隣人の女魔王「世界を征服しすぎちゃって……よかったら半分いかがですか?」

1:以下、5ちゃんねるからVIPがお送りします 2021/10/01(金) 18:11:16.395 ID:ETYnynq70

ピンポーン

男「はい」

女魔王「こんばんは……」

男「お隣さん。どうしました?」

女魔王「世界を征服しすぎちゃって……よかったら半分いかがですか?」

男「世界を……!?」

女魔王「はい……」

男「分かりました、半分いただきますよ」

女魔王「ホントですか! ありがとうございます!」



3:以下、5ちゃんねるからVIPがお送りします 2021/10/01(金) 18:15:19.330 ID:ETYnynq70

……

大臣「陛下」

男「……」

大臣「陛下!」

男「なんです?」

大臣「なんですじゃないでしょう。政務のお時間ですよ」

男「政務?」

大臣「忘れたのですか。あなたは東世界の王でしょう」

男「ん、ああ……そうだった」

男(お隣さんは西世界、俺は東世界の王になったんだった)



4:以下、5ちゃんねるからVIPがお送りします 2021/10/01(金) 18:18:30.453 ID:ETYnynq70

男「これより政務を始める! 何か東世界で問題は起こっているか?」

長官「では私から」

男「申してみよ」

長官「国内各地を山賊や盗賊が暴れ回っており、甚大な被害が出ております」

男「世界は征服されて間もない。まだまだ治安は安定していないということか」

男「よし、俺自ら兵を率いて、賊の討伐に出かける!」

大臣「陛下自らですか?」

男「俺は王としてまだまだ未熟。民のために体を張るところを見せねば、誰もついてこないだろう」



5:以下、5ちゃんねるからVIPがお送りします 2021/10/01(金) 18:21:36.482 ID:ETYnynq70

男「兵士達よ! これより賊を討伐に向かう!」

男「民の平和を脅かす悪に遠慮は無用! 徹底的に叩きのめせ!」

男「さあ、ゆくぞ!」

オーッ!

兵士A「へえ、あれが新しい王か。悪くないな」

兵士B「ああ、王自ら先頭に立つとは……」

兵士C「情けない王だったら反乱してやろうと思ったが、その必要はなさそうだな」

ザッザッ…



6:以下、5ちゃんねるからVIPがお送りします 2021/10/01(金) 18:25:09.188 ID:ETYnynq70

ワァァァ… ワァァァァ…

ガキンッ! キンッ! ザクッ! ウギャァァァァ…

山賊「ちくしょう、王自ら出張ってくるなんて!」

男「王になったばかりだからな。体を張るのは当然だ」

山賊「だったら王になったばかりであの世に送ってやるよ!」

ギィン!

男「ぐ……!」

山賊「○ね!」

男「でやぁぁぁぁぁ!」ザシュッ!

山賊「ぎゃっ!」

男「さすがにこんなすぐに死んだらお隣さんに顔向けできないからな」



7:以下、5ちゃんねるからVIPがお送りします 2021/10/01(金) 18:28:22.734 ID:ETYnynq70

大臣「どうにか国内の治安は回復しましたな」

男「うむ、各地に治安維持のための兵を配備したし、これでなんとかなるだろう」

使者「大変でございます!」

男「どうした?」

使者「水害が発生いたしました! 川の水が氾濫し、多大な被害が……」

男「分かった、すぐに向かう」

大臣「なにも陛下が向かわなくても……」

男「王が顔を出せば、民は安堵するものだ。上はちゃんと見ているとな。そういった心の働きは侮れない」

大臣「なるほど……」



8:以下、5ちゃんねるからVIPがお送りします 2021/10/01(金) 18:31:20.180 ID:ETYnynq70

ワイワイ…

被災者A「おお……王様が来て下さった!」

被災者B「ありがとうございます!」

被災者C「ご覧のような有様でして……」

男「東世界の王として宣言する!」

男「この地を速やかに復興し、かつ二度とこのような水害を起こさないことを誓う!」

男「どうか希望を捨てず、生きることに力を尽くして欲しい! 絶望してはならぬ!」

ワァァァァ…

大臣(陛下が来なければ、自害する者も出ていたかもしれないな……)



12:以下、5ちゃんねるからVIPがお送りします 2021/10/01(金) 18:34:31.135 ID:ETYnynq70

……

大臣「陛下、北地区で飢饉が発生しているようです」

男「なんだと。このところ気候がよくなかったからな。ただちに視察に向かう!」

大臣「相変わらずのフットワークの軽さですね、陛下」

男「なにしろ、それぐらいしか取り柄がないものでな」

男「備蓄している食糧も開放し、民を飢えから救うのだ! 腹が減っては戦も何もできん!」

大臣「ははっ!」



13:以下、5ちゃんねるからVIPがお送りします 2021/10/01(金) 18:37:29.298 ID:ETYnynq70

市民A「おお……陛下が来て下さった!」

市民B「ありがとうございます……」

男「もう大丈夫だ。お前たちを飢えさせはしない」

男「兵士達よ、この土地を耕し、用水路を開け! 肥沃な土地に改良するのだ!」

兵士A「はいっ!」

兵士B「よっしゃ!」

兵士C「任せて下さい!」

ザクッ… ザクッ… ザクッ…

大臣(土地を開拓できる、兵士をトレーニングできる、一石二鳥だな)



14:以下、5ちゃんねるからVIPがお送りします 2021/10/01(金) 18:41:37.797 ID:ETYnynq70

男「おぬしは優れた商人のようだな」

商人「はい……」

商人(なんだろう? 儲けすぎを咎められるのか……?)

男「おぬしを……これから築く商業都市の市長に任命したい」

商人「ええっ!?」

大臣「陛下、いくら優れてるとはいえ抜擢が過ぎるのでは。一商人を市長という要職に据えるなんて……」

男「能力ある者はそれを発揮できるところへ配置する。それが俺の主義だ」

大臣「は、ははーっ!」



15:以下、5ちゃんねるからVIPがお送りします 2021/10/01(金) 18:44:15.305 ID:ETYnynq70

男「厳正なる審査の結果、第一回包丁職人コンテスト優勝者は……」

職人A「……」ゴクッ

職人B「……」ドキドキ

職人C「……」グッ

男「おぬし!」ビッ

職人A「や……やった! ありがとうございます!」

男「これからも研鑽を積むがいい。敗れた者たちもいい腕前をしていた」

大臣(こうして自分の腕前を披露できる場が与えられるのは、職人にとってモチベーションとなるだろう……)



17:以下、5ちゃんねるからVIPがお送りします 2021/10/01(金) 18:47:01.258 ID:ETYnynq70

ワイワイ… ガヤガヤ…

大臣「東世界はだいぶ豊かになりましたね」

男「うむ」

大臣「臣民は皆、一人の例外もなく陛下を慕っております」

男「ありがたいことだ」

男(そういえば、西世界のお隣さんはどうしてるかな?)

男(あの人のことだ。きっと俺なんかよりずっと世界を繁栄させてるに違いない)

男(そうだ、留守は大臣に任せ、西世界を見学しに行くか!)



18:以下、5ちゃんねるからVIPがお送りします 2021/10/01(金) 18:51:10.719 ID:ETYnynq70

兵士長「陛下、ここから西世界の領域です」

男「うむ……しかし、関所らしい関所がないとは……」

兵士長「わりとオープンな感じにしてるのでしょうか?」

男「だといいのだがな……ん?」

ヒャッハーッ! イェーイ!

ドドドドドド… ドドドドドド…

男「なんだ、あのならず者たちは……」

兵士長「女子供が襲われています! いかがいたしましょう!」

男「聞くまでもない! 助けるのだ!」



19:以下、5ちゃんねるからVIPがお送りします 2021/10/01(金) 18:54:02.292 ID:ETYnynq70

ならず者A「な、なんだこいつら!?」

ならず者B「誰だ、俺たちの邪魔すんのは!」

男「貴様らに名乗る名などない!」

ズバッ! ウギャー!

……

「ありがとうございました……」

「助かりました……」

男「いえ、それより安全な場所まで送りましょう」



20:以下、5ちゃんねるからVIPがお送りします 2021/10/01(金) 18:56:25.758 ID:ETYnynq70

兵士長「陛下、少し調査しましたが、西世界はどこもこのような有様です」

兵士長「ならず者や賊が跋扈し、国として全く機能していません」

男「どうなってるんだ……」

兵士長「いかがいたしましょう?」

男「西世界の長に会いたい。ならず者を討伐しつつ、中央に向かおう」

兵士長「ははっ!」



21:以下、5ちゃんねるからVIPがお送りします 2021/10/01(金) 19:00:41.929 ID:ETYnynq70

男「お隣さん!」

女魔王「あ、男さん……!」

男「お久しぶりです」

女魔王「ええ、本当に。いつ以来でしょうか」

男「さっそく聞きたいことがあるのですが」

女魔王「は、はい。なんでしょう……」

男「あなたが治めてる西世界、はっきりいって無法地帯になっています。これはどういうことですか!」

女魔王「ええと、それは……」



22:以下、5ちゃんねるからVIPがお送りします 2021/10/01(金) 19:03:07.359 ID:ETYnynq70

女魔王「実は私、西世界を手に入れたはいいものの、どうすればいいか全く分からなくて……」

女魔王「それで、自由にさせるのが一番かなと思って……」

女魔王「『みんな好きにして下さい』というお触れを出したのです」

男「それで……この有様なわけですか」

女魔王「ご、ごめんなさいっ!」

女魔王「私が至らぬばかりに……世界をメチャクチャにしちゃって……」

男「な、泣かないで下さい!」



24:以下、5ちゃんねるからVIPがお送りします 2021/10/01(金) 19:06:19.506 ID:ETYnynq70

男「俺の軍も協力させますから、とにかく治安を回復させることが最優先です」

女魔王「は、はい! 軍隊で説得するんですね!」

男「いえ、こればかりは力で黙らせるしかありません。圧倒的な力で……」

女魔王「力……でしたら私の得意分野です!」

男「え?」

女魔王「ならず者の皆さんを、私が黙らせてみせます!」ゴゴゴゴゴ…

男(すごいオーラだ……!)



25:以下、5ちゃんねるからVIPがお送りします 2021/10/01(金) 19:10:07.436 ID:ETYnynq70

女魔王「ならず者の皆さん! えいっ!」

ドゴォォォォォォン!!!

グラグラグラ…

「ひええっ!」 「地面に大穴が……!」 「強すぎる……」

女魔王「これからは大人しくしないと……私が本気で怒りますよ! 乱暴したら許しません!」

「は、はいっ!」

男「……」

男(すっかり忘れてた……。お隣さんって、単独で世界征服を成し遂げたんだった……)

男(俺はそのおこぼれに預かったに過ぎない……)



26:以下、5ちゃんねるからVIPがお送りします 2021/10/01(金) 19:13:15.472 ID:ETYnynq70

男「あとは、すっかり荒れ果てた環境を整えましょう」

女魔王「そうですね」

女魔王「山を砕いて土地を作り、大地を引き裂いて水路を作り、天候を操って雨を降らせ……」

ズガァンッ! ドゴォン! バゴォン!

男「……!」

女魔王「この調子で、世界中全て造り変えてしまいましょう」

男「ちょ、ちょっと待って下さい!」

女魔王「なんでしょう?」



27:以下、5ちゃんねるからVIPがお送りします 2021/10/01(金) 19:16:24.050 ID:ETYnynq70

男「あなたが何でもかんでもやったらまずいですよ」

女魔王「どうしてです?」

男「あなたが何もかもやってしまったら……西世界の民は、あなたに頼りきりになってしまう」

男「どんな災難が起こっても、すごい力を持つお隣さんに頼めばいいや、となってしまいます」

男「それでは……真に豊かな世界になったとはいえません」

女魔王「それは……そうですね。ごめんなさい……」

男「な、泣かないで下さい」

男「我々東世界も協力しますから、一刻も早く西世界の住民にも教育を施し、自立させましょう」

女魔王「はいっ!」



29:以下、5ちゃんねるからVIPがお送りします 2021/10/01(金) 19:20:25.899 ID:ETYnynq70

ワイワイ… ガヤガヤ…

男「西世界も東世界に負けないほど豊かになりましたね」

女魔王「これもあなたのおかげです。ありがとうございます!」

男「いえいえ、お隣さんの力があったからこそですよ」

女魔王「今回の件で、私思い知りました」

女魔王「軽い気持ちで世界を征服したら、人々を苦しめて、あなたにもご心配をかけて……」

女魔王「私には……世界を征服する資格などなかったのですね……」

男「……」



30:以下、5ちゃんねるからVIPがお送りします 2021/10/01(金) 19:23:24.660 ID:ETYnynq70

男「そんなことないですよ」

女魔王「え……」

男「あなたには世界を征服する力があった。それは十分“資格”といえます」

男「ただ……その後、自分のイメージ通りの世界にするプランに欠けていただけなのです」

男「知識と経験を得た今なら……立派な王になれるはず」

女魔王「ありがとうございます。ですが私、やはり一人では不安です」

女魔王「これからは……東西の世界を二人で統治しませんか?」

男「あなたがよろしいのであれば……」

女魔王「ありがとうございますっ! これからは一緒に頑張りましょうね!」

男「は、はい!」



32:以下、5ちゃんねるからVIPがお送りします 2021/10/01(金) 19:26:30.809 ID:ETYnynq70

世界は統一された。

それからは基本的な統治は男が行い、

とてつもない災害が起こった時のみ、女魔王が出動するというスタイルとなった。



大臣「お二方、地方で大規模な噴火が起きたという情報が……」

男「なんだと!?」

女魔王「ちょっと止めてきます」

男「お願いします、お隣さん」

女魔王「はい、任せて下さい!」



33:以下、5ちゃんねるからVIPがお送りします 2021/10/01(金) 19:29:22.308 ID:ETYnynq70

女魔王「噴火を止めてきました。1000年以上は大丈夫かと」

男「お疲れ様です。さあ、夕食にしましょう」

女魔王「はいっ、今日も世界は平和ですね!」



人々は恐るべき力を持つ魔王に物怖じせず、対等に世界を統治する男を大いに尊敬し、

いつしかこう呼ぶようになった。

“勇者”と――







END



元スレ
隣人の女魔王「世界を征服しすぎちゃって……よかったら半分いかがですか?」
https://hebi.5ch.net/test/read.cgi/news4vip/1633079476/
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         コメント一覧 (4)

          • 1. 以下、VIPにかわりましてELEPHANTがお送りします
          • 2021年10月01日 20:48
          • 結構好き
          • 2. 以下、VIPにかわりましてELEPHANTがお送りします
          • 2021年10月01日 21:00
          • ええやんけ
          • 3. 以下、VIPにかわりましてELEPHANTがお送りします
          • 2021年10月08日 23:03
          • 好きよ
          • 4. 以下、VIPにかわりましてELEPHANTがお送りします
          • 2022年03月28日 10:49
          • 子作りまでちゃんと書け

        はじめに

        コメント、はてブなどなど
        ありがとうございます(`・ω・´)

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