女「あたしと結婚しよ!」大富豪「どうせ財産目当てだろうが!」
大富豪「なんだ」
女「あたしら知り合って結構経つしさー、結婚しよ!」
大富豪「……なぜ私がお前のような女と結婚せねばならぬ」
女「そりゃあ、あたしあなたを愛してるから!」
大富豪「愛だと……!? ふん、笑わせるな!」
女「!」
大富豪「だが、親族も、友人も、異性も、誰も彼も私の財産目当てだった!」
大富豪「どうせ貴様もそうなのだろうが! この世に愛など存在しない!」
女「そんなことない!」
大富豪「なにい……?」
女「あたし、本気であなたを愛してるもん!」
女「どうしても信じられないならとりあえず結婚してみりゃいーじゃん!」
女「で、やっぱ金目当てだと思ったら別れりゃいいし!」
大富豪「よかろう……。すぐに化けの皮が剥がれることになろう……」
神父「永遠の愛を誓いますか?」
女「誓っちゃいまーす! えへっ」
大富豪「ふん……」
大富豪の結婚に周囲は驚いた。
ザワザワ…
「なんつーカップルだよ」
「年の差40……いや50以上あるって話だぜ?」
「絶対なんか裏があるだろ……」
女「はーいダーリン。スープだよ~、召し上がれ~」
大富豪「……」
女「どしたの? 早く食べてよ」
大富豪「分かっておるぞ。どうせ毒でも入れているのであろうが」
女「毒ぅ? なんでよ!」
大富豪「私が死ねば、遺産は全て貴様に転がり込むのだからな」
大富豪「ふん……欲しい者ほどそういうものだ」
女「だったら毒見してあげる。それならいいでしょ?」ゴクッ
女「ほら、なんともない」
大富豪「……いただくしよう」
女「あ、そうだ。せっかくだからあ~んしてあげよっか?」
大富豪「しなくていい!」
女「照れてる照れてる」
大富豪「照れてなどおらん!」
女「どぉう?」
大富豪「うまい」
女「やったーっ! 超うれしーっ!」ダキッ
大富豪「やめろ、抱きつくんじゃない! 私は人に触れられるのが嫌いなんだ!」
女「いいじゃん! あたしら結婚してるんだしさ!」
大富豪「まったく……やっかいな女だ」
女「ハロー!」
大富豪「……」カタカタ
女「リアクションうすーい! パソコンでなにやってんの?」
大富豪「仕事だ」
女「あなた会社のトップなんでしょ? 仕事なんて部下に任せりゃいいのに」
大富豪「そうもいかん。まだまだ部下どもは未熟だ。私がいなければ浮き足立ってしまう」
女「頼りにされてんだねー」
大富豪「頼りになる者がいないだけだ」
大富豪「!」
女「ほらほら~」モミモミ
大富豪「よさんか……」
女「どう? 気持ちいい?」モミモミ
大富豪「……気持ちいい」
女「ふふっ、ありがとー!」モミモミ
大富豪「だからどうした?」
女「たまにはデートしようよ! 今日休みでしょ?」
大富豪「なぜデートなどせねばならんのだ」
女「夫婦は普通デートぐらいするもんでしょ。さ、行こ!」グイッ
大富豪「お、おい……」
「奥さんはピンクのワンピース、旦那はグレーのスーツで渋く決めてる……」
「何年持つのかねえ……」
ヒソヒソ… クスクス…
大富豪「どいつもこいつも……。我々をオモチャか何かだと思っている」
女「いいじゃない。外野には言わせておけばいーの」
大富豪「何を買うんだ?」
女「お洋服買いたい!」
大富豪「そんなもの……買いたいものを好きなだけ買えばいい。金ならいくらでもある」
女「バッカねー、それじゃなんも面白くないじゃん!」
女「限られた予算で、いかにいい買い物ができるかが楽しいんだから!」
女「商売だってそういうもんでしょ?」
大富豪「むう……すまん」
女「この服いいなぁ……。こっちも捨てがたい……。う~ん……」
大富豪「長い。とっとと選べ」
女「女の買い物ってのは長いもんなの。文句いってたらモテないよ?」
大富豪「す、すまん……」
女「えーと、これにしよっと!」
大富豪(この女といると調子が狂う……)
女「ジャン!」シャッ
大富豪「……」
女「どぉう?」
大富豪「よく……似合っているぞ」
女「ホント!? ありがと~!」ダキッ
大富豪「だから……抱きつくな」
大富豪「……」
女「どしたの?」
大富豪「楽しい」
女「なにが?」
大富豪「お前と一緒にいると……楽しい」
女「やだもう。照れちゃうってば!」バシッバシッ
大富豪「肩を叩くな」
女「あ、な、た」
大富豪「なんだ」
女「あたしたちって夫婦だよね?」
大富豪「ああ、それがどうした?」
女「だったら……ちゃんとやることやらなきゃいけないと思わない?」
大富豪「……!」
女「もっちろん! てか、そうでなきゃ結婚してないっしょ!」
大富豪「ではいいだろう……抱いてやる」
女「やったーっ!」
…………
……
にもかかわらず、二人の夫婦生活は――
一年……
二年……
三年……
順調に続いた。
病室にて――
女「あなた……」
大富豪「……」
大富豪「私は……お前に本当に感謝してる」
大富豪「独力で財を築き、金目当ての亡者ばかり見てきた私が……」
大富豪「真実の愛というものに、触れることができたのは……お前のおかげだ」
大富豪「本当に……ありがとう」
女「こっちこそ……楽しかったよ」
大富豪「どうした?」
女「あなた……元気、でね……」
大富豪「おい、しっかりしろ!」
大富豪「おいっ! ――おいっ! 私を置いていくな!」
すがるように手を握る。
しかし、妻が再び目を覚ますことはなかった。
大富豪「……!」
医者「死因は……老衰でしょう。大往生でした……」
大富豪「ううっ……!」
まだ30代半ばの若き大富豪は、最愛の妻の死を大いに悲しんだ。
END
コメント一覧 (9)
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- 2021年05月06日 20:24
- 固定概念はよくないな、うむ
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- 2021年05月06日 20:24
- ????????????
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- 2021年05月06日 20:34
- これだと叙述トリックになってないですね
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- 2021年05月06日 20:54
- もっと たんさんの本を読め
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- 2021年05月06日 21:05
- >「年の差40……いや50以上あるって話だぜ?」
この時点でBBAだなと分かって興ざめ
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- 2021年05月06日 23:32
- ※5 なんで?その場所にオチのかけらもないじゃんw
単にひねくれ者のお前が最初から疑ってただけでしょw
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- 2021年05月07日 03:00
- ※6
俺もそこで年齢逆だと気付いたぞ。むしろお前に先読み力無さすぎ
どうせ与えられたものを消費するだけの無産オタだろw
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- 2021年05月07日 20:31
- まあ、男の方が年上と明言しない時点で気づくわな
そこをあえて女がめちゃくちゃ若い子にしてたら面白かったかもな
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- 2021年05月14日 16:09
- お前ら気付けるとか天才かよ。
俺とかこの米欄見てオチの意味を知ったぐらいなのに。