兵士「オペ子、お前の指示ガバガバすぎんよ~!」オペ子「ごめんなさーい!」
オペ子『怖いですねえ。引き返します?』
兵士「引き返すわけねえだろ!」
兵士「……で、入り口らしい入り口がないんだが、どこから入ればいいんだ?」
オペ子『うーん……ドカッと?』
兵士「なんだそりゃ……。とりあえず、この辺蹴ってみるか」ドカッ!
兵士「お、穴開いた」
兵士「分かれ道だ!」
兵士「右と左、どっちに行けばいい?」
オペ子『うーんと、ペンを持つ方!』
兵士(ペンを持つ方、というとこいつ左利きだから……)
兵士「左か!」ダッ
オペ子『タコはいませんか?』
兵士「いねえよ! あの中にテロリストどもがいるんだな?」
オペ子『……多分』
兵士「そこは自信持ってくれよ。で、人数は?」
オペ子『うーん……100人ぐらいでしょうか?』
兵士「そんな多いのかよ!?」
兵士「減らしすぎだろ」
オペ子『5人……』
兵士「ホントか? 自信ある?」
オペ子『ええい、ちょっとおまけして7人にしちゃいますか!』
兵士「おまけって! ええい、もう突入する!」
バァンッ!
テロリストA「なんだてめえ!?」
テロリストB「くそおっ!」バッ
兵士「遅すぎるぜ」ジャキッ
ガガガガガガガ… ガガガガガガガガ…
「ぐああっ!」 「ぎゃっ!」 「ぐはぁっ!」
オペ子『ファイトー!』
兵士「おーう! ってのんきに応援するな! もう終わってるし!」
司令官「ご苦労」
新米「屈強なテロリスト集団を一人で退治しちゃうなんて、すごいです!」
兵士「これぐらい朝飯前よ」
兵士「それにしても……オペ子!」
オペ子「は、はいっ!」
兵士「お前の指示ガバガバすぎんよ~! いつものことながら、何もかもあやふやだ!」
オペ子「ごめんなさーい!」
兵士「よし、お前今から訓練付き合え!」
新米「はいっ!」
パァンッ! パァンッ! パァンッ!
新米「すげ……全弾ど真ん中」
兵士「さ、やってみろ!」
新米「はいっ!」
パァンッ! パァンッ! パァンッ!
兵士「うーん、60点ってとこだな。まだまだ腕にブレがある」
新米(これでも同期の中じゃ最優秀だったのに……この人はレベルが違いすぎる……)
兵士「今回の任務は?」
司令官「ある研究所が、遺伝子操作で怪物を生み出す研究をしていることが分かった」
司令官「この研究が完成すれば、テロに利用されたり、国家の平和を大いに乱すに違いない」
司令官「研究所に突入し、主犯である博士と、もし完成していたら怪物を処分してくれ」
兵士「分かりました。今すぐ出動します」
兵士「オペ子、頼むぞ」
オペ子「はーい!」
司令官「新米君もここで、先輩の働きぶりを見ておくといい」
新米「はい、そうします!」
オペ子『バリ……ボリ……』
兵士「お前、なんか食ってるな?」
オペ子『食べてません! 食べてません!』
兵士「ガーリック味だから口が匂うんだよ」
オペ子『残念でした、あたしが食べてたのはコンソメでーす! ……あ』
兵士「アホが口を滑らせたところで、滑るように突入するか」
兵士(……ん!?)
男「はぁ、はぁ、はぁ……」ヨロヨロ…
青年「ひぃ、ひぃ、ひぃ……」ヨロヨロ…
兵士(敵か!?)ジャキッ
オペ子『待ってぇ! 撃たないで!』
兵士「なぜだ!?」
オペ子『今、血を見たい気分じゃないんで……』
兵士「なんだそりゃ!」
青年「我々は人体実験の材料に捕われていたんです!」
兵士「なんだ、そうだったのか。危うく撃っちまうところだった」
兵士「この道をまっすぐ行けば外に出られる。保護してもらえる手はずになってるから、さっさと出な」
男「はいっ!」
青年「ありがとう!」
兵士「ったく、人体実験までやってるとは、本格的にマッドサイエンティストらしいな」
オペ子『体操の練習でもしてるんですか?』
兵士「マットじゃねえ、マッドだ!」
兵士「なんだこりゃ!?」
兵士(間違いない……この研究所が作ってるバケモノの一種だ!)
兵士「すぐに撃ち殺してやる!」ジャキッ
オペ子『いやぁぁぁぁぁぁっ! 虫ぃぃぃぃぃぃぃっ!』
兵士「うわっ!?」
オペ子『撃たないで、撃たないで! 虫が飛び散るとこ見たくないぃぃぃ!』
兵士「じゃあどうやって倒せってんだよ!」
ドカッ!
羽虫「ギャッ!」
兵士「オラッ! オラッ!」ドカッ! ドカッ!
羽虫「ギエエエエエッ……」ドチャッ
ジュワァァァァァ…
兵士「うおっ、体液は強酸だったのか。こりゃあ撃ってたら危なかったかもな」
兵士「――!?」
博士「私だ! 分からんのか!?」
怪物「グオオオオオオオオッ!」ガシッ
博士「ひいいっ、やめ――」
怪物「ガアアアアアアアアアアッ!」バリボリムシャムシャ…
兵士(おいおい……生みの親を食いやがった。予想以上のバケモノだぜ)
兵士「しかも、こっちに気づきやがった! 最悪の展開だ……」
怪物「グオオオオッ!」シュバババッ
兵士「触手攻撃か!」
オペ子『ひいいいっ! グネグネして避けて下さい~! グネグネ~!』
兵士「グネグネってなんやねん!」
オペ子『おー、できるじゃないですかぁ!』
兵士「ったく、ちゃんと体を左右に動かして……とかいってくれよ」
兵士「まぁいいや、こっからはこっちのターンだ! バケモノちゃん!」ジャキッ
ガガガガガガガガガ…
怪物「グオオオオオッ!?」
兵士「やったか!?」
兵士「うおお、ピンピンしてやがる! 不死身かこいつ!」
ガガガガガガガガ… ガガガガガガガガガ…
怪物「ガアアアッ!」シュバババッ
兵士「ちいっ!」グネグネ
オペ子『お、お、お、落ちつきましょう!』
兵士「お前がな!」
オペ子『こういう時は空を見ましょう、空を!』
兵士「空って、ここ屋内なんだけど……」
球体「……」フワフワ
兵士「なんだこれ……。変な玉が浮いてる……」
怪物「ギャオオオオオオオオッ!」
兵士「迷ってる暇はねえ! 撃ってみるか!」
ガガガガガガガガガガ…
バリィンッ!
兵士(砕けた!)
怪物「ガアアアアアア……!」ドロドロドロ…
怪物「グオオオオオオオオオ……」ジュワァァァァァ…
兵士「溶けていく……」
兵士「そうか……さっきの球体がバケモノの“コア”だったのか」
兵士(もし、この研究が完成してたら、不死身のバケモノ軍団が誕生してたな……危なかった)
兵士「オペ子~、今日もドタバタさせてくれたな~」
オペ子「ごめんなさーい!」
兵士「俺の動きはどうだった?」
新米「いやもう、完璧でしたよ!」
新米「巨大な虫を鋭い蹴りで仕留めたり、不死身の怪物相手に一歩も引かなかったり……」
兵士「お前も早く一人前になれよ」
新米「はいっ!」
新米「はい」
新米「オペ子さんのメチャクチャな指示を全て生かして……先輩は凄いです!」
新米「この世界には“最高の兵士には最高のオペレーターがいる”なんて格言がありますけど」
新米「先輩には当てはまりませんよ」
新米「俺も早く先輩のようになりたいです!」
司令官「近いうち、君にも単独任務をこなしてもらうことになるだろう。訓練に励むように」
司令官「銀行で立てこもり事件が起こった」
司令官「犯人は二人組、行員を人質に取っている」
司令官「兵士君は非番だし、この事件、君に解決を任せたいのだが……どうだ?」
新米「やります、やらせて下さい!」
新米「で、俺のオペレーションを担当してくれるのは?」
司令官「彼女だ」
オペ子「よろしくねー!」
新米(ゲ!?)
新米「いえ……」
新米(やべえ、やべえよ……)
新米(先輩だから、この人のしっちゃかめっちゃかな指示についていけるようなもんだ)
新米(一気に不安が押し寄せてきた……)
司令官「では、出動してくれ」
新米「はいっ!」
新米(ヤバイ、めっちゃ緊張してきた……。単独任務は初めてだしな……)
オペ子『落ちついてー』
新米「え?」
オペ子『一度深呼吸しよっか』
新米「は、はいっ! スーハー……」
オペ子『落ちついた? じゃ、侵入経路の確認からいくよ。訓練通りやれば大丈夫だから』
新米(あれ……?)
新米「はいっ!」サササッ
ガチャ…
新米「……開いてました」
オペ子『静かに入ろう』
新米「……」ササッ
オペ子『階段はそーっと昇ってね。音響くから』
新米「はい」サササッ…
新米「突入しますか?」
オペ子『待って。今突入したら、人質が巻き添えになる』
オペ子『事件からそろそろ6時間……犯人たちの緊張も緩んでくる頃……』
オペ子『今、外の警察に犯人の気を引く工作をするよう頼んでるから』
オペ子『二人が揃って人質から離れたら、突入しよう!』
新米(なるほど……)
犯人B「ハハッ、マジかよ? ざまあねえな」
新米(二人とも人質から離れた! ――今だッ!)バッ
犯人A「えっ!?」
犯人B「うわっ!?」
新米(訓練通りに――)
パァンッ! パァンッ!
犯人B「いでえっ……! いでえよぉ……!」
新米「ふぅ……。あ、あのっ、犯人の無力化に成功しましたっ!」
オペ子『やったね!』
新米「は、はいっ! オペ子さんのおかげです!」
オペ子『そんなことないよ。日頃の訓練の成果だよ』
新米(これはどういうことなんだ……!?)
司令官「ご苦労、初の単独任務としては上出来だよ。今後とも期待してる」
新米「ありがとうございます!」
新米「しかし……腑に落ちないこともあって……」
司令官「彼女のことかね」
新米「はい、先輩と組んでる時はメチャクチャだったのに、今日の指示はものすごく的確でした」
新米「まるでダンスでリードするように、俺を正解に導いてくれて……」
司令官「これにはちゃんと理由があるのだ」
司令官「力んでしまって力を発揮できなかったり、あるいは融通がきかなすぎたり……」
新米「というと?」
司令官「オペレーターが『撃て』と指示したら、本当に一発しか撃たなかったり」
司令官「『背後に注意』と指示したら、後ろばかり気にして、今度は前方がお留守になったり」
司令官「他にも色々とやらかしてたよ」
新米「あの先輩が……!?」
司令官「実力はあるが、実戦では役に立たない無能と判断され、お払い箱になる寸前だった」
オペ子『あたしなら……彼をちゃんと導くことができると思います!』
司令官「試しに二人を組ませたら、結果は大成功だった」
司令官「彼女のゆるい指示が、元々優秀な兵士君に“自分がしっかりしなきゃダメだ”という気にさせ」
司令官「あるいは漫才のようなやり取りをすることで、緊張をほぐす効果もあるのだろう」
司令官「二人はコンビで様々な任務をこなし、いつしか特殊部隊一隊よりも頼れる存在となった」
新米(そういえば、先輩と組んでた時もオペ子さんの指示自体にミスはなかった……)
新米(全部先輩がフォローしたおかげのラッキーだと思ってたけど、そうじゃなかったんだ……)
司令官「いや、そんなことはないと思うよ」
新米「え」
司令官「彼だってバカじゃない。彼女の狙いにはとっくに気づいてるんじゃないかな」
司令官「でなきゃ、“もっとちゃんと指示をくれるオペレーターと組ませて下さい”というはずだからね」
司令官「彼もまた、自身の欠点を把握し、自分の力を最大限引き出してくれる彼女に感謝してるはずだ」
司令官「持ちつ持たれつ、というやつさ」
新米「なるほど……」
…………
……
司令官「ご苦労、この短時間で空港に仕掛けられた全ての爆弾を解除してくれるとは流石だ」
兵士「大事に至らなくてよかったです」
兵士「それにしてもオペ子! 今日もお前の指示はガバガバだったぞ! 冷や汗出たわ!」
オペ子「ごめんなさーい! でも生きて帰ってきてくれてよかったー!」
新米「……」
新米(“最高の兵士には最高のオペレーターがいる”か……)
― 完 ―
コメント一覧 (5)
-
- 2020年12月15日 00:51
- こういうので良いんだよ
-
- 2020年12月15日 01:36
- 兵士 「こっちの方はキツキツじゃねえか!」
オペ子「お財布の管理もお任せあれですよ!」
-
- 2020年12月15日 01:58
- 我鍋に綴じ蓋
-
- 2020年12月15日 09:09
- ええ話や...
-
- 2020年12月15日 16:19
- EDFのオペ子とは大違いだ