勇者「クラウドファンディングで魔王を倒す資金を調達するぞ!」
戦士「どうする? 王様に援助してもらうか?」
勇者「いや、何度も追加援助頼んじゃってるし、流石にもう無理だろう」
勇者「このところ冒険もはかどってないし、お払い箱にされる可能性すらある」
戦士「だよな……。となると、モンスター倒して路銀稼ぐか」
勇者「倒そうにも、装備はガタガタだし……」
戦士「じゃあ、どうすんだよ?」
勇者「こうなったら……クラウドファンディングしかないな」
勇者「クラウドは“群衆”、ファンディングは“資金調達”って意味で」
勇者「ようするに不特定多数の人に金を募る方法だ」
戦士「へえ、そんなのがあるんだ」
勇者「このやり方で金を集めて成功を収めた商売人は多い」
勇者「例えば『新機軸の宿屋を建てるから援助して下さい』てな具合にな」
戦士「俺らの場合、『魔王を倒すから援助して下さい』になるわけか」
勇者「そういうこと」
勇者「拠点を作って、クラウドファンディングで魔王を倒す資金を調達するぞ!」
勇者「これでよし」
戦士「残る金は広告で使い果たしたし、後はここで金が貯まるのを待つだけか」
勇者「ああ、待つしかない」
戦士「目標金額はどのぐらいだ?」
勇者「10万Gは集まらないと厳しいな……」
戦士「10万か……いったい何日かかるか」
勇者「資金の貯まり具合はどうかな、と」
勇者「お!」
戦士「どうだった?」
勇者「これを見ろ! 予想以上だ!」
ジャラッ…
戦士「すげえ、すでに1万Gはあるんじゃねえか!?」
勇者「ああ、このペースでいけば……」
戦士「さっそく金額を数えようぜ!」
勇者「うん!」
……
勇者「おお……今日一日だけで5万いった!」
戦士「すげえ、すげえぜ! クラウドファンディング!」
戦士「かなり貯まってる!」
……
勇者「早くも10万G達成だ!」
戦士「やったぜ! これで冒険を再開できるな!」
勇者「だけど……相手は魔王だ。金はいくらあってもいい。もっと貯めた方がいいかもしれない」
戦士「それもそうだな。もっと続けた方がいいか」
勇者「太っ腹な奴がいたもんだ!」
……
勇者「やったぁぁぁぁぁ!」
戦士「100万G達成だ!」
戦士「いよいよ冒険を再開するか?」
勇者「この勢いを逃したくない。もう少し続けるべきだろう」
戦士「ああ……」
勇者「クラウドファンディング、1000万G達成だ!」
戦士「よっしゃあ!」
勇者「この金はただの金じゃない……市民の“魔王を倒してくれ”っていう願いがこもった金だ」
戦士「みんな……ありがとう!」
戦士「どうする? まずは武器から……」
勇者「……」
戦士「どうした?」
勇者「そう焦ることもないだろ」
戦士「……どういうことだ?」
勇者「1000万もあるんだ……。ちょっとぐらい他のことに使ったっていいんじゃないか?」
戦士「たしかに!」
戦士「……」グゥゥゥ…
勇者「どうやら、最初の使い道は決まったな」
戦士「ああ」
勇者「腹が減っては戦はできぬというし……」
戦士「最高級レストランで腹ごしらえといこうぜ!」
オーッ!
勇者「うまい!」
戦士「うめえ!」
勇者「こんな柔らかい肉食べるの生まれて初めてだ!」
戦士「こっちのロブスターも、身がプリプリしてて極上の味だぜ!」
勇者「このスープも……!」
戦士「魚料理も……!」
バリボリ… バクバク…
勇者「ああ、夢のような数日間だった」
戦士「じゃ、そろそろ魔王のところに?」
勇者「うーん……その前に体をほぐした方がよくないか?」
戦士「いえてる! もしもの時動きが鈍ったら致命的だ!」
勇者「となれば、温泉でも行くか!」
戦士「賛成!」
勇者「ふぅ~」
戦士「はぁ~」
勇者「いい湯だなぁ……」
戦士「ホントにいい湯だ……浸かってるだけで心も体も洗われるようだ」
勇者「見ろよほら、肌がスベスベになってる!」
戦士「おお、すげえ! さっすがセレブでしか入れねえ秘湯中の秘湯だ!」
戦士「ヒック……」
勇者「風呂上がりの酒は最高だ……」
戦士「ああ……最高級の酒を浴びるように飲んじまった……」
バニーガール「は~い」
勇者「!」
戦士「!」
バニーガール「お兄さんたち、ウチの店に寄ってかなぁい?」
勇者「寄ります!」
戦士「ここで“いいえ”を選ぶバカはいねえ!」
勇者「ヒューヒュー、いいねえ!」
戦士「ナイスダンス!」
バニーガール「お兄さんたち、お金たくさん持ってるのね!」
勇者「ああ、金ならいくらでもある!」
戦士「酒も女もジャンジャン持ってこい!」
バニーガール「たっぷりサービスしてあげるぅ!」
戦士「おう、ギャンブルよ!」
ディーラー「いかがいたしますか?」
勇者「えーと……赤の7番に全チップ賭ける! ラッキーセブンだ!」
戦士「うおおお! すげえ勇気だぜ!」
勇者「なんたって俺は勇者だからなァ!」
ワハハハハ… アハハハハ…
……
勇者「……」
戦士「……」
勇者「どうしよう……」
戦士「あれだけあった資金が……」
勇者「底を尽いてしまった!」
戦士「しかも、ただの金じゃねえ。『魔王を倒す』って名目で集めた金だ……!」
勇者「ひっ!」
ドンドンドン!
「開けろコラ!」 「ここにいるのは分かってんだぞ!」 「魔王退治はどうしたァ!」
勇者「あわわ……」
戦士「どうするよ……?」
勇者「どうするといわれても……」
ドガァン!
勇者「ど、どうも……」
「金を集めるだけ集めてバックれて、魔王を倒す約束はどうなったんだよ!?」
戦士「もちろん、これから行くつもりで……」
「バニーガールの店で豪遊してる二人組がいたらしいぞ!」
「お前らがカジノにいたって情報もある!」
「ふざけんなァ! この詐欺師がァ!」
勇者「ひいいい……!」
戦士「すげえ殺気だ……」
戦士「なんだよ?」
勇者「逃げろォ!」ダッ
戦士「それしかねえか!」ダッ
「あっ、逃げたぞ!」
「やっぱり魔王を倒すつもりなんてなかったんだ! 遊ぶ金欲しさに俺たちから金を……」
「許せねえ! 捕まえろォ!」
勇者「あいつら、追いかけてくる!」
戦士「なんて執念だ……! 金の恨みは恐ろしい……!」
勇者「まるでバッファローの大群……追いつかれたら踏み潰されるぞ!」
戦士「奴らの体力が尽きるまで逃げるしかねえ!」
勇者「振り切れたか!?」
戦士「全然ダメだ! 数も勢いも増すばかりだ! 奴らが通った後は草も残らねえ!」
勇者(どこか……どこかに避難しないと!)
勇者「よし、あのデカイ建物に逃げ込もう!」
戦士「だけど、奴らも中に入ってきたぜ! 怒号が聞こえる!」
勇者「しつこい奴らだ……! ――ん?」
魔王「フハハハハ……ようやくここまで来たか、勇者よ。待ちくたびれたぞ!」
勇者「……」
勇者「助けてくれぇ!!!」ダッ
魔王「え」
戦士「お願いします!」ササッ
魔王「え? 盾?」
ドドドドド…
魔王「なんだ、この足音は……」
ドドドドドドドドド…
魔王「あの者どもはいったい……!?」
「勇者がいたぞ!」 「叩き殺せ!」 「逃がすなァ!」 「邪魔する奴も蹴散らせ!」 「許さん!」
魔王「うわああああああ……!」
ドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドド……!
ワアァァァァァ……!
戦士「む、むごい……!」
ズラッ…
勇者(囲まれた……!)
戦士(万事休すか……!)
「……」
勇者(やるんなら、ひと思いに……!)
「なぁ……みんな」
勇者「え」
戦士「?」
「我々から金を集め、その金を浪費し、みんなを怒らせる!」
「怒りの力で魔王を倒すため、あえて憎まれ役に……!」
「そうだったのか……なんという計略だ!」
「勇者様、バンザイ!」 「戦士さんバンザイ!」 「二人ともバンザーイ!」
ワアァァァァァ……!
勇者「た、助かった……のか……」
戦士「群衆の力恐るべし……!」
……
国王「よくやってくれた」
国王「魔王を倒した功績を称え、おぬしたちには莫大な報奨金を授けよう」
勇者「ありがとうございます」
国王「贅沢をするもよし、商売するもよし、地位を得るもよし、使い道はおぬしたちの自由だ」
勇者「実は……二人で話し合った結果、すでに使い道は決めております」
国王「なぜだ?」
勇者「このたび魔王を倒せたのは……クラウドファイティングのおかげなので……」
― END ―
コメント一覧 (2)
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- 2021年02月25日 05:17
- これっておっさんよびと同じじゃね
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- 2021年02月25日 13:22
- 3レスくらいで終わりそうな話だな