マミ「ここは…どこ?」 落田「しあわせ島でやんす」【後編】
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―仕事場―
6主「はぁ…今日も疲れたなぁ」
落田「6主くん、今日は一緒に飲みに行くでやんす!」
6主「ああ、仕事終わりの一杯はいいよなぁ。でも、ごめん。今日は止めておくよ」
落田「そうでやんすか? 残念でやんす」
6主「そろそろ期限が近いからね。一気にペラをためて、目標額までにしておきたいんだ」
落田「あんまり無理しちゃダメでやんすよ? 休みも取ってないみたいでやんすし」
6主「わかってるよ。それより、明日でいいからマミちゃんを練習に誘ってあげてよ。ちょっと、精神的に参ってるみたいだからさ」
落田「分かったでやんす」
―広場ー
6主(キツイ仕事ばかりやるのは、大変だなぁ…。でも、最後の踏ん張りなんだから、がんばろう!)
6主(そういえば、倉刈さんにも娘さんと電話させてあげたいな。どうにか管理所のスキを見つけられないかなぁ)
ヘルガ「おい、貴様」
6主「あ、所長」
ヘルガ「あの小娘はどうなっている? ここ最近、プレイルームでも練習場でも見かけないと聞いているが?」
6主「ちょっと、色々考える時期でね。だから、休みをあげているんだ。その分俺が働いているから、文句はないだろう?」
ヘルガ「ふむ…。あまり仕事をサボるようなら罰を与えなければならんが?」
6主「あの子の管理は俺の管轄だ。責任は俺にある。罰なら、俺が受けるよ」
ヘルガ「分かっているようだな。まぁ、本当に罰を与えるなどとは言わん。健康管理も重要なことだからな」
6主「もしかして、心配してくれたのか? マミちゃんのこと」
ヘルガ「当然だ。収容者の管理が仕事だからな。壊れやすい小娘となれば、扱いも慎重になる」
6主「ああ、そう…」
ヘルガ「そういえば、ペラの方はたまっているのか?」
6主「うーん、何とかなるかも…ってところかな」
ヘルガ「言っておくが、期限までに1ペラでも足りなければ、もう100日この島に滞在してもらう。
情けをかけるつもりはない。それが規則だからな」
6主「わかってるよ。そんなことを許してくれるような人じゃないからね、君は」
ヘルガ「現状を認識しているならそれでいい」
6主「最悪、マミちゃんだけでも脱出できればOKだ。そうなったら、俺だけもう100日間働くよ」
ヘルガ「しかし、あの娘はこの島を出る気になるかな?」
6主「! …知ってたのか?」
ヘルガ「あの手の輩は、この島では珍しいものではない。小娘もそうだとは思わなかったがな」
6主「出る気になるさ。あの子の居場所はこんな所じゃないんだ」
ヘルガ「強要するのか? この島で生きることの方が、小娘にとって幸せかもしれんぞ」
6主「俺はそうは思わないよ」
ヘルガ「…まあいい。小娘のことは小娘自身が決めることだからな」スタスタ
―次の日・グラウンド―
マミ「…」
マミ(私は、どうしたら…)
小杉「おい」
マミ「は、はい!」
小杉「止めだ。やる気がないのなら、勝負しても意味がないしな」
マミ「え、あ、すみません…」
落田「負け続けているから、止めどきを探してたでやんすね」
小杉「うるせーぞ! 凡田!」
落田「オイラは、落田でやんす!」
マミ(6主さんはああ言ったけれど、でも街に戻って何があるっていうの…?)
マミ(結局、魔女と戦い続けて最後は魔女になる…。どこに居たって、同じじゃない)
マミ(新しく仲間を増やすことも、もうできない。こんなことに誰かを巻き込むなんてことは、許されることじゃないわ)
マミ(魔法少女はどこにいても一人で、私を知ってくれる人なんてどこにもいない)
マミ(6主さんが教えてくれた未来の仲間だって、最後は死んでしまう。良いことなんて、何もないじゃない)
マミ(でも、BB団に協力するなんてこと…)
落田「そういえば、マミちゃんはそろそろ滞在期限でやんすね」
マミ「はい…」
三谷「おお、そういえばそうか。ペラの方はどうなんだ?」
マミ「まだ、溜まってはいないですけど…。でも、次の試合に勝てればなんとかはなりそうですね」
渡辺「それはよかった」
三谷「一足早くマミ助がいなくなるのか…。なんだか寂しくなるな」
落田「ちょっと間だけでやんすよ。オイラたちもさっさとこんな島を出るでやんす!」
中田「そうだな。試合にも勝てているし、俺も、もうちょっとでペラが溜まりそうだよ」
マミ「…」
三谷「しかし6主の奴、100日で二人分のペラを溜めちまうとはなぁ」
落田「無駄に熱い男でやんすからね。それがいい所なんでやんすが」
渡辺「ペラも貸してくれたしな」
布具里「まぁおせっかいなやつだしな。無駄に首突っ込むし」
小杉「裏切られてから、気が付くタイプだな。バカなんだよ」
マミ「でも、いい人ですよ?」
小杉「それだけじゃ、世の中渡っていけないんだよ」
落田「でも、意外と抜け目もないでやんすよ。班長にワイロを渡していたり、やることはしっかりやっているでやんす」
三谷「あ、ばか!」
マミ「え…?」
三谷「い、いや、何でもないぞ、マミ助」
マミ「ちょっと待ってください。ワイロってなんですか…?」
三谷「ワ、わいろうっていうお菓子があるんだ! いやーあれは…」
マミ「答えてください!」
落田「べ、別に大したことじゃないでやんす。そんなに悪いことじゃないでやんすよ?」
マミ「それは私が決めます。何ですか、ワイロって」
一同『…』
小杉「…ワイロはワイロだよ」
三谷「おい、小杉!」
小杉「いいじゃねぇか。大なり小なり、みんなやってるんだ」
マミ「…どういうことですか?」
小杉「試合のスタメンだよ。メンバーを決めるのは班長だが、ワイロを贈れば優先的にスタメンに入れてもらえるんだ」
マミ「…!」
小杉「どうしても試合にでたけりゃ、班長にペラを贈ればいいんだ。簡単な話だろ?」
マミ「…それを、6主さんがやってたんですか?」
落田「マミちゃん。6主くんを責めちゃダメでやんす。これも、ペラをためるためでやんすよ」
マミ「…もういいです」スタスタ
三谷「…マズったなぁ」
渡辺「おい、落田くん。お前のせいだぞ」
落田「スマンでやんす…」
小杉「…」
マミ(…結局、みんな同じなんじゃない)
マミ(みんな汚ないことをして。じゃあ、私が悪いことをしても、何がいけないっていうのよ…!)
―宿舎―
落田「ごめんでやんす、6主くん」
6主「まぁ、しかたないよ。ばれちゃったもんはしょうがないし」
三谷「それで、マミ助とは話ができたのか?」
マミ「…」
6主「それが、どうにも話すきっかけがなくて…」
渡辺「とにかく、早く仲直りするんだな。時間が経つとますます気まずくなるぞ」
布具里「俺たちからも頼むよ。視線が痛くて痛くて…」
落田「純粋な眼差しが心に突き刺さるでやんす…」
6主「わかったよ。こっちも話したいことがあるし、何とかしないとな」
―外―
マミ「…なんですか、用って」
6主(何とか外に連れ出したものの、どうしよう…)
マミ「何もないなら、帰ります」
6主「ちょ、ちょっと待ってマミちゃん!」
マミ「早くしてください。6主さんも仕事で疲れているんでしょう?」
6主「えーっと…、怒ってるんだよね。俺が…その…ワイロを贈ってたから…」
マミ「…」
6主「ごめん。君に相談するべきだったよ。隠すようなことをしていたのも謝る。この通り!」
マミ「…別にかまいません」
6主「え?」
マミ「そうしないと、試合に出られなかったんですよね? じゃあ、仕方ないじゃないですか」
6主「う、うん。そうなんだけど…」
マミ「いいんです。責めるつもりはありません。正しいことだけしても、どうにもなりませんものね」
6主「…怒ってるよね?」
マミ「怒ってません」
6主「いやでも…」
マミ「怒ってません」
6主「あの…」
マミ「怒ってません」
6主「…」
マミ「もう、戻ります。明日も早いですから。6主さんも早めに休んでください」スタスタ
6主「あ…」
6主(…どう考えても、軽蔑されてるよな?)
―グラウンド―
マミ(…みんな同じじゃない)
マミ(悪いことをする人が良い目を見て、正直な人は不幸になるだけ)
マミ(だったら、私だって悪いことをしたって何が悪いっていうの?)
マミ(こんな島で働いて、魔女になるまで残りの人生を過ごしたって…)
マミ(魔女になっても、死ぬのはBB団だけ。人がいなくなったら、後はこの島で一人ぼっちね。そうすれば、もう誰も襲うことはないわ)
マミ(誰にも迷惑かけないし、それ以外私の魔女で被害が出ることもない。あの街の平和を守るためにも、これが最善なんじゃないの)
マミ(そうよ、それでいいじゃない…。それで…)
落田「マミちゃん、ちょっとお話ししたいでやんす」
マミ「…何ですか? 落田さん」
落田「6主くんのこと、許してあげてほしいでやんす」
マミ「許すもなにも、私は別に…」
落田「嫌な部分を見てショックなのはわかるでやんす。でも、6主くんもしたくてしたわけじゃないでやんすよ」
マミ「…そんなことは、わかってます」
落田「ああ見えて、6主くんはそういうのを一番嫌っている男でやんす。それでもあえてあんなことをした気持ちを、どうかくみ取ってほしいでやんす」
マミ「…」
6主「おーい、落田くん。倉刈さんのことだけの上手くいった…」
落田「あ…6主くん」
マミ「…」
6主「…」
落田「あの…6主くん、オイラは…」
6主「言い訳はしないよ。マミちゃん」
マミ「…?」
6主「俺がやったことは悪いことだ。どんな理由があろうとそれは変わらない。だから君は…」
マミ「綺麗なままでいてくれっていうんですか?」
6主「え…?」
マミ「ふざけないでください。貴方の勝手な願望を私に押し付けないでください」
6主「そんなことは…」
マミ「自分だけそうやって悪いことして、私には綺麗でいろっていうんですか。
何でみんな悪いことをしているのに、私はしちゃいけないんですか? そうしないとどうにもならないのに?」
6主「そういう状況だし、正しいことだけじゃ生きられないも本当だ。でも、それをマミちゃんがやる必要はない。こういうのが大人の役割なんだ」
マミ「それが勝手だっていうんです。自分のことは自分で面倒見ます。どうせ魔女になるんだったら、それまで好きなように生きたって…」
6主「ダメだ」
マミ「…どうしてですか?」
6主「今の君は、後ろしか向いていない。それじゃだめだ」
マミ「それのなにが悪いんですか? もうどうしようもないなら、逃げるしかないじゃないですか」
6主「本当に逃げられる相手ならそれでもいい。でも君は、今の君の相手からは逃げることは出来ないよ」
マミ「そんなこと、やってみないとわからないじゃないですか!」
6主「やらなくても分かるよ。相手はマミちゃん自身だ。誰も自分を止めることはできないし、何時でも側に居る相手から逃げられるわけないじゃないか!」
マミ「…!」
6主「不安は正体がわからないから不安なんだ。じっくり見つめて正体を明かさないと消えないんだ、マミちゃん」
マミ「6主さんは勝手です! 勝手すぎます!」
6主「そうだよ、君の問題は君が解決するしかない。周りは勝手なことしか言えないんだ。それでも解決するしかないんだよ。その勝手な言葉を聞き入れてでも。
マミちゃん、不安なら向き合うしかないんだ!」
マミ「それでも酷い! わたしの側にも居てくれないくせに、そんなこと言わないでください!」
6主「え…?」
マミ「誰が居てくれれば私だってこんなに悩まなくて済むんです。この島の外で一緒に居てくれる誰かがいれば、それで!」
6主「それは…」
6主(俺は任務が終わったら未来に…)
マミ「解決する方法を持っているのに、それをしてくれない人の勝手な意見なんて聞きたくないです!」ダッ
6主「あ、マミちゃん!」
落田「6主くんダメでやんす。あの様子じゃ、6主くんの言葉は今のマミちゃんには逆効果でやんすよ」
6主「でも、あのままじゃ…」
落田「どうしたもんでやんすかね。オイラたちのようなダメ人間が何を言っても無理なような気がするでやんす」
6主「…」
6主(もしかして、覚悟が足りなかったのか? 一度関わったら最後まで付き合うって覚悟が…)
6主(中途半端に付き合ってもそれはただの同情で、本当に相手のためにならないんじゃないんだろうか?)
マミ「…」
マミ(私っていつからこんなに嫌な子になったんだろう。あんなに親身になってくれた人に、酷いことを言うなんて…)
マミ(もうダメみたい、私)
マミ(6主さんは私のことを正しいっていってくれたけど、そんなことない。正体を知らずに魔女を倒していたんですもの)
マミ(私なんて、こんな島で死んだほうが…)
小杉「おい、ちょっと来い」
マミ「え? きゃっ…」
小杉「…」ズンズン
マミ「ちょ、ちょっと、離してください!」
小杉「…」ズンズンズン
マミ「…なんですか、小杉さん」
小杉「さっさと、6主と仲を戻せ」
マミ「そんなこと、あなたに言われる筋合いがありません」
小杉「迷惑なんだよ。班の空気も悪くなるし、お前も練習に身が入ってないからな。このままじゃ、試合に負けるだろうが」
マミ「またペラですか? それしか考えることがないんですね」
小杉「当り前だ。この島じゃペラが全てなんだからな。追い求めて何が悪い」
マミ「…それをなんで私にいうんですか?」
小杉「どうせお前がくだらないこと考えて、わがままを言ったんだろ」
マミ「くだらないってなんですか」
小杉「何だよ、なにか文句でもあんのか?」
マミ「私だって悩んでるんです。それを勝手にくだらないなんて言わないでください」
小杉「知るかよそんなこと。ガキの悩みなんて能天気に飯食って寝れば解決するようなもんだろ。
そんなもんで、これ以上空気を悪くすんなって言ってんだよ」
マミ「貴方にわたしの何がわかるっていうんですか? 悩みも知らないくせに」
小杉「知らなくても、この島でガキが大人より苦労しているわけないからな」
マミ「そんなことありません。小杉さんにはわからないかもしれませんが、私だって悩むくらいの苦労はしてるんです」
小杉「じゃあ、お前は文句が言えるほど自分が苦労しているっていうのか?」
マミ「確実に小杉さんよりは苦労はしてるでしょうね」
小杉「あんだと! この俺がスター選手になるまでにどれだけ苦労したと思ってんだ!」
マミ「でも、結局こんな島に来ることになったんでしょう? それって苦労が足りなかったってことなんじゃないんですか?」
小杉「うぐ…」
小杉(確かに俺のスターの座は…)
小杉「そ、それはお前だって同じだろうが!」
マミ「私は売り飛ばされてきた身ですから。自分の知らないところで巻き込まれた分だけ、苦労してるんじゃないですか」
小杉「ホントむかつくガキだな、お前!」
マミ「何も知らない人に能天気呼ばわりされれば、こうもなります!」
小杉「いや、お前が6主より苦労しているわけがない! やっぱり悪いのはお前だ!」
マミ「何でそうなるんですか。それは、6主さんは苦労してると思いますけど」
小杉「あいつがどんなに身を削ってたかお前は知らないだろう。わがまま言って困らせるんじゃねぇ」
マミ「身を削るっていっても、悪いことをしてペラを稼いでいただけでしょう? ズルをする苦労なんて、苦労って言えるんですか?」
小杉(! ここだ…! このクソガキを言い負かせるにはここしかない!)
小杉「ズルっていうがな、それを6主が本当に好きでやってたと思ってるのか?」
マミ「…どういう意味ですか?」
小杉「あいつは人一倍、そういうのが嫌いなんだよ。不正がまかり通るっていうのがな」
マミ「知っていますよ。だからどうしたっていうんですか。悪いことだと分かっているのにやるなら、さらに悪いことだと思いますけど」
小杉「お前のためにしていたのに、その言いぐさかよ。アイツも報われないな」
マミ「…?」
小杉「何でそんなことをしたかといえば、お前が一日でも早くこんな島から出られるようにするため決まってるじゃねぇか。
そのために、自分の矜持を曲げてまでBB団に媚を売ったんだよ」
マミ「そんなの関係ないです! それで試合に出るためにワイロを渡すなんてことしたら、BB団と何も変わらないじゃないですか!」
小杉「しかたないだろ。只でさえ、アイツは班長に嫌われてるからな。お前も知ってんだろ?」
マミ「それでも他に方法が…」
小杉「ないな。ワイロの一つでも渡さなきゃ、試合には絶対に出られなかっただろうな。そうなったらペラを貰えないどころか、負けてペラを支払う羽目になっただろうぜ。ウチの班は負け続きだったしな」
マミ「でも、悪いことです!」
小杉「あのなぁ、自分の正義を守るのとこの島から脱出するの、どっちが大切だと思ってるんだよ。
それにアイツはお前も島から出さなきゃならなかったんだ。自分のことなんか優先してる余裕なんかあるわけないだろうさ」
マミ「でも…でも…!」
小杉「綺麗なままで目的も果たせるなら、それが一番いいんだろうさ。
でもアイツはそんなことよりも、お前が島から出られる方法を優先したんだろ。それこそ、汚いことでも何でもしてでもな。
アイツはそういうやつなんだよ。見えないようにやってたのも、お前に重荷を背負わせるわけにはいかないって言ってたぜ」
マミ「6主さんが…?」
小杉(全部、俺の創作だけど)
小杉「アイツが、超のつくお人よしだってこと知ってんだろ。自分のことより、誰かの事を優先しちまうんだよ。
さっきだって、倉刈のために危険なことしてたしな」
マミ「倉刈さん…?」
小杉「ああ、娘に一言電話させるために管理棟に忍び込んだんだ。俺に兵士の気を引くようにペラを渡してきたぜ。
まったく、見つかったら銃殺されるっていうのによくやるよ」
マミ「だ、大丈夫だったんですか?」
小杉「俺がヘマをするわけないだろ。倉刈の奴と無事に帰ってきたし、何とかなったんじゃねぇの」
マミ「よかった…」
小杉「そんな奴なんだ。自分の事より、他人のことを優先しちまうんだよ。それこそ、自分がどんなことになろうともな。
お前がのほほんといられたのも、そのおかげなんだよ。アイツがいなかったら、速攻でリフレッシュ小屋に送られてただろうしな」
マミ「あの、前から気になってたんですがリフレッシュ小屋って?」
小杉「…知りたいか?」ゴニョゴニョ
マミ「な…!」///
小杉「アイツ、お前に気を使って小屋で休むのもためらってたんだぜ? お前が来てから人形も使ってなかったみたいだし。
そこまで6主の世話になっていたお前に、責める資格なんてあるのかよ」
マミ「それは…」
小杉「リフレッシュ小屋を使わないのはどれだけ辛いのか、お前は知らないだろ?
毎日、それこそ死ぬ寸前まで搾り取られて気力も無くなって、そんな地獄での唯一のオアシスがあそこなんだ。
あそこをわざわざ使おうとしないなんて、俺には自殺したいようにしか見えないね」
マミ「…」
小杉「ふてくされているお前より、どんなことをしてでも帰還するために行動している6主の方がよっぽどマシだと思うがな」
マミ「…」
小杉「ようやく分かったか。お前はなんか、ただわがまま言って困らせてるガキなんだよ!」
小杉(決まった!)
マミ「…ひっく、ひっく」
小杉「え? おいなんで泣くんだよ!」
マミ「私…酷いこと言って…」グスグス
小杉「そうだよ! 全部お前が悪いんだ! 泣けば許されると思ってるなら大間違いだぞクソガキ!」
マミ「う、あ、ああああああ…」ボロボロ
落田「あー! 小杉がマミちゃんを泣かせてるでやんす!」
渡辺「見損なったぞ! 小杉!」
三谷「それでも大人か!」
ボコボコボコボコ…
マミ(私は自分のことしか考えていなかったのに、6主さんは…)
マミ(謝らないと…)
―宿舎―
6主「…」モグモグ
6主(うーん、やっぱりこれしかないかなぁ…)
6主(とはいえ、これでいいんだろうか。俺はこの時代の人間じゃないし…)
6主(いや、迷ってちゃダメだ。俺にはまだやることがあるんだから)
マミ「あの…6主さん、ちょっといいですか?」
6主「あ…マミちゃん」
マミ「お食事の後でいいんです。少し時間をくれませんか…?」
6主「うん。こっちも話があるんだ」
マミ「…」ビクッ
6主「夕飯が終わったら外に行こう。話はそこで」
マミ「…はい」スタスタ
6主(ちょうどよかった…のか?)
落田「6主くん。マミちゃんは今日一日とても落ち込んでたでやんす。いろいろとあったでやんすが怒っちゃだめでやんすよ」
6主「怒る? なにを?」
落田「…まあ、怒ってないなら良いでやんす」
6主「?」
三谷「おい、絶対にしくじるなよ」
中田「もう、あんな目で見られるのはキツイよ」
6主「わかってますよ。ちゃんとマミちゃんのことは責任持ちますから」
落田「頑張るでやんす!」
―外―
6主「…」
マミ「…」
6主(…どうやって切り出そう?)
6主(考えたら俺はマミちゃんに嫌われてるわけだし、いきなりこんな話をしても無理だよな?)
マミ「…」
6主(ち、沈黙が痛い! な、なにか話さないと)
6主(それとも向こうから話すのを待つか? いやいや、問題を先送りにしても何の解決にはならないぞ!)
6主「あ、あのー?」
マミ「…ご」
6主「マミちゃん、それで…」
マミ「ごめんなさい!」
6主「へ?」
マミ「勝手なことばかり言って、本当にごめんなさい!」
6主「な、なんのこと?」
マミ「私の知らないところで守ってくれてたって、小杉さんから聞きました。ワイロだって、確実に試合に出るためには仕方のないことだったって…」
6主「え、小杉? なんであいつが」
マミ「何も知らないのに勝手なことばかり言って、私って本当に…」
6主「い、いや。それはもういいよ。悪いことしてたことには変わりないんだし」
マミ「でも、やりたくもないことをやっていたって…」
6主「所長にああいった手前、俺には君を守る責任があるんだ。俺が好きでやってることだから気にしなくていいよ」
マミ「そんなの関係ありません。6主さんが私の代わりに嫌なことを引き受けていてくれたんですよ?」
6主「それこそ、知らなかったんだから仕方ないよ。俺も言わなかったしね」
マミ「でも…!」
6主「わかってくれたのなら、それでいいんだ。正直、許してくれないかもしれないって思ってたからさ」
マミ「どうして、責めないんですか? 6主さんにあんなに酷いこと言ったのに…」
6主「だいぶヘコんでいるみたいだからね。傷口に塩を塗るようなことはしないよ」
マミ「でも、それじゃあ私の気が収まりません。お世話になりっぱなしなのに、何も知らないでわがままを言っていたなんて…」
6主「いいんだよ、それで」
マミ「え…?」
6主「わがままを聞くのも大人の仕事ってね。子供はまだ成長途中なんだから、間違えたり失敗して当然なんだ。そうやって成長していくんだから」
マミ「…私、もう子供じゃありません」
6主「正しくは、子供じゃいられなかったんでしょ? ご両親の事や魔法少女のことがあって」
マミ「…はい」
6主「でもマミちゃんはさ、もっと肩の力を抜いていいと思うな。
失敗しないように気を張っているのかもしれないけど、無理をしてもそのうちほころびが出てくるよ。
どんなに大人になろうとしても、君は子供なんだ。子供は失敗しても、誰かが守ったり教えてくれるはすだよ」
マミ「…でも、私には誰もいないんです。ずっと一人だったし、失敗なんてしたら生きていけなくて…」
6主「そのことなんだけどさ。提案があるんだ」
マミ「なんですか?」
6主「この島を出たらさ、マミちゃんさえよければ俺が君の後見人になろうと思うんだ」
マミ「え?!」
6主「ほら、『解決する手段があるのに勝手だ』って。ああだこうだ言っておいて、いなくなるなんて無責任だと思うんだ。だからさ…」
マミ「そ、そんな! あれは八つ当たりみたいなもので深い意味は…!」
6主「…やっぱり嫌?」
マミ「い、いえ! 嫌じゃないですけど…」
6主「それにさ、君はもう例の親戚の人の世話にはなれないと思うんだ。そうなったら身寄りがなくなっちゃうし、それを放っておくことも出来ないかなって」
マミ「で、でも、6主さんは未来人だし、そんなこと歴史が…」
6主「ああ、大丈夫。俺一人増えたくらいで歴史の大筋はそう簡単には変わらないから。歴史は変更を嫌う性質があるからね。
この時代に戸籍とかないから、色々用意しなきゃいけないけど、まぁそれはこっちで何とかしてみるよ。
未来に帰るのも、まあとっくに滞在期限は過ぎてるからさ。少しくらい伸びてもあんまり変わらないしね」
マミ「…やっぱり、未来には帰ってしまうんですよね」
6主「まぁ、いつかはね。でも任務も終わってないから、当分先だよ」
6主「それでさ、俺がこの時代に居られる間に、マミちゃんには好きな人を作ってほしいんだ」
マミ「え、な、なにいってるんですか!」
6主「いやいやいや! 変な意味じゃないよ!」
マミ「す、好きな人って…」///
6主「ご、ごめん。説明が足りなかった! 今説明するから! マミちゃんは言ったよね。自分には何もないって」
マミ「は、はい…」
6主「だからさ、俺が一緒に居てあげられる間に、その何かを作ってほしいんだ」
マミ「何か…ですか?」
6主「そう。好きな人や大切な人、魔法少女として戦う理由、趣味、生活。何でもいいんだ。それさえあれば、生きる希望が湧いてくる。そんなものをね」
マミ「でも…そんなもの見つけても最後は…」
6主「確かに魔法少女は酷いシステムだ。その行きつく先は魔女になることなのかもしれない。
でも、それは今日明日で来るものじゃない。宿命から逃れられなくても、それまでの日々が不幸である道理はないはずだ」
マミ「…はい」
6主「それには、最後まで希望を失わないものが必要なんだ。最後の最後になっても、後悔しないものがね」
マミ「…」
6主「待っているのは残酷な結末かもしれない。でもその過程まで不幸にする必要はないんだ。
絶望で魔女になるなら、希望を持てば結末すらも変えられるかもしれない。そうなれるものを君には見つけてほしいんだよ」
マミ「…そんなもの、あるんでしょうか?」
6主「あるよ、絶対に」
マミ「どうしてわかるんですか?」
6主「『希望はいいものだよ。多分最高のものだ。いいものは決して滅びない』ってね」
マミ「え?」
6主「昔の映画のセリフ。映画も俺の時代まで残っているんだ。いいものは残るし、なくならないもんだよ」
マミ「…」
6主「まぁ、後見人の件は考えておいてよ。強制はしない。でも、君の手伝いをしたい気持ちは変わらないよ」
マミ「…はい」
―朝―
マミ「おはようございます」
落田「おはようでやんす、マミちゃん」
三谷「おう、マミ助。今日は元気だな」
マミ「ご心配をおかけしました。あの…、ご迷惑をかけて申し訳ございませんでした」ペコリ
渡辺「いいよいいよ。たまにはそんな時もあるだろ」
中田「こんな島だしな」
倉刈「辛くなったら、我慢しないで言ってくださいね。力になりますから」
落田「ちゃんと仲直りできたのでやんすね」
6主「まぁ、何とかね。色々と約束もしたし、ますます期限までにペラを溜めなくちゃいけなくなったよ」
落田「がんばるでやんす。あと、もうちょっとでやんすよ」
三谷「そうそう、マミ助をちゃんと脱出させてやらなかったら、ぶん殴るからな」
6主「わかってますよ」
(その日のこと…)
―鉱山―
収容者A「…っと、ああ腰が痛い…」
収容者B「まったく、仕事終わりだっていうのにこんなこと押し付けやがって」
収容者A「おい、兵士に聞かれたらどうするんだよ」
収容者B「っせぇな、愚痴ぐらい言わせろよ」
収容者A「ええと、なんだこりゃ? 何か動かないぞ?」
BB兵「おい、そこ! 何をグズグズやっているか!」
収容者A「あ、すみません。トロッコの車輪に何かが挟まって…」
BB兵「どれ、見てやろう」
(ぐらっ!)
BB兵「え?」
収容者A「あ」
BB兵「うああああ!」グシャ
収容者A「あ、あああああああ!」
収容者B「おい、お前…なんてことを!」
収容者A「やっちまった…。トロッコを倒してBB団兵士に大けがさせちまった…!」
「すぐに逃げろ!」「殺されるぞ!」
収容者B「ちょっとまて! …こいつ銃を持っているな」
収容者A「え? ああ、そうだな…」
収容者B「…使えそうだ」
収容者A「おい、まさか!」
収容者B「へへ、『毒を食らわば』なんとやらだ。島民を人質にとって、このふざけた島から逃げ出そう」
収容者A「そんなことして、もし失敗したら殺されるぞ!」
収容者B「じゃあ、どうすんだよ! どのみち、俺たちは兵士をやっちまったんだ。何もしなくても殺されるぞ」
収容者A「そ、それは…」
収容者B「俺はやるぜ。こんなところで殺されてたまるか。お前はどうすんだよ」
収容者A「…」
―村―
村長「…すみませんな。色々いただいて」
マコンデ「ほっほっほ。まあ、あなた方からは食べ物を供給してもらってますからね」
6主(なるほど。この島で作れない、衣服や砂糖で島民を手なずけているのか。バオが言っていた通りだな)
マコンデ「おい、お前たち! さっさと持ってきたものを村の倉庫に運び込まんか!」
6主「はい」
マミ「それじゃあ、私たちも運びましょう。6主さん」
落田「オイラは、向こうの方を手伝ってくるでやんす」
6主「わかったよ」
落田「マミちゃん、疲れたらさっさと6主くんに全部任せるでやんす」
6主「おい! いくらなんでもこれ全部は無理だ!」
マミ「私は大丈夫ですよ。この島に来て体もだいぶ鍛えられましたから」
落田「マミちゃんは真面目でやんすね。やっぱりいい子でやんす」
6主「ほらほら、落田くん。向こうで中田さんが呼んでるよ」
落田「おっと、じゃあ行ってくるでやんす。6主くん、ここで全部運んだら男の株が上がるでやんすよ」スタスタ
6主「…まったく、落田くんは」
マミ「じゃあ、早く運んでしまいましょう。6主さん」
6主「そういえば、どうだい? 好きなこととかやりたいことは見つかりそう?」
マミ「すみません、まだ…」
6主「まぁ、焦ることはないよ。こっちの任務も全然手についてない状態だし、時間がかかりそうだしね」
マミ「…何も思い浮かばないんです。お父さんやお母さんが死んじゃってから、ずっと魔女と戦ってて遊んだりする暇もなくて…。
こうしてみると、私って魔女退治のことしか考えてなかったんだな、って」
6主「うーん、魔法少女仲間とはいないのかな? ほら、報告書にあった子たちとか」
マミ「それが、ほとんどまだ聞いたことの人ばかりで…。佐倉さんは知ってるんですけど」
6主「その子とはどうなんだい。大切な仲間だったりとかは…」
マミ「…あの子とは、その、魔法少女の在り方について喧嘩別れしてしまって」
6主「なにかあったの?」
マミ「佐倉さんは、魔法少女は自分ためだけに戦うべきだって言うんです。だから、使い魔が人を襲っても放っておいてグリーフシードを孕むまで待ったほうがいいって。
それで、一緒に居られなくなってしまったんです」
6主「でも、グリーフシードがないと魔法少女は…」
マミ「はい。でも、その頃はそんなこと知りませんでしたから。戦って、それで別れてしまって」
6主「…難しいところだね。どっちも間違ってはいない分、余計にね」
マミ「でも、人を襲わせるなんてことはできません。未来の私に何があったのかはわかりませんけど、とても彼女とはもう…」
6主「無理に、主義主張をぶつける必要はないんじゃないかな?」
マミ「え?」
6主「世の中、理解できない考え方や価値観が山ほどあるんだ。いけないのは、意固地になって無視することじゃないかな」
マミ「でも、佐倉さんの考えはとても私には…」
6主「別に君がそうするってことじゃないよ。お互い尊重すること、どっちも間違ってないならなおさらだよ」
マミ「…綺麗ごとじゃないでしょうか?」
6主「でも、君はその子のこと心配なんだろ?」
マミ「そ…! …そうかもしれません」
6主「じゃあ、仕方ないじゃないか。綺麗ごとでも何でも、一緒に居られる道を探さないと」
マミ「そうでしょうか…」
6主「大丈夫、きっとできるって!」
マミ「はい…」
マミ(…でも、魔法少女の未来は決まっている。運命は変えられない)
マミ(そんな行き詰った世界で、希望を持てるものなんて…)
マミ「6主さん、ちょっと未来のことを聞いてもいいですか?」
6主「いいけど、あんまり面白くないよ? 話せないことも多いし」
マミ「あれ? でも、魔法少女のことはよかったんですか、話して?」
6主「うっ…」
マミ「…ダメだったんですか? もしかして」
6主「…うん」
マミ「…」
6主「…」
マミ「き、気が動転していたんですからしかたないですよ!」
6主「そ、そうだよね! 仕方なかったよね! 伝説の魔法少女を目の前にしてたんだし!」
マミ「それにそのお陰で私は本当のことを知ることができましたし。私は感謝してますよ! 教えてくれて」
6主「だよね。ちょっと知るのが早くなったくらい大丈夫だよね! イベントの予定が進んだくらい問題ないよな!」
マミ(タイムパトロールとは思えない不用意な発言が多すぎますよ、6主さん…)
6主「ま、まあ、話せる範囲で答えるよ。何か聞きたいの?」
マミ「あ、はい。未来のこと…というより6主さんのことを聞きたいんですが」
6主「俺のこと?」
マミ「タイムパトロールとか聞きましたけど、正直あまり現実味がなくて」
6主「まぁ、それくらいなら大丈夫かな。そのまんまの意味だよ。歴史を変えようとする時間犯罪者を捕まえるのが俺の仕事。今回も、その任務でこの時代に来たんだ」
マミ「じゃあ、この島にその時間犯罪者がいるんですね。やっぱり所長なんですか?」
6主「あ、いや、この島に来たのと任務は関係ないんだ」
マミ「えっ?」
6主「将来歴史を変えるスゴい発明をする製作所を守るのが任務だったんだけど、失敗して倒産させちゃって。それで借金を背負ってこの島に…」
マミ「そ、それって、大変なことになるんじゃないですか…?」
6主「うん。だから、早く島を出て再建しないと…。あああ、こうしてる間にも歴史が…」
マミ(本当にタイムパトロール…?)
マミ「タイムマシンもあるんですよね、本物の」
6主「まあね。それがないとこの時代に来れないし」
マミ「どんなものなんですか? タイムマシンって。引き出しに空間が広がっているとか、車型で雷を落とすとか…」
6主「あはは。それってアニメや映画だよね。面白いかったよなぁ、あれ」
マミ(未来でも残っているのね…。なんだか凄い話)
6主「とはいえ、君に現物は見せられないな」
マミ「やっぱり、機密事項なんですか。そういうものって」
6主「いや、違うよ。この時代もってきてないんだ。未来のものは、ほとんど持ち込み禁止だし、タイムマシンなんてオーバーテクノロジーなんてもっての外なんだよ」
マミ「え? じゃあ、どうやってこの時代に来たんですか?」
6主「未来にマシンがあって、そこから送ってもらったんだ。だから外見は転送装置に近いかな」
マミ「はぁ…。あれ? じゃあどうやって未来にタイムワープするんですか?」
6主「しないよ」
マミ「え?」
6主「そもそも、過去に戻るタイムマシンはあるけど、未来に行くタイムマシンはまだ開発されていないんだ」
マミ「じゃ、じゃあどうするんですか?! もしかして、一度タイムマシンを使ったら二度と帰れないとか…」
6主「まぁ、帰れないね。というか未来に行く機械がないんだし」
マミ「まさか、置き去りなんですか? 任務で過去に行ったらあとはもう…」
6主「いや、未来に戻る場合はコールドスリープをすることになるんだ。それをするための秘密の施設がこの時代にもあってね。
そこで、元の時代になるまで眠るんだよ」
マミ「…何か、ちぐはぐしてますね。技術はすごいのに、方法は単純すぎるような」
6主「そんなもんだよ。一見凄くても中身は単純なものさ」
マミ「…でもそれって、戻った時代は元居た時代とは違うんですよね」
6主「そうだね。過去に人を送った時点で、歴史が変わっているわけだし。
歴史改変から守るための仕事だから、まるっきり違うってことはないけど、微妙な差異ならよく見るかな」
マミ「…」
6主「読んでいた小説の作者が、戻ったら小説家じゃなくなってたってこともあったよ。まあ、別の人が似たような小説を書いているんだけど。。
でも文体が全然違うんだよなぁ…」
マミ「…怖くないんですか?」
6主「ん?」
マミ「だって、戻っても前とは違う世界だし、知っている人でも同じ人じゃないんですよ?
そんなの、世界でたった一人ってことじゃないですか…」
6主「うーん、そうなるかな。もう何度も任務でタイムスリップしてるから、なんか慣れちゃってて」
マミ「慣れるものなんですか? そういうのって…」
6主「わからないな。言われて見れば不思議な感じだよ」
マミ「…私はそういうのに慣れたくないです。悲しいじゃないですか、寂しいかどうかも分からないなんて」
6主「寂しいのかな、俺?」
マミ「寂しいですよ。世界でたった一人で、知り合いも誰もいないなんて…」
6主「うーん…」
(パーン! パーン!)
マミ「?!」
6主「今のは! 銃声だよね?」
マミ「ええ…!」
6主(銃を使うような状況になるなんて、大事だぞ…!)
マコンデ「誰ですか、村で銃を打っているバカモノは!」
収容者A「う、うわっ!」パーン
マコンデ「ひ、ひえええっ?!」
6主「なんだ? 反乱か? とにかくマミちゃんは隠れてて」
マミ「は、はい!」
マコンデ「どうして、あいつらが銃を持っているんですかー?!?」
収容者B「おい、弾は少ないんだ。無駄に撃つな」
収容者A「だって、あそこに副所長が…」
収容者B「なに? 捕まえて人質にするんだ!」
収容者A「わかった! ついでにこれまでの恨みを晴らしてやる!」
マコンデ「ひっ、あっちに行け!」タタタタタ
6主「なんか凄いことになっているな…。って、副所長の奴こっちにくるぞ!」
マコンデ「お、おい! そこのお前! 私を助けろ!」
6主「おい、こっちに来るな! マミちゃん逃げるぞ!」
マミ「は、はい!」
マコンデ「あああ、待て待ってくれ!」
収容者A「畜生、逃がすか!」ガガガガガガガ!!!
マコンデ「ひっ、ひぃいい!」
6主「おいバカ! こっちに向けて撃つんじゃない!」
収容者A「うるさい! 殺されたくなかったら俺たちに協力しろ!」
6主「こんな無計画な脱走に付き合えるか!」
収容者A「じゃあ、お前も死ね!」
マミ「む、無茶苦茶ですよ!」
マコンデ「ペ、ペラを出すぞ! だから私を撃つのを止めろ!」
6主「んなことしているじゃないじゃないだろ! 早く逃げろ!」
収容者A「逃げられるくらいなら、殺してやる!」ガシャ!
6主「危ない!」ドン
マミ「きゃっ!」
ガガガガガガガ!!!
6主「はうっ!」バタ
マミ「ろ、6主さん! しっかりしてください!」
マコンデ「ひ、ひぃぃぃぃぃ!」
収容者A「あ、あんなところに逃げた! この…!」
収容者B「おい、村長を捕まえたから逃げるぞ!」
収容者A「あ、ああ!」タタタ
マコンデ「た、助かった…」
マミ「6主さん! しっかりしてください! 6主さん!」
6主「…」
マコンデ「こ、この! よ、よくも私を守らずに逃げようとしおって…」
マミ「やめてください!」
マコンデ「何だ小娘! 私に逆らうのなら…」
マミ「銃で撃たれたんです! 早くドクターを呼んでください!」
マコンデ「な、何で私がそんなことしなくてはならないんだ! 私は副所長だぞ!」
マミ「早く! でないと6主さんが…」
落田「マミちゃん! 今、倉刈さんが呼びに行ったでやんす! こっちに早く運ぶでやんすよ!」
マミ「落田さん!」
マコンデ「ふ、ふん! 役立たずめが!」スタスタ
マミ「6主さん…」
マミ(こうなったら、回復魔法で…)ポウ
―海辺―
収容者B「村長、外海に出られる船はどこだ!」
村長「そこじゃ、そこにあるが…」
収容者B「なんだよ! ハッキリ言え!」
村長「わし一人では、うごかせん。もっと人の手がなければ…」
収容者B「くそ、それでもやるしかない! おい手を貸せ!」
村長「は、はい…」
収容者A「おい、待てよ、あれはなんだ?」
収容者B「ん? あれは軍艦じゃねぇか?!」
収容者A「あ、砲台がこっちに向いて…」
(ヒュルルルルル)
収容者B「あ…」
(ズガーーン!)
―管理棟―
ヘルガ「…着弾したか?」
BB兵「はい。目標には直撃していません」
へルガ「よし。行って脱走者をとらえよ」
BB兵「はっ!」タッタッタ
へルガ「…さて、問題はこの後の処理だな」
―医療室―
6主「あー、死ぬかと思った…」
落田「本当に大丈夫でやんすか? なんかどくどく血が出てたでやんすけど…」
6主「大丈夫大丈夫、ほらこうやって喋れるし」
落田「まあ元気そうならいいでやんす。それにしても、運が良かったでやんすね」
6主「なんか、撃たれたけど当たり所は良かったみたい。ドクターにも言われたよ」
三谷「でも、しばらくは養生してるんだぞ。鉄砲玉食らったんだからな」
中田「ほんと、大事じゃなくてよかったよ」
小杉「けっ、くたばりぞこないが!」
倉刈「小杉くん、そんなこと言ってはいけませんよ」
マミ「あ、6主さんお水持ってきました」
6主「ありがとう」
落田「ちゃんとお礼を言うでやんすよ、一番心配していたのはマミちゃんなんでやんすから」
6主「わかってるよ。ありがとうね、助かったよ」
マミ「い、いえ…」
落田「マミちゃん。6主くんの事、任せてもいいでやんすか? 男が世話をするより、女子中学生の方が6主くんも喜ぶでやんす」
6主「人を変態みたいに言うな!」
マミ「わかりました。じゃあ、みなさんはもう宿舎に帰ってください。私ももう少ししたら、戻りますから」
落田「わかったでやんす」
三谷「マミ助も、あんまり根をつめるなよ」
マミ「はい」
(そして…)
6主「いやー、助かったよ。マミちゃん」
マミ「…これからは、あんな無茶をしないでくださいね」
6主「いや、俺もする気は無かったんだけどさ。無意識に体って動くもんだね」
マミ「…本当に…心配…したんですから…」
6主「ごめんごめん」
マミ「6主さん…本当は大けがだったんですよ? 私が、回復魔法を使えたからよかったものの、そうじゃなかったら今頃…」
6主「…やっぱり、そうだったんだね」
マミ「しばらく一緒に居てくれるって言ったのに…、嘘ついたら…、許しませんからね?」
6主「分かってるよ。約束は絶対守る。そうじゃなきゃ、大人じゃないもんね」
マミ「…はい」
6主「しかし、マズイな。治るのにちょっと時間がかかりそうだ」
マミ「あ…」
6主「もうそんなに深い怪我じゃないけど、これじゃあ、次の試合は出れそうにない…」
マミ「も、もういちど。魔法を使います! それなら…」
6主「ちょっとまった! これ以上傷の治りが早かったら、さすがにBB団に疑われるよ。それは非常にマズイ!」
マミ「で、でも…」
6主「ただでさえ、今日の件で副所長に目をつけられているんだ。今はなるべく、目立つような行動はとらないほうがいい。
魔法少女のことがばれたら、絶対に悪用されるぞ」
マミ「でも、そうしないと試合が…」
6主「…」
マミ(6主さん…)
マミ(このままじゃ試合に出られない。もし負けたりしたら、期日までにペラを集められなくなってしまうわ)
マミ(何か、何かないの? 私に、出来ることは…)
「綺麗なままで目的も果たせるなら、それが一番いいんだろうさ」
マミ「…!」
「島から出られる方法を優先したんだろ。それこそ、汚いことでも何でもしてでもな」
マミ「…」
マミ(そうだ…ワイロを渡せば、確実に試合に出ることができる…)
マミ(もう綺麗汚い言っている場合じゃない。そうしないと、ペラを稼げない…!)
マミ(それに、6主さんにこれ以上汚いことを押し付けるわけには…)
マミ「大丈夫ですよ!」
6主「え…?」
マミ「まだ、試合に出られないと決まったわけじゃありません!
私だっていますし、それに野球班もだいぶ強くなったじゃないですか。試合だってきっと勝てますよ!」
6主「う、うーん。確かに強くはなっていると思うけど…」
マミ「6主さんは、一人で頑張りすぎです。怪我をした時くらい、周りを頼ってください」
6主「そ、そうかな? 結構、周りに頼ってたとおもんだけど…」
マミ「野球は、一人のスポーツじゃないんですから。みなさんのことを信じましょう?
こんな島で一緒に戦ってきた仲間なんですから!」
6主「そうか…。うん、そうだよね」
マミ「…」
マミ(私がワイロを出せば…、試合に出れる…)
マミ(ワイロを渡せば…)
―所長室―
???「ヘルガ、お前の管理が手ぬるいから、今回のような脱走が起きるのでやんす!」
ヘルガ「申し訳ございません。少々、アメを与えすぎました」
???「とりあえず、見せしめとして無差別に10人処刑でやんす! なるべく残酷な殺し方をするでやんすよ!」
へルガ「我々が、残忍であることを見せるというわけですね」
???「そうでやんす! 恐怖こそ、人を縛る最大の鎖でやんすからね」
ヘルガ「それならば、もっと良い方法があります」
???「ほーう? 本当でやんすか? それなら今回はまかせるでやんす」
ヘルガ「わかりました。では、さっそく手筈を」
???「ただし、また連中が舐めた真似をしたらお前と言えども処分でやんす。次はないでやんすよ?」
へルガ「…肝に銘じておきます」
―数日後―
(ざわざわ、ざわざわ…)
マミ「6主さん、歩けますか?」
6主「大丈夫だよ、痛むけどね。しかし、急になんなんだ?」
落田「どうやら、収容者の全員がここに集められてるでやんすね」
マミ「入院中の人も来るように言われるなんて…」
6主「一体、何があるんだ。なにか知らないか?」
布具里「どうも、この前に脱走しようとした奴らを処刑するらしいぜ。兵士がいってたぞ」
マミ「しょ、処刑…?」
布具里「ほら、この間の…」
小杉「しっ、始まるぞ」
収容者A「…」ビクビク
収容者B「…」ガタガタ
へルガ「この二人は、この島の設備に重大な損失を与え、BB団の兵士に怪我をさせた」
収容者A「…」ブルブル
収容者B「…」ガウガク
ヘルガ「しかし、幸いなことに私は寛大だ。お前らに助かるチャンスをやろう」
収容者B「…」ブルブル
へルガ「わたしがこれから言うことを、ちゃんと同じように言えたら許してやる」
収容者B「わ、わかりました」
へルガ「どうか」
収容者B「ど、どうか」
へルガ「わたくしめを」
収容者B「わたくしめを!」
へルガ「殺して」
収容者B「え?!」
へルガ「どうした?」
収容者B「え…あ、いや…。でも…」
へルガ「早く言え。そうすれば許してやる。それとも、こんな簡単なことも言えないのか?」
収容者B「い、いや、でも…。ひ、ひぃぃぃ、いやだ、やめてくれ!」
へルガ「…」
収容者B「やめて…。やめ…」
パン!
へルガ「…片付けろ」
BB兵「はっ!」
収容者B「…」ズルズル
ヘルガ「よし次!」
収容者A「お…俺?」
へルガ「さて、とっとと片付けよう。私を殺して」
収容者A「わたしを…」
へルガ「殺して」
収容者A「こ、殺して!」
へルガ「ください」
収容者A「ください!」
パン!
へルガ「フム、よかったな。願いが叶って」
収容者A「…」
ヘルガ「さてショーは終わりだ。解散!」
一同『…』シーン
6主(…むごいな。ん?)
へルガ「…」
6主(あの表情…まだ少しは良心があるようだが。なんとかしてこんなことはやめさせないと)
マミ「…」
6主「マミちゃん、大丈夫? 気分が悪いなら休んだ方が…」
マミ「…」
6主「マミちゃん?」
マミ「…6主さん」
6主「?」
マミ「私、この島にはもう居たくありません」
6主「…そうだね」
(マミのやる気が上がった!)
―試合前日の日―
江川「おい、明日江川班は試合だ。準備しておけよ」
落田「6主くんは出られそうにないでやんす。残念でやんす」
三谷「なあに、今の俺たちなら一軍なんて楽勝さ」
小杉「…ふん」
渡辺「もうちょっとで、6主くんに返せそうだな」
中田「渡辺、また借りてるのか」
渡辺「ちゃんと返しますよ。そのうちね」
中田「この極悪人め」
(わいわい…)
マミ「…」
マミ(6主さんは今までずっと私のために泥を被っていてくれた)
マミ(今度は私の番。ワイロを渡して確実に試合に出て勝つ…。もう手段を選んでいる場合じゃない)
マミ(やらないと…。そうしないと、ぺラが…)
「ハハハ、君もこの島でのやり方がわかってきたようだね」
(汚ない大人…!もううんざりだわ)
マミ(躊躇ってちゃダメ…!何も解決しない…!)
マミ(義務や強要じゃない。自分の意思でするのよ。子供のままなにもできないんだから…)
マミ「あ、あの…!」
江川「ん?なんだ?」
マミ「こ、これを…」
落田「あ、マミちゃん。違うでやんす!」
マミ「えっ…」
落田「そのペラはオイラが集金するのでやんす。班長に直接渡すんじゃないでやんすよ」
マミ「え、あの、なんの…」
江川「おい落田。いきなり何をいっているんだ? 巴は私に用があるのではなかったのか?」
マミ「そ、そうです!江川班長にこれを…」
落田「マミちゃんは共益金を払いにきたのでやんすよ。6主くんが入院中でやんすから、その代わりでやんす!」
マミ「え、違…」
江川「なんだ。それなら集金係は落田だ。ちゃんと払っておいてくれ」
落田「マミちゃん、間違えちゃダメでやんすよ。班長は忙しいのでやんすから」
江川「そういうことだ。私の手を煩わせるなよ。忙しいんだからな」スタスタ
マミ「ま、待って…」
落田「ささ、マミちゃんはこっちに来るでやんす。共益金の説明をするでやんすよ」グイグイ
マミ「落田さん離してください。離して…」
(そして…)
マミ「な、なんで邪魔をするんですか…? こうしないと試合に出れないのに…」
三谷「悪いなマミ助。でもな、何か泣きそうになっているマミ助を見ていたら放っておけなくてよ…」
マミ「余計な…お世話です…」
小杉「それなら、そんな顔してるんじゃねぇよ。うざったくてしょうがねぇ」
落田「辛かったでやんすね。気づいてあげられなくてごめんでやんす…」
渡辺「こういうのは6主くんがよく気がついていたからなぁ。でも一言相談してくれてもよかったのに」
落田「渡辺さんはいい加減でやんすからね」
渡辺「酷いな。守れる約束は守るぞ」
マミ「言えるわけ…ないじゃないですか…。ワイロを渡してみなさんを蹴落とそうとしてたのに…」
渡辺「ワイロなんてどうしても出たかったら、みんな渡してたからな。そんなに気に病む必要はなかったのに」
落田「そうそう。誰も人のこと言えないでやんす」
三谷「ただな、そんなに辛いならやるんじゃない。自分を殺して生きても楽しくも何ともないぞ」
倉狩「マミさんは真面目ですから…」
落田「そうそう、無理はいけないでやんす」
マミ「でも、そうしないと…」
落田「勝つでやんす」
マミ「え?」
落田「要するに、6主くんとマミちゃんが出ないと勝てないから、試合にどうしてもでたいのでやんすよね?」
中田「まあ、この二人の活躍で一軍に勝っていたもんだし」
布具理「安心して投げれるから、俺も炎上しなくなったし」
落田「なら、オイラたちが試合に勝てば、何の問題もないでやんす!」
三谷「個人ボーナスはもらえないが、6主と合わせて200ペラだ。あと何ペラ必要なんだ」
マミ「え、えっと、それで約2300ペラです」
渡辺「じゃあ、俺が借りてた分、利子をつけて返して200ペラ。これで2500ペラ溜まるだろ」
落田「渡辺さん! あんた6主くんからも借りてたでやんすか!」
渡辺「失礼な。投資だよ投資。ちゃんと増やして返すんだから」
落田「まったく、6主くんは本当にお人よしでやんす」
三谷「とはいえ、これでペラの問題は解決だな。あとは勝つだけだ」
マミ「え、あ、あの…」
落田「と、いうわけでやんす。マミちゃんがわざわざ賄賂を渡す必要はこれでないでやんす」
マミ「で、でも…」
三谷「マミ助。たしかに世の中、綺麗ごとだけじゃやっていけないのは確かだ。汚いことをしなきゃいけないこともある。
だが、その覚悟をこんなところで使うんじゃねぇ。その覚悟は将来、どうしてもやらなきゃならないときができた時に取っておくんだ」
マミ「でも、これは私の戦いです。みなさんにご迷惑をかけるわけには…」
落田「勝てば得するのはみんな同じでやんす! それに野球は一人のスポーツじゃないんでやんすよ、マミちゃん」ドヤッ
中田「お、クサいセリフを言ったな落田」
落田「うるさいでやんす!」
小杉「ガキのくせに、一人で何でもやろうなんて生意気なんだよ」
倉刈「みなさん、マミさんや6主くんに頼りきりでしたからね。ここで少しは恩を返しませんと」
マミ「…」
(そして…)
落田「結局、マミちゃん、泣いちゃったでやんすね」
三谷「一人でずっと悩んでたんだろう。可哀そうなことしちまった」
渡辺「ま、俺たちもいい大人なんだから、子供の一人でも守らないとな」
倉刈「こういうときに守ってあげるのが、大人の役割ですからね」
小杉「…ふん」
布具里「俺も気合を入れて、炎上しないようにしないと」
中田「とにかく、明日は決戦だ。キッチリ勝って、かっこいいところを見せないとな」
落田「当然でやんす!」
―試合の日―
江川「おい、巴。今日はお前、スタメンだから。頑張れよ」
一同『…』
マミ「…」
落田「よく考えたら、今6主くんを除いたらマミちゃんより強力な選手がいるわけないでやんす」
三谷「元々、賄賂なんか渡す必要なかったんだな」
中田「昨日の、俺たちの決意は一体…」
マミ「な、なんかすみません…、せっかくの皆さんの好意を…」
落田「いや! マミちゃんのせいじゃないでやんす!」
渡辺「ここで勝たなきゃ、マミちゃんがピンチなのは変わらないからな」
落田「そうでやんす! ふぬけている場合じゃないでやんす!」
三谷「おっしゃ、気合を入れていくぞ!」
小杉「俺はいつでも本気だ!」
中田「カッコイイとこ見せなくちゃな!」
倉刈「日出子…。お父さんがんばるよ…」
マミ(もしかしたら、これが最後の野球になるかもしれない…)
マミ(うん! 一生懸命がんばりましょう!)
布具里「俺が先発だな、よ~し、いいところをみせるぞ~」
(そして…)
一回終了 7-0
落田「死ねでやんす!」
三谷「いきなり炎上してるんじゃねぇ!」
ボカボカボカボカ!!!
布具里「悪かったよ~」
小杉「もういい! 俺が行く! もう一点もやらねぇぞ!」
中田「こうなったら、ガンガン撃ちこまないとな」
(そして…)
最終回 7-7
落田「な、なんとか追いついたでやんす…」
中田「あと一発…」
三谷「小杉はもう無理だな。よくやったぞ、小杉!」
小杉「…」ゼェゼェ
渡辺「次の打者はマミちゃんか」
倉刈「あんまり力まなくていいですよ。もう延長戦に入れますから」
マミ「…」
マミ「みなさん、ありがとうございます」
落田「どうしたでやんすか? 急に?」
マミ「みなさんがいてくれたおかげで、ここまで来ることができたんです。それで、お礼を。
もし、みなさんがいなかったら、とっくに私はダメになっていたと思います」
落田「そんなの気にする必要ないでやんす」
三谷「俺たちもマミ助に十分世話になったからな。おあいこだよ」
マミ「それでも、言わせてください。ありがとうございます」
布具里「いえいえ、こちらこそ」
落田「お前がいうな、でやんす!」
布具里「なんでだよ~」
倉刈「でも、まだ試合は終わってませんよ。そういうのは、終わってからにしましょうマミさん」
マミ「はい。じゃあ、行ってきます」
落田「ご武運を! でやんす!」
マミ(この島で過ごした、時間のことを、私は一生忘れない…)
マミ(辛いこともたくさんあったけど、学ぶこともたくさんあった)
マミ(でも、こんな島はあってはいけない。こんな酷いことが行われている島を認めることは出来ないもの)
マミ(だから、私は理不尽と戦っていく)
マミ(私のことなんかどうでもいい。魔法少女になった時点で、幸せなんて手に入らないもの。
一人になっても構わない。誰も一緒に居てくれなくてもいい。
魔女もこんな島も許さない。この体が朽ちるまで、あらゆる理不尽と私は戦っていくわ)
マミ「ティロ・フィナーレ!」
―医務室―
6主「本当に一人で大丈夫?」
マミ「はい。一人で決着をつけたいんです。私のせいで、ここまで長引いてしまったようなものですから」
6主「でも…」
マミ「大丈夫です。もう、出る決意は出来ましたから。この島で過ごすことは、もう私にはできません」
6主「そっか…。でも危なくなったら逃げるんだよ?」
マミ「大丈夫ですよ。それにこれくらいしないと、6主さんに申し訳ないですから…」
―魔女の結界―
マミ「はっ!」パンパンパン
使い魔「…」プシュー
使い魔「…」プシュー
使い魔「…」プシュー
マミ「やぁっ!」ドン!
使い魔「…」ドカーン
マミ「さて…お出ましね」
魔女「…」ガサガサガサ
マミ「今日は、絶対に逃がさない!」
魔女「…」プリッ
アレ「…」カサカサ
アレ「…」カサカサ
アレ「…」カサカサ
アレ「…」カサカサ
アレ「…」カサカサ
アレ「…」カサカサ
マミ「決着をつけるわよ!」
マミ(貴方も、本当は可愛い魔法少女だったはずなのに…。こんな姿になって…)
マミ(ごめんなさい。私が迷っていたせいで、貴方をこんな姿のままにさせてしまって)
マミ(もういいの。そんな姿でいる必要はないわ。貴方は私が解放してあげる!)
マミ「はっ! とぉっ!」パンパンパン
魔女「…」ガンガンガン
アレ「…」カサカサ
アレ「…」カサカサ
アレ「…」カサカサ
マミ(今更だけど、敵の動きが良く見える。野球の練習がこんな形で役に立つなんて…)
マミ(この島に来て、なにか色々と体の動きが良くなった気がするわ。これも、野球のおかげかしらね)
マミ(でも、それももうおしまい)
マミ(もう、野球なんてしてる暇ないもの。この命が続くまで、魔女を倒し続けないと)
マミ(私には、もうそれしかないんだから…)
マミ「遅い!」シャッ
魔女「…」ガサガサガサ
マミ「腹部が丸見えよ!」パンパンパンパンパン!!!
魔女「…!」ガンガンガンガンガン
マミ(動きが鈍った!)
マミ「こんどは、外さないわ…!」
マミ「ティロ・フィナーレ!」
―外―
マミ「…終わった」
マミ(このグリーフシード、しばらく大切にしましょう。貴方には酷いことをしてしまったから…)
マミ(今まで、辛かったわよね。安らかに眠ってちょうだい…。見知らぬ魔法少女さん)
マミ(これで、魔女はいなくなった。使い魔はまだいるのかしら。6主さんと手分けして探さないと)
マミ(それが終われば、この島での魔法少女としての仕事はおわりね)
マミ(さて…)
マミ「………………」
マミ「……………」
マミ「…………」
マミ「………」
マミ「……」
マミ「ペラが足りない。どうしよう…」グスッ
残り 10日 手持ちペラ 2266ペラ 犬レベル5
・収入
マミ 0ペラ
6主 100ペラ
渡辺の返済 200ペラ
試合ボーナス マミ 50ペラ
・支出
グラウンド代 -100ペラ
リフレッシュ小屋 -12ペラ
試合敗北 -100ペラ
―所長室―
???「裏野球大会には2軍を使うでやんす」
マコンデ「しあわせ草の効果のデモンストレーションが優先で、試合の勝ち負けはどうでもいいと?」
ヘルガ「まあ、あの超人チーム相手ではまず勝てないだろうが、そこそこの試合はするだろう。
島に入った直後のデータをまとめておいてくれ。試合前に顧客たちに送るんだ」
マコンデ「なるほど。しかし二軍連中が試合で惨敗したらどうします? 有用性を示すことができなくなりますが」
ヘルガ「それはないだろう。今の二軍はやるぞ。昨日こそ負けたが、ここ最近の勝率は驚異的だ。下手をすれば、一軍より上かもしれんな」
マコンデ「はぁ…。そういえば、あの娘はどうします?」
ヘルガ「もちろん、出場させろ。あの娘の能力の伸びは随一だ。よいサンプルデータになるだろうからな」
―広場―
6主「あと、250ペラ…」ズーン
マミ「どうしましょう…」ズーン
6主「副所長を脱走騒ぎの時に助けなかったせいか、仕事場の昇給は0に戻ってるし…」ズーン
マミ「このまま毎日働いても、届きませんね…」ズーン
6主マミ「…」ズーン
落田「二人とも元気を出すのでやんす。気が沈んでいても、何も解決しないでやんすよ」
6主「落田くん…おはよう…」
落田「みんな意気消沈してるでやんすね。宿舎もお通夜状態でやんす」
マミ「あれだけやる気を出していたのに、負けちゃいましたから…」
落田「過ぎたことを悩んでも仕方ないでやんす。早く気持ちを切り替えて、先を見つめるでやんすよ」
6主「そうはいってもなぁ…。働いても、2500ペラに届かないし、もうどうしようも…」
マミ「こうなったらプレイルームに賭けてみますか? 6主さん…」
6主「大当たりの確率は216分の1…。こんな野球に人生を左右されたクズの俺にも、博打の神様が奇跡を起こしてくれるかなぁ…」
マミ「逝ってしまいましょうか、博打の理に導かれて…ふふふ」
落田「重傷でやんすね」
落田「二人とも元気出すでやんす。きっと道は切り開けるでやんすよー」スタスタ
6主「…さて、どうしようか?」
マミ「本当にどうしましょうか…」
6主「とりあえずここははっきりさせておこう。もし2500ペラ溜まらなくても、君は100日目の審査をクリアして日本に変えるんだ。
俺は残りのペラを稼ぐよ」
マミ「…わかりました。でも、それは最後にどうにもならなかった時の話ですよ? 二人とも脱出することを考えましょう」
6主「ああ、でも他に頼れる人がいないんだっけ。それはマズイなぁ」
マミ「そうなると最悪、どこかの施設に行くことになるんでしょうか…」
6主「君を預けられる知り合いがいればよかったんだけど、この時代に知り合いは少ないしなぁ…。
和桐の社長はそれどころじゃないし。山田くんの住所も聞いておけばよかったな…」
マミ「私の親戚の人には頼れませんし、どうしましょうか…」
6主「よし、こうなったら、考え方を変えてみるか」
マミ「え?」
6主「そもそも島から出られれば、問題はないわけだ。ペラにこだわらなければ、他に方法があるんじゃないかな?」
マミ「脱走ですか? そうはいっても手だてが…」
6主「いや、もう一つある」
マミ「?」
6主「反乱だよ反乱。BB団に反乱を起こして島を取り戻すんだ。そうすれば、ペラも関係ない。堂々と脱出することができる。一応、やろうと思えばできないこともないし」
マミ「うーん…。そんなに上手くいくでしょうか」
6主「所長が言っていただろう。『本物の大多数の暴力を前にしては無力も同然』って。収容者の数は、兵士よりも圧倒的に多い。
その気になれば、数で押しこめるんじゃないだろうか。バオ達も言えば協力してくれるだろうし」
マミ「でも、やっぱり難しいと思います。この前の、その、処刑でみなさん反抗する気をなくしていると思いますし」
6主「…うん、それはわかってる。でも――」
マミ「私は、大丈夫ですよ」
6主「え?」
マミ「一人で島を出ても、6主が来てくれるまで何とかしてみます。こんな島でも頑張れたんです。
普通の街で生きることくらい、なんてことないですよ」
6主「本当に?」
マミ「正直に言えば、ちょっと怖いですけど。でも、がんばって見せます」
6主「…とにかく、まだ時間があるんだ。あらゆる方法を検討してみよう。諦めるには、まだ時間があるよ」
マミ「そうですよね、考えてみましょう」
落田「ああ、まだここにいたでやんす。よかったでやんす」
6主「あれ、仕事場に行ったんじゃなかったの?」
落田「班長から緊急の招集でやんす。なんでも、急な連絡があるそうでやんすよ」
6主「急な連絡? またBB団からの無茶な命令じゃないだろうな…」
マミ「一体なんでしょうか?」
―宿舎―
江川「…と、いうわけだ」
6主「う、裏野球大会?!」
落田「世界的な大会の決勝戦にオイラたちが出るんでやんすか?!」
江川「そうだ。しかも勝てば200ペラのボーナスだぞ」
渡辺「そりゃまた、随分太っ腹だな。それって一人200ペラなのか?」
江川「もちろんだ。しかも負けてもペナルティは無しだ。お前たち、存分に力を発揮しろよ」
マミ「6主さん、これで!」
6主「ああ。ペラが溜まる。島から出られるんだ!」
小杉「待てよ、江川班長」
江川「何だ小杉。質問か?」
小杉「ああ、そんな大会聞いたこともないぞ、それにどうして決勝戦なんだよ」
江川「そこまでは、一軍の連中が勝ち上がってきたからだよ」
小杉「ますます、おかしいじゃないか。どうして、決勝戦も一軍でやらないんだ?」
江川「ははは、私らに対外試合をさせて刺激を与えたいんじゃないかな?」
小杉「…」
落田「…なんか、うさんくさいでやんすね?」
6主(ん? でも、島の外に出るということは、脱走のチャンスだよな)
6主(勝てるかどうか、確実じゃない。もしかしたら、これが最後の機会になるかもしれないな)
マミ「がんばりましょう。これが最後のチャンスですよ」
6主(いざと言う時のために、準備はしておいた方がいいかもしれないな…)
―グラウンド―
BB兵「今日から貴様らには大会向けて練習してもらう。大会までの期間はグラウンド代は無料だ。存分に練習をするように、いいな」
落田「グラウンド代が無料とは、BB団は裏野球大会に本気でやんすね」
6主「やっぱり変だよ。それなら一軍を使うべきだ。何でわざわざ二軍の俺たちをつかうんだろ?」
落田「きっとオイラたちの実力が評価されたのでやんす。いやーBB団も見る目があるでやんすね」
6主「前回、試合で負けたじゃないか。昨日の今日でそんな評価するかな」
落田「あっ、6主くん。ダメでやんす!」
一同『…』ズーン
落田「まだ、あの敗北から完全に立ち直れていないでやんす! やる気を削ぐようなことを言うんじゃないでやんす!」
6主「うわー! やる気が一気に絶不調に!」
落田「もう一度、戦意高揚を促すでやんす。とにかく、これがマミちゃんを脱出させる最後のチャンスなんでやんすから、しっかり練習するでやんすよ!」
6主(マミちゃんだけ脱出させる分のペラならもう溜まっているんだけど、黙っておいたほうがよさそうだな)
(そして…)
BB兵「よし。今日はそこまでだ。大会までの食事はこちらで管理させてもらう。全員、時間までに食堂に来るように」
落田「やれやれでやんす。練習メニューを決められると、意外とやりにくいでやんすね」
6主「でも、思っていたほどじゃなかったな。これなら、仕事の合間に練習してた時の方がキツかったし」
落田「これが一軍のメニューなのだとしたら、恐れるに足りないでやんす」
6主「まぁ、向こうより練習してなきゃ勝てなかっただろうしね」
マミ「6主さん、今日は私たちが片付けの当番ですよ」
6主「あ、そうだったね。今行くよ」
落田「ありゃ、帰るのはオイラ一人でやんすか」
マミ「寂しいなら、一緒に片付けを手伝ってくれてもいいんですよ? 落田さん」
落田「大人が寂しいのは至極普通のことでやんす。それじゃあ、先に帰っているでやんす」スタスタ
6主「さてと、じゃあさっさと片付けちゃおうか」
マミ「そうですね。早く帰って、食堂に行きましょう」
(そして…)
マミ「道具は集め終わりましたね」
6主「それじゃあ、倉庫に運んじゃおう。軽いのは持ってもらっていいかな?」
マミ「はい。よいしょっと…」
6主「マミちゃんはさ、日本に帰ったらどうするの?」
マミ「そういう6主さんはどうするんです?」
6主「俺は早く任務を果たさないと。社長を見つけて会社を新しく立て直して…。
あー、やらなきゃいけないことがいくらでもあるよ…」
マミ「大変ですね」
6主「まぁ、これが仕事だからね。で、マミちゃんは?」
マミ「私は…」
マミ「…見滝原を守ろうと思ってます。あの街を守りたい気持ちは、今も変わりませんから」
6主「そっか。うん、いいんじゃないかな」
マミ「…すみません」
6主「ん?」
マミ「魔女になるってわかっても、結局、これしかやりたいことがなかったんです。あの街を守ることしか、私には…」
6主「でも、それがやりたいことなんでしょ?」
マミ「はい…」
6主「じゃあ、大丈夫だよ。住んでる街を守りたいっていうのは立派なことさ」
マミ「それでいいんでしょうか…。6主さんに言われて、それなのに何も変わっていないのに」
6主「考えに考えた結果なら、それは同じじゃない。俺も応援するよ」
マミ(でも、結局私は何も変わっていない)
マミ(あの狭い部屋でずっと、魔女になるまで生活して…)
マミ(でも、それでいい。終わりが決まっている人生だとしても、それで…)
6主「さ、片付けも終わったし。明日も練習だから帰って休もう。2500ペラ、何としても溜めないとその応援も出来ないからね」
マミ(すみません、6主さん…)
―次の日・グラウンド―
落田「こんな、メニューじゃかったるいでやんす! もう練習はこっちでやらせてもらうでやんす!」
BB兵「貴様! 黙ってメニューに従って練習しろ!」
落田「大体、こんな練習でその大会で優勝できると本気で考えているのでやんすか!」
小杉「そうだな。世界的な大会の決勝戦なら、こんな練習じゃ勝てねぇだろうな」
三谷「そう言えば、小杉と倉刈はプロ野球選手だったんだろ? プロってのはどんな練習してたんだ?」
中田「というか、元プロが二人いるならプロの練習を再現してやったほうがいいじゃないか?」
倉刈「そうですねぇ…。人によってまちまちですよ。一生懸命にやる人もいれば、女性とデートばかりする人もいますし」
小杉「試合のある日は思っているよりも練習はないが、キャンプとかになると隔離されてかなりの量になるな」
渡辺「じゃあ、そのキャンプの練習をやろう。どうせ、練習以外俺たちにはやることがないんだし」
倉刈「いいですけど、私たちはコーチじゃありませんよ?」
三谷「いいんだよ。少なくともこんな普通の練習よりは成果が出るだろ」
BB兵「あ、おい! 貴様ら!」
―所長室―
マコンデ「所長! 野球班の奴らが勝手に練習を!」
ヘルガ「いいんじゃないか? 別に」
マコンデ「は? しかし…」
ヘルガ「そもそも、ボロ負けされても困るのだ。連中がもっと練習したいというのならさせてやってもよかろう」
マコンデ「もし、勝ってしまったらどうします? かの国に勝ってはわが組織の今後が…」
ヘルガ「お前は、連中があの超人チームに勝てると思っているのか? 随分と買っているのだな」
マコンデ「滅相もない! だれがあんな連中など信用するものですか!」
ヘルガ「ならば、もっと痛めつけてもよかろう。奴らもそれを望んでいるのだ。最低限、いい試合をしてもらわなくては困るのだしな」
マコンデ「は、はぁ…。では、練習量を増やすように指示を…」
ヘルガ(小娘にとっては、最後のチャンスのようだからな。このくらいは良かろう)
ヘルガ(少々甘やかしすぎかな。私も温くなったものだ)
―朝―
落田「さあ、今日も張り切っていくでやんすよ!」
一同『おっしゃー!』
マミ「みなさん、タフですね…」
落田「大丈夫でやんすか? 苦しいなら、休んでもいいでやんすよ」
マミ「いえ、私も野球班ですから。このくらいじゃヘコたれません…」
渡辺(おい、無理にでも休ませた方がいいんじゃないかな?)
三谷(随分疲れが溜まっているみたいだしな。今の今まで忘れてたが、女で中学生なんだし、この練習量はキツすぎるんじゃねぇか?)
落田(でも、仲間外れにするのも可哀そうでやんすよ。マミちゃんは一人ぼっちが嫌みたいでやんすから)
三谷(そりゃそうだが、このまま練習させても怪我するだけだろ)
バオ「お、オチタだ。おーい」
落田「ありゃ、バオでやんす。兵士に見つかったら、また殴られるでやんすよ?」
バオ「6主、知らないか? ちょっと面白そうなものがあったんで見てほしんだが」
落田「6主くんでやんすか? それなら先にグラウンドに…」
三谷(!)
三谷「マミ助。6主の奴を呼んできてくれねーか?」
マミ「あ、はい。分かりました」
三谷「それから、6主の用事に付き合ってやってくれ。アイツがキツイ練習から逃げださねぇようにな」
マミ「6主さんはそんな人じゃないと思いますけど…」
三谷「念のためだよ。念のため」
マミ「わかりました。じゃあ、呼んできますね」タタタ
落田「…三谷さん、グッジョブでやんす。これで、少し休めるでやんすかね?」
三谷「こうでもしねーと、サボってくれそうにないからな。真面目なのはいいが、息の抜き方も覚えてほしいもんだ」
―しあわせ草畑―
バオ「おーい、こっちこっち」
6主「こんなところで大丈夫なのか。見つかったらただじゃ済まないぞ?」
バオ「ここなら、見つかりそうになったらすぐに逃げられるし、お前たちも作業のフリができるだろ?」
マミ「あの、今は練習に専念するように言われているんです。グラウンドを離れているだけであまり良くないんですが…」
バオ「あ、そうなのか?」
6主「まぁいいさ。で、なんだ? 用事って」
バオ「そうそう。ちょっと変なモノ見つけたんだ。これ、読んでくれないか?」ピラッ
マミ(…古びた本?)
6主「なんだこれ?」
マミ「ノート…ですね。随分と古いものみたいですけど」
6主「ととと、うっかりしたら壊れそうだ」
マミ「中を見せてください。内容は…日本語みたいですね。これなら、バオさんでも読めるんじゃないですか?」
バオ「日本語は話せるけど、読むのはダメなんだ。教えてくれる人がいないしな」
6主「それじゃあどれどれ…えーっと。…海軍の日誌だって?」
5月19日
あいかわらず上層部ヨリ積極的な回答は、得ラレズ。
コノ危急のとき、かような薬効ヲ偶然発見できたノハ、天佑以外の何ものにもあらザレバ、焦燥ス。
鈴木上等兵ハ、短距離走にオイテベルリンオリンピックの記録ヲ抜ク。
なお、彼は元陸上選手にアラズ
マミ「…なんでしょう? コレ」
バオ「もしかしたら、昔この島にいた日本兵のものか?」
6主「そういえば、そんな話もあったな。えーと、続き続きっと…」
6月3日
昼、岡田二等兵の容体急変。夕刻、日没を前に死亡ス。
研究者と実験個体さえアレバ避け得た犠牲と覚え、無念ナリ。
島民ハ耐性がアリ、あいかわらず「草」の効果に発症セズ。
コノ実験には適サズ、残念ナリ。
10月15日
独潜水艦の艦長は、草に強く感心ス。
すぐ独逸海兵の志願者に高濃度のエキスを注入するも発症セズ。
人種にヨル、効能の差を実感スル。
10月21日
昨日、米軍レイテ島に上陸ス。
わが隊にも転身が命じラル。
今夜、この島を離れるにあたり、草の資料の写シを、われ独断で独潜水艦の艦長に渡しオク。
鈴木上等兵は、禁断症状のタメこの島に残留セザルを得ズ。
戦局、スデニ、くつがえし難シ。タダ、ひたすら無念ナリ。
6主「…」
マミ「これって…」
バオ「なんだか、わっかんねー話だな。草ってなんだよ草って」
6主「…そうだな」
バオ「ちぇ、あいつらをやっつける役には立たないか。何かあるんじゃないかと思ってたんだけどな。それじゃな!」スタスタ
マミ「…6主さん」
6主「『草』がしあわせ草のことだとすると…。くそっ、カラクリが見えてきたぞ!」
マミ「それよりも、もしかしたら私たちの体はもう…」
6主「…いや、この手のものには必ず解毒方法があるはずだ。それにマミちゃんは魔法で何とかなるんじゃないか?」
マミ「こういうのを治した経験は…」
6主「とにかく、まだ秘密しておこう。BB兵に知られたら、絶対に処刑されるぞ」
マミ「はい…」
ヘルガ「我々がどうしたのか?」
6主「!」
マミ「所長…!」
6主(マミちゃん! 抑えて…)
マミ(…はい)
ヘルガ「練習を見に行ってみれば、お前たちの姿が見えなかったのでな。こんなところで何をしている?」
6主「マミちゃんが体調を悪くしてね。ちょっと、一休みしてたのさ」
ヘルガ「こんなところでか。宿舎に戻るなりなんなり、他の方法はあるだろうに」
6主「宿舎じゃこういうものが食べれないからね」ヒョイ
ヘルガ「なんだこれは?」
6主「自生してる果物だよ。慣れれば意外とおいしいよ?」
ヘルガ「あまり感心しないな。食事も我らの管理下だというのに」
6主「こんなもの、腹の足しにも嗜好品にもならないだろ? 学校の帰り道に口が寂しくなって花の蜜を吸うようなもんさ」
ヘルガ「わからんな、ヤパーナにはそんな伝統があるのか?」
6主「俺も、人づてに聞いただけだけどね」
マミ「…所長」
6主(ちょっと待った!)
マミ(大丈夫ですから…)
ヘルガ「何だ小娘?」
マミ「ペラが溜まりました。私は、この島から出ていきます」
ヘルガ「そうか。よかったな」
マミ「2500ペラにはまだ届いていませんが、6主さんが私を優先させてくれるそうです。それだけのペラはもうありますから」
ヘルガ「そうか」
マミ「私、この島が嫌いです」
ヘルガ「…」
マミ「私は帰って、やるべきことをやります。だから、もうここにはいられません」
ヘルガ「行き詰った元の生活にか? 酔狂だな」
マミ「やらなくちゃいけないことがあるんです。そのために自分であそこに戻るんです。何の後悔もありません」
ヘルガ「決めた瞬間に後悔なんぞあるわけなかろう。後悔というのは、予想しなかった現実に相対した時に出る言葉だ。
そして現実は大抵予想の上を行くものだよ」
マミ「…それでも、私は出ます。こんな何もしない所に居ても、どうしようもありませんから」
ヘルガ「何もないとはおかしなことを言うな、小娘。ここに何かあったから、この島を出ることを躊躇したのだろう?
それを一番理解しているのはお前のはずだ。目を逸らしても無駄だぞ」
マミ「いえ、もうここに居たくありません。居心地が良かったとしても、あなた達の下にいることが、もう私には耐えられませんから」
ヘルガ「まぁ、いいさ。好きにするがいい。どこに居ようが、現実はついて回るからな。逃げ場はない」
マミ「…」
ヘルガ「早く練習に戻れ。勝てばペラは溜まってその男も出れるんだろう? ここまで世話になった恩を返すんだな」スタスタ
マミ「…貴方に、言われなくたって」
6主「…」
―医務室―
ドクター「えっ、3倍? そんな量を投与したら副作用が…」
マコンデ「明日の試合は、長年に渡って研究してきた、しあわせ草のデモンストレーションだ。2軍の選手は全員死んだって構わん」
ドクター「…それは団長と所長の許可はもらっているんですよね?」
マコンデ「当り前だ」
ドクター「では、手配しておきます」
マコンデ(…本当はわしの独断だがな)ニヤ
―外―
ドクター(しかし、前日になってこんなことを依頼するとは。少しはこちらの苦労も考えてほしいものですねぇ)
ドクター(成分の抽出にもそれなりに時間がかかるというのに、もっと早めに言ってもらわないと)
ドクター(さて、早くこれを医務室に持っていかんと…)
ドクター(やれやれ、島民の村との道も、もう少し整備してもらいたいものです)
がさっ!
ドクター「あ…」パキッ
ドクター(ぎゃぁ、ビンを一つ落とした! 貴重なエキスが…)
ドクター(こりゃいかん! すぐに新しく抽出を始めないと…!)タタタ
???「キュー、キュー」
???「…キュ?」
???「…」ピチャピチャペロペロペロ
―グラウンド―
倉狩「練習はここまでにしましょう」
小杉「明日は試合だからな。お前ら早めに休めよ」
6主「やれやれ、これで終わりか。流石に疲れたな」
落田「そのおかげで、以前とは比べ物にならないくらい上達したでやんす。フフフ、もう一軍なんて屁でもないでやんす」
6主(でも、確実に勝てるかどうかは別問題だよな…。やっぱり脱走を考えた方が…)
落田「明日は決戦でやんすね。景気付けに一杯いかないでやんすか?6主くん。兵士の目を盗めば何とか…」
6主「止めとくよ。小杉の言う通り早めに休もう」
落田「それもそうでやんすね」
マミ「…」
6主「マミちゃーん。宿舎に帰るよー」
マミ「あ、はい。今いきます」
6主「やっぱり不安?勝てるかどうか」
マミ「いえ、そういうわけじゃないんです。ただ…」
6主「ただ?」
マミ「これで、もうこのグラウンドで練習することはないじゃないですか。ちょっと名残惜しくなって」
6主「そういえばそうか。これが練習納めだね」
マミ「辛いことばかりでしたけど、野球はとても楽しかったです。野球がなかったら、この島じゃたぶんダメになっていたと思います、私」
6主「ははは、そういってもらえると野球好きとしては嬉しいな」
マミ「この島来て、数少ないよかったことです。本当に、楽しかった…」
6主「そんな、大げさな。今生の別れじゃあるまいし。街に帰ったら、またやってみればいいじゃないか」
マミ「いえ、見滝原に帰ったら魔法少女の仕事がありますから。野球をしてる暇なんてありませんよ」
6主「あ、そうか…」
マミ「私、今まで部活動とかしたことなかったんです。魔女とずっと戦っていてそれで…。
だから、こういうみんなで一丸となって何かをするってことがなくて」
6主「そうなんだ。クラスで行事をすることとかはなかったの?」
マミ「仲良くはしてましたけど、心のどこかで自分はこの人たちとは違うって感じちゃってて、一丸で何かやっているようには考えられなかったんです
こんなに楽しいものだったんですね。青春を棒に振っちゃってちょっと後悔、かもしれません」
6主「マミちゃん…」
マミ「だから、いい思い出になりました。こうやって仲間がいれば一人じゃできないことも何とかなるってことも、勉強できましたし良いことづくめです
もう、野球は出来そうにありませんけど、このことは私一生の忘れません」
6主「野球をするってのもいいんじゃないかな」
マミ「え?」
6主「ほら、例の好きなこと。じゃあさ、野球をするっていうのもアリなんじゃないかと思うんだ」
マミ「でも、魔法少女でいる限りそんな暇は…」
6主「じゃあ、野球ができるような生活になるようにするっていうのはどう?
とりあえず、最初は魔法少女をやりながらプライベートな時間を増やすこと。最終目標が女性初のプロ野球選手になるってことで」
マミ「随分、気の遠い計画ですね」
6主「でも、それくらいのほうがやりがいがあるだろ?」
マミ「ふふっ、そうですね。考えておきます。さ、戻りましょう? 明日は早いんですから、早めに休まないと」
6主(…好きなスポーツも、自由に出来ないのか)
6主(魔法少女が絶望して魔女になった理由って、もしかしたらこういう些細なことが発端になるんじゃないだろうか?)
―宿舎―
江川「明日は、船に乗って移動となる。全員、早めに休むように」
三谷「いよいよ、明日だな」
落田「絶対に勝つでやんす! それがオイラ達大人のプライドを守る最後の砦でやんす!」
布具里「でも、これで負けたら本当に立ち直れそうにないよな~」
渡辺「やる前から、やる気がなくなるようなこと言うなよ…」
中田「とにかく、頑張ろう。ペラももらえることだしな」
小杉「先発は俺だな。布具里は信用できないし、完封してやらないと」
倉刈「まあまあ、みなさん。とにかくミーティングを…」
マミ(…こういう喧噪を見るのも、最後になってしまうのね。なんだか寂しいわ)
マミ(でも、もうここを出るって決めたんだもの。未練なんて残さないようにしないと)
マミ(みなさん…今までありがとうございました)ペコリ
6主「…」
―夜―
落田「えっ、脱走でやんすか?」
6主「しっ、声が大きいよ!」
落田「やめたほうがいいでやんすよ。向こうもきっと警戒してるでやんす。捕まったら、間違いなく処刑でやんすよ」
6主「分かってる。でも、やらなきゃいけないんだ」
落田「ダメでやんす。万に一つの可能性もないでやんす」
6主「もう、これしか手段が無いんだ。こうなったらもう…」
落田「…マミちゃんのためでやんすか?」
6主「そう。あの子はもうここを出る決心を固めた。でも、あの子一人だけ身寄りがないまま、外に返すわけにはいかないんだ。
俺も一緒に出て、せめて落ち着くまでは支援してあげないと」
落田「試合に勝つんじゃ、ダメでやんすか?」
6主「確実じゃない。負けたら、もう100日の滞在が確定だ。あの所長が情けをかけてくれとも思えないし、それなら脱走を考えたほうが…」
落田「勝てば、問題ないでやんすよね?」
6主「え。まあ、そうだけど…」
落田「なら、絶対勝つでやんす。マミちゃんの未来がかかっているなら、みんなやる気を出すでやんすよ」
6主「…いや、そういって前回負けたじゃないか」
落田「あれは布具里のバカのせいでやんす! あれがなかったら勝ってたでやんす!」
6主「とにかく、そんな不確実な方法にマミちゃんを巻き込めないよ。だから、脱走を…」
落田「ムキ―! 6主くんはオイラたちのことを信じてないでやんすね!」
6主「いや、だって、実際負けてるし…」
落田「もう怒ったでやんす! ふざけるなでやんす! こうなったら、みんなにこのことを話すでやんす!
でもって勝って、絶対に6主くんの鼻を明かしてやるでやんす! これはプライドをかけた戦争でやんすよ!」プンプン
6主「あ、落田くん!」
6主(くそっ、落田くんの協力は得られなかったぞ)
6主(…あれ? よく考えたら、俺達が脱走したら試合はどうなるんだ? 選手が足りないから不戦敗?)
6主(そうなったら元も子もないから、警備は必要以上に厳重になるよな。いや、もしかしたら野球班全員にペナルティを負わせて、班内で監視をさせてくる可能性も…)
6主(うーん。脱走は諦めたほうがいいかもな…)
(そして次の日、俺たちは船に乗せられて裏野球大会の会場に行くこととなった…)
―洞窟―
収容者1「はー、やれやれ」
収容者2「まったく、あんな作業ばかり、マジになってやってられねェよ」
収容者1「野球班の連中が変な大会のせいでいないからな。ったく、しわ寄せがなんでこっちに来るんだっつーの」
収容者2「あの子もいないし。やる気でねーよ」
収容者1「ここは、良いサボり場所だな。ホント」
収容者2「だろ? そのうち村の女でも誘って…」
グルルルルルル……
収容者1「…」
収容者2「…」
収容者1「何だ、今の? 洞窟の奥の方から聞こえてきたけど」
収容者2「変だな。あんな鳴き声は初めて聞いたぞ」
収容者1「何か住み着いたんじゃないのか?」
収容者2「オイオイ、そりゃあ困る。よし、追い出そう」
(そして…)
収容者1「……遅いな。おーい、大丈夫か?」
シーン
収容者1「おーい。ったく何やってんだ?」
グルル……
収容者1「えっ」
???「……」
収容者1「ヒッ! なんだよ、お前?! ち、近寄るんじゃねぇ!」
???「…」
収容者1「あ、あ、あ…」
(ぎゃああああああああああっ……)
???「……」バキベキグシャグシャボリボリムシャムシャ…
―裏野球大会決勝会場―
マミ「ここが会場なんですね」
6主「ドームじゃないか。凄いな。誰が大会を運営してるんだろ?」
落田「そういうのが一切不明な大会らしいでやんす。噂では、色んな国の権力者が資金を出し合っているとか…」
江川「おいそこ。うるさいぞ」
落田「すまんでやんす」
江川「あー。みんな、今日は久しぶりに私らは島の外にいる。だが、大会が開かれているこの島は他の世界から隔離されている。
脱出は不可能だし、一人でも脱出を試みれば全員が罰を受ける。だから、バカことは考えず、堂々と戦ってペラを得ようじゃないか」
マミ(脱走…。そういえば、そんな手も考えてみるべきだったのかしら)
マミ(でも、逃げたら班の皆さん全員に迷惑がかかる。考えても、そんなことできないわね)
6主「…あの、落田くん?」
落田「なんでやんすか?」
6主「腕しばられちゃ、何もできないんだけど…」
落田「絶対に逃がさないでやんす…。試合に勝って、オイラたちがマミちゃんを救うんでやんす…」
マミ「何をやってるんですか。お二人とも?」
落田「何でもないでやんす。ちょっとした集中力を高めるための儀式でやんすよ」
マミ「そうですか。もしかしたらこれが私の最後の試合になるかもしれません。絶対に勝ちましょう!」
落田「当り前でやんす! 一同、そうでやんすよね!」
一同『ああ…』ギラギラ
6主(な、何かこの展開、前にも見たような…)
(そして…)
6主「USスーパーヒーローズ?!」
マミ「あの…なにか向こうのチームどこかで見たような人たちばかりなんですけど…」
落田「なんでも、何人か大リーガーが偽名で入ってるらしいでやんす」
6主「はあ?!」
落田「どうやら、向こうのチームの出資者はかの国の大統領らしいでやんす。大方、権力をふるいまくってドリームチームを結成したんでやんすね」
マミ「ま、まぁどんな相手でも、野球なら勝てる可能性があります。がんばりましょう、みなさん」
6主「いやいや…」
落田「いや、なんの問題ないでやんす…」
渡辺「…ああ、何の問題もないな」
中田「…こんな連中、今の俺たちの敵じゃないよな」
三谷「…ガキ一人守れないで、何が大人だっていうんだ」
小杉「俺のプライドを守るんだ、守るんだ、守るんだ…」ブツブツ
布具里「俺だって、好きでこんな顔に生まれたわけじゃあ…」
倉刈「子供は守る、子供は守る、子供は守る、子供は守る、子供は守る、子供は守る、子供は守る、子供は守る
子供は守る、子供は守る、子供は守る、子供は守る、子供は守る、子供は守る、子供は守る、子供は守る
子供は守る、子供は守る、子供は守る、子供は守る、子供は守る、子供は守る、子供は守る、子供は守る
私はダメな父親じゃないんだ…」ブツブツブツブツブツブツブツブツブツ
落田「一同、絶対に勝つでやんすよ…。マミちゃんはオイラたちが守るでやんす…」
マミ「す、凄い、やる気…。これなら勝てるかもしれませんね」
6主(俺、もしかしたら、無事じゃすまないかもな…)
オーダー
1番 ショート 落田○ ミAパC走A肩A守A 盗塁○ 走塁○
2番 ライト 倉刈○ ミAパB走A肩B守B 逆境○ ヘッスラ 盗塁○ 粘り打ち○ 代打○
3番 レフト 6主 ミBパA走A肩B守B チャンス◎ ムードメ―カー 固め打ち
ヘッスラ 逆境○ 広角打法 走塁○ 対左打法○
4番 ファースト マミ ミBパA走B肩B守C ムードメーカー 固め打ち 流し打ち パワーヒッター バント○
5番 キャッチャー 三谷○ ミAパA走D肩B守A 代打○ 体当たり
6番 セカンド 渡辺○ ミAパB走A肩B守B
7番 サード 中田○ ミBパB走C肩A守C
8番 センター 下山 ミAパD走A肩A守A
9番 ピッチャー 小杉○ 球速150 コントロールB スタミナB
スライダー3 フォーク3 シュート2 威圧感 短気
6主「よ、よし! 皆行くぞ!」
一同『WAAAAAAAOOOOOOOOUUUUU!!!!!!!!』
マミ(最後の試合に最後のチャンス…。絶対に、勝つわ!)
(そして…)
―所長室―
ヘルガ「そうか、勝ったか」
マコンデ「はっ。顧客の評判も上々です。特に子供でもあれだけ効果があるというのが、大きなポイントになりましたな」
ヘルガ「では、早急にサンプルを送ってやれ。ところで賞品とはなんだったんだ?」
マコンデ「ガラクタでした」
ヘルガ「そうか。報告ご苦労。下がっていいぞ」
マコンデ「では、しつれいします」
ヘルガ(勝ったか。あの小娘にも現実と戦う力はあったということかな…)
ドクター「失礼します。2軍選手のデータをお持ちしました」
ヘルガ「うむ、ご苦労。………………?!」
ドクター「いかがいたしましたか?」
ヘルガ「なんだ、この投薬量は! 規定量の三倍ではないか!」
ドクター「は? それなら副所長の指示で…」
ヘルガ「あのバカモノがぁああ!」
……………………
………………
…………
……
―最終日・所長室―
ヘルガ「裏野球大会、ごくろうだった」
6主「はい」
マミ「…」
ヘルガ「ところで、お前たちは2500ペラ獲得できているのか?」
6主「2666ペラしか持ってないです」
ヘルガ「お前、嫌味か」
6主「軽い冗談ですよ」
ヘルガ「ふむ、よくやったと誉めてやろう。正直、100日で溜められるとは思わなかった。良かったな小娘」
マミ「…」
ヘルガ「お前たちの勝ちだ。数日後、船が来るからそれに乗って日本に帰るがいい」
6主「…」
マミ「…」
ヘルガ「どうした? 嬉しくないのか?」
6主「ひょっとして、俺達は日本に帰っても長生きできないんじゃないか? しあわせ草なしだと」
ヘルガ「……ふむ、本当は日本に帰る船の中で教えることになっていたんだが…貴様らは気づいていたか」
マミ「…! じゃあ!」
ヘルガ「いかにも、その通りだ。しあわせ草には人間の肉体能力を大幅に強化する効果がある。だが強い習慣性があり、いったん中毒になれば…」
6主「それをこの島の食事や飲み水に混ぜていただろう! 俺たちを、みんな中毒にするために」
ヘルガ「ああ、そうだ。この島の収容者でしあわせ草の中毒になっていない者はいない。我らの呪縛から逃れられる者など、一人もおらんよ」
マミ「この島は人体実験が目的なのね。さしずめ、これも商品の一つ、といったところですか」
ヘルガ「ははは、正解だ」
マミ「最初から、一人も解放するつもりはなかったんですね。貴方は…!」
ヘルガ「当然だ。でなければ、こんな島があることはとうの昔にバレている。秘密組織がそんなことを許すはずがないだろう?」
6主「収容者を使ってしあわせ草の実験をし、その上がった身体能力で鉱物を掘って武器を作り、しあわせ草を栽培させる…それがここのサイクルなんだな」
ヘルガ「良くできているだろう? さらにしあわせ草は薬物検査にも引っかかることは無い。表に戻った連中がスポーツで活躍させれば、それもまた宣伝にもなる」
6主「何とも効率の良いことだな。この間の裏野球大会もそれが目的か!」
ヘルガ「ああ。本音を言えば、勝たずにそこそこいい勝負をしてくれた方がこちらにとっては有益だったのだがな。おかげであの国との商売に支障が出た」
マミ「何でもかんでも、思い通りになると思ったら大間違いだわ」
ヘルガ「だがしあわせ草の宣伝は、思いのほか上手くいったよ。特に小娘、お前の存在は殊の外役に立ったぞ?
女で、しかも子供があの最強チームと互角に渡り合える、とな。おかげで販売に困ることは無さそうだ。買い手はいくらでも付きそうだからな」
マミ「なっ…」
ヘルガ「お前たちの行動は、すべてこちらの利益になるように設計されているのがこの島だ。何をしようが、一矢報いるなど不可能だよ」
6主「…俺たちはどうなるんだ?」
ヘルガ「この島のことを黙っていれば、定期的にしあわせ草を届けさせるが? しあわせ草の効果でスポーツ界で大活躍できるぞ?」
マミ「ふざけないでください! 買収する気ですか?!」
ヘルガ「ふざける? いや、本気なんだが」ギロ
マミ「っ!」
ヘルガ「特に小娘。お前のしあわせ草との相性は驚異的だ。成長途中の身体にも関わらず、驚くべき運動能力が計測されている。
スポーツなら何をやっても一流になれるな。どんな夢でも叶えることができるぞ?」
マミ「そんな夢なんて…」
ヘルガ「その先には輝かしい人生が待っている。誰もが貴様を必要とする、そんな人生がな」
マミ「…いりません。そんなもの」
ヘルガ「まあいい。船が来るまでじっくり考えるんだな。どうこうするのが得なのか、な」
6主「…」
マミ「…」
残り 0日 手持ちペラ 2666ペラ 犬レベル1
・収入
マミ 0ペラ
6主 0ペラ
試合ボーナス 400ペラ
・支出 なし
―単語紹介―
・BB団(ブラッドバタフライだん)
世界中に武器を売りさばく秘密組織。
武器を密造し、その武器を表立って武器を買えない組織(反政府組織やテロリストなど)に売り、
またしあわせ島にて、しあわせ草の研究の実験を行うのが、主な活動内容。
BB団で密造した武器の販売価格は、市場価格より安い。その理由は、BB団の活動目的が「金儲け」ではなく「世界に悪を広めること」にあるため。
実はとある組織の下部組織であり、さらに上位の秘密組織が存在するのだが、団長以下数名の幹部しかそのことを知らない。
・しあわせ草
しあわせ島のみで栽培できる植物。
その効果として、人間が服薬すると凄まじく身体能力が向上するという特徴がある。
が、同時に副作用として強度の中毒性があり、使いすぎると禁断症状を引き起こしてしまう。その習慣性は強く、ほぼ麻薬と変わらない。
また、人種によって効果の差があり、そのためしあわせ島では一番効果の高い日本人が集められていた。
しあわせ島の収容所では、飲み水や食料に抽出したしあわせ草のエキスを混ぜられており、自覚のないまましあわせ草無しでは生きられない身体になってしまう。
―夜・宿舎―
6主「うーん……。俺はどうするべきなんだろう」
マミ「…私は、決心ができました。この島を放っておくことは出来ません」
6主「…いいの? やるなら、命がけになるよ?」
マミ「今までだって、命がけだったんです。今更そんなこと言っても止まりませんから」
6主「でも、君にはやりたいことが…」
マミ「これだって放っておけないことですよ。この島で行われていることは間違っています。何でも言ってください。協力しますから」
6主「…よし、わかった。みんなに本当のことを話そう!」
(そして…)
6主「…と、いうことなんだ」
マミ「私たちは騙されていたんです」
落田「なんとそうだったでやんすか!」
小杉「俺たちはハメられていたのか! ちくしょう!」
中田「こうなったら、すぐにでもこんなところから逃げ出そうぜ」
布具里「ちょっと待てよ。俺たちが中毒だとすると、しあわせ草がもらえなくなったら困るんじゃないか?」
渡辺「俺たち全員、例外なく中毒らしいからな。逃げても、禁断症状で死ぬだけだぞ。麻薬と同じだな」
三谷「なんてこった…、島から出てもこれじゃあ家族に会えねぇな…」
倉刈「逃げても、どうしようもないですよ…」
落田「そもそも、脱走する手段がないでやんす。逃げるのに失敗したら、処刑されちゃうでやんす…」
6主「そう。だから、逃げるんじゃなくて、アイツらをやっつけるんだ」
落田「え?! でも、むこうは銃を持っているでやんすよ」
6主「でも、人数は収容者よりずっと少ない。だからまずはドクターを捕まえて、しあわせ草のエキスを手に入れる」
落田「なるほど、パワーアップをするでやんすね!」
6主「しあわせ草は身体能力を上げる。だから、やつらも軍事利用のために研究していたんだ。
これで数と質は完全にこっちが上だ。これで一気に、この島を制圧する」
落田「おお。なんか行けそうな気がしてきたでやんす!」
三谷「どうせ、もう中毒になってるんだから、最後に一花咲かせるのいいかもしれないな」
マミ「ダメですよ、三谷さん。私たちはこの島から自由になるんです。死んじゃったら怒りますからね?」
三谷「お、おう。しかし、他の班の連中が協力するかな。前に処刑があったし、ビビッて動かないことも…」
落田「ならそっちは、オイラに任せるでやんす」
小杉「お前が? いったいどうするんだよ」
落田「真相を聞かせれば、きっと動揺するでやんす。これで働いていたら自由になれるっていう希望を奪えるでやんすね。
そして、次にマミちゃんの登場でやんす!」
マミ「え、私ですか?」
落田「そうでやんす! 希望が失われたところに、マミちゃんが反乱の誘いをするでやんす!
希望が失われたところに現れる、新たな希望! これで、どんな連中もこっちの計画に縋ってくるでやんす」
三谷「まぁ、マミ助は人気者だからな。頼めば向こうも乗ってくるだろ」
落田「希望を全部奪ってやったところで、マミちゃんの一押しでやんす。これで落ちない奴は、いないでやんすね」
6主「じゃあ、落田くんはそっちを頼むよ。明日の朝には行動を起こしたいんだ。これが作戦の予定表ね」
落田「わかったでやんす。さ、マミちゃん行くでやんすよ」
マミ「あ、あの。といっても、何を言えばいいのか…」
落田「セリフはこっちで用意するでやんす。この通り言えばいいでやんすよ」スタスタ
6主「じゃあ、頼んだよー」
小杉「おい、6主。それでどんなふうに攻めるのか、当てはあるんだろうな?」
6主「ああ、それは…」
(そして…)
落田「行ってきたでやんす!」
マミ「無事に協力を取り付けることができました」
6主「じゃあ、みんなが各班に行って時間になったら行動を起こしてくれ。
速さが勝負だ。敵が体制を整える前に所長と副所長を確保したい。海の砲艦に戻ってきたら、こっちが負けるからな」
小杉「わかったよ、速攻でケリをつけるんだな」
6主「それじゃあ、決行は明日の夜明け前だ!」
一同『おう!』
マミ「あの、私はどの班に行けばいいんでしょうか?」
6主「あ、マミちゃんには別の仕事あるんだ。そっちをやってくれないかな」
マミ「別の仕事ですか?」
6主「前にバオが見つけた旧日本軍の爆弾があっただろ? ほら25番とかいうやつ」
マミ「爆弾でしたよね、確か。どこかに隠してあるっていう…」
6主「まず、これから落田くんと村にいって、反乱を起こすことを伝えてほしい。そしたら、その爆弾を確保して宿舎まで持ってきてほしいんだ。
いざという時に役に立つかもしれないから」
マミ「わかりました。じゃあ、これからまた落田さんと行ってきます」
6主「頼んだよ。もしかしたら必要ないかもしれないけれど、できるだけ手札は多くしておきたいからさ」
マミ「はい。あの、私も戦力として考えてくださいね。グリーフシードも二つ残ってますし。いざとなったら、変身しますから」
6主「うん」
6主「…じゃあ、任せたよ」
落田「わかったでやんす。事が終わるまでに、収容所に近づけさせなければいいでやんすね」
6主「仲間はずれかもしれないけれど、巻き込ませたくないからさ」
落田「そんなの、オイラも同じでやんす」
6主「25番はサイズ的に、運ぶのには相当手間がかかるはずだ。これで何とか時間稼ぎをしてくれ」
落田「任せるでやんす。マミちゃんが収容所に行かないよう、キッチリ監視するでやんすよ」
6主「頼んだよ、落田くん」
―村―
マミ「…というわけなんです。協力してくれますか?」
バオ「もちろんだ! で、何をすればいいんだ?」
マミ「前に話してくれたじゃないですか。ええと、爆弾がどうとか…」
バオ「ああ、あのでっかいやつな。あれを運べばいいのか?」
マミ「はい。敷地内に運んでおきたいんです。お願いします」
バオ「こっちだ。前にBB団に見つかりそうになったから、場所を移しておいたんだ」
落田「じゃあ、その場所に案内するでやんす」
(そして…)
バオ「どーだ! これがその爆弾だぞ」
マミ(お、大きい。これは、どうやって運べば…)
落田「思っていたよりも大物でやんすね。こんなに大きいと収容所まで運ぶ方法がないでやんす…」
マミ「野球班のみなさんに応援を頼みますか?」
落田「この時間だと、みんなもう配置についているでやんす。オイラたちで何とかしないといけないでやんすよ」
マミ「困りましたね…」
バオ「としおくんに頼めばいいんじゃないか?」
落田「誰でやんすか、それは?」
マミ「収容者の方ですか?」
バオ「あれ、前に言わなかったっけ? しあわせ草を食べて大きくなったトカゲだよ」
落田「トカゲ? なんでそんな名前でやんすか?」
バオ「日本人がつけたんだよ。普通は洞窟でコケを食べているおとなしいやつなんだけど、力持ちなんだ」
マミ「でも、トカゲにこれを運ぶことが出来るんでしょうか…」
バオ「大丈夫だよ。ここにこれを運べたのも、としおくんのおかげだし」
落田「それなら利用できるかもしれないでやんすね。ちょっとそいつのところまで案内してくれでやんす」
バオ「ああ、いいよ」
マミ「作戦の時間も近づいています。急ぎましょう」
落田(…悪いけど、もう始まっているでやんす)
落田(このまま、時間を稼げばマミちゃんを巻き込まずに終わることができるでやんすね)
―収容所―
6主「よし、いくぞ!」
小杉「積年の恨みを晴らしてやる!」ダダダ
ワー! ワー!! ワー!!!
BB兵1「何だ貴様らは、止まれ!」
小杉「ソリャ!」ボカッ
BB兵2「貴様、なんて事を! 死ねっ!」ガガガガ!
小杉「そんなへなちょこ弾に当たるか!」ヒュンヒュン
BB兵2「なっ、弾を避けた?!」
小杉「くたばれ、この野郎!!!」バキッ!ボカッ!ゲシッ!
三谷「おーい。宿舎は完全に制圧したぞ!」
渡辺「監視所の一つもそろそろ墜ちそうだ。予想以上に上手くいっているな」
三谷「人死にも少ないみたいだしな。こっちもあまり血は見たくないし、いいことだな」
6主(予想以上にこちらが優勢だな。まあ、寝こみを襲ったし、当然と言えば当然か)
6主(さて、早く所長と副所長を確保しないと…!)
―洞窟―
マミ「ここに、その、『としおくん』がいるんですか?」
落田「何だか、妙に荒れているでやんすね。ところどころ崩れているでやんす」
マミ「あっ、とと」
落田「大丈夫でやんすか? 足元に注意するでやんす」
マミ「すみません。でも本当にいるんでしょうか? こんな住みにくそうな場所にいるとは思えないんですけど」
バオ「ここには餌の苔がたくさんあるんだ。あんまり外に出たがらない奴だし、多少荒れてても問題ないよ」
落田「とにかく、慎重に進むでやんす。怪我をしたら危ないでやんす」
バオ「あれ? おかしいな」
マミ「どうかしたんですか?」
バオ「なんか変だ。洞窟のこのあたりの苔が、みんななくなってる。びっしり生えていたはずなのに」
落田「そのとしおくんが子供でも生んだんじゃないでやんすか?」
バオ「オスだぞ? そんなわけないって。でも、それじゃあ一体…」
マミ「もうじき夜明けですよ。はやく宿舎に爆弾を運ばないと…」
バオ「そうだな。えーと、どこに…」
ぐぎゃあああああああああん!!!!
バオ「うわっ!」
マミ「な、なんですか?!」
落田「なんでやんす?! 今の声は!」
(ずしん! ずしん! ずしん!……)
マミ「ええっ!!!
落田「げぇーーっでやんす!」
としおくん「ぐるるるる……」ズーン
落田「とんでもない大きさでやんす!」
マミ「凄い…。こ、このサイズなら、爆弾なんて簡単に運べますね…」
落田「まるで怪獣でやんす! ゴジラみたいでやんす! というか、これなら暴れてもらった方がいいんじゃないでやんすか?」
マミ「本当に、おとなしくてコケしか食べないんですか? とてもそうは見えません…」
落田「人食い怪獣って言われても信じちゃうでやんす」
バオ「こ、これ違う!」
マミ「え?」
バオ「オレが知っているのより、ずっとずっと大きいよ、コレ!」
マミ「え、ど、どういうことですか…」
落田「……あのマミちゃん」
マミ「あ、はい。落田さん」
落田「あいつの口から飛び出ているの、何でやんすかね?」
マミ「え? あ、そういえば何かが…」
としおくん「ぐるるるるるる…」ピョコ
マミ「なんでしょうか。棒のようなものが…」
落田「…オイラが思うに、あれはズボンをはいた人間の足じゃないでやんすかね?」
マミ「ああ、そう言われてみれば確かに…、え?」
落田・マミ『…』
としおくん「グルル…」ジュル
落田「冗談じゃないでやんす! 逃げるでやんす!」
(そのころ…)
―管理所―
BB兵「宿舎・北の監視塔・工場は奴らに占領されました!」
マコンデ「ええい! 兵士は何をしている!」
BB兵「しかし、やつらは信じられないほど力が強く…、動きも素早くてライフルの弾も当たりません!」
マコンデ「そんなはずがあるか! もっとしっかり反撃しろ!」
BB兵「ダメです! 数も多く、我々では…」
ヘルガ「なるほどな。しあわせ草だよ、マコンデ」
マコンデ「は?」
ヘルガ「しあわせ草を使って戦闘能力を上げたんだ。まあ、過度の服用にさえ気をつければ、強力な武器になるからな。
我らも、そのために研究をしていたのだから」
マコンデ「し、しかし、やつらの食事にはそこまで高純度のエキスは投薬していませんぞ?!」
ヘルガ「おそらく、最初にドクターを押さえ、高純度のエキスを入手したのだろう。…そうか、首謀者はあの男か」
マコンデ「な、ならばこちらも…」
ヘルガ「無駄だ。医療室はもう押さえられている。それに、今から注射しても効果が表れるまで時間がかかるだろう。
既に中毒になっている収容者にはすぐ効果が出るだろうがな」
マコンデ「で、ではどうすれば…!」
ヘルガ「攻めるのではなく、防戦に徹するよう連絡しろ。哨戒中の砲艦が来るまで耐えるんだ。
あれがこちらに到着すればこの状況は覆せる。いくら向こうが数で押していても、砲撃には勝てまい」
マコンデ「わ、わかりました!」
ヘルガ(我々の開発したしあわせ草の威力を身をもって知ることになるとはな、皮肉なものだ)
ヘルガ「…ん?」
マコンデ「どうしました、所長?」
ヘルガ「おかしいな。畑の方面から収容者が逃げてくる」
マコンデ「おお、あそこはわが兵が押しているのですな。使えるやつもいるものだ!」
ヘルガ「しあわせ草のドーピングを行った連中に攻め込める兵がいるのか? そこまで練度を高めた記憶はないが…」
マコンデ「んなっ、兵も逃げている! 全く役立たずどもめ!」
ヘルガ「どういうことだ…?」
BB兵「た、大変です。所長!」
ヘルガ「どうした。落ちついて何事か報告せよ」
BB兵「か、か、か、怪獣です!」
ヘルガ「は?」
BB兵「山の向こうから畑を横切って!」
ヘルガ「……怪獣だと? 何を訳の分からないことを言っている。ちゃんと報告しろ!」
BB兵「早くお逃げください! じきにここにも…」
ガァァァァァァァァァアァァァア!!!
ヘルガ「?!」
マコンデ「な、なんだ!?」
―しあわせ草畑―
としおくん「ぐぎゃああああああああああ!!!!!」ゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴ
収容者・BB兵「うわぁあああああ、ひぃぃぃいいいいいいいいいい!!!!」
6主「な、何だアイツは!」
小杉「おい6主、早く逃げろ!」
としおくん「ぎぃゃああああああああああ!!!!」ドカーン! メキメキメキ!
6主「収容所を壊しているけど、このままじゃこっちも巻き添えだー!」
―管理室―
BB兵「ああ、とうとうここにまで!」
ヘルガ「信じられん…」
マコンデ「しょ、所長! どうします? とりあえず反乱の鎮圧は後回しにして戦いますか、それとも逃げるんですか!」
ヘルガ「戦う……アレとか? 」
マコンデ「ええ! 早くご命令を!」
ヘルガ「フフフ、アレと戦うだと?」
マコンデ「所長?」
ヘルガ「フフフフ、あはははははははははは! あはははははははははははは!!!!」
マコンデ「え? あ、あの、所長どちらへ! 所長!」
―収容所―
落田「大変な騒ぎになっているでやんす」
マミ「大混乱ですね。BB団は壊滅できそうですけどこれじゃあ…」
マミ(魔法少女に変身して止める? でも魔女なんかと比べ物にならない大きいわ。変身しても、倒しきれるかどうか…)
落田「マミちゃん、早くオイラたちも逃げないと。巻き添えを食らうでやんすよ!」
マミ「でも、なんとかしないと…」
落田「こんなの、オイラたちじゃどうにならないでやんす! 地球防衛隊でもないと無理でやんすよ!」
マミ「そんなアニメみたいなもの! ありません…よ――?」
マミ(待って、確か兵器工場で巨大ロボットを作っているって落田さんが前に…)
マミ(それを使えばもしかしたら!)ダッ!
落田「あ、マミちゃん! どこに行くでやんすか!」
マミ「落田さん! 先に逃げていてください!」
落田「えっ、ちょっと。ああ、オイラはどうしたら…」
としおくん「ぐぎゃああああああ!!!」
落田「ひいいい! マミちゃん、一緒に逃げるでやんすー!」
―工場―
マミ(ここはまだ壊されていないけれど、それも時間の問題…。早く探さないと!)
???「うわっ…」ドン
マミ「きゃっ…すみません。って、6主さん?!」
6主「マミちゃん?! どうして君がこんなところに?」
マミ「6主さんこそ…」
6主「俺は、ここにあるロボットを探しに来たんだけど」
マミ「わ、私もです! どんなものかはわかりませんけど、それを使えば…」
6主「ああ、あいつを倒せるかもしれない。ていうか、アイツは何?」
マミ「としおくんだそうです。しあわせ草を食べて、あそこまで大きくなったみたいで…」
6主「としおくん? まあ、とにかく早く探さないと! ここを潰されたら、本当に手が付けられなくなるぞ!」
―格納庫―
マミ「あった!」
6主「よし、コックピットは開いている。ええと、操作は…」
ギャアアアアアアアア グガッァァァァァァァア
マミ「近づいている…! 6主さん、早くしないと――」
6主「マニュアルは見つけた。ええと、起動するには…」
ヘルガ「それは動かんよ」
6主「所長?!」
ヘルガ「誰か一人くらいこれを使うと思ってきてみれば、お前たちか。なかなかやってくれる、いや考えることは同じということか。
それよりも動かそうとしても無駄だ。それにはパスワードが設定されているからな」
マミ「なら、早く教えてください! 早くやっつけないと、この島のみんなが…」
へルガ「ハハハ、やっつけるだと?」
マミ「そうです! あなただって、こんなところで死にたくはないでしょ!?」
ヘルガ「…このバカモノが」
マミ「え?」
ヘルガ「あれを殺すだと? 何をバカなことを言っている。アレは、我らの命すべてより価値のあるものだぞ?」
マミ「…何を言ってるの?」
ヘルガ「我らはこの地球に残された数少ない神秘に遭遇したのだ。その意味に比べれば、人間の命など取るに足らん」
マミ「そんなの! ただ殺されるのが正しいっていうの?」
ヘルガ「見てみろ。あれこそが本物の希望だ。人殺しや戦争を起こして得られる血生臭いものではない、純粋なる希望。私が渇望していた本物だ。
それに比べれば、こんなまがい物の島など不要。消えて当然だ」
マミ「だからって、そのために人が死ぬのは間違ってるわ! 人を犠牲して希望を得るなら、あなた言うまがい物と同じじゃないの!」
ヘルガ「ならば、お前が私に希望をくれるというのか?」
マミ「それは…」
ヘルガ「貴様にも分かっているだろう? 希望が何もないことの恐ろしさは。閉塞感は。世界の終わりを目の当たりにしたような絶望。それが、我らの敵だ」
マミ「…!」
ヘルガ「私もお前と同じさ。行き詰っていることが怖い。未来のすべて、世界の果てを知ってしまったかのようなこの感覚こそが絶望さ。
これがやがて人類を蝕み、殺していくんだ。その未来を変えるためなら、少数の人の命など些細なことだよ」
マミ「私は…」
マミ(私は、何も変わらない…)
マミ(魔女を倒して、そして魔女になって死んでいく…。これが私のこれからの運命であり人生)
マミ(私にこの人を非難する資格があるの? その運命をただ受け入れただけの私が、この人を…)
マミ(私は…)
6主「…そういう考えだから、こんな組織を作ってしまうんだよ」
へルガ「なんだと?」
マミ「6主さん?」
6主「君が何を知っているっていうんだ? 超能力が実在することは知っているのか? 人の妄想があらゆるものを具現化することは?
何でも願いを叶える宇宙人や魔人のことは? 時間を移動する機械のことも、君は何も知らないだろう!」
ヘルガ「貴様、何を言っている?」
6主「いいか、よく聞け! この世界は、こんなあと百年たっても解明できない謎と神秘に満ち溢れているんだ!」
ヘルガ「?!」
6主「世界も人類も行き詰ってなんかいない! 君が、勝手に、行き詰っていると、思い込んでいるだけなんだよ!」
マミ「!!」
へルガ「こ、この…見てきたようなことを!」
6主「こんな島で引きこもって、小説を読んで世界を知った気でいる君に何がわかる!
世界は、そんなに単純じゃない! 世界はずっと、どんな時代も複雑で、絶望も希望も悲しみも喜びもある色々なものでできているんだよ!
絶望しか知らない君が知ったふうな口をきくな!」
ヘルガ「貴様ぁ!」
ぎゃおおううううう!!!
ヘルガ「なに、工場内に?!」
ガララララララ!!!!
…………………
……………
………
6主「いてててて…、崩れてきて危なかった…」
マミ「だ、大丈夫ですか?」
6主「ギリギリでコックピットのハッチが閉まって大丈夫だったみたいだ。マミちゃんは?」
マミ「こっちもなんとか…。開きませんね」ギィ
6主「どこかに開閉スイッチがあるはずだ。ええと…おしりの辺りにない?」
マミ「ちょ、ちょっとまってくださいね。…これですか?」ガコン
6主「ああ、開いた。……?! 所長!」ダッ
ヘルガ「…」
6主「お、おい! 大丈夫か!」
ヘルガ「……足を…どうやら、私の運命はここまでらしいな…」
6主「バカ、あきらめるな!」
ヘルガ「ふ…お前たちの運命は違うようだな。パスワードは『ラムセス』だ」
6主「え…?」
ヘルガ「かまわんさ。敗者は勝者に道を譲らねば。私は大丈夫だ早く行け」
6主「…ありがとう!」タタタ
ヘルガ「…私に向かって『バカ』か。フ、フフ……」
バタッ
マミ「あの、所長は?」
6主「…たぶん、大丈夫さ。それより、パスワード入力っと…」
(ブゥン)
BOOT……OK
SYSTEM……NORMAL
TYPE-GT……STANDBY
6主「よし、起動した!」
落田「おーい、マミちゃんどこにいったでやんすかー!!」
マミ「あ、落田さーん。ここです!」
落田「ぬおおおおおお!! ガンダーロボでやんす! 本当に作っていたのでやんすね」
6主「落田くん! アイツはどこにいった?!」
落田「としおくんなら、今は鉱山の方で暴れているでやんす!! もう手が付けられないでやんすよ!」
マミ「急ぎましょう。6主さん。早くこのロボットで倒さないと。私も変身して援護を…」
6主「いや、君には他のことを頼みたい」
マミ「え?」
6主「この騒ぎだ。頭のいいやつなら、どこかに逃げ出そうとするだろう。そして、未だにこれだけの騒ぎなのに姿を見せていない奴がいる」
マミ「団長…ですか?」
6主「こんな場所はあっちゃいけないんだ。ここできたら、一気に根まで絶とう。団長を捕まえることを君に任せたいんだけど、いいかな?」
マミ「で、でも…居場所が…。それにいくらロボットがあるからって、一人で立ち向かうなんて…」
6主「俺なら大丈夫。それに居場所の見当もついている。所長室だ
何度も入って確認したけれど、建物の構造上おかしな箇所があの部屋にはある。きっと、隠し通路か何かだろう。その先に団長がいるはずだ」
マミ「…死なないでくださいね?」
6主「そっちもね。本当はこんな危険なこと、君に頼みたくはないいんだけど」
マミ「私だけ、何もしないのは嫌ですから。ここまできて、仲間はずれは嫌ですよ?」
6主「それじゃあね、マミちゃん!」
マミ「はい! また後で必ず!」ヘンシン
落田「あれ? マミちゃんその恰好はなんでやんすか?」
マミ「落田さん! 行きますよ!」
落田「え、どこにいくでやんすか! マミちゃ~ん!」
6主「…さてと、こっちも始めるか」
6主(Aでソード、Bでバルカン、LRでロケットパンチ…? ははは、まるでゲームだな、こりゃ)
6主(でも、おかげで簡単に操作ができそうだ! これならいける!)
6主(ようし! どうせなら、とことんノリノリでやってみるか!)
6主「――ガンダーロボ!」
としおくん「ぐぎゃあああああああああ」
6主「発っ進!」
ガンダ―ロボ「ガォオオオオオオオン!!」
―所長室―
落田「マミちゃーん、本当にこんなところに団長がいるでやんすか?」
マミ「はい。6主さんの話では、どこかに隠し通路があるってことらしいんです。早く探さないと…」
落田「それより、その恰好のことについて聞きたいでやんす! そんな可愛い服をどこに隠し持っていたでやんすか!」
マミ「あとで説明しますから…、それより今は隠し通路を!」
落田「絶対でやんすよ!」
マミ(ここに来る途中で、BB兵に何人か遭遇したけれど、全部落田さんが倒してしまったわ)
マミ(銃の弾も軽々と避けていたし、私と落田さんの二人なら団長を捕まえることも可能なはず! 急がないと!)
ぐぎゃあああああん!!!
がおおおおおおおん!!!!
落田「6主くんは派手にやっているみたいでやんすね。オイラも操縦したかったでやんす」
マミ「落田さん! 真面目に探してください!」
落田「ごめんでやんす…。あ、本棚が動いたでやんす!」ゴゴゴ
マミ「これは…、地下へ下りる階段ですね! やりましたね落田さん!」
落田「6主くんの話なら、この先に団長がいるのでやんすね!」
マミ「早く追いかけましょう!」
落田「ここまで来たら、絶対に逃がさないでやんす!」
―地下道―
マミ「こんな地下道があったなんて…」
落田「ふむふむ…」
マミ「どうしたんですか? 落田さん」
落田「この地下道は、だいぶ古いものでやんす。ここ数年で作られたものじゃないでやんすね」
マミ「それじゃあ、この島に元々あったもの、ということですか?」
落田「バオの話で出てきた、旧日本軍のものだと思うでやんす。この島に前線基地を作っていたのでやんすね」
マミ「それなら、これは脱出路か何かですか?」
落田「たぶん、元は退避のための防空壕か何かだと思うでやんす。とにかく、今は地下道として利用されているみたいでやんすけど」
マミ「急ぎましょう。逃げられる前に、団長を捕まえないと…」
???「だれが、だれを捕まえるでやんす?」
落田「へ?」
マミ「え?」
???「まったく、こんなところまで来るとは、ヘルガは何をやっているでやんすか」
マミ「え、あれ? お、落田さんが2人?!」
落田「オイラはこっちでやんす!」
マミ「…もしかして、生き別れの双子ですか?」
落田「いやいや、6主くんが言っていた同僚の山田くんという可能性も…」
メカ亀田「何を言っているでやんす。オイラこそがブラッドバタフライの団長、メカ亀田でやんすよ!」
マミ・落田『……』
メカ亀田「ふっふっふ、驚いて声も出ないでやんすね」
マミ「……あの、亀田さんって誰ですか?」
メカ亀田「は?」
落田「オイラも知らないでやんす。親戚にもそんな人はいないでやんす」
マミ「いきなり知らない人の『メカ』が出てきても困るんですが…」
落田「本物より先にニセモノが出てきても、全く意味がないでやんす。ネーミングセンスを疑うでやんす!」
メカ亀田「ニセモノ…?」
マミ「だって『メカ』って名前にあからさまに…」
メカ亀田「オイラはニセモノでないでやんす! 本物を超えた存在なのでやんす! バカにしてるでやんすか!」
マミ「と、いわれても…」
落田「元がたいしたことなくても、オイラたちには全然わからないでやんすからねぇ。
ま、ここは一つ、この落田様のニセモノということで勘弁してやるでやんす」
メカ亀田「ま、またニセモノと言ったでやんすね!」
落田「と、その隙をついて、先制攻撃でやんす!」
マミ「えっ?」
落田「せいや!」バキッ
メカ亀田「…」
落田「あれ? バットが折れちゃったでやんす」
メカ亀田「…今度はこっちの番でやんすね」
バリバリバリ! ギャー!!
落田「…」プスプス バタ
マミ「ああっ! 落田さんがあっという間に黒コゲに! 電撃?!」
メカ亀田「その通りでやんす。この電磁バリアーがある限り、オイラは無敵でやんすよ」
マミ(近づくのは無理…でも!)
メカ亀田「さあ、小娘。あとはお前だけでやんす」
マミ「そう簡単にはやられないわ…!」
メカ亀田「ほう、何ができるというのでやんすか?」
マミ(先手必勝。バリアーもティロ・フィナーレなら…!)
メカ亀田「しあわせ草でパワーアップしたところで、所詮人間などタンパク質とカルシウムの塊でやんす。
チタンとスチールで出来ているオイラに勝つことなど…絶対に不可能なのでやんす!」
マミ「あら、そんなこと、やってみなくちゃわからないんじゃないかしら?」
メカ亀田「この程度の予測も不可能とは…。やっぱりバカな人間は皆殺しでやんす!」
マミ「バカなのは貴方の方よ。貴方の予測は所詮は常識の範囲内でしょう? でも世の中には、それだけじゃない。奇跡や魔法があるの」
メカ亀田「何を言っているでやんすか?」
マミ「こういうことよ!」バッ
マミ(狭い地下通路、絶対にはずさない!)
マミ「ティロ・フィナーレ!」
ドカーン!!!
(もくもくもく…)
マミ(ティロ・フィナーレの一撃。これで、団長は…)
バシュ! バシュ! バシュ!
マミ「?!」
マミ(小型ミサイル!?)パンパンパン チュドーン
メカ亀田「…不意打ちとは中々やるでやんすね。それにその力、興味深いでやんす」
マミ「なっ、効いてないの?!」
メカ亀田「残念だったでやんすね。言ったはずでやんすよ? 電磁バリアーがある限り、オイラは無敵だと」
マミ(効果なし…。今まで魔女以外に撃ったことはなかったけど、でも全く効かないなんて…!)
メカ亀田「この理路整然とした科学技術の粋を結集して作られた体には、一部の隙もないでやんす。そんなあやふやで不確かな力など、通用しないでやんすよ」
マミ「…いかにも機械がしゃべりそうなセリフね。不確かなら、通用するかどうか判断するのは早計じゃないかしら?」
メカ亀田「結果はこの通りでやんす。それにしても、その力。しあわせ草のドーピングだけじゃないでやんすね? 興味深いでやんす」
マミ「…」ギリ
メカ亀田「かわいい女の子だから、オイラのコレクションに加えようと思ったでやんすけど、気が変わったでやんす。
解剖して、その能力を新たな商品にさせてもらうでやんす!」バシューン!
マミ「そんなこと、お断りよ!」
メカ亀田「ほらほら! 早く逃げないとクローの餌食でやんすよ!」バシューン! バシューン!
マミ「見知らぬ男の人と手を繋ぐなんて、はしたないことはできないわ!」バンバンバン!!!
メカ亀田「ほう、銃をどこかから取り出して、撃ち落としたでやんすか! 俄然、興味が湧いてきたでやんす!」
マミ「こっちは興味ないの、近づかないで!」パンパンパンパン
メカ亀田「無駄でやんす! さっきの一撃でも破れなかったでのでやんす! そんな弾じゃ傷一つつかないでやんすよ!」バチバチバチ
マミ(くっ、射撃じゃ有効打を与えられない。でも近接戦はもっての外…!)
マミ(何とか、一撃でも与えられる方法を考えないと…!)
メカ亀田「さあ、次はこいつでやんす!」ヴィルルルル バシューン!
マミ「こんなの!」パン!
メカ亀田「無駄でやんす! この追跡型の電気玉は撃ち落とせないでやんすよ!」
マミ「こんな遅い弾! 動き回っていれば当たらないわ!」
メカ亀田「じゃあ、これでおさらいでやんす!」バシュ バシュ バシューンバシューン
マミ「くっ…」
マミ(ミサイルとクローの波状攻撃、捌ききれるの?!)
メカ亀田「ほらほら、どうするでやんす!」
マミ「この、撃ち落として…!」バンバンバンバンバンバン!!!!!
メカ亀田「おっと、電気玉を忘れているんじゃないでやんすか?」
マミ「え」
ビリリリリリリリイリリリリ!!!
マミ「!!!!!!!」バタ
メカ亀田「狭い通路で、この波状攻撃をかわすのは無理でやんす。オイラを追いつめたつもりみたいでやんすが、残念でやんしたね」
マミ「く…う…」ビリビリ
メカ亀田「おや、まだ息があるでやんすか?」
マミ「まだ…負けて…ないわ…!」ビリビリ
メカ亀田「無駄でやんすよ。あと一押し、次で終わりでやんす」
マミ「やってみなくちゃ…わからないでしょう…!」
メカ亀田「全く、本当に愚かでやんすね。人間という生き物は。ありもしない希望に目を囚われ、大局を見失う。そんなことだから、隙だらけになるのでやんす。
もっとも、そのおかげでこの組織を作ることができたのでやんすがね」
マミ「世界を救う…あなた達の目的ですか」
メカ亀田「は?」
マミ「だけど、そんなこと認めないわ…! わざと不幸を撒いて希望を得るなんて、そんなことは…」
メカ亀田「何を言ってるでやんすか? 何でオイラがそんなことしなくちゃいけないでやんす?」
マミ「でも所長はBB団の目的を、そうだと…」
メカ亀田「ああ、アレはそんなことを考えていたのでやんすか。道理で妙なところで甘さが見えていたわけでやんす。所詮、あれも人間でやんしたか」
マミ「…違うっていうんですか。じゃあどうしてこんな組織を作ったんですか!」
メカ亀田「目的? そんなものはないのでやんす」
マミ「え…?」
メカ亀田「しいて言えば目的がないのが目的でやんす」
マミ「何を言ってるんですか?! 何の目的も無しに、こんなことをしているのではないでしょう!」
メカ亀田「だから何の目的もないでやんす。この島で行われていることも、武器を売って人間が何人死んでも意味なんてないのでやんす」
マミ「意味が…ない?」
メカ亀田「自分たちが犠牲になって、何か意味があると思っていたのでやんすか? 調子に乗るなでやんす。お前たち人間の命など何の価値もないのでやんすよ」
マミ「価値が無い、ですって…?」
メカ亀田「そうでやんす。命に価値が無いからちょっと武器を与えてみれば、すぐに殺し合いを始める。楽でしょうがないでやんす。
価値が無いものは消えても何の意味もないのでやんす」
マミ「…人間を滅ぼす。そういうこと? あなたの目的は?!」
メカ亀田「何を聞いていたのでやんすか。そんなのどうでもいいのでやんすよ。滅びようが、生き残ろうがどうでもいいでやんす。
そんなこと気にしたら、価値が生まれてしまうじゃないでやんすか」
マミ「じゃあ何で世界中に武器なんか…」
メカ亀田「だから目的なんてないでやんすよ。ただ武器を売れば、それなりに世界が面白くなるでやんすからね。
前に通学バスに爆弾を仕掛けて50人ほど吹き飛んだのは中々だったでやんす。
ああいう連中に武器を売れば売るほど、命を粗末に扱ってそのことを証明してくれるでやんすね」
マミ「な…」
メカ亀田「命に価値があるなんて、とんだ思い違いでやんす。70億もいるのに、たかだかそこら辺の一つ一つにどうして大そうな価値が生まれるでやんすか」
マミ「そんな…そんなことのために、世界中に武器を売っているっていうんですか?!」
メカ亀田「とはいえ、この島はもう終わりでやんす。これだけ破壊されたら、組織の維持は不可能でやんす。
とっとと逃げて、新しい土地でやり直すのが得策でやんすね。データさえあればまた新しく組織を作れるでやんす」
マミ「逃がさ…ない…!」ググッ
メカ亀田「お、立つのででやんすか」
マミ「ここで負けるわけには、いかないもの…!」
メカ亀田「その回復力。どんな技術でやんす? とても人間とは思えないでやんす」
マミ「あなたなんかに、私たちの未来を渡してたまるものですか。命の価値も分からない人なんかに!」
メカ亀田「外道だとでも言いたいのでやんすか? 生憎その言葉は、人間同士が使う言葉でやんす。
元より人間でないオイラが人の道を外れていると言われても、そんなの当然のことでやんすよ」
マミ(この人は魔女と同じだわ…!)
マミ(呪いの代わりに悪意を撒き散らして、理不尽に人の命を奪う。こんな人を絶対に放ってはおけない!)
マミ(私はこの人を倒して、この島を出る)
マミ(生きて、仲間や街を守る。守って見せるわ。無理だって言われても絶対に諦めない)
マミ(だって、私の世界は行き詰ってなんかいないんだから!)
メカ亀田「お喋りは終わりでやんす! 回復するなら、その意識ごと吹き飛ばすでやんす!」ヴィルルルル バシューン!
マミ「!」バララララララララララ!
マミ(これが、今出せるだけのマスケット銃…! これで終わりにしないと!)
メカ亀田「ミサイルとクローでやんす。数を増やしてやるでやんすよ」バシュ! バシュ! バシュ! バシューンバシューン
マミ「っ! のっ!」パンパンパンパン!!!!!
メカ亀田「これだけの数、良く撃ち落とすでやんすね。褒めてやるでやんす」
マミ(こんなの、野球のノックの練習に比べれば大したことない! 軌道も読めるし、撃ち落とせる!)
メカ亀田「ほら本命が来るでやんすよ!」
マミ(ダメ! この球じゃファールだわ!)サッ
メカ亀田「ほう、電気玉は回避して、他は全部撃ち落とすつもりでやんすか。でも、銃の弾はいつまで持つでやんすかね」
マミ(この球も、違う!)サッ
メカ亀田「守りに入った時点で負けでやんす。オイラは持久戦は通用しないでやんすよ」バシュバシュバシュ
「でもしばらくは代打要員かな。守備は難しいし、それなら打撃を伸ばしたほうが良いよね落田くん」
マミ(私の持ち味は守りじゃない…。バッティングにある!)
「なんというか、ホントにバッティングはすごいでやんす…」
マミ(魔法の力で破れないなら、相手の科学の力を利用するまで!)
メカ亀田「ほら、正面が周りに気を取られて、おろそかでやんすよ!」
マミ(…きた! この球!)
マミ(狙うはピッチャー返し! 絶対に決めてみせる!)
メカ亀田「ん? 銃身を両手に握ってどうするでやんすか?」
マミ(絶望的状況でも、諦めずに試合と勝敗を引っくり返すのが、選手の仕事!)
メカ亀田「諦めたでやんすか。いい判断でやんす」
マミ「…っ」グッ
マミ(それが、野球で私が学んだことだもの!)
マミ「りゃあ!」カキーン!
ビューン! バリリリリリッ!!!!!!!
メカ亀田「なっ!」バリバリバリ!
マミ(バリアが剥がれた! 後は!)ガシャ!
マミ「これで、終わりよ!」
メカ亀田「ちょ、ちょっと待つで…」
マミ「ティロ・フィナーレ!」
ドゴォォォォォォオォン!!!
マミ「はぁ、はぁ、はぁ…」
マミ(やった…の?)
マミ(バリアを破っての一撃。これで倒れなきゃ、あとは本当に殴りかかるくらいしか…!)
(バチバチ…)
メカ亀田「…そんな…バカな」
マミ「…!」
メカ亀田「オイラはオリジナルを越えた…完璧な…マニアのはず…でやんす」
マミ「そんなことと、実際の強さは関係ないわ! 団長、私の勝ちよ」
メカ亀田「…オマエは…何もわかっていない」
マミ(喋り方が変わった?!)
メカ亀田「ワタシに…トって…マニアとは…」
マミ「その姿。サイボーグじゃない、正真正銘のロボットね…!」
メカ亀田「…」サッ
マミ「あ、待ちなさい!」
落田「マミちゃん! 追うでやんすよ!」
マミ「落田さん?! 大丈夫なんですか?」
落田「少し気を失ったら元気になったでやんす! さ、行くでやんすよ!」
マミ(そ、そう! 今は早く追いかけないと!)
―団長室―
マミ「こ、この部屋は…?」
マミ(オモチャの山…?)
落田「凄いでやんす! お宝の山でやんす!」
マミ「そ、そうなんですか?」
落田「そうでやんす! 合金ガンダーロボに、『超人ライダー』のボトルキャップでやんす! あれ、でもなんだか…」
マミ「どうしました?」
マニアグッズ『…』
落田「…なんだか変でやんす。何というか…置き方に愛がないでやんすね」
マミ「愛…ですか?」
落田「どれもこれも、埃を被っているでやんす。こんなんじゃグッズが可哀そうでやんす」
メカ亀田「ククク…愛だと? そんなものはシラヌ」
マミ「団長! 落田さん、下がって!」
メカ亀田「…カメダについて教えよう。カメダは、組織ヲ裏切った男ダ。ワタシは、その男を捕まえるために造られた…ニセモノだ」
マミ「え?」
落田「おかしいでやんす。なら、どうしてそんな強力な武装をしているでやんすか。殺しちゃうでやんす」
メカ亀田「ワタシは亀田がニクイ。ワタシを作った奴らがニクイ。勝手に造っておいて『こんなバカなものはイラナイ』とステタやつもニクイ。
ダカラ、復讐のタメ…ガガ、ワタシを、ワタシが、ザザ、時間をかけて改造したのダ」
マミ「自分で自分を?」
落田「ただのロボットなのに、そんなことが出来るなんて、凄い知能でやんすね」
メカ亀田「だから、ワタシはッ! あらゆ・点で、オ・ジナルより、優れ・イナケレバなら・い!
ヤツがハタセな・った世界征服も、ワタシなら実現で・る。
あら・るデータがヤ・ヲマニアとい・ナラば、最強のマニア・あることダケが、ワタ・の存在理由ナ・ダ」
マミ「…それだけ?」
メカ亀田「…アア、ソウだ」
マミ「たった…、たった、それだけのことでこのBB団を作ったの? こんな組織を、それだけのために…?」
落田「そんなのおかしいでやんす! それじゃ結局、アンタはそのカメダの真似をしているニセモノのままじゃないでやんすか!」
メカ亀田「…モ、モウジキ…ハツバイビ…買・集め…ナクテハ…」
ドカーン
落田「壊れちゃったでやんす…」
マミ「…なんだか、悲しいロボットでしたね」
マミ(嫉妬も憎しみも理解できるほど人間らしかったのに、ニセモノにしかなれなかったなんて…)
マミ(他に、あったんじゃないのかしら。体を改造できるなら、本物になることだってできたはずなのに)
マミ(結局、自分で勝手に世界を狭めていたら、こんなことに…)
落田「ああっ! そういえば、外はどうなっているんでやんすか!」
マミ「あ、そうですよね! 苦戦してるなら援護しないと!」
落田「ここは、オイラが見張っているでやんす! だから、マミちゃんは外の様子を見てきてほしいでやんす!」
マミ「は、はい!」
マミ(いざとなったら魔法少女の力は使わないと。落田さんが残るなら、戦っている姿は見られないから好都合…!)
落田(さて、この部屋のグッズをすべていただくでやんす。いらないのは売りさばくでやんすよ)
―VSとしおくん戦―
6主「くっそ、いいかげん倒れろ! ロケットパンチ!」
ガンダーロボ「ィィィィィイィン!!」バシューン
としおくん「ぐぎゃあああ…」ボボボボボボボ…
6主「か、勝った…!」
6主(ようし、こっちは片が付いたぞ。あとはマミちゃんが団長を上手く捕まえてくれてればいいんだけど)
―広場―
マコンデ「おお、倒したか! さあ一体誰が倒したんだ! 勇者の顔を見せてくれ!」
6主「…」
6主(…さて、一番強い武器はどれかなっと)ギラギラ
マコンデ「どうした? なぜ顔を出さない?」
BB兵「あの…、もしかしたら乗っているのは兵士ではなく収容者なのでは?」
マコンデ「な、なんだと?! それはマズイ!」
ガンダーロボ「ガォォォォォォン!!」ズビー! ドカーン
マコンデ「ひ、ひぇええええ!」
6主「お前ら! 全員武器を置いて降伏しろ!」
三谷「どうやら、終わったみたいだな」
布具里「やったー、自由だー!」
渡辺「やれやれ、借金生活ともこれでおさらばか」
中田「かーちゃんに親孝行しないとな」
小杉「さて、俺はどうするかなぁ…」
倉刈「日出子…お父さんやりましたよ…」
バオ「何か知らないが、上手くいったみたいだな!」
6主(これで、BB団は終わりだな)
6主(さて、マミちゃんと落田くんは大丈夫かな…)
(こうして、俺たちのしあわせ島での生活は幕を閉じた…)
(そして、三か月後…)
―キャラ紹介―
・としおくん
しあわせ島に住んでいたトカゲ。カブトムシのツノとムカデの尾を付けたアマガエルのような生き物。
元々は普通のトカゲだったが、しあわせ草を口にしたことで巨大化した。名付け親は日本人。
それでも洞窟の中のコケを食べ、バオらにもなつく大人しいトカゲだったのだが、ドクターが落としたしあわせ草のエキスを舐めて更に巨大化してしまう。
結果、洞窟内のコケを食べつくし、それでも空腹に追いつかずに洞窟に侵入した人間を捕食するようになった。
村民協力ルートラスボス。ガンダーロボに搭乗して、ゴエモンインパクト風バトルで戦うことになる。
・メカ亀田
BB団の団長。メガネ一族とよく似た風貌をしているマニア。
その正体は、昔、プロペラ団という組織が、裏切り者である『亀田』への嫌がらせのために製作したロボット。
一応、亀田を捕まえるという目的があったが、目的が果たされる前に捨てられてしまった。
そのため自分を作った人間と、オリジナルである亀田を憎むようになり、復讐心から自分の体を改造した。
目的はオリジナルである亀田を超え、世界に復讐すること。そのため世界に悪意をばらまき、マニアグッズを買いあさっていた(亀田がマニアであったため)。
反乱ルートラスボス。バットを使って、ゼルダの伝説風バトルで戦うことになる。
―刑務所―
ヘルガ「…」
6主「やあ、久しぶりだね」
ヘルガ「…お前か」
マミ「お久しぶりです。所長さん。意外に元気そうですね」
ヘルガ「小娘も一緒か。この刑務所でしょぼくれている姿を想像していたか?」
マミ「あんまり想像できませんね、あなたの場合は。看守を部下に仕立て上げている姿なら、簡単なんですけど」
ヘルガ「フフ、それもいいかもしれんな」
6主「尋問とかされているのかい? やっぱり」
ヘルガ「当然だ。裁判にかけられることだしな」
マミ「裁判…ですか」
ヘルガ「まあ、覚悟していたことだ。これが敗者の姿だ。文句を言わんよ」
6主「…やっぱり、潔いね。君は」
ヘルガ「ところで、しあわせ草の中毒は? 解毒はかなり難しいと思っていたのだが」
6主「ああ、酷い目にあったけど、俺も含めてほぼ全員が快方に向かっているよ。酷い症状の人もいるけどね」
ヘルガ「そうか…悪いことをしたな。小娘、お前はどうだ?」
マミ「私はもう問題ないです。患者の中でも、特に治りが早い方でしたから」
ヘルガ「それはよかった。薬品としての研究はしていたが、治療の方はあまり行っていなかったからな。
どうなることになるかと心配していたのだが、それなら安心だ。お前は特にしあわせ草の効果が出ていたからな。無事でよかったよ」
マミ「え、あ、それは…どうも…」
ヘルガ「なんだ? びっくりしたような顔をして」
マミ「あなたに、そんなこと言われるとは思っていなかったから…」
ヘルガ「これでも、お前のことは気にかけていたのだぞ? あの収容所で唯一の女性仲間だったからな。
リフレッシュ小屋に送るのは阻止するつもりだったし、団長のわがままも届かないようにしていた。全く、男とは女を何だと思っているのだか」
マミ「それなら、島から早く出してほしかったです! そのせいでどれだけ苦労したと…」
ヘルガ「所長としての立場があったからな。無暗にそんなことは出来んよ。
それに、甘えたような目つきが気にくわなったからな。少々、苦労させて方が今後の人生の為になると思ってな」
マミ「…やっぱり貴方のことは好きになれません」
ヘルガ「そうか? 残念だな」
6主「今日はお別れを言いに来たんだ」
ヘルガ「何だ? 私の処刑は、もっと先だと思っていたが」
6主「ああ、そうじゃないんだ。今日、収容者の迎えが来る。それで俺たちは国に帰ることになるんだ」
マミ「しあわせ島は国際機関の管理に置かれるそうです」
6主「それで俺は、その、まだ仕事があるんだけど、それが終わったら故郷に帰るんだ。まちがいなく、2度と会えない」
マミ「…」
ヘルガ「…そう、か。事情は知らないが、やはりお前には何か任務があったのだな。他の奴らとは違うと思っていたよ」
6主「あの島に来たのは、単なる偶然なんだけどね」
ヘルガ「なに? なら我々はついでに滅ぼされたというわけか。ハハハ、傑作だな」
6主「それで、以前あの島で話した時に言ってなかったことを、言っておこうと思ってね?」
ヘルガ「なんだ?」
6主「人類はまだまだ滅んだりしないよ。ずっと、ずうっと長く続くんだ」
マミ(6主さん…)
ヘルガ「どうして、そう言い切れる?」
6主「さあね。ただ、君が考えている以上に、神秘は身近なものかもしれないよ」
ヘルガ「…たわごと、だな」
6主「まあ、そういうとは思っていたけどね。じゃあ、さようなら!」
マミ「こういうとおかしいかもしれませんけど、どうかお元気で」
ヘルガ「あ。おい、ちょっと待て!」
マミ「え?」
ヘルガ「お前たち、あの島で最初に貸した本を覚えているか?」
6主「ファンタジーの冒険小説だったよね。確か」
マミ「王子様が死んだお姫様を生き返らせる話、ですね」
ヘルガ「私はあの手の話が嫌いだ。死んだはずのヒロインが、あっさりと結末でよみがえるからな」
マミ「…」
ヘルガ「死は絶対だ。安易に打ち消されるようなものであってはならない。そう思うんだ」
マミ「…それは」
6主「…裁判で、助かる可能性はないのか?」
ヘルガ「誰かがこの事件の責任を取らねばならんのだ。納得は、している」
マミ「そんな…。BB団があったのは、あなただけの責任じゃないのに…」
ヘルガ「全てに罰を受けさせるのは不可能だよ。だから、目に見えて一人が重罪となる必要がある。二度と、こんなことが起こらんようにな」
マミ「でも…貴方は死ぬのが怖くないんですか?」
ヘルガ「怖くないわけがないだろう?」
マミ「え…」
ヘルガ「死ぬのは怖いよ。だから罰になる。何も感じられず、思い出せず、何も考えられない暗黒。とても怖い、な」
マミ「ヘルガ…さん」
ヘルガ「ハハ、実のところ、この恐怖を楽しんでいるところもある。心配するな、罰を受ける前に、壊れたりはせんよ」
6主「…君は」
ヘルガ「ではさらばだ…6主」
6主「あ、ああ」
ヘルガ「小娘。いや、マミだったか。元気でな」
マミ「…はい」
ヘルガ「絶望に負けるな。それでは何のために私が絶望を撒いたのかわからなくなるからな」
マミ「…私は、あなたのようにはなりません。絶対に」
ヘルガ「それでこそ、だ」
マミ「だから、これはお礼です」
ヘルガ「ん?」
マミ「あなたのことは忘れない。一生、なりたくないものとして覚えておきます。これは、そのお礼」
ヘルガ「なにを…」
マミ「魔法はあるんですよ、本当に――」
(そして…)
看守「面会は終わりだ。独房に戻るぞ」
ヘルガ「…ああ」
看守「早く歩け。手を煩わせるな」
ヘルガ「ああ、わかっているよ」
ヘルガ(神秘は身近なものかもしれない…か)
ヘルガ(この世には、神秘はまだまだあるのだな…ふふ)
―某国・施設―
6主「元気そうだったね、所長。最後まで軍人、か」
マミ「…6主さん」
6主「ん?」
マミ「やっぱり、私が生きているのって間違いなんでしょうか?」
6主「どうして?」
マミ「さっきの所長の言葉です。『死は絶対だ。安易に打ち消されるようなものであってはならない』って」
6主「ああ…」
マミ「私は、死んでしまうところをキュゥべえにと契約して、生きることができました。でも、これって間違いだったんじゃないでしょうか」
6主「…でも、そうじゃなければ死んでしまったんだし、しょうがないよ」
マミ「でも、それってやっぱりズルで、だから魔法少女になって魔女と戦う運命になって…」
6主「…」
マミ「…これは、罰なんですよ。条理を無理やり捻じ曲げた事への私への。死をなかったことに対しての。
それじゃあ、私は…。何があっても、ずっと戦い続けたほうが…」
6主「それじゃあ、所長は怒ると思うよ。きっと」
マミ「え?」
6主「死ぬことは絶対だ。そして死ぬのは怖い。所長はそう言っていただろう?」
マミ「…はい」
6主「だからさ、それまでは悔いがないように一生懸命でいなきゃいけないんだよ。簡単に生き返る命に、誰が一生懸命になれると思う?」
マミ「あ…」
6主「粗末にしないこと。それが所長の気持ちだよ。君が繋ぎ止めた命を悔いが残るようなことに使うなら、それは一番所長が嫌うことさ。きっと」
マミ「…そうかもしれません」
6主「命は大事に有効に。せっかく拾ったんだから、なおさらだ」
マミ「…そう。そうですよね」
6主「さーてと、日本に帰ったら色々とやらないとなぁ。君の後見人にもならないと」
マミ「私は、とりあえず親戚の人に話をしてみます。例の人は、もう行方が分からないそうですけど」
6主「そうなの?」
マミ「結局、また借金をしたんじゃないでしょうか? そういうのってクセになるそうですから」
6主「ああ、渡辺さんとかね…」
マミ「学校とかと連絡を取って、なんとか住居も探してみます。でも、早くしてくださいね?」
6主「わかってるよ。和桐製作所も立て直さないといけないし、俺はここからが仕事の本番だなぁ」
マミ「わたしもですよ。ここからです、本当に頑張らなきゃいけないのは」
6主「お。ということは、何かやりたいことができたの?」
マミ「はい。見つけることができました。だからもう、閉じこもったり怖がっている暇はありませんよ」
6主「何か変わったね、マミちゃん」
マミ「まあ、色々ありましたから。色々と、ね」
6主「ホントにね」
落田「おーい、6主くーん」
マミ「あ、落田さん」
落田「そろそろ、飛行機が到着するそうでやんすよ。準備をしないといけないでやんす」
6主「ああ、わかったよ」
落田「これでようやく帰れるでやんすね。久々の日本でやんす!」
6主「そういえば落田くん。俺は和桐って会社を作るんだけど、そこに入社する気はないかい? きっと気に入ると思うよ」
落田「野球部があるなら、考えてやってもいいでやんす」
6主「当然だよ。よし、決まりだな!」
落田「6主くん、気が早いでやんすね」
マミ「良かったですね、落田さん。これで日本に帰っても安泰です」
落田「6主くんの会社でやんすからね。そうそう上手くいくとは思えないでやんす。ところで、マミちゃんはどうするでやんすか?」
マミ「私は、故郷の街に帰ります。親戚の人とも話をして…。でも、6主さんに後見人になってもらうつもりです。
向こうもそちらのほうがいいでしょうから」
落田「そうなんでやんすか? こりゃ6主くん、頑張らないといけないでやんすね」
6主「そうだね。早く、会社を立ち上げてみんなを呼び戻さないと!」
落田「ところで、オイラはその会社で何をすればいいのでやんす?」
6主「未来を作るんだ。自分たちの手で、明るい未来をね」
マミ(こうして、私は日本に帰れることになった)
マミ(しあわせ島で過ごした100日間の生活は最悪なものだった。もう二度と経験はしたくないとつくづく思う)
マミ(けれど、あの島での生活や、仲間たちと戦ったことは忘れることはない。
いい経験だった、とは認めたくないけれど、大きなものを得たのも確か。それは否定できないこと)
マミ(そして、絶望と希望を教えてくれた、二人の大人のことを、私は絶対に忘れることはないだろう)
マミ(私の物語はこれで終わったわけじゃない。むしろ、これからが始まり)
マミ(必ず、街も仲間も救って見せる。絶対に!)
(マミがパワーアップしました!)
―選手登録―
・巴
・右投 右打 ノ―マル ファースト
ミートB
パワーA
走力A
肩力B
守備C
・特殊能力
ムードメーカー 固め打ち 流し打ち パワーヒッター バント○
―エピローグ―
6主(日本に帰った俺たちは、和桐製作所を復活させた。社長や山田くん、かつての仲間たちも呼び寄せ、元の場所に工場を立て直した)
6主(こうしてなんとか歴史を修復する俺の努力は成功しつつある。…長い任務になっちゃったなぁ)
6主(しあわせ島はBB団から解放され、島民たちは自由に外の世界と行き来できるようになった。
最近聞いた話だと、観光地にする計画も持ち上がっているとか)
6主(そういえば、巨大怪獣としおくんは、さっそくB級映画のネタになった。関連グッズもたくさん発売されたが、すぐで飽きられてしまい、今では誰にも見向きされていない。
ところで、不思議なことに俺の倒したとしおくんの死体はいつの間にかなくなっていたらしい。誰かが隠したのか、それとも…)
6主(あの島での仲間たちは、それぞれの場所に居る)
6主(三谷さんは廃業になったスクラップ業者の設備を譲り受け、復活させた。島に居た時のように、元気に若手叱り飛ばしているらしい。
奥さんと娘さんとも再会し、楽しくやっているそうだ。お酒の管理は徹底されているそうだけど)
6主(渡辺さんは、特に何も考えずフリーターに戻ったそうだ。退屈な日々を送っているらしいが、しあわせ島よりはマシだと言っている)
6主(小杉は会社に誘ったのだが、断られた。何でも、俺の下に働くのは嫌らしい。
風の噂によると、布具里と共にトレジャーハンターとなり、世界中を旅しているそうだ。まあ、本人がいいのならそれでいいのだろう)
6主(倉刈さんは、しあわせ草に後遺症に苦しんでいる。一応、帰国はしたがその後の行方は知れていない。
無事に娘さんに再会できたといいんだけど)
6主(実家に帰れた中田さんは、島で考えていた親孝行しようという気持ちもすっかり忘れ、今度はいつ家を出ようかと算段する日々が続いているそうだ)
6主(そして…)
―処刑場―
ヘルガ「…」
執行人「何か言い残すことはあるか?」
ヘルガ「…いや。それより目隠しは必要ない。最後まで風景を見ていたい」
執行人「…そうか」
ガシャ! ガシャ! ガシャ!
ヘルガ「よく狙え、兵士よ。こんな極悪人を撃ち殺せることは、滅多にないのだからな」
ヘルガ(…不思議なものだ)
ヘルガ(思えばこうして物を考え、景色を見ることのできる「私」の存在こそ、神秘かもしれんな…)
ヘルガ(…それも、これで最後だ)
「魔法はありますよ、本当に――」
ヘルガ(…そういえば、あの娘の名前は何と言ったかな)
ヘルガ(それに、私を罵倒したあの男の名前も…)
ヘルガ(…ククッ)
ヘルガ(最後の最後で思い浮かんだのが、あの二人とはな。女々しいことだ…)
兵士「くたばれ、この魔女め!」
ズダダダダーン!
―和桐製作所―
ガガガガガ ガシャコガシャコ
落田「6主くん。明日は試合でやんすよ。会社が復活して、初めての試合でやんす。白星を挙げるでやんすよ」
6主「分かっているよ。山田くん」
落田「オイラは、落田でやんす! いつになったら見分けがつくようになるでやんすか!」
6主「ああ、ごめんごめん。でも、いまだに見分けがつく人はいないじゃないか」
落田「まったく、失礼でやんす。今のところ見分けがついたのは、ほるひすだけでやんすよ」
6主「ああ、うん。あの人はね…」
山田「呼んだでやんすか? 6主くん」
落田「ああ、山田くん。何でもないでやんすよ」
6主「うーん。やっぱり、見分けがつかないなぁ。本当に双子じゃないの?」
落田「違うでやんす。でも、趣味は合うし、他人とは思えないのは確かでやんすね」
山田(ああ、まさかオイラの一族が同じ会社の社員になるとは思わなかったでやんす…)
山田(天本さんといい、オイラたちの父親は一体どれだけ種をまいているでやんすか!)
6主(まだまだ未来には帰れそうにないなぁ…。結局、犯人も捕まえられなかったし。会社が安定するまではこの時代に留まらないと)
―野球グラウンド―
山田「先発はオイラでやんす!」
6主「山田くん、がんばれよ!」
落田「ショートは鉄壁でやんす!」
山田「任せるでやんす! 甲子園に行き、大神選手とも張り合った腕を見せてやるでやんす!」
ワーワー! ワーワー!
寺岡「…あー。野球の試合ですか。いいですねー」
寺岡「大学での研究も飽きてきましたし、オモチャを作るのもいいかもしれません。ここに就職しましょうかねー」
―見滝原市―
マミ「ただいま…」
マミ(ようやく帰ってきたわ、この部屋に)
マミ(それにしても、先生があんなに泣いてくれるなんて。親戚の人なんてみんな冷たかったのに)
マミ(この部屋にしてもそう。てっきり引き払われていると思っていたのに、大家さんは残してくれていたわ。
しかも家賃は当分いらないなんて言ってくれた。もう払ってあるなんて嘘までついてくれて)
マミ(最初から一人じゃなかったのに、こんな事にも気が付いていなかったのね。私って…)
マミ(さて6主さんに連絡しないと。新しく住居を用意してもらう必要もないし、何とか前と変わらない生活も出来そうね)
マミ(いえ、同じじゃない。新しい生活が始めないとね)
マミ(無事、復学も出来るみたいだし。遅れた分、勉強も頑張らないと!)
(そして…)
マミ(…まずはキュゥべえに真相を問いただすのが先かしら?)
マミ(鹿目さん、美樹さん、暁美さんはまだ居場所もわからない。でも、鹿目さんは暁美さんが魔法少女にならないようにしていたのよね。
なら、キュゥべえに見つかる前に何とか見つけないといけないわ)
マミ(あら、でも暁美さんが守っているなら大丈夫なのかしら…? それなら、先に暁美さんと合流しないと)
マミ(でも、もし何かの間違いでキュゥべえに見つかってしまったらいけないから、鹿目さんの居場所は確認しておかないと。魔法少女になっていないなら美樹さんも…)
マミ(6主さんの資料によると、ワルプルギスの夜がこの街に現れるとも言っていたわ。鹿目さんや暁美さんが死んでしまうのは、おそらくそれが原因…。
みんなが私の前に現れるまでは到来しないにしても、準備は進めないといけないわ)
マミ(魔法少女の力だけじゃ対抗できないかもしれない。6主さんにも協力を…)ブツブツ
マミ(うん。とにかく、まずやることは佐倉さんと仲直りすることね)
マミ(考え方は違うけど、そんなの違う人間なんだから当り前。大事なのはお互いを尊重すること…よね!)
マミ(だって放っておけないもの、仕方ないじゃない。ならそうなれるように、努力しないと!)
マミ(まずは佐倉さんを探しましょう。それからあのときのことを話して、また協力しないか提案して。断られたらそれから…)
杏子「ただいまー」
マミ「え?」
杏子「あ…」
―魔女空間―
マミ「安打! 二塁打! 三塁打!」バキッ!ボガッ!ベキッ!
杏子『おい、あんまり前に出るなよ!』
マミ『この程度の使い魔、簡単に打ち返せるわ。私はいいから隙を作って!』
杏子『お、おう!』
杏子「おい、こっち向け!」ヒュン ザン!
魔女「aaaaaaaaaaaaa!!」
マミ『離れて。決めるわよ!』
マミ「ティロ・フィナーレ!」チュドーン!
―廃ビル―
杏子「なー、アタシがいる必要あるのか? 遠近両方とも、一人で何とかできるんじゃ…」
マミ「そんなことないわ。近距離っていっても魔女クラスじゃ対応できないし、せいぜい使い魔を相手にするのが関の山よ。
だから佐倉さんは魔女を攻撃することに集中して頂戴? こっちは自分の身は自分で守れるから」
杏子「本当に何やってたんだよ、そのしあわせ島で。聞く限りじゃ、大分ひどい目にあったんだろ?」
マミ「だから野球よ。あれで私は生まれ変わったの。佐倉さんもやらない?」
杏子「いいよ別に。ったく、わけわかんねぇ」
マミ「あら、残念。教える方になれば、また『マミさん』って呼んでもらえると思ったのに」
杏子「呼ばねーよ!」
マミ「ふふっ、いつでも歓迎するわよ?」
杏子(ちっ、調子狂うなぁ…。使い魔を放っておいても、何も言わないし)
杏子(本当に、こっちのやり方には何も言わないのか? なら、寝床のあるし、協力を受けても…)
―マミ宅―
杏子「おいマミ! お前、アタシが放置していた使い魔全部狩っただろ!」
マミ「あら、なんのこと?」
杏子「とぼけんじゃねぇ! アタシが狩らなかったら、マミしかいないだろ!」
マミ「あの…ごめんなさい。本当に覚えがないのよ」
杏子「え、マジ? ご、ごめん疑ったりして…」
マミ「パトロールの最中にストレスが溜まったから、使い魔でバッティングした記憶しかなくて…」
杏子「やっぱお前じゃねーか!」
―路地裏―
マミ「今日は一緒にパトロールね」
杏子「放っておいたら、勝手に使い魔狩るからな。もう、一人にはさせねぇぞ」
マミ「ふふっ、うれしいわ。せっかく一緒に住んでるのにバラバラに行動していたし、やっぱりこうでなくちゃ」
杏子「なぁ、次あんな真似してみろ。あんたとの協力関係は即刻…」
マミ「佐倉さん、アイス食べない? 私はバニラにするつもりなのだけど」
杏子「人の話を聞け!」
マミ「奢るけど?」
杏子「ストロベリーがいい」
―マミ宅―
QB「やぁ、マミ。ひさしぶりだね」
マミ「キュゥべえ! ひさしぶり。あなたこそどこに行っていたの?」
QB「何故か佐倉杏子が、僕のことを目の敵にするようになってね。会うたびに攻撃されるから、しばらく身を隠していたのさ」
マミ「まぁ、本当に? 許せないわね」
QB「マミ。彼女は危険だ。君がいない間にこのエリアを乗っ取って、好き放題している。僕にも危害を加える始末だ。
今帰ってきて知らないかもしれないけれど、この部屋を勝手に根城にしているよ。昔の仲間だったかもしれないけれど、街を守るなら早急に排除を考えたほうが…」
杏子「ただいま…。って、ああ!」
QB「!」
マミ「あら、お帰り佐倉さん」
杏子「キュゥべえじゃん。ようやく現れたのか」
QB「マミ、早く変身を! 今の彼女は何をするかわからないよ!」
シュルシュルシュル
QB「マミ、何をするんだい? 僕じゃなくて杏子を…」
マミ「ねぇ、キュゥべえ。聞きたいことがあるんだけど――」
―見滝原中学校―
クラスメイト「鹿目さーん、美樹さーん」
まどか「あ、はーい」
さやか「なーにー?」
クラスメイト「お客さーん。巴さんって人ー」
まどか「巴さん?」
さやか「誰だろ? まどかの知り合い?」
まどか「ううん。私も知らない…」
―マミ宅―
マミ「――それで、ワルプルギスの夜と戦うには戦力が足りないと思うのよ。対策や練習もするけれど、それで万全とは言えないわ」
杏子「アタシとマミとその暁美ってやつで三人。アイツら二人を魔法少女にするわけにはいかないから、実質これが頭数か。
何度も繰り返しているって話が本当なら、たぶんこの人数で挑んでも、敵わなかったんだろうな」
マミ「6主さんは協力してくれるっていうけど、焼石に水かしらね…」
杏子「なぁ、そのうち会わせてくれよ? 色々聞きたいこともあるし」
マミ「そのうちね。でも、どうしようかしら。他の魔法少女も探せないし、他に戦力を集められる方法をなにか…」
杏子「うーん…」
マミ「やはり、無理かしら…。戦力になるなら、魔法少女に限らなくてもいいのだけれど、そんなにうまくはいかないわよね…」
杏子「…当てはないこともないよ」
マミ「え? 本当に?!」
杏子「あー…、でもなぁ…」
マミ「何か問題があるの? 金銭を要求されるとか…」
杏子「いや。たぶん大丈夫だし、面白がって協力してくれるだろうけど…」
マミ「けど?」
杏子「…あんまり頼りたくないんだよなぁ」
―悪の秘密基地―
立花「博士ー。電話でバッタ」
黒野「電話? 今忙しいから後にせい」
立花「それが、緊急の用らしいでバッタ。すごい剣幕で、怒鳴っているでバッタ」
黒野「何じゃ研究で忙しいというのに。いったい誰じゃ?」
立花「それが『悪の魔法少女』らしいでバッタ」
(そして…)
―病院―
ほむら「…」
ほむら(…また、ダメだった)
ほむら(ワルプルギスの夜を倒すどころか、私に関わったばかりにまどかが…)
ほむら(ごめん、ごめんねまどか…。助けられなくて、死なせてしまって…)
ほむら(私はどうなってもいい。でもまどかだけは絶対に…)
ほむら(泣いている暇なんてないわ、暁美ほむら。早く行動を始めないと)
―街中―
ほむら(…おかしい)
ほむら(インキュベーターの姿が見当たらない。現れるポイントを張っているのに姿を見せていない。どういうこと?)
ほむら(まどかの周囲にも現れていないから問題はないのだけれど…。不気味ね)
ほむら(イレギュラーが起こっている可能性がある。好機と判断するには早いわ。慎重に事を進めましょう)
ほむら(とりあえず、武器を早めに補充しないと…)
―空き地―
エイミー「にーにー」ゴロゴロ
ほむら「…」ウリウリ
ほむら(まどかじゃなくてごめんなさい。あなたも私なんかより、まどかと遊んでもらった方が楽しいでしょうに)
ほむら(…本当、何をしているんでしょうね。あれだけやり直して、未だに約束を果たせないなんて)
ほむら(餌は、これくらいでいいわよね。時間があったらまた見に来ましょう)
ほむら(本当は飼えればいいのだけれど、私はいついなくなるかわからないから。あんな部屋に閉じ込めるよりは、外に居たほうが貴方もいいわよね)
???「あ、あのー…」
ほむら「え?」
まどか「その仔、あなたの猫ですか?」
ほむら(ま、まどか?!)
ほむら「あ、あなた、どうして!」
まどか「え、ご、ごめんなさい…。勝手に餌をあげちゃって。でも、野良猫だと思っていたから…その…」
ほむら(まさか…すで契約しているの?! 監視を抜けられた? それとも、キュゥべえが現れなかったのはもう契約済みだったから?)
まどか「あ、あの…?」
さやか「まどかー、どしたー?」
まどか「あ、さやかちゃん」
ほむら(…! 美樹さやか…)
(そして…)
ほむら「あの仔は私の猫ではないの。あなたと同じ、たまに餌をあげていただけよ。誤解させてごめんなさい」
まどか「ううん、私の方こそごめんなさい、急に声をかけちゃって。とてもびっくりしてたみたいだったから…」
ほむら「退院したばかりで、人と接するのに慣れていないの。あなたが謝ることではないわ」
まどか「でも…」
さやか「ほらほら、あやまり合戦は終わり! いつまでもそんなことしてたら、日が暮れちゃうよ?」
まどか「さやかちゃん…」
ほむら「…」
ほむら(思いもかけず、この二人と接触してしまった…)
ほむら(どうして、この二人がここに居るかはわからない。キュゥべえが見当たらないことと、何か関係があるの?
とにかくこれでイレギュラーが起こっていることは間違いない。各人の行動がこれまでと違いすぎる)
ほむら(大丈夫、問題はないわ。二人ともソウルジェムの指輪をしていない。今、重要なのはこの一点。
それなら学校で出会うはずの予定が、少し繰り上がっただけよ)
ほむら(…でも、このままだとまどかと親しくなってしまう)
ほむら(そうなったら、また前と同じように…。もうあんな終わりにはさせられない。あんな辛そうなまどかはもう…)
ほむら(まどかと、距離を置く方針は変えられない。まだ、出会っただけなら修正も出来るはず)
ほむら(…覚悟を決めなさい。重要なのはまどかの運命を変えること。隣に私がいなくても問題ない)
ほむら(まどかが助かれば、それで…)
ほむら「それじゃあ、私はこれで。さようなら」
まどか「あ、ま、待って!」
ほむら「まだ何か用があるのかしら?」
まどか「あの、その、えっとね…」
ほむら「何もないのなら、もう行きたいのだけれど」
まどか「あの…ね。私も、その、これからもその猫ちゃんに会いに来ていいかな? また、触りたくて…」
ほむら「…別にこれは私の猫ではないわ。あなたの好きにしなさい。何なら世話をしてもらいたのだけれど。
もう、触るのも飽きてきたことだし」
まどか「え、あ、そう…なの…」
ほむら「それじゃあ、さようなら」スタスタ
まどか「あ…」
さやか「…何か冷たいやつだなあ」
まどか「でも、良い人だよきっと。猫と遊んでいるとき、とっても優しそうな顔していたもん」
さやか「そうなの? うーむ、ということはアレは照れ隠しか。クールビューティーの照れ隠し…」ジュル
まどか「…さやかちゃん、よだれよだれ」
さやか「おっと」
―転入の日―
ほむら(…結局、この日までインキュベーターの姿は見えなかった。どういうこと?)
ほむら(他のエリアに行っている? それなら、後はワルプルギスの夜を倒すことだけを考えることができるけど…)
ほむら(いえ、希望的観測は止めましょう。巴マミが健在な以上、インキュベーターもこの街にいると考えるべき。
彼女の存在は確認している。それなら、アイツも近くにいるはずだわ。姿を見せない理由はわからないけど)
ほむら(とにかく、方針は変わらない。まどかとは距離をおいて、ワルプルギスの夜を倒す算段を付ける)
ほむら(イレギュラーが起きている以上、ここでまどかの運命を変えられる可能性がある。だからこそ、状況を見極めて事を進めなければ)
早乙女「えー、暁美さんは長い間心臓の病気で入院してまして――」
ほむら「…」
さやか「あれ、あの転校生…」
まどか「あの人…、あの猫ちゃんの…」
―廃ビル・魔女の結界―
ほむら(…どうやら、この魔女は存在するようね)
ほむら(魔女の数が他の時間軸と比べて少ない…。これもイレギュラーの影響かしら?)
ほむら(グリーフシードの手持ちが心もとないわ。ここの魔女は確実に狩っておかないと)
ほむら「…」テクテク
ほむら(もしかしたら、巴マミと遭遇するかもしれない。今の状況なら、彼女の協力を取り付けられるかもしれないわ)
ほむら(キュゥべえがいないのなら、その可能性は十分にある。こちらの印象が悪くなければ、街を守るために必ず彼女は協力してくれるはず)
ほむら(真相を隠し通せれば、以前のようなことになる心配もない。誰かが魔女化するような事態にならなければ平気なはず)
ほむら(それが上手くいけば、あとは佐倉杏子の勧誘で戦力がそろう)
ほむら(この二人の相性は良くないけれど、私情を挟んで自分の目的を忘れるほど愚かではないはず。必要以上に接触させなければ、問題はないわ)
ほむら(…とにかく、この状況はこちらにとって有利なはず。上手く立ち回らないと)
ほむら(まどかとも距離が取れている。このままいけば、何にも巻き込まずに済むことだって…)
「いっ、いやぁぁぁぁぁぁ!」
「さやかちゃん!」
ほむら「?!」
ほむら(この声…まさか!)
ほむら(まさか、キュゥべえにおびき出された?! とにかく急がないと!)
ほむら(…! 居た!)
使い魔「…」
使い魔「…」
使い魔「…」
使い魔「…」
まどか「さ、さやかちゃんが…」
まどか「電話は、繋がらないし。どうしたら…」
ほむら「っ!」パンパンパン
使い魔「!」プシュー
まどか「え…?」
ほむら「怪我はない?」
まどか「ほ、ほむらちゃん!?」
ほむら「話は後。どこかに隠れていて。こいつらは私が」
まどか「ほ、ほむらちゃん! さやかちゃんが…さやかちゃんが連れてかれちゃったの!」
ほむら「!」
さやか「どこかに連れてかれちゃってたの! さやかちゃんが…どこかに…このままじゃ…」
ほむら「とにかく隠れていて。話は後で聞くわ」
(そして…)
まどか「ほむらちゃん! 大丈夫?!」
ほむら「問題ないわ。それよりあなたの方は…」
まどか「あ、うん。私の方も大丈夫…。それより、ほむらちゃん、その姿…」
ほむら「ごめんなさい。わけがわからないわよね。でも、とにかく今は私の話を聞いて。美樹さやかが連れ去られたのでしょう?」
まどか「あ、そ、そうなの! さやかちゃんが連れてかれちゃって…」
ほむら「彼女は私が助けに行くわ。その前に貴方を安全なところまで連れて行く。着いてきてくれる?」
まどか「だ、ダメだよ! 私よりさやかちゃんを助けてあげて!」
ほむら「美樹さやかは必ず助ける。でもあなたを放っておくわけにもいかないわ」
まどか「でも…」
ほむら(…やはり、引いてくれそうにないわね。でも、まどかを危険な目に合わせるわけにはいかないわ)
ほむら「…足手まといだって言っているのがわからないの?」
まどか「え…」
ほむら「あなたがいると、助けられるものも助けられなくなる。だから、先に面倒を片付けたいの。分からないの?」
まどか「それは…そうだけど…」
ほむら「あなたは今なにが起こっているのかもわかっていないでしょう? 何も知らないなら、黙って私の言うことを聞くことね。
あなたはただ巻き込まれただけで、何の関係もないのだから」
まどか「…何も知らないなんてこと、ないよ」
ほむら「え?」
まどか「知ってるよ。あれは使い魔で…人を襲うんでしょ。その使い魔を生んでいるのが魔女で、色んな呪いを振りまいている…だよね?」
ほむら「な…」
まどか「理由のはっきりしない自殺や殺人事件は、魔女が引き起こしていて…。呪いはよくわからないものになって、人間を内側から蝕んでいくって…」
ほむら(どうして…どうしてまどかがそのことを。キュゥべえとは接触させてない…。こんなこと知る機会はなかったはず。ならどうして…)
まどか「その魔女と戦うのが魔法少女。キュゥべえに願いを叶えてもらって、その代償に魔女と戦うことになる女の子」
ほむら(結局、何をやってもまどかを魔法少女に巻き込まれるというの? どうやっても、まどかの運命は変えられないの? そんな…)
まどか「それで…、ほむらちゃんは、その…魔法少女なんでしょ?」
ほむら「…!」
(そして…)
まどか「ほ、ほむらちゃん。一人で歩けるよ!」
ほむら「黙って。あなたの足に合わせていたら間に合わなくなるわ」
まどか「で、でも…抱っこなんて…」
ほむら「あなたが美樹さやかを早く助けてくれと言ったのでしょう? これくらい我慢しなさい」
まどか「そうだけど…ひゃっ!」
まどか『あのね…巴マミさんって人から教えてもらったの。魔女の事とか、魔法少女の事とか色々』
まどか『一年生の時に急にさやかちゃんと一緒に呼び出されて…素質があるから街を守る手伝いをしてくれないかって』
まどか『私? ううん、私は違うよ。結界の印を見つけたら、マミさんに連絡してるだけ。結界には絶対に入らないように言われているから…』
まどか『魔女の結界には近づかないように言われていたんだけど、なにか助けを呼ぶ声が聞こえて…』
ほむら(巴マミ…! 無理にまどか達をこんなことに巻き込むなんて何を考えているの!)
ほむら(これが今回のイレギュラーね。こうも積極的に仲間を増やすために動くなんて予想外だわ。契約していないのは不幸中の幸いだけど、楽観はしてられない)
ほむら(やはり、彼女はまどかを守る障害になる。おそらく契約させるために、魔法少女のことを美しく飾って話しているはず)
ほむら(巴マミと付き合っている期間が長いなら、そのイメージを覆すのも難しい…。かといって、私が真実を話しても絶対に信用されない)
ほむら(まどかも彼女を信頼しているようだし、彼女から引き離すにはどうすれば…)
ほむら(とにかく、今は美樹さやかの所に急がないと…)
ほむら「…この中ね」
まどか「ここに…さやかちゃんが?」
ほむら「連れ去るタイプの使い魔なら、魔女の下に運ぶはず。間違いないわ」
まどか「ほむらちゃん。さやかちゃんこと…」
ほむら「心配することはないわ。あなたは隠れてなさい。下手に動かれると、こちらも対処できないから」
まどか「う、うん…」
ほむら「じゃあ、行くわよ」
まどか「…お願い、ほむらちゃん」
ほむら(これは…!)
魔女「…! ! !」
杏子「せぃりゃあ!」
ほむら(佐倉杏子。どうしてここに…)
まどか「杏子ちゃん!」
杏子「まどかか! さやかはそっちだ!」
さやか「まどか!」
まどか「さやかちゃん、大丈夫!」
さやか「まどかこそ…。あれ、そっちは転校生? その恰好は――」
まどか「うん。ほむらちゃん魔法少女で、私のこと助けてくれて…」
さやか「マジで?!」
ほむら「…別に。見過ごせなかっただけよ」
さやか「ありがとう、転校生! まどかを守ってくれて!」
ほむら「…」
ドンドンドンドンドンドン!!!
魔女「g…a…!」
杏子「おいマミ! 遅いぞ!」
ほむら「!」
マミ「ごめんなさい! 一気に決めさせてもらうわ!」
まどか「マミさん!」
さやか「やっちゃってくだい!」
マミ「ティロ・フィナーレ!」
―廃ビル内―
杏子「ったく、こっちがキュゥべえ狩りしてたからよかったものの、そうじゃなかったらヤバかったぞ?」
まどか「ごめんなさい…。でも、助けを呼ぶ声が聞こえて、それで――」
マミ「きっと、キュゥべえの仕業ね。鹿目さんたちと契約するために一芝居打ったんでしょう」
杏子「何かあったら、アタシらに連絡しろって言っただろ。バカのお守はしたくねーぞ」
さやか「だって仕方ないじゃん! もし、本当に誰かが襲われてたらどーすんのよ!」
杏子「襲われてたのは、さやかたちだったけどな。連絡くれればすぐに駆けつけるし、もっとこっちを信用してくれてもいいんじゃないか。…さみしーぞ?」
さやか「え。あ、その……ごめん」
杏子「冗談だけど」
さやか「きょーこ!」
マミ「まぁまぁ、佐倉さん。今回は誰もケガしなかったんだから、結果オーライということにしましょう、ね?」
杏子「はいはい。でも今度からは注意しろよな、二人とも。お前らが死んだら、困る奴が沢山いるってこと、忘れるなよ?」
まどか「うん…ごめんね。杏子ちゃん」
杏子「うむ、よろしい」
さやか「くそー。杏子のくせに偉そうに…」
杏子「てい」プス
さやか「痛っ、刺すなよ! アンタ街を守る魔法少女でしょうが! 善良な一般人を攻撃するんじゃないわよ!」
杏子「アタシは悪の魔法少女だからねー」
マミ「それでそちらは? 見たかぎりだと魔法少女の様だけど…」
ほむら「…」
まどか「あ、はい。この子は――」
ほむら「…巴マミ」
マミ「あら、どうして私の名前を…」
ほむら「あなた、何を考えているの? 何も知らない一般人に魔女狩りの手伝いをさせるなんて。そんなに危険な目に合わせたいの?
だとしたら、救いようのない愚か者ね」
さやか「ちょっ、転校生! マミさんはそんな人じゃ…」
ほむら「少し黙っていて美樹さやか。あなたには、関係のない話だわ」
さやか「んなっ!」
マミ「…そう思うのは当然ね。その指摘は正しいわ」
ほむら「間違っていると分かっているのに、こんなことをしているのかしら?」
マミ「…私は、仲間のためにこの子たちを守らなきゃいけない。そのために、何かあったら駆けつけられるように連絡を取れるようにしているの。
危険に合わせたいわけではないわ。むしろ、その逆なの」
ほむら「だったら、何も知らせずにしておいたほうが賢明ね。守るというのなら、こんなことに巻き込むのは本末転倒だと思うけど?」
マミ「…そうね、本当にそう思う。でも、運命がきっと彼女たちを放ってはおかないから。こんなこと、あなたに言っても分からないでしょうけど」
ほむら「ええ、訳が分からない。運命、なんてものありはしない。あなたのはただの言い訳よ」
マミ「言い訳、か。これで守りきれなかったら、本当にそうなっちゃうわよね」
ほむら「…?」
さやか「おい、転校生! マミさんのことを悪く言うな! 結界探しをしているのだって、アタシ達が無理言って勝手に…」
まどか「ほむらちゃん、違うの! マミさん達は、本当に私たちを…」
マミ「え…?」
ほむら「あなた達には関係ないわ。これは魔法少女の…」
マミ「ほむ…ら?」
ほむら「まだ何か言いたいことでもあるの? もう言い訳は聞きたくなのだけれど」
マミ「まさか…。あなた、暁美ほむら…さん?」
ほむら「? そうだけれど。それがどうかしたかしら?」
杏子「お、おい、マミ! こいつは…!」
マミ「…」
ほむら「一体なに? 変な名前だとでも言いたいの? 失礼な人――」
マミ「暁美さん!」ダッ
ほむら「なっ――」
マミ「良かった…。やっと会えたわ!」ギュ
さやか「えっ」
まどか「わ、わ、わ…」カァー
マミ「暁美さん暁美さん暁美さん!」
ほむら「は、離しなさい巴マミ! 一体どういうつもりなの!」
マミ「離さないわ、絶対に! 最後の仲間がそろったんだもの!」
ほむら「な、何を…」
マミ「もういいの。一人で頑張らなくていいの」
ほむら「え…?」
マミ「一人で頑張るのはもう終わり。あなたは一人じゃない。私たちがついているから」
ほむら「あ、あなた何を言って…」
マミ「鹿目さんも美樹さんも佐倉さんもこの街も、そしてあなたも。絶対に未来を見せてあげる」
ほむら「巴…マミ?」
マミ「だから、もう時間をやり直す必要なんてないわ。あなたの旅はここで終わり。もう誰も、悲しんだりはしないから」
ほむら「…!!」
マミ(そう…未来は決まっていない)
マミ(どんな絶望的な状況でも、それは変わらない。世界はこんなにも広いんだから、未来が決まっているなんてそんな狭いことはないわ)
マミ(だから、わたしは未来を作って見せる!)
マミ(街も、仲間も、自分の運命も、明るく照らされているそんな未来を!)
マミ「さあ、未来を作るわよ!」
――マミ「ここは…どこ?」落田「しあわせ島でやんす」完――
乙!
楽しかったよ!
お疲れ様でした。
当SSはこれで一応終わりです。
一か月以内に終わらせる予定が、微妙に伸びてしまいました。
今、読み直すと誤字・脱字も多く申し訳ございませんでした。
ご質問、ご指摘がありましたらよろしくお願いします。
おまけで、ゲームでシナリオ確認で作ったマミさんです。パスワードでどうぞ。
ぬへぬ をづら ゆまご にぐど はがく がだけ ずろそ
せがる いぶふ やづず ゆよえ むろぬ んぢか
凄く面白かった
このSS読んでパワポケ興味出たよ、ありがとう!
是非ともまた書いてほしい、乙!
>>916
そう言っていただけるとうれしいです。はい。
パワポケは面白いですよ~。14発売までに終わらせることができて一安心です。
12月1日 パワポケ14発売!
落田・山田も再登場!
乙!マジ乙!
久しぶりに6引っ張り出すかな
おもしろかった ありがとう
転載元
マミ「ここは…どこ?」 落田「しあわせ島でやんす」
http://ex14.vip2ch.com/test/read.cgi/news4ssnip/1318335007/
マミ「ここは…どこ?」 落田「しあわせ島でやんす」
http://ex14.vip2ch.com/test/read.cgi/news4ssnip/1318335007/
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コメント一覧 (41)
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- 2012年12月06日 21:28
- な、長すぎるでやんす…
パワポケ末期はただの中二能力バトルのノベルゲーと化してたね野球部分もヌルゲーになってたし
でも僕は新作が欲しいです(迫真)
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- 2012年12月06日 21:38
- パワポケ1と2みたいな王道の熱い話
4・5みたいなちょっと不思議な話
10みたいに何もしないと裏社会の話があまりでてこない、でも一部の人と関わるとどんどん裏の話が出てきて…
あーいうのが魅力だと思ってたからシリーズ末期の初見お断り状態のアレはちょいとビックリだったよ
完結はしたけどまた新作だしてほC
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- 2012年12月06日 21:39
- 個人的にワルプルギス戦まで見たかったよ~
やっぱり博士は出てきてくれると安心感すごい
あとゴキブリの魔女は生前どんな魔法少女だったのか私気になります!
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- 2012年12月06日 21:56
- どうでもいいけど6の未来帰還エンドは切ない
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- 2012年12月06日 22:42
- やっぱパワポケは野球で解決するってのがいいんだよな
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- 2012年12月06日 22:57
- パワポケが初見お断りなのは2からずっとだべ
まぁ終盤のインフレ状態はアレだったけど14のトゥルールートパワポケらしい熱い展開だったな
やっぱ369辺りの大人な主人公好きだわー
ヒーロー集めたらワル夜ヌルゲーじゃね?
てか弾道イベ早う(6に弾道はありません)
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- 2012年12月06日 23:09
- パワポケって単なるパワプロ派生作品かと思ってたけど、なんというか色々ぶっ飛んでるんだな
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- 2012年12月06日 23:15
- 長かったけど面白かったな
上手い具合にエンドを混ぜててすっきりした。トシオくんルートだとちょっとすっきりしないもんね
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- 2012年12月06日 23:22
- ヘルガさん契約ルートはまだですか
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- 2012年12月06日 23:26
- もしかしてボクタイの人かな?
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- 2012年12月06日 23:45
- 小杉も改善されてる……5のトゥルーみたいに
さてマミさん6に召喚するかな
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- 2012年12月07日 00:02
- 7、8、12しか持ってないけど楽しめた
ワルプルギス戦まで見たかったけどさすがに無理か
マミさんが救われただけよしとしよう
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- 2012年12月07日 00:16
- 長いから迷ったけど読んでみて良かった
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- 2012年12月07日 00:18
- パワポケは初代だけ買ってあとは友達から借りてたな~
だから亀田は俺の中では相棒だよ。村上親子の任侠好きだったよ。
6はハッピーエンドに初めてたどり着いてテンション上がった時にヘルガが死んでびっくりした思い出がある
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- 2012年12月07日 00:19
- 面白かった
読み応えあって懐かしくて楽しかった
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- 2012年12月07日 00:49
- まあ最後ら辺はラノベでやれって展開だったからな チハヤは未だトラウマ 沙耶の唄よりかはましだが
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- 2012年12月07日 01:24
- あー懐かしいなぁおい。友達と遊んで作れる選手の空きが何回無くなった事か。それでも埋まらないアルバム。そして一度も勝てなかったトカゲ野郎。もう一度7くらいまでしかやった事ないけど続きやりたいな
-
- 2012年12月07日 03:07
- 面白かった
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- 2012年12月07日 22:40
- すごい面白かった!
パワポケSSもっと増えねーかな
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- 2012年12月08日 01:20
- 満足!
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- 2012年12月08日 06:57
- いやーいいもん読んだわ
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- 2012年12月08日 19:49
- 懐かしいな。
6は一番やりこんだパワポケだった。
でも、マミさんと男女の関係にならなかったのは、女落とし師の6主らしくないなw
※18
最初は苦労するが、慣れるとメカ亀田より簡単に倒せるよ。
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- 2012年12月08日 23:20
- すごい懐かしい。ところどころ覚えている台詞を見て何か目が潤んでしまったよ。
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- 2012年12月09日 06:02
- 6しかやったことなかったからそこが舞台になるとは思わんくて楽しかった
引っ張り出せばまだアドバンス残ってるかなーこのマミさん使いたい
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- 2012年12月09日 12:02
- ブラボー
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- 2012年12月09日 14:06
- 読後感がめっちゃいいね
パワポケ6とまどかを知ってる人ならば楽しめないわけがない
ただやはりワルプルギス戦まで観たかった
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- 2012年12月09日 18:55
- 充実感がやばい
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- 2012年12月10日 01:28
- 素晴らしい出来だった
間違いなく名作
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- 2012年12月10日 17:44
- やっぱパワポケはいいなあ
でもマミさん以外のしあわせ島に連行された奴らはそもそも借金返せなかったわけだから、BB団うらむのは筋違いだよな
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- 2012年12月15日 01:23
- 魔女を望んだヘルガが最後には魔女と言われて殺される、なんて……
当時小学生だったから気づかなかったが、切ないよなぁ……
-
- 2012年12月24日 03:11
- 今まで読んだSSの中でトップだわ、これ。
まあ、どちらの原作も大好きってとこもあるけど、凄く良いストーリーだなぁ…
パワポケは人生についてかなり考えさせられるから怖いわw野球ゲームのくせにw
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- 2013年01月27日 02:14
- ヘルガは表でも裏でもロクな目に合わない。だいたいが死亡ルート。生き延びてきれぃ
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- 2013年01月27日 03:58
- よぉ〜しおクンあっそび〜ましょ!
ぐるああああ
わーうぎゃー....,
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- 2013年01月27日 04:01
- 幸せ草はいまでは超能力開発薬になりました。
パワポケシリーズの根幹に関わるキーワードになったのです。
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- 2013年05月01日 06:39
- 長いけど、すっげえ面白かったぞ…
『わたしを殺してください』→パーン!→良かったな願いが叶って!の流れは今見ても怖い
どう考えてもCEROAじゃない(トラウマ)
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- 2013年08月26日 21:48
- いいものが見れたわ
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- 2013年12月22日 02:33
- やっぱ人間の成長は見てて清々しくなるな
そういや両作品顔の形とか似てるよね
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- 2015年11月27日 01:20
- 黒野博士の名言深すぎるんだよな
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- 2016年03月28日 20:50
- リフレッシュ小屋編はよ(ゲス顔
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- 2018年08月27日 20:14
- ずいぶん前のssだけどコメント
長いが読んだ後の満足がすごい
まどマギもパワポケもサイコー
あと小杉が良い、カッコつかない所も含めて
そういや小杉もこのssのマミさんみたく近しい人に裏切られて島送りだったな6裏やりなおしたい
あと黒野博士はやっぱり最高の悪人だわ