【SS】副官「隊長、"次"の街が見えてきましたよ」隊長「……」
ある小さな街の駅前通りに乗り付けたトラックから
小銃を握る兵士たちがすばやく降車する
指揮官のまえにずらりと並んだ兵隊はいま準備を整えた
「空き家から全てかたっぱしからぶち破り中を確認しろ!」
「アジトを見つけたら国賊共を全員検挙しろ!」
街に数人ずつ兵士が散っていく
人気の少なくなったこの街に賑やかさが取り戻されていく
様子をうかがいに出てきた老婆が声をあげる
「なんだいあんたたち!」
兵士たちは有無を言わさず土足のまま民家に上がりこむ
兵士は声をあげた
「いたぞ!男とババアが住んでいるぞ!」
「なぜこの街に残っている!」
「ゲリラと関係しているんじゃないのか!調べさせてもらうぞ!」
「わ…わしわ…」
「とうちゃんがゲリラなもんか!指一本でも触れてみろ!」
老婆と兵士が恐ろしい形相で対峙する
長い時間が両者の間に流れた
気がつくと街のいたるところで悲鳴や怒号が飛び交っていた
この国で戦争が始まる前から既に閉店していたらしく
店内は荒れ果てていたが人の気配がいたるところに残されている
兵士は紙くずを拾い上げる
敵性の新聞の切れ端とパンの包装用紙だった
いまでは新聞もかつて売られていたような加工食品も見かけない
珍しい品だ
それでも昔を懐かしむように紙切れをしばらく凝視していた
その時、薄暗い店内で影が動いたような気がして兵士は振り返った
兵士は小銃を構えるとゆっくりと奥へと進む
こんどは駆け出す音がする
姿は見えなかったが班長は笛をならしたあと大声で叫んだ
「ゲリラがいるぞ!!出口をふさげ!!!」
外からも大勢が駆けつけてくる
出口で一瞬姿を表したのはボロを着た若い女だった
兵士の姿を見るとバッと方向転換してまた店内へと駆け出した
しかし動いていないエスカレーターに近づいたところで
一人の兵士に服を掴まれてしまった
掴まれたところから酷い音を立てて洋服が半壊していく
「ゲリラだな!」
「店内でパンと新聞を見たぞ!お前のじゃないか!」
「しっ…しらない…!」
「じゃあなんでお前がここにいるんだ!」
「お前新聞を読んだんだろう!」
「いいもん食いやがって…」
「これはお前らが郊外のゲリラから支援されてる証拠だ!」
「しらないよそんなの!!」
うずくまる女の手を兵士が掴んで引きずりだした
女は耐えていた涙腺から大量の涙を流して半狂乱になる
「いやだ!いやだいやだ!!わたし何も知らない!!!!」
ニヤつく兵士の顔が女の瞳に写った
巡査はひどく怯えた表情だった
「お前は……我々を見てどう思った?……怖いのか?」
最初に口を開いたのは巡査ではなかった
なにかを言おうとした巡査だったが
怖気づいてついにはなにも言えなくなってしまった
「怖いんだろう……!お前はなんだ……!」
「我々は使命達成のために闘っているっ……!!」
「我々をただの悪漢や山賊のように思ってるのかッッ!!!!!」
男は次第に語気を強めて巡査の胸ぐらに掴みかかり圧倒した
巡査の胸ぐらを掴んでいるのは隊長だった
「わたしに言いたいことがあるなら…早く言えっ………!」
はっとした巡査は震える唇からやっと言葉を絞り出した
「やめてください…!この街にはゲリラなどいません…!」
その言葉を聞いた隊長は誰が見てもわかるほどに激昂した
「それが治安を守る者の言葉かっ!!!馬鹿野郎ッ!!!」
頬をぶたれた巡査は道端を転げ
アスファルトに空いた穴の水たまりに顔を半分突っ込んだ
巡査は苦悶の表情を浮かべる
指揮官はゆっくりとピストルを向ける
巡査は気づくより早くピストルの方向を凝視した
そして乾いた音が2発、響いた
隊長に掴みかかった
「何をするんだ!!まだ子供じゃないかっ………!!!」
「いいか…共産主義者の子供も共産主義者だ」
「この家の主はリストに載っていた」
「馬鹿な!お前らの言う共産主義者ってなんだ…!本当にそんな奴がいるのか…!」
「悪から生じたものは決して善にはならないものだ」
力なくうなだれる頭から警察帽が音もなくアスファルトに落ちた
「俺はゲリラ部隊の協力者だ!!!ゲリラだぞ!!!」
巡査は目をギョッと見開いて別人のような大声をあげる
隊長は少し驚いたが冷静に言った
「そんなはずはない、きみは治安を守る警察官だろう?」
隊長は銃をしまうと葉巻を取り出して静かに火をつけた
「君にはこの地区の治安を改めて担ってもらう………」
一息ついて煙に巻く
「われわれに君が信用されたという事実が今後この街の治安を回復する上で最も重要になる」
「わたしの部下を配置するから言うことを聞いてやってくれ」
「"なにもなければ当面"この街に捜査が及ばないことついては君の口からよく住民に伝えるように」
巡査に再び深い絶望の幕が降りた
途中から薄暗くなり雨が降り出した
四駆を降りてテントにつくまでにずぶ濡れになってしまった
雨はそれだけ強かった
隊長は気にすることなくテントに入り椅子に座った
副官がすぐに駆けつける
「任務は概ね完了した」
「例の男はどうです?」
「例の男…?ああ途中で偶然確保して説得した」
「この時代に街を去らないとは良い男だ」
「そう……良い男だが……それも使い様だ……」
「期待できそうですか」
「ああ……」
まだ雨があがる気配はない
コメント一覧 (8)
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- 2021年04月08日 06:55
- ヤバい アホだからどういう話か理解できない
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- 2021年04月08日 07:16
- スレタイからおかしい。副官って何。隊長じゃなくて中隊長とかにしろよ
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- 2021年04月08日 07:24
- 襲撃者はコミー狩りのふりをして荒らし回ってる(もしかしたらコミーなのかもしれん)
さんざんコロしちらかした後土壇場で英雄的な行動ができるやつに目をつけて去っていく
なんかディストピア漫画でたまーに見るタイプの導入
取り上げる租税があるならまあまだともかく、恐怖を植え付けてくだけなのにやたら効率の悪いやり方で草も生えない
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- 2021年04月08日 16:15
- こわ
恐怖政治ってこういうのか
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- 2021年04月08日 16:18
- こわ
恐怖政治ってこうやるの?
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- 2021年04月09日 12:09
- 文章下手すぎる
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- 2021年04月14日 14:41
- 加工食品が存在しないってこの世界の経済どうなってるんだ?
兵隊たちだって自前で一から食料調達(略奪?)してるなら長期間の活動は難しいだろうに
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- 2021年04月16日 22:27
- 自衛官は“兵隊”とか“兵士”では無いぞ…
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