勇者「もしかしてこの世界、ここまでしか作ってないんじゃ……」

1:以下、5ちゃんねるからVIPがお送りします 2021/12/02(木) 18:06:13.770 ID:a2uaOunh0

町長「町を襲う魔物を倒して頂き、ありがとうございます」

勇者「いえ、当然のことをしたまでです」

勇者「ところで、これから我々は船で他の大陸に渡りたいのですが……」

町長「でしたら、北の町に行くのがよろしいでしょう。大きな港がありますから」

勇者「ありがとうございます。それじゃみんな、今度は北の町に行こう!」

戦士「おう!」

女魔法使い「オッケー!」

女僧侶「分かりました!」



4:以下、5ちゃんねるからVIPがお送りします 2021/12/02(木) 18:09:31.298 ID:a2uaOunh0

スタスタ…

勇者「北はこっちだよな」

戦士「北の町ってどんなところなんだろうな」

女魔法使い「楽しみ~!」

女僧侶「おいしい海の幸を食べられるといいですね!」

スタスタ… スタスタ…

ザザーン…

勇者「海に着いた」

戦士「町なんかどこにもないぜ!?」



5:以下、5ちゃんねるからVIPがお送りします 2021/12/02(木) 18:12:23.546 ID:a2uaOunh0

勇者「ここが大陸で一番北の地点のはずだ……」

戦士「じゃあ、俺らが町を見逃したってことか」

女魔法使い「まっすぐ北に向かってたつもりだったけどね」

女僧侶「もしかしたら、北といっても“北東”だとか“北西”だったのかもしれませんね」

勇者「仕方ない、北の町を探そう!」

……

勇者「ない……どこにもない!」

戦士「ああ……“北の町”なんて見当たらないぜ!」

女魔法使い「私なんて、北の町を教えてくれた町長さんがいる町まで戻っちゃったわよ」

女僧侶「これはどういうことでしょう?」

勇者「あまり考えたくなかったが、これはもしかすると……」



6:以下、5ちゃんねるからVIPがお送りします 2021/12/02(木) 18:15:16.745 ID:a2uaOunh0

勇者「この世界、ここまでしか作ってないんじゃ……」

女魔法使い「え?」

女僧侶「どういうことです?」

勇者「この世界を創造した“神”という存在がいたとして、その神はここで世界を作るのをやめてしまったんだ」

勇者「だから、北の町なんかどこにも存在しない……」

勇者「下手すると、この大陸以外の大陸や、俺たちが倒すべき魔王すら存在してないのかもしれない」

戦士「ってことは俺らはどうなるんだよ!?」

勇者「どうもこうもない。俺たちの冒険は……ここで終わりだ」



8:以下、5ちゃんねるからVIPがお送りします 2021/12/02(木) 18:18:32.294 ID:a2uaOunh0

女魔法使い「そ、そんなぁ!」

戦士「こんなのあんまりだぜ! みんなの期待を背負って旅立ったのに!」

勇者「……」

女僧侶「教えて下さい! どうして神は作るのをやめてしまったんでしょう?」

勇者「俺に聞かれても……。だけど、推測はできる」

勇者「神様はきっと忙しくなったとか、あるいは飽きちゃったんじゃないかな」

戦士「飽きたって、そんな理由で俺らをほっぽり出したのかよ!」

女魔法使い「飽きるくらいなら最初から作らないで欲しかったわ! 私たちどうすりゃいいのよ!」

勇者「……」



11:以下、5ちゃんねるからVIPがお送りします 2021/12/02(木) 18:21:51.847 ID:a2uaOunh0

勇者「こうなったら考えを変えよう」

女魔法使い「え?」

勇者「ないのなら……作ればいいじゃないか」

女僧侶「作るって何をです?」

勇者「とりあえず……どこにもなかった、“北の町”を」

勇者「家を建てて、道を整えて……と町を作れば、きっと住民が集まってくる!」

勇者「神様がもう見てるか知らんが、俺らだけでもやれるってところを見せてやろうじゃないか!」

戦士「そりゃいいな! 賛成だ!」

女魔法使い「目のつけどころが違うわね!」

女僧侶「さすが勇者さんです! 私たちを勇気を与えてくれる!」



12:以下、5ちゃんねるからVIPがお送りします 2021/12/02(木) 18:25:12.307 ID:a2uaOunh0

勇者「さいわい、木は沢山あるからな。斬るぞ!」

戦士「おう!」

スパッ! ズシン… ズパッ! ズズン…

勇者「そして、これらの木材を使って……家を建てる!」

戦士「大工仕事もなかなか楽しいもんだな!」

トンテンカン… トンテンカン…



13:以下、5ちゃんねるからVIPがお送りします 2021/12/02(木) 18:28:17.872 ID:a2uaOunh0

女魔法使い「私はこのあたりを掃除するわ」

女魔法使い「風よ……塵を吹き飛ばしたまえ!」

ビュゴオッ!

女魔法使い「うん、スッキリ! ……あんたは何をしてるの?」

女僧侶「祭壇を作ってるんです」

女魔法使い「祭壇? 神に祈るための?」

女僧侶「そうです。やはり心の拠り所は必要ですから」

女僧侶「ただし、祈るのはこの世界を放り出した神様にではなく……」

女僧侶「これからの世界に対してです。そうすれば、きっと新しい神様が生まれるはずです」

女魔法使い「なるほどね。しっかり神官を頼むわよ」

女僧侶「はいっ!」



15:以下、5ちゃんねるからVIPがお送りします 2021/12/02(木) 18:31:23.175 ID:a2uaOunh0

ワイワイ…

「こんなところに町が出来たのか」

勇者「噂を聞きつけて人が集まってきた」

「ここに住んでいいのかい?」

戦士「もちろんだ!」

「道路も丁寧に舗装してあるわねえ」

女魔法使い「私がやったのよ! すごいでしょ!」

「おおっ、この祭壇は……!」

女僧侶「皆さん祈って下さい。この新しい世界が栄えることを!」



17:以下、5ちゃんねるからVIPがお送りします 2021/12/02(木) 18:34:50.016 ID:a2uaOunh0

ワイワイ…

「いらっしゃい、いらっしゃーい! 安いよー!」

「ママー、こっちこっち!」

「ウ~イ……酒がうめえや」

勇者「産業が活性化して、人口が増えてきたな」

戦士「ああ、存在しなかった北の町が誕生したんだ!」

女魔法使い「すごいわ私たち!」

女僧侶「この世界を作った神様にざまあみろしたい気分ですね!」



19:以下、5ちゃんねるからVIPがお送りします 2021/12/02(木) 18:39:24.499 ID:a2uaOunh0

やがて――

勇者「この町もだいぶ栄えてきた」

勇者「そろそろ、町から“国”へとランクアップしたいと思うのだが……」

ワァァァ… ワァァァ…

勇者「みんな、賛成のようだね。さて……“王”に相応しいのは誰だと思う?」

「勇者!」 「勇者!」 「勇者!」 「勇者!」 「勇者!」

勇者「……!」



21:以下、5ちゃんねるからVIPがお送りします 2021/12/02(木) 18:42:04.537 ID:a2uaOunh0

勇者「俺がこの国の王で……いいか!?」

オオオオオッ!!!

勇者「ありがとう……。みんな、ありがとう」

勇者「それでは本日より、俺は王となり、仲間だった三人は貴族とする!」

戦士「よろしくな!」

女魔法使い「これからも私たちを応援してね!」

女僧侶「皆さん、祈りを忘れずに」

勇者「きっといい王様になってみせる! 期待していてくれ!」

ウオオオオオオッ!!!

…………

……



22:以下、5ちゃんねるからVIPがお送りします 2021/12/02(木) 18:46:25.878 ID:a2uaOunh0

……

侍女「ワインです」

勇者「うむ」グビッ

勇者「不味い」パリンッ

侍女「え……」

勇者「このような不味いワインを作った職人は処刑せねばな」

侍女「えっ……!」

勇者「そして、このようなワインを運んできたお前の右手には……罰を与える」グイッ

ボキッ!

侍女「あああああっ!!!」



25:以下、5ちゃんねるからVIPがお送りします 2021/12/02(木) 18:50:09.495 ID:a2uaOunh0

勇者「さて、風呂に入るか」

勇者「……」チャプ…

勇者「ぬるい」

勇者「今日の風呂、湯加減を担当したのは誰か!?」

使用人「わ、私でございます」サッ

勇者「そうか。正直に名乗り出た勇気に免じて、寛大な処分をしてやろう」

使用人「あ、ありがとうございます!」

ザンッ! ボトッ…

勇者「拷問無し。一瞬の斬首という処分でな」



27:以下、5ちゃんねるからVIPがお送りします 2021/12/02(木) 18:53:06.519 ID:a2uaOunh0

戦士「女を連れてこい!」

娘「よ、よろしくお願いします……」

戦士「ほぉ~う、なかなか素朴そうな女じゃないか。俺好みだ。そそるぜ」

戦士「俺のパワーに耐えてくれよ。前の女は、全身骨折させちまったからよぉ」

娘「ひいっ……!」



女魔法使い「これがあなたの持ってきた宝石?」

宝石商「そうでございます……」

女魔法使い「輝きがにぶい。私に相応しくないわ。あなたは炎に焼かれて死になさい」

ボワァァァッ!

宝石商「あぎゃぁぁぁぁぁ……!」



28:以下、5ちゃんねるからVIPがお送りします 2021/12/02(木) 18:56:23.909 ID:a2uaOunh0

女僧侶「これっぽっちですか?」

信徒「え?」

女僧侶「神への寄付金……これっぽっちかと聞いてるんです」

信徒「申し訳ございません! これ以上払うと生活ができなく……」

女僧侶「生活ができぬのなら、あの世に送って差し上げましょう。神罰を受けなさい」

ズオオオオ…

信徒「が……か、体がく、くさる……」ブスブス…

女僧侶「死体は再利用してあげましょう。私の忠実なしもべとしてね」



29:以下、5ちゃんねるからVIPがお送りします 2021/12/02(木) 18:59:25.790 ID:a2uaOunh0

勇者「王と貴族は何をしても許される……」

勇者「神よ、この世界を中途半端に作ってくれて感謝するぞ!」

勇者「おかげで俺たちに刃向かえる勢力はどこにもないのだから!」



権力と名声は人を変えてしまう。

勇者と三人の仲間は瞬く間に堕落し、暴君と化した。

いつしか三人の仲間は“三鬼族”と呼ばれるようになり、勇者は“魔王”と恐れられるようになった。

創造した神がいなくなった以上、もはやこの世界には絶望しかない。

しかし――



30:以下、5ちゃんねるからVIPがお送りします 2021/12/02(木) 19:03:35.626 ID:a2uaOunh0

少年「だーっ!」バシッ

父「うわっ! ま、参った!」

父「うーむ、お前の剣筋は天性のものがあるな。とても敵わん」

少年「ありがとう」

父「お前ならもしかしたら……」

少年「うん、ぼくが世界に平和を取り戻してみせる。ぼくが魔王を倒す!」



作りかけの世界にて、少年の冒険が今始まる――

チャラッチャーン

…………

……



31:以下、5ちゃんねるからVIPがお送りします 2021/12/02(木) 19:07:25.056 ID:a2uaOunh0

男「……」

男「ずいぶん回りくどいストーリーだな、このフリーゲーム。勇者は主人公だと思ったら悪役かよ」

男「お、セーブできる。とりあえずここでセーブするか……」

母「ちょっとー! 来てちょうだーい!」

男「はーい」

男「ちぇっ、せっかくいいところだったのに」スタスタ



32:以下、5ちゃんねるからVIPがお送りします 2021/12/02(木) 19:10:21.164 ID:a2uaOunh0

母「買い物行ってきてくれる?」

男「え~?」

母「たまには手伝いぐらいしなさい」

男「分かったよ。なに買ってくればいいの?」

母「商店街で、トイレットペーパーと電池、あとお米も買ってきてちょうだい」

男「はーい。で、商店街ってどこだっけ?」

母「ここから南に行って、郵便局曲がったらあるわよ」

男「分かった。行ってきまーす」



33:以下、5ちゃんねるからVIPがお送りします 2021/12/02(木) 19:12:37.095 ID:a2uaOunh0

男「あれ……?」キョロキョロ

男「ちゃんと言われた通りにしたのに、商店街なんてどこにもないじゃん」

男「なにもない大地が続いてるだけ」

男「あ、そうか。もしかしてこの世界も……」







END



元スレ
勇者「もしかしてこの世界、ここまでしか作ってないんじゃ……」
https://hebi.5ch.net/test/read.cgi/news4vip/1638435973/
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         コメント一覧 (6)

          • 1. 以下、VIPにかわりましてELEPHANTがお送りします
          • 2021年12月02日 21:00
          • 1 中途半端に物語作っては投げ出すやつにお灸を据える話期待したのにこんな話か
          • 2. 以下、VIPにかわりましてELEPHANTがお送りします
          • 2021年12月02日 23:43
          • 北の町「やっぱ『星をみるひと』方式の見えない町はだめだったか」
          • 3. 以下、VIPにかわりましてELEPHANTがお送りします
          • 2021年12月03日 05:32
          • 勇者の主観で書かれているので「北の町」と誤認したから町長のセリフもそう書かれているが
            実際は「キタの町」というのが北方面以外にあったりしてな
          • 4. 以下、VIPにかわりましてELEPHANTがお送りします
          • 2021年12月03日 11:23
          • >>3
            キタの町は古い言い方で、今はグランフロントと言うのかもしれない。
          • 5. 以下、VIPにかわりましてELEPHANTがお送りします
          • 2021年12月03日 19:05
          • まあ悪くは無いんだが…オチで現実に引き戻されるのはどうなんだ
            個人的にはセーブするとこまでは楽しかったけど、そこから先はもう急降下で駄作まっしぐら
            あえてフォローするにしても、世にも奇妙〜っぽい雰囲気で終わらせたかったのか?ぐらいしか言えない
          • 6. 以下、VIPにかわりましてELEPHANTがお送りします
          • 2022年02月09日 20:05
          • おもんな

        はじめに

        コメント、はてブなどなど
        ありがとうございます(`・ω・´)

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