夫婦「誘拐された娘を助けて下さい!」キジバト「ホーホホッホホー」
- 2021年07月24日 00:20
- SS、神話・民話・不思議な話
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警察には通報するな。もししたら娘の命は……』
夫「くそっ!」
妻「どうしましょう、あなた!? やっぱり警察に……」
夫「いや、ダメだ。娘の命が危うくなる」
妻「じゃあどうしたら……」
夫「この町には“鳥使い”っていうトラブル解決屋がいるらしい。その人に連絡を取ってみよう」
夫「警察に頼れない以上、頼れるのはあなたしかいないと思いまして」
妻「お願いします!」
鳥使い「分かりました……では先生をお呼びしましょう」
夫「先生?」
鳥使い「ホーホホッホホーッ!」
ホーホホッホホー…
夫「なんだ、この鳴き声……?」
キジバト「ホーホホッホホー…ほう……お客か」
鳥使い「はい」
夫「え……ハト!?」
キジバト「ハトで悪いか?」
夫「いえ、別に……」
妻「ハトなのに喋ってる……」
キジバト「同じ鳥類のオウムや九官鳥だって喋るではないか」
妻「それはそうですけど……」
鳥使い「まさか。ここから先の主役は先生です」
妻「でも、あなたは鳥使いなんでしょう?」
鳥使い「私は仲介役に過ぎません。私の鳥使いという異名は“鳥の使い走り”という意味ですよ」
夫婦「えええええ!?」
キジバト「分かったところで、改めて依頼内容や状況を説明してもらおうか」
夫「それでは私から……」
妻「娘を助けて下さい!」
キジバト「ほう……ホーホホッホホ-…」
キジバト「この仕事、鳩サブレー五箱分、といったところか」
夫「ということは……」
キジバト「娘さんの救出……引き受けよう」
夫「ホントですか!」
妻「ありがとうございます!」
夫「あ、電線に……」
キジバト「ホーホホッホホー…ホーホホッホホー…」
ホーホホッホホー…
ホーホホッホホー…
妻「キジバトさんは何をなさってるんです?」
鳥使い「鳴き声を出し、その反響で誘拐犯を捜しているんです」
ホーホホッホホー…
夫「まるでイルカやコウモリのようですね」
鳥使い「おっしゃる通り。要は彼らのやっているエコーロケーションと同じです」
鳥使い「先生は鳩のエコーロケーションだから≪ハトーロケーション≫と呼んでいますが」
夫「エコとハト……全然かかってませんね」
鳥使い「おっしゃる通り。しかし、本人には言わないで下さい。傷つきますから」
夫「すみません」
鳥使い「先生?」
キジバト「見つけたぞ。誘拐犯一味は町外れの倉庫にいる。娘さんも一緒だ」
夫「もう見つかったんですか!」
妻「ありがとうございます!」
キジバト「喜ぶのは娘さんを救出し、誘拐犯どもをブチのめしてからだ」
キジバト「さっそく倉庫へ……」
夫(飛び立つのか?)
キジバト「鳥使い、“はとバス”を出せい!」
鳥使い「ははっ!」
夫婦「!?」
ブロロロロロ…
妻「倉庫まではバスで行くんですね……」
キジバト「ああ、鳥使いの本業は“はとバス運転手”だからな」
夫「キジバトさん自身が飛んでいった方が早いのでは……」
キジバト「飛ぶと疲れるだろ!」
夫「そ、そうですよね。すみません」
ブロロロロロ…
キジバト「ご苦労。さっそく倉庫を見てみよう」
見張りA「身代金ゲットしたらどうする~?」
見張りB「新しい車でも買おうかな」
見張りC「俺は女にプレゼントでもするぜ!」
夫「見張りが三人も……!」
鳥使い「彼らをどうにかせねば、救出を行うことは不可能ですね」
キジバト「ふん、あれならばどうにかなる」
妻「倒すんですか?」
キジバト「倒すというより……勝手に倒れてもらう」
キジバト「ホーホホッホホー…ホーホホッホホー…」
ホーホホッホホー… ホーホホッホホー…
見張りA「ん?」
見張りB「なんだこの鳴き声?」
見張りC「キジバトだ!」
見張りA「これホホッホホーって鳴いてるよな」
見張りB「あ? デデッポッポーだろ」
見張りC「なにいってんだ。ホホッホーホーだろ」
ホーホホッホホー… ホーホホッホホー…
見張りA「ほら、俺が正しい!」
見張りB「なにいってんだ、難聴かよ。耳に変なもん詰まってんじゃねーの」
見張りC「耳鼻科行ってこいよ」
見張りA「なんだと!?」
見張りB「やんのかコラァ!」
見張りC「決着つけてやるぞォ!」
見張りA「上等だ、ゴミどもォ!」
ワァァァァァ……
ドカッ! バキッ! ゴッ! ガッ! ドガッ!
…………
……
キジバト「三人ともブッ倒れたな」
夫「同士討ちしてしまった……なんであんなことに」
鳥使い「警察の極秘資料によると、キジバトの鳴き声を巡っての暴力事件は年間300件にも及ぶんですよ」
妻「まあ、そんなに……」
キジバト「とはいえ、倉庫内にいる主犯どもには通用しないだろう。ここからは俺一人で行く」
鳥使い「分かりました、先生。吉報をお待ちしております」
キジバト「ああ、吉ポウをな」
娘「おうち帰してぇ……」
主犯「心配するな。身代金が手に入れば帰してやるよ」
主犯「ただしお父さんお母さんが、俺たちの言う事を聞かなきゃ……帰れなくなるがな。死んでもらう」
娘「うっ、うっ……」
大男「なぁ、こいつの両親は身代金払うと思うか?」
バンダナ「払うさ。結構裕福な家庭だって調べは済んでるからな」
バンダナ(俺の家庭と違って……)
主犯「ん?」
大男「なんだこの鳴き声」
バンダナ「……!」
ホーホホッホホー… ホーホホッホホー…
バンダナ「……」
主犯「おい、どうした?」
バンダナ「この鳴き声聞いてたら……故郷を思い出しちまった」
大男「ハァ?」
バンダナ「俺、やっぱ誘拐やめる! 母ちゃんとこ帰る!」ダッ
大男「お、おいっ!」
「これで残り二人……」
主犯「!」
キジバト「俺だ」
主犯「俺……って鳥? ハト!?」
大男「なんでハトがこんなところに……」
キジバト「誘拐犯ども、なんでこんな下らない真似をする?」
キジバト「幼い子をさらって、身代金要求して……恥ずかしくないのか」
主犯「そんなもん決まってんだろ!」
主犯「金持ちってのは汚い奴ばかりだ。だから俺たちも汚い手段で金をぶんどってやるんだよ!」
主犯「なんだそりゃ?」
キジバト「わずかなことにこだわって、バカなことをやるって意味のことわざだ」
主犯「なんだと!?」
大男「まあ、待てよ」パキポキ
キジバト「!」
大男「こんなハトはさっさと捻り潰して、フライドチキンにして食ってやる!」
キジバト「だったら俺はお前みたいな奴のフンになるのはごめんだから……お前に“フン”を喰らわせてやる」
大男「ケッ、鳩のフンなんか効くかよォ!」ダッ
ドボォッ!
大男「うげ……」ドザァッ…
主犯「翼を使ったボディブロー……!」
娘「すごい……」
主犯「くっ、平和の象徴であるハトが乱暴していいのかよォ!」
キジバト「生憎俺は“タカ派のハト”でね。平和は戦って勝ち取る主義だ」
主犯「く……くそォ!」
娘「ひっ!」
キジバト(拳銃……)
主犯「このガキを殺されたくなきゃ、大人しくしろ!」ゴリ…
娘「ひええ……」
キジバト「……」
キジバト「分かった分かった、大人しくしてやるよ」スッ
主犯「……」ニヤッ
キジバト「うぐっ!?」
ドサッ…
主犯「ハ、ハハ……ざまあみろ! クソバトめ!」
娘「ひどい! よくもハトさんを……!」
主犯「うるせぇ!」バシッ!
娘「きゃっ!」
主犯「あのハト、おおかたお前の両親の差し金だろ。お前もすぐに殺してやる!」
主犯「え!?」
娘「ハトさん!」
主犯「な、なんで……弾は当たったはず……」
キジバト「ハトは豆鉄砲は喰らうが……ただの鉄砲など喰らわん」ポロッ
主犯「ぶ厚い胸筋が……弾丸を防いだのか……ッ!」
娘「ハト胸だ!」
キジバト「お前……今、その子に乱暴したな?」
主犯「だからなんだってんだ!」
キジバト「実際にはそうじゃない」
主犯「な、なに……!?」
キジバト「本当の理由は……キジバトは、怒りが頂点に達すると……」ビキビキ…
キジバト「ホーホホッホホー…ホーホホッホホー…」メキメキ…
主犯「どんどんでかくなっていく……!」
キジバト「“鬼神”のようになるからだ」
主犯「あ……ああ、あああ……」
うぎゃぁぁぁぁぁ……!!!
夫「な、なんだ!?」
妻「ものすごい叫び声だわ!」
鳥使い「どうやら終わったようですね。警察に通報しましょう」
…………
……
妻「本当にありがとうございました!」
キジバト「ホーホホッホホー…なあに、大した仕事じゃない」
キジバト「それにしても、仕事が終わった後の鳩サブレーはまた格別だ」モグモグ
夫「もっとお礼をしたいのに、鳩サブレー五箱でよろしいんですか?」
キジバト「ああ、問題ない」
鳥使い「私もバスの運転手で稼いでますから」
妻「それと……娘がキジバトさんにいいたいことがあるそうです」
キジバト「ほう?」
キジバト「なあに、無事でよかった」
娘「だからお礼に……」チュッ
キジバト「!!!」
キジバト「こりゃあ……どうも」
鳥使い「先生、鳩が豆鉄砲喰らったような顔してますよ」
おわり
コメント一覧 (4)
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- 2021年07月24日 03:20
- ホーホーッホッホッー
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- 2021年07月24日 04:21
- キジバト先生カッケェー!!
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- 2021年07月24日 09:41
- 働け
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- 2021年07月25日 02:09
- ツッコミが追いつかねえな