剣士「飛ぶ斬撃? 剣から火? 雷? 反則だろんなもん!」
剣士「みんな、おはよう」
団員A「おはようございます!」
団員B「おはようございます!」
剣士「今日も町の平和を守っていこう」
はいっ!!!
剣士(俺は町の戦士団のリーダーとして、二十余年この町を守ってきた)
剣士(剣の腕にも経験にも、それなりの自信はあった)
剣士(だが、そんなある日――)
剣士「君が新しく戦士団に入りたいっていう剣士?」
若手剣士「そっす!」
剣士「ずっと都会にいたんだって?」
若手剣士「はい! だけど都会暮らしにも飽きてぇ、こっちでスローライフすんのもいいかなぁって」
剣士「そうか」
剣士(チャラチャラした奴だなぁ……)
剣士(いけ好かないが、戦力は一人でも欲しいし、入れるしかないか)
剣士「俺だが……」
若手剣士「オレ、正直いって人から命令されんのあんま好きじゃなくって」
剣士「(なんだこいつ)そういわれてもな」
若手剣士「だから……勝負しません?」
剣士「勝負?」
若手剣士「勝負して強い方がリーダーってことで! 負けたら潔く従いますよ!」
剣士「……!」
剣士(こうまで真っ向から喧嘩を売られたのはいつ以来だ……。ムカつくと同時に血も沸いてきた)
剣士「いいだろう、受けて立ってやる!」
団員B「無理だろ……剣士さんの強さ知らないんだ」
剣士「いいぞ、いつでもかかってこい!」
若手剣士「へいへ~い。じゃ、遠慮なく」
剣士(構えも全然大したことない……)
若手剣士「そりゃっ!」ブンッ
ビュオッ!
剣士「うわっ!?」サッ
若手剣士「惜しい!」
剣士「……え?」
剣士(奴が剣を振ったら……衝撃波みたいなのが飛んできた……?)
ビュオッ!
剣士「わっ!」
若手剣士「それ、それ、それっ!」
ビュオッ! ビュオッ! ビュオッ!
剣士「ひいいっ!」
剣士(なんだこの技は……間合いの外から攻撃してくるなんて!)
ピッシャァンッ!
剣士「うぎゃっ!」
若手剣士「今度はファイヤーソードッ!」
ボワァッ!
剣士「あづうっ!」
若手剣士「それそれそれーっ!」
剣士「うわああああっ……!」
…………
……
若手剣士「じゃ、オレの勝ちってことで! あざーっす!」
剣士「……はい」プスプス
若手剣士「とりあえず、今までのめんどくせーしきたりみたいなもんは全部ぶっ壊すんで!」
若手剣士「シクヨロ!」
ガヤガヤ…
団員A「剣士さん、本当にいいんですか!?」
団員B「あんな新入りをリーダーにしちゃうなんて……」
剣士「いいんだ。約束したことだからな……」
剣士(いいわけねえだろ、チクショウ!)
マスター「……」キュッキュッ
弓使い「どうしたんだ、急に会いたいだなんて手紙くれて」
剣士「久しぶりにお前に会いたくなっちまってな」
弓使い「何かあったのか?」
剣士「戦士団リーダーの座を……追われちまった」
弓使い「は? どうして?」
剣士「実はさ……」
剣士「え、なにか知ってるのか?」
弓使い「実は都会じゃ、武器に己の闘気や魔力を乗せる技術ってのが確立されて」
弓使い「技の大革新が起きてるっていうんだ」
剣士「大革新……」
弓使い「例えば、お前が敗れた飛ぶ斬撃や剣から魔法を出す術、みたいなやつだな」
弓使い「今や田舎と都会じゃ、50年ぐらいの差がついてるらしい」
剣士「50年……!」
弓使い「んで、そういうのを習った若い連中が、田舎に出向いて」
弓使い「旧来の戦い方しかできねえ連中を相手にデカイ顔するケースが増えてんだ」
剣士「そういうことだったのか……」
剣士「え?」
弓使い「若い弓使いがさ……空に矢を放つんだ。そしたら――」
弓使い「上空から光の矢がわんさか降ってくるんだ」
剣士「すごい技だな……」
弓使い「あんなの見ちゃったら……今まで一本一本矢を飛ばしてきたのはなんだったんだってなるよな」
剣士「……」
弓使い「だから俺は今、そいつにその技のやり方を習ってるよ」
弓使い「俺たちにできることは……プライドは捨てて、若い奴に教えを乞うことさ」
剣士(俺は……俺は――)
「山賊だーっ!」 「山賊が来たぞーっ!」
団員A「またあいつらか……」
団員B「今日こそ決着つけてやる!」
剣士「よし……!」
若手剣士「ああ、あんたらは必要ないって。ここはリーダーであるオレに任せな!」
剣士「……!」
ビュオッ! バリバリッ! ボワァッ!
山賊A「ぎゃああああっ!」
山賊B「なんだあいつ!? 剣から色んなもん飛ばしやがって!」
団員A「すげえ……山賊をたった一人で!」
団員B「ああ、認めざるを得ないな……」
剣士(くっ……!)
若手剣士「いやぁ、こんなもんでしょ」
団員B「お前一人いれば他の団員はいらないくらいだ!」
若手剣士「そんなことない……ってこともないかも~!」
アハハハハ…
若手剣士「あれ、暗い顔してどうしたん?」
剣士「……」
若手剣士「よかったら、オレの剣技教えましょうか? 知りたいでしょ?」
剣士「いや……いい」
若手剣士「ハハハ、この町サイコーッ! 来てよかった~!」
剣士「……」
剣士(崩れていく……)
剣士(俺が二十年以上かけて積み上げてきたものが……音を立てて崩れていく……)
剣士「ん?」
団員A「首都らへんで暴れてた盗賊団が、地方に逃げ込んでるらしいんですよ」
剣士「ふうん」
団員A「もしかしたら、この町にも来るかも……」
剣士「来たって大丈夫だろ。この町にはあいつがいるんだから」
団員A「まあ、そうですけど……」
剣士「全部新リーダーに任せておけばいいのさ」
団員A「剣士さん……」
剣士(くそっ、これじゃ駄々っ子じゃないか! 情けねえしみっともねえ……!)
「変な集団が来たぞ!」 「戦士団は出動しろーっ!」
団員A「変な集団? きっと噂の奴らだ!」
団員B「出るぞ!」
若手剣士「ま、オレがいるから楽勝っしょ!」
剣士「……」ザッ
白装束B「……」ダダダッ
団員A「なんだ、あの集団!?」
団員B「全員白い布被ってやがる。怪しすぎる……」
若手剣士「布ごと切り裂いてやるよォ! そらっ!」ブンッ
ビュオッ!
白装束A「……」
若手剣士「あれ? 効果なし?」
若手剣士「だったら……剣から炎! 雷!」
ボワァッ! バリバリッ!
白装束A「……」
若手剣士「き、効かない!? どして!?」
剣士「あの白い布だ……」
剣士「きっと闘気やら魔力やらを遮断する効果があるんだ……!」
剣士(剣技が進歩するなら、当然防具も進歩する……)
剣士(都会の盗賊どもなら、斬撃は飛ばせなくても、飛ぶ斬撃に対応できる最新式の防具を持ってても不思議じゃない!)
剣士「リーダー、こうなったら近接戦しかないな。気を引き締めよう」
若手剣士「あ……ああ……」
剣士「どうした?」
若手剣士「オレ……ほとんど剣の近接戦の経験なくって……」
剣士「は?」
白装束A「奪え、奪えーっ!」
白装束B「田舎モンに都会盗賊の恐ろしさ見せてやれ!」
白装束A「しゃあっ!」
剣士「ぐっ!」ギンッ
白装束B「オラオラァッ!」
若手剣士「わぁっ! わぁぁぁっ!」ブンブンッ
剣士(おいおい、なんだこの無様な素振りは……! ほとんどド素人じゃないか!)
白装束B「死ねええええ……!」ググッ…
剣士「待ってろ、俺がすぐ行く! 持ちこたえろ!」
剣士「でやぁぁぁっ!」
ズバッ!
白装束A「ぐはぁっ!」
剣士(すぐ若手剣士のところへ――)
剣士「どりゃあっ!」
ザンッ!
白装束B「がはぁっ!」
剣士「田舎の剣士をナメるなよ!」
剣士「どうやらお前ら、飛ぶ斬撃や魔法剣への対策は万全だが、それ以外はそこらの賊以下だ!」
剣士「こちとら斬撃なんぞ飛ばせねえが、まともな斬り合いなら負けやしねえ!」
剣士「みんな、行くぞーっ!!!」
団員A「おう!」
団員B「おう!」
ワァァァ… ワァァァ…
団員B「ああ、きっと飛び道具ばかり相手にしてたんだろうぜ! で、調子に乗って田舎町に……」
ワイワイ… ハハハ…
剣士「……どうした、リーダー。飲まないのか?」
若手剣士「……」
若手剣士「すんません……」
剣士「!」
若手剣士「オレ……全然役に立てなくて……本当にすんませんでしたっ!」
剣士「いや、なにもそこまで……」
若手剣士「いえ、オレもう一度自分を鍛え直したいんです!」
若手剣士「一人で盗賊どもをバッサバサ斬る剣士さんの姿に惚れました!」
若手剣士「だからオレを下っ端から鍛え直して下さい!」
剣士「分かった……だったらそうしよう。ビシビシいくから覚悟しとけ!」
若手剣士「おっす!」
若手剣士「え、なんすか?」
剣士「……」コホン
剣士「斬撃を飛ばす方法を……教えて欲しい」
― おわり ―
コメント一覧 (7)
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- 2021年06月27日 22:41
- 両者ともに足りない部分を学ぶのか、良いエンドだね
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- 2021年06月27日 23:30
- 基本を疎かにしちゃイカンよって事だな
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- 2021年06月28日 01:28
- よかとばい
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- 2021年06月28日 01:36
- 魔法使いが剣持った感じか
それにしてもほっこり王道はイイネ
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- 2021年06月28日 07:04
- 筋肉が全てや
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- 2021年06月28日 07:27
- 剣を持った魔法使いが魔法剣士になる物語だな
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- 2021年06月28日 19:01
- 魔剣士