ハルヒ「普通の人間にしか興味ありません」
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2:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/03/20(金) 21:42:01.88 ID:t0KdBkZP0
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「普通の人間にしか興味ありません」
確か自己紹介のときそう言ってたな。
いちいち公言することか?って、そう心の中で突っ込んでいたせいか、記憶に残っている。
席が近いんだし、まあ話かけるのも不自然ではないだろう。
「しょっぱなの自己紹介のアレ、どういう意味だったんだ?」
「自己紹介のアレって何」
「いや、だから普通の人がどうとか」
「あんた、普通の人なの?」
大まじめな顔で、かつ挑戦的に訊きやがる。
大真面目に普通か?って聞かれても、少し思索に入ると普通って何なのかよくわからなくなる。
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4:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/03/20(金) 21:43:53.68 ID:t0KdBkZP0
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「…いや、わからないけどさ」
「だったら何なの」
めんどくさいな・・・
「…いや、何でもない」
「あっそう。」
思わず謝ってしまいたくなるような雰囲気だ。
不快にさせてしまったようなので、てきとーに謝って話を切ろう。
まあ、俺も不快だったが。
そう思ったときに担任が入ってきて会話が途切れた。
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9:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/03/20(金) 21:46:22.41 ID:t0KdBkZP0
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ある日の昼休み
「お前、この前涼宮に話かけてたな」
何気にそんな事を言い出す谷口。まあ、うなずいとこう。
谷口「もしあいつに気があるんなら、悪いことは言わん、やめとけ。涼宮の普通へのこだわりは充分理解したろ」
中学で涼宮と三年間同じクラスだったからよく知ってるんだがな、と前置きし、
「あいつの普通への執着は常軌を逸している。」
自己紹介のことか?
「お前も過去に話しかけたことがあるのか?」
「話しかけたら殴られていた。何が起こったのかわからなかったぜ」
それに比べたら俺はまともだな。一体なんで殴られたんだ?
「おそらく顔差値が60あるからだと思う」
普通の人より勘違いだから嫌われたんじゃないか?
「中学時代は、誰に対してもそんな感じで結局人を寄せ付けないままだった。」
それはそれは。
「いくらお前をもってしても、あいつの普通へのこだわりを満足させることはできないと思うぜ」
・・・
「人より容姿が糞だし」
・・・
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11:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/03/20(金) 21:49:08.06 ID:t0KdBkZP0
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「でもなぁ、あいつモテるんだよな」
谷口はまだ話している。食べるのと喋るのを少し別々にしてほしい。音が耳障りだ。
「ツラは普通だし、スポーツも人並みにできて、成績も見事に普通なんだ。
悪い言い方をすれば器用貧乏だが、何でもそれなりなのは間違いない。
変なこだわり持ってても黙って立ってたら、んなこと解んねーしさ。
早い話が無難なんだよな。変に夢を見ない無難な嗜好の人間からは人気がある。」
まああらゆる面で普通ってのは、あとは個々人の好みで如何様にも変わるだろうしな。容姿なんて特に。
「それにも何かエピソードがあるの?」
問う国木田は谷口の半分も箸が進んでいない。
「告白して上手くいったやつは一人もいない。告白後は、全身を嘗め回すように観て、視力とか家族構成とかくだらないことを色々聞いた挙句、父親の職業がいいとか訳の分からん難癖付けて振るらしい。」
「だからな、お前が変な気を起こす前に言っておいてやる。やめとけ。いくらお前でもあいつのお眼鏡には適わん。こいつは同じクラスになったよしみで言う俺からの忠告だ」
別にそういう意図があったわけではないのだがな。
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12:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/03/20(金) 21:52:04.26 ID:t0KdBkZP0
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勘違いの谷口の言葉は話し半分で聞いていたのが、観察していると確かにハルヒの普通への執着は明らかに異常だった。
というわけで執着その1
ハルヒは入学後直後に行われる実力テストで、小数点の誤差はあっても見事に全科目平均点を取っていた。
狙ってやってるなら何より難しいことだと思うぞ、それ。
執着その2
身体測定の結果、涼宮の身長は157、体重は52と見事に女子の高校1年生全国平均に近い数値を持っていた。小数点以下は覚えていない。
いやいや、誤解するな。偶然保健室で資料を見かける機会があっただけだ。
執着その3
そして、入学から一ヶ月経った辺りに気づいたことだ。
ハルヒの髪型は、年頃の女の子らしく飾ったりするようなこともない、ただ髪が生えていますっていう程度の何の変哲も無い髪型なのだが、長さがここ一ヶ月くらい一切変化無い気がする。
まさか、毎日少しずつ切って維持してるのだろうか・・・正直、きもい・・・
身長はおそらく狙ってできないとしても、他のものは明らかに狙ってやっている。そんな気がする。
普通の意味を間違えていないか?
普通へ執着するあまり、常人から酷くかけ離れている気がする。
一体何がしたいんだろうなこいつは。
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14:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/03/20(金) 21:55:35.13 ID:t0KdBkZP0
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そんなある日、何か魔が差してしまったんだろう。
それ以外の理由に思い当たるフシがない。気が付いたら涼宮ハルヒに話かけていた。
「年中髪を一定に保つのは普通へのアピールか?」
「いつ気付いたの」
路傍の石に話かけるような口調で、ハルヒは言った。
おいおい肯定しやがった。まじかよ。きめえなおい。
お前に取っての普通とは、一体何なのか俺は聞きたい。
「何を分かりきったこと言ってんの」
どうやら口に出していたらしい。
きもいと言った部分は口に出ていなければいいんだが。
「自分が当たり前と思ったことをやってれば自分は普通だと思って当たり前でしょ。」
初めてこいつが真っ当なことを (普通というよりは自己中だが )言った気がした。
「確かに」
短く答えた俺の心中は複雑だった。
社会一般の普通を目指す割には、自分ルールもしっかり持って崩さない。それらが相容れないものだとしてもだ。意味が分からない。
表情に出ていたのだろうか、ハルヒは面倒くさそうに頬杖を付きながらこちらを見ている。決して仲間になりたそうには見ていない。
まあどうでもいいや。まじで。
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15:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/03/20(金) 21:58:49.42 ID:t0KdBkZP0
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きっかけ、なんてのは大抵どうってことないものなんだろうけど、まさしくこれがきっかけになったんだろうな。
いつの間にか朝のホームルーム前の短い時間にハルヒと雑談するのが日課になっていった。
「ちょっと小耳に挟んだんだけどな、言い寄る男全部振ったって本当か?」
「何を聞いたか知らないけど、まあいいわ、たぶん全部本当だから」
「一人くらいまともに付き合おうとか思う奴はいなかったのか?誰かと恋愛して甘い学生生活を送るのもふつーの生活だと思うが」
「涼宮ハルヒは静かに暮らしたいのよ」
意味がわからない。それだけの理由で振ったのか?
「平穏の敵だもの」
昨日の夜にJOJOでも読んでたのだろうか
確かに4部は名作だ。
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16:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/03/20(金) 22:02:00.82 ID:t0KdBkZP0
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毎日こんな淡々とした感じの会話が続いていた。
「驚天動地だ」
あくまで大げさに驚きを表明する谷口。その後からひっこりと国木田が顔を出した。
「昔から変な女が好きだからねぇ」
滅多なことを言うんじゃないぞ国木田。あいつは自分が普通だと思ってる。変な女レッテルなんか貼ったらどうなるかわからないぞ。
「お前が変な女を好きでもいっこうに構わん。俺が理解しがたいのは、涼宮が平均以下の容姿のお前と会話を成立させたことだ。納得がいかん」
知るか。
「そう言えばあいつがなんでお前のことを嫌っているか聞いておいたぞ」
「教えてくれ」
目つきを変えて身を乗り出して聞いてくる。
うざったいな。
「かっこ良過ぎるからなそうだ」
もちろん嘘。
本当は誰それって言われたんだが。
「フンっ」
やっぱりなと言わんばかりに鼻を鳴らす。
何気取ってんだ。
気取るなら笑顔を止めろ。気持ち悪いえくぼを隠せ。鼻息が荒い。
俺はこいつが嫌いだ。
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18:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/03/20(金) 22:04:32.15 ID:t0KdBkZP0
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「なあ、部活とか入らないのか?」
いつもと変わらない生活
「入ろうと思ったんだけどね、しっくり来るのがなかったのよね。。。」
まあ普通の部活ってのもよくわかないしな。
「それに大抵の部活動って対象は何であれ競うところじゃない?また自分の位置づけ調整するの面倒くさいし。」
そっちかよ。
つーかもしかして体力測定の結果や体育の授業も全て調整してるのか・・・
「暇で困ったことは今まで一度も無いけど、何もしないのは勿体ない気もするのよね」
「帰宅部も立派な部活動だと俺は思うが?」
「何かお勧めの部活ってない?あんたは何か入ってないの?」
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19:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/03/20(金) 22:07:26.85 ID:t0KdBkZP0
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今言った通り帰宅部も立派な部活動だと思ってる。このまま継続することを勧める。
そう言おうと思ったが、こいつが興味を示してくるのは珍しい気がする。
何か提示してやるか。
ちょっとした親切心。というか気分だな。
「じゃあ新しく部活でも使ったらどうだ?」
「何をするところよ」
もっともな質問だ。
どうしよう。
「部員がそれぞれ好き勝手やってればいいんじゃないか?ちなみに俺なら雑談するか寝るかネット見る。」
考えるの放棄。だるい。
「いいけど、あんたが部長やってよ。私は表には立ちたくないし、黒幕でいたいから。あと創業メンバーにもなりたくないから出来てから誘って。今週中ね。」
最悪だなこいつ。
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20:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/03/20(金) 22:09:13.84 ID:t0KdBkZP0
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まあいいか。俺はあいつと違って暇で多少なりとも困ってたのは確かだ。
自分で部活動作って、部長やってたっていう経歴付けとけば推薦受けるとき便利だ。主体性・リーダーシップ二重丸だ。
活動内容は社会奉仕活動やってましたとかてきとーなこと言えばいいしな。
実際は帰宅部+αくらいにしてしまえば俺の面倒が増えることはそんなにないだろうし、万が一のときは部長職は他の部員に投げてしまえばいい。
・・・
とは言え、どうしようか。
生徒会・職員への申請手順を踏むと活動内容やら部員数やら体裁整えるの難しいよな。
よし、既成事実を先攻させてしまおう。
「とりあえず、部室探しから始めるか。」
当面の目標が決まった。
空き部屋が無かったら部員数の少ないところを乗っ取ればいい。
文科系の部活のヒキオタ相手なら手頃なところがあるはずだ。
そう考え、昼休みまで英気を養う為に睡眠学習に移ることにした。
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21:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/03/20(金) 22:11:33.44 ID:t0KdBkZP0
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昼休み、俺は旧館をうろついていた。
一通り見ると、全ての部屋に部名が書いてある。空き部屋はないようだ。
「仕方ないな・・・」
作戦変更。
奪うのに手ごろなところを探そう。
「文芸部・・・か」
いかにも引っ込み思案のヒキオタの巣窟だ。
それに本というオプションも付いてくる・・・
よし・・!!
「ノックしてもしもお~~~し!」
俺は大きな声を挙げながらドアを開いた。
文科系ヒキオタ相手には、対応に困るキャラで攻めて相手が戸惑っている間に話を進めてしまうのがいいだろう。
常に状況を作る立場に身を置くことこそが肝要だ。
次は「名乗らせて頂こう――」だな。
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22:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/03/20(金) 22:14:10.75 ID:t0KdBkZP0
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入ってみると意外に広い。長テーブルとパイプ椅子、それにスチール製の本棚くらいしかないせいだろうか。
そしてこの部屋のオマケのように、一人の眼鏡をかけた髪の短い少女がパイプ椅子に腰掛けて分厚いハードカバーを読んでいた。
やばい、普通に、いや、ちょっと細すぎる気もするがかなり可愛い。
白い肌に感情の欠落した顔、機械のように動く指。シャギーの入った短い髪が整った顔を覆っている。
どこか人形めいた雰囲気が存在感を希薄なものにしていた。身も蓋もない言い方をすれば、早い話がいわゆる神秘的な無表情系。
新しい属性が開発されそうだ。
つーか今気づいた。完全な無反応。戸惑いの表情すらない。
次に予定していた言葉が出てこない。ごめん、ポルナレフ。
それにしても俺は一生名前を名乗ることはできないのだろうか。
そんな俺の戸惑いを他所に、少女は一度こちらを見て、興味なしといった感じで目線を本に戻した。
完全に気勢を削がれた。ていうかこんな子を相手に不躾なことはできない。
普通にお願いしよう。
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23:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/03/20(金) 22:15:47.23 ID:t0KdBkZP0
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「えっと、、、ちょっと相談があるのだが。」
「えっとだな、、、」
えっとえっと連呼って情けねーなー。くそっくそっ
だだっ広い、無機質な空間で美少女相手にえっとえっと言ってる自分の姿を想像すると、、、ごめん、したくない。
俺が言葉に詰まっていると、
「長門有希」
と彼女は下を向いたまま言った。それが名前らしい。
名乗られたことで肩の力が抜けるのがわかる。
「長門さんとやら――」
俺は言った。
「いい」「別に」「どうぞ」
この娘は言語障害なのか?
何故その3語以外を使わないんだ。
話は立て板に水を流すがごとく進んでしまい、部室と当人を新しい部に貰い受けることに成功してしまった。
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25:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/03/20(金) 22:17:59.34 ID:t0KdBkZP0
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あっさり話が進んでしまったことに気持ち悪さを感じたが、とりあえずハルヒ報告することにした。
「部室と、ついでに部員を一人確保してきた。まだ部として申請ができる段階ではないが、まあ暇つぶしの場は作った。」
ハルヒは戸惑っている様子だ。
「あとは俺らが好き勝手やってればそれが活動内容にな・・
「あんたまじだったの?」
あんた馬鹿あ?と言わんばかりの口調で遮られた。
悲しくなった。
まあいいや、長門と二人で毎日本読んでるのも幸せだろう。
「仕方ないわね」
ハルヒは溜め息混じりに続ける。
「とりあえず放課後案内してよ。それと約束通り実権は私が握らせてもらうわ。主に人事権」
ああ来てくれるのか、安心したような夢が壊れたような。
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26:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/03/20(金) 22:19:30.73 ID:t0KdBkZP0
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放課後、部室に二人で行き、長門に挨拶をする。当然無視だ。少し頷いたような気がしないでもないが。
まあそのうちと思いながら、俺は机に荷物を置き、パイプ椅子に座った。
あれっ?
ふと見るとハルヒは入り口付近で固まっていた。
一体何に反応しているのだろうか。
「ごめん、ちょっと用を思い出した。」
そういって身を翻した。
もう帰ってこないかもな。追いかけるのもバカバカしい。
まあいいや。
そう考えながらも理由を探ってしまう。何が気に入らなかったんだろう。
別にあいつの嫌悪するものがあったとは思えない。
まああいつの執着の基準なんてわからないけれど。
これと言って特徴の無い部室。無機質だが、逆に言えばそれはこれから自由にコーディネートできる。嫌なら変えればいいだけだ。
じゃあ長門か?
こんな可愛い娘のどこに不満があるっていうんだ・・・
・・・
少しの脳内沈黙の後、俺はそこで何か答えを得たような気がした。
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27:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/03/20(金) 22:21:05.90 ID:t0KdBkZP0
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「ただいま。」
俺の思索はここまで。
「捕まえるのに手間取っちゃった」
右手で何かを引き連れてきている。
どう見ても無理矢理連れてこられたと思しきその人物共々、
ハルヒはズカズカ部室に入って何故かドアは閉めず、窓も全開にした。
「おいおい何だってん・・・
俺は言いかけて絶句した。
連行されてきた、不安げに震えた身体の持ち主は、何とも形容を絶する生物だった。
彼女を紹介するときには、「生物学的には女性です。。。けれど・・・」
と逆説の接続詞を付けなればならない義務感に駆られるだろう。
ビグザム
俺はそう命名した。またはザクレロ
ハルヒがドアを閉めずに、さらに窓を開けた理由を俺は理解した。
通気性を確保したんだな。。。
彼女は定期メンテナンスと言わんばかりに体中にオイル(汗)を纏っていた。
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29:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/03/20(金) 22:23:07.64 ID:t0KdBkZP0
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「なんなんですかー?」
その機体は目にまでオイルを溜めながら唸った。
「ここどこですか、なんでわたし連れてこられたんですか、いったい何を、」
「黙りなさい」
「ひっ」
ハルヒの押し殺した声に、ビグザムはビクッとして静止した。
激しく同意だ。ぶりっこきもい。
「紹介するわ。朝比奈みくるちゃんよ。新しい部員よ」
紹介終わりかよ。つーかとんでもないこと言いやがった。
名状しがたき気詰まりな沈黙が部屋を支配した。
ハルヒはすでに自分の役割を果たしたみたいな顔で立ってるし、長門有希は何一つ反応することなく読書を続けてるし、朝比奈みくるとかいうらしい謎のモビルアーマー(以下MA)はおどおどしてるし、誰かなんか言えよと思いながら俺はやむを得ず口を開いた。
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30:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/03/20(金) 22:25:53.83 ID:t0KdBkZP0
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「どこで製造してたんだ?」
しかも新型だ。
装甲は超高張力鋼ではなく、流体金属とでもいうべき材質の分厚い層で覆われている。
これならスレッガーに看破された、Iフィールドジェネレーターによるバリアシステムがゼロレンジからの攻撃を無効化できないという弱点をカバーできるだろう。
どんな攻撃でも弾力性の名の下に無効化してしまいそうだ。
「はあ?何言ってるのよ」
こいつはJOJOは通ってきててもガンダムは通って来ていないのか。
「まあいい……。それはそれとして、ええと、朝比奈みくるさんか。なんでまたこの人なんだ?」
ハルヒは小声で俺の耳元で囁いた
「―あんな可愛い子が少数部員の中に居たらバランスが取れないでしょ?足して割れば平均が取れるわ―」
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31:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/03/20(金) 22:28:02.77 ID:t0KdBkZP0
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「それだけじゃないのよ!」
今度は大声で。しかもアクション付きで
「まじで胸でかいのよ!!」
「おわひゃああ!」
鷲掴みにされると、MAは普通の人間なら発しない言語を放った。
「あー、本当におっきいなー」
「どひぇええ!」
普通そんな言葉つかわねえよ。
いちいちぶりっこきもいんだよ。
それとハルヒ、それは胸では無くてメガ粒子砲だ。
あまり触ると放っちまうかもしれないからもう止めろ。
無意識に照準から離れようと正面から身を外す。
・・・しかし
素朴な疑問だ。
しかし、美少女・MAと活動していたら、いくらお前が頑張ったところで異様な集団に見えるんじゃないか・・・?
やはりこいつの普通への執着は意味がわからない。
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32:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/03/20(金) 22:29:58.92 ID:t0KdBkZP0
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次の日からの部活は何とも異様な光景だった。
「みくるちゃん、今日からはこれ着て部活しようね!」
ハルヒが取り出したのは段ボール箱だ。これを着るとはどういう意味だ?
見ると、首・両腕が奇麗に出るように穴が空いている。
こいつ分かってるな・・・
ちょっとハルヒに親近感が出てきた。
ところで、気づいたことがある。
このMAはどうやらぶりっこが素らしい。そして周りを気遣うことの出来る人間的に素晴らしい人のようだ。
人は見た目じゃないというが、心からそう思った。ちゃんと人間として扱おう、そう心に決めた。
段ボールでMSに近づいた朝比奈さんは、部室の中をドタドタと掃除している。
段ボールを被った人間が、段ボールで思うように動けないで不器用に掃除をしている。シュール過ぎる。
その光景を見て、俺とハルヒは指を差して爆笑した。
腹が痛い。
しかし、俺とハルヒの失礼な笑い声にも朝比奈さんは笑顔で応えてくれる。
ほんとに健気だ。間違いなく人格的に素晴らしい人間だ。
(ダンボールイメージ。てきとーにイメージ検索でググった。)
https://livedoor.blogimg.jp/tmg24news/imgs/c/6/c6090b16.jpg
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35:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/03/20(金) 22:31:38.05 ID:t0KdBkZP0
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「お前さあ、最近涼宮と何やってんの?しかも俺的Miss北高の長門様とmiss北高の朝比奈と」
こんなこと訊いてくるのは谷口に決まっている。
それとmissは失礼だ。気持ちは分かるがあの人の人間性は半端じゃない。
「まさかそのうちの誰かと付き合いだしたんじゃねえよな?いくらお前でも朝比奈は不釣り合いだ」
誉められたと、思っておこう。
「ほどほどにしとけよ。義務教育じゃねえんだから、学食や購買の食物に異物混ぜたりしたら停学どころじゃ済まないからな」
ん?待て何の話だ?
「言ってなかったか?涼宮の中学時代の話」
初耳だな。
「詳しく教えてくれ。」
俺は身を乗り出した。
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36:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/03/20(金) 22:33:17.33 ID:t0KdBkZP0
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「驚くなよ。いつだったかな。一昨年の空き頃だったかな。
ある日、ある生徒が学食のカレーが異様に酸っぱい味がすることに気づいたんだ。
まあ大半の人間は気にしないで食べたらしいがな。
その原因を調べたら、食材の一部が賞味期限切れのものにすり替わってたんだとさ。」
「あ、それ知ってる。確か地方紙で小さく出てたことがある気がする」
と国木田が言う。俺には覚えがない。
「載ってた載ってた。中学校の学食で異物混入か?ってな……」
「その犯人があいつだってわけか」
「噂だがな。学校は一時騒然。涼宮は校長室にまで呼ばれてたぜ?東中ではほぼ涼宮がやったことは規定事実扱いだったぜ。」
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37:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/03/20(金) 22:34:02.18 ID:t0KdBkZP0
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「何でそんなことしたんだ?」
「知るか。単なる噂だしな。」
たぶん黒だ。不思議と確信があった。
おそらく動機は『赤福とか白い恋人とか、偽装事件が流行ってたから流行に乗るべき。』
いかにもあいつが言いそうな滅茶苦茶な普通の基準じゃないか。
「今思うと、学校の幽霊騒動とかもあいつがやったんじゃないかと思ってる」
それも多分黒だ。
『学園には7不思議や怪談話が付きもの』とか言い出しそうだ。
ハルヒの動向には注意しよう。
何か問題を起こして朝比奈さんがダンボール着て狼狽してる姿は見物だが、長門には迷惑かからないようにしないとな。
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38:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/03/20(金) 22:35:19.68 ID:t0KdBkZP0
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ある日の部室。
「コンピュータも欲しいところね」
突然ハルヒが言った。
まあ俺もネットで遊びたいし賛成だ。
しかしこいつの目的は何だ?
「この情報化社会の中で部室にパソコンの一台も無いのは不自然極まるわ」
お前にとっての自然が何なのかを俺は知りたいが、聞いても返ってくる応えは予想できるから聞かない。
俺の沈黙を否定と取ったのかハルヒが続ける。
「あんたの脳内にはまだIT化の波が押し寄せてきていないようね。
いちいち皮肉に付き合ってられん
「パソコン導入には大いに賛成だが、どうやって手に入れる?電気屋でも襲うのか?」
「そんな目立つことはしないでちょうだい。どこからか借りてきて。」
やっぱり俺がやるんだな。
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39:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/03/20(金) 22:37:43.17 ID:t0KdBkZP0
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「当然でしょう。私は黒幕なんだから。大将自らの陣頭指揮をとることで、初めて士気は高まるものよ。」
頼りない大将としては、黒幕様にアドバイスを頂きたいところだが・・・
「借りられなかったら校内でうじうじ蠢いてる魑魅魍魎どもから盗んできなさい。部室を奪えたんだからそれに比べれば簡単でしょ」
校内で蠢いてる魑魅魍魎・・・コンピ研と捉えるのが妥当だな。
根暗なキモオタ集団には適切な比喩だ。
「念のため言っておくけど、私は奪うんじゃなくて、盗んできてもらいたいんだからね?コトを荒立てないで頂戴」
「お前さ、何ていうかもう少し爽やかな発想は持てないのか。」
こいつは見た目に出ていることじゃなく、中身も普通の名の下に自ら律するべきだ。
「私のモットーは平穏な人生を生き抜くこと。そしてその為に『姑息』に『卑劣』に『陰険』に目的を全うすることが私の人生の行動規範なのよ。」
姑息に卑劣に陰険に、か。語呂はいいがほんっと最低だな。
さてさてコンピ研だと部員数それなりに揃ってそうだ。文芸部の時のようにはいかない。
こいつに言われるまでもなく、ことは荒立てずに平和的に手に入れた方がいいな。
「朝比奈さん、出撃しましょうか」
「ほえ?」
声だけなら可愛いんだがな・・・
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41:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/03/20(金) 22:39:32.90 ID:t0KdBkZP0
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・・・・・・・・
・・・・
・・
「ぬうおおおおおおおおおおおおおおおお!!」
段ボールを纏った朝比奈さんが、奇声を発しながらピザを食い散らす。
「ピザを・・・食ってる・・・」
名もなきコンピ研部員が呟く。
その呟きを聞いたとき、俺はもう勝利を確信していた。。。
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42:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/03/20(金) 22:41:10.40 ID:t0KdBkZP0
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___
皆さんは否中卓球部をご存知だろうか。
その多彩な人物、意表を突くギャグ、そして思春期真っ只中の少年・少女の青春を描いた物語で、性別を問わずに大人気となる。1990年代の掲載誌を代表する作品と位置付けられている。(出典:wiki)
そのなかでこんな決闘の仕方がある。
決闘者はそれぞれ一人のクリーチャーを連れて決戦場にて相対する。
その際クリーチャーの顔面は紙袋で覆われている。
ギャラルホルンが鳴り響き、いざ決戦が始まったら、それぞれクリーチャーの紙袋を取り、そのクリーチャーを使って相手の笑いを取る。
笑ってしまった方が負けだ。ただそれだけ、シンプルな勝負だ。
長門を景品に出したらあっさり承諾した。
朝比奈さんが居る限り負けるはずがない。
___
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43:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/03/20(金) 22:42:15.84 ID:t0KdBkZP0
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紙袋を取ると同時に、朝比奈さんがピザにシャブリつく。
ごくり・・・
すげえ、圧巻だ・・・!
「ピザを・・・食ってる・・・」
「うっ・・・」
コンピ研の誰かが呟き、誰かが吐き気を催したようだ。
伊吹マヤって作品中一番可愛いと思うんだよね。
「ぐおおおおおおおおおおおおお!!」
はいはい、唸れ轟音 響けマグマ 轟け雷
朝比奈さんが叫びながら両腕を掲げると段ボールが砕け散り、
MSとして戦場に駆り出されていた機体は、MA:ビグザムとしてその存在感を圧倒的なのものとする。
「拘束具が!!!!!!!!」
俺が間髪入れず叫ぶ。
「拘束具!?」
コンピ研部員がコメントする。
ノリいいなお前ら。
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46:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/03/20(金) 22:44:21.34 ID:t0KdBkZP0
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「そう、あれは装甲板ではないの。朝比奈さん本来の力を抑えるための拘束具なの」
俺が解説する。
その他所で朝比奈さんが未だに叫んでいる。
朝比奈さんのひた向きさに俺は涙が滲み、演技に気持ちがこもる。
「その呪縛が朝比奈さん自らの手によって解かれていく・・・私たちには、もう、朝比奈さんを止める術はないわ・・・」
(イメージ図 てきとーにググって拾ったやつ)
https://livedoor.blogimg.jp/tmg24news/imgs/8/d/8dcd111c.jpg
俺的にはもうこの辺で爆笑のはずなんだが?おかしいな?
みんな笑うどころか蛇に睨まれた蛙のような表情をしていた。
「パ、パソコンならくれてやる!!だからすぐそいつを連れて出て行ってくれ!べ、別に怖いからじゃないんだからな!!」
部長涙目。
地獄の缶詰の蓋が聊か緩すぎたようだ。
どうやらギャグでは済まなかったらしい。
朝比奈さん流石だな・・・
この兵器のスペックを考えれば、我が部はあと10年は戦えるな。
「朝比奈さん、凄いですよ!」
「ありがとう。うふっ」
メガ粒子砲をこちらに向けながら満面の笑みで応える。
俺はさっと照準から身を反らしながらも、笑いを堪え過ぎて腹筋がねじ切れそうだった
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48:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/03/20(金) 22:46:49.31 ID:t0KdBkZP0
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「パソコンを手に入れてきたことは誉めて使わす」
なんで大将の俺が跪いているんだ?
「ははっ。有り難き幸せ」
死ねよカス。
「しかし、みくるちゃんの段ボールを壊した責任、これは誰が取るのだ?」
別に段ボールくらいどうでもいいだろうが・・・
「全てわたくしの不手際にてございますれば、どうか朝比奈さんには寛大なご処置を賜りたく・・・」
そういや長門が空気だな。
「新しい段ボールを用意してくれたら許すわ」
たまには長門とも遊ぶか。
「ちょっと聞いてる?」
何して遊ぼうかなあ?
「無視しないでよ・・・」
でもさりとていい知恵が浮かばない。何か浮かぶまで放置だな。
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49:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/03/20(金) 22:48:43.82 ID:t0KdBkZP0
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ふう。
思わず溜め息だ。
何でかって言うと、授業中に背中をシャープペンで突かれるからだ。
そして決まってくだらないことを言ってくる。もちろん小声でだが。
「ねえ」
今日はなんだ。
「日本にはBMI30越えの肥満って3いるらしいけど、このクラスにも一人はいるはずよね。おかしいわ。」
別にいいだろそんなこと…
「だからさ。だからあんた今日からご飯はピザだけにしなさい。いいわね?」
やれやれ・・・席替えはまだか・・・
-
50:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/03/20(金) 22:50:58.17 ID:t0KdBkZP0
-
「そんなことより!」
会話とほぼ同時に授業が終わるや否や声を張り上げる。それにそんなことって、話題出したのお前だろ。
「あと部に必要なのは何だと思う?」
「さあな」
即答。
「今4人だから最低あと一人は部員必要じゃない?」
なるほど、わかった。長門-朝比奈さんで一つのバランスなら、俺と対を成す存在が必要なわけだ。
こいつの構想では、自分という天秤の両端に【長門-朝比奈さん】【俺ー新入部員】を乗せることで均衡を保とうというわけか。
自分を天秤にする辺りあまりに無謀というかなんと言うか。こいつが男だったら実力を持ってして礼節を問いたいところだ。
「人事権はお前にある。良きに計らえ。」
「じゃあクラスと名前教えるから、放課後あんた連れて来なさいよ」
ハルヒはふんぞり返って応える。
昨日目星を付けたらしい。それと、結局俺がやるんだな。勧誘
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53:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/03/20(金) 23:02:13.15 ID:t0KdBkZP0
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昼休み、さっさと弁当を食った俺は、放課後になってからだと捕まるかどうかわからないので、今のうちに声を掛けるべく、新入部員候補のいる教室へとやってきた。
「特進クラスなんて入りたくねーな・・・」
入り口付近にいるてきとーな男に声を掛ける
「古泉ってどいつ?」
「あー、ちょっと待ってな。おーい古泉、今度は男からの告白だぞー」
死ねよカス。
クラスの視線が集まる。
「え?」
こちらに向き直りながらそう反応したのは、席を二人の女性で囲まれた爽やかイケメンだ。
特進の上にイケメンかよ。死んでいいな。
俺はとにかくこの雰囲気に耐えきれず、ささっと席の近くに行き、手短に用件を話した。
「ちょっと話があるんで、放課後に旧館の文芸部室まで来てくれないか」
周りの視線が痛い。
二人の女性が引いた顔をしているのがわかる。
古泉は何か考え込むように真顔でこちらを見つめる。
えーいくそ。さっさと応えろ。
「補修の後でよろしえれば」
笑顔で応える。
俺は返事はせず、頷いて了解の意思表示をし、教室を後にした。
明らかに失敗だったな。
まあどうでもいいけど。
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54:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/03/20(金) 23:04:26.50 ID:t0KdBkZP0
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放課後、今日はハルヒは何やら用事があるとかで遅れてくるそうだ。
部室では長門は本を読み、朝比奈さんは俺が新しく用意したダンボールの手入れをしている。
俺はいつも通りぼけーっとしたり、ネットでお気に入りサイトのパトロールをしている。
しかしそれも飽きてきた。
思い切って長門をオセロに誘ってみるか。
「長門、今日は何読んでるんだ?」
無言で表紙をこちらに見せる。『皇帝の新しい心』どこかの皇帝の物語か?
「面白いか?」
「分からない。」
なら無理してそんな分厚いの読むなよ。。
「たまには俺と遊ばないか?」
オセロの盤面を手に持って問いかける。
朝比奈さんのように玩具にするのは時期尚早だ。
まずは心理的距離を縮めてからだ。
「いい」
相変わらず『いい』『別に』『どうぞ』の3語しか使わないのか。いや、さっき『分からない』って言ってたから長門語録増えたな。
ところで「いい」がどっちの意味なのかわからない。
それはどっちの・・・
俺はそう言いかけたが、長門がこっちに向かって歩き始めたので止めた。
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55:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/03/20(金) 23:06:06.37 ID:t0KdBkZP0
-
「じゃあ長門は色が白いから敢えて黒にしてみようか」
「いい」
ここで、長門の「いい」は全て肯定を意味するのだと理解した。
オセロが始まる。
しかし表情が全く崩れないな。
勝敗が決したとき、多少なりとも崩れるのだろうか。こいつの笑顔、観てみたいもんだな。
長門は結構長考するやつで、しかも石を置くところは何とも意図が読めない。
ほんとに不思議なやつだ。
そして中盤に差し掛かった頃、俺はあることに気づいた。
長門が石を置いても音が殆どしないのだ。
普通、パチっとか、コトっとか音がしそうなものだが?
そう言えばミスターポポだっけ?
あいつは身につけた鈴を鳴らさずに動けるんだったな。
女神・紅天女を演じる月影先生も足首に鈴を巻いて音を鳴らさずに歩けるんだったな。
ざわっ・・・
俺の背筋に戦慄が走る・・・
それは幾多もの戦場を駆け巡った戦士だけが身につけることができる直感。
バイオハザードとサイレントヒルで培った俺の直感が訴えている。
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56:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/03/20(金) 23:09:45.55 ID:t0KdBkZP0
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「ドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドド
ドドドドドドドドドドドドドドドドドドチンコドドドドドドドドドド
ドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドド」
「朝比奈さん?何言ってるんです?」
「対局の雰囲気を演出しようと思いまして。てへっ」
朝比奈さんがビームサーベルを標準装備した新型ダンボールを纏いながら応える。
無視。そんなことより長門だ。
このプレッシャー、普通の人間の持つ者であるはずがない・・・
ポポ、紅天女、この二つに共通する単語、それは「神」―
「貴方が神か・・・?」
俺は呟いた・・・
「なんのこと?わたしは対ゆーきせーめーt・・・」
何か言いかけて止まる。
つーかごめん。神とか言いたかっただけなんだ。気分を出したかっただけなんだ。
俺はあっさり圧勝していた。いや、圧勝を通り越した完封。
それにしても弱過ぎるな。
「ふええ。女の子には優しくしないといけませんよお」
長門涙目wwwwwwwwwに見えるだけか・・・?
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57:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/03/20(金) 23:11:22.64 ID:t0KdBkZP0
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不意にノック音。
「は~い。どうぞ~」
朝比奈さんがドアまで行ってお出迎え体制に入る。来たか。
「失礼します。」
ゆっくりドアが開く。
「ちょっ!!!!」
第一声は朝比奈さんを観て放たれた。
新入部員の驚愕だ。気持ちは分かる。
なんせダンボールに身を包んだクリーチャーが突如目の前に現れるんだからな。
続いて長門を観て少し表情が緩む。
まあこの辺はハルヒマジックだな。
最後に俺を観て
「なるほど。」
表情が落ち着く。何を納得している。
つーかやっぱこの超絶イケメンは観ていてイライラする。
「あーこいつは・・・」
俺は説明しようとする。
「9組の古泉一樹です。ちなみに禁欲4時間目です。」
そういう意図はないのだろうが、さり気なく特進をアピールしている気がして気に障る。
それと最後の一言はなんだ。
4時間目ってことは昼休みに解禁してたのか?
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58:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/03/20(金) 23:12:35.83 ID:t0KdBkZP0
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「ちゃんと連れて来たようね」
ハルヒが言いながら入って来た。
「あ、部長はこいつで、あっちが有希でこっちがみくるちゃんよ。あたしは涼宮ハルヒ。よろしくね。」
長門はいつの間にか定位置に戻って本を読んでいた。
そしてほぼ真っ白だったはずの盤面は真っ黒になっている。
「あ、朝比奈みくるって言います。よろしくね古泉君。」
「皆さんよろしく。ところで何で呼び出されたのでしょう?」
「何も知らないでここに連れて来られたわけ?」
ったく・・・
そう聞こえた気がした。
「部長、説明して」
偉そうに言いやがる。まあ俺が悪いか
「実は我が部に入ってもらいたいんだ。とは言っても作っている最中で活動内容はまだ未定。まあそれぞれ好き勝手やってればいいんじゃないかと思ってる。」
「考えなしもいいとこね。」
はいはい。
「なるほど。風通しの良さそうなところですね。ご厄介になります。よろしく。」
偉く聞き分けが良いな。
「これでメンバーは落ち着いたわね」
ハルヒは凄い嬉しそうだ。
まあこれでハルヒの中ではバランスが取れたんだろうからな。
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59:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/03/20(金) 23:13:47.09 ID:t0KdBkZP0
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・・・
いやちょっと待て。
ハルヒは平均を望んでいる。
谷口的Miss北高にmiss北高をぶつけてくる徹底ぶりだ。
そして新入部員は、Miss北高と並べても違和感ないイケメンだ。
つまり何か?ハルヒの中では俺は朝比奈さんレベルなのか???
世界が暗くなった。
決してオセロの盤面に並んだ黒石のせいではない。
俺はその夜、気づいたら枕を濡らしていた。
今日のあの後のやり取りは記憶がない。
俺の記憶の中の谷口は言った。
『いくらお前でも朝比奈さんとは不釣り合いだ』
その前の会話は朝比奈さんの暴言だったから、俺を誉める意味だったことは間違いない。
俺には、谷口が神に思えて来た。
心の底から谷口への感謝の気持ちが溢れた。
明日から谷口には優しくしよう。愛してる、谷口。
一瞬、凄まじいまでの谷口ラブに見舞われた。と、同時に睡魔にも襲われて思考は途切れた。
もしこの時、睡魔に襲われなかったら、俺の人生観は変わっていたのかもしれない。
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60:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/03/20(金) 23:15:14.85 ID:t0KdBkZP0
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次に気づいたのは朝日が昇った頃、メール着信音で目が覚めた。
ん?古泉と表示されている。
昨日メアド交換したんだったかな?
『思わず目を見張ってしまううんこが出ました!』
俺も思わず目を見張った。立て読みもない。文面通りの意味なのか?
『朝からなんだ』
そう返信した。
『うんこの具合を報告し合うのも友情のあり方だと思いまして』
あほらし。てきとーに返しておくか。
『俺は下痢だったよ。昨日の夜に青汁飲んだせいか若干緑がかってた。』
っと。
なんか昨日のわだかまりが嘘のように感じていた。
我ながら切り替えが速いな。
『うんこは運の子。今日は厄日になりそうですね。』
そして改行を挟んで
『ところで今日のお昼休みに中庭で一緒にお昼どうですか?少し話があります。』
まあ谷口に絡まれるだけの昼よりはいいだろう。夕べあんなこと考えた後で気持ち悪い。
こうして古泉と二人きりの対談の場が設けられ。別に待ち遠しくもなかったがしっかり忘れずに行こう。
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61:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/03/20(金) 23:17:14.81 ID:t0KdBkZP0
-
こうして俺は昼休みを迎える。
ちなみに今日の授業中のハルヒからの攻勢は次のような内容だった。
「ねえ」
「・・・」
「ある調査では人口の8%はゲイだって言うのに、うちのクラスに一人もいないのは異常だわ。」
またそのパターンか。っていうかお前がクラス全員に性癖調査でもしたのか?
「だからあんた今日から古泉君と付き合いなさい。」
おいおいおいおいおい
それじゃあクラスはよくても、部活内でのゲイ率が40%になっちまうぞ!?
ったく、わけがわからん。
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66:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/03/20(金) 23:21:43.06 ID:t0KdBkZP0
-
「どうもこんにちは」
「ああ」
古泉との食事会は、二人とも購買のパンと缶ジュースだった。
「で?」
短く聴く。
昼休みは短い。
「実はですね、話と言うのは涼宮さんについてです。」
は?ハルヒのこと狙ってるのか?
「ハルヒとは当然付き合ってるわけはないし、恋愛感情も抱いていないから好きにしていいぞ」
「彼女のような文武両道・才色兼備な女性は確かに魅力的ですが、そういう意味ではないんですよ。」
ぬ?
「あれ?ご存知ありません?彼女は意図的に人並みに見せているだけですよ。」
文武両道は何となく理解していた。だが色の部分ってどうやって変えるんだ?
「女性の容姿なんて化粧で如何様にもできますよ。睫毛を短く切ったり眉毛を変えたりするだけでも全く違います。他には髪型やふいんきでも。」
ふいんき、何故か変換できない。
「まあそれは別として。」
古泉が真に迫った表情になる。
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67:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/03/20(金) 23:23:18.74 ID:t0KdBkZP0
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「どう切り出していいか、どう説明していけばいいか難しいのですが、話しているうちにだんだん話がまとまっていくと思います。」
そう回りくどい前提をし、
「涼宮さんは普通の人間ではありません。」
出てきた言葉はこれだ。
知ってるよ。今の話だけでも普通じゃないしな。
本人は否定するだろうが。
「変わった人というような一般的な視点では説明できないレベルで特別な人間です。」
じゃあなんだ?
「単刀直入に言いますと、涼宮さんは普通というものに異常な執着を持っていますよね。そして、彼女はその思想を具現化した能力を持っています。」
言っている意味が分からない。
「彼女が許容したものや意識していないものだけがこの世に存在することを許され、彼女に拒絶されたものはこの世界から過去の履歴ごと消去されます。」
「突然で分けが分からないと思いますが、彼女はこの世界の有り様を左右することができる、神のような存在なのです。」
宗教の勧誘だったのか?
大して親しくもない、出会って二日目の人間に宗教勧誘は失策だろ。
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68:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/03/20(金) 23:24:50.29 ID:t0KdBkZP0
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あー。。。
思えば、俺はこんな時のためにXファイルを観ていたのだろう。サードまでだけど。
映画の中ではこういう状況にあって、固い頭でノッケから撥ね付ける人間は池沼扱いされるわけだ。
つーか疑ってあれこれ考えるのめんどくさい。
信じる前提で話を聴こう。
疑うのは後にしよう。
「えーっと、何かその能力を証明できるものはないのか?そうじゃないと当然だが納得できないぞ。」
「もっともなのですが、残念なことに何もないのです。
先ほど言いましたように、過去の履歴ごと消去されるため、一度消去されてしまっては失くなったとか確かにあったのにとか、考えることすらできません。」
「ということは別にその能力は俺にもあるって言い張ることもできるわけだ。誰もその能力の存在を証明することもできないし、常識を振りかざす以外は否定することもできないんだからな。」
「そうですね。貴方にもあるのかもしれませんが、無いかもしれない。ですが、涼宮さんにはその能力があるということだけは僕は断言できます。」
何故だ?
「彼女の消去する能力、それを感情の顕れだとすれば、僕には彼女の理性を顕現した能力が与えられているからです。」
いちいち回りくどいな。
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70:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/03/20(金) 23:25:56.13 ID:t0KdBkZP0
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「3年前、ある日僕は何の前触れもなく、自分にある能力が備わったことと、自分が何をするべきかと、誰に与えられたかを知りました。」
「その能力とやらはどういうものなのか、実演してもらいたいのだが。消去に対する理性と言うからには、消去を止めるとか消去されたものを復元する力と言ったところか?」
「話が早くて助かります。その二つで言うと、前者になります。すぐにでもお見せしたいのですが、制限付き能力なのでいつでも使えるというわけではありません。ただ、いずれ機会がありましたら必ずご披露致しますよ。」
またか。
「口だけで突飛な説明をされても困るぞ。使える時期が限定されるというからにはハルヒの能力が行使される時期に限定されるということかなんだろうが、そんな電波話、見てみないことには信じられんぞ。」
真面目に聴いてる俺って偉いねえ。
「本当に話が早くて助かります。ですが、そんなに結論を急ぐ必要もありません。貴方はいずれ嫌でも受け入れなければならなくなるでしょうからね。必ずね。」
「そういうことなら今話す必要もなかっただろう。いずれ済し崩しに理解を迫られるというなら、そうなってからの方がお前も説明し易かっただろうに。」
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71:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/03/20(金) 23:27:06.56 ID:t0KdBkZP0
-
「ごもっともなのですが、その理由は後でお話します。今の話にはとりあえず区切りをつけて、少し話題を変えます。」
「その前に素朴な疑問なのだが、普通に執着を持つハルヒがそんな能力を持つなら世の中はもっと別なものになっていると思うのだが?」
「それは、彼女が普通に執着する一方で、常識と知性を兼ね備え、非常に柔軟性と弾力性に富んだ思考をしていて、世の中の多様性というものに寛容な性格をしているからと考えられます。
多様性がある中でこその普通というものに意味を見いだしているのかもしれません。
また、自身で異常なことに巻き込まれて被害に遭うような経験がなければ全て他人事で終わるが普通の感覚でしょう。
それに普通とは~なんて明確な基準を持っているわけもない。結局は彼女の気分一つ。そういう彼女の性格は貴方も理解しているでしょう。」
大した詭弁だな。
「それに僕たち理性の働きもありますから、そう易々と世界は変わりませんよ。」
まあいいや、次に移ってくれ。
「次の話は貴方についてです。ちなみに貴方はただの人間です。失礼ながら機関で貴方の生い立ちから全て洗わせて頂きました。間違いなくただの人間です。」
まあ当然だ。
それと機関ってなんだ?それとさっき『僕たち』って言ったな。
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72:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/03/20(金) 23:28:23.45 ID:t0KdBkZP0
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「これは失礼しました。機関というのは、僕と同じように、涼宮さんによって能力を得た者とその協力者が集まってできるコミュニティの、一つの方便として出来上がった組織です。
機関は涼宮さんの理性としての組織的な行動と、彼女の監視と研究を主目的に活動しています。」
「細かいことはおいおい聴く。話の腰を折って済まなかったな。で、俺は?」
何て言われるのか興味津々だ。
「貴方は涼宮さんに選ばれたただ一人の人間です。」
なんだそりゃ。
「前振りじゃまだ掴めないが、選ばれたというなら、よくわからん能力を与えられたお前らこそ選ばれたと言えるだろ。」
「僕たちとは全く別のものです。
貴方は彼女にとっての周囲の環境との緩衝剤のようなものと機関では考えています。
貴方を介するから、彼女は変わった人とも、例えばそう、無口で容姿が飛び抜けた長門有希や容姿がアレな朝比奈みくる等とも付き合うことができるのです。
また、貴方が言うことであれば、多少譲らないところがあっても結局は妥協点を見いだしてしまう。覚えはあるでしょう?」
確かに、新しく部を作るなんて話によく乗って来たもんだ。
しかし選ばれたとか言われてもよくわからんな。一般的な友人そのものじゃないか。
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74:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/03/20(金) 23:29:24.89 ID:t0KdBkZP0
-
「それは機関でも理解が進んでいません。
何故貴方が彼女に影響力を持てるのか、はっきり言って謎なんです。
しかし貴方は明らかに涼宮さんにとって特別な存在です。そこで涼宮さんを崇拝する機関が得た結論は、『貴方は選ばれた』というものです。」
一気に疲れてきた。
「そして、貴方の存在の重要性を認識している組織が、機関以外にもいくつかあります。」
もしかして俺は危険な立場なのだろうか。
「そこで先ほどの話に戻ります。僕がまだ交流を持って二日目の貴方にこんな話をするのを急いだのか。」
「ほう」
「近いうちに貴方はそれらの組織からアプローチを受けるでしょう。そしてお願いがあるのですが、その際に僕も同席させて下さい。その為に、貴方に早めのアプローチをしました。」
その前に確認すること、
「お前らの機関にとって、俺はなんだ?」
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75:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/03/20(金) 23:30:49.68 ID:t0KdBkZP0
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「機関は涼宮さんを崇拝する主体性を元に結成されたものです。
派閥もあり、機関の中も一枚岩というわけではありませんが、大なり小なり全ての派閥がその色彩を持ち、彼女を崇める一神教とでも言える状態です。
その神が選んだ貴方をどう認識するかは、やはり派閥で多少の違いはありますが、共通していることは世界のあり方を左右する『鍵』として重要視しているということです。
今は機関の総意として、涼宮さんは僕たちにとっての神であり、神に影響力を行使できる貴方は神に次ぐものとして扱われています。」
疲れてきたのか、頭が考えることを拒否してるわ。
まあこいつらは俺に危害を加えることはないのだろうし、どこからか接触を受けるときに近くに居てくれるなら身の助けにはなるのだろう。
「同席するのは構わないが、一体どういうやつらに接触を受けるんだ?」
「おそらくは長門有希。それと朝比奈みくる。朝比奈みくるは確実です。」
「なっ・・・」
身近過ぎるだろ・・・
でもまああの二人が人外って言われても何故か違和感は無いな。
片方はまんまだし
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76:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/03/20(金) 23:32:07.31 ID:t0KdBkZP0
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「了解した。何かあったらメールでもするわ。」
「理解が早くて助かりますよ。お願いします。」
話を終わらせようとする雰囲気だ。
空気を読んでやるか
「今回はこの辺にしておくか。じゃあまた放課後な。授業遅れるぞ。」
古泉の表情が緩む。
そういうやこいつはずっと強張った顔してたな。
「ええ、また」そう言った古泉は校舎に戻っていった。
まあ、とりあえず俺のやることは決まったな。
疲れたから、寝る。
今の話は忘れよう。とりあえず話は聴いたが、まじめに考えるだけ馬鹿だ。
何か遭ったときに思い出せばいいさ。
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77:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/03/20(金) 23:33:02.42 ID:t0KdBkZP0
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放課後、俺は生徒会室に来ていた。
部の申請をするためにだ。
晴れて5人揃ったしな。
書記らしき人に事情を説明すると、用紙を渡され、各項目を埋めるように指示された。
・・・
これでよしっと。
許可申請の結果は来週になるそうだ。
そうかそうか。
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80:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/03/20(金) 23:36:17.78 ID:t0KdBkZP0
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部室では何かもう本当にみんな好き勝手だ。
ハルヒは何が楽しいのか、小学生用の文字の書き方帳を開いて熱心に練習している。
決して上手いわけでも下手なわけでもない『普通の字』っていう究極がいかなるものか、多少は興味がある。
長門はいつも通り分厚い本を読んでいる。
心なしか読んでいる本が変わっていない気もする。
まあ読むのに時間かかるだろうし、本の厚さだけで興味がうせるからどうでもいい。
朝比奈さんは・・・裁縫に勤しんでいる。
裁縫と言っても、衣類を繕っているわけではなく、ダンボールを加工している。
その針金の先っぽに付いてる丸いものは、もしかしてビットのつもりなんだろうか。
そんな嬉しそうに手入れしなくても・・・
この人はデートとの時とか「おめかししちゃいました」とか言ってキュベレイとか着てきそうだ。
シュールな光景にニヤニヤしていると、同じくニヤニヤしているハルヒと目が合うこと多々。
古泉は早速ボードゲームやDSやPSP等を持ってきていた。
容姿からは想像し難いが根暗なんだろうか。
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81:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/03/20(金) 23:38:11.58 ID:t0KdBkZP0
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何の変哲もない日々が続き、一週間が経った。
今日は珍しく俺と古泉だけだ。他の3人は掃除当番かな?
いつも通り二人でボードゲームを始める。
部室には色んなものが増え、最初は広いと感じていた部室もだんだん狭さを感じるようになっていた。
一番場所を取っているのは朝比奈さんのダンボールだ。
部屋の隅に置かれた大き目のハンガーラックには、配色まで済ませたダンボールが所狭しと掛けられている。
なんか和む。
「なんかこういうのっていいよな」
率直な感想だった。
「何がです?」
「いや、自分の好きなものを学校の教室に持ち寄って、自分たちの空間を作る。まるで自分の部屋がもう一つ学校にできたみたいじゃないか。他の部ではこうもいかないだろ。」
「それは言えますね。僕にとっても今となっては学校で一番落ち着く場所ですよ。」
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83:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/03/20(金) 23:40:21.71 ID:t0KdBkZP0
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「最近、将来研究者って職業っていいなって思えるんだよな。
大学教授とかさ、大学内にもう一つ自分の部屋ができてさ、雑務や競争はあっても、自分の部屋引き篭もって好き勝手自分のやりたいことやってれば金貰えるんだろ。
夢いっぱいじゃないか。まあそんな頭も興味あることもないけど。」
「気持ちはわかりますが、研究者って大変ですよ。
機関でそういう職業の人とも関わることもあるのですけど、ああいう仕事するには異常性癖を持たなくちゃいけないみたいですし。」
機関って・・・?そういやそんな話あったわな。。
まあいいや。それより異常性癖ってなんだw
「そうなのか?」
「例として知り合いの数学者ですが、黒板にわけのわからない数式書いて『古泉君、わかるか?こんな複雑が事象がたったこれだけの簡単な数式で表現されるんだ・・・』『美しい・・・』とかうっとりするんですよ?」
「それはちょっと引くわ。もう数式愛してる感じじゃん」
「そうなんだよ!」
最近わかったことだが、こいつはテンションが上がると口調が変わる。
「自分でも数式を愛してるって言ってんだよwwあいつら絶対家で専門書とか数式見ながらおなにんしてんだよwww『ああっ!こんなところにxが!!』とか言いながらちんこ擦ってんだぜ?wwまじきめーってww」
それは想像したくねーwwwww
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84:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/03/20(金) 23:42:40.55 ID:t0KdBkZP0
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「しかもさ、
『私が今の定職についたのは30後半だったが、数学さえあれば生きていけると思っていたから耐えられた』
とか言ってんの。それまでは非常勤で食い繋いでたんだったさ。まじ気違いwwww」
「すげー納得してきたww 土木工学の人間とかコンクリートにちんこ擦り付けてそうだなwwwwww」
「俺、物理結構好きだからさ、自分に適正あるか前に物理の教科書でおなにんしてみたのよ。」
「どうだった?」
「まじ無理wwwwwまずちんこ勃たたねえしwww俺研究者諦めたわwwww」
「俺も今度日本史の資料でしてみっかなwww 布都御魂剣の写真でおっきさせてみるわww まあ無理だろうけどwwww」
他愛もない会話。
こういう日々いいな。
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85:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/03/20(金) 23:43:38.66 ID:t0KdBkZP0
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「ちなみに」
おっ、テンションが戻ったようだな。
「僕はオナニーのことは大人の余裕を見せ付けるために『おなにん』と愛称で呼びます。」
すげーどうでもいいんだけど。
「それと」
まだどうでもいい話が続くのか?
「何かアプローチは受けてませんか?」
脈絡が無くて一瞬戸惑ったが、あー確かそういう話あったな。
すっかり忘れてた。
「いや、まったくないが。」
やっぱいこいつの電波話だったんだろうな。
「おかしいですね・・・」
お前がな。
・・・
-
87:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/03/20(金) 23:45:24.30 ID:t0KdBkZP0
-
・・・
さて、ぼちぼち人が集まる頃だな。
長門は入るなり自分の定位置についていつも通り本を読み始める。
気づいたが、やはりここしばらく同じ本を読んでいるようだ。
前に面白いかと訊いたら「分からない」とのことだったが、ほんと無理して読まなくてもいいのにと思う。
そして
「今日は何のモビルスーツにしようかなっ♪」
ルンルン気分でサイヤ人もびっくりの極上人間兵器の登場だ。
この人は結婚式には大奮発してドゴスギアとか用意してきそうだな。
ハルヒも部室に入ってきて、無言で古泉のDSを借りて常識力やら脳トレやらをプレイし始める。ここ毎日これだ。
何でも自分と同じ年齢が出ないことに腹を立てているようだが、残念なことにそのゲームでは20歳未満は出ないんだぜ?ばーか。
まあ、授業が終わって、部室で好きなことやって、って何の変哲もない今の日々をこいつも楽しんでくれているのだろうから部長としては嬉しいもんだ。
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88:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/03/20(金) 23:47:00.25 ID:t0KdBkZP0
-
コンコンとドアのノック音がなる。
なんだお客さんか?
「は~い、ど~ぞ~」
ジムにジョブチェンジした朝比奈さんが接客体勢に入る。
シュールな光景にニヤニヤするとまたハルヒと目が合う。
こいつとは笑いの焦点が似ている。
お客さんは、生徒会の先日受付をしてくれた人だった。
用件は申請が通ったということで、許可証を持ってきてくれたそうだ。
「一体どんな何部として申請したの?」
大人しく話を聞いていたハルヒが、お客さんが帰ると楽しそうに聞いてくる。
「部名はSOS団だ」
みんな困惑の表情を浮かべた。
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89:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/03/20(金) 23:49:12.16 ID:t0KdBkZP0
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「SOSはSave Our Societyの略称だ。
表向きの活動内容は、SOSを求める社会にこの身を呈して奉仕する団体ってとこだな。まあボランティア団体だと思ってくれ。」
みんな目が点になる。
「ばっかじゃないの!?」
「なんでそんな目立つ名前にしたのよ!」
「その名前じゃあ私たちが救助を求めてるみたいじゃない!」
「第一そんな面倒なこと私はやりたくないわよ!」
「何で相談しないのよ!」
ハルヒが捲し立てる。
いや、だって、いい人ぶった方が先々での面接でも印象いいしさ、
自分で部を作ったって主体性と積極性とリーダーシップを面接でアピールするのにも、インパクトの強い名称にした方がいいだろ。
相談しなかったのは反対されるのが目に見えていたからだ。当然。
と心の中で応えながらも、実際は無言で応える。
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90:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/03/20(金) 23:50:35.37 ID:t0KdBkZP0
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「小泉君もみくるちゃんも何か言ってやって」
ハルヒが腕を振って促す。
「何故『団』なんですか?それと僕もバイトがあるのでわざわざ無償のタダ働きはしたくないですね。』
「私はESSとかもあるくらいだし、そんなに変じゃないと思いますけどぉ。それにボランティアは腕が鳴ります~」
ボランティアと来たら語呂的にボランティア団体だろ。部じゃない
それに、団は何となくなんだが、部より格調ある気がしないか?
それと朝比奈さん、ここでビームサーベルを握りしめるのは台詞と乖離していますよ。
「まあ聴け」
すぅ・・・
鼻で息を溜める。
分かってるってことよハルヒさん。
ハルヒを説得するためにまとめて来たことを頭に浮かべる。
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93:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/03/20(金) 23:55:53.44 ID:t0KdBkZP0
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「新しく申請するためには他に同じ部がないことが条件だし、認めて貰い易いものにする必要があるだろ。
それで考えるとボランティアってのは実に通り易んだ。外聞がいいからな。
成立条件として、生徒会からは最低月一回の奉仕活動日誌を書くことを提示されていたが、これは俺がてきとーに書く。
活動の体裁としては、たまにみんなで街で遊ぼうぜ。ゴミ拾い活動とかてきとーに銘打ってさ。
てきとーに街歩いて買物したり、カラオケ行ったりさ。それと、時期限定イベントにも参加しよう。
夏祭りとか花見とかみんなで遊びに行ってさ、それをゴミ拾いとかてきとーに言ってしまえばいいんだよ。
それ以外は何も変わらず部室でぐだぐだしようぜ。」
息が切れた。
情けない。
「これでボランティア活動を高校時代3年間継続してやってましたなんて言えるのは、大学入試面接でも就職面接でもかなり使えるぜ?
実体験を伴った説明をできるように、一度くらい真面目に活動した方がいいかもしれないが、それは将来就職面接に備えてもいずれはやっておいた方がいいことだ。
今やってしまっても別にいいだろ。
つまりお前らは、普段は部室で好き勝手やって、たまに休日にみんなで遊びに行く。
それだけで将来有力なカードを手に入れられて、部として認められて部費も貰える。悪い話じゃないだろ。
名前については、、、すまん!謝る!相談しないで決めてしまってすまんこ!」
-
95:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/03/20(金) 23:57:21.20 ID:t0KdBkZP0
-
俺は手を合わせながら謝罪のポーズを取った。
「わたしは別にいい」
一番意外なやつが先陣を切ってくれた。
「まあ、そんなに言うなら仕方ないわね。黒幕としては悔しいけど。」
えらく不機嫌だが、こいつが納得してくれれば後は無問題だ。
「みんなで遊びに行こうなんて、楽しみになってきますね。」
「わああ何か楽しみです~」
こうしていつもの部室に雰囲気が戻っていく。
まあよかった。
-
97:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/03/20(金) 23:58:32.89 ID:t0KdBkZP0
-
「あーもう!今日も同じ年齢出せなかったわ!!このゲームおかしいんじゃないの!?」
こいつのちょっとした苛立ちも含めて、今日も平和に一日が終わった。
古泉は携帯を操作しながらバイトがあると言い残し、そそくさと帰っていった。何のバイトだろうな。
割がよさそうなら俺も紹介してもらおう。なんて考えながら団員を見送る。
俺は最後まで団員達が部屋を出て行くのを確認し、鍵を掛けて帰るのが日課だった。
さて、帰るか。
「本、読んだ?」
ぬおっ?
部室の鍵を掛けると、後ろから長門が不意に声を掛けてきた。
気配があまり無いからいちいちびっくりする。
ん?本?
「先週貸した本」
覚えてない・・・あの失われた放課後に借りたのか?
くそ。バッグの中にあってくれ・・・ここに無ければもう心当たりがない・・・
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99:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/03/21(土) 00:01:17.85 ID:ORxzLhvV0
-
・・・
嗚呼、よかった。
「すまん。まだ読んでないんだ」
「読んで。帰ったらすぐに」
「すまなかったな。帰ったら読むよ。」
そう言ってそれぞれ帰途に付いた。
『大造じいさんとガン』
何だっけこれ。
小学校の国語の教科書に載ってたっけ・・・?
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103:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/03/21(土) 00:05:12.75 ID:ORxzLhvV0
-
なんだこれ・・・
俺は家に帰るなり長門から借りた本を開いた。
漢字にいちいち手書きで振仮名が入っている。
しかも所々に手書きで注が付けられている。漢字や言葉の意味ようだ。
馬鹿にされている気がして読む気がしない。
でも懐かしいな。
絶対クラスで一人くらいは「大造じいさんは癌」とか言って笑い取ろうとするやついるよな。
しっかし、なんでこんなものを・・・
てきとーにぺらぺら捲る。
おっと
何かが落ちる。
しおり・・・画用紙無造作に切っただけのものだ。
そしてメッセージ付き
『午後八時。光揚園駅前公園で待つ』
揚じゃなくて陽だろ・・・
一週間前のメッセージなら今更感溢れるが、今日改めて指示してきたからには今日はここに居るのだろう。
さて、これがどういう意図なのかわからんが、古泉に連絡しよう。
せっかく長門からの呼び出しなんて幸せいっぱいな場面だが約束は約束だ。
「長門に呼び出された」と、待ち合わせ場所と時間を併記してメールを送る。
バイト中だろうが、まあ来れなくても別にいいし。とりあえず義理は果たしたさ。
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105:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/03/21(土) 00:07:05.70 ID:ORxzLhvV0
-
あーそう言えば、あいつの話だと朝比奈さんからも接触があるって話だったな。
別にあいつの言うことを信じるというわけでもないが、現にこうして長門に呼び出されているし、
朝比奈さんからも呼び出されるってのも、もしかしたら高い可能性があるのかもしれない。
つーかどうせ呼び出されるなら、俺としては別々に呼び出されるのは時間の無駄だ。
一緒に纏めてしまってもいいんじゃないかな。
『何回も呼ばれるの面倒だし朝比奈さんも呼んでいいか?まとめて話をしてもらった方が助かるんだが』
まだ返事は着ていないが古泉に再度送信する。
俺はこないかもしれない返事が来るまでの間、居間に行ってぱっぱと飯を食べる。
「早食いは太るんだよ~」
はいはい。俺は別に平均にこだわらないから少しくらい太っても気にしないんだよ。
部屋に戻ると着信が入っていた。
『長門さん次第ですが、おそらく問題ないでしょう。朝比奈さんには僕から連絡しておきます。』
ふーん。バイトはもう終わったのか。
-
106:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/03/21(土) 00:13:04.40 ID:ORxzLhvV0
-
俺は早々と家を出た。
長門もし早めに来て待っているようなら、一週間栞に気付かなかったことへの謝罪と、古泉と朝比奈さんの同席についての謝罪をしておきたかったからだ。
居た。ベンチと一体化しているようで、気づかず通り過ぎてしまうところだった。
「もしかして一週間こうしてたのか?」
黙って頷く。
うっわ・・・若干引くわ・・・
「ごめんな。あんまり本って好きじゃなくてさ。ほんとごめん。」
「いい。」
「それともう一つ謝ることがあるんだが、古泉と朝比奈さんも一緒でいいか?もうすぐ来るはずなんだ」
ちょこっと沈黙
「別にいい」
まだこいつとのコミュニケーションは上手く取れない。
-
111:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/03/21(土) 00:18:01.55 ID:ORxzLhvV0
-
「もしかして学校の帰り道、毎日こうして居たのか?」
「そう」
・・・
「そうか・・・」
開いた口が塞がらない。
「今度からな、何か用件があるときは直接言えな?
それと番号とアドレス教えるから、好きなときに連絡してきていいからな。
頻繁にこういうことあると申し訳なさ過ぎるからな。」
「ありがとう」
なんだ、ちゃんとそういう意思疎通できるんじゃないか。
その後俺たちは合流して、近くにあるという長門のマンションに向かった。
んで、着いたはいいが、俺たちはマンションの玄関口で立ち惚け中だ。
長門はオートロックの解除操作をしている。
しかし、この立地でこのクオリティのマンション、相当高いんじゃないか?
実はどこかのお嬢様だったのだろうか。
まあ、そんな雰囲気は無いとも言えないしな。
-
118:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/03/21(土) 00:24:20.43 ID:ORxzLhvV0
-
「随分短いバイトだな。小学生の1時間家庭教師でもしているのか?」
待っている間の場繋ぎだ。
「いえいえ、今日は簡単な仕事だったので僕が出る必要はないということで、すぐに帰してもらいました。」
そうかい。
ところで、古泉の事情は分かるが、朝比奈さんは何で制服のままなんだ。
「帰り道用事があって、まだ家に帰っていないんですぅ」
そうですか。
ところで何でみんな重そうな雰囲気なんだ?
そんなピリピリするな。話辛いじゃないか。
はぁ・・・
「長門、まだ開かないのか?」
溜息を付きながら長門の横に立つ。
心無しか、少し悔しそうな表情をしているように見える。
長門はバッグの中からメモ帳を取り出した。どうやら解除キーを確認しているようだ。
物忘れが激しい娘なのかな。
古泉の話によると、長門も異能な存在らしいが、そんな雰囲気はもう完全に消えたわ。
-
128: ◆IKATON/.1Q :2009/03/21(土) 00:35:00.64 ID:ORxzLhvV0
-
で、やっと長門の部屋に到着したわけだが、これがまたなんとも広い部屋だ。
玄関を見る限り一人暮らしのようだが、こんな広い部屋に住む必要はあるのだろうか。
そして、通された部屋は、らしいと言えばらしいが女子高生としては意外過ぎる部屋だ。
何もない。
見回しても見事に必要最低限のものだけだ。
部屋の真ん中にある正方形のテーブルの上に国語辞典と漢和辞典、知恵蔵なんてのもある。それとシャープペン。
他は一切何も使われていないかのように思えるほど生活感がない。
俺たちはテーブルの3面を使って座布団に座る。
みんな無言だ。
無言の中。
長門がお茶を持ってきて空いている面に座る。
そしてやはり無言。
何なんだこいつらは。居心地が悪すぎる。
俺が悪いのか?長門に対しては申し訳ないと思っているが、古泉と朝比奈さんには何も負い目はない。
朝比奈さんを呼び出した形にはなっているが、古泉の誘いに乗ってきたということは、
やはり俺に用事があるからと思っていいだろうし、長門にしても俺を呼び出しているのには変わりはない。
一番気を使われなきゃならないのは俺じゃないのか?
-
129: ◆IKATON/.1Q :2009/03/21(土) 00:38:20.78 ID:ORxzLhvV0
-
俺の苛立ちを感じ取ったのか、古泉が口を開く。
「おそらく僕も朝比奈さんも長門さんも彼に何らかの伝えることがあるはずです。
そして、僕たち4人は協調関係をもたなければならない状況であるはずですし、せっかくですのでこの場で一気に全てをこなしてしまおうというのが、彼の意思です。」
古泉も雰囲気に参っているのか、話し方も内容もたどたどしい。
ていうか一気にまとめてってのは確かに俺の意思だったが、協調関係って何のことだ。
「ちなみに、涼宮さんについては、僕の方から簡単に説明済みです。」
古泉の最後の言葉で、俺の気は少し沈む。
やっぱりこの話なんだろうか・・・
はあ・・・
「じょーほーの伝達に齟齬がはっせーするかもしれない。」
ん?
突然長門が単発の言葉ではなく長文で口を開く。
つーか台詞が棒読みじゃないか?目線も天井向いてるし。
-
132: ◆IKATON/.1Q :2009/03/21(土) 00:47:26.52 ID:ORxzLhvV0
-
「私は―」
長門が続ける。
初めて聞く一人称だな。
「私は、この銀河をとーかつするじょーほーとーごー思念体によって造られた対ゆーき・・・」
意味不明のことを言い出したかと思ったら、止まる。
それと棒読み過ぎる。
つーか銀河を統括って、やっぱり古泉の言っていたように電波話なんだな・・・
この期に及んで、俺は多少の期待をしていたのだ。
特になんでもない、日常会話が始まるのを。。。
長門は、ポケットをまさぐり、一枚の紙を取り出した。
そしてそれを見ながら言い直した。
「この銀河を統括する情報統合思念体によって造られた対有機生命体コンタクト用ヒューマノイド・インターフェース。」
何ですかそれ。
今度は滑らかな言い方だな。
つーかその紙はカンペなわけ?
正直反応に困るわ。古泉と朝比奈さんも驚いている様子だ。
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134: ◆IKATON/.1Q :2009/03/21(土) 00:52:50.56 ID:ORxzLhvV0
-
「端的な言葉に集約すると、宇宙人。」
「私の仕事は涼宮ハルヒの観察と保全、そして入手した情報を分析し、統合思念体に報告すること」
「……」
「産み出されてから2年間、わたしはずっとそうやって過ごしてきた。
でも、最近になって無視出来ないイレギュラー因子が涼宮ハルヒの周囲に現れた」
「……」
「それが、あなた」
えーっとだな、どこから訊いていけばいいんだろう。
誰かなんか言えよおい。
と思って古泉と朝比奈さんに目を向けても、二人とも静観の構えだ。
二人とも多少の事情は把握しているのだろうか。
んーと、俺がイレギュラーとか言うのは、古泉が似たようなこと言っていたから、それを念頭に置いておけばいいのかな。
-
136: ◆IKATON/.1Q :2009/03/21(土) 01:01:56.65 ID:ORxzLhvV0
-
「その統合思念体ってのは何なんだ?」
情報統合思念体
それは最初から情報として生まれ、地球人類に限らない全宇宙の知的生命体の総合知を構成部分に含む情報生命体。
当初は総合知に過ぎない存在であったが、自身に寄る観察と思索により情報を増大させることで飛躍的な進化遂げ、その知性は既にどの知的生命体をも軽く凌ぐ。
しかし、宇宙を構成する全てを理解するにはまだまだ観察と知識が足りない。
というわけだが、
理解不能理解不能理解不能理解不能理解不能・・・
「例えるなら、宇宙版ウィキペディア」
あ、理解可能。
なるほど、人類の知識の結集を目指すウィキペディアの宇宙版が、一人歩きを始めて進化しましたと。
噛まずに、止まらずに、滑らかに言えたってことは、今の質問は予測済みなのか。素晴らしいカンペだな。それ
-
137: ◆IKATON/.1Q :2009/03/21(土) 01:07:49.02 ID:ORxzLhvV0
-
「で、お前は何?」
「情報生命体は有機生命体と直接的にコミュニケートできない。言語を持たないから。
人間は言葉を抜きにして概念を伝達する術を持たない。だから情報統合思念体はわたしのような人間用のインターフェースを作った。
統合思念体はわたしを通して人間とコンタクト出来る」
言語を持たずに思考するって俺にはよくわからないな。
「んで、そのすっごい頭がよくてグレートな存在の統合思念体が、何でハルヒごときの観察をする必要があるんだ?
話がでっかい割には、やってることが人間的というか、みみっちいよな。」
皮肉を込めるが長門は動じない。
「3年前、全宇宙において、微細な情報の不確実性の発生と増大が継続的に起こっていることを観測した。
統合思念体は長い間不確実性に深い興味を持ち、観察と思索を続けていた。
不確実性の発生は常にどこでも発生しているものであり、特別珍しいことではなかった。」
-
140: ◆IKATON/.1Q :2009/03/21(土) 01:16:22.72 ID:ORxzLhvV0
-
「しかし、3年前に観測したその不確実性は過去に発生したどの不確実性によるアナロジーも許さず、非常に特異なものであることがわかった。
統合思念体はその解析に全力を注ぎ、地球時間で言うところの一年を用いた結果、
その特異な不確実性の増大は地球という惑星表面より継続的に発生し、増大していることを突き止めた。
そして、その中心に居たのが涼宮ハルヒ。」
「通常、統合思念体にとっての不確実性は情報の創発過程と創発を指す。
しかし涼宮ハルヒによるそれの性質は全く逆のものをもっていた。
そこで、統合思念体は涼宮ハルヒが情報を消去しているのではないかという推論に達した。
「しかし、何が消去されているのかは分析ができなかった。
統合思念体は、涼宮ハルヒはその情報を過去の履歴ごと消去しているのではないか、特異な不確実性は履歴の消去によるものではないかと推測した。
情報は増大を続けるものであるため、本来それはあり得ないこと。
事象の消滅により情報が消失することはあっても、履歴ごと消失するということはあり得ない。」
あり得ないとか言われてもよくわからないし、不確実性とか何のことだかわからないし、わからないことだらけなんだが。
それとな長門、お前は俺の質問に滞ることなく応えているが、それはあくまでカンペのお陰だ。
得意そうな顔(に見える)をするな。
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142: ◆IKATON/.1Q :2009/03/21(土) 01:18:46.21 ID:ORxzLhvV0
-
「なぜなら時間とは不可逆。
決定論的な宇宙観はどの知的生命体も究極の理想として妄信したが、全てを決定論的に理解しようとするのはただの夢想。
既に統合思念体は自らの足で歩み始めた時に自らの手でその夢想を捨てた。
それと同時に統合思念体は無力さを改めて認識し、不確実性の観察と思索に入った。」
朝比奈さんの空気が変化するのを感じた。
そして俺は相変わらず理解が追いつかない。
古泉は理解できているのか何なのかわからないが、思案に耽っている様子だ。
それで何だっけ?何でハルヒを観測するのかだっけか。
「涼宮ハルヒの能力は、履歴ごと消去を行うのにも関わらず、微細な不確実性を発生させる以外は現在を消去前と同じ現在に収斂させる異常な能力。
それは時間が非対称性を持つ以上不可能なはず。」
「他の見方をすると、履歴ごと消去をした上で、現在を対象が消去されただけの変化に止めるのは、
新たに創造される世界を無意識下であっても選択することすら可能なことと同義。」
ハルヒが消したいものを消して、それで新しい今ができることと、新しい今を選択するって同じ意味なんじゃねーの?
何が違うのかわけがわからん。
「もし、涼宮ハルヒの能力を解析することができれば、新たな科学理論を構築することが可能かもしれない。
それは人類が渇望し、かつては統合思念体も渇望した理想を体現すること。」
悪いが俺は渇望してないし微塵にも興味ない。
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143: ◆IKATON/.1Q :2009/03/21(土) 01:21:32.66 ID:ORxzLhvV0
-
「また、この観測は統合思念体の分析対象であった不確実性の最たる例、有機生命体の精神性についても解析する機会にもなる。」
今のはわかった。
とりあえずハルヒの能力は統合思念体より凄いから学びたくて、それを学ぼうとすれば一緒に人間の気持ちとか意味不明のものも解析できて一石二鳥だって話ね。
「それで私が生み出された。」
言い終えた、、、のか?
「長門、訊きたいことがある。」
「何」
「お前、自分で言ってること理解できているか?」
・・・間・・・
「あまり」
何てこと言いやがる。
自分で分かっていないことをぺらぺらと説明するんじゃないぞこら。
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145: ◆IKATON/.1Q :2009/03/21(土) 01:24:12.63 ID:ORxzLhvV0
-
「あー。。お前等は話に付いていけているのか?俺はさっぱりだぞ。」
「ええ。大体は。と言っても、何となくですが。後で僕からも出来うる限りの説明をしますよ。」
お前ほんとに高校一年か。
「涼宮さん絡みで機関で講習会がよく開かれるんですよ。」
そーかい。
朝比奈さんはぼんやり考え事をしているようだ。
「長門さん、僕からも質問があります。」
「何」
「あなた方には、情報改変・操作能力があると聞いているのですが、本当に可能なのでしょうか?」
情報改変?なんだそりゃ。
-
147: ◆IKATON/.1Q :2009/03/21(土) 01:30:04.49 ID:ORxzLhvV0
-
「今、世界を構成している情報の内容を好きなように書き換えるということです。
世界の設計図を書き換えると考えてくれればいいのではないかと思います。」
へー。
いきなり俺が別の人間になったりとか、そういうことか。
便利過ぎる能力だな。
「可のー」
それくらいは棒読みじゃない口調で応えろよ。
つーかまじか。
そんなことできるならハルヒとかどうでもいいんじゃねーのか。
「ではちょっと聞いてみたいのですが、毎日記憶喪失になるってできますか?」
「何故?」
「実はさ、毎日記憶喪失になるってのは僕の夢の一つなんです。
毎日記憶を無くして、毎日初めてオナニーしたときのあの感動を味わう。
毎日好きな映画を観て毎日新鮮な驚きを味わって生きるんです。どうだ楽しい未来図でしょう?
または、面倒なこと全部忘れて、猫に『社長』って名前付けて死ぬまで家畜のように尽くしたいんです。」
こwwいwずwwみw
古泉のターンの予感
-
148: ◆IKATON/.1Q :2009/03/21(土) 01:31:44.08 ID:ORxzLhvV0
-
お前はマジでいいやつだ。
「すっごい気持ち分かるwwww毎日初オナニーww想像したらテンション上がって来たwwww」
「だろ?wwwwwこんな僕たちを世の中は日々社会の最前線に駆り出そうとするんだよ?
まじで社会鬼畜だよ。あと7年もしたら最前線だよ?どう考えても俺は非戦闘員だってのwww」
「やっぱ一生後方勤務が夢だよなwww」
俺と古泉が共感の橋渡しをしている他所で、
「少し待って」
長門は台所の方にとことこ歩いていった。
あー、テンションぶった切られた。
「なあ古泉?お前あいつのこと元々知ってたのか?」
「ええ、機関で話は聞いていたのですが、まさかあんな馬…可愛らしい性質をお持ちだとは思ってもみませんでした。
もっと超越的な存在かと思っていましたから。今日は直接いろんなことを訊いて、学ぼうと、まあ好奇心だったのですが…」
お前の好奇心は抑えた方がいいな。
それと、うん。俺もあんな阿呆な子だとは思っていなかった。
まさか自分の台詞を全てカンペで済まそうとするとは。
-
149: ◆IKATON/.1Q :2009/03/21(土) 01:32:26.92 ID:ORxzLhvV0
-
「朝比奈さんは知っていたんですか?」
「ほえ?」
どうやらまだぼーっとしてたらしい。さっきの話を聴かれていなかったのは助かる。
一応生物学的には女性だ。軽蔑されたら悲しい
「長門のこと知っていたんですか?」
「ええ、まあ。でもあんな人だとは思ってなかったので意外です。」
俺は知っていた。朝比奈さんは長門には一線引いていたことを。
それは嫌悪というよりは畏怖によるものということを俺は身近で感じ取っていた。
がしかし、今は朝比奈さんからは全くそんな気配がしない。
台所からは「うん」「うん」と小さな声が聞こえてくる。
カンペで済ませられなくなったから誰かに連絡を取っているというところか。
長門が戻ってくる。
心なしか落ち込んでいるように見える。
「できるけど、お勧めできない。」
何故だ(ですか)
反応が被る。
「それではせーぶつとしての義務をまっとー出来ない」
棒読みの回答。
-
150: ◆IKATON/.1Q :2009/03/21(土) 01:33:25.87 ID:ORxzLhvV0
-
「お前なあ、宇宙版ウィキペディアだか何だかしらねーが、そんな屁理屈一辺倒だと人間を理解することはできねーぞ
?今度俺が地球版ウィキペディアで【夢】と【初オナ】について編集しておくからちゃんと学習しとけ。」
俺、急に偉そうになったな。
「僕からも一つ提案です。今度情報思念体の情報源に宇宙版2ちゃんねるを加えておくべきです。」
流石だな古泉。
「わかった。伝える。しかし、お勧めしない理ゆーは他にもある」
それは?
「とーごー思念体はえんえき的な知識とぼー大な観測けー験からなる…
また紙を見ながら話す。
今度はメモ書き程度で文章でのカンペを作れなかったんだな。
「なあ長門」
遮る。
-
153: ◆IKATON/.1Q :2009/03/21(土) 01:40:33.59 ID:ORxzLhvV0
-
「何」
軽くこちらを見る。
「お前の友達?さっきの電話相手をここに呼んだらどうだ?」
いかん。長門は明らかに凹んでいる。
「いや、分からないことは恥ずかしいことじゃないだろ。俺だってお前の話はさっぱりわからない。だからみんなでお前の友達に教えてもらおうぜ」
俺は無意識に右手で長門の頭を撫でる。
なんか兄になった気分だ。
「分かった」
長門はまた台所に行く。
「良い提案ですね。ですが、その友人も宇宙人のはずです。よく受け入れる気になりましたね。危険な存在だったらどうします?」
考えてなかった。
まあ大丈夫だろう。知らないけど。
「今から来る。」
そうか。
-
155: ◆IKATON/.1Q :2009/03/21(土) 01:43:25.55 ID:ORxzLhvV0
-
「なあ長門、その友人もお前と同じ宇宙人で、やっぱり同じ高校なのか?」
「何人か。まゆげはわたしの仲間。」
まゆげって…
呼び鈴がなる、
早過ぎるな。同じ高校っていうか同じマンションでもあったのか。
「こんばんは。」
軽快に部屋まで入ってくる。
みんな警戒してるのか挙動による返事にとどめる。
そして視線は一点集中砲火。あーなるほど、確かにまゆげだ。可愛いが。
しかしどこかで聞いたことある声だな。
俺のそんな表情を読み取ったのか、
「失礼ね。クラス委員を忘れちゃったの?」
あー。んー。えー。
朝倉だっけ?確か
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156: ◆IKATON/.1Q :2009/03/21(土) 01:44:19.82 ID:ORxzLhvV0
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「ちょっとショックだなあ。そんなに私影薄いのかしら。」
「まあいいわ。」そういって朝倉は続ける。
「長門さんやっぱりボロが出ちゃったのね。いくらカンペがあったからって、自分で理解できていない以上、質問されたら困るに決まってるのに。」
「この子ったら、それでも自分一人で対応するんだってきかないんだから。」
朝倉は長門の頭をぐーでぐりぐりしながら言う。
長門は少し恥ずかしそうだ。
何とも微笑ましい光景に見える。姉妹のようだ。
「それで、お勧めできない他の理由だっけ?」
そういやそうだったな。
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158: ◆IKATON/.1Q :2009/03/21(土) 01:46:01.58 ID:ORxzLhvV0
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「上手く日本語で説明するの難しいのよ。世の中には実態を表すのに適した言葉というものは意外と少ないものでね。
分かりづらいかもしれないけど我慢してね。ていうかどこから説明すればいいのかしら…」
「統合思念体は、基本的に擬数的なもので構成されていて―
あっ、これは完全な造語でarithmonomorphism conseptsとでも言うのかしら。数字の1は1でしかなくて、それ以外の何者でもないと言った明確な対象を持った概念を指すの―
それによる演繹的な知性と過去の膨大な観測経験に基づいた経験則した持たないの。
でも実際の宇宙はそれだけで認識しきれるできる単純ななものではないわ。」
「そうね、一般的なところでいう組み合わせによる新たな新奇性もその一つね。
これは日本語としては明確が語彙じゃないから英語の方が分かり易いかしら。novelty by combination。
これはもう人類の科学でも常識よね。例えば水の持つ性質の殆どは水素と酸素の性質をいくら分析したところで演繹することができないっていう。」
結局このノリなのかよ・・・
俺泣いていいかなあ。
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159: ◆IKATON/.1Q :2009/03/21(土) 01:47:41.12 ID:ORxzLhvV0
-
「これは非有機的な分野での古典力学から有機的な町域での社会的な諸形態へと移るに連れて絶えず増大する多様性の程度に応じてどこでも働く原理なの。
地球人類はこれに帰納的な思考による補完を試みているわ。そして演繹的な思考しかもたない統合思念体も人類と同じ。
ただ人類より演繹科学のレベルが飛躍的に高いことと、膨大な観測経験からの帰納も可能というだけなの。」
「今の話は一概には言えないけど基本的に経験すれば学ぶことができるでしょ?でも宇宙にはそれすらも適わない領域が存在するの。
量子の世界もそうだけど、マクロな世界でもそれは日常的に起こっているの。
人類科学で言うとろこの決定論的カオスに伴う不安定性や不可積分性、散逸構造や自己組織化がそれに該当するわ。
それらはどういう創造に帰結するかランダム性を持つの。だから演繹することもできないし、経験則で補うのも限界があるわ。」
「実は宇宙の殆どはこういった非決定的な現象で満ち溢れているの。決定的な現象というのは少ないわ。
もしかしたら存在しないかもしれない。決定的に見えるのはあくまで非決定的な要素が無視できるレベルだからなの。」
えっと、その非決定性とか組合せの性質とかが長門が言っていた不確実性なのかな?
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160: ◆IKATON/.1Q :2009/03/21(土) 01:49:33.77 ID:ORxzLhvV0
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「不確実性の概念はそんな簡単なものではないけど、まあそれでよしとしましょう。
それでね、宇宙はそういった非決定的なもので満たされている以上は、時間的には不可逆なはずなの。
今の人類の力学は、まだ古典力学の時間反転t→-tによって不変という概念を捨てきれないでいるけど、実際はランダム要素が多い以上は反転して不変なんてありえないじゃない。」
何となく、ハルヒの能力の異常性が理解できてきた。
でもちょっと待て、
「なあ、あとどのくらいこの調子の話が続くんだ?」
「えっとね、エントロピーの説明から平衡-非平衡系熱力学の話、それと古典力学から量子論と相対性理論への変異と課題でしょ。一番重要なのは熱力学ね。
時間対称性の話をもっと煮詰めなきゃならないし、理解を深める為に地球人類の哲学の思想対立の歴史も必要だわ。まともに話したら1日かけても終わらないわね。」
身が持たない。
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165: ◆IKATON/.1Q :2009/03/21(土) 01:55:58.15 ID:ORxzLhvV0
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「済まないが、もう端折った話で終わりにしてくれ。
疲れた。もう無理だ。
古泉は残念そうにしている。
後で一人で訊きに行ってくれ。
で、情報改変での記憶操作が何でおすすめできないんだっけ?
仕方ないわね。そういって続ける。
「別に記憶操作に限定しないわ。情報改変という技術自体が想像を絶するリスクを伴うのよ。
全ての現象は履歴に依存した創発を繰り返しているわ。
だからこそ時間は非対称なのだけど、その履歴をねじ切るなんて、何が起こるかわからないわ。過去に遡っての改変なんてものはもってのほかね。
ちょっとした過去の情報の改変で現在のズレはそれこそ指数関数的ってレベルでは済まない可能性があるわ。
それを是正・補う程のほどの情報改変なんてそれは不確実性の壁に遮られて不可能よ。それをやってのける涼宮さんが異常なの。」
また。
朝比奈さんの雰囲気が張りつめるのを感じる。
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168: ◆IKATON/.1Q :2009/03/21(土) 02:00:13.87 ID:ORxzLhvV0
-
「だから、情報改変をする場合は微細なものに限定されるし、統合思念体の綿密な思索の上での合意がないと許可されないわ。」
せっかく近づいた夢が潰えた。
古泉もさぞショックを受けているだろう。
人の夢と書いて儚いと読むって誰がいったんだっけ。考えたやつ天才だな
それで、統合思念体はお前等を作って何をしたいんだ。
俺たちに何をしてほしいんだ。
長門の言う通り観測だけなのか。
「基本的にはそう。でもそこには統合思念体の一種の発想の転換があったの。
観測する為には機材が必要よね?統合思念体は、それを自身という精確無比の機材によって観測してきたの。
でももし、観測対象が不確実性の集積という存在だったら意味をなさない可能性すらあるわ。」
「馬鹿げた比喩だけど、もし人間の物理学者が電子と話をできるなら、『君は次はどこにジャンプするの?なんでジャンプするの?』って尋ねるでしょう。
どんな精確無比な機材が束になっても敵わない観察器具を人間は持っているわ。そこで、統合思念体もその器具を使うことにしたの。」
それが長門か。
珍しく頭が冴えた気がした。
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171: ◆IKATON/.1Q :2009/03/21(土) 02:05:09.43 ID:ORxzLhvV0
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「そう。所謂人間でいう共感能力や私たちには理解できない不確実性に基づいた観察ね。
だから長門さんは私や他の宇宙人さんが持っているような情報操作能力は微細なものしか持たないし、あらゆる機能が人間以下に設定されているの。
肉体もほとんど人間よ。全て人間と同じように成長するようにね。そして早速その成果は出ているわ。
長門さんには感情が芽生えているし、肉体的・精神的な発展と創発も観られるし、その過程に統合思念体は多いに興味を示しているわ。」
「俺にはお前の方が感情豊かに見えるが。」
「それは全くの別物。私のは数千から数万通りの選択肢から検索して実行するというプログラムがされているだけだもの。
私たちの役目は長門さんのバックアップ。貴方達には、ただ暖かい目で長門さんを見守ってほしいの。それだけ。」
明らかに卑下の意味合いが込められているのもプログラムなのだろうか。
組合せの新寄とかそういう説明されたばかりだし。
とは思っても、またわけのわからん話を聴かされては困る。
というわけで自分に見合ったレベルの率直な疑問を口にした。
「ハルヒの観測が目的なら、ハルヒに気に入られる体裁にすればよかったんじゃないか。」
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172: ◆IKATON/.1Q :2009/03/21(土) 02:07:13.80 ID:ORxzLhvV0
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「それもそうなんだけど、あくまで関わらずに観測というのが保守的な統合思念体の考えだったわ。
それに、未知数の彼女の身近に居て統合思念体の存在を察知されるのを恐れたというのが大きいわ。消去の選択肢に入ったら困るから。」
そういや認知されないものは消去されずに存在できるって古泉が言ってたな。
「だから統合思念体の覆した貴方の責任は重いわよ。」
笑顔こわっ
「だから長門さんをよろしくね。」
怖いから無視。
だが長門とはよろしくさせてもらう。
「長門」
「何」
「何でもわからないことは俺等に訊けよ。それと、たくさん話して、遊ぼうな。」
長門の頭をぽんっと叩き、そのままわしゃわしゃと乱暴に撫で回した。
古泉と朝比奈さんの表情を観て、俺と同じ気持ちである確信を持った。
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174: ◆IKATON/.1Q :2009/03/21(土) 02:12:48.61 ID:ORxzLhvV0
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雑記
決定論、時間対称性、時間不可逆性
この辺りの言葉分からなかったらググって下さい。
ただ、あまり穴は見つけないようにして下さい。
自分の中では今のところは整合性は取れてるつもりだけど、
>>1は物理も哲学も専門ではないので、あらぬ突っ込み入ると困ります。
生粋の文系なんで、物理理論で責められると困ります。
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177: ◆IKATON/.1Q :2009/03/21(土) 02:23:31.83 ID:ORxzLhvV0
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「ありがとう。」
嬉しそうだ。これは間違いない。
気づけばもう0時を回っている。
その日、俺たちはみんな疲れていたこともあり、朝比奈さんとの話は後日ということで解散になった。
「良かったら送って差し上げますよ?」
タクシー帰りなんて機関って金持ちだな。
「いやいい。歩きたい。」
俺は疲れてたいたが、気持ちはすっきりしていた。
ほとんど理解できていないし、また聴けと言われたら断るが、なんとなく楽しかった。
古泉が前に言っていた、嫌でも信じざるを得なくなる状況とやらはまだ来てないが、疑う気は全くなかった。
まさかここまで手の込んだ設定を作ってまでドッキリもないだろう。
しかし、これだけ異常な話を聴かされて、それでも平常に楽しいと思える俺は、案外結構大物なんじゃないだろうか。
俺は朝比奈さんの未来話もどんな電波話なのか楽しみにしながら岐路についた。
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187: ◆IKATON/.1Q :2009/03/21(土) 03:00:09.38 ID:ORxzLhvV0
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あれから、別に日々の生活で変わったところはない。
学校に来て、ほとんど寝てすごして、部活でぐだぐだ雑談したりボードゲームをするだけの日々だ。
いつもと何も変わらず平穏な毎日だ。
変わったことと言えば、部室で長門や朝比奈さんとの距離が縮まったことと、教室に居る間、朝倉を見る時間ができたこと。
宇宙人は大人気だ。
いつもクラスの中心に居て、クラスメイトからも先生からも信頼が厚いようだ。
「朝倉って結構可愛いな」
なんて昼休みに言ったら、
「何今更言ってんだ。クラスじゃ間違いなくトップだぜ?」
ふーん。
「何お前まさか狙ってんの?羊が狼に挑むようなもんだぞww」
うん、確かに、速攻で殺されると思う。
触らぬ神になんとやら。
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189: ◆IKATON/.1Q :2009/03/21(土) 03:19:22.92 ID:ORxzLhvV0
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授業中にシャープペンで背中を突かれ、後ろからわけのわからない話題を振られるのも日常だ。
「あんた知ってる?生物の中には、雄雌の構成比が崩れると自発的に性転換する種がいるらしいわ。人類も
そうありたいものね。」
「へーそうかい。」
「そういえばこのクラス、男子の数がちょっと多いわね。あんた明日から女装しなさい。何ならちょん切って構わないわ。」
「なっ!?」
大きめの声を出してしまった。
「おいそこ。仲が良いのはいいが、休み時間にしろ。」
黙りこくったハルヒから丸められた紙が俺の机に投げ込まれる。
『あんたのせいで目立っちゃったじゃない。』
とのこと。
それは俺の台詞だハルヒ。
やれやれ。席替えはいつだ。
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194: ◆IKATON/.1Q :2009/03/21(土) 03:47:40.77 ID:ORxzLhvV0
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放課後、掃除当番を終えて部室に行くと、部室に入る前からハルヒの馬鹿笑いが聞こえて来た。
あいつがこんだけ笑うんだ。俺にとっても面白いことなんだろうな。
期待に胸と股間を膨らませて部室に入るや否や、おもっくそ吹いた。
入ると、朝比奈さんが2つの円筒を背面に付けたダンボールを身に纏い、正座状態でもぞもぞ少しずつ前進しながら雑巾掛けをしていたからだ。
「ガンタンク」
俺を視認すると、朝比奈さんはキリっとした表情で一言だけ。
決してモビルスーツの出来損ないなんかではない。完成された機体がそこには在った。
ハルヒは腹を抑えながら指を差して爆笑している。
もう駄目だ。俺とハルヒは今日ここで笑い死ぬ運命なんだろう。
結果から言うと、俺は死ななかった。
この死線をくぐり抜けて生き残った。
ハルヒも生き残っている。
俺たちは生還した喜びを分かち合った。この日は一生忘れないだろう。
嗚呼、朝比奈さん素敵過ぎるな。
朝比奈さんの掃除が終わり、二速歩呼応する色違いのガンキャノンに成り下がった頃、古泉が来た。
もう15分程でも早く着てたらお前もこの喜びを共有できたのにな。
惜しかったな。
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199: ◆IKATON/.1Q :2009/03/21(土) 04:13:00.40 ID:ORxzLhvV0
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5人揃ったところで思い出した。
そうだった、今日は一つ提案があったんだ
「なあ、お前等にとっては不本意だろうが、明日の土曜日、SOS団として初のボランティア活動に行かないか?」
「あんた言葉に出してて恥ずかしくない?」
口調とは合わない、非常に上機嫌な表情だ。
「まあ五人で集まって、あとは一日てきとーにぶらぶらしようや。俺がそれを活動日誌に脚色して書いておくからさ。」
「まあいいわ。」
笑いすぎでまだ少し涙目のようだな。
「お前等は何か用事あるか?強制じゃないから用事あるなら言ってくれ。」
「楽しみですねえ。お弁当作っていきましょうか~」
街を歩くのに邪魔ですしいいですよ朝比奈さん。
他の反応を求めるが、特に拒否するような反応は無し。
「じゃあ全員参加でいいな。今度土曜の朝九時に駅前集合で。」
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200: ◆IKATON/.1Q :2009/03/21(土) 04:20:19.95 ID:ORxzLhvV0
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土曜日の朝は、誰も遅刻すること無く、普通に集合した。
まあ完全な無計画だったわけで、そのことをハルヒに怒られながら、今は近くの喫茶店で今日の予定を立てることにした。
「それにしても、あんたリーダー失格よね。」
俺としては無計画にぶらつくのが計画だったんだけどな。
「女性3人を相手にその発想は屑ね。」
ごめんなさい。
ところで、今日の朝比奈さんは全身真っ黒の服装だ。
そのガタイで、まるで世界から拒絶されたかのような漆黒を身に纏うのは、どうみてもサイコガンダムだ。
長門は平日と変わらぬ制服姿だ。
まだきっとお洒落とか分からないんだろうか。
後でみんなで服を選びにいくのも楽しそうだな。
ついでに言うとハルヒは、、、まあ普通だな。
最近、それを正直言うと可愛く感じている。
古泉の『実は美人』的発言がフィルターになっているのだろうか。
別に古泉はいいよな。
はいはいイケメンイケメン。
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201: ◆IKATON/.1Q :2009/03/21(土) 04:22:04.88 ID:ORxzLhvV0
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自虐モードに入った辺りで、ハルヒが不意に提案する。
「5人でぞろぞろ歩くのは目立つし、周囲の人にも迷惑だと思うわ。3・2で二手に別れましょうよ。
昼にまたここに集まって、メンバー替えするの。どう?っていうかそうしましょう。」
異論は無かった。
ハルヒは何本かの爪楊枝の先っぽに色をつけてみんなの前に差し出した。
結果は、
俺・サイコガンダム
ハルヒ・長門・古泉
このペアに決まった。
じゃあ行きますか。
「はい」
素直についてくる。ためらいがちに俺と並び、なにかの拍子に肩が触れ合ったりすると慌てて離れる仕草がおどろおどろしい。
俺たちは近くを流れている川の河川敷を意味もなく北上しながら歩いていた。
散策にうってつけの川沿いなので、家族連れやカップルとところどころですれ違う。俺たち二人は周りからはどう見えるのだろうか。恋人だと思われたら正直辛い。ペットと飼主、機体とパイロット辺りが無難だな。
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228: ◆IKATON/.1Q :2009/03/21(土) 10:34:27.00 ID:ORxzLhvV0
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「わたし、こんなふうに出歩くの初めてなんです」
朝比奈さんが呟くように言った。
「こんなふうにとは?」
「……男の人と、二人で……」
俺もサイコガンダムを連れて歩くなんて初めてですよ。
「えー、でも朝比奈さんなら乗せてくれとかしょっちゅう言われるでしょ」
太陽光を拒絶したような機体を見つめながら言った。
俺だってサイコガンダムを自由に操縦してみたい。
「えっ!?」
恥ずかしそうにうつむいた。変な意味に取ったんじゃじゃないだろうな。
「ダメなんです。わたし、誰とも突き合うわけにはいかないの。少なくともこの……」
言いかけて黙る。
何かと思ったら、彼女は決然と言った。
「お話したいことがあります」
そうそう、やっとだね。電波話楽しみにしてるよ。
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232: ◆IKATON/.1Q :2009/03/21(土) 11:11:23.01 ID:ORxzLhvV0
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話を聴くべく、ジュースを買って桜の下のベンチに俺たちは並んで座る。
しかし朝比奈さんはなかなか話し出そうとはしなかった。
「どこから話せばいいのか」とか「わたし話ヘタだから」とか、顔を伏せてブツブツ呟いている。
めんどくせえ。
「未来人、または異世界人なんですかね?」
「え?」
凄く意外そうだ。
「古泉君に訊いたんですか?」
いや、最近の流れと長門宅での反応からのただの勘。
「そうですよね。先日のような話があったら少しは勘づいてもおかしくないですよね。でもちょっと違うんです。未来から来たことには違いはないんですけど、私は普通の人間ではありません。」
あ、一応人間のつもりだったんだ。
「人造人間なんです。」
「そうだったんですか。」
今更驚くことでもない。
「冷静ですね。」
貴女を見ていればそれくらいじゃないと納得できませんよ。
「まあ、最近色々目紛しくて図太くなったのかな」
てきとーに誤摩化す。
「そうですよね。でも、人造人間って言っても、殆どが人間と同じです。元々は人間でしたし、人間としての記憶もあります。」
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233: ◆IKATON/.1Q :2009/03/21(土) 11:33:19.16 ID:ORxzLhvV0
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「近いイメージとしては、ドラゴンボールの人造人間18号を想像してくれればと思います。
彼女が最後に禿と一緒に子供を作ったように、私にも生殖能力は残っています。
時間を遡るにあたっていくつかの能力を付与されただけで、基本的にただの人間です。」
クリリンのことかー!!!
そしてあいつは最後は23239696だぞ!
それと、あれだ。18号ってことは永久機関なのか?
もしかして100%利用でうんこしないとか?
「ちゃんと出ますよ。じゃないと死んじゃいます。」
優しいな。
「いくら科学が発達しても、物理法則を捩じ曲げることはできません。その辺は熱効率が少し高いだけで生身と変わりません。」
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237: ◆IKATON/.1Q :2009/03/21(土) 12:02:20.01 ID:ORxzLhvV0
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「私はいつ、どの時間からここに来たのかは言えません・・・
E缶を飲みながら朝比奈さんは語った。
間違った。ジュース
彼女の時代で、過去の観測をしている内に、過去との繋がりが薄れてきていることが確認された。
過去の履歴を遡って観測するというのは、それはが自分たちが歩んで来た過去であっても、先日長門宅で聴いた時間の不可逆性等のために、観測できるのは違う過去。
しかし、そのようなことは関係なく、どの過去であってもこの時代の観測が困難になり始めた。
そのままでは過去との履歴の繋がりが完全にはがされる可能性があった。
何度も過去の観測を行ううちに(毎回違う過去の世界を観測することになるが)ハルヒによる消去の事実を突き止めることができた。
朝比奈さんの未来の歴史ではハルヒの能力が存在した歴史はおそらくない。
しかし、突如としたハルヒの能力の発現(+場合によってはハルヒの出現)だけはこの時代のどの世界でも観測できる規定事項と確認された。
ハルヒの消した存在の質・量に依存して未来の多様性は多大に変容する。
それを受けて、この世界が歩む可能性の中から朝比奈さんのいる未来に到達する可能性が無くなるかもしれない。
未来での観測により、消去される可能性のあるものをある程度把握することができたが、消去後の世界の選択は結局ランダムであるため、結局どの消去が自分たちの未来への可能性に影響力を持つかは分からない。
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239: ◆IKATON/.1Q :2009/03/21(土) 12:33:54.18 ID:ORxzLhvV0
-
そのため、未来の取った選択肢は、共通する履歴として最低限必要と思われることのみを規定事項として優先させること、
無闇な消去が行われないようにハルヒの精神状態の安定に努めることと、
ハルヒの理性の行使者達に協力すること、ハルヒの平穏かつ真っ直ぐな成長を促すこと。等とのこと。
ちなみに、過去を変えた程度では未来はそのまま何の影響もなく存続する。
しかし、未来への履歴が完全に引き剥がされた場合にはどうなるかはわからない(何も起こらないかもしれないが)
また、過去を観測する意義を考えれば保全のために動くべき。
以上のことから誰かが時間遡行をして、その時間軸上でだけでも未来との繋がりを保全するべきという結論に。
これらは自然現象と判断して放置して過去は過去として保存するべきという保存案⇔積極介入して自分たちへの未来への可能性を強引に繋ぎ止めるべきという未来中心案。の両派の折衷案として生まれた保全案。
そして最後、
時間遡行した場合は、理論的にもう元居た世界には戻れないとのこと。
さらに、頑強な恒常的形質と一般的な人間の能力を越えた活動を要求される可能性があることから、生身の人間としての生を終えている自分が名乗りでた。
多分だいたいこんな感じの話だった。
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240: ◆IKATON/.1Q :2009/03/21(土) 12:48:45.28 ID:ORxzLhvV0
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いかん。思ったより重い。
朝比奈さん、もう戻れないって結構しんどく酷くね?
人造人間とか言っても人間として生きてられる選択肢はあったんだろ?向こうで別れたくない人だって居ただろうに。
言葉が出ない。楽しみにしてたのを憮然として顧みてしまう。
身体を二つに割れば、美人な中の人Verの朝比奈さんが居るのかもとか想像してたのが情けない。
「それで、朝比奈さんは俺に何を求めてるんですか?」
ここで自分のことを訊いてしまうのも情けない。
「大したことは求めません。涼宮さんの傍に居て、彼女の成長に一役かってほしいの。あなたは涼宮さんに選ばれたただ一人の人ですから」
そうすか。そこはみんな言う事は共通なんだな。
もう一つ気になる事。
「俺たち―この世界が今後どうなるかは観測できていないんですよね?」
「未来でできるのは、自分たちのいる世界から履歴を遡るだけ。ただ、私たちの未来が歩んだのとは全く違う世界ですけどね。
でも観測対象になった過去の世界が、その後どういう道を歩かは誰にもわからないの。
対象時間をずらせば、可能性のある世界は観測できるけど、涼宮さんの存在でその辺は全く未知の領域になっているの。」
安心した。
自分は自分の自由意志でだけで選択を繰り返していると思いたい。
自分が何か失敗してもそれは全て自分の器量の範囲内だ。
ハルヒと、古泉と朝比奈さんと長門と、みんなで好き勝手楽しく過ごして、あとはどうなるかなんて知らん。
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243: ◆IKATON/.1Q :2009/03/21(土) 13:03:38.14 ID:ORxzLhvV0
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お昼、元居た喫茶店へと集合になった。完全に遅刻。
3人は既に戻って来ていて、普通に楽しそうに雑談していた。
「おっそいわよ。待たせるなんていい度胸ね。罰として奢りなさい。」
俺一人でお前等3人分はしんどい。
当然朝比奈さんに負担をかけさせる気はない。いちおー女性だし
「僕は要りませんよ。」
「わたしもいい」
長門が『いい』を否定の意味で使ったのは初めてじゃーないだろうか。こういうのも成長なんだろうか。
「私は奢ってもらうわ。」
そこは普通を貫いて、二人の間を取って遠慮してほしい。
まあハルヒ一人くらいなら別にいいか。
「それで?何をしてたの?」
「普通に河原のベンチに座ってお話してましたよ~。」
「他愛もない話だよ。」
俺は付け足すと、古泉が少し残念そうにこちらを見る。
そうだった。こいつと一緒に話を聴く約束だったんだ。
すまん、古泉。
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244: ◆IKATON/.1Q :2009/03/21(土) 13:18:26.56 ID:ORxzLhvV0
-
「やっぱり古泉の分も奢るよ。」
せめてもの償いですよ。
「何あんた。有希を仲間外れにする気?」
あーもう。
「当然長門も。だ」
「大丈夫です。気にしてません。だから奢ってもらわなくても結構ですよ。」
今ので古泉は察してくれたようだ。本当いいやつだ。
そして長門は意外と大食いだ。育ち盛りなのか。俺もだけど。
「じゃあ午後の部、くじ引き始めるわよ!」
くじ引きの結果は
俺、長門
ハルヒ、古泉、朝比奈さん
に決まった。
長門ととか。正直嬉しい。
「解ってる?これデートじゃないのよ。ボランティアなのよ?」
お前、朝比奈さんのときは言わなかったのに長門だと言うのか。。。
「どこか行きたいところあるか?無かったら買物行かないか?」
長門の服選びだ。
-
245: ◆IKATON/.1Q :2009/03/21(土) 13:34:19.00 ID:ORxzLhvV0
-
「図書館」
ん?
「行きたいところ。本がたくさんあるところ。」
いや、希望が出るなんて意外だっただけで図書館を知らないわけじゃないぞ。
「行ったことないのか?」
「ない」
「そうか、学校の図書室よりももっとたくさんの本が置いてあるぞ。行こうか」
長門の希望だ。無碍にはできん。
「お前が読んでる本って自分で選んで買って来てるのか?」
歩きながら尋ねる。
「まゆげがたくさん買ってくれる中から選ぶ。たまにまゆげが指定する。」
まゆげか。確かに眉毛だが、ちょっと可哀想じゃないか?
「いじわるする仕返し。」
まあ可愛いもんだわ。
-
248: ◆IKATON/.1Q :2009/03/21(土) 13:44:59.42 ID:ORxzLhvV0
-
そんで図書館に来たわけだ。
「選んで」
何でお前が読む本を俺が選ぶだ?
「何か読みたい本はないのか?」
「あなたに選んでもらいたい。」
へえへえ。光栄の極みですよ。
さてさて何を選ぼうかな。
人の情緒を描いたものがいいかな。
そういや前に渡された本は「大造じいさんとガン」だったな。ああいうのがいいのかな。
俺は昔の教科書の記憶を掘り起こした。
「ん~。これなんかいいんじゃないか」
『赤い実はじけた』
小学校の先生が、特大のパチンがくる場面をクラスで一番人気のあった子に指名して読ませたのはGJとしか思えなかったな。
将来ああいう空気読める大人になろうと思ったもんだよ。
「ありがとう。」
うん。いつも通り短い答えだったが、受け取る側が感じたことはいつも通りではないね。
-
249: ◆IKATON/.1Q :2009/03/21(土) 13:46:16.35 ID:ORxzLhvV0
-
さてと俺は・・・
最近の出来事に付いていけない自分に足りない頭を補充するか。
何か入門書的なものはないだろうか。何に入門すればいいのかもわからないが。
物理?哲学?分からん。
これをきっかけに学問に興味もって、いずれはもしかしたらこうやって本を眺めているだけで勃起できるようになるかもな。
前にこんな阿呆な話を嬉しそうに語っていた古泉を思い出したら笑えてくる。
と同時に溜め息だ。
こんな低俗な俺に学問なんて似合わん。黙って寝ることにしよう。
長門の隣に座るが、一瞬表情が変わった気がしたので確認をする。
「構わない」
ならよかった。
おやすみ。
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250: ◆IKATON/.1Q :2009/03/21(土) 13:48:00.57 ID:ORxzLhvV0
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やっべ寝すぎた。もう16時じゃないか。
長門はまだ赤い実はじけたを読んでいる。もしかして繰り返し読んでるのだろうか。
ところで辞書がないな。
「辞書はいらなかったのか?」
「平気。このくらいなら大丈夫。」
そうかそうか。
「でも、
ん?
「赤い実が何なのか、さっき辞書で引いたけど分からなかった。」
自分の眉が八の字になるのを感じた。
「いずれ分かるよ。」
俺は長門の頭に手を置いた。
「わかった。わたしにもパチンが来たらわたしも綾子のように貴方に手紙を書く」
一瞬笑いそうになったが、そりゃあ楽しみだ。
「さて、ハルヒさまがお待ちかねの時間だ。帰ろうぜ。」
黙って頷く。
その後は案の定お待ちかねのハルヒさまにまたくどくど文句を言われ、次回またハルヒの分は奢る約束をさせられ、それぞれ家に帰った。
大したことはしてないけど、疲れたわ。
明日は日曜、活動日誌でもてきとーに書いてまったり日曜を満喫しよう。
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252: ◆IKATON/.1Q :2009/03/21(土) 13:56:13.31 ID:ORxzLhvV0
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SOS団活動日誌
第1回SOS団ボランティア活動
エンジェルのくれた春 ~血に染まる河川敷~
○月××日(土)晴れ
活動場所:近くの河川敷
参加者:SOS団全員
○月××日、われわれエコロジー戦隊エコレンジャーは、地球に害悪を為すモノ達を殲滅しに駅近くの河川敷へと向かった。
メンバーはエコレッドを筆頭にブルー、グリーン、パープル、ホワイトと、全戦力を投入した。
河川敷は平常通り若いカップルや家族連れが行き交い、一見すると平和に見えた。
しかし、その平和の裏には既に悪の魔の手が忍び寄っていた…
「2時の方向、距離凡そ10m、目標を視認。数3体。」
麗しのPPP:エコパープルが空き缶を指差して呟く。
「敵は密集しています。両翼を伸ばして半包囲、殲滅するのが妥当でしょう。」
怒濤のバーゼル条約:エコグリーンが進言する。
「いいわ!両翼を伸ばして包囲陣を敷きなさい!」
リーダーであるレッドを無視して、母なるガイア:エコグリーンが指令を飛ばす。
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254: ◆IKATON/.1Q :2009/03/21(土) 14:04:38.22 ID:ORxzLhvV0
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「お前なあ、越権行為と見なして軍法会議にかけるぞ…」
闘魂のリサイクル、エコレッドがぼやく。
「煩いわねえ!ガイアがもっと私に輝けと囁いてるのよ!」
馬鹿なことを叫ぶ。
「目標をセンターに入れてスイッチ」
エコパープルが呟く。
「目標完全に捕獲しましたあ」
鋼の捕鯨問題:エコホワイトがやってくれた。
周りの命を救われたカップル達が賞賛の拍手を俺たちに送る。
こうしてまた地球の平和へと一歩近づいた。
だが、人々の心から闇が消えない限り、エコレンジャーの戦いは続く。
第1回SOS団ボランティア活動 ~完~
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256:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/03/21(土) 14:07:34.15 ID:1w66eSpGO
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終わりか!
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257: ◆IKATON/.1Q :2009/03/21(土) 14:15:19.55 ID:ORxzLhvV0
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何日か過ぎたある日。
俺がいつも通り1時間目から寝ていると(本当は考え事をしていただけだが)、いつものことながらシャープペンで背中を突かれるのを感じた。
ったく、一年間こいつの前の席なんて耐えられるか自信無いぞ。早く一年経て。
俺は背中に手を伸ばして振り払う。
1時間目はそれで乗り切った。
2時間目前の休憩時間、俺はハルヒに問いただした。
「何か用だったのか?」
「あんたがうつ伏せで寝るとあたしが教卓から丸見えであたしが寝られないのよ。」
そうかい。じゃあ次からは肘付いて寝るようにするわ。
2時間目
また背中を突かれるのを感じた。
またかよ…今度は何だってんだ…
俺はノートを破ってメッセージを付け、背中越しにハルヒに渡す。
数分後肩を叩かれ、背中越しに紙を受け取る。
『今度は何のようだ』
に対して
『あんた最近何かあったの?』
と書かれていた。
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258: ◆IKATON/.1Q :2009/03/21(土) 14:23:52.93 ID:ORxzLhvV0
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俺は焦った。
今日、俺は一つの懸案事項を抱えていたからだ。
朝、俺の下駄箱に入っていたノートの切れ端。そこには、
『放課後誰もいなくなったら、一年五組の教室まで来て』
と、明らかな女の字で書いてあった。
もしかして、誰にも知られていないはずのこのことを知っているハルヒが差出人なのか?
いや、こいつがそんな回りくどいことをするはずがない。
ってまあ、相手を詮索しても仕方が無い。相手が誰だろうがドッキリだろうが何だろうが俺は構わず行くだろうからな。
気になるけどさ。
まあ、とりあえず返事を書くか。
こいつはこのことを知らないはずだ。
だとしたらこいつが言う何かって何だ?俺は何かいつもとは違う挙動をした記憶もない。
表情が緩んでいたのだろうか?わからん。
こいつの暇つぶしと判断することにしよう。
『特に何もないが?』
そう書いてハルヒに回した。
返事がない。ただの屍のようだ。
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260: ◆IKATON/.1Q :2009/03/21(土) 14:31:19.27 ID:ORxzLhvV0
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その後はハルヒからの攻撃もなく、放課後を迎えた。
俺は部室に行くか、このまま教室に滞在するかで悩んだ。
『誰も居なくなったら』とあるからには、それはもっと遅い時間なのだろう。
うん、とりあえず部室行くか。
誰からの誘いだろうがドッキリだろうが~とは思っていても、やはり気になってしまう。
こんなノートの切れ端で人を呼び出すってのはどういう状況なのだろうか。
こんな手法を選ぶ辺りは、SOS団以外なのは間違いない。
そして、俺の教室を指定するからには同じクラスなのも間違いない。
わざわざ他のクラスの教室を指定するやつもいないだろう。
もしそいつが待っているのを誰かに観られたら不自然すぎるからな。そんなことをするやつはいないだろう。
クラスで俺と交流あるのは、谷口と国木田くらいだ。後は朝倉か。
谷口のドッキリだろうか。否、だとしたらもっとディテールに凝るだろう。
じゃあ朝倉か?朝倉なら何となく納得できるか。また何か電波話を聴かされるんだろう。
朝倉じゃないなら、いくら考えたところで答えの出ない全くの第三者だ。
第三者が俺に何のようだ?悲しいことに告白なんてされる可能性はまずないはずだ。古泉への仲介か?あり得るな。
長門だったら即刻お断りだ。長門を見ながらそう思った。
部室ではずっとぼんやりしていた。その日の部室の出来事はよく覚えていない。
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261: ◆IKATON/.1Q :2009/03/21(土) 14:33:04.31 ID:ORxzLhvV0
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「帰る」
突然のハルヒの一言で我に返った。
気がついたらもう5時を過ぎていて、どことなく不機嫌をまき散らせたハルヒはそのまま出て行った。
「私たちもそろそろ帰りましょうか」
そうだ。朝比奈さんに相談しておくのも悪くはないだろう。
考えてもみれば、最近の流れから考えて危険の前触れとは言い切れない。
「朝比奈さん、ちょっと相談があるんですけど。」
字に心当たりがあるかもしれないしな。
「はい、なんでしょう?」
俺は朝比奈さんにノートの切れ端を見せた。
「キョン君やりましたね!」
いやいや、そういう話ではない。
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263: ◆IKATON/.1Q :2009/03/21(土) 14:49:29.67 ID:ORxzLhvV0
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今までの俺の思索を朝比奈さんに説明する。
「キョン君考えすぎですよ。それとキョン君はもっと自信を持って大丈夫ですよ。」
朝比奈さんは軽く笑い飛ばして帰っていった。
くそっ。じゃあ古泉は?
ってあれ?いない。
「彼は休み。。」
ああ、長門いたのか。
いちおう訊いてみるか。
「これ、誰の字かわかるか?」
刹那の間を挟み、
「まゆげ」
朝倉の字だってのか。
やはり朝倉か。とすると何か面倒な話の可能性大だな。
帰ろっかな。
「わたしも行く」
長門が来たところで何も変わらないと思うがまあいいか。
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264: ◆IKATON/.1Q :2009/03/21(土) 15:02:15.52 ID:ORxzLhvV0
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時計は五時半あたりを指して、人気の絶えた教室が西日で染まっている。
「遅いよ」
朝倉涼子が俺に笑いかけて言った。
そしてもう一人の招かざる客を視認して、一瞬表情が強張る。
「なんだ、長門さんもきたの。」
明らかに邪魔扱いした口調だ。
「どうせハルヒ絡みの話なんだろ。別にいいだろ」
こちらも拒絶の口調で応える。
「涼宮さん絡みとはちょっと違うんだけどね。長門さんがいると少しやり辛いかな。」
長門を邪魔にするなら俺も帰るぞ
「長門さんがね。貴方のことばかりを考えているの。生まれた時から一緒にいることが多いから分かるの。」
それで?
「苛立ちっていうのかしら?長門さんが貴方のことを考えてばかり居るのを観るのは。」
こいつもちゃんと感情とか持ってんじゃねーか。
「だらか貴方を殺すことにしたの」
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266: ◆IKATON/.1Q :2009/03/21(土) 15:14:36.00 ID:ORxzLhvV0
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は?今なんつった?
何て考えている余裕はなかった。
後ろ手に隠されていた朝倉の右手が一閃、さっきまで俺の首があった空間を鈍い金属光が薙いだ。
猫を膝に抱いて背中を撫でているような笑顔で、朝倉は右手のナイフを振りかざした。
咄嗟の身のこなしでかわせたものの、無意味にガードするために顔の前に出した腕に微妙な切り傷が入る。
俺の身体に傷を付けるとはいいナイフだな。デザインからしてベンズの中期型…
なんて冷静に漫画の台詞を思い浮かべている状況じゃない。まさか0.1㎜でクジラを動けなくする毒が塗りこまれてるなんてあるはずないしな。
つーかなんで俺が朝倉にナイフを突きつけられねばならんのか。朝倉は何と言った。俺を殺す?ホワイ、なぜ?
「冗談はやめろ!まじ危ないって!」
何の解決にもならない常套句なのは頭では理解していた。
「冗談に見える?ほんとに貴方に消えてもらいたいんだけどな。表情の作り方間違ってる?」
いや、笑顔マジ怖いから合ってると思う。
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267: ◆IKATON/.1Q :2009/03/21(土) 15:26:49.41 ID:ORxzLhvV0
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で、まじで何で俺を殺す?
長門が俺のこと考えるからむかつくって?何だそれ嫉妬か?こいつレズか?いや違うな。
こいつに取っては長門は娘か妹みたいなもんか。
差詰め子離れできない母親の歪んだ愛情ですかね。
知性ばかり発達したり、責任だけ持たされて精神面とのバランスが崩れると人間やばいって誰かがテレビで言ってたな。
朝倉涼子さん感情の獲得おめでとう!しかも最難関とも言えそうな愛情だ!
おめでとう!心から最大限の賛辞を送るから見逃せ。
あーくそっ。
朝倉、お前の思考は三段論法ならぬ、三段飛び論法だ。
「逃げるぞ長門!!」
俺は入り口付近で突っ立ったままの長門の腕を掴んで外に出ようとした。
が、俺は壁に激突した。
????
ドアがない。窓もない。廊下側に面した教室の壁は、まったくの塗り壁さながらにネズミ色一色に染まっていた。
ありえない。夕日すら消えている。校庭側の窓もすべてコンクリートの壁に置き換わっていた。
嘘だろ?
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269: ◆IKATON/.1Q :2009/03/21(土) 15:39:14.17 ID:ORxzLhvV0
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「無駄なの」
背後から近づいてくる声。
「ねえ、諦めてよ。どうあがいたって結果は同じことになるんだしさ。」
「この空間は既にわたしの情報制御下にあるの。
統合思念体の許可が下りないと大した情報改変力は振るえないけど、一方的に貴方を嬲り殺すことくらいはわけないわ。」
さらっと嫌な表現使うんじゃねーよ。
「ああ、安心して長門さん、貴女は心配要らないわ。私の能力は貴女には行使できないのだから。」
ほう。長門は安全だな。っていうか長門はこの場合どっちの味方なんだ?
手を振りほどかないのを考えれば敵では無さそうだ。ただ状況に付いてこれていないだけの気もするが。
「私はただ貴女と一緒に過ごしたいだけなの。」
うわあ。まじうざいうざい。きもい。
「なあ長門」
俺は小声で囁く。
「ピンチに陥るとお前の抑えられていた能力が発動するなんてアニメ的、特撮的な…」
「ない」
ですよね~。
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271: ◆IKATON/.1Q :2009/03/21(土) 15:46:37.93 ID:ORxzLhvV0
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俺はじりじりと長門の手を引っ張りながら、朝倉から少しでも離れようとする。
「いつまで長門さんの手を握っているの…」
朝倉がナイフを掲げる。
「よ!」
ちょうど俺と長門の間辺りにナイフが飛んでくる。
咄嗟に長門を突き飛ばし、かつ自分も横に身を反らして倒れ込んだ。かろうじて避けたものの、見事に俺と長門は分断された。
長門にも怪我はないようだ。とりあえずの安心。
情報改変能力を受け付けないとは言っても、通常の物理攻撃は別だろうからな。
くそっくそっ!どうする!?俺!? 3枚のライフカードを開く。
1非ハンサムな俺は突如反撃のアイデアをひらめく
2誰か助けにきてくれる。
3現実は非情である。
続く!とか言って長い長い長考タイムを与えてもらえればどれだけ幸せなことか。とりあえずググる時間をもらいたい。
瞬発力的な思考で俺が○を付けたのは3だ。
模範解答。100点満点間違いなしだ。
どうしよう
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273: ◆IKATON/.1Q :2009/03/21(土) 15:57:51.55 ID:ORxzLhvV0
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朝倉は若干長門よりの円曲線を描きながら俺に向かってきた。
完全に俺を長門をから遠ざけようとしている感じだな。俺はそれに合わせて後ろに下がっていく。
追っかけっこは長く続かず、俺はあっと言う間に教室の端に追いやられた。
「追いかけっこは終わりね」
満面の笑み。
せっかく可愛いのにもったいない。
いや、もったいないはちょっと違うか。俺が怖いだけだ。
「過保護は毒だぜ?」
とりあえず会話をしよう。
「言っている意味がわからないわ。」
やり取りの最中、俺は朝倉の後方で長門が投げられたナイフを拾い上げているのを確認していた。
長門は味方として動いてくれるのだろうか。
役に立たない気もするが、長門がこっちに付くならまあ説得材料にはなるはずだ。
「お前が長門を大事にしてるのはわかった。だが過剰な干渉は子供の成長には有害なんだぜ?」
「言っている意味がわからないわ。」
それしか言わねえ。
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274: ◆IKATON/.1Q :2009/03/21(土) 16:06:05.37 ID:ORxzLhvV0
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っとその時、
長門がナイフを握りしめたまま朝倉に向かって後ろから駆け出した。
おいおい大丈夫か?無理すんな転ぶなよ?
しかしちゃんすだ、俺も走り出せばつまり挟み撃ちの形になるな。
俺はてきとーにその辺の椅子でも振りかざせばいい。どちらか一方の攻撃は当たってくれるかもしれない。
そう思って動き始めた刹那、、、
こともあろうに長門は躓いて盛大に転びやがった。
あーもー、どじっ子は確かに萌えるが、この状況でイカれているのかこの状況で。
っていうかナイフで怪我してないか?大丈夫か?
「そんなにこいつが大事なの?ほんといらいらするなあ。」
朝倉はそう言いながら、転んで起き上がろうとする長門の前にしゃがみ、長門に平手打ち。
「てめえっ!」
自然と声が出ていた。
朝倉はそんな俺を笑顔で見つめ
「貴方は長門さんの心配をする必要はないの。」
長門の手に握られたままのナイフを奪い俺に向かい直す。
「最初からこうしておけばよかった」
その言葉で俺は身体を動かせなくなっているのを知る。アリかよ!反則だろおい!
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275: ◆IKATON/.1Q :2009/03/21(土) 16:12:08.84 ID:ORxzLhvV0
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「じゃあ死んで」
朝倉がナイフ構えながら加速度を付けて迫ってくる。
普通こういうときって咄嗟に目を閉じてしまいそうなもんだが閉じれない。
やっぱり3だった。
初めての100点なのに。
その時。
天井をぶち破るような音とともに瓦礫の山が降ってきた。
コンクリートの破片が俺の頭にぶつかって痛え。
降り注ぐ白い石の雨が俺の身体を粉まみれにして、このぶんじゃ朝倉も粉まみれだろう、しかし確認しようにも身体がピクリとも……あれ、動く。
顔を上げた俺は見た。何を?
俺の首筋に今にも触れようとしているナイフの切っ先を光剣?で抑えた朝比奈さんだった。
身体には量産型ジムのダンボールを纏っている。
答えは2だった。
0点がこれほど嬉しいと思うことは生涯もうないんじゃないだろうか。
「邪魔する気?」
応える代わりに光剣?で朝倉を押しのけてそのまま振り下ろす。
朝倉はそれを交わしナイフを投げ捨てながら数メートル後ろにジャンプして距離を取った。
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277: ◆IKATON/.1Q :2009/03/21(土) 16:28:15.85 ID:ORxzLhvV0
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朝比奈さんの持っているもの。
ああ、それジム装備のビームサーベルか。
使えたんですか。それ。未来的技術とか未来道具とかそんなノリですか。
っていうか何でジムなんですか。
こういうときこそあの時作ってたビット?付きの機体で来るべきじゃないですか。
ガンタンクで来られるよりはましだが。
空間がくにゃりと歪んだ。としか言いようがない。
朝倉も天井も床もまとめて揺らいでいる。何が何だかわからない。
ただその空間そのものが槍のように凝縮し、連続して朝比奈さんに襲いかかるが、朝比奈さんが翳したビームサーベルの前に結晶化して消えていく。
「これ持ってて下さい」
俺はジム装備のシールドを受け取った。
まあこの後のことは何がなんだかわからない。
朝比奈さんはあちこち飛び跳ねながら攻撃を防いでいるようだ。
朝比奈さんの体型、そしてダンボールを考えるとその身体能力は非常にシュールで普段の俺とハルヒなら笑い転げるところだな。
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279: ◆IKATON/.1Q :2009/03/21(土) 16:47:44.02 ID:ORxzLhvV0
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俺はその最中、シールドに身を隠しながら、跪いている長門のところまでこそこそと移動した。
長門といれば攻撃を受けないかもしれないなんて、最低なことを考えた俺を誰が責められよう?
いやいや、これは戦術的に正しい判断だ。
何せターゲットが攻撃したくないやつと一緒に居たら朝倉もうっかり攻撃できなくて困るだろうし、朝比奈さんにとっては守備範囲が狭まることになるかもしれん。
でもまあ、さっきの瓦礫のこともあり、純粋に長門が心配だった。
「大丈夫か?」
長門は無言で俺の腕にしがみついて顔を埋めてくる。
小さく細い手が震えている。まあ怪我は無さそうだな。
眼鏡にヒビが入ってるけど。
さて、どうする。
朝比奈さんは防戦一方だ。
量産型ジムじゃ火力不足なのか?
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282: ◆IKATON/.1Q :2009/03/21(土) 17:03:07.04 ID:ORxzLhvV0
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これはやばそうだ。
このままでは絶対負ける。
サーベルのパワーが負けている!?とか言いたくて場面を探ったが、もうそれは後回だ。
「長門!」
俺は意を決して言った。
「眼鏡は危ないから外しておきなさい。
それと、どんなに小さくても間違ったものでもいい。ピザを情報操作で作れないか!?」
「できない」
「大丈夫。お前はやれば出来る子だ。」
俺は頭を撫でながら言う。
「ごめんなさい。これで許して。」
ポケットからうまい棒を取り出した。
やっぱイカれているのか?この状況で。
まあ味はみておこう。
「ペロッ。これはピザ味!?」
製造中止になったピザ味を一体どうやって手に入れた!?
まさかハワイで親父にもらったのか?
なんてやってる他所で、
「じゃあ、こんなのはどう?」
朝倉の声が聞こえた。
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286: ◆IKATON/.1Q :2009/03/21(土) 17:15:40.81 ID:ORxzLhvV0
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朝比奈さんを見遣ると、突如として朝比奈さんの周囲にナイフが現れる。
wryyとか言わんばかりだ。
「やろー、なんつーことを考えやがる!」
しかし、朝比奈さんの判断は早かった。
ナイフが動き始める前に包囲網の一角に切り込んで突破口を開く。
が、その後朝比奈さんに向けて襲いかかるナイフ全てを防ぐことはできなかった。
致命傷こそないが、傷だらけだ。
くそっ。無力な自分が情けない。
俺は選ばれたとか訳の分からんこと言われても結局ただの人間なのか。
朝比奈さんを応援することしかできないのか。
もう迷ってる暇はない。
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287: ◆IKATON/.1Q :2009/03/21(土) 17:16:59.80 ID:ORxzLhvV0
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よし、このうまい棒で勝負だ。
俺は思い切って立ち上がる。
朝比奈さんは明らかに追いつめられ、表情が虚ろだった。
「朝比奈さん!新しいピザよ!」
別に新しいって付ける意味もないし、女言葉になる必要もない。
ましてや朝比奈さんは愛と勇気だけが友達の寂しい人ではない…だがしかし、そう言わなければならない気がした。
朝比奈さんに向けられて投げられたあめは、吸い込まれるようにあ朝比奈さんの口に入っていく。
コントロールのよさに自分でも驚いた。
あの言葉はコントロール力アップの魔法なんだろうか。ありがとうバタ子さん。
空間内の空気が変わり、朝比奈さんがビームサーベルを放り投げ地響きのような唸り声を挙げる。。。
きた・・・
「ピザを食ってる・・・」
ダンボール箱が飛び散る。あーこの辺省略したい。
「拘束具が!! 拘束具!?」
くそっ一人数役はきついぜ。
「何なの!?」
朝倉は面食らっているようだ。そりゃそうだ。
朝倉は攻撃を仕掛けるが、Iフィールドジェネレータ-の前に無効化されたようだ。
朝比奈さんの唸り声と共に朝比奈さんの胸部が光帯を帯びていく。メガ粒子砲の火力ならいけるだろ。
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289: ◆IKATON/.1Q :2009/03/21(土) 17:20:19.34 ID:ORxzLhvV0
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「そうあれは装甲板ではないの… ええい面倒だ!以下省略!!!!」
「どうした(化け物)!さっさと撃たんか!!」
気を使って化け物とは言わない。
「どうしたそれでも世界でもっとも邪悪な一族の末裔か!!」
あー淡々とした台詞より叫んでる方が楽しいわ。
唸り声の質が変わり、光帯は胸から口へと凝縮されていた。
朝比奈さん、空気読みすぎです。
内心、朝比奈さんが空気読み過ぎて身体が腐り始めないか心配だったが、杞憂に終わった。
火の七日間、こんなものがうろついていた世界があったのかと思うと身震いがする。
そして、
それは放たれた―――
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290: ◆IKATON/.1Q :2009/03/21(土) 17:24:39.13 ID:ORxzLhvV0
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朝倉は空間磁力メッキのようなもので防いでいるように見えたが、あっさり貫かれ、消し飛んだ。
あとね、ついでにこの空間もぶち破ってました。どう考えてもチートです。やりすぎです。でも有り難う御座いました。
朝比奈さん、貴方にはモビルスーツなんていりません。
ある一定段階を越えた冒険者は、下手なジョブに就くより『すっぴん』でいるのが強いんです。
貫かれた部分から朝倉が作った空間にヒビが入り、割れていった。
気づいて見れば、何事もなかったかのように元の教室に戻ることができた。
朝比奈さんは気が抜けたように膝から崩れ落ちる。
俺は呆然とする長門を支える。
何はともあれみんな無事だ。
ここは何て言って締めればいいのかな。
『悲しい女よ。誰よりも愛深き故に』
とか言えばいいのかな。
それとも
『てめーは朝比奈さんを怒らせた』
かな
-
294: ◆IKATON/.1Q :2009/03/21(土) 17:50:45.66 ID:ORxzLhvV0
-
・・・
俺たちはまだ教室で呆然とし、気持ちの整理が付かずにいたが、
「ういーす」
ガサツに戸を開けて誰かが入ってきた。
「wawawaわすれもの~♪」
自作の歌を歌いながらやって来たそいつは、よりにもよって谷口だった。
「うぉっ!?」
俺にしがみ付く眼鏡を外した長門、そして一見するとAVの1シーンに間違えてしまいそうな憔悴した表情で倒れこんでいる朝比奈さん。これを観て、アホで勘違いの谷口が何を考えたのかは想像に難くない。
「すまん。。。ごゆっくりー!!」
戸も閉めないで走り去った。追うヒマもなかった。
「どうすっかなー。」
「任せてください。脅迫は得意です~」
中の人変わってません?朝比奈さん。
この後は部室に戻り休む。
一方で俺は古泉に連絡を取ってタクシーを呼んでもらい、
朝比奈さんと長門はを古泉の機関の息のかかった病院→朝比奈さん宅という形で送ってもらうことになった。
長門は今日は朝比奈さん宅に泊まってもらうことにした。
この二人には本当に感謝に耐えん。
だが、どう感謝していいかわからなかった。
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298: ◆IKATON/.1Q :2009/03/21(土) 18:02:52.89 ID:ORxzLhvV0
-
結局、タクシーに乗る手前に俺が言えたことは、
「朝比奈さん、言葉ではとても言い表せないけど、本当にありがとうございます。」
本心だった。
朝比奈さんはまだちょっと疲労の残った顔で笑顔で返してくれた。
長門にはというと、こいつはたった一人の肉親のようなものを亡くしたわけで、朝比奈さんに対して以上に声を掛け辛かった。
「お前にはSOS団のみんなが付いてる。それと眼鏡無い方が可愛いと思うぞ」
前文は言っていて気恥ずかしかったので、ついでに無関係なことを言って誤摩化した。
対して
「平気」
そう返ってきただけだ。
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308: ◆IKATON/.1Q :2009/03/21(土) 18:40:43.11 ID:ORxzLhvV0
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タクシーを待つ間、朝比奈さんが落ち着いた頃に聞いた話だ。
・朝比奈さんは帰る途中、空間の歪みを感じ取って引き返し、ダメもとで遡行技術の応用で空間内への侵入を試みたら見事入れたとのこと。
・ビームサーベル等の技術については、歴史的に今与えられるべき情報では無いそうなので、一切教えてくれなかった。
・未来でも情報改変・操作の技術は微笑ながら確立(技術・倫理上の問題から絶対禁止されているが)されており、朝比奈さんは情報改変に対してのプロテクトを受けた上で遡行してきているとのこと。
・長門宅で聴いていたような情報改変による今回の悪影響については、一般的に例えると
『宴会をするのに、気を使って壁に発泡スチロール貼ってから騒いでたから、ご近所にはあまり迷惑になっていない』
とのことらしい。朝倉の良心と言ったところか。
・谷口への脅迫について確認したところ、後でお願いにいくということだ。自分のお願いが一般人には脅迫に感じることは理解しているようだ。
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311: ◆IKATON/.1Q :2009/03/21(土) 18:45:50.58 ID:ORxzLhvV0
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「そんな面白いことがあったんですか」
呼び出しに応じて来てくれた古泉は言った。ちなみに古泉は機関の定時連絡会に出席していたらしい。
「こっちは生きた心地しなかったけどな。」
ほんと九死に一生って感じだ。
「長門さん…育ての親とも言うべき人が近親相姦嗜好・同性愛嗜好・まゆげの3重苦の異常性癖者だったなんて、ショックだったでしょうね。」
こいつがこんなわけのわからん感想を持ったのは俺の説明が悪かったからだろうか。
「そうだな。変なトラウマになってあいつも変な性癖を持たなければいいが・・・」
てきとーに流す。
「ところで、朝倉涼子がこの世界から消失した件についてですが」
あーそうだった。
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312: ◆IKATON/.1Q :2009/03/21(土) 18:48:55.94 ID:ORxzLhvV0
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飯作ろうと思ったら、米が無い.
買いに行かせて下さい。
どうせ俺のオナニーだ
お前等の言う通り最後までオナニーで通させてもらう
俺のオナニーを観てお前等も抜くがいい
でもこっからはぐだぐだなんだけどね
盛り上がるようなとこがない。
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313:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/03/21(土) 18:54:55.44 ID:4BdbW7Wj0
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面白いからなんでもOK
ほっ
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318: ◆IKATON/.1Q :2009/03/21(土) 19:13:38.93 ID:ORxzLhvV0
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「今日明日というわけには行きませんが、話が大きくなる前に何とか機関の方で自然な形で処理されるように努力を致します。なので、貴方には涼宮さんに気を配ってやってもらいたいですが。。」
別に世間で流行っているわけでもないのに、クラスメイトが行方不明になってしまい平穏を乱されたハルヒがどう出るか気をつけろということか。
まあ、生徒が1~2日学校に来ないくらいで大騒ぎにはなるまい。家族のような騒ぐやつがいるわけでもないだろうし・・・
一瞬長門が浮かぶが考えたくなかったので首を振って払う。
「それは了解したが、自然な形で処理ってどういうことだ?」
「転校したということにでもできればと思います。これでも情報操作は得意なんですよ。
あ、と言っても現実的なレベルでですが。」
この世の中で現実的なレベルというのがどの程度まで言うのだろうな。
やれやれ
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319: ◆IKATON/.1Q :2009/03/21(土) 19:21:36.70 ID:ORxzLhvV0
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翌日、俺たちの希望的観測はあっさり打ち砕かれた。
学校では模範的な優等生でクラス委員長も兼ねる朝倉は、マンションでも模範的住民を演じていたらしく、
その朝倉が朝になっても帰らないことで心配した管理人によって学校に連絡が入ったらしい。
機関にはジェバンニは居なかったらしく、流石に一晩でというわけにはいかなかったようだ。
岡部は、本人と両親に連絡を取ろうとしたが、本人どころか両親まで連絡不能…というか存在しない住所・電話番号だった。
誰か事情を知らないかなどと、こともあろうに生徒達に言っていた。馬鹿すぐる。
朝倉の行方不明は、存在しないかのような両親話と、朝倉が市内の中学からこの無名の北高に進学して来たのではないらしいこと、しかし住居は学校の近くにあり立地もいい分譲マンションという違和感ありまくりの話と共に拡大していった。
さらには朝倉の帰宅を確認した生徒がいなかったことが判明し、
しかも多くの生徒に目撃されていたのが、昨日の放課後に1年五組の教室付近から光の筋が現れ、空に消えていった等という話だ。
ばっちり携帯カメラに収めたやつまでいるから始末に終えん。
朝比奈さんの放った天の火は朝倉空間を突き破った後、そのままお空の彼方に消えていったようだ。
何にも当たらなかったのがせめてもの救いだ。
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323: ◆IKATON/.1Q :2009/03/21(土) 19:39:26.77 ID:ORxzLhvV0
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この話はあっという間に校内中の話題。
実は光の筋はUFOで朝倉は宇宙人だったなどという、半分当たっている噂も流れた。
今日の夜にでもなれば地方ローカルテレビ番組にでも出てしまうんじゃないかという感じだった。
そして昼休み、この状況を好まない女生徒―当然ハルヒなわけだが―が俺に言った。
「あたしのクラスから流行ってもいないのに行方不明…っていうか宇宙人なんて輩出するわけにはいかないわ。世間を騒がす前にあたしたちで朝倉を探すわよ。」
などとのたもうた。
どうする。本当のことを喋るか。
・・・言えるわけねえ、朝比奈さんの放つインドラの矢に焼かれて消えたなんて。
「親の急な転勤で転校したんだろ?明日になれば事後報告で学校に連絡が来るさ。」
「そんなの不自然だわ。」
ごもっとも。だがあと数日経てばそういうことになるはずなんだ。多分。
「とにかく今日の放課後、とりあえず朝倉さんのマンションへ行くわよ。あんたは放課後までに住所を調べておくこと。いいわね?」
ま、それくらいなら長門に尋ねればすぐだ。どうせ無駄骨を折るのはハルヒであって、俺ではない。
「あんたも行くのよ」
「なんで?」
「これも人探しボランティアでしょ。団長。」
思わず溜め息だ。
だったら皆も。と提案したが何故かあっさり却下された。
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325: ◆IKATON/.1Q :2009/03/21(土) 19:45:26.92 ID:ORxzLhvV0
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ハルヒの密命を仰せつかった俺は可及的速やかに放課後の部室へと足を運び、
長門に朝倉の住所(というかやはりと言うべきか部屋番号だけで済んだが)を確認し、
昨日のお礼と何かあったら遠慮なく言うことと、
俺とハルヒは今日はもう帰るということと、やはり眼鏡は無い方がいい旨を伝え、早々にハルヒの元へと戻った。
正直言えば、本当は今日は長門と朝比奈さんへのこともあり、ゆっくり部室で過したかった。
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326: ◆IKATON/.1Q :2009/03/21(土) 19:51:45.50 ID:ORxzLhvV0
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女子と肩を並べて下校するなんてのは、俺にとって高校生活夢の1ページなはずなのに、全く楽しくない。
「何か言った?」
何か文句あるの?と言いたげな口調だ。
「いや何も」
「ところであんた、何も見ないで歩いてるけど、場所はちゃんと覚えてるの?」
「まあな」
一度来てるからな。で、着きそうなわけだが・・・
「あれなの?ほんとにいい立地ね・・・。普通じゃないわ。許せないわ・・・」
立地はともかく、何でこんないいマンションにしたんだろうな。やっぱ宇宙人でもいい人間的に裕福な生活がしたいとか考えるのだろうか。
それとハルヒ、人様の家庭事情に文句を付けるな。
今度お前の家庭事情を拝見させてもらう。
お前のような便器に吐き出されたタンカスを育てた家庭がどれくらい普通なのか楽しみにさせてもらう。
で、マンション前に停まっていたもの。
「なあおい、あのパトカー・・・」
まあ当然だよな。学校から警察に連絡が行って当然だ。
今入って行って、朝倉について嗅ぎまわる素振りでも見せれば即職質だ。
「まあ仕方がないわね。警察まで来たら部屋で引篭もっている線も消えたし。」
ハルヒも察してくれたか。つーかそんなこと考えてたのか。
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328: ◆IKATON/.1Q :2009/03/21(土) 20:02:29.59 ID:ORxzLhvV0
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ハルヒは身を翻して元来た道を戻り始めた。
人は流れに乗ればいい、だから俺もそれに追随する。
とそこで、コンビニ袋と学生鞄を提げた長門に出くわした。
今の状況で、部室に残らず、わざわざ一人を選択したのがどういう心境からなのか少し心配になる。
というかこいつはちゃんと一人で暮らせるのか。この時間からコンビニで夕食準備をしているのを見て切に思った。
「あら、ひょっとしてあんたもこのマンションなの?奇遇ねえ」
おいおい、これを奇遇というなら新しい辞書が必要だな。
良かったな。お前の新しい定義が日本の標準になるぞ。
朝倉のことをとやかく訊くと思われたハルヒは、意外とそっけなく、簡単に別れの挨拶を済ませて歩いていった。
かく言う俺も、すれ違いざまに頭の上にポンっと手を乗せただけだったが。
長門は小声で「心配しないで」と言って来た。
俺は何か返そうとしたが、
「早くきなさい。」
とな。やれやれ
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335: ◆IKATON/.1Q :2009/03/21(土) 20:14:28.44 ID:ORxzLhvV0
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その後、俺は目的地不明のウォーキングに付き従ってハルヒの二、三歩後ろを歩いていた。
このままでは俺の自宅から離れるな・・・
「どこかいくのか?」
「別に」
そう返ってきた。
「俺、もう帰っていいか?」
ハルヒの後頭部を見つめながら訊いた。
っておい!・・・いきなり立ち止まるもんだから、もう少しでつんのめるところだった。
ハルヒは長門みたいな無感動な白い顔を俺に向け、
「あんたさ、最近、ここ1週間くらいかな、いったい何があったの?」
と。
何を言い出すんだ?これは昨日の授業中に訊いてきたことか?
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336: ◆IKATON/.1Q :2009/03/21(土) 20:18:51.00 ID:ORxzLhvV0
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俺が回答に困っているとハルヒが続けた。
「有紀と何かあったの?」
あったと言えばあったというのだろうか。
でもアレは長門に何かあっただけで、俺と長門の問題じゃない。
「いや、何も無かったと思うが?」
「うそ。あんた部室に居るとき気がつくと有紀のこと見てるし、変に気を使うようになったわ。」
あーそういやそうかもしれないな。
長門宅での話以来、長門を気にかけるようになったのは確かだな。昨日の一件以降はより一層。
しかし、別にこれと言って他意はない。これでも長男なんでな。
長門の敵は俺の敵、俺の敵は俺の敵。
「いや、やはり何もないな」
てきとーに応えた。
「有紀さ、今日眼鏡かけてなかったじゃない?私今日学校で会ったときに、どうして外したのか訊いてみたのよね。何て応えたと思う?」
さあ?
「あんたに眼鏡じゃない方が似合うって言われたって応えたわ。あんたいつから有紀にそんなこと言うような関係になったの。下心見え見えで気持ち悪いわ。」
友人同士でそういうこと言うのはおかしいことなのか。
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337: ◆IKATON/.1Q :2009/03/21(土) 20:20:46.39 ID:ORxzLhvV0
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「有紀には古泉君みたいな人が似合うと思うのよね。顔も頭もいいし、性格も良いわ。そう思って古泉君誘ったんだし。あんたじゃ無理よ。」
うん。異論は無い。
「あんたは自分が普通だって思ってるかもしれないけどね、世界中があんたのレベルに落ちたらこの世の終わりなのよ。わかる?」
なんかむかつく言い方だな。何でいきなり俺がそんな貶され方をしなければならないのか。
「俺もそう思うぜ」
かと言って剥きになったところで俺の顔と頭がよくなるわけでも性格がよくなるわけでもない。
「そうだな。あいつら二人が上手くいくように後押しするか。こういうのも団長の務めだよな。」
ハルヒは無表情な顔をこちらに向けてはいるが、目線は俯き加減だ。
それにしても団長の務めか…自分でなっておいてこんなこと考えるのもなんだが、俺が団長という役職に就いているのも可笑しな話だな。
団内では一番凡庸な人間なのに。
ハルヒは実は頭も要領もいいし影ながら牽引力もある。
古泉はあの通りの人間だし、朝比奈さんは素晴らしい人格者だ。
長門は、まあ俺にとっては妹のような存在になってはいるが、凡庸な俺と比べるのは非礼に値するのは間違いない。
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339: ◆IKATON/.1Q :2009/03/21(土) 20:32:10.85 ID:ORxzLhvV0
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はあ・・・
しばしば陥るこの心理状況。そしてこの雰囲気。
こういうときに人と話すのは危険だ。いちいち卑屈になって話しを拗らせちまう。
まあハルヒも本心から俺を貶したいわけではないだろう。
こいつは、『人誉める時は大きな声で、貶す時はより大きな声で』とか最低な家訓を用意してそうだが、根はちゃんと人に気遣いできる人間のはずだ。
朝倉の件でいらいらしているところがあったのだろう。
ここまで理解しているなら俺の選択肢はそう多くはないはずだ。
「まあそんなとこで、今日は帰るわ」
俺は誰に向けているのかわからない手をヒラヒラしながら歩き始めた。
こういう場面で電車通過音のドップラー効果って漫画やアニメみたいだな。
どうでもいいけどドップラーって面白い名前だよな。
ピグー税のピグーとか、インカのマンコ・カパックとかもだけど、
わざわざ子供に一生涯かけた罰ゲームを背負わせるってかなりいい性格してると思う。
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343: ◆IKATON/.1Q :2009/03/21(土) 20:47:56.88 ID:ORxzLhvV0
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貴様ッ!見ているな!?
うん。そうなんだ。
家に着くと古泉が門の付近で待っていたんだ。
ストーカーってのを身をもって経験したことはないが、なるほどこういうのを連日、しかも異常行為付きで受けたら気が狂うわ。
「なんだ?」
俺は冷たくあしらう。今日ばかりは流石に古泉と言えど、話をしたくなかった。
「お疲れのところ済みません。少し用事がありまして。」
「ハルヒ絡みか?」
「はい、涼宮さん絡みです。」
あまり付き合いたくない。
「以前の約束、僕の能力をお見せする機会が来ましたのでお付き合い願いたいのですが」
古泉は毎度おなじみの機関御用達?と思われるタクシーのドアを開いて俺に乗るように促した。
少しうんざりな気持ちがあったが、確認はしておきたいことだ。仕方が無い。
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345: ◆IKATON/.1Q :2009/03/21(土) 20:53:34.44 ID:ORxzLhvV0
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「お前さ、付き合ってるやつとかいるのか?」
別に古泉が・・・というか誰が悪いわけではない。自分の勝手な気分だ。何とか気分を変えよう。
とりあえず長門との話でもしてみるか。
「いないですけど。どうしました急に」
「よく告られたりするんだろ?何で付き合わないんだ?」
「そういう気になれないだけですよ。特に理由はないです。」
・・・まさか男色?そういえば話すとき、やけに顔が近いと思っていたんだ・・・
「いえいえ、何故かよくそういう誤解をもたれることが多いのですが、一切そういう気はありませんよ。保障します。」
ならいいが・・・
「でもですね、
っまさかの逆接!?
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346: ◆IKATON/.1Q :2009/03/21(土) 20:59:27.16 ID:ORxzLhvV0
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「あまり回りにそういう風に言われていると、自分には本当は男色の気があるんじゃないかと思えてきてしまうこともあるんです。
貴方のことが好きなのかもと思ったこともあります。」
おいおいおいおいおいおいおいおいお!!!!
「ぶっちゃけた話、自分でそういう気になった場合は男性をネタにしておなにんを試みるんです。」
具合悪くなってきた。
「でもできないんです。貴方の写真と電話越しの声で試みたことがあるのですが、勃ちませんでした。」
俺と電話しながらそんなことしてたのか。
ていうか運転手さんに聴かれていないか心配なんだけど。
「試みが失敗に終わると、『嗚呼、自分にはそういう属性は無かったんだな』と再確認することができて安心するんです。
自分には男色の気が無いって胸を張れますからね。」
できればそんな阿呆なことせずに胸を張ってほしいもんだ。
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347: ◆IKATON/.1Q :2009/03/21(土) 21:06:49.78 ID:ORxzLhvV0
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それにしても、写真なんていつ撮ったんだ?
「機関で盗撮したのを頂きましたよ。なんせ重要な鍵ですからね。」
なっ!?
まさか、家の中に監視カメラとか設置してないだろうな。風呂場にも・・・
「いえいえ、流石にそこまではしませんよ。やろうと思えばできるでしょうけど。」
淡々と恐ろしいことを言うな。
しかし、やらなくて正解だよ。もし風呂場の盗撮なんてした日には、お前は一生涯男としての劣等感を背負って生きてことを余儀なくされるだろうかならな。
「それは恐ろしいですね。いったいどんなお兄様をお持ちで?」
普通息子って言わないか?なんでそんな表現をする。だから怪しまれるんだよ。
つーかもうそんなことはどうでもいい。何を話そうとしたのだったか・・・。
ああだった。長門だ。
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348: ◆IKATON/.1Q :2009/03/21(土) 21:14:33.92 ID:ORxzLhvV0
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「長門なんてどうだ?お似合いだと思うが。」
「たいへん魅力的な話だと思いますが、何故そんなことを?」
「いやハルヒがな、長門にはお前くらいの人間じゃないと相応しくないって言っていたのでな」
表情の緩んでいた古泉に影が入ったように見えた。
そんなに長門が嫌なのか。
それとも実はハルヒが好きで、ハルヒにそんなことを言われたのがショックなのか。
「そういうわけではないのですが、一体どういう経緯でそのような話に?」
そういや何でハルヒはあんなことを言い出したんだっけ。。。
下心がとか言ってたから、長門に俺みたいな悪い虫が寄ることを心配したってとこか。
「端的に言うと、俺が長門を狙ってると思ったんじゃないか?」
古泉が曇った表情になっていく。一体どこで話題に誤りがあったんだ。
話題を変えるか。
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349: ◆IKATON/.1Q :2009/03/21(土) 21:22:19.47 ID:ORxzLhvV0
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「そういえば古泉」
話題を考えながら切り出す。
「はい何でしょう?」
そうだそうだ。
「朝比奈さんとの話、お前を連れていけなくて悪かったな。」
ちゃんと謝っていなかったもんな。
「いえ、気にしてませんよ。それに彼女とは協力関係にありますので、ある程度話は聴いています。」
あ、そう。そういえば朝比奈さん、そんなこと言ってたもんな。
とは言っても、古泉達に協力するというのがどういうことなのか全くわからない。
ていうか、今まであれこれ話を聴いてきたが、ハルヒの能力については全く実感がないし、俺は古泉達の機関が何をしているのかも知らない。
何も実態が掴めていないのが実のところだ。
異常な体験をしてしまったからには、今更疑う気もないが。
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351: ◆IKATON/.1Q :2009/03/21(土) 21:23:30.30 ID:ORxzLhvV0
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「なあ。俺は今のところ説明だけで、ハルヒ絡みの出来事について何も実態を掴めていない。
何も知らないと言っていいと思う。それは今日解消されると思っていいのか?」
「おそらくはご期待に添えることができると思います。そろそろ付きますよ。」
「ここか?」
気づくべきところに気づいていなかった。向かっているところは学校だった。
夕暮れ時のグラウンドではまだ活動をしている運動部もあるようで、
一方ではぼちぼち部活動を終えたばかりと思わしき生徒達が下校を始めている。
しかし、家から学校に来るだけならこんなに時間はかからなかったはずだが、
会話の最中だったから気を使ってくれたのだろうか?
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353: ◆IKATON/.1Q :2009/03/21(土) 21:24:35.91 ID:ORxzLhvV0
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「今更ですが、今ならまだ引き返すことができます。」
ほんと今更だな。何故今になって言う。
「いえ、自分に対して言っていることでもあります。」
古泉は一つ呼吸を置いて、
「では少々失礼します。」
古泉の手が俺の手を握った。さっきの話もあるから少し気持ち悪い。
「すみませんが、しばし目を閉じていただけませんか。ほんの数秒です。」
俺は素直に目をつむった。
こんなとこで突っ立って目を瞑るなんて、ありそうでそうあまりない経験じゃないだろうか。
どこか静けさが漂う中での部活動のかけ声、下校中の生徒達から伝わってくる和気藹々とした雰囲気、それらが心地よく感じる。
古泉に手を引かれて、数歩。急に体感が狂う。
「もうけっこうですよ」
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356: ◆IKATON/.1Q :2009/03/21(土) 21:33:04.27 ID:ORxzLhvV0
-
目を開く。見える光景は何も変わらない。
しかし明らかに違うのは、陸と水の中にいる時の違いくらい全ての体感が違う。
自分が通常いる世界とは違うところに来たということだけは明らかだった。
しかし、見えるものは全て同じに思える。
相変わらずグランドからボールを打ったり蹴ったりする音や掛け声は聞こえるし、突っ立っている俺たち二人を避けながら生徒達がすれ違っていく。
俺は古泉を見る。
古泉は俺の言わんとしているところは当然わかるようで、「歩きながら説明しましょう」と、歩き始めた。
「貴方が今体感しているように、ここは普段僕たちが住む、普通の空間ではありません。僕たちは閉鎖空間と呼んでいます。
涼宮さんが構築した次元の断層、涼宮さんの精神世界とでも思って下さい。
常人ではここに侵入することはできません。僕の能力の一つは、ここに侵入することができることです。」
古泉の説明に今までに無い程集中している。
「この空間は時期的にランダムに発生します。一日おきに現れることもあれば、何ヶ月も音沙汰なしのこともあります。
でも一つだけ、一種の規則性のようなものがあります。」
まあ大体想像は付く。
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357: ◆IKATON/.1Q :2009/03/21(土) 21:40:38.20 ID:ORxzLhvV0
-
「そう答えを焦らずとも、すぐに解りますよ。」
こいつは性行為のときもこうやって焦らすんだろうな。
AV観てて時々思うんだが、焦らすのってやってる側は楽しいのだろうけど、観てる側には解らないから止めてもらいたいんだよな、あれ。
「ほら始まった。あちらを観て下さい。」
ん?
校舎を軸に、俺たちの位置を90度ほどずらした辺りに光る青い巨人(人という字を付けるのは憚られるが)が見えた。
どう見ても校舎よりも圧倒的にでかい。なんだありゃ。
「あれが涼宮さんの願望の行使者です。」
女生徒のいくつかの叫び声を皮切りに、一体は阿鼻叫喚に包まれた。冷静でいるのは俺と古泉くらいなんじゃないだろうか。
巨人が校舎に向かって歩き始めた。
「願望って、ハルヒの消去のことか?ていうかまさかあれ、人を襲うのか?」
俺は早口になっていた。
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358: ◆IKATON/.1Q :2009/03/21(土) 21:49:47.33 ID:ORxzLhvV0
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「ええ、涼宮さんが消したいと思ったものを、彼が破壊します。
それは前に説明したように、物には限りません。
あらゆる概念や現象にも対象になります。
その場合の攻撃対象は彼女が考えるそのもの次第で変わります。」
そこで止まる。
「そうじゃない!アレは人を襲うのか!?どう考えても人を潰すぞあれ!?」
「心配ありません。涼宮さんが攻撃対象と認めているもの以外は、この世界で消されても現実世界では消えません。」
人をほんとに殴りたいと思ったのは生まれて初めてだ。
「そう怒らないで下さい。正直、貴方をここに連れてくるのは少し迷いました。
不快なものを見せてしまうことになりますからね。僕も最初はそうでした。
しかし、いつしか悲しいことに自分の使命をこなしているうちに、何も感じなくなってしまいました。
軽蔑しますか?」
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359: ◆IKATON/.1Q :2009/03/21(土) 21:50:42.12 ID:ORxzLhvV0
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軽蔑、それはない。
こいつに文句を言っても仕方がないことだしな。
おそらく俺が憤りを禁じ得なかったのは、知りもしない人間が死んでいく?ことに対してではなく、ハルヒが別世界でとは言え、無意識下で人を蔑ろにしていることを認めたくなかったからだ。
こんなことを考えている時点で古泉を否定することはできはしない。
どうせ俺も慣れてくれば人がゴミのようだとか言い始めるに違いないんだ。
「いや、大丈夫だ。声を荒げてすまなかったな。」
「貴方の順応性には驚かされますよ。」
ったく。
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361: ◆IKATON/.1Q :2009/03/21(土) 21:53:02.50 ID:ORxzLhvV0
-
「それで、ハルヒの消去対象は何なんだ?朝倉の件で平穏を脅かされたわけだから、朝倉の一件を消去したいんだろ?
だとしたら、それは単に事件を無かったことにするのか?それとも朝倉の記憶を世界から消すのか?」
「結果がどうなるのかは僕たちにも解りません。そして、今回は朝倉さんの一件が消去対象なのは間違いありません。
彼女の所在も解らなく、彼女にとって朝倉さんについては学校での記憶しかないはずですから、今回の攻撃対象は学校、おそらくはあなた方の教室が最終目標になるでしょう。
今回は住まいが対象になる可能性もあったのですけどね・・・。」
婆様、赤い光が見えますう。どんどん増えてるみたい。
・・・って言っても二つだけだ。大海嘯にはならないようだ。
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362: ◆IKATON/.1Q :2009/03/21(土) 21:54:08.75 ID:ORxzLhvV0
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「見えますか?あれは僕の同士です。僕たちは、涼宮さんの理性を体現した力として、ああやってネ申人と戦う力を得ました。
ああ、ネ申人というのは、僕らによる彼の呼称です。神に似たる人という意味で使っています。」
呼び名なんてどうでもいい。俺は呼びたいように呼ぶさ。
それにしても変身もののヒーローか。赤玉なんてかっこ良くもないが、せめて大猿じゃなくてよかったな。
まあ優しい俺は敢えて赤い彗星と呼んでやる感謝しろ。
「あれを倒すとどうなるんだ?」
「消去は失敗に終わります。何も無かったかのように、日常に戻ります。」
「倒せなかった場合は?」
巨大ぬ~ぼ~が校舎に手をかけ始める。
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363: ◆IKATON/.1Q :2009/03/21(土) 21:59:47.28 ID:ORxzLhvV0
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「以前触り程度で話した程度ですが、そのままです。現実世界から対象の存在が履歴ごと消去されます。」
「前に聴いた長門、朝倉や朝比奈さんの話だと、既にこの世界から消去されているものは結構あるようだったが、倒せなかったこともあるのか?」
「それについても前に話しましたように、消去が完遂した場合、それに関する記憶も一切無くなるので、一体何がなくなったのかとかはわかりません。僕たちにも負けた記憶も残りません。」
厄介な話だな。
「ただ一つだけ、神人と戦って受けたであろう傷だけが残ります。
何故傷が残るのかは解りませんが、気がついてみると、いつの間にか傷だらけなんていうのも同士の間で少なからずあります。実は最近もありました。」
まじかよ。
嫌な話だな。
SOS団には今のとこMA(みくる朝比奈)は一機しかいないが、実は昨日までは双子だったかもしれないとかそんな話なわけだろ?
もったいなさ過ぎる。
社会に取っての大きな損失だ。
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364: ◆IKATON/.1Q :2009/03/21(土) 22:01:07.83 ID:ORxzLhvV0
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「ちなみに、ネ申人の強さは涼宮さんの想いの強さがそのまま反映されるのですが、ネ申人の強さだけが僕たちの障害になるわけではありません。
出現のタイミング、出現場所によっては機関に取ってマイナス要素になることもありますし、彼女自身が消すことに無意識下ででも全く躊躇が無い場合は理性である僕たちによる感知が遅くなります。」
台詞が長くてご苦労様だが、さらに続けるようだ。
「まあそれとは別に、まだ機関が組織的な体を成していなかった時期は、結構な消去がされたと思いますよ。」
「ちなみに最近は他にどういうものが消去対象になったんだ?」
本当は何が消されたのかが気になるが、どうせわからないんだろうから訊かない。
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365: ◆IKATON/.1Q :2009/03/21(土) 22:06:38.05 ID:ORxzLhvV0
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「最近だとDSですかね。ほら、長門さんの家に行った時の。
大した力も持たない神人だったので瞬殺でした。ちなみにDSは2回程絶滅危惧種に機関より指定されましたよ。」
「おいおい、あれが20歳未満の脳年齢は出ない仕様だって教えれば良かっただけだろ。」
「僕たちは理性ですから、彼女を妄信するだけでなく、成長を促すことも使命として捉えています。
あのくらいのことでこれから何年も消去を望むようではただの子供のまま大きくなるのと同じですからね。
あのくらいのなら瞬殺できますから。」
なるほど、人生勉強ということで敢えて教えなかったんだな。
「涼宮さんはちゃんと解ってくれました。2度の衝動の後は自分の年齢が出せなくても消去を試みようとはしなくなりました。
それを確認した後、ちゃんと仕様を伝えてあげましたよ。」
ほんと焦らすのが好きなんだろうな。イヤらしい。
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366: ◆IKATON/.1Q :2009/03/21(土) 22:10:24.85 ID:ORxzLhvV0
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それにしても、容赦なく破壊していくなあ。
中にはまだ人も残っているだろうし、あっ、今飛散したように見えたのは人か?
「貴方は次ぎ、まるで人がご(ry という。」
「人がゴミのようだな・・・はっ!?」
乗せられたwwwwwwwwwww
「さて、流石に二人では苦戦しているようですし、僕も加勢してきます。そろそろ警察やら消防やら面倒なのが介入して来そうですしね。」
「おおう!?」
古泉が浮かび上がった後、赤い彗星に姿を変え、デイダラボッチに向かっていく。
おいおい祟り神に手を出すと呪いをもらうぞー
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368: ◆IKATON/.1Q :2009/03/21(土) 22:13:46.99 ID:ORxzLhvV0
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身体の大きさが戦力の決定的差ではないことはよくわかった。
ついでに戦いは数だということもよくわかった。
巨神兵は身体を刻まれて崩れ去った。
その光景は、ほんと、腐ってた巨神兵が崩れ落ちていくのと似ていた。。
帰って来た古泉は、俺の前に降り立ってこう言った。
「ただいま。」
俺が言う言葉は決まっている。別に負けたわけじゃないが。
「赤い彗星も地に降りたものだな。」
さてと、
「これからどうなるんだ?」
「まあ観ていてください。ちょっとしたスペクタクルですよ。」
空に亀裂が入り、割れていく。
なんか空が落ちてくるみたいだな。
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369: ◆IKATON/.1Q :2009/03/21(土) 22:15:20.85 ID:ORxzLhvV0
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「なあ古泉?ここの住人達の人格ってどうなってるんだ?」
ちょっと気になったことを確認だ。
怪訝そうな表情の後の応えは、
「まるでRPGの世界の登場人物のようなものです。」
端的だ。
「そうか。」
少し安心しながら世界の崩壊を堪能する。
まあ、盛大な花火大会だと思えばいいのかな。
TDLとかにこういうの置けば人気出るんじゃないか?
気がつけば元通りの世界。
流石にもう活動をしている部は無い。個人的な練習に励んでいる熱心な学生を除いて。
俺は古泉に従って、またタクシーのところまで行き、乗り込む。
タクシーに辿り着くまで、呆然としながらも考え、行き着いた質問はこれだ。
「なあ、何で俺に見せたんだ?」
-
370: ◆IKATON/.1Q :2009/03/21(土) 22:16:31.47 ID:ORxzLhvV0
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「前にも言った通り、貴方は涼宮さんに選ばれた唯一人の人間だからです。涼宮さんの、機関の、そして世界の命運は貴方次第と言っても過言ではありません。」
それは言いすぎだろう。意味がわからない。
「涼宮さんの成長の鍵なんですよ。貴方は。」
だからよく意味がわからない。
「前にも言ったように、涼宮さんの平穏に干渉できるのは貴方ぐらいのものですし、彼女が外からの干渉を許容できるのも貴方だからです。
また、悪い言い方をすると、彼女を平穏の殻から引っ張り出そうとしている・・・いえ、引っ張り出したのは貴方であって、貴方には責任がある。」
ほんと悪い言い方だな。
しばしの沈黙が入り、少し重そうに古泉が再度口を開いた。
「…実は今日、私はいくつか嘘…というよりは隠していたことというか…があります。」
「どっちでもいいから言ってみろ。」
お前の焦らしプレイは好きにはなれん。
-
371: ◆IKATON/.1Q :2009/03/21(土) 22:18:40.63 ID:ORxzLhvV0
-
「実はですね、今日発生した閉鎖空間は一つではありません。ネ申人は数体現れました。
端的に言うと、消去対象が二つありました。一つの閉鎖空間は先ほど消滅し、もう一つの空間は継続して存在しています。」
は?
「どちらかと言えばもう一つの方が深刻で、少し苦労しているようです。朝比奈さんが協力してくれているので大丈夫そうですが…
ですが、こちらの処理が終わったので、貴方を送り次第、先ほどのメンバーと加勢に行かなくてはなりません。」
「一体何が消去対象になっているんだ?」
「1人の個人です。」
「んなっ?」
「人が攻撃対象になるのは久しぶりです。過去にはあったようですが、彼女の人格の成長とともに無くなったようです。
それが今になってですから、余程彼女の心の平穏を脅かす存在が現れたのでしょうね。」
「相手は誰だ?朝倉じゃないのか?」
-
373: ◆IKATON/.1Q :2009/03/21(土) 22:21:15.52 ID:ORxzLhvV0
-
「残念ながら違います。お教えすることはできません。おっと、これは焦らしているわけではありませんよ?」
お前解っててやってたのか…
「これは鍵としての貴方ご自身で気づいてもらいたいのです。」
へえ
「でも一つだけお願いがあります。涼宮さんが人を消そうとしていることを軽蔑しないでやってほしいということです。
彼女は一個人の命を軽視して消去に踏み切ったわけではありません。
きっと、ちょっと落ち込んでしまっただけなんです。
貴方にもあるでしょう?あいつが居なかったら今頃俺が… というような嫉妬や妬みを感じたことが。」
それはまあわかるが…
「今回もそれと同じことです。涼宮さんはその感情に対してちゃんと嫌悪を持っています。
現れたネ申人の強さに拮抗する程ではありませんが、彼女の理性としての僕たちの能力も僅かながら強化されています。」
それにしても普通狂のハルヒが嫉妬・妬みの対象にするってどんな存在だよ。。
世界標準時を決める国際子午線会議で時刻帯を提唱したサンフォードフレミング卿にでも嫉妬してるのだろうか。
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374: ◆IKATON/.1Q :2009/03/21(土) 22:22:53.20 ID:ORxzLhvV0
-
「まあそんなことでどん引きするようなことはないが。。。
それでお前は俺にどうしろってんだ?その消去対象になった不幸な人間を看破すればいいのか?」
「ちょっと違う気もしますが、まあとりあえずはそんなところです。そして何より、彼女に向き合ってあげて下さい。それだけです。」
「そんなことを俺にさせる意味がわからないな。まあ別に俺は今まで通り生活するだけのことだから構わないが。」
「そうですか。」
少しの沈黙が入り、自宅に着いた。
「では今日は有り難うございました。それではまた学校で。」
「ああ、怪我するなよ。それと朝比奈さんが怪我しないようにな。朝比奈さんも昨日の今日で流石に疲れていると思うから無理はさせるな。」
「承知しております。」
そう短く応えて車は走り去った。
今日は色々あった。
昨日と合わせて生涯分の驚きを味わった気分だ。
今日はせめて早く寝ることにしよう。
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375: ◆IKATON/.1Q :2009/03/21(土) 22:25:03.78 ID:ORxzLhvV0
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消去というものをこの身で体感したことは無いが、おそらくそれは紛れも無い事実としてある出来事なんだろう。
消去があったことすら消去されるわけだから、事実としてあるというのも変な言い方だが。
ちなみにあの後、誰か個人が消去されようとしていたという記憶は無くならないままだ。ということはちゃんと古泉や朝比奈さんが処理してくれたのだろう。
朝比奈さんはあの…サイズとしてはα-アジールが妥当か?あのアルファ相手に何で挑むんだろう。
変形型モビルスーツで赤い彗星と一緒に飛び回るんだろうか。
それとも赤い彗星が朝比奈さんに搭乗するのだろうか?
もうそれってチートじゃないか?
想像するとにやにやが止まらねえ。
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376: ◆IKATON/.1Q :2009/03/21(土) 22:26:57.94 ID:ORxzLhvV0
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あれから数日、俺の生活には何も変化がなかったかと言えば、それはノーだ。
世界はハルヒを中心にして動いているのかもしれない。いや、動いている。
ハルヒの気一つでどうにでも世界が変わる可能性がある。
自分としては今まで通り生活することは全く問題ないと思っていたが、実際にそんなことを目の当たりにした以上は、今まで通り付き合うことなどはできなかった。
変わらず毎日話はするし、部室でも一緒に居る。しかしどうしても気は使ってしまうし、よそよそしさが出てしまう。
しかし一方で何だかわからんが、俺は選ばれたとかいう何も実感も実態も伴わない事情で、ハルヒと仲良くしてハルヒの成長を見届けなければならないらしい。
ほんの少しではあるが、部室が居心地の悪い場所へと変わりつつあった。
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377: ◆IKATON/.1Q :2009/03/21(土) 22:28:47.84 ID:ORxzLhvV0
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肩が凝った
少しだけ休みたい。
読んでる人いたら少しだけ保守頼む
それと、有希を有紀と書いていて済まなかった
皆の嫁の固有名詞を誤るとは・・・
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378:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/03/21(土) 22:30:52.69 ID:KwGdRd5r0
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やっと追いついたと思ったら保守をしていた
何言ってるのかわからねーと(ry
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379:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/03/21(土) 22:33:27.60 ID:23adoGF6O
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ここまで長いとはな…
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380:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/03/21(土) 22:39:22.64 ID:KwGdRd5r0
-
ほ
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381:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/03/21(土) 22:40:17.63 ID:23adoGF6O
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ほしゅる
もしかして読んでるの二人だけ?
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382: ◆IKATON/.1Q :2009/03/21(土) 22:41:37.33 ID:ORxzLhvV0
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保守あんがと
リポビタンD買って来た
再開する
読んでるのが居なくても最後までいちおー完結させる
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383:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/03/21(土) 22:43:02.22 ID:El332pedO
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みんなROMってるだけかと
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384: ◆IKATON/.1Q :2009/03/21(土) 22:43:27.39 ID:ORxzLhvV0
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「早速ですが、涼宮さんについてお話があります。」
挨拶が済み、二人で食べ始めるや否や、古泉は俺が一番話題にしたくないことを直球で切り出した。
まあどこかで予想はしていたんだが。
「僕は貴方に涼宮さんと向き合って下さいとお願いしただけです。距離を置けとは言っていないはずです。彼女の気持ちは考えてあげていますか。」
俺の気持ちは?なんて子供っぽいこと言っても仕方が無い。
「前から気になっていたんだが、お前はハルヒの心情の変化を察知する能力でもあるのか?」
「ええ少なからず感じ取ることができます。しかし、そうでなくとも観ていれば明らかにわかることも往々としてあるはずです。貴方にはお分かりになりませんか?」
珍しく強い口調だな。
「しかしそんなことを言われてもだな、俺はあいつとは知り合ってまだ少ししか経ってないし、解らないことだらけだぞ。」
責められても困るんだよ。
「そういうことではありません。ちゃんと涼宮さんと向き合ってあげて下さい。」
「第一向き合うってどういうことなんだ。普通の友人関係は続けてるだろ。『普通の』。
教室では前後の席だ、空き時間毎に話はするし、部室でも一緒だ。毎日お前等も一緒になってまったりした時間を過ごしてるだろ。」
こちらも少し口調が強くなる。
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386: ◆IKATON/.1Q :2009/03/21(土) 22:44:24.78 ID:ORxzLhvV0
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「その部室での態度も少し自重してもらいたいです。
あなたはいつも長門さんばかり気に掛ける。朝比奈さんにばかり笑いかける。少し自重して下さい。」
おいおいおいおい。
「なんでそこまで言われなきゃならんのだ。」
「それだから貴方は全く考えられていないというのですよ。」
流石にカチンとくる。臭い息を吐くのはそこまでにしてもらおう。
「生憎と、おれは何年間もハルヒに執着してストーキングと観察をしてきたお前等のようなハルヒ専門家とは違う。」
続ける
「そういえばお前はハルヒでオナニーしてみたか?ちゃんとできるだろ?ハルヒ研究者の素質があるんじゃないか?確かお前の理屈では研究者になるには専門分野でオナニーできるかが重要なんだろ?」
「できるでしょうね。ですが、あなたもできるはずです。そうですよ。貴方は涼宮さんでおなにんすればいいんですよ。
涼宮さんでおなにんしてください。おなにんしてください。そして涼宮さん研究家になればいいんですよ。」
・・・おいおい、意味が分からない上に人聞きの悪いことをでかい声で言うなよ。しかも別に重要じゃないから2度も言う必要はない。
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390: ◆IKATON/.1Q :2009/03/21(土) 22:55:01.80 ID:ORxzLhvV0
-
げんなりして教室に戻ると、ハルヒは机にうつ伏せ状態。寝てるのか?
俺が机に座り、同じく寝ようとする。
「あんた古泉君と何話してたの?随分熱心に話してたみたいだけど」
起きてたのか。
「何だ盗み聞きしてたのか?」
お前でオナニーお前でオナニー
「さっき見かけただけよ。ガラス越しだったから声までは聞こえなかったわ」
お前でオナニーお前でおあんいー
「そうか。別に大した話じゃないよ。おやすみ」
俺は会話と無理矢理閉じた。
本当は男同士の話に入るな!って言ってみたかったけど、別に俺と古泉はニュータイプ同士じゃない
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391: ◆IKATON/.1Q :2009/03/21(土) 22:56:01.39 ID:ORxzLhvV0
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最近ハルヒが大人しい気がする。
授業中も馬鹿な話題を振って来ない。
『今週の目標はISO世界標準化機構にあたしが人類の世界標準になるように登録させることよ!」
なんて馬鹿な言葉が聴けないのは少し寂しくはある。
そんでまあ、あの昼休みの会話が理由ではない。
ただ確実にきっかけにはなっていた。
あ、それロン。それが俺の上がり牌でした。程度の。
俺は部室に行かなくなった。
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392: ◆IKATON/.1Q :2009/03/21(土) 22:57:16.41 ID:ORxzLhvV0
-
「最近涼宮と喧嘩でもしたのか?」
いや、してないが?
「そうなの?最近距離あるし、涼宮さんが元気ないのはそのせいだと思ってたんだけど。」
下校中の谷口と国木田はこの話題ばかりだ。
「何だかわからないが、さっさと仲直りしろよ。」
大きなお世話だ。
ほんの数日とは言え、毎日行っていたところに行かなくなるというのは気分的に落ち着かない。
帰ってもやることなんてないしな
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393: ◆IKATON/.1Q :2009/03/21(土) 22:57:37.91 ID:ORxzLhvV0
-
部室に行かなくなっても、教室ではハルヒは何事もなかったのように話しかけてくる。元気は無さげだが。
まあたまにはみんなと遊びたいもんだ。
長門や朝比奈さんはどうしてるだろうか。
授業中、バイブ音がなった。
俺の携帯は家族以外は古泉と、ハルヒからたまに入る程度だ。基本的に学校に居るときは鳴らない。
誰だろう?
机と自分の身の間からこっそり見る。
-
394: ◆IKATON/.1Q :2009/03/21(土) 22:58:39.08 ID:ORxzLhvV0
-
『今日も部室に来ないの』
長門だ。
疑問符を付けないのが長門らしさなのか、ただの独り言として送って着てるのか判断に迷う。
こいつの場合はどちらもあり得そうだ。
『どうした?』
とりあえず返す。
『用がある時はいつでも連絡をくれと言った。』
確かに言ったが流れが掴めん。
まあ長門に会話の流れをどうこう言っても仕方ないか。
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395: ◆IKATON/.1Q :2009/03/21(土) 22:59:06.80 ID:ORxzLhvV0
-
それはいいとして、部室に顔を出してほしいという意味なのは間違いない。
命の恩人たる他ならない長門の要望だ。出来る限り応えてやるべきだ。
だけど面倒なんだよなーこれが。
まあ、我がままいってるのは俺だ。
俺団長だし、別に辞める気もないし、ちゃんと責任持って行くかないとな。
「誰とメールしてたのよ。」
授業が終わるとハルヒが訊いてくる。
「長門が部室に顔出せってさ。」
「そう」
無機的な反応だ。
-
400: ◆IKATON/.1Q :2009/03/21(土) 23:04:57.73 ID:ORxzLhvV0
-
放課後の部室はいつもと変わらない雰囲気だった。
朝比奈さんのダンボールも増えたな。当然俺を護って大破したジムはないが。。。
まさかジム考えてノスタルジーのようなものを感じることがあるとは思わなかったな。
「あ~おひさしぶりですう。会いたかったんですよ~」
甘い甘い朝比奈ボイス。つってもほんの数日じゃないですか。
あー最近刺激が足りない。今度ダンボールだけじゃなくてお面も付けさせようかな。別の趣味が堪能できそうだ。
まあ何て言うかやっぱ普通に楽しいわな。
古泉は何食わぬ顔で通常通りボードゲームで遊んでくれるし、
ハルヒも馬鹿みたいに熱心に自分の手相を捏造すべく手の平に落書きしてる。
んで長門は・・・仲間になりたそうにこちらを見ているな。
仲間にしますか。
→はい
いいえ
殺してでも奪い取る
当然ノータイムだ。
3人でやれるところでダイヤモンドにしよう。
・・・・・・・・
・・・・・
・・
んで、馬鹿な俺は、古泉からの、ハルヒからの、そして朝比奈さんからの視線に気づかなかったわけだ。
-
405: ◆IKATON/.1Q :2009/03/21(土) 23:14:57.86 ID:ORxzLhvV0
-
その日の夜、俺はいつも通りおやすみタイムに付いた。
寝る前30分くらい前に温かいものを飲むと、眠り易くなるとかいう、誰かが言ってたのを信じてココアを飲んで、少し雑誌を見て、電気を消して布団に潜る。
寝る直前のいつもの習慣だ。
それでだ、よくわからないが、気がつくとそこはいつもの学校での一風景だった。
何を言っているのか分からないと思うが、周りからおはようとか昨日~~とか毎朝聞いている日常の単語が飛び交ってるんだ。
朝の時間、登校直後、ハルヒとの雑談時間だ。
日常のようで違うことがはっきりわかるのは、ここが閉鎖空間だということだ。
うげっ。朝倉も居るじゃねえか。大丈夫だろうか・・・
やれやれ
催眠術や超スピードなんかじゃあ断じてない、恐ろしいものの片鱗を味わっているようだ。
何が起こっているのかわからない
-
406: ◆IKATON/.1Q :2009/03/21(土) 23:16:43.56 ID:ORxzLhvV0
-
ハルヒが普通・・・これは当たり前のようで当たり前のことではない。
どう考えても異常なのだ。
つーか閉鎖空間にも現実世界の全ての人が存在しているんだとすると、ハルヒもフェイクなのか?
とは言っても、ここはハルヒの精神世界とか何とか言ってたから、このハルヒはハルヒで間違いないはずなんだ。
「ちょっと顔洗ってくるわ。やっぱ早く起きたら眠いもんだ。」
「また寝てたら起こすからね。しっかりなさい。それとちゃんとハンカチは持ってる?」
はいはい。
とりあえず確認することは古泉だ。こっちに来てるかもしれないからな。
特進に辿り着き、俺は一安心。ちゃんと居てくれた。
「あ、おはようございます。朝に会うなんて珍しいですね。」
「あ、ああ。…あのな古泉。」
「部活ですか?今日もちゃんと行きますよ。今日は負けませんよ。」
すっげー笑顔だな。きめえ
つーかだめだ。こいつは古泉じゃねえや。
どうする?俺?
1.ハンサムでもない俺は(ry
いや、考えるまでもない、古泉は来てくれるはずだ。あいつはクライマックスは外さねえ漢だ。
-
408: ◆IKATON/.1Q :2009/03/21(土) 23:25:04.51 ID:ORxzLhvV0
-
・・・・
・・
・
とりあえず歩き回って確認できたこと。
ハルヒが関係が薄い人間になるほど、言動はRPG並みだ。
古泉が言っていた通りだ。同じことしか言わなねえ。
『ここは1-7組の教室よ』なんて何度話かけても言われた時はこんな状況ながら吹いたね。
まああいつもRPGくらい何かやったことあるんだろうから、そういう構成要素が入っていてもおかしくはないさ。
そして、ハルヒに近い存在になるほど、ハルヒの中での情報が多い為か言動のバリエーションが多少増えるようだ。でもRPGには変わりない。
RPGのRってRealの略なんだっけ??
もうHRの時間だ。とりあえず戻るべきか。
俺が教室に戻ろうとしたとき、助け舟が現れた。
ダンジョンの中で宿屋とか道具屋あると泣けるよね。
遠くに赤い彗星が見えた。今度こそリアル古泉に間違いない。
HRはもう無視だ。
-
414: ◆IKATON/.1Q :2009/03/21(土) 23:28:00.13 ID:ORxzLhvV0
-
俺は一目に付かないところということで、旧館のトイレを選択する。
付いても問題無さそうな気もするが。
トイレでついでに用を足していると、窓側から人の型をしていても人間には見えない、目も鼻も口もない、赤く輝く人の型が入ってくる。
普通なら叫び声あげるとこだよな・・・
赤い人型は「やあ、どうも」なんて爽やかなことを言って連れションを始めた。
お前出るのか?
「わかりません。試したことはありませんから」
どうでもいい。
「で?完結に頼む。」
「駆けつけるのが遅くなってしまい申し訳ありません。見ての通りこれは異常事態です。」
まあ見たまんまだな。
「普通の閉鎖空間なら僕は難なく侵入出来ます。しかし今回はそうではありませんでした。こんな不完全な形態で、しかも仲間の力を借り受けてやっとなんです。それも長くは持たないでしょう。」
「これはどういう世界なんだ?ここにいる現実世界の人間は俺だけなのか?」
「結論から話しますと、涼宮さんは酷く自己嫌悪に陥っています。」
端的過ぎて伝わらん。
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415: ◆IKATON/.1Q :2009/03/21(土) 23:29:04.08 ID:ORxzLhvV0
-
「その結果、自身を消去する選択を持ってしまったのではないかと思われます。」
はあ?どこのマゾだ。
「もっと分かり易く頼む。」
「正直解りかねています。自分が居なくなりたいとか、そういうことは誰でも考えたことはあるはずです。
ですから自分が消去の対象になったというのは理解はできるんです。」
やっぱマゾ。
「しかし実際消去がされるのかと言えば、ネ申人も現れない。ただ平穏が日常が迎えられているだけです。」
そうなんだよな。ハルヒも気持ち悪いくらいに普通の明るい前向きな女子高生をしてるっぽいんだよな。
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416: ◆IKATON/.1Q :2009/03/21(土) 23:29:52.99 ID:ORxzLhvV0
-
「おそらくですが、この空間は、今の涼宮さんの理想そのものなのかもしれません。
彼女はここで消去を敢行するかどうするか、今その選択をしようとしている状態なのだと思われます。
こうしている間にもネ申人を出現させて自身を消去してしまうかもしれない。
それどころか涼宮さんが見境なく自分ごと世界を全て消去してしまうかもしれません。」
「・・・・・」
「おかげで我々の上の方は恐慌状態です。神を失った、或は見捨てられた中途半端な宗教なんて見ていて滑稽ですよ。
救いをもたらすような・狂信できるような神が居なくなってしまえば、結局は神がどうとかより保身ですからね。」
「なあ、俺がこっちに居る理由は?」
「単純な答えです。彼女は貴方と平穏な暮らしがしたかったんです。選ばれたのは貴方唯一人。
貴方には早いとここの意味を気づいていてもらいたかったのですが。」
俺がご機嫌取りすればいいってことか。
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417: ◆IKATON/.1Q :2009/03/21(土) 23:31:46.32 ID:ORxzLhvV0
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「ハルヒが自己嫌悪に陥った原因は?それが解らないとどうしようもない。」
「僕が教えられるのは、涼宮さんが貴方と朝倉さんを捜しに行った日、彼女はある男性に関してある女性に嫉妬心を持ち、露骨な言葉と態度でその男性に表現してしまいました。かなり後悔したようです。
そして嫉妬心を持ったとき、その相手が居なければとまで考えてしまいました。彼女はそれで一層の自己嫌悪に陥りました。
さらに困った事に、次の日からある男性と少しずつ距離感が出来ました。彼女はそれを、自分があんな態度をとったからだとより一層自己嫌悪に陥りました。
あー何でこんな説明しなきゃならないのでしょうか。馬鹿らしくて仕方がありません。まじで馬鹿らしい。いい加減にして下さい。」
最後の台詞聞き捨てならないぞ。
真面目に説明しろ。
「これが僕にできる精一杯の説明です。」
古泉の光はウルトラマンのカラータイマーのように点滅を始めた。
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418: ◆IKATON/.1Q :2009/03/21(土) 23:32:59.49 ID:ORxzLhvV0
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「そろそろ限界のようです。このままいくとあなたがたとはもう会えそうにありませんね。」
溜め息まじりに古泉が言う。
「もし、この世界だけが残る・・・なんてこともあるのかもしれませんが、もしそうなったらこっちの僕とも仲良くして下さいね。」
あんな人形と仲良くできるか。
古泉はもとの赤玉に戻りつつあった。人間の形が崩れ、燃え尽きた恒星のように収縮していく。
「俺たちはもうそっちに戻れないのか?」
「貴方と涼宮さんが次第ですかね。僕としましては、あなたや涼宮さんともう少し付き合ってみたかったのですがね。」
そう思うなら隠し事しないで全部言えよ。
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421: ◆IKATON/.1Q :2009/03/21(土) 23:34:09.18 ID:ORxzLhvV0
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「ああ、そうそう、長門有希と朝比奈みくるから伝言を言付かっていたのを忘れてました」
完全に消え失せる前に、古泉はこう言い残した。
「長門有希からは『貴方に手紙を書きたい。』朝比奈みくるからは『ついにアッザムが完成しました。』と、以上です。」
最後はあっさりしたものだった。蝋燭の火を吹き消したような。
つーかおいおい、二人とももっとヒントになるようなこと伝えてこいよ。
二人とも意味が分からない。
つかえねーよお前等。
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424: ◆IKATON/.1Q :2009/03/21(土) 23:40:41.73 ID:ORxzLhvV0
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さてと、どうしようか。
ハルヒが鍵なら教室にでも戻るか。
ハルヒが何らかのストレスを感じているのが原因ならそれを取り除けばいいだけのはずだ。
戻る時間は、ちょうどHRをサボった程度で済んでいた。
「ちょっと大丈夫なの?無理な早起きなんてするから体調崩したんじゃないの?」
席に着くなりハルヒが心配そうに訊いてくる。
「保健室いく?熱だけでも計ってこようか?」
ほんとにハルヒが女子高生みたいだ。いや女子高生なんだけどさ。
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427: ◆IKATON/.1Q :2009/03/21(土) 23:48:29.40 ID:ORxzLhvV0
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授業中には、時々落書き用紙が回って来て、内容は『ねむいよ~』とか取留めもないことやほんとにただの落書きだけだ。
んで授業の合間毎に『昨日のあれ見た?』なんて信じられない話題を振ってくる。
『ちょっとネクタイ曲がってるわよ』なんて言いながら手を掛けてくる。
昼休みも一緒に飯を食った。
これがハルヒが本来理想としている日常なのか?
周囲の人間がRPG仕様なのは気持ち悪いが、ほんと絵に描いたような一般的な日常じゃないか。
でももしかしたら、確認する気もないが、この中に8%ゲイと3%のピザデブがいるのだろうか。
自発的に性転換した気違いがいるのだろうか。
いや、多分居ないな。あいつは形から入ろうとしていただけで、自分が何も気にしないで気にされないで生活できることを望んだだけなんだ。きっと。いや知らんけどさ。
色々ハルヒの言動を思い起こすと矛盾がたくさん出てくるが、それはハルヒでオナニーできる古泉博士に考えてもらえばいいさ。
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428: ◆IKATON/.1Q :2009/03/21(土) 23:53:25.21 ID:ORxzLhvV0
-
っていうかさ、これなんてギャルゲーなわけ?
一般的というより、ハルヒがただの女の子をしている日常だ。
ハルヒのノリはどれかと言えば少女漫画の幼なじみじゃないか。
ちょっと気の抜けた幼なじみに世話を焼いているような。
ハンカチの確認とかネクタイ絞め直すなんて思いっきりそんな感じがする。
もしかしてハルヒはラブコメがしたいのか?
だが残念な事に俺はエロゲーやギャルゲーはやったことがない。
一度ときメモをやったことがあるが、冒頭で女の子が主人公を名前で呼んでくれるところを、何とか卑猥な台詞で呼ばせたくて四苦八苦して終わったんだ。
あれ難しいんだよな。ストレートな言葉だと名前入力で弾かれてしまう。
何とか入力できたチンカス、『おはよう!チンカス君!』そう呼んでもらえたときに満足して友達に返してしまったんだ。
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429: ◆IKATON/.1Q :2009/03/21(土) 23:57:57.83 ID:ORxzLhvV0
-
いや、でも何となく答えに近づいた気がした。
古泉が言っていたのは男性に関して女性に体する嫉妬心と言っていた以上、恋愛関連なのは間違いない。
相手が誰なのかは分からないが、探している余裕はあるだろうか、いやない(反語)
時間が経てばあの巨大ところ天の助が現れるかもしれない。
きっとハルヒはラブコメがしたいんだ。うん。
こんな女の子したいだけのハルヒなんてあり得ない。
きっかけがきっかけだったから、こういう人格構成の脳内ハルヒが産み出されたんだ。
こいつが満足したら決着なはずだ。
よし。というわけで代役としておれ頑張っちゃおう。
でも、俺相手でぶち切れられたらどうするか・・・
やっぱちゃんとした相手を探しにいった方がいいのか?
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431: ◆IKATON/.1Q :2009/03/22(日) 00:01:52.10 ID:kY9GWVpc0
-
そうこう考えているうちに時は放課後、部活動の時間だ。
人形ども相手のはずだが、どうしてどうして皆現実と変わらないくらい豊富なリアクションを持っている。もっとも、長門は豊富とは言えないが。
まあそれだけハルヒがこの部室が好きだったのが解るってもんだな。
いやしかし、調べると言っても、どうしたもんか。
そんな情報を持っているやつがこの世界にいるとは思えない。
持つためには、ハルヒが相談して、ハルヒの中でこの人はあの情報を持っていると認識していないとだめだ。
現実世界の古泉がストーキングで知ったからといってもそのことをハルヒに認識されていないと意味が無い。
古泉と碁を打ちながらさっきの続きを考える。
本人に訊くのが手っ取り早いんだろうが、地雷を踏みそうで怖いんだよな。
何ともこういうので女性の事考えるのは俺には敷居が高い。
情報統合思念体だっけ?
そいつもこんな感じで悩むのだろうか。
宇宙人端末を使ってそういうの学習って、発想が終わってるよな。俺だってわかんねーのに、長門にそういう感覚が芽生えたところで、統合思念体自身は何もわかんねーんじゃねーの?
俺人間だしどうでもいいけど。
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432: ◆IKATON/.1Q :2009/03/22(日) 00:07:22.94 ID:kY9GWVpc0
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あ・・・
ここで俺は発想の転換が起こった。
そう宇宙人だ。宇宙人だよ。
宇宙人が野球少年の頭の精神世界に閉じ込められた時に出した選択肢、あれが使えるんじゃないか?
1.ハルヒが神聖視している・・・部室を徹底的に破壊する。さすれば自我を守ろうとする意志からこの精神世界が崩壊する。
2.ハルヒの自我が耐えられないくらいの悪行をこの場で行う。さうればm¥、(ry
3.ハルヒを退部に追い込む。さすれば精神的ストレスから解放され…いや、この場合はハルヒ自身か、ハルヒの想い人なり嫉妬相手を殺せばいいのか?
ええい、ダメだ。
3は論外だし。部室は好きなだけで、別に神聖視はしてない。
まともなのは2だけじゃないか。
ハルヒが耐えられなく悪行を行う・・・
何か奇行に走るか?ダメだ、現実世界のハルヒなら大抵のことは腹抱えて爆笑してしまいそうだ。
目の前でオナニーでもすればいいのか?ダメだ俺が耐えられるわけがない。戻れたとしても、その後が大変そうだ。
この場で古泉達を惨殺するか?やっぱダメだ俺が耐えられない。グロにハルヒが耐性あるかわからんが、色んな意味でリスクが高過ぎる。
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435: ◆IKATON/.1Q :2009/03/22(日) 00:15:59.99 ID:kY9GWVpc0
-
だめだわからない。
囲碁と思索の休憩を挟むという形で俺は窓際に立って外を見遣る。
まだカオナシは現れていない。ほっとはするものの、これからどうしていいか迷う。
俺が立つ窓際の横には長門が座っている。
本の中を見ると、小難しそうな内容で、しかも振仮名が一切振られていない。
あーもう、ほんと頑張ったんだな長門。無意識の内ににぽむぽむと音が鳴りそうな手つきで軽く叩いた後、頭を撫でる。
まあ考えてみればハルヒはこいつがただ本を読んでるって思ってるだけなんだもんな。こういう長門で当然か。
そして長門は頭が撫でられるのが好きなんだろうか。心地良さそうだ。
こいつがこういう反応をするってことは、現実でハルヒから見た撫でられている長門も気持ち良さそうみ見えているってことだ。
長門から手を離して席に戻ろうとすると、窓の外、グラウンド辺りに面倒なものが現れたことに気づいた。
しかも二体見える。
俺は胸の高鳴りとともに、がっくり肩を落とした。
何か地雷でも踏んだのか?俺・・・
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436: ◆IKATON/.1Q :2009/03/22(日) 00:19:54.46 ID:kY9GWVpc0
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建物の内外から悲鳴が上がるのが聞こえる。
「うわっ。何ですかあれ。」
「気持ち悪いですう。」
「大きい」
お前等冷静だな。現実的にありそうな三者の反応だ。
というわけで逃げるか。
ってあいつ、前見たときより動き速くねーか?まじやべーって。
さっさと校舎に取り付き、解体工事を始める。
アスベストとか大丈夫だろうな。
ジリリリリリリリとかやたら耳障りな警報機が鳴り、
『これは避難訓練でひゃりません!~~~』
とか間の抜けたの放送が流れる。
まあ少し落ち着け先生よ。
それにしてもハルヒ、お前の脳内演出細かいな。
いつか一緒に映画でも撮ろうや。ジャンルはSF以外あり得ないが。
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439: ◆IKATON/.1Q :2009/03/22(日) 00:28:00.19 ID:kY9GWVpc0
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皆でわたわたしている間に、ハルヒはぼーっとその光景を眺めていた。
当然、地獄まで自分の足で歩いて行けなんて言う場面じゃない。
アミバみたいな天才を誇示したがる小物とはハルヒは違うからな。
「何やってんださっさと逃げるぞ!」
建物に大きな衝撃振動が走る。
ハルヒはまるで逃げる事にを躊躇しているように抵抗をみせるが、無理矢理引っ張り出した。
旧館内はもう狂乱状態。
まあ旧館は文科系のクラブの集合体だけあって、人が少ないことが救いだ。
「どうします!?」
「とりあえず外へ出るしかないだろ!」
それと朝比奈さん、未来的なものが使えないなら黙ってダンボール脱いで下さいよ。走るのに邪魔でしょう。
ハルヒ的には本当はどんな時でもダンボールは脱いでほしくないという事なんだろうか。
そのとき、ちょうど俺の斜め後方あたりに大きな衝撃音の震源地が現れて、後ろを振り向けば古泉他2名と分断されていた。漫画でよく見るよなこのパターン。
まあ、あいつらがここで死んでも現実世界には影響ないことを祈ろう。いや、影響ないのは間違いないからいいんだ。
決めてるのハルヒだし。そこは信じられる。
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441: ◆IKATON/.1Q :2009/03/22(日) 00:31:10.32 ID:kY9GWVpc0
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相変わらず衝撃振動は続き、阿鼻叫喚で挙動不審最上級な生徒でごった返しているが、怪我をしている生徒は一人も見当たらない。
どうやらこの世界ではダメージを受けると消えるらしい。せめてのもの救いだな。
ハルヒも人の首がぶっ飛んだりするのは見たくないんだろう。
まあ朝比奈さんなら頭を吹っ飛ばされただけなら、たかがメインカメラをやられただけだって程度で問題ないだろうが。
しかしだな、お前等もっと根性見せろ。一度ダメージ受けたくらいで消えるな。
今の俺なら、ハルヒを守る為、アーサーみたいに一回くらいはフンドシになって乗り切ってみせるぞ?
二回目はそれ以上脱ぎたくないから無理だ。
とにかく人形を押しのけて走って逃げる。とは言ってもどこに逃げればいいかなんてわからない。
ここに来てハルヒが口を開く。
「ねえ。ちょっと待って。アレはあたしを迎えに来てるのよ。あたしには分かるの。」
お前なあ、なんてこと言いやがる。
「それは違うな。お前を迎えに来てるのは俺だ。一緒に帰るぞ。」
「え?」
まったくこいつは・・・
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444: ◆IKATON/.1Q :2009/03/22(日) 00:41:20.70 ID:kY9GWVpc0
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「なあ、お前は帰ったら何がしたい?」
「何もしたいことないか?俺はたくさんあるぞ?」
「例えば、そうだな。まず古泉をゲイに仕立てあげるのもいいな。一緒に洗脳してみるか。部内で一人だと8%って数字越えちまうけどな。あっ、俺はご免被るからなっ!?」
「谷口はピザデブにしよう。俺がたくさんピザ食わせてやるよ。そんであいつには発泡スチロールでも着せてやろうぜ?朝比奈さんとは違った趣きがあるぜ?そしたらクラスにもピザデブが一人誕生だ。」
「国木田はもう女にしよう。まずは女装からだ。あとはゆっくり洗脳して去勢を勧めよう。あの容姿だ。すんなり女性に溶け込めるかもしれないぜ?これでクラスの男女比率1:1だな。」
分けの分からんことを言いながら、とにかく引っ張り回して走る。
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445: ◆IKATON/.1Q :2009/03/22(日) 00:44:56.86 ID:kY9GWVpc0
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「朝比奈さんには今度からお面を被せないか?まずはカロッゾ・ロナの鉄仮面だ。
宇宙空間で実の娘に『フハハ、怖かろう』とか変態プレイを強要する異常者だ。想像するだけで笑えるだろ?」
「長門はちょっとまだ扱いがわからないが、何か仕込めばいいさ。
とりあえず唇を真っ赤な口紅で塗ったくってやらないか?赤効果で通常の3倍喋るようになるかもしれんぞ?」
「お前のラブコメは・・・そうだな、ちょっと難しそうだが、相手を調教して体重とかDSの脳年齢もばっちり平均に抑えられるようにしてやろうぜ」
「なあ色々やりたいな。想像すると面白そうだ。そんなやつらの光景を見て、また二人でニヤニヤしようや。な?」
「つーかやるぞっ。団長命令だ!」
あっちだ!やっぱこっちか!とか言いながら右往左往しながら走っている間に旧館を出て、旧館と本館との間の中庭に付いた。
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447: ◆IKATON/.1Q :2009/03/22(日) 00:50:45.70 ID:kY9GWVpc0
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喋りながら走り回って疲れた。
中庭にある一本の木に手を介して全体重を預けてちょっと休憩。
ハルヒは・・・と
ちょっと困惑している程度の表情で俺をじとっと見つめている。
やけに冷静なんだなと思いながらも、この世界の性質から考えて一人で勝手に納得する。
ところでお前、いつの間にかリアルハルヒになってないか?気のせいか?その目つき、何故か見慣れてるぞ?
ってあれ?
なんかウンディーネ(雄タイプ)の数が増えてないか?
ていうか全方向に居ないか?
楚の歌でも聞こえて来そうだぞ。
ハルヒやハルヒや汝を如何せんってか。
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450: ◆IKATON/.1Q :2009/03/22(日) 00:57:00.66 ID:kY9GWVpc0
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四面楚歌
これって大ピンチなんじゃないか?
さてと、どうしようか。
1.たたかう
2.仲間に誘う
3.防御
4.逃げる
5.Limit !ハルヒの自我が耐えられない悪行を行う→
1は却下だ。無理に決まってる。
2もだめだ、あれはニュートラル属性だが言語が通じないだろ。
四面楚歌状態な以上、突如としてパリイ閃いても防御なんて無理だし、逃げるのも不可能だ。
で、最後の5ってなんだ?
→が付いてるってことは、その後に選択肢があるのか。
よし、試しにクリックだ。
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454: ◆IKATON/.1Q :2009/03/22(日) 01:04:13.37 ID:kY9GWVpc0
-
出て来た選択肢はこれだ。
a.アナリスク
b.ハルヒ研究者への道
c.いくわよラブコメとの合わせ技~念願のオーディション~
a・・・おいおい、なんだこれ。敷居高過ぎるだろ。何でリミットゲージ溜めてまで尻にフリスク突っ込まなきゃならんのだ。
bはもうはなっから無理だ。MP(性的興奮)が足りない。
可能性があるのはcだ。よく分からないがこれに賭けよう。
それにしてもこれは酷い技名だ
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457: ◆IKATON/.1Q :2009/03/22(日) 01:08:39.22 ID:kY9GWVpc0
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cを選択した瞬間、俺は古泉が何度も言っていた、『ちゃんと向き合ってくださいという』言葉を思い出した。
考えてみれば、俺にとってのハルヒって何だろう。
ちなみに長門陣営にとっては、『新たな科学理論構築の可能性』だっけ?意味解んねんーけど。
朝比奈さんによると、なんて言えばいいんだ?ハルヒのせいで未来に繋がる履歴がねじ切れそうってんだから『時間の歪み』みてーなもんか。
で、古泉に至っては「神」扱いだ。
そんで俺にとってはどうなのか。涼宮ハルヒの存在を、俺はどう認識しているのか?
「あんた何ぶつぶつ言ってんの?」
ハルヒはこちらをじっと見つめたままだ。
やっぱお前リアルハルヒになってるな。
えー、あー・・・もうあれを表現する語彙が尽きた。
もうなんでもいいや。
うんこ達は俺たちに向かって来ている。
周りの建築物なんてもうあって無いようなもんだ。鉄筋がすげーむき出し。
あいつら怪我とかしねーのかな。見た感じ柔らかそうな装甲なのに。
しかし、この大きさの鉄筋造りの建物の解体工事をやろうとしたら、億くらいの金がかかるんじゃないか?
解体工事請け負って、ハルヒに消去させればぼろ儲けなんじゃないか?
あ、消去されると履歴から消去されんだから商売になんねー
だめだ。
-
458: ◆IKATON/.1Q :2009/03/22(日) 01:11:08.77 ID:kY9GWVpc0
-
でだ、ハルヒはハルヒであってハルヒでしかない、なんてトートロジーでごまかしたくはない・・・
が、しかしだ、俺に取ってのハルヒを表す、朝倉が言ってたような擬数的な解答なんぞ俺は持ち合わせてなどいない。
だって仕方ないじゃないか。あいつらだってそうだ。神だなんて言ってる古泉もハルヒに対しての接し方にはもっと別のものが含まれているはずだ。たった一つの意味でなんて説明できるはずが無い。
結局俺にとってのハルヒはハルヒでしかない。それでいいはずだ。
俺は、俺にとってのたった一人のハルヒとこれから色んなことをして、子供のような多感さをいつまでも持って、色々共有していきたい。
当然そこには他の奴らもいる。それだけだ。
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459: ◆IKATON/.1Q :2009/03/22(日) 01:14:21.93 ID:kY9GWVpc0
-
そこで俺はナイスでグレートなアイディアを思いついた。
ハルヒが求めたと思われるラブコメ要素と、自我が耐えられなくなる悪行の両方を満たす可能性のある技だ。どちらか一方でも満たしてくれれば有り難い。
童貞の俺にはそれ以上のことができないし、どうしていいかもわからんから、これで妥協だ。
理性が嫌がってるのを感じっているが、今の俺を止める事はできないね。だってやってみたいもん。
世の中の高校生達はこれくらいのことからそれ以上のことまでいっぱいやってんだろ?俺だってやっていいはずだ。
あ、やべ今なら選択肢 b でもいけそうだな。まあそれは却下だ。
ところで、こういうときって何て言えばいいわけ?
ズギュウウウウウウウウウウウウンしか浮かばないんですけど?
誰か痺れてくれるだろうか。憧れてくれるだろうか。
悪行らしくきもいこと言うべきか?
『ねえキスしようよ。うんって言わないとちゅーしちゃうぞ♪」とか?
ってごめん。もう無理やりしちゃった。
肩を掴んで抱き寄せる際、ハルヒは驚愕の表情+何すんのよと言いかけてたけどまあいいや。
このまま選択肢bを始めたら誰か痺れてくれるか?憧れてくれるか?
ところでさ、俺ってもしかしたらこれをきっかけにハルヒ研究者への道を歩めるのかもしれないな。
-
460: ◆IKATON/.1Q :2009/03/22(日) 01:15:56.11 ID:kY9GWVpc0
-
・・・
・・
・
気がつくとそこは部屋。見慣れた天井、俺の部屋…?なのか?
思考能力が復活するまでにけっこうな時間がかかった。
あれ?
悪行で戻れたの?ラブコメで戻れたの?どっち?
それとも夢?夢なわけ??
何?世界が崩壊しそうとか意味の分からないイメクラシチュエーションで、同級生に強引にキスする夢見たわけ?
フロイト先生なんて言うかな?フロイトなんて読んだこと無いけどさ。
俺が消去能力持ってたら、今死んだな、俺・・・
まじ首釣りてえ・・・
-
461: ◆IKATON/.1Q :2009/03/22(日) 01:16:59.32 ID:kY9GWVpc0
-
その後は寝れなくて結構しんどかったが、いつも通り学校に登校した。
「遅刻すっぞー」
なんて谷口に遭うが、別に悪い気分じゃない。
RPGじゃない会話ができたからな。
教室に付くと、そこはいつもと同じ光景。
既にハルヒが席に着いている。
「うっす」
「はよ」
「なんだ元気ねえな?」
眠気覚ましのコーヒーを飲みながら日常のスタートだ。
「元気じゃないわよ。昨日、悪夢を見たから」
ハルヒは平坦な口調で応える。それはそれは奇遇なことがあったもんだ。たぶん同じ夢なんだな。
夢じゃないのかもしれないが、それは古泉に要確認だ。
-
464: ◆IKATON/.1Q :2009/03/22(日) 01:19:05.22 ID:kY9GWVpc0
-
「おかげで全然寝れやしなかったのよ。今日ほど休もうと思った日もないわね」
「そうかい」
硬い椅子にどっかりと腰を下ろし、俺はハルヒの顔をうかがった。
あんまり上機嫌ではなさそうだ。
これは、ラブコメで戻れたんじゃなくて、ハルヒの自我の耐えられない悪行としてあの世界が崩壊したんだな。
別にショックじゃないさ。相手は俺だし、当然だ.
「ねえ」
「何だ?」
「知ってる?」
「だから何をだ」
「・・・今日調べて来たんだけど、ファーストキスって日本人女性の過半数が高校生時代に済ませているらしいのよ。由々しき事態だわ。今度してみる?」
俺は盛大にコーヒーを吹いた。
~~終わり~~
-
466:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/03/22(日) 01:20:04.34 ID:W5bLYb/X0
-
お疲れ!!
-
470:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/03/22(日) 01:21:46.12 ID:7x5Jf9dj0
-
>>1乙でしたっ
-
471: ◆IKATON/.1Q :2009/03/22(日) 01:22:08.77 ID:kY9GWVpc0
-
エピローグ
その後のことを少しだけ語る。
ハルヒは、衝撃発言でコーヒーを吹いた俺に対して、
「そんなにびっくりしなくてもいいでしょう。」
と笑いながら言い、何故か上機嫌だった。
直前まで不機嫌そうだったのによくわからないやつだ。
-
472: ◆IKATON/.1Q :2009/03/22(日) 01:22:39.87 ID:kY9GWVpc0
-
古泉とはトイレに行った帰りの休み時間に廊下で出会った。
「あなたには感謝すべきなんでしょうね」
ああ、這いつくばって礼を言ってもらいたいね。
「でも残念なのが、見たところ僕がたくさんだしていた宿題は何一つでかしていないようですね。困ったものです。」
それについてはお手上げだ。
「ところで報告なんですがね、僕は昨晩、難攻不落と思われた風雲朝比奈みくる城をついに攻め落とすことができましたよ。」
ん?
-
473: ◆IKATON/.1Q :2009/03/22(日) 01:23:54.67 ID:kY9GWVpc0
-
「今度から朝比奈みくるの研究も始めようと思います。」
あれ?あーあー?聞こえないぞ?
今ザ・ワールド使った?
「この世の中に僕の研究対象に成り得ない女性がいてはならないのです。ですが、彼女はまさしく不敗の名将・常勝の英雄。攻防は一進一退、苛烈を極めました。」
あれ?また使った?
「今度その時の僕の武勇伝でもお聞かせしますよ。如何にして自分自身を鼓舞し、攻め落とすに至ったのか、僕の華麗な戦術講座です。ではまた放課後に。ちなみに今日は補習で遅れますので」
世界が真っ白になった。
何か聴いちゃいけないことを聴いたような気がするぞ。
そうだな。忘れよう。
-
474: ◆IKATON/.1Q :2009/03/22(日) 01:26:02.93 ID:kY9GWVpc0
-
昼休みに顔を出した文芸部部室では、長門がいつもの情景で本を読んでいた。
「見たところ字を読むのが速くなったな。漢字もだいぶ読めるようになったんだろ?」
「そう」
視線を合わせようとしないのはいつものことだ。
「なあ、また朝倉みたいなのに俺は襲われたりするのかな」
「だいじょうぶ」
長門は顔を上げ、俺を見つめた。
「あたしがさせない」
いや、どう考えても無理だろ・・・と思っていると。
「頑張って勉強する。」
とのことだ。
いやはや、将来大きくなったらパパのお嫁さんになる~的な話だな。悪い話じゃない。
手紙のことは敢えて訊かないでおく。
こいつの赤い実が弾けた相手が、気に入らない相手だったら干渉してしまいそうだ。
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475: ◆IKATON/.1Q :2009/03/22(日) 01:27:32.30 ID:kY9GWVpc0
-
放課後の部室にいたのは・・・
意外!それはアッザム!!
アッザム姿の朝比奈さんは・・・っていうかこれは酷い。酷過ぎる。
ただダンボールに身を包んでブリッジをしているだけだ。確かにアッザムは四本足ですが、それはないですよ…
「よかった、また会えて……」
そう言いながらアッザムは神風を敢行してきた。
ぐほおっ!?・・・
凄く・・・硬いです・・・
それ、ただのダンボールじゃないんですか・・・?
俺は死にそうな衝撃に苦しんだ。あばら何本か持っていかれたんじゃないか・・・?
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477: ◆IKATON/.1Q :2009/03/22(日) 01:31:26.69 ID:kY9GWVpc0
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「朝比奈さん・・・最後にお願いです・・・これを付けて下さい・・・」
それは、俺が今日家から持って来た、妹のセイラ・マスのお面だ。
思った通り、朝比奈さんは凄い息苦しそうだ。
まあ当然だ。あの巨体でたったあれだけの隙間から必要な分の酸素供給を維持しようなんざそうそうできるもんじゃない。
セイラたんの顔してシュコーシュコーってすげー息激しそうwwwwwww
やっぱおもすれえええwwwwwww
セイラのお面というのが少し残念だが、家にあったのがそれだけだったんだ。仕方ない。
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480: ◆IKATON/.1Q :2009/03/22(日) 01:33:04.91 ID:kY9GWVpc0
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それともう一つ、確認しておきたいことあったんだ。
「そう言えば朝比奈さん、首の背中のここんとこに星型のホクロがありますよね?」
朝比奈さんはもぞもぞして首の部分を見ようとしているようだ。
いや、普通自分のは見えねえって。
「ふごっ!?」
「ふごふがふごごぐふぐご!!!」
仮面そんなに喋りずれえすかw
朝比奈さんが背中に付いていたアッザム・リーダーをこちらに向けてきた。
ちょっwwww それ洒落になってないってwwwwwww
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481: ◆IKATON/.1Q :2009/03/22(日) 01:35:23.41 ID:kY9GWVpc0
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「何やってんの?あんたたち」
ヒーローは遅れて現れる。助けにきてくれたのは黒幕様だ。
でも目つきがやばい。
俺はこの感覚を知っている。。。
それは、圧倒的強者による搾取・・・
「あんた、あたしを置いてみくるちゃんをいぢろうなんていい度胸じゃない?」
俺は、ハルヒの持っていたオーラに後ずさる・・・
「みくるちゃん?そんなお面なんて飽きたでしょう?今度はこれに付け替えなさい。」
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484: ◆IKATON/.1Q :2009/03/22(日) 01:41:01.64 ID:kY9GWVpc0
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ハルヒが付けさせたお面、それは石仮面だッッ!!
「ほらみくるちゃん、俺は人間を止めるぞジョジョーっって言ってごらんなさい?」
「ふごごうごふぐほうふぐずごっぐうううう」
いやいや、ハルヒ、朝比奈さんはもうとっくに人間止めてるってwwwwwwww
・・・
・・
・
この日、俺はまた、ハルヒと共に死に至る笑いに陥った。
長門もくすくすと微妙に笑ってるようだ。
古泉早く来い。早くこの生態を分析して学会のトップに躍り出るんだ。
**
まあこうやって過ごしてりゃいいさ。先のことなんて知らん。
全部自分の裁量で、自分の器量の範囲内だ。
◆IKATON/.1Q
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485: ◆IKATON/.1Q :2009/03/22(日) 01:42:02.23 ID:kY9GWVpc0
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長過ぎて、一体どのくらいの人が全部読んでくれたかわからなけど、
みんなマジで有り難う
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486: ◆IKATON/.1Q :2009/03/22(日) 01:43:05.98 ID:kY9GWVpc0
-
しまった。
アッザムリーダーは底の方だった・・・
-
488: ◆IKATON/.1Q :2009/03/22(日) 01:43:44.99 ID:kY9GWVpc0
-
あ、ブリッジしてるから背中でいいのか。
すまん
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492:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/03/22(日) 02:01:24.11 ID:kY9GWVpc0
-
最後に雑記
小説をハルヒ以外でも読んだことあれば、もっとこなれた表現がたくさんできただろうにと、少し悔やんでます。読み直して辿々しいのがたくさんだ。推敲し切れてないのとかも多いし。
序盤の決定論と時間論辺りと情報改変・操作の話は自分の中では整合性取れてるつもりだけど、時間遡行は観測問題とか絡めると概念的に全く納得できなくて、自分の中でも整合性が取り切れてない。
穴はあると思う。まあ大学で専門で物理・哲学やったやつから見たら穴だらけだろうけど。
あと最後のハルヒが自分の消去を目的にしたのに、どういう理屈で主人公が居たのかが説明できてないのも穴。考えればこじつけられるだろうけど、面倒で放棄した。
ちなみに本作でハルヒの消去が行われたのは「クラスの席替え概念」っていう微妙なとこだけ。
最初は「いつ席替えだ?」って表現から「一年こいつの前なんて耐えきれん」って表現になったとこが皮切り。
理由はただずっと前後の席で居たいから、席替えなんて無ければいいのに、と。
そんなので消去を完遂できた理由を付ける為に、神人の強さだけが障害じゃないとか色々付けた。
長門が最初に読んでた『皇帝の新しい心』は人工知能関連の大著。
主人公達に自分のこととかを説明できるように、カンペ作りように朝倉に読まされてたって伏線のつもり。
他にもいくつかこんな感じで自分なりに頑張って伏線ちりばめたつもり。
もし気が向いたら見てみて下さい。
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515:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/03/22(日) 08:48:03.40 ID:0jUjSSchO
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とても良かった
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520:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/03/22(日) 10:19:53.54 ID:ksafU7iP0
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すげぇ面白かったw
また気がむいたらSS書いてくれ
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522:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/03/22(日) 10:39:48.43 ID:vnM4yrUJO
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>>1乙!
( ;∀;)イイSSダナー
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524:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/03/22(日) 11:37:02.58 ID:xmflNxID0
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もう>>1が驚愕書いちゃえよ
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542:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/03/22(日) 14:12:38.13 ID:dL0+r73K0
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まだ残ってることに驚愕した。>>1乙!
いやぁ面白かった。
「涼宮ハルヒの憂鬱」カテゴリのおすすめ
コメント一覧 (59)
-
- 2011年05月21日 19:57
- 面白いかどうかは分からん。だが俺は途中で投げたとだけ一応言っておく
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- 2011年05月21日 20:06
- 俺も朝比奈さんとの未来話で投げた
今後、文系のオナニーSSは二度と読まないだろう
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- 2011年05月21日 20:30
- 携帯からだが47ページあるってわかった瞬間投げた
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- 2011年05月21日 20:41
- 投げたー投げた言ってるけどSSってこういうもんでしょう…?
一回全部読んでからコメントしてくれませんか
まあハルヒSSだから読んでいる自分が言えないんですけど。
自分的には良かったです 楽しく読めました 今後も楽しみにしています
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- 2011年05月21日 21:24
- 全文読まないなら※するなって事か
楽しいどころか苛ついてきたから投げたんだけどね
長い長くない関係無しに内容で
ていうかエレ速の自治厨うぜえ
他のまとめ行くわ
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- 2011年05月21日 21:46
- SSを手軽に読める読み物くらいに考えてるから俺は投げたくなるww
読んでて楽しきゃ投げないんじゃないの?
読まずにページ数だけで投げるのはアレだがw
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- 2011年05月21日 21:47
- 文系がどうたら言う奴に梶井の本読ませたらやはり文系云々ほざくのだろうか
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- 2011年05月21日 21:48
- ハルヒしか読んでないのにこれだけ書けるのならちょっとすごいなあと思った
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- 2011年05月21日 22:13
- ※5
気分を害したなら申し訳無い
好きな種類のSSが3連続で批判?されてたらちょっと思うとこも有ってな…
本当に申し訳無い もしも見ていたら許して頂きたい
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- 2011年05月21日 22:33
- ちょくちょくガンダムネタを想像して吹いたwww
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- 2011年05月21日 22:41
- パワポケ7の野丸君やな
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- 2011年05月21日 23:08
- 長くて投げたとか糞コメン卜にもほどあるだろ…
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- 2011年05月21日 23:28
- お前らって面白いよなwwww
いつもはマジレスして読み手様状態なのにこういうSSだと「気軽に読むものだと思ってるから~」とかいっちゃうwwww
まあ、これもある種の読み手様かwwwww
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- 2011年05月21日 23:49
- 投げた読んだは別にええじゃないか。
面白い本があれば読む、そうじゃないから読まない。テレビも面白いから見る、そうじゃないから見ない。
ま、感性なんて人それぞれだからそんなもんですよ。
途中で投げた、というのも一応感想だし、読んだ者の「これは面白いだろなんだよそれはー。しっかり読んでからコメントしなよー」という反感はある種の押し付けになりますわな。「へぇー、そんな人もいるんだー」程度でいいじゃないか。そっちの方が楽だぜ?
なにはともあれ、俺は面白く感じたよー。
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- 2011年05月22日 00:26
- 長門かわええ
みくるすげえ
古泉親近感沸く
ハルヒ怖い
面白かった
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- 2011年05月22日 00:50
- SSを
side storyと思ってるか
short storyと思ってるかだな。
たしかにショートではないな
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- 2011年05月22日 00:53
- 長いからって批判されるのはよくわからんな
普通に面白かったぞ乙
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- 2011年05月22日 04:44
- いやまぁこれはオナニー言われても仕方ないんじゃなかろーか
SSなんてほぼオナニーだけど
これがオナニーオブオナニーってレベルなだけでね
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- 2011年05月22日 05:59
- なんでエレ速ってこんなキモいやつ増えたの?
前は他人のコメントに文句つけるようなやつはほとんどいなかったのに
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- 2011年05月22日 09:39
- 米19
『読者様』だからじゃねえの?
アホみたいだけどな
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- 2011年05月22日 10:25
- つまらない上に長いって駄作以外の何物でも無いよね
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- 2011年05月22日 12:20
- そりゃ変なゆとり臭いのがコメント欄に沸き始め、コメント欄を占領してそれ以外の人はコメントしなくなった
こんな感じだろ
自分の感想を書いただけで他の人にああだこうだ言われるんだもん、そりゃコメント残したくもなくなるわ
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- 2011年05月22日 14:22
- ×ふいんき
〇ふんいき
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- 2011年05月22日 15:02
- 途中で投げても別にいいと思うけどわざわざスクロールしてまで報告しなくてもとは思う
とくに携帯の人
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- 2011年05月22日 15:10
- だいたいゆとり臭いコメントしてるのはもしもしなんだよな
ここはデフォルトの名前欄が長いからすぐにわかる
長いから投げたとか、ページ開いた瞬間に長さはわかるんだから
いちいち報告しなくていい。「これはSS」って言ってるのと同レベル
コメント欄閉じるかコメント承認制に戻したほうがいいんでないの
読む前に覗いてもなんの参考にもならないもん
ゆとりが自分よがりの的はずれなコメント残してるとか読む気も失せるわ
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- 2011年05月22日 15:26
- 長いから投げたってのもわりと参考になる
厳しい言い方をすれば読み手を引き込むだけの力が書き手に無いってことになるから
まあそこは個人の見方によるけど
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- 2011年05月22日 17:34
- ガンダム知ってる人には面白いSSだと思います。。有機生命体を表すための長文のくだりは携帯で読むのに投げそうになるのので飛ばせは良いと思う。
ストーリーの纏まり方もGOOD!!。
ケロロ軍曹的なノリが好きな自分には良作でした。
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- 2011年05月22日 17:45
- 批判してる人はなんなんだろう
更新された全SSが自分の趣味に合わないといけないみたいな観念でこのブログを見てるんだろうか
自分の趣味にあわないと思ったらその時点で読むのやめればいいのに
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- 2011年05月22日 18:02
- 嫌なら読むな!(キリッ
コメントするな!(キリッ
まるでハ○速
いつからこんな過ごしにくい場所になったの?
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- 2011年05月22日 23:50
- あと3日で驚愕か……
胸熱
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- 2011年05月23日 06:01
- ssは長ければ長いほど良い
面白ければな
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- 2011年05月23日 13:24
- 過ごしにくい場所()
コメント欄を掲示板と勘違いしてるのかな?^^;
過ごす必要なんて微塵もない
自分の感想書き込んだらもうそれでオシマイでいいんだよ
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- 2011年05月25日 09:44
- 一日で読みきれない量のSSを呼んだことあるけど面白すぎて睡眠時間が削られた
長いから投げたっていってるのは正確じゃない
長くて面白くないから投げた、もしくは読みにくいから投げたが正解
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- 2011年05月26日 02:20
- つまらないとも読みにくいとも感じなかった。全然とは言わないが。じゅうぶん傑作認定できる。
いろんな作品のネタを織り込みながら進めていくところは『ふしぎの海のナディア』を思い出すな。
ここまでやったら、オナニーじゃなくておなにんと呼んで然るべき。
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- 2011年05月29日 05:10
- エレ速の米欄閉鎖するまでこの調子だろなww
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- 2011年08月14日 21:00
- 文句が多いけど、良作だと思うよ
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- 2011年08月17日 03:53
- まあ少なくとも俺はおもしろいと思って読んでたよ。
ていうか腹抱えて笑ったww
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- 2011年08月21日 17:21
- 作品の感想を書くのがコメント欄じゃないの?
俺は結構わかるネタが多くて面白かったよ。
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- 2011年08月25日 20:58
- つまんねぇよ
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- 2011年10月16日 09:00
- いやぁ面白かったよ。かなり設定凝ってるし。
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- 2011年10月16日 09:00
- いやぁ面白かったよ。かなり設定凝ってるし。
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- 2012年01月12日 23:39
- 原作ハルヒが世界改変に成功したif世界と思って読み進めたが割と面白かった
学習用の端末として未熟な長門、既存データ読み出し専門で発展性がない代わりに高性能な朝倉とか
設定も良かったな。キョンの性格設定はイマイチ受け入れがたかったけど
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- 2012年04月01日 01:13
- 話は面白いけど、いちいち整合性がどうだの話に出しててうざい。そもそも文系で知識に自信がないなら、書くなよ、目障り
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- 2012年07月26日 22:36
- 金田
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- 2012年09月09日 08:14
- 読者に投げさせちゃった上にコメントまで書かせるほどうんざりさせた時点で長編としてはアウト
あと※4うざい
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- 2012年10月31日 00:22
- すごい
オモシロイ!
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- 2013年01月19日 02:54
- 量もアレだが中身も割と濃かったから読むのに時間かかったわ
でもハルヒSSらしくていいな
このSSはお気に入りに追加しておこう
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- 2013年04月08日 05:53
- くそ~全部読んだけど難しい。パロディと理論の解説をしてくれ~
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- 2013年04月08日 05:54
- アーサーより俺はマキシモ!キリッ
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- 2013年06月12日 22:51
- 朝比奈さんの扱いw
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- 2013年08月06日 21:01
- 全部読んだ。なかなか良かった
長門は原作より好みだったよ
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- 2013年08月17日 21:53
- 設定がかなり好みだったよ、新鮮で面白かった
これのハルヒ非メイン版を読んでみたい
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- 2013年08月22日 06:26
- 楽しめたよ
なかなかよく出来てるね
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- 2014年02月25日 17:17
- 朝比奈さんになんの恨みがあんだよwいいぞもっとやれ!
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- 2014年03月03日 17:42
- ガンダムネタ好き
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- 2014年05月06日 18:02
- 原作のみくるファンなら切れて良いと思う、みくるの扱い。私も読み始めの時はちょっと眉間にシワが寄ったかも。
慣れてくると次のみくるネタが待ち遠しくなる。まぁ、出てくるネタがわからないとやっぱりおもしろくないのかもしれない。
出て来たネタはジョジョ、ガンダム、エヴァ、アンパンマン、ナウシカ辺りかな?他にもありそう。
個人的にはとても楽しめました♪
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- 2014年06月09日 04:51
- 今更ながら面白かった
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- 2015年07月31日 17:01
- ネタ詰め込み過ぎて話のテンポが悪いのが惜しい
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- 2021年09月05日 01:25
- 長くても面白ければ人は読むもんだよ
投げたってことはつまりそういうことだ