男「よかったら家まで送っていくよ」女「ハイエース……!?」
ブロロロロ… キキッ
女「?」
男「よかったら家まで送っていくよ」
女「ハイエース……!?」
男「どうする?」
女(私の人生……どうやらここまでみたいね)
女「お願いします」
男「次は?」
女「えーと、次は右で……」
男「ここは?」
女「まっすぐ行って下さい」
男「分かった」
女「あ、あそこのコンビニ曲がって下さい」
男「じゃあ、降ろすよ」
キキッ
男「それじゃ、気をつけて帰ってね」
女「はい、ありがとうございました!」
ブロロロロロ…
女(あれ? 想定してた展開と違う……)
女「送り屋?」
女友「なんでもハイエースについた悪いイメージを払拭するために」
女友「ボランティアで人の送り迎えとかをしてるんだって」
女友「人柄もいいし、運転も上手いし、結構評判いいみたいよ」
女「へぇ~」
ブロロロロ… キキッ
男「お待たせ」
塾生徒「送り屋さん!」
男「さ、乗って。遅くなるとお父さんお母さんが心配するから」
塾生徒「うん!」
男「到着!」
塾生徒「送り屋さんいつもありがとう!」
男「勉強頑張れよ!」
塾生徒「うん!」
男「さて、次は……」
酔っ払い「うぇ~っぷ」ヨタヨタ…
酔っ払い「飲みすぎちゃったぁ~っと……」フラフラ…
ブロロロロ… キキッ
男「ずいぶん酔ってますね。この辺りは交通量も多いし、よろしければ送りましょうか?」
酔っ払い「え~、助かるなぁ~、ありがと~」
男「なんの、もし車に轢かれでもしたら後味が悪いですから」
酔っ払い「うっぷ……」
酔っ払い「オエエエッ!」
酔っ払い(吐いたら、一気に酔いが覚めて……)
酔っ払い「すいませんすいませんすいません! 私ときたらとんでもないことを……!」
男「お気になさらず。乗せる時からこうなることも想定してましたから」
男「住所によると家はこっちでいいんですよね?」
酔っ払い「このお礼とお詫びは後日必ず……」
病人(胸が……苦しい……。しかし、声も出せない……)
病人(このまま……ここで死ぬのか……)
ブロロロロロ… キキッ
男「あの、もしかして胸が苦しいのでは?」
病人(え、なんで……)
男「声も出せないようですね。すぐ病院に送ります!」
医者「もう少し処置が遅かったら、手遅れになっていたかもしれません」
男「よかった……」
男「では、俺はこれで」
ブロロロロロ…
病人(あのハイエースの運転手さんは命の恩人だ……)
女「絶好の痴漢スポットじゃない」
ブロロロロ… キキッ
女(あっ、このハイエースは……!)ドキッ
男「よかったら、また送っていこうか?」
女「お願いします!」
ブロロロロ…
男「ん?」
女「どうしてハイエースのイメージを払拭しようと?」
男「俺はハイエースが好きなんだよね」
男「大きさ、フォルム、安全性……全てにおいて高水準だ」
男「そんなハイエースに変なイメージがついちゃってるのが、悲しくてね」
男「だから、こんなことを始めたんだ」
男「最初はかえって怪しまれたけど、だんだん常連さんもできてきて……」
女「……」
女「はいっ、ありがとうございました!」
男「それじゃ!」
ブロロロロロ…
女(もっと乗っていたかった……)
女(家じゃないところに送って欲しかった……)
男「……」
男(あの人、なかなか可愛いよな)
男(おっと、何を考えてるんだ! こういう邪心を持ったら、俺は送り屋失格だ!)
男(自分を厳しく戒めないと!)
男「そうだよな、ハイエース!」
女(いつも色んな人の送り迎えをしてるからしょうがないけど……)
女友「おーい!」
女「……」
女友「もしもーし!」
女「……」
女友「ブロロロロロ……」
女「ハイエース!?」バッ
女「って、なーんだあんたか。紛らわしいなぁ」
女友「こりゃ重症だわ」
ブロロロロ… キキッ
女「?」
女(車……ハイエースじゃないようだけど……)
茶髪「よかったら、送ってくよ?」
女(やっぱり違う人だ……残念。だったら……)
女「いえ、結構です」
女「!」
女「あなたは送り屋さんの知り合い?」
茶髪「うん、あの人はちょうど先輩に当たるんだ。ちょくちょく会ってる」
女「私、あの人に会いたいんです! だったら乗せて下さい!」
茶髪「オッケー」ニコッ
女「次の角を右です」
茶髪「……」
女「もしもし?」
茶髪「……」
女「あの、家からどんどん離れてってますけど……」
茶髪「お前アホかァ? 俺は送り屋なんて知らねーよ!」
女「え……!」
茶髪「まさかこうも簡単に引っかかるとはなァ! このまま人のいねえとこに連れてってやるぜ!」
女「そ、そんな……」
女(車から出なきゃ! 飛び降りてでも――)サッ
茶髪「おーっと」バチバチッ
女「あぐっ!?」
茶髪「スタンガンだ。気絶するほどじゃねえが、しばらくは痺れて動けねえ」
女「ううっ……!」
女(なんてバカなの……私!)
男「さて、今日はもう帰るか。ハイエース、今日もお疲れさん」
男「ん?」
ブロロロロロ…
男(今すれ違った車……助手席にぐったりした彼女が――)
男「まさか!?」
男「ハイエース、すまないがもう一働きしてくれ!」
ギュルルッ!
女「……」
茶髪「どうやら観念したようだな。今日はいい拾いモノしたぜ」
茶髪「ん……? 後ろから……?」
茶髪「なんだありゃ……!」
茶髪「ハイエースが追いかけてきやがった!」
女「!」
女「きゃああっ!」
ブオオオオオッ!
男(スピードを上げた……逃げ切るつもりか……)
男「そうはさせない!」
ブオオオオオッ!
茶髪「へへへ、この峠は俺のホーム……もうミラーにも映らねえ……」チラッ
茶髪「ゲ!?」
茶髪(余裕で追いついてきやがる!)
ハイエース「……」ギャルルッ!
茶髪「しかも華麗なドリフトまで決めやがって……クッソなんて奴だ!」
茶髪「ハッ!?」
茶髪「まずい、スピード出しすぎて――!」
茶髪(このままじゃ崖の下に――)
女「いやぁぁぁぁぁっ!」
男「ハイエース!」グイイイッ
ギュオオオオオオッ! ギャルルルルルルッ!
茶髪「な……!?」
茶髪(ハイエースがスピンしまくって、その遠心力で俺の車をふわりと止めた……!)
茶髪(自分でもなに言ってんのか分かんねーけど……助かった……)
男「ふぅ……」キキッ
男「もう大丈夫だよ」ガチャッ
女「ありがとうございます!」
男「さて……」ギロッ
茶髪「ひっ!」
茶髪「あ、あんたが……!」
男「お前のような女性を拉致するクズは――」
男「地獄へ送ってやろうか!?」ギロッ
茶髪「ひいいいいいっ!」
男「それが嫌なら……警察署に送ってやる」
茶髪「署で! 署でお願いします! 今までの余罪も全部白状しますぅぅぅぅぅ!」
男「危ないところだったね」
女「ありがとうございました……」
男「俺も迂闊だったよ。評判が立てば、ああいう奴も出るってことに気付かなかった」
女「いえ、そんな……」
男「このまま今日は送っていくよ。いつもの場所でいいね?」
女「……」
男「え」
女「このままどこかに連れてって……」
男「そういわれても……」
女(お願い、ハイエース……私の願いを叶えて!)
プスンプスン… ガクガク…
男「なんだ? 車が急に止まって……」
男「どこも異常はないのに、どうして……!」
女(やった……願いを叶えてくれた!)
男「……」
男「え、えぇと……」
男「よかったら、今夜はここに泊まっていかない?」
女「はい、イエース!」
END
コメント一覧 (8)
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- 2020年11月26日 01:04
- よきかな
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- 2020年11月26日 02:06
- クソキモオタのスレ
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- 2020年11月26日 02:32
- 深夜に声をころして笑ってしまった。
ほっこり
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- 2020年11月26日 10:02
- >>4
もっこり
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- 2020年11月26日 04:48
- わんぴいす
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- 2020年11月26日 05:49
- お前最後のが言いたかっただけだろ
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- 2020年11月26日 19:03
- 盗難が怖くてNV350乗ってるけど安全とは言えない気が…
リフター付きで発注したけど結構積めるのでよきだが
綺麗にまとまってて好き