影武者「俺の盾になれぇ!!!」国王「ちょっ、おまっ、ふざけんな!」
影武者「やっぱりハンバーガーはダブルに限りますね!」モグモグ
従者「ボクは普通のやつで十分です」モグモグ
国王「よく食べねば余の従者は務まらんぞ」
刃物男「国王、覚悟ォ!!!」チャキッ
影武者「な、なんだ!?」
影武者「わわっ! 斬りかかってきた!」
影武者「おい!」ガシッ
国王「む?」
影武者「俺の盾になれぇ!!!」サッ
国王「ちょっ、おまっ、ふざけんな!」
国王「おわっと!」サッ
刃物男「……! なんという身のこなし!」
国王「てりゃあっ!」
バキィッ!
刃物男「ぶぎゃっ!」ドサッ…
国王「はぁ、はぁ、はぁ……」
影武者「いやー、お見事です。ナイフを持った相手をあっさり撃退してしまうとは!」
国王「……おい」ガシッ
影武者「なんですか?」
国王「ふざけるな! お前は余の影武者……余の護衛であり、いざという時は余の代わりに死ぬのが使命だ!」
国王「なのに、なぜ余を盾にした!?」
影武者「す、すみません。つい……」
国王「ついで済むか! 余が死んでたらどうする!」
影武者「ちゃんとお葬式を……」
国王「貴様ッ!」
従者「まあまあ、お二人とも!」
国王「おおっ、なかなかの大きさだな。馬も二頭ついておる」
影武者「馬車も馬がダブルに限りますね!」
国王「うむ、ものすごい迫力だ」
パカッ パカッ パカッ
影武者「ん?」
ドドドドドドド…
従者「わぁっ、あの馬車こっちに突っ込んできます!」
国王「狙いは……余たちか!」
影武者「うわああああああああっ!」
国王「早く逃げねば――」ダッ
影武者「逃げるな陛下」ガシッ
国王「ん?」
影武者「俺を守れ!」ドンッ
国王「おい!?」
国王(もう馬車は間近に迫っている……!)
国王(馬を止めるのは不可能! となれば――)
国王「てやぁっ!」バッ
従者「跳んだ!?」
影武者「轢かれてしまう!」
国王「狙いは……馬を操ってる貴様だ!」
御者「うわぁぁぁっ!」
バキィッ!
ドドドドドドド……!
ドカラッ ドカラッ ドカラッ …
国王「ふぅ……危なかった」
影武者「なるほど、御者を倒して馬車の方向を逸らしたわけですか……お見事!」
国王「お見事じゃねえ! また余を盾にしやがって! 影武者のくせに!」
国王「狙いは間違いなく余だろう」
国王「一ヶ月後、我が国は長年険悪だった隣国と歴史的な同盟を結ぶ」
国王「しかし、それに反発している国内の過激派テロ組織が、余を亡き者にせんとしているのだ」
国王「この一ヶ月、奴らはどんな手を使っても余を暗殺にかかるだろう」
影武者「大変ですね」
国王「なに他人事みたいにいっておる! こういう時のためにお前がいるんだろうが!」
影武者「耳かっぽじってよく聞きます!」
国王「……」ギロッ
国王「お前は影武者なんだ! 余の代わりに死ぬためにいる!」
国王「だから、この一ヶ月……死んでも余を守れ! 分かったな!」
影武者「お任せ下さい! この命にかえても!」ビシッ
国王「とても信用できん……」
従者「まあまあ、いざとなればきっと大丈夫ですって!」
国王「従者よ、お前が影武者だった方がマシだったかもしれんな。余に似てるし」
影武者「クビにするのだけはやめて下さいィ!」
影武者「やっと一日が終わった……」
影武者「さーて、寝るか。ベッドもダブルに限る!」
影武者「おやす――」
モゾ…
影武者「ん?」
モゾモゾ…
刺客「国王だな? 死んでいただく」ギラッ
影武者「刺客!?」
影武者「ま、待てっ! 俺は国王じゃない!」
刺客「なんだと?」
影武者「あっちで寝てるのが本物! 本物の王様だ!」
刺客「そんな手に引っかかるわけ……」
影武者「本物の王が、こんなみっともない喋り方するか!? 取り乱すか!?」
刺客「たしかに……よし、あっちの王を殺ろう」
国王「うわあっ!?」
グサッ!
刺客「ちっ、かわしたか!」
国王「なんだなんだ?」
刺客「お命頂戴!」シュバッ
国王「くっ……!」
影武者「頑張れ、頑張れ!」
バキィッ!
刺客「がはっ……!」ドザッ…
国王「ふぅ、ふぅ、ふぅ」
影武者「やったーっ!」
従者「物音がしましたがどうしました!?」バッ
国王「……」ギロッ
影武者「そんな怖い目をしてどうしました?」
影武者「な、なんですか。夜中なのに怒鳴らないで下さい」
国王「位置的にこの刺客に最初に狙われるのはお前のはずなのに、こいつはなぜ余のところに来た?」
影武者「さぁ……なんででしょうね」
国王「どうせお前が『あっちが本物』だとかいったんだろう!」
影武者「な、なんのことだか……」
国王「目が泳いでるぞ……!」
従者「まあまあ、お二人とも。今日のところはもう寝ましょう!」
国王「朝の散歩は気持ちがいいな」
影武者「ホントですね」
従者「あっ!」
毒蛇「シャーッ!」
影武者「毒ヘビだ!」
国王「城の敷地内になんでこんなものが!?」
影武者「ほら、早く行け!」ドカッ
国王「ちょっ!」
国王「このおっ!」ゲシッ!
国王「あ、危なかった……」
国王「またしても余を盾にしたか!」
影武者「すいません! つい反射的にやっちゃうんですよ~!」
「……」コソッ
部下「訓練した毒ヘビをけしかけましたが、またしても失敗しました……」
部下「何度襲撃してもことごとく打ち破られてしまい……申し訳ありません!」
リーダー「ふん……問題ない」
部下「え?」
リーダー「襲撃失敗の報告を分析した結果、俺はようやく国王の正体が分かった」
リーダー「今度行われるパレード……そこで決着をつけてやる!」
ワァァァ… ワァァァァ…
従者「隣国との同盟を控え、大盛り上がりですね!」
国王「うむ」
国王「しかし、注意せねばならぬ。テロ組織が余を狙うとしたら今日は絶好の機会なのだからな」
従者「我が国のパレードは、伝統的にあまり兵を配備しないですからね」
国王「その通り。かといってテロに怯えて伝統を崩すわけにもいかぬ」
国王「影武者、今日は頼むぞ!」
影武者「はっ、お任せ下さい! 命をかけて陛下をお守りします!」
ザシュッ! ズバッ!
兵士A「うぐっ!」
兵士B「ぐあっ!」
国王「……何事だ!?」
従者「襲撃です! テロ組織の奴らが大挙して押し寄せてきました!」
国王「やはり出てきたか……!」
国王「奴がテロ組織のリーダーか!」
従者「ええ、間違いありません!」
影武者「陛下、こういう時にあなたの盾になるのが私の役目です」ザッ
国王「おおっ……いつになくやる気ではないか!」
リーダー「国王を殺せぇ!」
ドドドドド…
影武者「……」
国王「なっ!? や、やめろぉ!」
部下「やったぞ、本物の国王を盾にしやがった! 大チャンスだ!」
リーダー「……待て」
部下「え?」
リーダー「あの、いかにも偽者っぽい振る舞いの……“影武者”の方を狙え」
リーダー「奴こそが本物の国王だ!」
部下「なんですって!?」
リーダー「奴は『王を盾にするダメ影武者』を演じて……己の身を守っているのだ!」
リーダー「国王の方はただの腕の立つボディガードに過ぎん!」
部下「なるほど……そういうことでしたか!」
ワァァァッ!
影武者「ひいい、こっち来た! 俺は本物の国王じゃないよぉ!」
リーダー「そうやってヘタレを演じているのも計算のうちだろう!」
部下「もらったァ!」
影武者「うわああああっ……!」
バキィッ!
部下「ぐはぁっ!」
リーダー「え!?」
影武者「パレードへようこそ、クソったれテロ組織の皆さん。丸ごと返り討ちにしてやるよ」
リーダー「バカな、貴様は本物の国王のはず……なぜ強いんだ!?」
影武者「さあて、何故でしょうねえ……行きましょう!」
国王「うむ!」
ドカッ! バキッ! ドゴッ!
影武者「どりゃああああっ!」
ガッ! ドカッ! ベキッ!
リーダー(国王も影武者も……二人とも強い! どうなってるんだこれは!?)
リーダー(どっちが本物なんだ!? 分からない……分からない!)
影武者「流石に……数が多いな……」フゥ…
リーダー「! スキありィ!」ダッ
影武者「しまっ――!」
グサッ!
リーダー「な、なぜ!? 剣が刺さったのに!」
影武者「防刃チョッキもダブル(二重)に限るぜ」バッ
リーダー「なんだとォ!?」
影武者「これで終わりだテロ組織……成敗ィ!!!」
ドゴォッ!
リーダー「うごふっ!」
リーダー(結局……いったいどっちが、本物だったんだ……)ガクッ
影武者「はいっ!」
国王「しばらくの間、我々の世話をして頂いて本当にお疲れ様でした」
影武者「陛下、もうご安心です」
従者「……」
従者「うむ、二人とも……よくやってくれた」
従者「二人が国王と影武者になりすましてくれたおかげで、余は狙われることすらなかった」
従者「国の災いの芽も摘むことができた」
従者「これでめでたく、隣国との同盟を結ぶことができる。本当に感謝している」
国王「もったいないお言葉!」
影武者「ありがたき幸せ!」
従者「やはり……影武者もダブルに限るな」
END
コメント一覧 (2)
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- 2021年03月26日 01:05
- こういうのでええんや
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- 2021年03月26日 10:57
- 会話のセンスが1990年代