまでの複数の怪談は、独立していて当たり前のもの)
ラン(29歳の人が生徒だった時期と言えば、およそ11年前…少なくともその時点では、この学園には七不思議なんて存在しなかったということになる)
ラン(でも、その後一年も経たずに発生した失踪事件の時に、当時生徒だった二人の人間が『七不思議』を話している)
ラン(私達が最初に眠り姫の桜に近づいたとき、すかさず兵藤先生が声をかけてきた事が偶然じゃなかったとすると…)
ラン(兵藤先生が早朝からずっと教会を管理していた理由は…)
ラン(…もしかして、そういうことなの?)
4日目 夜 聖月学園 西校舎横 桜の木
ザクッ…ザクッ…
篠原「…」
チャリン…
篠原「…」
4日目 夜 聖月学園 B1 地下室
カチリ ギィィ…
カツン…カツン…
篠原「…」
カツン…カツン…
篠原「ぁ…!」
篠原「こんなに変わり果ててしまって…ごめんなさい…美音…」
ラン「獄を封印せし錠だったのだな(やっぱりそれ、開かずの地下室の鍵だったんですね)」
ラン「貴様が他を差し置き番人を受け持つと聞いて、まさかと思ったが…(今日の宿直が、急遽貴女に変わったって聞いて、何か行動を起こすと思ってましたが…)」
篠原「貴女…どうして!?」
ラン「彼奴も使いし諜報組織の真似事よ(かつてのレナ先生と同じように、教会の窓から桜の木を見張ってました)」
ラン「錠を回収した所もしかと眼に刻んでいる(貴女が鍵の入った箱を掘り起こすところもね)」
篠原「…」
ラン「運命の日…軍勢を解き放った不届者…(少なくとも10年前、七不思議を…開かずの地下室と眠り姫の噂を広めたのは貴女達だったんですね?)」
ラン「死蝋が無念を語っている…(そして…そこに横たわっているミイラは…おそらく…)」
篠原「っ」ダッ!
ラン「わっ、ま、待て!」
篠原「きゃ…」ドカッ!
グラ…
ラン「危ないっ!」
ドサドサッ!!
4日目 夜 聖月学園 B1 地下室
ラン(ふぅ…危ない危ない…)
ラン(もう少しで二人とも棚の下敷きになるところだった…)
篠原「…」
ラン「無事か(大丈夫ですか?)」
篠原「…殺すつもりなんかなかったの」
ラン「…?」
篠原「学生だった頃の私とレナは、美音ともよく遊んでた…」
篠原「美音は、とても頭が良くて…それでいて、人一倍正義感が強かった…」
篠原「だからあの日…私とレナがしでかした悪事も見逃さずに…強く追及してきた」
ラン「悪事…?」
篠原「この地下室のこと…」
ラン「…」
篠原「学生時代、私とレナは、西校舎の物置に埋もれていた鍵を偶然見つけたの。それがここの鍵だった」
篠原「何十年も開けられていない部屋を探検できるってこと自体にもワクワクしたけど、当時の私達は、もっと邪悪な事を考えた」
篠原「決して誰も詮索しない場所…何かを隠すにはもってこいでしょ?だから…」
ラン「…」
4日目 夜 D県 赤羽根のアパート 居間
ラン『私だ!今は電子の拘束を振り払い、境界の向こう、届かぬ高みにて使命を遂行しているっ!』
ラン『言伝ならば、従う保証は無いが受け取ってやろう!この後に続く嘶きと共に…』ピー
赤羽根「完全に使いこなしてやがる…」
赤羽根(遅いな…ランのやつ…)
赤羽根(電源切ってんだとしたら…友達と映画でも見に行ってるとか…)
赤羽根(なんだ…この胸騒ぎ…)
4日目 夜 聖月学園 B1 地下室
篠原「…」
ラン「…」
篠原「誰にもばれないように、頻繁に使うことは控えて、鍵は桜の木を目印にしたあの場所に隠した」
篠原「あそこなら、建物が死角になって取り出す所を誰にも見られないからね」
篠原「でも教会の一番隅の窓から見えていたことは盲点だった…そして運悪く、美音にその場面を見られてしまった…」
篠原「もう引っ込みのつかない所までやっていた私達は、なんとか追及を振り切ろうと思って、縋る美音を振りほどいた」
篠原「美音がよろめいたその先は、不運にも下り階段で…そのまま美音は…」
ラン「…」
篠原「警察に捕まりたくなかった私達は…死体をどこに隠そうか必死で考えた…」
篠原「答えは一つしかなかった…『決して誰も詮索しない場所…何かを隠すにはもってこい』」
篠原「私達は美音の死体を地下室に運んで、鍵をいつもの場所に隠し、もう二度と開けないって二人で誓った」
篠原「皮肉なものね…あの時美音の言う事を素直に聞いたって、無視して殺したって、結果は同じだったんだから」
ラン「…」
篠原「地下に隠した死体の存在は、万一にでもばれてはいけない恐怖を、より一層強いものにした」
篠原「地下室の扉に近づく人間を見かけるだけで、気が気じゃなかった…」
篠原「そんな時、幽霊がいるかも知れないからって西校舎に一切近づかないクラスメートの話を思い出したの」
篠原「これを利用すれば、皆をそれとなく遠ざけることが出来るかもしれないってね」
ラン(そして七不思議が生まれた…)
篠原「眠り姫を使って確実に追い払うためには、七不思議を真実だと思い込ませる必要があった…」
篠原「だから、噂を広めると同時に、皆に恐怖を植え付けるように、十字架が落ちる事件を起こして周知させた」
ラン「…」
篠原「でもね…結局気休めでしかなかった…私達がどうあがこうと、鍵も死体も学園に残っているんだもの」
篠原「いくら万全を期しても、予想外、万が一を考えられずにはいられない…」
篠原「かといって罪の証である地下室の鍵を常時身に着けているのも抵抗があった…図々しい話だけれどね」
篠原「結局二人とも教師として学校に戻って、びくびくしながら学園中の人間を見張る日々が始まった…」
篠原「ミステリー研究部なんてものが出来たときは焦ったけど…」
篠原「レナが顧問を引き受けて、常に監視し続けることで事なきを得たわ…」
ラン「愚か者…!(貴女は…そこまでして…!)」
篠原「怖かったの!怖かったのよ…!でも、これだけは信じて…!」
篠原「速水とレナの死と私は無関係!私じゃない誰かに殺されたの!!」
篠原「きっと…美音の亡霊が…私達に復讐を…」
ラン「…」
ラン(確かに彼女には、第一の殺人の時に完璧なアリバイがある)
ラン(電話越しに速水先輩が絞殺されたとき、篠原先生は私の目の前に居た…)
ラン(でも、それはあの場に居た全員に言えることでもある。だから、何かしらのトリックを使えば、あるいは…)
篠原「美音…」
ラン「一つ問う(答えてください)」
ラン「他者を代償に得た栄光は、本当に輝いていたのか?(誰かを犠牲にして手に入れた人生に、光明はありましたか?)」
篠原「…見てわかるでしょう…最悪よ」
篠原「教会の掃除を名目に、桜の木を監視し始めたレナだって…どっちが本命だったか分かったもんじゃないわ」
篠原「でも、あの子も本当は…罪に苛まれて…人知れず、洗いざらい懺悔していたんだと思う…」
篠原「わかるのよ。私もそうだったもの。神に縋っている時だけは、心が安らいだから…」
ラン「…」
篠原「不思議と、今もそんな気分なのよね」
ラン「え?」
篠原「なんだか貴女と話していると、本当に神様に聞いてもらっている感じになる」
篠原「犯した罪は、犯した者が必ず償わなければならない…こんな当たり前なコト、ずっと忘れてた」
篠原「肩の荷が…どっと下りた感覚がする…」
ラン「…篠原先生」
篠原「美音の件…自首する…ありがとう…聞いてくれて」
ラン「…」
4日目 夜 聖月学園 B1 地下室
ラン「…」
ラン(一連の犯行には未だ謎が多すぎる)
ラン(ここまで綿密に仕組まれた計画…逆に言えば、何らかの糸口さえ見つかれば、そこから全ての謎を手繰ることができるのかも…)
ラン(この人が…美音さん…確かに、死臭すらしなくなるくらいミイラ化している…)
ラン(…何?この胸の傷…)
コッ…
篠原(?)
篠原(入口から物音が…)
4日目 夜 聖月学園 B1 地下室
ラン(これだ…ぴったり一致した)
ラン(この胸の傷は、地下室に残っていた医療器具を刺されてついたもの)
ラン(…ということは?)
4日目 夜 聖月学園 B1 地下室 入口
篠原「…」コツコツ
篠原(人影…?)
4日目 夜 聖月学園 B1 地下室
ラン(この死体は美音さんじゃない)
ラン(この人は、もともと地下室にいた何者かにメスで胸を刺され、殺された…ということ)
ごそごそ…
ラン(生徒手帳は…)
ラン「…一ノ瀬志希!?」
4日目 夜 聖月学園 B1 地下室 入口
篠原「…!」コツコツ
篠原「あら?貴女…どうしてここに…っ!?」
4日目 夜 聖月学園 B1 地下室
ラン(そうか…そういうことか!)
ラン「し、篠原先生…」キョロキョロ
ラン(居ない…入口の方か!)ダッ!
4日目 夜 聖月学園 B1 地下室 入口
篠原「あり得ない…!そんな事…まさか貴女が…!」
??「…」ドスッ
4日目 夜 聖月学園 B1 地下室 入口
ラン「篠原せ…っ!?」
篠原「」
ラン「な…」
ギィイ…バタン!
ラン「あっ!!」
ラン「しまった…!」ダッ
ガチャ カチリ
ラン(鍵を閉められた!?)
ラン「開けろ!まさか…ッ」ドンドン!
??「…」
ラン「貴様が…」
ラン「貴様が眠り姫を騙っていたのかっ!?」ドン!ドン!
??「…」タタタタ…
ラン「ここから出せ!…開けろぉー!!」
ラン「…っ」
ラン(一ノ瀬志希は誰に殺されたのか?決まっている!一ノ瀬志希より前に地下室に居た人間は一人しかいない!)
ラン(美音…彼女こそが眠り姫!生きていた!そして一連の連続殺人の犯人だった!)
篠原「」
ラン(篠原先生が持ってた地下室の鍵が抜き取られている…恐らくそれで入口を閉めたんだ…)
ラン(警官は事件のあった西校舎と教会付近にしかいない…今日の宿直は篠原先生ひとり…スマホの電波も通じない…!)
ラン(扉をを開けられるのはあの鍵だけ…私は…)
ラン(地下に閉じ込められた…!)
4日目 夜 18:49時点
A ラン
B 速水 奏(高等部生徒・ミス研部長)←DEAD
C 城ヶ崎 美嘉(高等部生徒・ミス研部員)
D 安部 菜々(高等部生徒・ミス研部員・園芸部と掛け持ち)
E 白坂 小梅(中等部生徒・ミス研部員)
F 五十嵐 響子(中等部生徒・ミス研部員・美術部と掛け持ち)
G メアリー・コクラン(中等部生徒・ミス研部員)
H クラリス(担任の教師)
I 兵藤 レナ(教師・ミス研の顧問)←DEAD
J 篠原 礼(教師)←DEAD
K 和久井 留美(教師)
L 一ノ瀬 志希(高等部生徒・元ミス研部長)←DEAD
4日目 夜 聖月学園 B1 地下室
ラン(うぅー…っ)
ラン(どうしよう…どうすれば…)
ラン(考えろ…考えろ…)
ラン(一ノ瀬志希をなぜ殺したか…そして、その後何故地下室の鍵を元の場所に戻したのか)
ラン(それは、地下から解放された犯人が既に復讐を前提として行動するつもりだったから)
ラン(殺人計画を進めるためには、ターゲットに自分が死んでいると思わせる必要があった…)
ラン(西校舎を彷徨う幽霊、血に染まる十字架と同様…)
ラン(これも、開かずの地下室の見立て殺人と考えるべきか…?)
ラン(でも、それだと説明がつかないことが…)
ラン(犯人の目的が復讐だとしたら、ターゲットは兵藤レナ、篠原礼の二人だけの筈)
ラン(速水先輩を殺したのは何故…?それも、あんな凝ったトリックを使ってまで…)
ラン(彼女があの時手に握っていた十字架は…)
ラン「…」
ラン(そもそも、犯人はここでどうやって9年間生き延びることが出来たの?)
ラン(こんな無機物だらけの空間で?)
キュッ ジャー…
ラン(水は一応ある。でも、食料が無い)
ラン(ここに入ってくる生物と言えばなんだろうか…排水溝から登ってくる鼠…とか…うぅ)
ラン(考えたくないなぁ…9年間プリン抜きかぁ…想像しただけで窒息死しそうな…)
ラン(…そういえば、息は全然苦しくない…)
ラン(もしここが完全に密閉された閉鎖空間なら、既に犯人が酸素を使い切ってもおかしくないはず…)
ラン(ということは…)
ラン「…」キョロキョロ
ラン(何処かに通気口があるってこと…もしかしたら、人ひとり潜り込めそうな…大きさのが…)
ガコン!
ラン「…あった!」
ラン(外した跡がある…やっぱり犯人も、脱出口を探して色々と試行錯誤していたんだ)
4日目 夜 聖月学園 B1 通気ダクト
ラン「…ぅ」ずりずり
ラン(こわいぃぃ…暗いぃぃ…)
ラン(どこ通じてるのか全然わかんないぃぃ…)
ラン(で…でもっ、出口じゃなくてもいい…私の推理が正しければ、この先に…)
…ォォ…
ラン「ひっ!?」ビクッ!ガツン!
ラン「痛たた!」
…
ラン(か…風か…)
ラン(…ん?)
ラン「分かれ道…」
ラン(まっすぐか…右に折れ曲がるか…右は、何度も通った跡があるけど…)
ラン(何度も通った?そういえば…犯人が何度もこの通気口に入ってるのって変なんじゃ…?)
ラン(出口を探すつもりだったら、行き止まりだとわかっている場所には二度と入らないはずなのに…)
ラン(わざわざ体力を消耗してまでここを何度も通った理由は一体…)
4日目 夜 聖月学園 B1 通気ダクト(正面)
ラン「うぇぇ…」
ラン(ハズレか…もしかしてって思ったけど、ただのクモの巣被り損だった…)
ラン(金網でこれ以上進めないし…ボルトも錆びついて回せそうにない…)
ラン(それに、ここは条件に合わない)
ラン(狭くて方向転換もできやしないなぁ…)
ラン(このまま後ろに下がるしかないのかぁ…)
4日目 夜 聖月学園 B1 通気ダクト(右)
ラン「…ぷは…っ」
ラン(少しだけ…開けてるけど…行き止まりなことには変わりない…)
ピチョン
ラン「冷たっ!」
ラン(何?上から…?)
ラン(!しめた、この地点で排水溝に接続されてるんだ…)
ラン(上に開いてる穴の格子の先…微かに光が見える…!外に通じてる!よしっ!)
ごそごそ…
ラン(ここなら、スマホの電波も…数回の反射で…もしかしたら…!)
4日目 夜 聖月学園 B1 通気ダクト(右)
ラン「うん…うん…待ってる…っ」
ラン「ひっく…ひっく…」
ラン「よかった…よかったよぉ…」ぐすぐす
ラン「ぶんめいをあやつりかみにいどみしものたちにしゅくふくあれぇ…」くすんくすん
ラン(助かったぁ…あとは地下室で待つだけ…)
コロコロ…
ラン「?」
ラン「これは…」
ラン(…なんで…こんなものがここに…?)
ラン(…!!)
4日目 夜 聖月学園 1F 廊下
赤羽根「ラン!無事だったか!」
ラン「我が相棒よ…(赤羽根さん…)」
ラン「わぷっ!?」
ギュッ!
赤羽根「畜生っ、心配させやがって!!」ギュー!
ラン「い、いひゃっ、いひゃっ…」
赤羽根「おっとと、すまん」パッ
ラン「…」
赤羽根「それよりお前…犯人に閉じ込められたんだって!?」
赤羽根「篠原先生が殺されたってのも本当か!?」
ラン「ま…まさしく!(ほ、本当です!)」
ラン「先人の盟主も、そこに眠っているっ、早く弔わねば!(そして、一ノ瀬さんの遺体もそこに…!!)」
赤羽根「…」
ラン「?」
赤羽根「お前…地下室で何してたんだ?」
赤羽根「埃だらけクモの巣だらけで汚いったらありゃしないぞ…」べちょー…
ラン「う?こ、これは…」
赤羽根「まったく…今日のところは俺達に任せて、もう休め」
赤羽根「ひとっ風呂浴びろ。それから話聞いてやるよ」
ラン「うん…」
4日目 深夜 D県 赤羽根のアパート 居間
赤羽根「…その時、犯人の顔は見たのか?」
ラン「…既に境界は閉じられていたわ(いえ…すでに扉は閉められていたので)」
赤羽根「そうか…」
赤羽根「篠原礼に刺されていたナイフには、指紋は全くついていなかったよ」
赤羽根「一応出どころを探らせてはいるけど…何処にでもあるナイフだから、持ち主の特定は難しそうだ…」
赤羽根「だが、犯人の年齢がある程度割れたのは収穫だな。少なくとも教師の誰かが犯人なわけだ」
赤羽根「だけど…第二はともかく、第一の殺人を行える人間なんて存在するんだろうか…?」
ラン「…」
赤羽根「それで思い出した。ちょっと気になってたんだ」
ラン「む?」
赤羽根「第一の事件で、お前が速水奏から電話を受けたあの時、速水奏は手足を縛られていた」
赤羽根「仮にランに連絡できる程度に手を使えたとしても、それ以上の身動きは取れなかったんだろ?」
赤羽根「なんで彼女は自分が監禁された場所が西校舎だってわかったんだ?」
赤羽根「教室なんて黒板と机だけで似たり寄ったりじゃないか」
ラン「東西の判断のみならば容易い(そんなの簡単ですよ)」
ラン「知識の間同士を繋ぐゲートが西の地には…(西校舎は教室と教室を繋ぐようにして引き戸が…)」
ラン「…」
ガバッ!!
赤羽根「うお!?いきなりどうした!?」
ラン(そうか…死体を消すことだけなら誰にでもできたんだ…)
5日目 朝 聖月学園 職員室
コクラン「地下室に閉じ込められちゃったって!?」
白坂「ほ、本当…な、の!?」
ラン「…」じー…
コクラン「…モシモシ?」ひらひら
白坂「か、鍵を、見たまま…う、ごかな、い…」
ラン「…」じー…
コクラン「ひょっとして、地下室の怪物に取り憑かれちゃってるのかしら?」
白坂「だ、だいじょう、ぶ…だよ…たぶん」
ラン「…」
ラン(たしかにアレを使えば、一瞬にして死体を消すことはできる…そして、私達と一緒に何食わぬ顔で現場に居合わせることも…)
ラン(でも、精々そこまで…あの状況を完全に再現するためには、結局西校舎の鍵が必要であることに変わりはない…)
ラン(第一の殺人の日、宿直用の鍵束は篠原先生が持っていたから、他の誰かが使うことは出来なかったはず)
ラン(一番現実的なのは、キーストッカー側の鍵を使う方法だけど…キーストッカーを閉める瞬間まで、西校舎の鍵は中に入っていたから、これも不可能)
ラン(むー…)
5日目 放課後 聖月学園 教会 礼拝堂
ラン(第二の殺人…)
ラン(犯人は、礼拝堂で祈る兵藤先生を狙い、タイマー式のトラップを仕掛けた)
ラン(特に奇妙なのが、肝心のトラップを現場に残したこと…犯人はアリバイ工作として装置を使ったはずなのに…)
ラン(装置の回収を怠ったせいで、結局装置を仕掛ける時間帯が捜査の焦点になってしまっている)
ラン(第一の殺人と比べて、あまりにずさん…トラップを残したのには、必ずなにか意味があるはず…)
ラン「…」
クラリス「…」
ラン「聖女…(クラリス…さん?)」
クラリス「…祈っているのです」
クラリス「眠り姫の恐怖を抱える生徒たちの為に、何かできることはないかどうか、天上に教えを乞うているのですが…」
クラリス「なかなかうまくいきませんね…」
ラン「…」
ラン(あれ?)
ラン「聖女よ(クラリスさん)」
ラン「供物の献上は、祈り跪き行うものだったな?(祈りを捧げる体勢って、今みたいに、膝をついて手を合わせるんですよね?)」
クラリス「?ええ…そうですが…」
ラン(そうか…あの時感じた違和感はこれだったのか…)
ラン(だから死体に十字架を落とす必要があったんだ…)
5日目 放課後 聖月学園 2F ミス研部室前
ラン(あとは密室崩しだけだけど…)
ラン(ミステリー研究部…結局どうなっちゃうんだろう)
ラン(部長も、顧問の先生も、居なくなっちゃって…)
ガラッ
五十嵐「あ」
ラン「?」
五十嵐「丁度良かった…ランちゃん、手伝ってくれない?」
5日目 放課後 聖月学園 3F 廊下 美術室前
ラン「おも、いぃー…」
五十嵐「ミス研の活動をしながら、絵も描いていたかったから、部室に石膏像持ち込んでたんだ…」
ラン「はぁ、はぁ…」
五十嵐「おっけー…いったんココに置きましょう」
ゴトッ…
五十嵐「ふー…疲れたー…」ガタガタッ
五十嵐「あれ?開いてない…鍵当番の人、まだ来てないのかな…」
ラン「?」
5日目 放課後 聖月学園 1F 職員室
教師「あー…そういえば欠席してたわ、その子…鍵も多分その子の家ね」
五十嵐「やっぱり…」
教師「しょうがないから鍵束の方で開けなさいな」
五十嵐「そうします…」
ジャラ…
ラン「あの…鍵当番…とは?」
五十嵐「名前の通り、部室の鍵を管理してる部員の事だよ」
五十嵐「普通は、放課後いち早く職員室から鍵持って来て開けるんだけど…めんどくさくてずっと鍵を持ち歩く人もいるの」
五十嵐「そんな子が学校休んじゃうと、こうして不自由するから、あまりやってほしくないんだけどね…」
ラン「…」
5日目 放課後 聖月学園 3F 美術室前
ガチャ カチ
五十嵐「じゃ、中に運ぼっか」
ゴト…
ラン「はぁ…」
五十嵐「ありがとね、ランちゃん」
ラン(鍵当番…か)
ラン(…あれ?)
5日目 放課後 聖月学園 1F 職員室
クラリス「…」サラサラ…
ガラッ!バンッ!!
クラリス「きゃっ!?」
ラン「はぁーっ、はぁーっ」キョロキョロ
クラリス「ら…ランちゃん…?」
ラン「…!」ガチャ ガコン
クラリス「ランちゃん…?」
クラリス「あの…キーストッカーなんて凝視して…どうしたんですか?」
クラリス「どこかの鍵を借りたいとか…?」
ラン「…」
ラン(バカだ私…何でこんな簡単なことに気付かなかったんだ!)
ラン(これで密室の謎は完全に解けた…!)
ラン(でも…)
赤羽根「あ、いたいた…ラン!」
赤羽根「これ、昨日の件で集めた聖月学園教員関係の資料だ。お前も見とけ」
ラン「!」
クラリス「え…わ…私も、疑われてるんですか」
赤羽根「あ…い、いや、可能性の話ですよ、あくまで可能性の…」
ラン(去年の教員採用試験合格者の中に、和久井先生とクラリス先生の名前が載っている…)
ラン(そして、採用試験の日程は…)
ラン「…」フラフラ
赤羽根「ちょっ、どうした!?ラン!」
クラリス「刑事さんっ…私じゃないですよぉっ」ひしっ
5日目 放課後 聖月学園 教会前
ラン(…全てが)
ラン(全てが、彼女が犯人だということを示している)
ラン(でも…証拠がない)
ラン(彼女が…眠り姫である決定的な証拠が…)
ガチャッ
赤羽根「おい、どうしたんだよ!様子がおかしいぞ、お前っ」
ラン「…」ボーッ…
赤羽根「?教会が、どうかしたのか?」
ラン(…十字架)
赤羽根「ラン…?」
ラン「万物の理は…(謎は全て…)」
ラン「我が手中に在り(解けました)」
5日目 夜 聖月学園 東校舎 2F ミス研部室
赤羽根「あれ?もしかして皆、ランの奴に呼び出されてここに?」
城ヶ崎「まぁ、ね」
安部「眠り姫の謎を解き明かすって言ってました…」
白坂「う、うん…」
五十嵐「でも…肝心のランちゃんは?」
コクラン「ドコ行ってるのよ!まったくモウ!」
和久井「宿直である私達が、一旦見回ってこようかしら?」
クラリス「そうですね…」
コクラン「ねぇ…この状況、なんだか…速水センパイの時と似てない?」
一同「…」
スマホ<ヴーッ、ヴーッ
赤羽根「…ランからだ…もしもし?」
ラン『我が相棒よ…!すまない…しくじってしまった…!(赤羽根さん!助けてください!)』
ラン『愚かにも、奴に囚われてしまったのだぁ…!(眠り姫に捕まっちゃいました!)』
赤羽根「なんだと…!?」
赤羽根「おい!そこ何処だ!場所を言えっ!」
ラン『西だ…急げ…!(西校舎の教室です!早く助けに来てください!)』
ラン『無とはいったい…うごごご!(早くしないと…闇に飲まれ…!)』
ブツン
赤羽根「くそ…っ」
クラリス「どうしたんですか!?」
赤羽根「皆!西校舎だ!ランがそこに捕まっている!」
5日目 夜 聖月学園 西校舎 2F 教室
五十嵐「一階の教室にも、物置にも誰もいません!」
コクラン「ソッチはどうなノ!?」
城ヶ崎「居ない!もう!一体どうなってるのよ!?」
和久井「あの時と同じだわ…」
赤羽根「ラン!おい、ラン!何処なんだ!」
赤羽根「返事をしろぉー!!!」
ラン「我は此処に在り(ここですよ)」
一同「!?」
5日目 夜 聖月学園 西校舎 2F 教室
赤羽根「…お前…!?」
ラン「心配をかけて済まないな(皆さん、お騒がせしました)」
和久井「一体どういうつもりなのよ!」
ラン「腹の一物は後で受け止めるとして、先に奴の仕掛けた幻術について説くとしようか(ごめんなさい…でも…これが、犯人の使ったトリックだったんです)」
安部「トリック…?」
五十嵐「あの…ランちゃん…一体どこから出てきたの…?」
ラン「至極単純に後をついてきただけよ?(何処からも何も、ただ東校舎からあなた達の後を追っただけですよ)」
白坂「??」
コクラン「どーゆーイミ?」
ラン「今宵より、それらすべてを解き明かさん(今から、順を追って説明します)」
ラン「惨劇を引き起こした元凶の物語は(…この一連の連続殺人の犯人…眠り姫の正体は…)」
ラン「遥か前…犠牲者たちが生み出した咎によって産み落とされ、始まった…(10年前、兵藤レナと篠原礼によって殺され、地下室に閉じ込められた…)」
ラン「彼の者の名は美音(美音という女性です)」
白坂「…!?」
ラン「彼女は地の下でカロンに魂を送り返されていた…(死んだと思われていた彼女は、二人に運ばれた地下で息を吹き返し…)」
ラン「そして、幾つもの年を重ねている間、復讐の爪を磨ぎ続けていた…(それから9年もの間、地下室で生き延びていたんです)」
城ヶ崎「そんなの…あり得ないでしょ」
ラン「そう思うのも無理はない…地の底には生命を繋ぐものなど何もないし…(確かに…あの地下室にある物は、錆びついた医療器具ぐらいで、食料になるものなんて何もない…)」
ラン「糧にならない無機質なものばかり…それでも人は生きようとすることを止められない(水は通っていますが、それでも持って一月…当然彼女は、ここから脱出する方法を模索しました)」
ラン「彼女に選択の余地など無く、光を求め、あらゆる抜け穴を探し、それを見つけた…(地下室を彷徨う視線は、やがて人が潜り込める程度の大きさの通気口に行き着く)」
安部「…」
ラン「望み虚しく、そこに光明は無く、虚空だけが続いていたが…(やっとの思いで潜り込み、中を進んでみたものの、どこをどう曲がっても行き止まり)」
ラン「ただほんの少しだけ、蜘蛛の糸の様な、仄かな施しを受けることが出来た(途方に暮れていた犯人ですが、ある場所に、地上からの思わぬ施しが降ってきました)」
和久井「思わぬ…施し?」
ラン「是ぞ(これです)」スッ
ラン「これは、ある魔術使いの落としもの…(私が手に持ってるこれ、なんだかわかりますか?)」
クラリス「飴玉…?」
コクラン「あ、それ、アタシが地獄の叫びを聞いて排水溝に落とした…!」
ラン「地底から伸びるアトラスの指先は、僅かに天からの雫を捕らえることが出来ていた(地下室の通気口は、とある地点で排水溝に合流していました)」
ラン「雫を落としていたのは他でもない、呪縛を恐れた生徒達…(そこは、犠牲者の二人が犯人を遠ざけようと広めた七不思議の内のひとつ…)」
ラン「皮肉にも、冥界の呼び声を聞く場所が真上にあったのよ(『地獄からの叫び声』が聞こえると言われる排水溝の真下だったんです)」
コクラン「そこでアタシの飴チャンをひろったのね…ということハ…」
ラン「罪を隠すために広めた怪談話…(犠牲者の二人が七不思議の噂を徹底して広めていたことが…)」
ラン「彼女らの恐怖の表れが、皮肉にも眠り姫の糧となっていた…(皮肉にも、排水溝に落とす身代わりの食べ物を絶やさない状況を引き起こし…)」
ラン「犠牲者本人が、復讐の種を育ててしまっていたのよ(結果として、犯人は食料を手に入れ、延命させることとなったんです)」
赤羽根「なんてこった…」
ラン「運命の日…パンドラの箱を開けた者がいた(そして一年前…転機が訪れた)」
ラン「禁忌きを暴き出した彼女はそれを証明するために人知れず地下に赴き…(七不思議の謎を解いた一ノ瀬志希は、学園中がもぬけの殻になる時間を狙って地下室に忍び込み…)」
ラン「解き放たれた眠り姫に命を狩られ…眠り姫は完全に覚醒した(そこにいた犯人によって殺され、彼女は入れ違いで地上に姿を現した)」
ラン「復讐を誓う眠り姫は、犠牲者に悟られないよう闇に隠れる…(地下室の鍵は元通りの場所に戻したのでしょう…来る復讐劇を円滑に進めるためには、自分が死んでいると思わせる必要があったからです)」
ラン「これぞ、恐るべき惨劇の序章…(これが、『眠り姫』誕生の顛末です)」
一同「…」
5日目 夜 聖月学園 西校舎 2F 教室
ラン「惨劇の下拵えとして、眠り姫は再びこの地に属し…(地上に這い出た眠り姫は、自分を地獄に落とした二人に復讐するため、再びこの学園に潜入した)」
ラン「全ての歯車がかみ合う刹那を狙って、絶えず身を伏せた(おそらく計画の殆どは早い段階で完成し、後は条件が揃う時期を待っていたのでしょう)」
赤羽根「条件…?」
ラン「その刹那こそ、惨劇の序章…第一のカタストロフ…(ええ…そしてその日こそが、第一の殺人が起きた日です)」
ラン「狙いは、番人を買って出ていた先駆の徒(おそらく本来ターゲットになっていたのは、その日宿直をしていた篠原 礼)」
ラン「だが、完全にかみ合っていた筈の歯車は突如軋み、破綻していった(しかし、周到な準備をして、いざ実行しようとしたタイミングで、計算違いが起きました)」
和久井「え…?」
ラン「真実に到達した者に、後継者がいたの(何らかの手がかりによって速水先輩が、眠り姫の正体に気付いてしまったんです)」
ラン「眠り姫の真実を知られることは、自身の破滅をも表していたから…(自分の正体が周りばれてしまうことは、復讐計画の失敗に直結する致命的な問題だった)」
ラン「選択の余地など無い…復讐のために発動した術は、真実を覆い隠すために使うことになった(焦った犯人は急遽予定を変更し、口封じのために、第一の殺人を篠原礼殺しから速水先輩殺しに切り替えました)」
白坂「あ…」
コクラン「そ、そうよ!それよ!早く、その密室トリックを説明しなさい!」
チャリン…
ラン「是が幻術の正体よ(犯人はこれを使ったんです)」
クラリス「西校舎の鍵…?」
ラン「これは偽りの符を纏った別物よ(そう見えますよね?確かにタグはそうです。でも、ついてる鍵は…私のアパートのものなんです)」
一同「!?」
ラン「この符によって、皆の脳裏に西の地を連想させたことこそが、罪に塗れた幻術だったのよ(皆がこれを西校舎のカギだと思い込んでいたことが、第二の密室崩しのトリックでした)」
ラン「事前にデコイを持っていた眠り姫は、識別符をすり替えて、偽物を差し出した(犯人は前もって別のカギを用意し、事件前にタグをすり替えて、ダミーの鍵を返したんです)」
ラン「これによって眠り姫は、西の地を完全に支配下に置くことができたのよ(誰がキーストッカーを見ても不審がられる心配は無く…犯人は堂々と西校舎の鍵を持ち歩くことができた)」
赤羽根「なるほどな…それは盲点だった…」
ラン「下拵えはこの幻術の行使により行われた(これによって犯人は、事件前、部屋中に足跡の付けられた現場を作ることが出来ました)」
和久井「でも、鍵を使えたからといって、あの夜の出来事を全部説明することはできないわよ」
和久井「だってそうでしょう?西校舎の中で速水が殺されてから、5分かからず私達は全員そこに駆けつけたのよ」
和久井「誰にも見つからずに速水の死体を運び出すことなんて…」
ラン「そのパラドクスは、既に私が解いている(たった今、私はその不可能を可能にして見せたところです)」
和久井「??」
×ラン「この符によって、皆の脳裏に西の地を連想させたことこそが、罪に塗れた幻術だったのよ(皆がこれを西校舎のカギだと思い込んでいたことが、第二の密室崩しのトリックでした)」
○ラン「この符によって、皆の脳裏に西の地を連想させたことこそが、罪に塗れた幻術だったのよ(皆がこれを西校舎のカギだと思い込んでいたことが、密室崩しのトリックでした)」
m(_ _)m
ラン「あの日、響き渡った断末魔をもう一度聞かせてあげる…(…あの夜の事を思い出してください)」
ラン「私達は盟主の号令にてこの場に集められた(私達は一度、東校舎の一区画に集められました)」
ラン「そして、我が神器に盟主からの凶報が届く…(その後、私のスマホに、速水先輩から助けを求める電話がかかってきました)」
ラン「彼女が西方を指した直後、咎人によってその首を括られた(速水先輩は西校舎に監禁されていることを伝えると、犯人に首を絞められ絶命する)」
ラン「だがその凶報こそが、眠り姫による幻術…(この時点で、私達は眠り姫の術中にまんまと引っかかっていたんです)」
ラン「何故なら、我が盟主は、既に敵の洗脳を受けた上で情報を寄越していたからだ(眠り姫の狙いは、あの電話で速水先輩の口から西校舎の名前を引き出し、私達を誘導することだった)」
ラン「子羊集いしこの様相こそ奴の狙い…(今の貴女達の様に)」
クラリス「どういうことですか?」
ラン「盟主の捉えられていた地は、西ではなく…東だった(何故なら、速水先輩が監禁されていた場所は、西校舎ではなく、東校舎だったからです)」
一同「!?」
5日目 夜 聖月学園 東校舎 1F 教室
ガラッ
ラン「眠り姫は、我が盟主を狂わせるために、現場に種を仕込んでいたのよ(犯人は、あるトリックによって、ここ、東校舎の教室を、西校舎に見せかけました)」
安部「一体どうやって…?」
ラン「さて、この場において、相応ぬものがある事に気付かぬか?(皆さん、この教室…どこかおかしくないですか?)」
一同「??」
白坂「ぁ…」
五十嵐「どうしたの?小梅ちゃん」
白坂「ひ、引き戸が、あそこにも…あ、ある…」
城ヶ崎「ホントだ…ここ西校舎じゃないのに、なんで…?」
ガラッ…
城ヶ崎「てかこれ…よく見たら文化祭の時に使った引き戸だ…ただ壁に立て掛けてあるだけじゃん」
赤羽根「つまり速水 奏は、あの引き戸があるか無いかで西校舎だと判断してたのか?」
ラン「視覚情報を頼りに、見えぬ空間を補完し認識する錯覚を利用されたの(引き戸の向こう側には隣の教室があるはずという、先入観を利用したトリックです)」
ラン「我が盟主は、移動もままならぬほど拘束されていた(速水先輩は、手足を縛られて身動きが取れない状態でした)」
ラン「極限状態の最中あの扉が全ての真実を握っていた…(特徴の少ない教室の中で、唯一東校舎と西校舎を判断できる材料は、あの教室間の引き戸の有無しかありません)」
ラン「しかしそれは、眠り姫があえて捏造せし偽りの情報…(それが犯人の罠だとも知らずに、先輩は私達に偽りの監禁場所を教えてしまった…)」
ラン「私に幻術を見せたことを確認した彼奴は直ぐに盟主の息の根を止めた(犯人は、速水先輩が目論見通り西校舎の単語を出したことを確認し、直ぐに絞殺…)」
ラン「その後屍を隠し、騒ぎを聞きつけた者を装って後をつけ…(死体をロッカーに隠し、何食わぬ顔で西校舎に急ぎ…)」
ラン「私達と共に惨状を目の当たりにしたことで、疑念を微塵も纏わぬ状況を手にすることが出来た…(私達と一緒に現場に居合わせることで、完璧なアリバイを作ることが出来ました)」
ラン「これが、霧のように屍を消した幻術の正体よ(このようにして、犯人はこの二つの心理トリックを組み合わせ、ありもしない幽霊を作り出しましたが…)」
ラン「しかしこの呪われし魔術には、最大の弱点が存在する(このトリックには、ある致命的な問題点がありました)」
白坂「あ、ある…問題…点…?」
ラン「すり替えは人知れずやらなければならない…(職員室の中で堂々とタグを付け替えることなんてできません)」
ラン「つまり一時でも、『持ち出す』必要性がでてくる…そしてそれは、確かなる物的証拠を生み出してしまう(だから犯人が鍵に細工をする時は、必ず何らかの理由をつけて西校舎の鍵を持ち出す必要があります)」
ラン「下拵えと後始末、二回とも、その血塗られた足跡を残してしまう…(事件前にタグをすり替える一回、事件後警察が来る前に一回…)」
ラン「それは…眠り姫の正体を指し示す…(どちらも同一人物が鍵を借りに来ています)」
赤羽根「…」
城ヶ崎「まさか…」
五十嵐「!?」
白坂「…」
コクラン「あ…!」
クラリス「なんて…こと…!?」
和久井「そんな…」
ラン「貴様が…『眠り姫』だ」
ラン「安部 菜々…本名は」
ラン「宇佐美 美音(うさみ みんと)」
安部「…」
5日目 夜 聖月学園 東校舎 1F 廊下
安部「な…」
安部「何をいってるのかなっ、ランちゃん」
赤羽根「…ラン、彼女には、第二の殺人の時、アリバイがあるんだぞ…?」
安部「そ…そうですよっ、私にはあの日…罠を仕掛けることなんて…」
ラン「貴様には事前に罠を仕掛ける余裕などない(確かに貴女には、事前に罠を仕掛けるための夕方4時半から6時半の間、完璧なアリバイがある)」
ラン「だが逆に、罠の存在も、無実の証明には決して成りえない(でも、罠を仕掛けた時間はアリバイとは無関係なんです)」
五十嵐「へ…?」
和久井「どういうことよ?」
ラン「犠牲者は、十字架に貫かれる前に絶命していたのだから(何故なら、十字架のトラップは、本当は兵藤先生が死んだ後に仕掛けられたものなんですから)」
赤羽根「なんだって!?」
5日目 夜 聖月学園 教会 礼拝堂
ラン「この場で起きた第二の断末魔を思い出すが良い…(あの時のことを思い出してください)」
ラン「亡骸はどんな惨状だったのか…(レナさんはどんな状態で十字架に貫かれていましたか?)」
コクラン「ドウって…」
クラリス「仰向けで…心臓を貫かれ…事切れていました…」
ラン「聖女よ…一度その場にて跪いてみよ(クラリスさん、十字架の場所で一度祈ってみてください)」
クラリス「?はい…」スッ…
ラン「さて、この瞬間裁きの鉄槌が落とされたとしたら、犠牲者の様相はどうなるかしら(みなさん、今の状態で十字架が落ちてきた場合、どういう体制になりますか?)」
赤羽根「あれ…?」
ラン「祈る聖女は空を仰ぐことができず、ただ体を折ってしまうだけ…(この状態で落とされたとしたら、上半身と水平に刺さるはずです)」
ラン「しかし犠牲者は、その状況とは矛盾した体勢で息絶えていた…(なのに兵藤先生は、上半身と垂直に、心臓を正確に貫かれていた…)」
ラン「即ちこれは、十字架で貫かれ絶命した事実こそが矛盾していた、ということを表しているの(つまり、兵藤レナは十字架が落とされたとき、既に仰向けに倒れていたということになります)」
安部「…」
ラン「貴様は神の御許で懺悔する犠牲者を自らの手で貫いていた(貴女は兵藤レナが朝7時に教会に入るのを確認した後、直ぐに自分も中に入って心臓を凶器で刺し、殺していた…)」
ラン「そして、その切創をさらに大きな剣で上書きするために十字架を落とした(その後、7時50分に作動する仕掛けをセットし、胸の切創ごと心臓を十字架で貫いたんです)」
赤羽根「刺殺の跡はそれで無くなってしまう…」
赤羽根「不自然な体勢の理由は、胸の切創を正確に貫く必要があったから…」
赤羽根「そして、罠を仕掛けたのは、偽の犯行時刻に捜査の目を向けるためだった…!」
ラン「怪異を演じた意図は、十字架の裁きが真実だと誤認させる為の布石だったのよ(これまでの犯行を全て七不思議の見立て殺人にした本当の理由は、この第二の殺人の直接の死因が、十字架によるものだと印象付ける為だったんです)」
ラン「違うか?眠り姫…(そうでしょう?宇佐美美音)」
安部「…」
安部「で…でもでもっ」
安部「確かに、二つの殺人を…ナナが行うことができたのかもしれませんっ」
安部「でも、それらは全部推測でしかないじゃないですかっ!」
安部「ナナがそんなトリックを使ったって証拠がどこにあるんですか!?」
ラン「断言するが、貴様はあの日、確かに私達に幻術を仕掛けていた(貴女はあの日確実に、園芸部室の鍵と西校舎の鍵とのタグのすり替えをしています)」
赤羽根「何故そう言い切れるんだ?」
ラン「日下の刻、盟主の報を伝えに来た私を覚えているか(事件当日の昼、私がミス研の活動中止を貴女に知らせた時のことです)」
ラン「貴様はあの時点で錠の番を任された者であった筈…(貴女はその日、園芸部の鍵当番だったはずです…なのに)」
ラン「しかし貴様は、籠の解放どころか封印を施した形跡すら見せなかった(私を部室に招いたとき、貴女は鍵を開ける素振りを一切見せずに、今日初めて開ける扉を開けて見せました)」
ラン「何故番人の任を怠っていたのか(前日に戸締りをしなければならなかった貴女は何故、それをしなかったんでしょうか?)」
安部「…」
ラン「術が無かったという事実が、明白なる回答よ(答えは一つ…貴女は戸締りしたくてもできなかったんです)」
ラン「肝心の解錠具を手放していたのだから(園芸部室の鍵を、西校舎のタグをつけた状態でキーストッカーに預けていたんですからね)」
安部「っ」
5日目 夜 聖月学園 教会 礼拝堂
安部「そ…」
安部「そもそも、根本的なところを勘違いしてないですか?」
安部「ナナが…眠り姫なはず、絶対にありえませんよ…!」
ラン「…」
安部「宇佐 美音が地下室に閉じ込められたのは10年前…だったら…」
安部「宇佐 美音は、もう大人になってるはずです…!」
安部「…わたし…まだ、学生なんですよ?17歳です!!10年前は7歳のちっちゃい子供でした!!」
安部「ランちゃんの言ってることはおかしいですっ!!」
ラン「全て恐ろしき真実なのよ(おかしくないんですよ…菜々さん…)」
ラン「何故なら、この地に聖女として溶け込むこと自体、眠り姫には叶わぬ行動だったのだから(眠り姫がこの聖月学園に教師として潜伏すること自体、絶対に不可能なんです)」
赤羽根「教師じゃ…不可能?」
ラン「この地は神に従属するもの以外の存在を拒んでいる(この学園は警備員を雇わず、学園の運営を全て教師に任せています)」
ラン「そして貴様がこの地に這い上がり、完全に覚醒した時には、任は全て決められていたのよ(そして一ノ瀬志希が失踪し、眠り姫が地下から脱出した日が丁度、その年の学園の教員採用試験の日なんですよ?)」
ラン「つまり、眠り姫が聖女と嘯く為の期は熟してはいない(つまり、眠り姫が聖月学園に教師として潜伏する為には、もう一年待つ必要があるんです)」
ラン「その刹那…私の頭脳には、かくも恐ろしき可能性に気付いた…(そのことに気付いたとき、私の中に恐ろしい仮説が浮かび上がった…)」
ラン「眠り姫は、不老法を発動せし異能者なのではないか…と(宇佐 美音は、10年経った現在でも、未成年の学生としてこの学園に潜伏することが出来たんじゃないか…)」
赤羽根「10年後も…未成年として…?」
ラン「可能性は既に、確信に変わっていた(その仮説を裏付ける証拠があるんです)」
ラン「何故なら、貴様が常にその証を持ち歩いていたからだ(貴女の生徒手帳から、この写真を抜き取らせてもらいました)」
ラン「貴様は言っていたな…この情景は、遡る必要もないほどの昨今であると(これ、この学園に転校したての時の写真って言ってましたね)」
ラン「だが、そうであるならば『瞳』に映っていなければならないものが存在していない(でも、撮って一年経ってない写真なら、当然写っていなきゃならないモノが、これには写ってない)」
ラン「天神の証よ(教会の屋根の十字架です)」
ラン「クロイツが天上を貫いた刻は、遥か前の事変によって明らかとなろう(屋根に飾られた十字架は、事故でこの礼拝堂に落ちたものを使ったそうです)」
ラン「それは眠り姫が地下に封印されたあの時間軸に近い場所に存在するということ…(事故が起きたのは9年前…宇佐美音が地下に閉じ込められた翌年です)」
ラン「この情景も同じ…遥か前のものなのよ…(つまり、この写真は9年以上前に撮られたもの…)」
ラン「ここに写る貴女は…我が瞳に映るものと寸分違わない…(この写真の貴女は…同じように制服を着て、外見も、背丈も、今と殆ど変わらない…)」
ラン「ましてや幼子などには到底見えない…(とても8歳の女の子には見えません)」
一同「…!!」
赤羽根「確かに…極限状態のストレスで、体組織に思わぬ突然変異が起こるという例は有る…」
赤羽根「食料が尽きるかもしれない恐怖で、体が成長を止めてしまったり、逆に子供のような姿に戻ってしまったり…」
赤羽根「あり得ないことではない…が…」
5日目 夜 聖月学園 教会 礼拝堂
五十嵐「そんな…」
小梅「…」
コクラン「信じられないワ…!」
城ヶ崎「菜々が…27歳…だったなんて…!」
ラン「…」
宇佐美「…」
宇佐美「十字架か…結局私は…天神様に裏切られっぱなしの人生だったんですね」
宇佐美「子供の頃、神様は本当にいるのかと、両親に聞いたことがあります」
宇佐美「両親はこう言いました」
宇佐美「神様は、私達を決して見捨てない…信じ続けていれば、きっと私達の前に現れ、そして皆を救ってくれると…」
宇佐美「私はその言葉を宝物にしていました…両親を事故で失って、居心地の悪い家に引き取られても…祈っていればへっちゃらでした」
宇佐美「天神様は私を見ていてくれる…そう信じて…あの日だって、そうでした…」
宇佐美「あの二人が間違った道に進んでしまわないようにと、心に十字架を掲げて、諭していました」
ラン「…」
宇佐美「目覚めたら、私は一人ぼっちで地の底に立っていました」
宇佐美「光が全く差し込まない…冷たい地獄に…」
宇佐美「大丈夫…これは神が私に与えた試練なんだって、試練を乗り越えればきっと神様が救ってくれるって…最初はただそう思ってました」
宇佐美「私は常に正しくあろうとしていたし…神に一度たりとも背かず、ただ、清く生きた私だから…」
宇佐美「救われないはずがない…そう確信していました」
宇佐美「壁にささやかな十字架を彫って、ただただ祈りました」
ラン「…」
宇佐美「来る日も来る日も…祈って…這いつくばって生きていました…」
宇佐美「どれほどの時間が経ったのか…ある時…だんだん自分が崩れていくのを感じました…」
宇佐美「なにか大切なものを失っているような、喪失感が、体を蝕んだ…」
宇佐美「いつのまにか…全てが信じられなくなった…あらゆる疑問が頭を駆け巡った…」
宇佐美「どうしてこんなことになったのか…なにがいけなかったのか…」
宇佐美「私はその時、生まれて初めて…ふと…神を疑った」
宇佐美「天神様は、本当に私を見ているのか」
宇佐美「…私のなにかがブツッと切れて…どす黒い感情が流れ込んできた…」
宇佐美「それと、誰かの声…」
お前は神を誰より信仰し そして誰より神を愛してきた
だが神はお前を愛さない 試練と称していたぶり こけにする
無償の愛を独占し あまつさえ代わりに差し出すのは 苦痛ばかり
神は有史以来それをずっと続けてきた 狂気の沙汰だ
だがお前を地下に閉じ込めた二人を見てみるが良い
奴等は己の罪から目を背けていながら あろうことか神に許されている
最も忌むべき罪人が あってはならない存在が 神に愛されている
お前の信仰に相対する見返りを 不条理にも奴等が享受している
こんな道理 許されてはならないと思わないか?
奴等に対して 一欠片でも 『嫉妬』の感情が芽生えているのなら
それは生きる者として当然の感情だ 生命の尊厳の証だ
宇佐 美音 神に代わって己が力を与えよう
ラン「…」
赤羽根「…」
宇佐美「壊れそうな私を支えてくれたのは…神でも…人でもなく…その声だった…」
宇佐美「あとは…貴女の推理通りです…」
宇佐美「わたしはそれから、地下でずっと、その声と一緒に復讐の計画を練っていました」
宇佐美「計画を邪魔する人間が居たら、容赦なく殺すつもりで生きていきました」
宇佐美「だから、扉を開けてくれた一ノ瀬志希を殺したときだって、何の感傷もわかなかった…」
宇佐美「まさか一ノ瀬志希が私のことを調べたメモを、速水奏に託していたなんて、想定外でしたけど…」
宇佐美「それでも復讐は完遂した…私のすべてを奪った二人に…私を救ってくれない神に…」
宇佐美「私はやっと…」
ラン「…一つ問う」
ラン「復讐に駆られた幾年の果て…幾多も駆け巡っていた疑問の答えは一つでも見い出せたのか?」
宇佐美「…」
宇佐美「見い出せたように見えますか?」
宇佐美「やり遂げた先に、なにかがあることを信じて、突き進んだ筈なのに…光が射してくれると思ったのに…」
宇佐美「結局何も変わらなかった…それどころか、私の中にはもう…何もない…生きる意味も…何もかも投げうっても…結局真っ暗なまま…」
宇佐美「私の人生って、なんだったの…?失うだけの人生に何の意味があるの…」
ラン「見い出せないのは、未だに貴女が眠り姫と化しているからよ」
宇佐美「え…?」
ラン「目を開けてさえいれば、かけがえのないものが見えていた筈…」
ラン「我が盟主が貴女の正体に気付いたとき、何故公僕より先に私達同胞に知らせたと思っている」
ラン「私に助けを求める時も、何故貴女の名を私に伝えなかったと思っているのだ」
ラン「それは、貴女が我等の同胞だったからに他ならない…己を頼って欲しかったからに他ならんっ!」
宇佐美「…」
ラン「我が盟主は、かつて貴女が犠牲者の二人にしたように、光を示していた…」
ラン「凶行に狂う獣の様な貴女を前にして、それでも諦めずに、支えるものとして、思いとどまることを信じていた…」
宇佐美「…」
ラン「…今こそ、目覚めの刻…貴女の見据えるべきは、瞼の裏の闇ではなく、天射す光なのだから」
宇佐美「…」
ラン(暗い奥底に閉じ込められ…誰かに解放される事を待ち続ける…眠り姫…か)
そ…っ
ラン「天の名において貴様を浄化する」
ラン「大人しくひれ伏し、この女から出ていけ。『嫉妬』の化身、レヴィアタン」キィィィン
宇佐美「ぁ…」
宇佐美(貴女は…もしかして…本当の…?)
レヴィアタン『…』
ラン「答えろレヴィアタン、貴様等は何故こんなことをしている」
レヴィアタン『…』
ラン「人と人を憎しみ合わせて、何の意味がある!?答えろ!!」
レヴィアタン『…答える謂れなど無い』
レヴィアタン『だが…それでも知りたいというのならば…』
レヴィアタン『我等が主に聞いてみるがいい』
ラン「主…だと…?」
レヴィアタン『会うこと叶えばの話だがな…』
バキンッ
ラン「…」
後日 放課後 聖月学園 ミス研部室
ラン(こうして、10年間にわたる、眠り姫の復讐劇は、幕を下ろした…)
ラン(あの事件から、もう一ヶ月…聖月学園はすっかり元の日常に戻ってしまった…)
ラン(存続が危ぶまれたミステリー研究部は、というと…)
コクラン「タン・ジエル・マン・ノウ・マン・チーゾン…カンダ」
白坂「むむむ…」
コクラン「イヤーッ!」
白坂「とぉーっ…!」
シーン…
白坂「し、失敗…」
コクラン「モウ…なんなのよー…せっかくパパにネクロノミコンを買ってきてもらったのに―」
クラリス「これが…死者の書…ですか」ペラペラ
ラン(クラリス先生が顧問を引き継ぎ、活動を続けることができている…)
コクラン「でも意外だワ。こういうの一番苦手そうな先生なのに」
五十嵐「篠原先生と同じくらい、戒律に厳しかったのにねー」
城ヶ崎「ま、でも存続させてくれて助かるよ、色々と」
クラリス「先の悲劇によって私は大切なことを学びました」
クラリス「天神様への信仰は、シスターとして生きる私達にとって欠かすことのできない善行です」
クラリス「しかし、信仰することの意義、それ自体への関心を疎かにしてしまうと、途端に信仰は『妄信』に変わってしまいます」
クラリス「だから、私は貴女達のやることを頭ごなしに止めようとはしません」
ラン「…」
クラリス「蔓延る悪に目を背け正義を語る者は、井の中の蛙が海の秩序を語るようなものだと」
クラリス「あらゆる悪事を見据え、罪を学び、理不尽に苛まれ、それでもなお正義を説き、神に祈る…それこそが私達の行うべき信仰です」
ラン「聖女よ…(クラリス先生…)」
クラリス「ですよね?ランちゃん」
ラン「ほえっ」
クラリス「あの時のランちゃんの傍には、天神様がおられた気がしてなりませんでした…」
クラリス「貴女の傍に居れば、私達はより正しい道を進むことが出来ると、確信していますっ」
ラン「は、はて何のことやらー(え、えーっとぉ…)」
クラリス「ふふっ♪」
ラン(ある意味…この学園は退屈しなさそうだ)
後日 夜 D県 ビル街 交差点
赤羽根「佐木竜香の時と同様、今回も協力者の足取りはつかめず仕舞いだったよ」
ラン「…」
赤羽根「別の人間を装う場合、行政手続きで一番手間取るのが戸籍なんだが…」
ラン「私は?」
赤羽根「お前は一応、俺の従妹で諸事情により外国暮らしをしていた、と説明して住民票は誤魔化せた」
赤羽根「だが、彼女はそううまくいかない。義務教育外の年齢で、日本人としてしっかりとした戸籍を持って、学期の節目に途中入学をしている」
赤羽根「しかも、殺して奪った様な戸籍かと思ったら驚いたことに、協力者が全くのゼロから完璧に作り出した戸籍だったんだ」
ラン「…」
赤羽根「家族構成もきちっとしていて、市長の判のある戸籍抄本が、調べてみれば嘘っぱちだなんて信じられるか?」
赤羽根「犯人たちの裏で糸を引いている黒幕…そいつは、想像以上に厄介な奴なのかもしれないな」
ラン「…」
ザ…ッ
ラン「…?」
赤羽根「どうした?」
ラン(あの子…)
赤羽根「さっきすれ違った子…?クラスメートか?」
ラン「いや…」
ラン(何か、妙な感じがしたけど…気のせいかな…)
後日 夜 ???
??「おやおや…彼女の一世一代の復讐劇も、あっさり台無しにされちゃったのか」
??「偽の戸籍までせっせと作ったボクの苦労も水の泡だ」
…
??「あの娘がラン…だね」
??「確かに要注意人物だ…」
…
??「半信半疑だったけど…実際にこの目で見て確信したよ」
??「あの娘なら、確かに同胞を三体も浄化し得るほどの技量も知識も持っている」
??「君達も、くれぐれも気を付けてね、油断していると、彼女に骨の髄まで暴かれ、浄化されてしまうよ」
…
??「何故理解るかって?簡単さ」
??「ボクと彼女は同類なんだ」
…
??「彼女はボクと同じ…天界から堕とされた存在なのだから」
魔月学園殺人事件 幕引
その後の設定(ED絵)
・一ノ瀬志希
天神教なのでそのまま天使に。その後速攻で階級を上げ見事御前天使に昇格。
大天使シキエルとして活動。超常的存在に触れることができて大満足。
唯一の不満は天使たちが無臭であること。
・速水奏
天に召されたてホヤホヤなので最下級天使ハヤミーとして活動。
ちなみに設定上、大天使になるまでは、ぷちデレラ体系。
昇格目指して修行中。
・兵藤レナ、篠原礼
生前の業により、善行を積むまでお迎えが来てくれない。
結局、しばらくは学園の敷地(主に小梅の近く)を漂うことになり、小梅の成績は地味にアップ。
あべなな27歳なんてトリック誰も気付かないだろうと思って、やっちまいました
それだけの為に全部構成したと言っても過言ではないのに速攻で見抜かれてて草
元スレ
神崎蘭子「魔月学園殺人事件」【堕天使探偵・第三幕】
http://ex14.vip2ch.com/test/read.cgi/news4ssnip/1453539614/
神崎蘭子「魔月学園殺人事件」【堕天使探偵・第三幕】
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コメント一覧 (38)
-
- 2016年01月24日 09:02
- 金田一少年の事件簿のパクリやんけ。
-
- 2016年01月24日 09:18
- ついに第3話でキャラ名ネタ切れで全員モバメンツに切り替えね。
小梅あたりは準レギュラー昇格しそうな感じか?
一体最後の謎の人物は何宮何鳥くんなんだ…。
-
- 2016年01月24日 09:32
- アイドルばかりは今回に限りってなってるから、予定としては次回からはなんかしらモブ使うんでない?
まぁ内容次第なんだろーが
しかしあれだ、こういう話だと先にここ見るやつ考えて一応オチ回避するかってなって楽しかった以外にうまく書きにくいなw
※3
前の二回見てこい、理由わかるから
-
- 2016年01月24日 09:33
- ※2だったすまんな
-
- 2016年01月24日 09:59
- 作者さんよぅ、アナベベ+10年越しったら、誰でも判ると思わなかったのかい?(後書先読派無視)
あと、脚本さんの趣味が、熊本弁としては教養的すぎると思った。
ネタ的に当然くどくなるとこはあるが、良かった。星なら3つ半、て辺りで。
-
- 2016年01月24日 11:41
- 米6
自分もあの人が犯人ならなんであの二人にバレずにいれたのかが不思議だと思った
バレるだろうからって推理の段階で犯人から外しちゃってた
-
- 2016年01月24日 11:45
- 熊本生まれのFFキャラがいるんですが大丈夫ですかね…
-
- 2016年01月24日 11:55
- まぁ、出オチを疑うよねw
-
- 2016年01月24日 12:42
- ※7
あり得ないってのと目を逸らしたかったってのがあったのかもね
地下であの人たちが何をやってたのか気になるなぁ
-
- 2016年01月24日 12:59
- 第一幕 悪魔王サタン→憤怒?
第二幕 魔神鬼マモン→強欲
第三幕 眠り姫レヴィアタン→嫉妬
黒幕? 堕天使(どっかの中二病)→ルシフェルかな?
現在 → ×憤怒 ×嫉妬 傲慢 ×強欲 色欲 怠惰 暴食
次はどの悪魔?
-
- 2016年01月24日 13:16
-
作者さん、続編楽しみにしてたよ
今回も面白かったよ
憤怒、嫉妬、強欲は殺人事件の動機になりやすいよなーってイメージできるけど、
色欲、怠惰、暴食はそういう事件の動機になるってイメージがあまりないから想像するのが難しいな
で、黒幕の何宮何鳥くんが傲慢を司る堕天使ルシファーなのか
※10
それはあれですよ、ミッション系女学校に通う女生徒定番のユリンユリンなユリックスですよ
-
- 2016年01月24日 14:45
- 色はむしろ人類どころか生物的に見ても、歴史上ずーっと事件の元になりまくってませんかね
ちょめちょめしたい奴がいう事を聞かない→思わず殺した、とか
-
- 2016年01月24日 15:13
- ※10
まぁ元ネタのほうでも確か「初対面でどうして都合よく全員にばれてねえんだよwww」って話だったし、ま、多少はね?
-
- 2016年01月24日 15:43
- いやぁ、奏が写真見つけたときの台詞で犯人わかりましたわー(白目)
でもやっぱアイドルは死なない殺さないで一部二部きてたのにこうなったのは少し惜しい気もする。
-
- 2016年01月24日 16:12
- このシリーズ面白いな。良く出来てる
今後もミス研チームは出番あるのかなー
-
- 2016年01月24日 16:19
- この人のssは毎回挿絵があるからありがたい
-
- 2016年01月24日 16:38
- ドラマ設定だしアイドルが犯人でも死んでも良いじゃん
-
- 2016年01月24日 19:06
- ※12,13
色欲そのものというより、色欲から生ずる憤怒、嫉妬、強欲で事件が起こりやすいのでは
性的にどうこうしたいけど思い通りにならない、のを無理矢理通すのは強欲
何故と怒れば憤怒
他人より自分の方がと思えば嫉妬
何はともあれ
今回も面白かったです
-
- 2016年01月24日 19:38
- めあいーは何ご立派様召喚しようとしてるんだよw
-
- 2016年01月24日 20:01
- S・Kキラーことジェイソンみたいな凶悪犯も登場するのかな。
-
- 2016年01月24日 21:05
- 眠り姫=年取らない=永遠の17才=菜々
と想像してたのでまさかの大当たり。
鍵トリックだけ分かったけど、流石に十字架は想像外だったわ。
闇ウサミン…こーゆー路線もアリだな。
-
- 2016年01月24日 22:47
- 飛鳥出て来んのか楽しみだな
-
- 2016年01月25日 01:07
- おもしろかったけど、謎解きパートはモロ金田一やんけ‼ て感じですな
地下室の辺りで犯人に合点がいっちゃったww
ぱっと思い出す辺りで、怪盗紳士と仏蘭西銀貨と…あと一個は重大ネタバレだから伏すけども
本編関係ないけど中身が金田一寄りなのにロゴがコナンっぽいのが違和感
-
- 2016年01月25日 02:40
- 石灰を肥料として使うことから園芸部の安部さんが怪しいと思ってたんだけど特に触れられて無かった
-
- 2016年01月25日 02:43
- 男子校に通ってたんだけど女子トイレなかったで。女子校は男子トイレあるんかな?
-
- 2016年01月25日 04:38
- 金田一の、七不思議殺人事件と香港の岩窟王のやつか。懐かしいな…
七不思議ってので壁に埋められた骸骨しきにゃんを連想したがそんなことはなかった、ミイラだったけど
-
- 2016年01月25日 09:42
- あくまで劇中劇とはいえ、SSだと大概強キャラ扱いの志希にゃんがこういう役回りになるのはちょっと珍しいかも?
それはそうと最後に出てきたランの同類を自称するボクっ娘……一体何者宮飛鳥なんだ……
-
- 2016年01月25日 10:59
- ネタバレになるので、オマージュもとだけ
学園七不思議…舞台とトリック
タロット山荘…ランの状況
仏蘭西銀貨…トリック
金田一少年の決死行…犯人に繋がる超重大要素
少なくとも、あと4幕。ミス研メンバーがどう絡むのか楽しみです。
-
- 2016年01月25日 11:08
- 元ネタの話で、十字架が刺さるっていうのはドラマの方の金田一の蝋人形城のラストオチであったような気がする
-
- 2016年01月25日 16:12
- ヘイ!アスカス!
-
- 2016年01月25日 17:28
- 異人館村と最新作の人形島のネタをやって
-
- 2016年01月25日 18:04
- まぁわざわざウサミンの写真をイラスト化してある時点でネタばらしも同然だよね
にじゅうななさいネタと金田一少年の決死行を知ってればだが
それでも面白かった
-
- 2016年01月25日 21:35
- けっきょくレナさん礼さんは何してたん?元ネタの方でもなぞのままなん?
-
- 2016年01月25日 22:16
- 劇中劇とはいえアイドルが死ぬのはなぁと。金田一の内容だったから死ぬアイドルが予測できたから若干ダメージは低くて済んだけど。
ウサミン犯人は最後まで気付かなかったw これ演じたウサミンの心境やいかにw
-
- 2016年01月26日 05:07
- ここでいう事じゃないだろうけど
アイドルだから死んだりは嫌だって奴はなんなんだろ
常務みたいに、かわいい子たちにはふさわしい仕事というものがある、みたいなやつなん?
まぁ流石にローティーン以下の子たちがそうなるのはどうかというのはわかるが
-
- 2016年01月27日 12:35
- 解答編の手前まで読んで、まさかウサミンが犯人とか無いやろ~なんて思いながら前の方読み返したら
露骨にウサミン犯人で笑うしかなかった
-
- 2016年01月30日 12:19
- これドラマって設定やろ…
待ってたぜ第三部ヒャッハー!
うん、今回の犯人丸わかりだぜ……あれ、こんなクソ寒い朝っぱらから誰だろう?
まぁ……今回の犯人さんには『や四ク(意訳:やはり四文字はクソ)』という言葉を送るよ(メガテニスト感)