アマテラスさんちに纏わる兄弟喧嘩エピソードはもはや伝統芸能レベル
- 2016年01月22日 01:40
- SS、神話・民話・不思議な話
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黄泉の国から帰ってきたイザナギが、三柱の神様を生みました。
その三柱の神様は、それぞれアマテラス、ツクヨミ、スサノオと呼ばれ、三貴神として後世まで語り継がれています。
アマテラス「私に世の統治などできるでしょうか……」
スサノオ「父ちゃん俺通勤が楽なとこがいい! できれば実家(高天原)の近くで!!」
ツクヨミ「私は別にどこでも構わないが」
アマテラス「まぁまぁ2人とも、まずはお父様の話を聞きましょう……」
アマテラス「わ、分かりました」
スサノオ「えー! いいなー姉ちゃん、在宅勤務みたいなもんじゃん!」
ツクヨミ「ま、姉上なら安心だな」
スサノオ「父ちゃんは姉ちゃんを猫かわいがりしすぎだよ!!」
スサノオ「ぶーぶー!!」
ツクヨミ「スサノオと一緒にしないでください、父上」
スサノオ「それどういう意味だよ!」
イザナギ「はい、じゃあ次はツクヨミね。ツクヨミには滄海原の統治を任せます!!」
スサノオ「父ちゃん大丈夫かよ。ツクヨミって基本こんな感じだぜ?」
イザナギ「うん、だから目の届く範囲でちょっと距離を置いてみようかなって」
スサノオ「なるほど」
ツクヨミ「ククク……」
イザナギ「あーお前はねー……えー、海」
スサノオ「海!?」
イザナギ「海」
スサノオ「太陽→月ときて、海!?」
スサノオ「だって海とか超遠いじゃん!! もう内陸県とかそういうレベルを超えて遠いじゃん!! 帰省するのも大変だし!!」
イザナギ「いやー、もうお前もそろそろ神としての自覚持った方がいいよ。独り立ちしよう独り立ち」
スサノオ「何それ!? あっ、これひょっとして遠回しに絶縁されようとしている!?」
イザナギ「ハハハ」
スサノオ「や、やめろよその乾いた笑い声! 目が笑ってねーよ!!」
スサノオ「姉ちゃんは高天原勤務だからそんなこと言えるんだー! ……あっ、そうだ!」
イザナギ「ん?」
スサノオ「どうせなら俺、母ちゃん(イザナミ)のいる根の国がいい!!」
イザナギ「やめとけ……それだけはやめとけ」
スサノオ「なんでよ」
スサノオ「マジかよ」
ツクヨミ「父上は見かけによらずアクティブだな」
イザナギ「そりゃお前、昔は全国飛び回って国やら神やら息をするように産んでたんだからな!」
アマテラス「それで、お母様には会えたのですか?」
アマテラス「えぇ……」(困惑)
スサノオ「女心ってよく分かんねーな」
ツクヨミ「スサノオには一生分からないと思うよ」
スサノオ「うっせーお前なんて性別すら不明じゃねえか」
スサノオ「子供か」
イザナギ「最終的には黄泉比良坂に岩置いてなんとか逃げきったんだけどさ」
ツクヨミ「それ本気のやつではないですか」
イザナギ「したら母さん、岩の向こうからな。『お前の国の子を毎日1000人殺してやる!!』って叫ぶわけ。もう超怖ぇーの」
アマテラス「そ、それほど怖いお方なのですね、お母様は……」
スサノオ「どこのイタズラ小僧だよ」
イザナギ「だからほんとよした方がいいよマジで。ていうか、アマテラスならまだしもスサノオとか会わせたら本当高天原が滅びそうだからやめて」
スサノオ「どういう意味だよ」
イザナギ「そのままの意味だよ!」
イザナギ「なっ、バカやめろ!!」
スサノオ「父ちゃんが止めても俺は行くぜ! どうしてもダメっていうなら泣いちゃうぞほらほら! うえーん!!」
アマテラス「よしよし、スサノオ泣かないで……」ナデナデ
イザナギ「そんなウソ泣きが通用するか! もしお前が母さんの前で粗相でもしたらとばっちり食うのは父さんなんだぞ!! だから本当やめろバカ! 本当やめろバカ!! 大事なことなので2回言いました!!」
ツクヨミ「父上必死だな」
アマテラス「お、お父様……それはさすがにスサノオが可哀そうです……」
イザナギ「神様でも怖いものは怖いんだよ! ……神様でもカミさんには勝てねーんだよ!!」
ツクヨミ「神とカミをかけたわけか……急に思いついて言いたくなったんだな、父上」
スサノオ「でも滑ってるぜ。父ちゃん」
イザナギ「やめろよ恥ずかしいだろ! 冷静に指摘するなって!!」
アマテラス「……」←笑いをこらえてる
ツクヨミ「何をしている?」
スサノオ「ん? 根の国に行くんだからさ、やっぱちょっとぐらいは! 身体を鍛えとかねーと! でやぁっ!!」ブォン
ツクヨミ「それで矛を振り回しているのか。相変わらず脳筋だな」
スサノオ「うっせー!」
スサノオ「かっちょいーだろ?」ヘヘン
ツクヨミ「勝手に持ち出してきたのか」
スサノオ「いや、手ぶらで母ちゃんのとこ行くのもなんだなーって。護身用兼手土産みたいな?」
ツクヨミ「手土産に離縁した夫と使ってたもの持って来られて嬉しいのだろうか……むしろ気まずい思いをすると思うのだが……」
ツクヨミ「ああ。気を付けてな」
スサノオ「ツクヨミも、滄海原行っても頑張れよ!」
ツクヨミ「フッ、言われるまでもない」
スサノオ「あっ、そうだ。出る前に姉ちゃんとこにも顔出しとくか」
アマテラス(スサノオ、大丈夫かしら……心配だわ)ポケー
アマテラス(ツクヨミはともかく、あの子は私がいないと何もできないから……)ポケー
侍女A『アマテラス様、大丈夫かしら』ヒソヒソ
侍女B『きっと弟君のことでも考えているのでしょう』ヒソヒソ
侍女A『アマテラス様って基本ブラコンよね』ヒソヒソ
侍女B「どうしたのです、騒々しい」
侍者「ス、スサノオ様が……!!」
アマテラス「えっ、スサノオ!? スサノオがどうかしましたか?」
侍者「ぶ、武器をもって高天原に攻め込んでまいりました!!」
アマテラス「ええっ!?」
……
侍者「……ご覧ください。あのように、矛を持たれて」
アマテラス「そ、そんな……あれはお父様が国産みの折にお使いになっていた矛……!」
アマテラス「ほ、本気なのですねスサノオ……うっ、うっ、うっ……」シクシク
侍者「ア、アマテラス様……お気持ちはお察しいたしますが、まずはスサノオ様を迎え撃つ準備をなさらねば!」
侍女A『いましれっと最愛の、って言ったわよね?』ヒソヒソ
侍女B『ブラコンの為せる業ね』ヒソヒソ
アマテラス「す、すぐにスサノオを迎え撃つ準備をしなさい……! ううっ」シクシク
侍者「はっ!」
スサノオ「おーい。姉ちゃんいるかー?」
侍者「止まられよ!!」
スサノオ「うぉ、な、なんだよ!?」
アマテラス「それより先に進んではなりません!!」
スサノオ「ね、姉ちゃん?」
スサノオ「えっ」
アマテラス「お願いだから昔の可愛いくて優しかった頃のスサノオに戻って!!」
スサノオ「な、何が?」
侍女A『可愛い頃なんてあったのかしら?』ヒソヒソ
侍女B『鬼も十八番茶も出花よ』ヒソヒソ
アマテラス「へっ?」
侍者「アマテラス様、騙されてはなりません。大体、挨拶をするだけだというのに何故武器を携えてくる必要があるのです?」
アマテラス「あ、いや……でもあの子、基本的にそういうところありますから……」
侍者「なんでそこまで全面的に信用してるんですか!!」
侍女A「ブラコンだからでしょ」
スサノオ「あ、これ?かっこいいだろー。父ちゃんの部屋からかっぱらってきた!!」
侍者「そ、その矛を使って高天原に攻め入るつもりなのでは!?」
スサノオ「なーに言ってんだよ。こちとらこれから天外魔境ともいえる根の国に赴くんだぜ? 生身じゃ危険が危ないだろーが」
侍者「くっ……そのようなことを言って我々を油断させようと……」
侍者「あっさり信じてるゥー!!!!」
侍女B「ブラコンって怖いわ」
スサノオ「なんだよ……じゃあこの矛を置いてからそっち行けばいいのか?」
アマテラス「ええ! さあこちらへいらっしゃい!」
アマテラス「え、えぇ……? でも相手はスサノオですよ……」
侍者「だからこそです! スサノオ様はイザナギ様の命に背いて高天原に留まりたいという意思を示していた! そこで、貴方を倒して高天原の統治権を奪い取るおつもりなのです!!」
アマテラス「で、でもスサノオですし……」
侍者「えーいラチがあかねぇ」
侍者「スサノオ様!貴方には本当に高天原に攻め込むつもりはないのですか?」
スサノオ「さっきから攻め込むとかなんとか……お前ら一体何言ってんだ?」
アマテラス「スサノオ……彼らは貴方が私を倒して高天原を乗っ取ることを画策しているのではないかと疑っているのです」
スサノオ「はぁ? じゃ、どーすればその疑いが晴れるんだよ?」
スサノオ「はぁ」
アマテラス「さあ、その十拳剣を私の元へ」
スサノオ「は? 何言ってんだ姉ちゃん。俺が持ってるのは剣じゃなくて矛……」
アマテラス「持っているじゃありませんか立派な剣が……ほら、ここに……ほら、ね? ほら」ハァハァ
スサノオ「えっ、ちょ、待っ」
ここでは互いのモノを交換し、それによって生まれた子の性別で事の真偽を判断したと言われています。
スサノオ「」グッタリ
侍者「怖ぇ……神様って怖ぇ……」ガクガク
侍女A「よくもまあ姉弟同士で……」
侍女B「ずっとこの時を狙ってた感あったわね」
アマテラス「いいですか? お父様に見つからないように、この御殿から離れてはいけませんよ? もし逃げ出そうとしても、八百万の神々が私の元に貴方を連れてくるでしょう」
スサノオ「うぐぐ……」
侍女A『これもう軟禁よね』ヒソヒソ
侍女B『ヤンデレのブラコンとか手の打ちようがないわ』ヒソヒソ
スサノオ「しかも姉ちゃんは父ちゃんの目が届かないことをいいことに毎晩俺に迫ってくるし……」ゲッソリ
スサノオ「どうしよう……」
スサノオ「……」
スサノオ「そうだ!!」ピコーン
侍者「ふぅー、やっと田んぼの畔切りが終わったー。さーて一息入れるとするか……」
スサノオ「畦道ドーン!!」バキバキィ
侍者「ななな! なんてことを!!」
スサノオ「ワハハ!!」
侍者「ぐぬぬ、アマテラス様の弟であるのをいいことに好き勝手しよってからに……! アマテラス様にチクってやる!!」
侍者「そうなんです。それはもう豪快に」
アマテラス「きっとスサノオには何か考えがあるのでしょう」
侍者「えぇ……」
スサノオ(チッ……これぐらいじゃまだ足りないか)
侍女A「」
侍女B「」
スサノオ「もう一巻で……記録更新だ……」ミチミチミチ
侍女A『ちょ、ちょっと! なんでこんな厠でもないところでウ○コしてんのよ!!』ヒッソォー!
侍女B『この姉弟ほんと狂気孕んでる……』ヒッソォー
侍女A「はい」
侍女B「それはもう立派な三段重を……」
アマテラス「き、きっとスサノオには何か考えがあるのでしょう!」
侍女A「えぇ……」
侍女B(どんな考えだよ)
侍女A「なんでちょっとうれしそうなんですか……」
侍女B「引くわー……」
スサノオ(こ、これでもダメなのか……)ガックシ
いい加減スサノオは御殿での軟禁生活に嫌気がさしていました。そこで、悪戯をしてここから追い出されようと目論んでいたのです。
しかし、事あるごとに姉のアマテラスはスサノオの行いをかばうのでした。
馬の死体<ビタァァァァァァン!!
侍女A「ヒィアアアアァァァァァ!?」ヌプッ
侍女B「ひぅん!?」ビクビクッ
侍女A「あ……ご、ごめん……///」ドキドキ
侍女B「ちょ、ちょっと……! ぬ、抜いて……早く抜いて……んっ!」ピクピク
アマテラス「こ、これは一体!?」
アマテラス「スサノオ!? スサノオ、気を確かに!!」
侍女A「ま、まさか驚いた拍子に梭がこんなところに挿入るなんて……///」ヌプヌプ ※梭=機織りに使う木製の道具
侍女B「あ、あんた絶対わざとでしょ……なんで驚いた拍子に梭が私の股間に飛んでくるのよ……ちょ、入れたり出したりすんな! あっ! はぅ!」ビクンビクン
馬の死体「」ブーン
侍者「何事かと思って駆けつけてみればまるで地獄絵図だ」
侍者「アマテラス様。お分かりになったでしょう。このままスサノオ様を御殿にとどめておけば、もっとひどいことが起きないとも限りませんぞ」
アマテラス「ねぇスサノオ?なぜこんなことをするのですか?姉さんの事が嫌いになったのですか?いっしょに高天原にいるって約束したよね?だから私と宇気比をしたんだよね?なんで?なんでこんなことするの?こんなのってないよ?お姉ちゃんスサノオの事ずっと見てたけど最近スサノオのこと分からなくなってきちゃった……昔のスサノオに戻って?スサノオすき。だいすき。スサノオ、スサノオ、スサノオ、スサノオスサノオスサノオスサノオスサノオスサノオスサノオスサノオ……」ブツブツ
侍者「」ゾクゾク
こうしてアマテラスは、ショックのあまり天岩戸に引きこもってしまいました。
ツクヨミ「お前……姉上に何したんだよ」
スサノオ「だって姉ちゃんが俺のこと閉じ込めて外に出してくれねーんだもん」
ツクヨミ「姉上はお前に対して過保護なとこあるからな」
侍者「いや過保護っていうレベルじゃねーぞ」
<スサノオスサノオスサノオスサノオスサノオスサノオスサノオスサノオスサノオスサノオスサノオスサノオスサノオスサノオスサノオ……
侍女B「重症ね」
侍女A「わ、私たちもどこか一緒の洞窟に引きこもっちゃう?」モジモジ
侍女B「黙れよクレイジーサイコレズ」
思金神「引いてダメなら押してみろという言葉がある。ここはひとつ、岩戸の前で祭を行ってはどうじゃろう」
侍者「祭……ですか?」
思金神「辺りが賑やかになれば、アマテラスも外の様子が気になって出てくるじゃろうて」
スサノオ「あーそうかもな。姉ちゃん縁日のわたあめとか好きだし」
伊斯許理度売命「じゃあ俺鏡作る!!」※八咫鏡
玉祖命「じゃ俺勾玉作る!!」※八尺瓊勾玉
太玉命「よっしゃ!! じゃあ俺占いの準備するわ!!」
侍者「この人たち、祭にかこつけてただ大騒ぎしたいだけじゃないのか……」
天宇受賣命「恋はスリル、ショック、サスペンス!!」
\ドッ!/
侍者「これ……大丈夫なんですかね? いろんな意味で」
ツクヨミ「ここまでやっといて大丈夫もクソもないでしょう」
ツクヨミ「ダメか……」
天手力雄神「こうなったら力ずくでこじ開けますか?」
天宇受賣命「まぁ待ってください。私にいいアイディアがあります……えー、アマテラス様ー、聞こえてますかー」
<……
<……
天宇受賣命「今ね、すっごいことになってますよー!スサノオ様がお召し物を全部脱いであられもない格好を……」
スサノオ「お、おいお前、なに勝手なことを……」
アマテラス「なんですって!!」ガラガラー
スサノオ「ゲッ! 出た!!」ビクッ
天手力雄神「こ、この岩戸を片手で!? マジかよ!!」ガーン
天宇受賣命「はいスサノオ様!脱いで!!」
スサノオ「な、何言ってんだお前!?」
アマテラス「服着てるじゃないですかあああああああああ!! うわあああああああああああ!!!」ユッサユッサ
スサノオ「ね、姉ちゃんやめ……そんな、揺らすな……ウプッ」ユッサユッサ
ツクヨミ「姉上、その辺にしとかないとスサノオ吐くぞ」
太玉命「この鏡を通してスサノオ様の姿を見れば、なんと裸になって見えるという優れものなのです」
天児屋命「さらに今ならこちら、相手に好きなポーズをとらせることのできる勾玉もついてお値段据え置きの19,800円!」※八尺瓊勾玉
スサノオ「お前らなんてもん作ってんだよ!!」
アマテラス「こ、これは神器として後世まで伝えるわ……」ツツー
ツクヨミ「姉上、鼻血出てるぜ」
ツクヨミ「これ以上ないってくらいハードランディングだけどな……」
スサノオ「いや全然落着してねぇよ!!」
思金神「それはそうと……ほい、これを」
スサノオ「ん? なんだこれ……って請求書!?」
スサノオ「これ全部俺が払うのかよ!?」
ツクヨミ「まぁ事の発端はお前だしな」
スサノオ「俺悪くなくねぇ!?」
侍女A「この鏡と勾玉すっごい……私も欲しい……」ハァハァ
侍女B「私の身体で遊ぶな!!」グググ
その後出雲に降り立ったスサノオは、当地を荒らしていた巨大な怪物ヤマタノオロチを倒し、生贄にされそうになっていたクシナダヒメを妻に迎えます。
また、このときヤマタノオロチの尾から出てきた草那芸之大刀(草薙剣)は、現在も三種の神器として現在に受け継がれています。
記録ではこの剣は一度高天原のアマテラスの手に渡った後、天孫降臨の際にニニギに授けられたと言われていますが……。
スサノオ「残りの支払いだけど、こないだヤマタノオロチって怪物倒したときにドロップした剣じゃダメ?」
思金神「草薙剣か……ま、仕方がないのう」
スサノオ「よっしゃ! やっとローン完済したぜ! じゃ、俺はこれで……」
思金神「姉上には会っていかんのか?」
スサノオ「いや……俺が結婚したなんて姉ちゃんに知れたら、クシナダヒメの危険が危ない気がするからやめとくわ……」ゲンナリ
思金神「難儀な姉を持ったのう」
ニニギノミコトという神が葦原中国、つまり現在の日本を統治するために高天原から地上へ降臨することになります。
ニニギはアマテラスの子である天忍穂耳尊と栲幡千千姫命の間に生まれた子であり、アマテラスの孫にあたります。
ニニギ「あーもう、子供じゃないんだから!」
天忍穂耳尊「母さんは心配性だなぁ」
栲幡千千姫「だって……ニニギがたった一人で葦原中国に行くのよ? トイレは済ませた? 向こうに着いたら生水には気を付けるのよ」
ニニギ「分かった分かった」
ニニギ「うん」
栲幡千千姫「ちゃんと高天原を出る前にお婆ちゃんの所へ顔出すのよ!」
ニニギ「分かってるって! じゃ、行ってきます!!」
栲幡千千姫「辛くなったらいつでも戻ってきていいのよ!!」
ニニギ「ばあちゃん、きたよ」
アマテラス「よく来ましたね。さあこちらへ」
ニニギ「おじゃましまーす」
ニニギ「高天原を出るのが初めてだからってさ。もう母さん心配しきりで」
アマテラス「栲幡千千姫には悪いことをしました……しかし、地上を治めることができるのはニニギ、貴方しかいないのです」
ニニギ「任せてよ!」
アマテラス「では、あなたにはこれを授けましょう」
アマテラス「これは八咫鏡、八尺瓊勾玉、草薙剣……三種の神器として、私が古くから守ってきたものです」
ニニギ「この鏡、なんか不思議な感じだ……向こう側が透けて見えるような……?」
アマテラス「神器ですから、迂闊に覗いてはなりませんよ」
ニニギ「は、はぁ」
ニニギ「分かりました」
アマテラス「では、気を付けて行くのですよ」
ニニギ「うん。じゃ、行ってきます!!」
こうしてニニギは、葦原中国へ向け高天原を旅立つのでした。
ニニギ「それにしても……この鏡は神器だから迂闊に覗くなってばあちゃん言ってたけど……やっぱり普通の鏡と何か違う気がするんだよなぁ」ウーム
栲幡千千姫「ニニギー!」
ニニギ「あ、母さん」
栲幡千千姫「おばあちゃんのとこ寄ってきた? せっかくだから、高天原の出口まで送ってくわよ」
ニニギ「別にいいって言ってるのに……ゲッ!!」
ニニギ(う、うわぁ……母さんが裸で写ってる)オエ
栲幡千千姫「ひょっとして……どこか具合でも悪いんじゃ!?」
ニニギ「い、いいから母さんはもう帰ってくれ! ここにいられるとトラウマになる!!」
栲幡千千姫「な、何よ……そんな言い方されると、母さんちょっと悲しい」ホロリ
そんなある日、笠沙の岬に赴いたニニギはそこで一人の美しい女性と出会います。
彼女の名は、コノハナサクヤヒメと言いました。
サクヤヒメ「うれしい……」ポッ
大山祇神「うちの娘が天孫に見初められるとは!」
天孫という皇太子をはるかに上回るチート級の超VIPステータスをもつニニギに娘が見初められたことを、彼女の父である大山祇神もまた大層喜びました。
そして、大山祇神はニニギの元にサクヤヒメとその姉であるイワナガヒメの二人の娘を嫁がせることにしたのです。
イワナガヒメ「どうぞよろしく……」
ニニギ「へぇ、あなたがお姉さんのイワナガヒ……メ……」
イワナガヒメ「どうなさいました? ニニギ様」
ニニギ「……」ダラダラ
イワナガヒメ「ニニギ様?」
後世ではイワナガヒメの風貌が余りにも醜かったことがその原因と言われていますが……。
大山祇神「なんたることを!!」
ニニギ「あの、本当にすみませんお義父さん……ですが、か、彼女の幸せのためにもですね……」
大山祇神「イワナガヒメを差し上げたのは天孫が岩のように永遠のものとなるように! サクヤヒメを差し上げたのは天孫が花のように繁栄するようにと誓約を立てていたからなのですぞ!!」
ニニギ「いや、あ、あの……」
大山祇神「イワナガヒメを送り返した今、貴方の寿命は相当に短くなるだろう!!」
因みに、一説ではこの呪いにより人間の寿命が短くなったとも言われています。
イワナガヒメは山の神として各地で崇められ、特に山猟を生業とする猟師たちの間では篤く信仰されています。
イワナガヒメ「……またオコゼが備えられてる」プルプル
イワナガヒメ「なによ! これって私に対する当てつけな訳!? 何が『山の神は醜いからより醜いものを捧げると喜ぶ』よ!」プンスカピー
イワナガヒメ「なんでそんな後ろ向きな理由で私が喜ぶと思うのよ!? ニートがホームレスみて安心してるのと同じ理屈じゃない!!」
イワナガヒメ「ムカツク!! ……でもオコゼは普通に美味しいから実は結構うれしいのよね」ヒョイ
イワナガヒメ(ん? 人間の若者……って全裸!! この真冬の山で全裸!? 頭おかしいんじゃないの!?)
若者「……山の神様! お願いします!!」
イワナガヒメ(えっ、何が!?)
若者「俺を一人前の猟師にしてください!!」
イワナガヒメ「えぇ……」(困惑)
イワナガヒメ「あの、ちょっと」
若者「」ビクッ
イワナガヒメ「な、何やってんの?」
若者「なっ……こっ、この時期の山は女人禁制だぞ!! どこから入った!?」
イワナガヒメ「いや、どこから入ったっていうか……私がさっきからアンタが連呼してる山の神様なんだけど。ていうかアンタ全裸って……警察呼ぶわよ」
イワナガヒメ「どういう精神状態よ」
若者「あ……でもひょっとして昔の基準だとこれで不細工なのかも……?」
イワナガヒメ「おい」
若者「というか、なんで神様が俺の前に? あっ、ひょっとして俺いま死にかけて夢見てる!? おぉ! なんというスノーマジックファンタジー!!」
イワナガヒメ「なんかめんどくさそうねコイツ」
イワナガヒメ「別にそんな寒さで縮こまったもの見ても何も思わないわ」
若者「……」ションボリ
イワナガヒメ「とりあえず、服着たら? 本当に死ぬわよ」
若者「服は麓の小屋に全部置いてきまんた」
イワナガヒメ「ははーんなるほど。取り返しがつかない系の変態か」
イワナガヒメ「なにその奇習」
若者「山の神に男根を捧げて山と一体化するっていう、まぁ簡単に言うと山とセ○クスして初めて一人前ってことですね」
イワナガヒメ「頭おかしい」
若者「でもあの、神話とか見てると神様サイドも相当なもんですよね」
イワナガヒメ「返す言葉もないわ」
イワナガヒメ「一応ね」
若者「なんか……伝承だとえらい不細工だって話なのに」
イワナガヒメ「それはアンタたち人間が勝手にそう思ってるだけだっつの」ビキビキ
若者「実際問題、独身ですか?」
イワナガヒメ「こいつ、グイグイくるわね」
イワナガヒメ「なんでよ」
若者「山とセ○クスさせてくれるって! 約束だったじゃないですかァァァァァァァ!!」
イワナガヒメ「私はそんなことひとっつも言った覚えないんだけど」
若者「ちくしょおおおおおおおお!!!!!!!!」(血涙)
イワナガヒメ「サクヤ……? 何よ、今日は珍しい客が多いわね」
若者「え、アレも神様ですか?」
イワナガヒメ「あんまりアレとかぞんざいな扱いしてると罰当てるわよ」
サクヤヒメ「お姉さま……そ、そちらの方は?」
イワナガヒメ「麓に住んでる人間の猟師らしいわ」
サクヤヒメ(なんで全裸……?)
サクヤヒメ「え、ええ……」
若者「おー、系統は違うけど二人とも美人ですね!」
サクヤヒメ「そ、そんな……」テレテレ
イワナガヒメ「アンタ、人妻口説いてんじゃないわよ」
若者「あっ、妹さんの方はもう結婚なさってる……てことは、えっと、あの、なんていうかその、元気出してくださいお姉様! ファイトだよ!」
イワナガヒメ「オコゼのトゲ刺すわよ」ビキビキ
サクヤヒメ「な、なんだか面白そうな人間ですね……」
若者「ははぁ、なるほど。つまりお二人は一緒にニニギって神様のとこに嫁がれた、と」
サクヤヒメ「え、ええ……」
イワナガヒメ「で、私だけ追い返されてきたってわけよ」
若者「なんてもったいない! だったらイワナガヒメ様俺と結婚してくださいよ!!」
イワナガヒメ「嫌よ。ただの人間なんて私たち基準で言ったら実家暮らしのニート以下のド底辺だもの」
若者「キッツ! 山の神様めっちゃ辛辣! 泣きそう! ていうか泣いた!!」ポロリ
イワナガヒメ「ところでアンタ、さっきから何ソワソワしてんのよ?」
サクヤヒメ「いっ、いえ!あの……な、なんでも……」モジモジ
若者「分かった! トイレだ!!」
サクヤヒメ「ち、違いますっ!」
イワナガヒメ「アンタよくデリカシーがないって言われるでしょ」
イワナガヒメ「何よ。何か用があって来たんでしょ?」
サクヤヒメ「う……」
若者「ちなみに僕は一人前の猟師になりにきました」
イワナガヒメ「アンタには聞いてないわ」
イワナガヒメ「……」
サクヤヒメ「……」
イワナガヒメ「……はぁー」
サクヤヒメ「……っ!」ビクッ
サクヤヒメ「ご、ごめんなさい……」シュン
若者「えっ、今までの会話のどこにこんな気まずくなる要素があった!?」
イワナガヒメ「アンタはちょっとうるさい」
若者「ひょっとして二人は喧嘩してるんですか?」
若者「へー」
サクヤヒメ「う、うぅ……」ビクビク
イワナガヒメ「こっちはもう気にしてないってのに……むしろそうやっていつまでも申し訳なさそうにウジウジされるのが一番腹立つわ」
サクヤヒメ「す、すみません……」グスッ
サクヤヒメ「う、ううぅ……」シクシク
イワナガヒメ「アンタ昔からそうなのよね。そっちは気を使ってるつもりなのかもしれないけど、傍から見ると結局は自分かわいさにやってるようにしか見えないのよね。あざといっていうか。そういうの見てて分かるから」
サクヤヒメ「そ、そんなつもりは……」メソメソ
若者「女の喧嘩ってサバサバしてて怖ぇ」
サクヤヒメ「ま、待ってください!! 実はその、私……」
若者「お姉さまのことが好きだったんです!」
サクヤヒメ「私と付き合ってください! ……って違いますっ!!」
若者「神様がノリツッコミした!!」
イワナガヒメ「めんどくせぇコイツ心からめんどくせぇ」
サクヤヒメ「実は私……っ、ニニギ様と喧嘩してしまったんです!!」
若者「へ?」
サクヤヒメ「さ、些細なことだったのですがその……趣味の事で口論になって、高天原を飛び出してきてしまって……」
若者「あ、そういや麓の小屋戻ったら酒あるけどもってきましょうか?」
イワナガヒメ「そうね。あとアンタついでに服着てきなさい。風邪ひくわよ」
サクヤヒメ「二人ともスルーですか!?」
若者「夫婦喧嘩は犬も食わ……なんとやらって言いますよ」
イワナガヒメ「そこまで言ったのなら最後まで言いなさいよ」
サクヤヒメ「お願いします! お姉さましか頼れる人がいないんです!!」
イワナガヒメ「嫌よ」
若者「神様が土下座してる……」
イワナガヒメ「全く……300年ぶりに私の所に顔を出したと思ったら、夫婦喧嘩で家を飛び出してきたなんて呆れてものも言えないわ」ハァ
サクヤヒメ「わ、私だって200年かけてニニギ様に分かってもらおうとしたんです!!」
若者「さすが神様。センチュリーな単位バンバン飛び出してくるな」
サクヤヒメ「そ、それが……これを」
イワナガヒメ「何よこれ」
サクヤヒメ「このところニニギ様が下界に降りて、度々入手されている書物です……」
若者「これ薄い本やんけ!!」
若者「神様コミケきてんかよ! しかも夏冬両方!?」
イワナガヒメ「くっだらない……あーもう、余りにくだらなすぎて腹立ってきた」ムカムカ
サクヤヒメ「お、お姉さま! 落ち着いてくださいお姉さま!!」
若者「いやでもこれ人間目線から見てもかなりくだらない話っすよ……」
サクヤヒメ「今回だけは……今回だけはお姉さまに言ってもらわないと……!」
若者「えっ!? 旦那さん初犯じゃないの!?」
サクヤヒメ「そ、その……ニニギ様は昔から春画などの類を集めるのが好きで……」
若者「分かる」
サクヤヒメ「ニニギ様のお母様の栲幡千千姫様は躾に厳しい方でしたので、どうやらその反動らしいのですが……」
若者「へー」
若者「神様がブチ切れるとかものすごいことになりそうですね……」
サクヤヒメ「お姉さまがお怒りになられると、富士山が噴火してしまうのです……」
若者「ゲッ、ひょっとして300年前の宝永大噴火って……」
サクヤヒメ「す、すみません……その時ですね」
若者「春画が起因で富士山大噴火しちゃうのかよ! ちくしょう、なんて世の中だ!!」
若者「そうっすよ。妻に隠れてエ口本集めなんて可愛いもんじゃないですか」
サクヤヒメ「だ、ダメです!! ただ読むだけならまだしも、最近はうつろな目で『あー、神の力使っても二次元の世界には行けないのかー。こんな世界なくなっちゃえばいいのにねフヒッヒヒヒ』とか呟いてるんですよ!?」
若者「うわぁ」
イワナガヒメ「うわぁ」
若者「火須勢理?」
イワナガヒメ「サクヤんとこの真ん中の子よ。要するに私の甥っ子ね。ていうか火須勢理もいい歳なんだからちゃん付けはやめなさいよ」
サクヤヒメ「こ、このような有害図書が家にあっては、いつまでたっても火須勢理ちゃんがひとり立ちできません!!」
若者「火須勢理ちゃんなにニートなの?」
イワナガヒメ「兄(火照命)と弟(火遠理命)は自立して暮らしてるんだけどねぇ……」
イワナガヒメ『め ん ど く せ ぇ』
若者「脳内に直接!?」
サクヤヒメ「もはや口を動かさずに神通力を使ってしまうくらい面倒くさいのですねお姉さま!?」
イワナガヒメ「早く帰ってオコゼ唐揚げにしよ」スタスタ
若者「神様に死ぬほど送られたらオコゼ絶滅しそう」
イワナガヒメ「別にエ口本くらいいいじゃない」
若者「神様がエ口本って言った!!」
イワナガヒメ「お前はもうお黙り」
イワナガヒメ「ア、アンタ……そんな理由でニートの孫連れて帰ってこられた日にはお父様いよいよ泣くわよ……しかたないわね、今回だけよ」
サクヤヒメ「あ、ありがとうございます! お姉さまぁぁぁぁあ!!」
若者「イワナガヒメ様がデレた!!」
イワナガヒメ「不出来な妹を持つと苦労するわ……」ハァ
若者「今度はツンだ!!」
イワナガヒメ「うるせぇ」
イワナガヒメ「はいはい……ったく」
若者「やっぱりなんだかんだ言っても、最後は妹のお願いを聞いてあげる気のいいお姉ちゃんなんすね~」
イワナガヒメ「アンタねぇ……サクヤが私に頼むのは、色々と腹が立つ理由があんのよ」ビキビキ
若者「あっやめて富士山噴火しちゃう」
若者「はぁ」
イワナガヒメ「あれ、原因は私の顔にあったんだけど」
若者「不細工で追い返されたっていう?」
イワナガヒメ「ほんと後世にそうやって伝承されてんのムカつくわー……じゃなくてね……」
サクヤヒメ「ふつつか者ですが……」
イワナガヒメ「どうぞよろしく……」
ニニギ「へぇ、あなたがお姉さんのイワナガヒ……メ……」
イワナガヒメ「どうなさいました? ニニギ様」
ニニギ(マジかよ……このイワナガヒメってひと、母さん(栲幡千千姫命)に瓜二つなんだけど!!)ガクガク
イワナガヒメ「?」
イワナガヒメ「ニニギ様、私の顔に何か……?」
ニニギ「い、いやぁ!! イワナガヒメさん、俺のよく知ってる人にそっくりだなーって!!」
イワナガヒメ「は、はぁ……?」
ニニギ(む、無理だよぉ!! 母さん相手に夜の営みなんてできないって!!)
~回想おわり~
イワナガヒメ「実際、栲幡千千姫様に会ってみたら自分でも引くくらい似てたわ」
若者「うける」
イワナガヒメ「……」ギチギチ ←ヘッドロック
若者「あっごめんなさいやめて富士山じゃなくて俺の頭噴火しちゃう脳出ちゃう」メキメキ
若者「そりゃそうっすよ……母親にエ口本のこと注意されるとか最低最悪じゃないっすか……」
イワナガヒメ「それでしばらくは懲りてたみたいなんだけどねー……やっぱり喉元すぎれば、熱さを忘れるってやつかしらね」
若者「……イワナガヒメ様、なんかちょっと嬉しそうっすね?」
イワナガヒメ「そう? ま、あの時嫁に迎え入れてくれなかった腹いせに、色々憂さ晴らしできるいい機会でもあるしね」
若者「うわぁ」
若者「いやぁそれが……なんだか眠くなってきちゃって……身体動かないっぽいんですよね」
イワナガヒメ「そりゃもう何時間もその恰好(全裸)だしねぇ」
若者「あれ? これひょっとして俺死ぬ感じですか?」
イワナガヒメ「まぁ常識的に考えればそうでしょうね」
イワナガヒメ「……一緒に来る?」
若者「へっ?」
イワナガヒメ「ま……久々にこんなくだらない愚痴聞く相手になってくれたし……じ、従者くらいになら、考えてやらないこともないわ」
若者「やべぇ神隠しされる!!」
イワナガヒメ「来ないの? ここで一人寂しく凍死しとく?」
イワナガヒメ「別にここゲレンデとかじゃじゃないし。私恋に落ちてないし」
若者「いや、俺が!!」
イワナガヒメ「アンタが? 私に?」
若者「そう!」
若者「イワナガヒメ様、顔がニヤけてますよ」
イワナガヒメ「ニヤけてないし! ああもうこっちみんな!」
若者「イワナガヒメ様かわいい!!」ヒューゥ
イワナガヒメ「うるさい!!」
サクヤヒメ「こ、子供ができました///」
ニニギ「えっ」
従者A「た、たった一晩でですか!?」
従者B「ちょっと二人とも絶倫すぎんよ~」
従者A「ニニギ様まさか!! 認知しない気っすか!?」
ニニギ「ち、違わい!! ただ、もし俺の子じゃなくて国津神の子だったりすると、あとで高天原でゴタゴタ揉めそうだし……」
従者B「ニニギ様最低ー! 出会ったその日にやることやったくせに!!」
ニニギ「う、うるさい! やることやったとか大きな声で言うな!!」
サクヤヒメ「そ、そんな……心外です……ううう」シクシク
従者B「ドメスティックバイオレンス!!」
ニニギ「サクヤ、違うんだ!! そんなつもりは……」
従者A「ていうかニニギ様……新妻相手にさすがにあれはまずいですって」
従者B「そうですよ。あれじゃああまるで、ご自身の保身しか考えていないようにしか聞こえませんって」
ニニギ「お前ら急にマジレスモードになるのやめてよ」
ニニギ「サクヤ、疑ってすまない……そうだな、その子が私とサクヤの子であることは疑いなk」
サクヤヒメ「分かりました……それでは、宇気比を行いましょう……」
ニニギ「えっ」
サクヤヒメ「私が産気づいたら産屋に火を放ち、もし無事に生まれたのならそれはニニギ様の子でございます!」
ニニギ「いや、あの、ちょっと待ってそんな、別にそこまでしなくても……」アタフタ
従者A「神様の発想ってぶっ飛んでんな」
従者B「エクストリーム出産」
火が辺りを照らしはじめた頃に生まれた子を「火照命」。
火の勢いが強まった頃に生まれた子を「火須勢理命」。
火が弱まり始めた頃に生まれた子を「火遠理命」。
3人にはそれぞれこのような名前がつけられたのでした。
火須勢理命「Zzz...」
火遠理命「バブー」
サクヤヒメ「ニニギ様……貴方の御子でございます……」
ニニギ「おっ、おう……よ、よく頑張ったな、サクヤ……」
産婆「死ぬかと思った……」
火照命「父ちゃん、母ちゃん。俺、ここを出て一人で暮らしてみようと思うんだ!」
サクヤヒメ「ええっ!?」
火遠理命「兄上が行くというのなら当然私もついて行きます」
サクヤヒメ「火遠理ちゃんまで……火須勢理ちゃんは!?」
サクヤヒメ「火須勢理ちゃん! そうよね!! みんなずっとここにいてもいいのよ!!」ギュー
火照命「母ちゃんはそれでいいのか……」
火遠理命「この社会不適合神め」
ニニギ「サクヤ、よいではないか」
サクヤヒメ「ニニギ様!!」
サクヤヒメ「そんな……まだ子供だというのに……」
火照命「いやもう結構いい大人だよ俺ら」
火遠理命「甘えているのは火須勢理だけだ」
火須勢理命「お前ら黙ってても掃除洗濯してくれてメシまで出てくる生活のどこが不満なんだ?」ダラダラ
火遠理命「このクズが」
火照命「はいはい、持った持った」
サクヤヒメ「トイレは済ませた? 向こうに着いたら生水には気を付けてね」
ニニギ(うーん、このやり取りどこかで見たことがあるぞ)
火遠理命「心配には及びません、母上。兄上は私が身を挺してでもお守りします」
火照命「なんだ父ちゃん?」
ニニギ「お前たちに、これを渡しておこう」
火遠理命「これは……弓矢と釣り針ですか」
ニニギ「そうだ。それぞれこの猟具をもって、片方は山へ、片方は海へ住むといい」
火照命「じゃー俺この釣り針もらうわ。海好きだし」
火遠理命「父上! 私にも釣り針を! 私も海に住みます!!」
ニニギ「いやでもあの、バランスってものがね……?」
火遠理命「お願いします! 父上!!」
火遠理命「は? ニートのお前にだけは言われたくないわ」
サクヤヒメ「火須勢理ちゃん、火遠理ちゃん、喧嘩しないで……」オロオロ
ニニギ「で、では、気を付けてゆくのだぞ」
こうして、兄の火照命は海で漁をする『海幸彦』として、弟の火遠理命は山で猟をする『山幸彦』として、下界で暮らすこととなりました。
山幸彦(火遠理命)「今日も大漁ですね……兄上」ボソッ
海幸彦「うおっ!? 火遠理、じゃなかった山幸彦いたのかよ!!」ビクッ
山幸彦「フフフ……この山幸彦、兄上とは常に共にいる所存でございます……」
海幸彦「お、おう……」
海幸彦「おぉ、いつも悪いな!」
山幸彦「よいのです……私は兄上の嬉しそうな顔さえ眺めていられれば、もうそれだけで……おっ、おふぅ……」ハァハァ
海幸彦「じゃ、さっそく鍋にでもしy」
山幸彦「私にお任せください兄上!!」
海幸彦「お、おう……」
山幸彦「お待たせしました、兄上」グツグツ
海幸彦「おー美味そう。いただきます」モグモグ
山幸彦「お味はいかがですか?」
海幸彦「え? 美味いよ。こっちにくるまで知らなかったけど、お前結構料理上手かったんだな」モグモグ
山幸彦「兄上のために家を出る前に練習したのですよ……もしよければ、毎日でも私が兄上に食事を作って差し上g……///」
海幸彦「あ、そういや全然話かわるけどさー」
海幸彦「えっ……なんで舌打ち……?」
山幸彦「いえ、何でもありません」
海幸彦「そ、そうか……で、話は変わるけど、山での猟ってどんな感じなんだ?」
山幸彦「山での猟ですか? ……そうですね、取り立てて話すようなこともないのですが……」
山幸彦「コツですか……そうですね、まずは獲物に気付かれないよう、気配を殺すことですね」
海幸彦「なるほど。たしかにお前気配消すの上手いからな。さっきもいつの間に俺の後ろに立ってたのか全然気がつかなかったしよ」
山幸彦「ええ、兄上は私の一番大きな獲物ですからね……」ボソッ
海幸彦「なんか言ったか?」
海幸彦「いいのか?」
山幸彦「ええ。そこにある私の弓矢を使っていただいて構いません」
海幸彦「え、アレ? いいのかよ、いつも使ってる大事なモンじゃねーか? 悪いよ」
山幸彦「構いません」
山幸彦「いいのです」
海幸彦「替えも効かないだろうし……」
山幸彦「いいのです!! 兄上は是非私の道具を使って山へ狩りに!!!!!」
海幸彦「わ、わかったよ……そこまで言うなら、明日はちょっとお前の弓矢借りて山へ行ってみようかな……?」
海幸彦「そうだ!! じゃあその間さ、お前は俺の釣り針を持って海に出てみるといいよ!!」
山幸彦「えっ」
海幸彦「どっちが獲物をたくさんとれるか競争しようぜ!!」
山幸彦「チッ!!!!」
海幸彦「えっ……また舌打ち……?」
海幸彦「ていッ!」シュッ
雉「当たるものかよ!」ヒョイ
海幸彦「てやッ!」シュッ
兎「当たらなければどうということはない」スカッ
海幸彦「くっそー、全然当たらねぇ……さすが名前に海を冠してるだけあるな俺。山での狩りは向いてねぇや……この弓矢は山幸彦に返そう」
山幸彦「兄上の釣り針、か……」
山幸彦「……ひょっとして、この針が失くなれば、兄上は私と一緒に山で暮らす道を選ぶのでは?」
山幸彦「もしそうなれば、毎日兄上と二人きり……」
山幸彦「……」
山幸彦「兄上、申し訳ありません」ポチャン
海幸彦「いやァ~、全然獲れなかったわ!」
山幸彦「それは残念です」
海幸彦「やっぱ海幸山幸言うだけあって、それぞれ自分の道具を使わないとダメってこったな! で、そっちはどうだったよ?」
山幸彦「実はその、兄上……実に申し上げにくいのですが……」
海幸彦「ん?」
海幸彦「はぁ!? 針を失くした!?」
山幸彦「申し訳ありません……」
海幸彦「マ、マジかよ……」
山幸彦「かくなるうえは私t……」
海幸彦「ああ、いいよいいよ。使えって言ったのは俺だし、気にするな……」
山幸彦「えっ」
山幸彦(嗚呼……兄上はなんて優しいんだ! 釣り針を失くした私を責めることなく、自分を責めるだなんて!!)
山幸彦(そんな兄上を私は身勝手な考えで欺こうとした! 私はなんと愚かなんだ! バカめ! 死んで詫びろ火遠理!! お前には兄上と共に暮らす資格などない!!)
山幸彦「分かりました……兄上……」ユラリ
海幸彦「ん?」
海幸彦「えっ……いいよ、それだってお前が昔から使ってる大事な……」
山幸彦「しばしお待ちください! 兄上!!」ピャー
海幸彦「あ、おい待てって! 山幸彦!!」
……
山幸彦「兄上、針を千本作ってまいりました……!」
海幸彦「お、おう……」
山幸彦「元の針には及びませんが、どうぞお納めください……」
海幸彦「そ、それよりお前ちゃんと寝たのかよ? 目の上下左右にクマができてるぞ?」
山幸彦「そうですよね……やはり私の作った針など、受け取ってはもらえませんよね……」
海幸彦「いや、あの……」
海幸彦「いやお前、無茶言うなって!! 寝不足で変なテンションになってるぞ!!」
山幸彦「兄上! 私を信じてください!!」
海幸彦「待て! 寝不足で海に行くのは危険が危ないからやめろ!!」
山幸彦「うわああああああああああああああああああああ!!!!」
山幸彦(これでは兄上に向ける顔がない!! 兄上! ああ兄上!! 兄上、お慕い申し上げておりました!! 兄上ぇぇぇええ!!)オロローン
塩椎神「おや……? 誰ぞあそこで泣いておるのう」
山幸彦「ウフフ……兄上……こんなダメな私をどうか存分にけなしてください……」ブツブツ
塩椎神「えぇ……」(困惑)
塩椎神「あの、ちょっと……」
山幸彦「ああ、すみません……今死にますから……」ヨッコイショ
塩椎神「ちょちょちょ! ちょっと待て! 早まるな!!」
山幸彦「私はこのまま魚の餌となり、兄の血肉となって共に生きることを決めたのです……」
塩椎神「ちょっとなにコイツ!? こんなの海に解き放たれたら困るんだけど!! いいから何があったのか話してみ!?」
塩椎神「ははぁ、それで兄上の大事な釣り針を失くしてしまったと」
山幸彦「ええ……」
塩椎神「しかし、その償いに1000本の針を納めてもなお許しを与えぬとは、心の狭い兄じゃのう」
山幸彦「いま兄上の事を心が狭いっていったか!? 兄上のことを愚弄したな!! 貴様ァ!!」ガクンガクン
塩椎神「や、やめろそんなに揺らすなやめ、オエエエエェェェェッ!!!」ユッサユッサ
塩椎神「ゲホゲホ……そ、そんなにその針を見つけ出したいのなら、そこの小舟にのって海神の元へ向かうとよかろう……」ゲッソリ
山幸彦「海神……?」
塩椎神「この海を司る神じゃ。海神に聞けば、この海のどこに釣り針が落ちたか分かるじゃろうて……」
山幸彦「それは本当ですか?」
山幸彦「よし、これくらいのサイズでいいか」←石拾ってる
塩椎神「えっ、ちょ」
山幸彦「兄上!!」ドボーン!!
塩椎神「うわ石抱いて身投げしおった!! 小舟使えと言うたじゃろうに!!」
侍女「さーて水を汲んで来なくちゃ」
山幸彦「」ゴボゴボ
侍女「」
侍女「……えっ」
豊玉姫「どうしたのです?」
豊玉姫「だれが親方ですか」
山幸彦「」
侍女「すでに死にかけてますね」
豊玉姫「チアノーゼ出てますね」
侍女「あ、口からなんか出てきた」
豊玉姫「勾玉のようですね。身分の高いお方なのでしょうか……」
侍女「自殺ですかね?」
豊玉姫「まだお若いというのに勿体ない……」
侍女「しかもわりとイケメンですよね」
侍女「どこを何に使うおつもりですか……」
豊玉姫「とにかく、その器に遺品(勾玉)を入れ持ち帰りましょう」
侍女「はい……あ、あれ? 勾玉が器にくっついて取れなくなった!?」
豊玉姫「なんと……このお方は一体……?」
侍女「有名なマジシャンとかですかね?」
豊玉姫「父上、これを……」
海神「んん?」
侍女「この方の吐き出した勾玉が、器について離れなくなったのです」
海神「この方……? あっ」
海神「このお方は天孫ニニギ様のご子息、虚空津日高様じゃァァァァァ!!」ガクガク
豊玉姫「ええっ!?」
侍女「マジなのですか」
海神「ヤバイ死にかけとるやんけ! すぐに蘇生措置を!!」
ちなみに虚空津日高は火遠理命、つまり山幸彦の尊称とされています。
豊玉姫「お気づきになられましたか、虚空津日高様!!」
山幸彦「虚空津日高……? 私は、一体……?」
海神「もしや、記憶を失っておいでか?」
山幸彦「わ、私は何故ここに……?」
山幸彦「海の上……? するとここは」
豊玉姫「ここは、海を統べる私の父、海神の宮殿です」
山幸彦「海神……」
海神「虚空津日高様。もしよろしければ、その豊玉毘売を嫁にもらってはいただけまいか?」
この間実に三年。一説ではこの逸話が後の浦島太郎伝説の元になったと言われています。
豊玉姫「虚空津日高様……これは、私たちが出会った日の記念です」
山幸彦「記念? ……ほう、これは綺麗な勾玉だね」
豊玉姫「やはり、覚えておいでではないのですね……これは、あの日貴方様の口から出てきたものなのですよ」
山幸彦「私の? そうだったのか……ちょっと見せてもらってもいいかな?」
そういって山幸彦はその勾玉を手に取ります。
山幸彦「ふむ、これは……?」
…………
……
…
火照命『おい火遠理! これみろよ!!』
火遠理命『これは……なんと美しい勾玉なのでしょう、兄上』
火照命『なんかさっきクシャミしたら出てきた!!』
火遠理命『是非私に下さい!!』
火照命『えっ、べ、別に良いけど』
火遠理命『いただきます!!』ゴクリ
火照命『え、えぇ……』
~~~
豊玉姫「いかがなさいました? 虚空津日高様」
山幸彦「兄上ぇぇええええ!! うわああああああああああああああ!!!!」
豊玉姫「虚空津日高様!?」
山幸彦「兄上の針ィィィィィィィィイイイ!!!」
豊玉姫「虚空津日高様がご乱心に!!」
山幸彦「兄上ぇ!! 針ィィィ!! 失くしたァァァァァ!!」ガクンガクン
海神「ちょ、そんな揺ら……ウオエエエエ!!」ゲロロロロ
豊玉姫「お父様!!」
山幸彦「あああああああああああああ!!!」
侍女「どういうことなの……」
海神「な、なるほど……つまり虚空津日高様は、兄上の釣り針を探しにここにおいでになられたと……」ゲホゲホ
山幸彦「ここに来ればすぐに見つかるだろうと塩椎神に聞いたのです!! さぁ早く針を!!」
海神「お、落ち着かれよ……今、海の魚達を集め、誰ぞ行方を知っているものがおらぬか聞いてみることにしよう」
山幸彦「早くせねば! 私のいない間に兄上の身にもし何かあったら私は……あああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああ!!」
豊玉姫「そ、虚空津日高様……」
無事に釣り針を手にした山幸彦は、それを手に地上へ戻ることになりました。
山幸彦「ああ。世話になった」
豊玉姫「さ、寂しゅうございます……」グスン
山幸彦「私たち(兄上と私)の愛は永遠なのだ。どうか分かってほしい」
豊玉姫「私たち(虚空津日高様と私)の愛……! そうですね、分かりました! それでは、せめてこれをお持ちください!」
豊玉姫「これは鹽盈珠、鹽乾珠といって、お父様の水を司る力が込められたものです」
山幸彦「なんと……」
豊玉姫「それと、もし虚空津日高様のお兄様が低いところに田を作ったら、虚空津日高様は高いところに田を作ると良いでしょう」
山幸彦「何故?」
豊玉姫「じきに分かります故……」
海幸彦「うぉ!? びっくりした!!」ビクッ
山幸彦「兄上ェ! あ、ああああ兄上、兄上、兄上、兄上、兄上、兄上、兄上、兄上、兄上、兄上、兄上、兄上、兄上、兄上、兄上、ああああ兄上ェェェェェエ!! ウオオォォォォォォォ!!!」
海幸彦「や、山幸彦!? おまえ今まで一体どこに……」
山幸彦「兄上! これを!」
山幸彦「3年前、私が失くしてしまった針です。この山幸彦、単身海神の元へ向かいこれを探し出してまいりました!」
海幸彦「わ、わざわざ海神のところまで!?」
山幸彦「時間がかかってしまい申し訳ございませんでした」
海幸彦「い、いやいいよ……ていうか、そんな必死に探してもらわなくてもよかったのに……3年も顔を出さないから、随分心配したんだぞ」
山幸彦「あぁ……兄上が私を心配してくださる……これだよ、これを求めてたんだ私は……これぞ真実の愛……」ウットリ
海幸彦「え、えぇ……」
海幸彦「あ、あぁ……ありがとな」
山幸彦「海神の宮殿からここに戻る途中、この針を見るたびに兄上のことを思い出してとても辛かった……この針を見ると、3年もの間会うことができなかった兄上のことを想い憂鬱になり、心が落ち着かなくなりました。それはまるで貧者のようにみじめで、愚かな気持ちでした……全部、この針のせいで……」
海幸彦「お、おう」
山幸彦「ああ、兄上……私は兄上の元に戻ってまいりました!!」
山幸彦「ああ、彼に乗って来たのです」
海幸彦「彼?」
サメ「はぁー……はぁー……ぐふっ」コヒューッコヒューッ
山幸彦「海神の使い、佐比持神です」
海幸彦「死にかけてるよ!! なんで家の前まで引っ張ってきた!? 魚類に無茶させんな!!」
海幸彦「ああ。やっぱりたまには米食いたいしな」
山幸彦「なるほど……」
海幸彦「お前も、田起こししたらどうだ? 肉ばっか食ってるとプリン体で痛風がやばいぞ」
山幸彦「ふむ……」
海幸彦「どうした?」
山幸彦(……なるほど、そういうことか!! 確かに高いところに田をつくれば、兄上が農作業している姿をつぶさに観察できると!! 豊玉姫はそれを伝えたかったのだな!!) ※違います
山幸彦「そうと決まれば私はあの山の上に田を作ります!!」
海幸彦「えっ? お、おう……」
山幸彦「私の所は特に問題ないのですが……」
海幸彦「そっかー。まぁお天道様だけはどうしようもないよな。いやまぁお天道様って言ってもひいばあちゃん(アマテラス)だけどさ」
山幸彦「……」
海幸彦「ん? どうした?」
海幸彦「えっ?」
山幸彦「私が兄上の田に水を取り戻して見せます!!」
海幸彦「えっ、お前そんなことできんの!?」
山幸彦「お任せあれ!!」
豊玉毘売命『これは鹽盈珠、鹽乾珠といって、お父様の水を司る力が込められたものです』
山幸彦「きっと、これを使えば兄上の田に水をもたらすことができるはず……」
山幸彦「海神よ! 今こそ我に力を貸したまえ!!」
山幸彦「あめあめ ふれふれ にいさんが! じゃのめで おむかえ うれしいな!! ピッチピッチ チャップチャップ ランランラン!!!」ピョンピョン
<ポツッ……ポツッポツッ……
<ザァァァーーーーーー
<ドシャアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアア!!
海幸彦「うわあああああああ!近年稀にみるゲリラ豪雨!!」ザパーン
海幸彦「おぼれる! おぼれる!!」ゴボゴボ
あわてて山幸彦は鹽乾珠を使い、雨を降りやませます。
海幸彦「し、死ぬかと思った……」ゼェハァ
山幸彦「す、すみません兄上……まさかこんなに加減が効かないものとは……ん?」
海幸彦「ん? 誰だこのねーちゃん」
豊玉姫「私は豊玉姫。海神の娘であり、そこにおわす虚空津日高様の妻でございます」
海幸彦「山幸彦の妻!?」
山幸彦「私の妻!?」
海幸彦「えっなんでお前まで驚いてんの!?」
海幸彦「お、おい……本人を前にしてそんな……」
豊玉姫「虚空津日高様ご覧ください……貴方様の御子を身ごもりました///」ポッコリ
山幸彦「」
海幸彦「えっ、山幸彦の子供!?」
海幸彦「そうだったのか……いやー、まさかコイツが結婚してたとは! やるなお前! 甥っ子かな? 姪っ子かな?」ワクワク
山幸彦「」
豊玉姫「虚空津日高様?」
山幸彦「嘘だ……私が兄上以外と身を重ねたと? おかしい。そんなことあるわけがない。私の子だって? ありえないありえないありえないありえないありえないありえないありえないありえないありえないありえないありえないありえないありえないありえないありえないありえないありえないありえないありえないありえないありえないありえないありえないありえないありえないありえないありえないありえないありえない……」ブツブツ
海幸彦「おいおい、なに狼狽えてんだよー。しっかりしろよなー、親父」ニヤニヤ
海幸彦「マジで!? ならこうしちゃいられねぇ、早く産屋を建てないと!!」アタフタ
山幸彦「……シィ、ク、……ナイ……ヒヒ……」ブツブツ
海幸彦「おらシャキッとしろ山幸彦!! とりあえず、屋根葺きに使う鵜の羽集めてきてくれ!!」
山幸彦「アヒヒ……」フラフラ
山幸彦「アイ」
豊玉姫「他国の者は子を産む時には本来の姿になります。私も本来の姿で産もうと思うので、絶対に産屋の中を見ないようにしていただけませんか?」
山幸彦「アイ」
海幸彦「お、おおう……ゆ、湯とか沸かしておいたほうがいいのかな?」アタフタ
豊玉姫「それでは……必ず元気な子を産んでみせますので!!」
山幸彦「」
海幸彦「こんなとき、男は何にもできないってのがもどかしいな……おい山幸彦、しっかりしろよ!」
山幸彦(おかしい……これは現実なのか? なぜ私の子をあの者が産むのだ? 私が兄上の子を身籠るのが筋というものではないのか?)ブツブツ
海幸彦「心配だなぁー。豊玉姫ちゃんは中を見るなっていってたけど……産婆もいないのに大丈夫かな」
海幸彦「ん?」
山幸彦「豊玉毘売は妊娠などしていないのです!! きっとどこからか拾ってきた子を、私の子として育てさせるつもりなのです!!」
海幸彦「そんなバナナ」
山幸彦「いま証拠を掴んできます!!」
海幸彦「あっ、おい待て!!」
でかいサメ(八尋和邇)「うーんうーん……」ビターンビターン
山幸彦「フフフ……それがお前の正体か、豊玉姫よ」
でかいサメ「そ、虚空津日高様!?」
山幸彦「ただのでかいサメではないか!! よくも私を誑かしてくれたな!!」
でかいサメ「う、ううう……」
でかいサメ「うっ……うわーん!! 虚空津日高様にこんな姿見られたらもう生きていけない!!」ビチビチ
赤ん坊「オギャー」
山幸彦「この化け物め!! 私を誑かすに飽き足らず、人間の赤子まで攫ってきたのか!!」
でかいサメ「ち、違います!! その子は間違いなく私たちの子ですっ!! ……虚空津日高様の馬鹿ーっ!!! もう好かーん!!!!」ザブーン
海幸彦「う、生まれたのか!?」
山幸彦「兄上」
赤ん坊「オギャー」
海幸彦「おお! 甥っ子だったか!! よしよし……あれ? 豊玉姫ちゃんは?」キョロキョロ
海幸彦「ええっ!? 子供を置いてかよ……やっぱ海神の娘だから、地上に長くいるのはしんどかったのかな……」
山幸彦「いや、兄上。あのですね……」
赤ん坊「オギャーオギャー!」
海幸彦「よしよし、心配するな。母ちゃんがいなくてもしばらくは俺たちが面倒を見てやるからな。なーに、母ちゃんならすぐ戻ってくるさ」ベロベロバー
海幸彦「あ? 何言ってんだ当たり前だろ。お前の子だぞ」
山幸彦「あ、兄上、その子はですね……」
海幸彦「よーしよし、さっそく産湯につかろうなー。おい山幸彦、お前この子に飲ます重湯をつくっておいてくれ」
山幸彦(そんな兄上……いやでも待てよ? この子を私と兄上の養子にすればそれはもう事実上の夫婦、つまり私は内縁の妻ということなのではないか? なんてこった! ならいっそそれもありか!!)
海幸彦「は? いや乳じゃなくて重湯をだな……」
山幸彦「私の兄上を想う気持ちをもってすれば母乳ぐらい容易く分泌できるはず!! うおおおおおおおおおおっ!!!」ギュー ←乳首つねってる
海幸彦「こ、これがマタニティハイってやつか……」 ※違います
赤ん坊「バブー」
ウガヤフキアエズを出産後、山幸彦の元を離れ海へと戻った豊玉毘売命でしたが、子を養育するために妹の玉依毘賣を山幸彦たちの元へ遣わします。
山幸彦「た、玉依姫!?」
海幸彦「おー、豊玉姫ちゃんの妹か。 お前の叔母ちゃんだぞ、ウガヤフキアエズ」
赤ん坊「バブバブ」
玉依姫「その子を引き取りに来ました」
海幸彦「へ?」
海幸彦「えっ、そうなの?」
山幸彦「な、何を馬鹿な! 誰がそんなこと……」
玉依姫「お姉さまは失意のあまりもう3か月近く部屋に引きこもりっぱなしです」
海幸彦「マタニティブルーってやつだな……」 ※違います
赤ん坊「バブー」
山幸彦「ち、違くて……私はただ兄上と一緒にいたいだけで……認知はするっていうか、これはどこから攫ってきた子で、今は私たちの非嫡出子にあたるっていうか……」シドロモドロ
海幸彦「なに慌てふためいてんだお前」
赤ん坊「キャッキャッ」
玉依姫「姉上より、虚空津日高様にこれを」
玉依姫「その子のDNA鑑定の結果です」
山幸彦「」
玉依姫「間違いなくあなたの子です。虚空津日高様」
山幸彦「」
玉依姫「あ、いえ。その子は私が育てます」
海幸彦「えっ?」
玉依姫「その子を見ると、姉上は虚空津日高様のことを思い出して辛いのだそうです」
海幸彦「じ、重症だな……」
山幸彦「」
赤ん坊「Zzz...」
海幸彦「あ、寝てるわ」
玉依姫「うふふ、かわいい寝顔……食べちゃいたい」ボソッ
海幸彦「別れる前に顔見とかなくていいのか? 山幸彦」
山幸彦「」
やがて二人は甥と叔母、しかも育ての親子という壁をあっさり乗り越え結婚し、日本の初代天皇となる神倭伊波礼琵古命(神武天皇)をもうけることになりますが、それはまた別のお話……。
イワナガヒメ「そんなにキョロキョロしてると、おのぼりさん丸出しよ」
従者「そりゃもう、おのぼりさんもいいとこっすよ。実際おのぼり(死亡)してるわけだし」
イワナガヒメ「それもそうね」
従者「あれがニニギ様の家ですか?」
イワナガヒメ「ええ……それにしてもなんだか騒々しいわね?」
栲幡千千姫「まったくあなたって子は……サクヤちゃんに迷惑ばかりかけて」プンスカ
ニニギ「許して……許してください母上……」ゲッソリ
栲幡千千姫「おまけになんですかこの本は!? 妻子までいてこんな本を溜め込むなんて一体何を考えているのですか」
ニニギ「もうやだ……もういっそ下唇噛み切って死にたい」(涙目)
火須勢理命「俺は別に構わないんだけどなぁ」
イワナガヒメ「そうね」
従者「それにしても本当に激似ですね、ニニギ様のお母さんとイワナガヒメ」
イワナガヒメ「まさか本物の栲幡千千姫様がいらしてるとはね……」
従者「というか神様って基本歳とらないんですね。みんな20代くらいに見えますけど」
イワナガヒメ「まぁ基本的に人間とは違うからね。なんなら見た目変えることだってできるし」
イワナガヒメ「相変わらずだらしないわね……大体サクヤが甘やかしすぎなのよ」
従者「上と下の兄弟はもう独立してるっていってましたよね?」
イワナガヒメ「ええ。アンタ、海幸彦と山幸彦って知らない?」
従者「聞いたことはありますけど……」
イワナガヒメ「一応、血統上はアンタたちの天皇のご先祖様よ」
従者「マジっすか!?」
従者「えーと、イザナギ……」
イワナガヒメ「イザナギ様がアマテラス様とスサノオ様を生んで、アマテラス様の子孫があのニニギ様よ」
従者「スサノオって確かあれですよね、ヤマタノオロチ倒した」
イワナガヒメ「そうそう。話によると、お姉さん(アマテラス)が極度のブラコンで、高天原を逃げ出して下界に降りたそうよ」
従者「知られざる神々の性事情……」
従者「ブラコンってことですか?」
イワナガヒメ「有り体に言えばね」
従者「あれ? でも海幸彦と山幸彦って確か喧嘩してたんじゃなかったですっけ? しかも男同士……」
イワナガヒメ「逆よ逆。むしろ火遠理が火照のこと大好きすぎて追っかけで家を出たくらいなんだから。もう病気よ病気」
従者「ヤンデレでホモで近親相姦とかちょっと闇深すぎるトリプルスリーじゃないっすか……?まさに東洋の神秘」
従者「男手ひとつで子供を産むとか、人間には馴染みのないフレーズすぎて若干恐怖を感じます」
イワナガヒメ「神なんてそんなもんよ」
従者「うーん狂気じみてる」
イワナガヒメ「あんたも私の従者になったんだから、こっちの事情も少しは勉強しておきなさい」
イワナガヒメ「……」
従者「あれ? ひょっとして照れてます?」
イワナガヒメ「て、照れてないし!!」
従者「またまた~」
従者「え~、もうちょっと高天原見物しましょうよ!!」
イワナガヒメ「ここは人(神)が多くて嫌なの!」
従者「なるほど……つまり早く俺と二人きりになりたいと!!」
イワナガヒメ「そ、そんなこと言ってない!!」
イワナガヒメ「うるさいうるさい! もう、従者のくせに……! ほら、行くわよ!!」
従者「あ、待ってくださいよイワナガヒメ~!!」スタコラサッサー
栲幡千千姫「えっ……ど、どなたですか?」
イワナガヒメ「そっちじゃねぇ!!」
元スレ
アマテラスさんちに纏わる兄弟喧嘩エピソードはもはや伝統芸能レベル
http://jbbs.shitaraba.net/bbs/read.cgi/internet/14562/1452262054/
アマテラスさんちに纏わる兄弟喧嘩エピソードはもはや伝統芸能レベル
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コメント一覧 (40)
-
- 2016年01月22日 02:10
- 実は作者=従者というね。
-
- 2016年01月22日 02:19
- 俺たちは神だった……?(困惑)
とても面白かったです
-
- 2016年01月22日 03:16
- 神話のカオス感はたまらんなぁ
-
- 2016年01月22日 03:21
- ゼウスやシヴァに比べると多少はましだがスサノオも大概どうかしてる、そんな神様達が好きです
-
- 2016年01月22日 03:37
- アマテラスとスサノオに比べてツクヨミの地味なこと。
昔の人はもう少し何とかしてあげられなかったのか。
-
- 2016年01月22日 03:44
- 不敬
-
- 2016年01月22日 04:31
- おい、喧嘩しろよ
ブラコンとツンデレしかいないじゃないか!
-
- 2016年01月22日 06:56
- ※5
唯一の場面が女にゲロ食わされるエピソードな挙句それも後にスサノオに取られる屈指の陰キャラ神の悪口はやめろォ!
-
- 2016年01月22日 07:46
- にいさん…まさかお前ジンキサラギ!←
面白かったんで次も期待してるぞ??
-
- 2016年01月22日 09:13
- ツクヨミって一応、男神説の方が有力らしいけど
フィクションだと大体女神扱いされるな
-
- 2016年01月22日 09:21
- しれっと書かれただけだけどイザナギ、イザナミも兄妹だよね。
近親相姦ものが根強い人気があるのは日本民族の性だった…?
-
- 2016年01月22日 10:28
- パズドラで馴染み深い名前が多いな。
でも、だいたいこんな感じで神話ってカオスなんだよなぁ
-
- 2016年01月22日 10:53
- 間違いなくその血を受け継いでるってことだな・・・
-
- 2016年01月22日 11:04
- 誰も触れてないけど最後の、実在の神仏……ってとこ評価したい
-
- 2016年01月22日 12:40
- ギリシャ神話やインド神話に負けてないカオスっぷり、
それが日本神話。
ただし、名前が長すぎて覚えられない。
ドストエフスキー読む並に難しい。
ご先祖様達のはずなのに。
-
- 2016年01月22日 13:23
- 鵜葺草葺不合は
萱の代わりに鵜の羽で屋根を葺いたからウガヤフキ
生まれてすぐ母親が海に行って会えなかったからアエズでしょ
サクヤ三兄弟みたいに由来を覚えれば読める
-
- 2016年01月22日 14:56
- ※5、※8
そんなあなた方に神学者ワイがとっておきのあらあらうふふなツクヨミ神話を授けよう
アマテラスちゃんが独りご飯が寂しくて仲良しのトヨウケヒメちゃんに朝夕御飯を作ってもらってる(伊勢神宮外宮の成立)のは有名ですが外宮(豊受宮)の裏側には月読宮があってそこから毎晩ツクヨミくんはトヨウケヒメちゃんのところに通っているそうな
仲良しのトヨウケヒメちゃんと弟の間にそんな関係があるなんてちょっとニヤニヤしちゃうと思いませんか
-
- 2016年01月22日 15:16
- 折角だから神学者ワイがちょっと解説(アマテラスとスサノオ編)
>宇気比が近親相姦説
使った道具が「剣」と「玉」で子供ができる
あっ…(察し)
この時生まれた子供の1人に「ウェーイwww勝った〜www祭りじゃわっほ〜いwww」的な名前を付けたのが日本最初のDQNネームだと言われているとかいないとか
>姉ちゃん縁日のわたあめとか好きだし
お祭りの神楽やお祭りそのものは別名「神遊び」と言います。普段神社に行ってない人も是非遊びに行ってあげてくださいね
>岩戸から出てくるとき
ストリップショーとクッソしょうもない嘘でアマテラスを騙したのはマジです
-
- 2016年01月22日 15:40
- ※2
日本の神話の性質上、純粋な日本人はもれなく神だぞ。
さばえなす蛍火の神とか有象無象が大部分だが。
※11
古代の神話や伝承は東西を問わずこんなもんだ。
都市文化成立後にでっち上げられた創作神話の類が嫌ってるだけだぞ。
(定住民は流動民と比べて血統の攪拌が捗らない為)
-
- 2016年01月22日 15:42
- やっぱ神話ってカオスだわ
あと砕けてる割にだいたいあってるのがすげえ、作者さんの把握力か
-
- 2016年01月22日 15:47
- ラノベ化すると流れが分かりやすくていいわ(大概変な方向に間違ってるけど
昔読んだ児童書の海幸彦山幸彦はほとんど三匹の子豚みたいになってたし
-
- 2016年01月22日 17:16
- 何となく加門七海を思い出した
アマテラスって凄いよね、あの天の岩戸を最初に自力で閉めてる訳だから
-
- 2016年01月22日 17:40
- >
海幸彦「おぼれる! おぼれる!!」ゴボゴボ
火照とひでを掛けてはいけない(戒め)
-
- 2016年01月22日 18:08
- 面白かった
てかアマテラス残念系なのか…
-
- 2016年01月22日 18:31
- 残念系アマテラスかわいいだろ!!!
-
- 2016年01月22日 19:05
- 日本最古のひきこもりだからなぁ
-
- 2016年01月22日 20:57
- おお我らが慈母アマテラスよ
-
- 2016年01月22日 21:01
- ※22
顔出した隙に開け放った神様が、強力を讃えて手力乃男と尊称されてるのにな。
流石に主神である。
-
- 2016年01月22日 23:24
- ヤマ〇ロで遊べとの御告げじゃ
-
- 2016年01月22日 23:35
- 髪を男型のみずらに結って足を踏み鳴らし膝まで地に埋めて弓を構える完全迎撃砲台と化したアマテラス姐さんを見て、しどろもどろで敵意なしと弁解するスサノオの三下感ほんとすこ
-
- 2016年01月23日 01:24
- ◆イザナギ
日本初のうっかり
日本初のかーちゃん怖い
◆アマテラス
日本初の引きこもり
-
- 2016年01月23日 01:32
- ナデシコ見てたから、オモイカネって思兼だと思ってた
-
- 2016年01月23日 03:16
- ラノベ風に書いてあるから所々古事記や日本書紀と違う展開なのが少し気になったけどまあ大体そんなかんじ
-
- 2016年01月23日 04:11
- ※27
慈母もふもふかわいいよ慈母
-
- 2016年01月23日 11:57
-
ただただノリが寒い
-
- 2016年01月23日 12:20
- ※30
アマテラスさまは日本初の女性アーチャーかわいい
-
- 2016年01月23日 12:52
- フィクションってはっきり書いてあんのに不敬とか元ネタと違うとか言ってる奴は何を求めてんだよ
-
- 2016年01月24日 04:10
- ツクヨミは変化を司るから月齢によって性別変わったんじゃない? 的な予想を教授がしてたな。
-
- 2016年02月23日 20:53
- 次は北欧神話頼みたいなー
特にロキ神は素敵だ!
-
- 2016年04月25日 22:09
- 次も期待してるお