成歩堂「異議あり!」勇次郎「異議ありッッッ!!!」
「はあ……はあ……」
「くそっ、どうしてワシがこんな目に……」
「このままにはしておけんな……」
「そうだ……」
「あやつの仕業にしてしまえば……」
……
……
……
― 8月19日 午前9時47分 地方裁判所 被告人第3控え室 ―
成歩堂「おはようございます、烈さん」
烈「破ッ!!!」
成歩堂「うわっ!」
真宵「きゃうっ!」
烈「……む、これは失礼」
烈「なにしろ、裁判を受けるなど初めてなもので……」
烈「気合を入れようとしたら……つい……」
成歩堂(真宵ちゃん、腰を抜かしちまったぞ……)
成歩堂「烈さん、ぼくたちはあなたの無罪を信じています」
成歩堂「だからあなたも、ぼくたちを信じて気をラクにして下さい」
成歩堂(法廷でさっきみたいに叫ばれても困るし……)
烈「……承知した」
真宵「なるほどくんが立つ法廷って、いつもハラハラしますけど」
真宵「最後にはいっつも無罪を勝ち取ってくれるんですから!」
烈「ふむ、実力はあるが、いささかバランス感覚に欠けているようだ」
烈「ぜひ站椿(たんとう)をオススメしたい」
成歩堂「ど、どうも」
係官「まもなく開廷の時間です! 法廷にお入りください!」
成歩堂「おっと、時間のようですね」
成歩堂「では行きましょう、烈さん」
烈「分かりました」
― 8月19日 午前10時 地方裁判所 第3法廷 ―
裁判長「これより、烈海王の法廷を開始します」
勇次郎「検察側……準備完了している」
成歩堂「弁護側……」
成歩堂「…………」
裁判長「どうしました? 弁護人」
成歩堂「あ、あの……」
成歩堂「この事件の担当検事は……御剣検事のはずでは?」
裁判長「た、たしかに! これはどういうことでしょう!?」
成歩堂(気づいてなかったのか裁判長……いつものことだけど)
御剣「それについては私からお答えしよう」
成歩堂「み、御剣……検事!(いたのか……)」
御剣「実は今朝になって、この範馬勇次郎氏が検事局にやってきたのだ」
御剣「そして、『裁判なるものを体験してみたくなった。俺を検事にしろ』と」
御剣「局長に脅しをかけ、晴れて≪一日検事≫となったのだ」
成歩堂「は、はあ……(一日検事って……)」
裁判長「いやいやいや、さすがにダメですよ、それは」
裁判長「法を司る者として、そんな検事を認めるわけにはいきませ――」
勇次郎「…………」ギンッ
裁判長「ひっ!」ササッ
成歩堂(裁判長……机の下に隠れちまったぞ……)
御剣「裁判長……この範馬勇次郎氏は≪地上最強の生物≫とも呼ばれている」
御剣「一国の軍事力にも匹敵する強さを持ち」
御剣「かのアメリカ合衆国ですら範馬氏には逆らえないという」
御剣「つまり、範馬氏は法では裁けない存在ということなのだッ!」
成歩堂「ううう……(検事がそんな発言していいのか?)」
真宵「また強烈なのが出てきたね、なるほどくん……」
成歩堂「うん……(いつものことだけど)」
裁判長「わ、分かりました! 当法廷は範馬氏を一日検事として認めます!」カンッ
裁判長「範馬検事、冒頭弁論をお願いします」
勇次郎「うむ」
勇次郎「被告人・烈海王は昨日の夜、≪本部流実戦柔術道場≫にて」
勇次郎「郭海皇を殺害した容疑で逮捕された」
勇次郎「よって、この法廷で被告人が犯した罪を立証する……ってところか」
真宵「……意外とマトモだね、なるほどくん」
成歩堂「どうやら腕力に頼らず、マトモに裁判をするつもりらしいね」
成歩堂(これだったら……御剣を相手にするよりむしろラクになったといえるな)
勇次郎「さて……裁判を開始(はじ)めるとするか」
勇次郎「まずは被告人・烈海王の話を聞くのがスジってもんだろう」
裁判長「分かりました」
真宵「烈さん……大丈夫かなぁ」
成歩堂「打ち合わせもほとんどできてないしなぁ」
成歩堂「とにかく今は、彼が余計なことをいわないことを祈るしかないね」
勇次郎「被告人……名前と職業を」
烈「烈海王と申します。職業は武術家です」
裁判長「武術家!? いわゆる、カンフーというやつですかな!?」
烈「ええ、おっしゃるとおりです」
裁判長「おおっ! 私もよくカンフー映画を見て、強くなった気になったものです」
真宵「裁判長の目がキラキラと輝いてるよ……」
成歩堂「気持ちは分かるけどね」
裁判長「当然、修行は厳しいのでしょうな!?」
烈「厳しいとは思いません。武術家として当然行うべきこと、と心得ています」
裁判長「さ、さすがですなあ!」
裁判長「やはり修行というと、山にこもったり、滝を浴びたり――」
勇次郎「ジジイッッッ!」
裁判長「ひっ!」ササッ
勇次郎「俺の拳を浴びたくなきゃ、裁判を進めな」
裁判長「は、はいっ!」
成歩堂(裁判長……イスの裏に隠れちまったぞ)
裁判長「で、では……証言をお願いします」
― 証言開始 ―
~ 私はかまわん ~
烈「昨日、私は電話を受けて本部氏の道場にうかがった」
烈「すると、郭老師が座ったまま息を引き取っていた」
烈「もしかすると、私がなにかしてしまったのかもしれん」
烈「ならば、私は有罪になろうと、一向にかまわんッッッ!」
成歩堂「…………」
真宵「…………」
勇次郎「…………」
御剣「…………」
裁判長「…………」
「…………」
勇次郎「さすがは烈士・烈海王……潔いもんだ」
勇次郎「どうやら、勝負は決定(きま)ったようだな」
勇次郎「本人が有罪でかまわねェといってるんだ。なァ、御剣よ」
御剣「う、うム……」
成歩堂『異議あり!』
成歩堂「し、しかし……! まだ裁判は始まったばかりです!」
成歩堂「この段階で、判決を下すのは――」
勇次郎『異議ありッッッ!!!』
成歩堂「!?」ビクッ
成歩堂(こんなデカイ“異議あり”は初めてだ……!)
勇次郎「弁護士。成歩堂龍一……だったな」
成歩堂「は、はい」
勇次郎「キサマ、弁護人でありながら――」
勇次郎「被告人と足並みもそろわぬまま、よく法廷に足を踏み入れられたものだッ!」
成歩堂「ぐ……」
成歩堂「ぐわああああああああっ!」
成歩堂(そ、そのとおりだ……)
成歩堂(範馬勇次郎……。この人は、決して腕力や威圧感だけの人じゃない!)
成歩堂(ちゃんと口でも戦うことのできる人だ……!)
勇次郎「ふん、弁護人も黙っちまったようだな」
勇次郎「ならジジイ、とっとと有罪判決を下しちまいな」
裁判長「は、はあ……」
『待った!』
真宵「ま、待って下さい!」
成歩堂「真宵ちゃん……!」
真宵「烈さん……お願い!」
真宵「あたしたちは烈さんを信じてるから……」
真宵「烈さんもあたしたちのことを信じて、本当のことを話して!」
烈「…………」
勇次郎「ほう……」ニィ~
御剣「…………」
烈「……謝々(アリガトウ)、成歩堂殿、綾里殿」
烈「あなたがたが私を信じているのに、私があなたがたを信じずにどうするか」
烈「裁判長、この烈に……もう一度機会(ジーフィー)をッッッ!」
裁判長「分かりました。もう一度、証言をお願いします」
― 証言開始 ―
~ 私はやっていない ~
烈「昨日、私は電話を受けて本部氏の道場にうかがった」
烈「すると、郭老師が座ったまま息を引き取っていた」
烈「もちろん、私は郭老師になんら攻撃は加えていない」
烈「殺人などしていないのだッッッ!」
裁判長「ずいぶん力強い証言でした」
裁判長「さて、範馬検事……被告人は容疑を否認していますが?」
勇次郎「ここまでは予定通り……だ。しょせんは悪あがきにすぎねェ」
成歩堂(予定通り……だって……?)
勇次郎「検察側は決定的な証人を用意している」
勇次郎「ここらで一気に決着とさせてもらうぜ」
成歩堂(≪決定的な証人≫か……)
成歩堂(烈さんが無実であるなら、決定的であるはずがない)
成歩堂(なんとか突破口を見つけるんだ!)
勇次郎「入廷しろ、ストライダムッッッ!」
勇次郎「名前と職業をいえ」
ストライダム「イ、イエッサ……」
ストライダム「ゲリー・ストライダム。米海軍の大佐をしている」
成歩堂『待った!』
成歩堂「あ、あの……なぜ、アメリカ軍の方が……?」
成歩堂「普通、こういう時は刑事が出てくるはずでは……? イトノコ刑事とか」
ストライダム「ついさっき、ユージローから要請を受けてな」
ストライダム「ミスター・イトノコに代わってもらったのだ」
ストライダム「お詫びにミスター・イトノコには、米国産の牛肉をプレゼントした」
御剣「ちなみに糸鋸刑事は泣いて喜んでいた」
成歩堂(そりゃそうだろうなぁ……)
真宵「なんだかあたしまで涙が出てきそうだよ」
裁判長「では、証言をお願いします」
― 証言開始 ―
~ 烈海王を逮捕した理由 ~
ストライダム「警察が駆けつけた時、現場にいたのは二人だけだった」
ストライダム「もちろん、被害者と被告人だ」
ストライダム「被害者の死因は打撲によるものと考えられる」
ストライダム「よって、被告人である烈海王を逮捕した」
成歩堂「いよいよ尋問だ……。この証言を崩さなきゃ、烈さんは有罪になってしまう!」
真宵「あのストライダムさんって人……かなり手強そうだけど」
真宵「頑張ってね、なるほどくん!」
成歩堂「ああ!」
成歩堂(ストライダムさんはあくまでも代理……)
成歩堂(ようするに、この尋問はイトノコ刑事を尋問するようなものだ)
成歩堂(きっと例によって例のごとく)
成歩堂(なにかとんでもない見落としや思い込みをやらかしてるにちがいない!)
成歩堂(ここらで、≪法廷記録≫を確認しておこうかな)ササッ
― 法廷記録 ―
~ 証拠品ファイル ~
弁護士バッジ…これがないと、誰もぼくを弁護士と認めてくれない。
被害者の資料…心臓が停止していた。目立つ外傷は見受けられず。
現場写真…なにもない道場内で、座ったまま息絶えている郭海皇の写真。
最大トーナメント成績表…烈海王はベスト4。本部以蔵は一回戦負け。
~ 人物ファイル ~
綾里真宵(19)…ぼくの助手。倉院流霊媒道の使い手。今もなお修行中。
御剣怜侍(26)…検事局ナンバー1の実力を誇る、ぼくの古い友人。
範馬勇次郎(??)…この事件の担当検事。地上最強の生物の異名を持つ。
烈海王(??)…ぼくの依頼人。中国武術の達人で、見るからに強そうだ。
郭海皇(故人)…被害者。中国武術界の長老といわれた武術家。
本部以蔵(51)…現場である道場の主。郭海皇とは最近知り合ったらしい。
ゲリー・ストライダム(??)…米軍に所属する軍人。階級は大佐。
― 尋問開始 ―
~ 烈海王を逮捕した理由 ~
ストライダム「警察が駆けつけた時、現場にいたのは二人だけだった」
ストライダム「もちろん、被害者と被告人だ」
ストライダム「被害者の死因は打撲によるものと考えられる」
成歩堂『異議あり!』
ストライダム「な、なにかね!?」
成歩堂「今の発言は明らかに≪ムジュン≫しています!」
ストライダム「ムジュンだと!? バカな……ッ!」
成歩堂「こちらの資料をご覧ください」
成歩堂「被害者である郭海皇さんの司法解剖はまだなされていないようですが……」
成歩堂「ここにハッキリと書かれています!」
成歩堂「“目立つ外傷は見受けられず”と!」
ストライダム「ええっ!?」
裁判長「たしかに……書いてあります!」
成歩堂「外傷がないのに、死因は打撲? これは明らかにムジュンしています!」
ストライダム「Aッ! CHIッ!」ボボボボムッ
真宵「爆発しちゃったよ……」
成歩堂「よし、ここは一気にたたみかけよう!」
成歩堂「郭海皇さんは打撲で亡くなったわけではない!」
成歩堂「すなわち! 烈海王さんは犯人では――」
勇次郎『異議ありッッッ!!!』
勇次郎「残念だったな、成歩堂」
成歩堂「!」
勇次郎「打撲跡を残さず、他者を屠ることなどたやすい」
勇次郎「そう、中国拳法ならばッッッ!」
成歩堂「え……ええええええええええっ!」
成歩堂「いやいやいや! さすがにそれはちょっと――」
勇次郎「焦るんじゃねェ、証拠はまだある。ストライダム、あれを出しな」
ストライダム「うむ」
ストライダム「つい先ほどのハナシなのだが」
ストライダム「被害者の衣服からこれが発見された」
ストライダム「どうやら、東洋のボードゲーム≪囲碁≫に使用する≪碁石≫のようだ」
成歩堂「碁石……?」
裁判長「分かりました。証拠品として受理しましょう」
碁石…黒光りしている石。郭海皇の衣服より発見。
成歩堂「で、ですが、その碁石にいったいどんな意味があるというのですか?」
勇次郎「ワカらんか……」
勇次郎「烈海王はこの碁石を指でハジき、郭海皇を殺害したということだッッッ!」
勇次郎「それならば、目立つ外傷がない理由も説明がつく。碁石は小さいからな」
成歩堂『異議あり!』
成歩堂「しかし! 碁石で人を殺せるはずがありませんよ!」
裁判長「そ、そのとおりです。弁護人の異議を認めま――」
ビチィッ!
シュゥゥ……
勇次郎「次はおめぇの頭にブチ込むぜ。ジジイ」
裁判長「指でハジいた碁石が、壁にめり込んで……ッ! ま、まるで銃弾……ッ!」
勇次郎「もう少し軽くハジけば、外傷を残さぬことも可能だろう」
裁判長「うむむ……弁護人の異議を却下します!」カンッ
成歩堂「そ、そんな……!」
成歩堂(うう……だけどたしかに烈さんでもあれぐらいできそうだ……)
真宵「なるほどくん! なんとか食い下がらないと、裁判が終わっちゃうよ!」
成歩堂(そうだ! まだあの碁石が凶器だと決まったわけじゃない!)
バンッ!
成歩堂「弁護側は、あくまで碁石は凶器ではないと主張します!」
勇次郎「ほう……楽しませてくれるじゃねェか」
勇次郎「ならばストライダム、さらなる証拠を出せいッッッ!」
ストライダム「ソーリー、ユージロー」
勇次郎「?」
ストライダム「ミスター・イトノコから預かった情報と証拠品は、以上だ」
勇次郎「あ……?」
勇次郎「キサマッッッ! いくらなんでも少なすぎだッッッ!」
ストライダム「ヒィッ! 文句なら、イトノコにいってくれ!」
勇次郎「あのボンクラ刑事めが……ッ」ビキビキッ
勇次郎「御剣よ、ヤツの処分はキサマに任せる」
御剣「……来月の給与査定に反映させることにしよう」
成歩堂(かわいそうなイトノコ刑事……)
真宵「せっかく牛肉をもらったのにね……」
成歩堂「またソーメン生活に逆戻りだね」
成歩堂(よし! とにかくこれでひとまずこの場は切り抜けた!)
成歩堂(勝負は明日以降に持ち越し――)
勇次郎「クスクスクス……」
裁判長「どうしましたか? 範馬検事」
勇次郎「成歩堂……」
勇次郎「ひとまずこの場は切り抜けた、などと考えていたのではあるまいな?」
成歩堂「え……!? いや、まさか! そんなわけないでしょう!」
真宵「考えてたね」
御剣「考えてたな」
裁判長「考えていましたね」
成歩堂「うう……(いい加減、みんなぼくのハッタリに慣れてきたみたいだ)」
勇次郎「考えていたのか! ハッタリか、キサマッッッ!」
成歩堂(約一名、慣れてなかったッ!)
勇次郎「残念ながら、そうはいかねェ」ニィ~
勇次郎「検察側は、さらなる証人を用意してある。ラウンド2ゥってヤツだ」
成歩堂「なんですって……」
勇次郎「証人とはもちろん……この事件の≪目撃者≫だ」
成歩堂「な、なんですってえええええええええ!」
ザワザワ…… ドヨドヨ……
裁判長「静粛に! 静粛に!」カンカン
裁判長「それは本当ですか、範馬検事!」
勇次郎「むろんだ」
勇次郎「事件の通報者にして目撃者……本部以蔵を入廷させろッッッ!」
勇次郎「本部よ……名前と職業をいえ」
本部「それがし……本部以蔵と申す者です。柔術家をしております」
裁判長「ほう、柔術ですか」
裁判長「私も学生の頃は柔術をたしなんでおりましてな。もちろん黒帯です」
成歩堂(へえ、意外だな……)
裁判長「ただし白帯の洗濯を忘れていて、汚れて黒くなっただけですが」
成歩堂(さして意外でもないオチがついたな……)
裁判長「なんかこう、あの頃の情熱がよみがえ――」
勇次郎「ジジイッ! しゃべれねェようにされてぇかッ!」
裁判長「ひっ!」キョロキョロ
成歩堂(裁判長……どこかに隠れようとしたが失敗したみたいだ……)
裁判長「証人、昨日はなぜ、被害者はあなたの道場にいたのですかな?」
本部「郭氏とは、最近武術家同士知り合いになりまして」
本部「それで昨日も、道場に招いておったのです」
本部「しかし、ワシがいない間にあんなことになってしまって……」
裁判長「なるほど……さぞショックだったでしょうな」
裁判長「では、あなたが目撃したことの証言をお願いします」
本部「承知」
真宵「あの人、いったいなにを目撃してたんだろう……」
成歩堂「なにを目撃していようと、ぼくらは烈さんを信じるのみだよ」
真宵「……そうだよね!」
― 証言開始 ―
~ 目撃したこと ~
本部「ワシは全て目撃しておりました」
本部「烈海王は郭氏に攻撃を加えたのです!」
本部「そしてそのまま郭氏のかたわらで呆然としておりました」
本部「すぐさまワシは警察に通報しました」
本部「まもなく警察が駆けつけ、烈海王は逮捕されたのです」
裁判長「ふむう……これはもう≪決定的≫ですなあ……」
勇次郎「当然だ。なァ、御剣よ」
御剣「うむ、たしかに決定的といえる」
御剣「ただし……あの弁護士を甘く見ないことだ、範馬検事」
勇次郎「フンッ……」
裁判長「では弁護人、尋問をお願いします」
成歩堂「分かりました」
― 尋問開始 ―
~ 目撃したこと ~
本部「ワシは全て目撃しておりました」
本部「烈海王は郭氏に攻撃を加えたのです!」
成歩堂『待った!』
成歩堂「攻撃ですか? それはつまりどのような?」
本部「おかしなことを聞く弁護士だ」
本部「烈海王は拳法家、拳による打撃に決まっておろう」
成歩堂(ん……? 今の証言、どこかおかしくないだろうか……?)
成歩堂「裁判長、今の発言を証言につけ加えて下さい!」
裁判長「分かりました。証人、証言の追加をお願いします」
本部「……仕方あるまい」
本部「烈海王は拳法家、攻撃方法はもちろん拳だった」
成歩堂『異議あり!』
本部「なんだ、いきなり!」
成歩堂「拳による打撃……? それはおかしいですね、本部さん」
本部「どこがおかしいというのだ?」
成歩堂「実は先ほど、被害者の体からこの碁石が見つかったんです」
本部「な、なに!? なんでそれが……!」
成歩堂(ん……? なんで動揺しているんだ……?)
成歩堂「検察側の主張は、被害者には特に外傷がないことから」
成歩堂「この小さな碁石こそが凶器、というものでした」
成歩堂「これは明らかにムジュンしています!」
裁判長「たしかにそのとおりです!」
裁判長「今の証言は、検察側の主張と完全にムジュンしてしまっています!」
本部「バカな……なんで……」
成歩堂「なにが、バカな、なんですか?」
成歩堂「本部さん、あなた本当に見たんですか?」
成歩堂「烈さんが、郭海皇さんを殺害するところを!」ビシッ
本部「う、ぐぐぐ……」
勇次郎『異議ありッッッ!!!』
本部「ゆ、勇次郎……」
勇次郎「本部……キサマ……ッ! なんたるザマだッッッ!」
成歩堂「範馬検事、あなたもあなたです」
勇次郎「なに……ッ!?」
成歩堂「あなたと証人の主張はまるで食い違っている」
成歩堂「あなた、検事でありながら――」
成歩堂「証人と足並みもそろわぬまま、よく法廷に足を踏み入れられたものですね!」
勇次郎「!」
勇次郎「…………」ピクピクッ…
勇次郎「邪ッッッ!!!」
ドゴォォォンッ!!!
成歩堂「うわああああああああああっ!!!」
真宵「きゃああああああああああっ!!!」
成歩堂(つ、机が粉々に……ッ!)
勇次郎「…………」ギンッ
成歩堂(次はぼくが粉々にされてしまうのか……!?)
勇次郎「やるじゃねェか、成歩堂」
成歩堂「!」
勇次郎「もろい机だ……御剣、新しい机を用意しろ」
御剣「うム」
御剣「壊れた机の代金については、糸鋸刑事の給与から差し引くとしよう」
真宵「よかったぁ、てっきりなるほどくんが粉々にされちゃうかと思ったよ」
成歩堂「うん……イトノコ刑事の給料が粉々になるだけで済んでよかったよ」
勇次郎「本部……。どうやらキサマ、犯行の瞬間は見ていないらしいな」
勇次郎「ならば、キサマが通報した時のことを証言しろ」
本部「う、うむ……承知した」
― 証言開始 ―
~ 守護(まも)らねばならぬ ~
本部「たしかにワシは烈海王の犯行を見ていない」
本部「しかし、あやつの犯行であることは明白だった」
本部「だから……烈を守護(まも)ろうとしたのだ」
本部「烈はまだまだ未熟だからな。このワシよりも」
本部「すぐに捕まれば、すぐに出所できる……と考えたのだ」
真宵「どう? なるほどくん?」
成歩堂「大丈夫だよ、真宵ちゃん」
成歩堂「さっき、本部さんはウソをついていた……」
成歩堂「ウソをつくには必ずなにか理由がある」
成歩堂「ぼくはそこにある≪真実≫をとらえてみせる!」
真宵「やっとエンジンがかかってきたね、なるほどくん!」
― 尋問開始 ―
~ 守護(まも)らねばならぬ ~
本部「たしかにワシは烈海王の犯行を見ていない」
本部「しかし、あやつの犯行であることは明白だった」
本部「だから……烈を守護(まも)ろうとしたのだ」
本部「烈はまだまだ未熟だからな。このワシよりも」
成歩堂『異議あり!』
成歩堂「烈さんがあなたより未熟……それはおかしいですね」
本部「なんだと……?」
成歩堂「こちらの資料をご覧ください」
裁判長「これは……なんですかな?」
成歩堂「先に行われた≪最大トーナメント≫という格闘技の大会の成績表です」
成歩堂「それによると――」
成歩堂「烈さんがベスト4まで勝ち上がったのに対し」
成歩堂「本部さんは一回戦で負けているのです!」
裁判長「あ、あの……」
成歩堂「なんでしょうか、裁判長」
裁判長「“べすと4”とは、どういう意味ですかな?」
成歩堂(そこからかよ!)
成歩堂「ベスト4とは“準優勝の次にスゴイ”ということです」
裁判長「一回戦負けと……準優勝の次にスゴイ、ですか。ずいぶん差がありますなあ」
成歩堂「そのとおりです」
成歩堂「一回戦負けと準優勝の次にスゴイ、どちらがスゴイかは明白です」
成歩堂「つまり、烈さんがあなたより未熟というのは、明らかにおかしい!」
本部「む、ぐぐぐ……」
『異議あり!』
成歩堂(今のは……範馬検事じゃない!?)
成歩堂「み、御剣……ッ!?」
御剣「失望したぞ、弁護人……。この程度のことをムジュンとはな」
御剣「トーナメントには組み合わせというものがある」
御剣「実力者が組み合わせに恵まれず、早くに負けるということも珍しくはない」
御剣「一回戦負けと準優勝の次にスゴイ……必ずしも後者がスゴイとはいえぬッ!」
成歩堂「ぐわあああああああっ!(さすがは御剣……!)」
勇次郎「さすがだ御剣……」ニィ~
御剣「恐れ入る」
真宵「範馬検事と御剣検事……すっかりいいコンビになってるね」
真宵「なるほどくんもうかうかしてると、御剣検事の相棒の座をとられちゃうよ!」
成歩堂「別にぼくはアイツとコンビを組んでるわけじゃないけどね」
成歩堂(だけどちょっと悔しい)
勇次郎「補足しておくと、本部は武器術に長ける」
勇次郎「素手同士の技量ではかなわぬ死刑囚を、武器を用いて追い詰めたこともある」
勇次郎「闘争の条件次第じゃ、本部が烈に勝てないとは限らねェ」
成歩堂「ぐ……ッ!」
真宵「すごいなぁ……。死刑囚とも戦うんだ、武術家って」
真宵「そのうちなるほどくんも戦うかもね。死刑囚の検事さんと!」
成歩堂「死刑囚の検事、か……」
成歩堂(さすがにそんなの出てくるわけないよ、とは言い切れないんだよな、この業界)
本部「どうやら納得してもらえたようだな」
本部「そう、ワシは武芸百般に長ける」
本部「いや……武だけではなく、昨日も……」
本部「…………」
本部「とにかく、烈海王を告発した理由については分かっていただけただろう」
成歩堂(ん? 本部さん、今なにか言いかけたような……?)
成歩堂(そういえば、本部さんと郭海皇さんが何をしていたのか)
成歩堂(まだ明らかになってなかったよな……)
真宵「どうしたの、なるほどくん」
成歩堂「いや……本部さんと郭海皇さんが昨日、道場で何をしていたのか……」
成歩堂「ここに何か真実をつかむカギがある気がするんだ」
成歩堂(事件当日、現場に残っていたものは……碁石ぐらい)
成歩堂(これが凶器かどうかは、結局うやむやになっちゃったけど……)
成歩堂(こういう時こそ、発想を≪逆転≫させるんだ!)
成歩堂(あの碁石は、なにか特殊な事情があってあそこにあったと考えるんじゃなく……)
成歩堂(あって当然だったと考えるんだ!)
成歩堂(――そうか!)
成歩堂「本部さん!」
本部「ぬっ!?」
成歩堂「昨日の事件前、あなたは……被害者と≪囲碁≫をしていましたね」
本部「!?」ギクッ
本部「む……いや……それはその……」
成歩堂「裁判長、証人は明らかに動揺しています!」
成歩堂「よって、弁護側は証人にさらなる証言を要求します!」
成歩堂「ずばり……郭海皇さんと囲碁をしていたことについて!」
裁判長「……分かりました。証人、証言をお願いします」
本部「うぐ……ッ!」
― 証言開始 ―
~ 囲碁勝負 ~
本部「昨日、たしかにワシは郭海皇と囲碁をしていた」
本部「ワシが優勢で……ほぼ勝ちといえる状況だった」
本部「そこで、ワシは席を外したのだ」
本部「戻ったら、烈が息絶えた郭海皇のそばにいた!」
本部「そう! やったのは烈海王なのだ!」
真宵「どう? なるほどくん」
成歩堂「予想外のツッコミを受けたからか、証言からも余裕を感じられない」
成歩堂「ここで一気に勝負を決めにいこう!」
真宵「うん、そうだね!」
― 尋問開始 ―
~ 囲碁勝負 ~
本部「あの日、たしかにワシは郭海皇と囲碁をしていた」
本部「ワシが優勢で……ほぼ勝ちといえる状況だった」
本部「そこで、ワシは席を外したのだ」
本部「戻ったら、烈が息絶えた郭海皇のそばにいた!」
成歩堂『待った!』
成歩堂「その時、現場でなにか変わったことはありませんでしたか?」
成歩堂「たとえば、あなたや烈さんがなにかを動かしたとか……」
本部「い、いや……特になにも……」
本部「烈が郭海皇に攻撃を加えたのは間違いなかろうがな」
成歩堂「…………」
裁判長「今の証言がどうかしましたかな?」
成歩堂「今の証言には……おかしいところがあります!」
勇次郎「ほう……」
勇次郎「ならば、提示してみろッ! 証拠品ってヤツをなッッッ!」
成歩堂「分かりました……。提示しましょう、証拠品ってヤツを!」
成歩堂『くらえ!』
裁判長「これは……?」
成歩堂「≪現場写真≫です」
裁判長「これがどうかしましたか?」
裁判長「被害者が写っているだけで、他になにも写っていませんが……」
成歩堂「そうです……。なにも写ってないんです」
裁判長「?」
勇次郎「ぬう……ッ!」
御剣「ま、まさか……」
成歩堂(さすがに二人は気づいたみたいだな……)
成歩堂「しかし、それはおかしいのです!」
成歩堂「もし、本部さんと被害者が囲碁をしていたのであれば!」
成歩堂「ここには、碁盤が写っていなければならない!」
本部「ぐぬぅ!」
成歩堂「“碁盤が消える”……これほど大きな変化が起こっていたにもかかわらず」
成歩堂「先ほど本部さんは“現場で変わったことはなかった”と証言していました」
成歩堂「考えられる理由は二つ」
成歩堂「一つは本部さん……碁盤を隠したのは、他ならぬあなただからです」
成歩堂「先ほど見つかった碁石は、見逃してしまったのでしょう」
成歩堂「そしてもう一つは、あなたは自分が碁盤を隠したことすら、隠したかった」
成歩堂「なぜなら――」
成歩堂「“自分と被害者が囲碁をしていた痕跡を消そうとした”」
成歩堂「このことから当然くるであろう追及を避けたかったからです」
本部「ぐ……ぬ……」
成歩堂「本部さん……」
成歩堂「郭海皇さんと囲碁をしていた時、なにかあったのではないですか?」
『異議ありッッッ!!!』
成歩堂「範馬検事……!」
勇次郎「大したもんだぜ、成歩堂」
勇次郎「だが、それ以上口を開くことは許さねェ」
勇次郎「もし、まだ弁護を続行(つづ)けるというのなら――」
勇次郎「キサマは俺の拳を受けることになる」ギンッ
成歩堂「!」
成歩堂「……ぼくの依頼人、烈さんはぼくを信じてくれました」
成歩堂「ならばぼくも、依頼人の弁護には命をかけます」
成歩堂「たとえあなたが≪地上最強の生物≫であろうと」
成歩堂「ぼくは人差し指をつきつけるのを、やめはしません!」ビシッ
勇次郎「…………ッ!」
成歩堂「さぁ、本部さん!」
成歩堂「答えて下さい! ――あなたも命をかけて!!!」
本部「う……ぐ……」
本部「ワ、ワシは……ワシは……」
本部「ワシは、ワシを……お、俺は……俺を……」
本部「守護(まも)らねばならぬゥゥゥゥゥゥゥゥゥゥゥゥゥゥゥゥゥ!!!」
ドサッ……
……
……
……
本部「昨晩……ワシは郭海皇を招いて碁を打っていた」
本部「勝負はワシの優勢、ほぼ勝ちは決まっておった」
本部「しかし、負けず嫌いなあの老人はなかなか負けを認めず」
本部「あろうことか、勝負をなかったことにしようなどと抜かしたのだ」
本部「腹を立てたワシは、つい郭海皇を小突いてしまったのだ」
本部「ほんの軽く……ほんの軽くだったのに……」
ガクッ……
本部「座ったまま、完全に心臓が停止していた……そして……」
本部「ワシはワシを守護(まも)らねばならぬ、と……」
本部「碁盤を片付け、烈海王を電話で呼び寄せ、罪をなすりつけたのだ」
成歩堂(ワシはワシを守護(まも)るって……ようするに、ただの保身じゃないか!)
勇次郎「フン……そいつが真相ってワケか」
本部「うむ……全てはワシの責任だ」
本部「本当にすまなかっ――」
『待った!』
成歩堂「!」
真宵「!」
勇次郎「!」
御剣「!」
本部「!」
裁判長「!」
裁判長「あ、あなたは……たしか……」
裁判長「被害者である郭海皇氏ではないですかッ!」
郭「ホホ……」
成歩堂「え……」
成歩堂「えええええええええええっ!!!」
烈「老師……ッ! 生きておられたのですかッ!」
郭「昨日、そこの本部氏に囲碁で負けそうになっての」
郭「今回は長めに死を演じてみたのじゃ」
郭「なにしろ、死すれば勝負なし、じゃからの。ホホ」
郭「で、起きてみると、ワシの死が大事件になっていると聞いて飛んできたのだ」
勇次郎「ケッ、また死んだフリかよ。人騒がせなジジイだぜ」
成歩堂「あ、あの……範馬検事」
成歩堂「死んだフリというのは……?」
勇次郎「この郭海皇は、中国武術そのものといっていい」
勇次郎「護身のためなら、死を偽装することなどたやすいことだ」
成歩堂「あの……全く意味が分からないんですけど……」
勇次郎「とにかく、一つだけいえることは……」
御剣「この事件は殺人事件ではなかった、ということか」
勇次郎「そういうことだ」
真宵「うーん、死んだフリをするなんて、世の中不思議な人がいるもんだねー」
成歩堂(よりによって、真宵ちゃんがそれをいうのか)
勇次郎「裁判長」
裁判長「は、はいっ!」
勇次郎「事件は解決した。とっとと判決を下しな」
裁判長「は、はあ……。しかし、私にはなにがなにやら――」
勇次郎「ジジイッッッ!!!」
裁判長「おほぉっ!」
御剣「裁判長……こういうことは迅速にお願いする」
御剣「あなたが新たなる殺人事件の被害者にならぬうちにな……」
裁判長「分かりましたぁ!」
真宵「あの二人……すっかり息ピッタリだね」
成歩堂「おかげで裁判長は、呼吸困難でグッタリしてるけどね」
裁判長「それでは……被告人、烈海王に判決を言い渡します」
烈「はい」
裁判長「 無 罪 」
ワァァァ……!
ヒューヒュー…… ピーピー……
裁判長「では、本日はこれにて閉廷!」カンッ
― 8月19日 午後12時32分 地方裁判所 被告人第3控え室 ―
成歩堂「烈さん、無罪判決おめでとうございます!」
真宵「おめでとうございます!」
烈「謝々(アリガトウ)……」
真宵「よかったですねー、結局あのおじいさんも生きてたんですから」
真宵「でも人騒がせだなぁ、碁で負けそうになったからって死んだフリだなんて」
烈「老師がご迷惑をおかけしました……」
烈「それにしても……お二方には本当に感謝しています」
成歩堂「そんな……感謝されることなんてありませんよ」
成歩堂「結局、この裁判がなくても烈さんは無罪になってたわけですし……」
烈「いえ、無罪判決になったことだけではありません」
烈「あなたがたは私のことを命をかけて信じてくれた」
真宵『あたしたちは烈さんを信じてるから……』
真宵『烈さんもあたしたちのことを信じて、本当のことを話して!』
成歩堂『たとえあなたが≪地上最強の生物≫であろうと』
成歩堂『ぼくは人差し指をつきつけるのを、やめはしません!』
烈「それがなにより嬉しいのです。本当に……救われました」
成歩堂「烈さん……」
烈「この裁判を経験したことで、気持ちを新たにすることができました」
烈「私は武術家として、これからも戦い続けます」
烈「命をかけて!」
成歩堂(やっぱりすごいな……この人は)
烈「ところで、成歩堂殿」
成歩堂「はい」
烈「最後に……私にも≪つきつける≫なるものを体験させていただきたいのだが」
烈「よろしいか?」
成歩堂「もちろんです」
真宵「なるほどくんがつきつけるものといったら、やっぱりアレだよね!」
成歩堂『くらえ!』
烈「これは……バッジですね」
成歩堂「はい、ぼくの弁護士バッジです」
烈「なるほど、中国拳法の崩拳(中段突き)にも匹敵する迫力でした」
烈「この体験、是非、次に活かすことにいたしましょう」
成歩堂「ぼくも……今日の体験を必ず次に活かしてみせますよ!」
勇次郎「エフッ、エフッ、エフッ、エフッ、エフッ」
成歩堂「は、範馬検事!?」
勇次郎「なかなか愉快なやり取りだったもんでな。つい笑いが出ちまったぜ」
成歩堂(今のは笑い声だったのか……!)
勇次郎「成歩堂よ」
勇次郎「今日はなかなか楽しめた……。褒めてやろう」
成歩堂「ど、どうも……」
勇次郎「あそこまで真っ向から俺に逆らえたヤツは格闘士にもなかなかいねェ……」
勇次郎「肉体的な強さはともかく、精神的な強靭さ(タフネス)はかなりのもんのようだ」
真宵「え、なるほどくんって、体の丈夫さもかなりのものですよ!」
真宵「風邪をひいても、スタンガンを浴びせられても、消火器でガツンと殴られても」
真宵「全然へっちゃらなんですから!」
真宵「きっと車にひき逃げされても、大丈夫だと思いますよ!」
成歩堂(真宵ちゃんはぼくをなんだと思ってるんだ)
勇次郎「ほう……ぜひ手合わせ願いてェもんだ」
成歩堂「いやいやいや! 絶対にお断りです!」
勇次郎「さて、面倒な後始末は御剣とストライダムに任せて……」
勇次郎「そろそろ俺は帰らせてもらう」
成歩堂「あの……範馬検事。最後にひとつ聞いてもいいですか?」
勇次郎「なんだ」
成歩堂「なぜ、あなたは≪一日検事≫になったんです?」
勇次郎「……大した理由じゃねェ」
勇次郎「俺の不肖のセガレが、アメリカで≪囚人≫を体験したから――」
勇次郎「ならば、俺は≪検事≫を体験しようと思っただけのことだ」
成歩堂(予想以上にとんでもない理由だった……)
勇次郎「気が向いたら、また≪検事≫としてキサマとやり合うこともあろう」ズチャッ…
成歩堂(ぼくとしては、二度とやり合いたくない)
真宵「いやぁ~、最初から最後まで鬼みたいな気迫の人だったね」
成歩堂「うん、最初から最後まで、生きた心地がしなかったよ」
成歩堂「さてと……ぼくたちも帰ろうか!」
真宵「そうだね! それじゃ中国人の烈さんを無罪にしたことだし」
真宵「みそラーメンでパーッとやろう!」
成歩堂(依頼人が烈さんじゃなくても、みそラーメンだったんだろうな、きっと)
成歩堂(こうして、このなにからなにまで迫力満点だった裁判は終わりを告げた)
成歩堂(烈さんはきっと、その命尽きる時まで武術家として戦い続けるのだろう)
成歩堂(だったら、ぼくも……烈さんのように戦い続けてやる)
成歩堂(弁護士として……!)
おわり
転載元
成歩堂「異議あり!」勇次郎「異議ありッッッ!!!」
http://viper.2ch.sc/test/read.cgi/news4vip/1439985913/
成歩堂「異議あり!」勇次郎「異議ありッッッ!!!」
http://viper.2ch.sc/test/read.cgi/news4vip/1439985913/
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- アルミン「セ○クス」
コメント一覧 (44)
-
- 2015年08月20日 03:30
- バキは詳しく知らなったから非常に楽しめた
実に逆転裁判してるSSだった
-
- 2015年08月20日 04:00
- よくできてるなぁと思いました
-
- 2015年08月20日 04:08
- なるほど君MVC3に出てるしなぁw
ある程度は耐えてしまいそうだw
-
- 2015年08月20日 04:13
- 人物リストに何故か本部がいたから
何でだろうと思ったら目撃者で出てくるとはw
-
- 2015年08月20日 04:17
- なぜかっても本部の道場で起きた事件だしリストにいておかしくないわな
-
- 2015年08月20日 04:22
- 最後の勇次郎の異議ありは完全に恫喝じゃねーかw
読んだのが電車の中じゃなくて良かった。
-
- 2015年08月20日 04:35
- なんつーとんでもない組み合わせだと思ったが読んだら案外普通に面白いっていうのがもうね
-
- 2015年08月20日 05:13
- 成歩堂くん守護い
-
- 2015年08月20日 05:33
- つーか140歳ぐらいの老人がその状況で死んだなら自然死だと思わないんだろうか、他殺にする必要性がねー
面白かったからシリーズ化してほしいな
-
- 2015年08月20日 05:42
- このSSで一番凄いのはあの化け物の側にずっと居た御剣検事だよなw
最後の証拠品が決定的って言うには少し弱いかな、と思ったけど面白かった
-
- 2015年08月20日 06:59
- なお武蔵に真っ二つにされる模様
-
- 2015年08月20日 09:57
- 面白かったw
ナルホドくんもプクゾー、格ゲー出てるから、殺れるってw
-
- 2015年08月20日 10:01
- 相変わらず原作の雰囲気が出てていい感じ
-
- 2015年08月20日 10:16
- どっちのキャラも詳しくは知らなかったけど楽しめたよ
ナイスSS!
-
- 2015年08月20日 10:20
- 逆裁SSはブラックジャックの奴といい名作揃いだね
-
- 2015年08月20日 10:20
- 普通に楽しめるとか意外だった
-
- 2015年08月20日 10:42
- 刃牙の面子って割と逆裁にいても違和感無さそうだな
渋川さんとか特に
-
- 2015年08月20日 12:10
- ※4
逆転モード怖すぎワロエナイ
-
- 2015年08月20日 12:19
- どう鍛えれば足首だけで済むんだろ
-
- 2015年08月20日 13:13
- 死刑囚の検事ね…
7年後にホントに戦うことになるなるほどくんであったと
-
- 2015年08月20日 13:46
- サイバンチョとイトノコの駄目っぷりが何とも本編っぽい
-
- 2015年08月20日 13:59
- 面白かった
-
- 2015年08月20日 14:19
- いたな、死刑囚の検事
-
- 2015年08月20日 15:57
- 刃牙SSは書き手が少数精鋭って感じで平均値たけーわ
待ったとか真犯人のオーバーリアクションとかもうちょい盛ったほうが逆裁ぽさは上がる気がする
-
- 2015年08月20日 16:32
- マジかよ本部最低やな
-
- 2015年08月20日 18:06
- これで違和感を感じない辺り、逆転裁判のキャラ達は元々が濃すぎる
-
- 2015年08月20日 18:49
- 違和感なさすぎw ゲーム画面が余裕で想像できるw
こういうコラボは面白いな。
-
- 2015年08月20日 18:53
- ※27
逆転裁判で宮本武蔵の霊を呼び出しても、違和感ないものな
-
- 2015年08月20日 19:34
- 死刑囚とは戦わなかったけど神とか悪魔とか全身緑の筋肉ダルマとは戦うハメになったんだよなぁ
-
- 2015年08月20日 21:07
- さりげなく4と5に言及してるなw
-
- 2015年08月20日 21:32
- スレタイ読んだ時点で声出して笑っちまったwww
-
- 2015年08月20日 22:19
- 烈さんはもう…
-
- 2015年08月21日 08:07
- マヨイちゃんに烈さん(霊体)を呼んでもらって武蔵を有罪にしよう
まぁ、死刑になる可能性はほぼ無いし刑務所入れてもアンチェイン状態で今と変わらないだろうけど…
-
- 2015年08月21日 09:30
- 〉成歩堂「うん……イトノコ刑事の給料が粉々になるだけで済んでよかったよ」
大草原不回避ですわ
-
- 2015年08月21日 14:00
- 再現率がかなり高く、話もよく出来てると思った。思わずゲームのBGMが勝手に流れてきたよ
-
- 2015年08月21日 19:04
- 面白かった。
-
- 2015年08月21日 22:28
- 黙りなァ!
-
- 2015年08月23日 02:58
- 両方を熟知した愛の有る良作でした
-
- 2015年08月23日 13:20
- これ書いた奴、逆裁好き過ぎるだろwww
-
- 2015年08月24日 23:59
- 逆裁SSって再現率高いのが多くて嬉しい
-
- 2015年08月26日 17:56
- イトノコ刑事の給料が粉々に~のくだり、めちゃくちゃ巧舟度高い
-
- 2015年08月28日 12:32
- 普通に出来が良すぎて笑ったわ。
両作品のキャラクターをうまい具合に絡ませてて、凄く良かったです。
-
- 2019年12月08日 11:31
- まさか烈海王が本当に死んでしまうとは思わなかったろうなぁ
っつーかどれだけ負けず嫌いだよ郭海皇