【艦これ】ブサ督「イケメンに限るって……真理だよな」【後半】
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西方海域 とある離島の砂浜
ザザーン… ザザーン…
ブサ督「…………」
榛名「ブサイク提督さん」
ブサ督「ん?」
榛名「何をなさっているのですか?」
ブサ督「墓……とは、ちょっと違うか」
ブサ督「記念碑みたいなのを作ってる」
榛名「記念碑ですか」
ブサ督「まあ、便宜上【艦娘の墓】と似た様なもんだけどな」
榛名「【艦娘の墓】?」
ブサ督「……艦娘って、まだまだ謎の多い部分があって」
ブサ督「駆逐艦だろうが、戦艦だろうが」
ブサ督「何故か存命中の同じ名前の艦娘は生まれて来ない」
榛名「という事は……榛名は榛名だけって事ですね?」
ブサ督「そう」
ブサ督「……でもそうなると少し困った事が起こる」
榛名「困った事?」
ブサ督「戦争をやっているからどうしても轟沈する……」
ブサ督「つまり、死んでしまう事もあるんだが」
ブサ督「墓にその名前を入れると、後から同じ名前の艦娘が生まれた時」
ブサ督「その艦娘は、自分の墓がすでにある事になる」
榛名「あ……」
ブサ督「そこで出来たのが【艦娘の墓】」
ブサ督「どの艦娘が亡くなっても【艦娘の墓】に入れて」
ブサ督「故人を悼む対象にした、という訳さ」
榛名「…………」
榛名「では……榛名もいずれはそこへ入るんですね」
ブサ督「そうとも限らない」
榛名「え?」
ブサ督「艦娘の行く末は主に3つある」
ブサ督「一つは今、言った通り」
ブサ督「二つ目は艤装の経年劣化や損傷で動かなくなった時」
ブサ督「艦娘任務から解き放たれ、一般の婦女子として暮らしていく」
榛名「…………」
ブサ督「三つ目は理由不明で艤装が艦娘を認識しなくなり」
ブサ督「艦娘として活動できなくなった場合」
ブサ督「これまた艦娘任務から解き放たれ」
ブサ督「一般の婦女子として暮らしていく事になる」
榛名「そんな道もあるんですね」
ブサ督「ああ」
ブサ督「理屈は全く分からんが、艦娘は最長で10年くらいの任務になり」
ブサ督「何故かその間、年は取らないし、人間の病気になる事も極めて稀」
ブサ督「そして解放後は艦娘手当という一時金も付いて来るから」
ブサ督「艦娘になれる事は割と名誉に思われてる」
榛名「そうなんですか」
榛名「でも榛名は……お父さんとお母さんの記憶がありません」
ブサ督「さっきも言ったけど……榛名は離島艦娘だからな」
ブサ督「謎は残るが、普通に婦女子として暮らしている元離島艦娘も居る」
榛名「先輩が居るんですね!」
ブサ督「ああ」
榛名「榛名……安心しました」
ブサ督「良かったな」
榛名「それで……ブサイク提督さん」
榛名「その記念碑は……どなたの為のものなのですか?」
ブサ督「ん~……」
ブサ督「一言では説明できないな」
榛名「恋人さん……とか?」
ブサ督「恋人か……」
ブサ督「そういう気持ちが無いって言えばウソになるけど」
ブサ督「どちらかと言えば、妹とか、娘みたいに思ってたかも」
榛名「妹さんか娘さん、ですか」
ブサ督(……本人が聞たら怒るかな)
榛名「どんな人だったんですか?」
ブサ督「…………」
ブサ督「……とても綺麗な子だった」
榛名「…………」
ブサ督「ちょっと世間知らずで……最初はギクシャクしたけど」
ブサ督「俺もいろいろな事を彼女から学んだ」
榛名「…………」
榛名「亡くなった……という訳ではないんですよね?」
ブサ督「ああ」
ブサ督「でも……もう二度と彼女には会えない」
ブサ督「どこへ行ったのかも分からない」
榛名「…………」
ブサ督「…………」
ブサ督「……よし、出来た」
ブサ督「不格好だけど……許してもらおう」
榛名「……灰色の髪の君?」
ブサ督「何か書いておかないと、普通の岩と間違えられそうだからな」
ブサ督「……まあ、またここへ来るのは俺だけだろうけど」
榛名「…………」
ブサ督(……これは俺なりのけじめだ)
ブサ督(名前にしなかったのは、墓標みたいで嫌だし)
ブサ督(君は死んだわけじゃないと思うからだ)
ブサ督(…………)
ブサ督(桜……)
ブサ督(…………)
ブサ督(君と居た時間は……俺にとって、とても貴重で)
ブサ督(楽しいものだった……)
ブサ督(…………)
ブサ督(ありがとう)
ブサ督(桜……)
榛名「…………」
ピピピ… ピピピ…
ブサ督「……ん?」
ブサ督「通信か」
ピピッ ガガッ
ブサ督「こちらブサイク提督」
電『あっブサイク提督さん』
ブサ督「どうした、電?」
電『その……新聞記者の方が何人か』
電『南方鎮守府に押し寄せてまして……』
ブサ督「え?」
電『一応、軍事機密に係るので、電たちでは答えられないし』
電『ブサイク提督さんも離島療養中で答えられないと、押し通してます』
ブサ督(……どういう事だ?)
ブサ督「電、ブンヤは何の取材に来たんだ?」
電『…………』
電『……南方戦線は打撃を受けたのか?とか』
電『元大将との癒着はあったのか?とかです……』
ブサ督「!?」
電『いずれにしても詳しい事は分からないので』
電『このままで通しますが……』
電『ブサイク司令官さんのお耳にも入れておいた方が良いと思いまして』
ブサ督「そうか……ありがとう、電」
ブサ督「その対処でしばらく頼む」
電『分かりました』
電『南方鎮守府、通信終了』
ブサ督「ブサイク提督、通信終了」
ブッ…
ブサ督「…………」
ブサ督(妙だな……フツメン提督がその辺は任せておけと)
ブサ督(言ってたはずだが……)
ブサ督(…………)
ブサ督(内地で何かあったか?)
ブサ督(…………)
榛名「ブサイク提督さん?」
ブサ督「!」
ブサ督「あ、すまない、榛名」
榛名「何かあったのですか?」
ブサ督「そうみたいだが……」
ブサ督「こっちから動くのは悪手の様な気がする」
榛名「では……どうしますか?」
ブサ督「この件は任せてる奴がいるから」
ブサ督「そいつからの連絡を待つ」
ブサ督「今は、それしかないと思う」
榛名「分かりました」
榛名「榛名はブサイク提督さんに従います!」
ブサ督「…………」
ブサ督(……それにしても)
ブサ督(榛名は……俺の顔について何も言わないな)
ブサ督(ギョッ、としたりも無かったし……)
ブサ督(…………)
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大本営 元帥の執務室
元帥「クソッ!」
元帥「これが奴の答えか!」
フツ督「……完全にやられました」
フツ督「この報道で世論は」
フツ督「一気にブサイク提督の糾弾へ向かう事になるでしょう」
元帥「そんな事は言われなくとも分かっている……」
元帥「そして奴の大将への要望が高くなる事もな……!」
龍田「…………」
フツ督「もはや俺の根回しなんて意味を成しません」
フツ督「軍部もブサイク提督を庇う事は出来ない……」
フツ督「万事休す、ですね……」
元帥「記録の開示をしてしまえば楽なのだが」
元帥「それは海軍全体の信用の失墜を招く」
元帥「何か……何か良い策は無い物か……」
フツ督「…………」
龍田「…………」
龍田「あのぅ……」
元帥「!」
フツ督「!」
元帥「何か……良い策があるのかね?」
龍田「いえ、そうではなくて……」
龍田「少し、休憩をなさってはいかがかなぁ~」
龍田「と」
元帥「…………」
フツ督「…………」
元帥「……それもそうだな」
フツ督「頭を冷やすべき、か……」
龍田「何か、冷たい飲み物でも持って来ましょうか?」
元帥「そうだな」
フツ督「頼めるか?」
龍田「はい♪」
龍田「それでは、ちょっと失礼しまぁす」
ガチャ キィ パタン
元帥「…………」
フツ督「…………」
フツ督(……もうこうなったら)
フツ督(龍田に【処理】を頼むほか……)
フツ督(…………)
フツ督(いや……)
フツ督(それは出来ればやらせたくない)
フツ督(…………)
大本営 廊下付近
テク テク テク
龍田「ふふ~ん♪」
龍田「冷たい物と言えば~」
龍田「やっぱりラムネ~」
ガヤ ガヤ
龍田「……ん?」
大淀「ですから!」
大淀「直接元帥閣下にお話ししたいんです!」
憲兵「何度も言うが、許可を受けてない者は通せない」
憲兵「まずは君の所属する上官に通してからが筋だ」
大淀「それでは意味が無いんです!」
.
龍田(あれは……どこかで見た様な?)
龍田(…………)
龍田(まあいいか)
テク テク テク…
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龍田「お待たせしました~」
元帥「うむ」
フツ督「ありがとう、龍田」
龍田「いえいえ」
スッ スッ
ゴク ゴク
フツ督「……ふう」
フツ督「人心地ついたな」
龍田「うふふ~」
龍田「やっぱりラムネはいいですよねぇ~」
元帥「……そうだな」
元帥「これで現実の方もスッキリできれば良いのだが……」
フツ督「…………」
龍田「…………」
龍田「あ」
龍田「そういえば……」
フツ督「どうした?」
龍田「ラムネを持って来るとき見かけたんだけど」
龍田「元帥閣下に直接話がしたい~とかって」
龍田「憲兵と揉めてる艦娘が居たのよね」
元帥「私と?」
フツ督「どこの所属の艦娘だ?」
龍田「ん~……どこかで見た顔だと思うんだけど」
龍田「思い出せないのよね~」
フツ督「君に面識があるのか……」
元帥「…………」
フツ督「…………」
フツ督「どうでしょう、元帥」
フツ督「行き詰っているところですし」
フツ督「その艦娘に会ってみませんか?」
元帥「ふむ」
元帥「それも一興か……」
元帥「では、その様にしよう」
フツ督「迎えに行ってきます」
元帥「頼む」
―――――――――――
フツ督「あー君君」
憲兵「はい?」
フツ督「私は西方方面艦隊鎮守府・司令官のフツメン提督だ」
憲兵「!」
大淀「!」
フツ督「何でも元帥閣下と直接話がしたい艦娘が居るとか?」
大淀「は、はい!」
憲兵「しかし、本来の規定では」
憲兵「所属する部隊の司令官の許可が……」
フツ督「うん、君の意見は正しい」
フツ督「だが……そこの艦娘は見たところ損傷を直す暇(いとま)すら」
フツ督「押して来たみたいじゃないか」
大淀「…………」
フツ督「責任は私が取る」
フツ督「一つ、私の顔に免じて通してくれないか?」
憲兵「…………」
フツ督「いざとなれば、この護衛の艦娘に相手をさせる」
龍田「…………」
憲兵「…………」
憲兵「……分かりました」
憲兵「この艦娘の身柄はフツメン提督にお願いします」
大淀「!」
大淀「あ、ありがとうございます!」
フツ督「いやいや」
フツ督「では……こっちへ来てくれ」
大淀「はい」
龍田「…………」
―――――――――――
元帥「私が元帥だ」
大淀「は、はい」
大淀「まずは……お会いくださり」
大淀「ありがとうございます」
元帥「うむ」
大淀「それで……私は、北方方面艦隊鎮守府・所属の艦娘で」
大淀「秘書艦をやっております、大淀、と申します」
元帥「!」
フツ督「!」
龍田「あ……思い出した」
龍田「去年の合同観艦式で天龍ちゃんと一緒だった娘ね?」
大淀「はい、そうです」
大淀「ええと……龍田さん、でしたっけ?」
龍田「正解~♪」
大淀「……そういえば」
大淀「天龍さんと意気投合していましたね」
龍田「うん♪」
龍田「……天龍ちゃんの事は聞いたわ」
大淀「…………」
大淀「……これから話す事は」
大淀「もっと辛い事をあなたに知らせる事になるかもしれません」
龍田「……どういう事?」
大淀「…………」
大淀「元帥閣下、並びにフツメン提督」
大淀「まずはこれをご覧ください」
パサッ…
元帥「……この書類は?」
大淀「これは、広域通信機に記録されている」
大淀「艦娘の通信記録の一部です」
元帥「ふむ?」
大淀「この記録は……主に遠征に出た天龍さんの通信記録なのですが」
龍田「…………」
大淀「最後の通信の後……司令官権限で」
大淀「緊急通信規制処理されていたんです」
元帥「!?」
フツ督「!?」
龍田「…………」
元帥「遠征で緊急規制……!?」
フツ督「……通常ではありえない処置ですね」
フツ督「どういった状況だったんだ?」
大淀「…………」
大淀「この時……イケメン提督の指揮の元」
大淀「二個戦隊をもって敵泊地へ攻撃をしていたのですが」
大淀「大規模な伏兵によって、両戦隊とも撤退を打診して来ました」
フツ督「…………」
フツ督「……まさか」
大淀「……はい」
大淀「その後なんです」
大淀「天龍さんを含めた遠征部隊……全員に」
大淀「緊急規制が掛けられたのは……!」
元帥「…………」
フツ督「…………」
龍田「…………」
龍田「……ねえ」
龍田「それって……さ」
龍田「考えたくないんだけど……」
龍田「天龍ちゃんを」
龍田「囮か何かにした……って事かしら?」
元帥「…………」
フツ督「…………」
大淀「…………」
龍田「……どうしてみんな黙るの?」
龍田「誰か……否定しないの?」
龍田「ねえ!!」
大淀「……まだあるんです」
元帥「!」
フツ督「!」
龍田「!」
龍田「……これ以上」
龍田「何があるのかしら?」
フツ督「少し待ってくれ、大淀」
大淀「……はい」
フツ督「それは……天龍に関する事なのか?」
大淀「……はい」
フツ督「龍田」
フツ督「君は聞かない方が良い」
龍田「いいえ!」
龍田「絶対聞くわ!」
龍田「天龍ちゃんの事なんですもの!」
フツ督「……なら」
フツ督「約束してくれ」
フツ督「暴走しない、と」
龍田「…………」
龍田「……考えておくわ」
フツ督「その答えじゃダメだ」
フツ督「イエスかノーの二択」
フツ督「それ以外認めない」
龍田「…………」
龍田「……意地悪」
フツ督「どっちなんだ?」
龍田「分かったわよ」
龍田「暴走しない」
龍田「これでいい?」
フツ督「……ああ」
フツ督「すまない大淀、続けてくれ」
大淀「分かりました……」
大淀「…………」
大淀「あれは……ちょうど3日くらい前です」
大淀「北方鎮守府は……襲撃を受け」
大淀「広域通信機と電探を破壊されたんです」
元帥「何!?」
フツ督「待て。深海棲艦なら、警報が鳴るハズだろう?」
フツ督「故障でもしていたのか?」
大淀「いいえ」
大淀「正常に機能していました」
フツ督「!」
フツ督「まさか……天龍がやったのか!?」
龍田「!」
大淀「……結論から言えばそうです」
元帥「囮に使われ、生き残ったのならば……分からないではないな」
大淀「ただ……その時の天龍さんは……天龍さんは!」
大淀「深海棲艦のチ級によく似た姿を……していたんです!」
元帥「」
フツ督「」
龍田「」
元帥「な、何だと!?」
フツ督「し……信じられん……」
大淀「ええ……ええ! 私だって信じたくありません!」
大淀「ですが……私はこの目で見ました!」
大淀「そして、私の名前を呼んだんです!」
元帥「…………」
フツ督「…………」
…ドサッ
龍田「」
フツ督「た、龍田ッ!!」
元帥「こりゃいかん……」
元帥「医務室へ連れて行くんだ」
フツ督「失礼します!」
ガチャ キィ パタン
大淀「…………」
元帥「…………」
元帥「……それにしても3日か」
元帥「なぜすぐに連絡しなかったのだ?」
大淀「その襲撃の後、すぐに」
大淀「深海棲艦の大艦隊が現れまして」
大淀「その対応に追われてしまったんです……」
元帥「……なんというタイミングの悪さだ」
元帥「イケメン提督は……ちょうどこちらへ向かっててすれ違いになったか」
元帥「あ奴が居ても頼りないが……」
元帥「指揮官不在で、よく対処できたな」
大淀「…………」
大淀(……大本営は)
大淀(イケメン提督の実力を把握していたのね)
大淀(…………)
大淀「……私たちの功績ではありません」
大淀「ほとんどは……ブサイク提督が残してくれた」
大淀「戦術書のおかげなんです……」
元帥「ブサイク提督の?」
大淀「はい」
大淀「あれが無かったら……」
大淀「私たちは大損害を受けていたでしょう」
元帥「…………」
―――――――――――
フツ督「お待たせしました」
元帥「龍田は大丈夫か?」
フツ督「はい」
フツ督「軍医の話では問題ないだろう、と」
フツ督「医務室のベッドで休ませてあります」
元帥「そうか。何よりだな」
フツ督「それで……天龍はその後、どうしたんだ?」
大淀「…………」
大淀「天龍さんは、不在だったイケメン提督の居場所を執拗に聞いてきました」
元帥「……さもありなん、か」
フツ督(悪運の強い奴め……)
大淀「……申し訳ありません」
元帥「?」
元帥「なぜ謝罪するのだ?」
大淀「私は混乱して……うかつにも大本営へ行ったと」
大淀「天龍さんに漏らしてしまったんです……」
フツ督「!」
元帥「!」
大淀「金剛さんと比叡さんが捕まえようとしましたが」
大淀「逃げられてしまい……それっきり動向は知れません」
フツ督「なんてこった……」
元帥「…………」
元帥「警戒態勢を敷くべきか?」
フツ督「…………」
フツ督「今の状況を考えると、難しい判断です……」
フツ督「ただでさえ海軍の信頼が揺らいでいる時期ですから」
元帥「だが、放っておく訳にもいくまい」
フツ督「……天龍の居場所は把握しておきたいですね」
フツ督「移動ルートを予測して、当該地域を探らせてみましょう」
元帥「ふむ……それが妥当か」
元帥「天龍が無辜の民に手を出さぬ内は、それで行こう」
フツ督「ありがとうございます」
大淀「…………」
元帥「イケメン提督の事だけでも手一杯だというのに」
元帥「問題ばかり次々と起こってくれるな……」
大淀「…………」
フツ督「その事なんですが、元帥閣下」
フツ督「ひとつ思いついた事があります」
元帥「イケメン提督の事でか?」
フツ督「はい」
フツ督「ただ……まだ不確定要素がありますので」
フツ督「少し時間をください」
元帥「どれくらいだ?」
フツ督「長くても半日程度です」
元帥「…………」
元帥「……よかろう」
元帥「そのくらいなら待てる。期待してるぞ」
フツ督「がっかりされない様に頑張ります」
フツ督「では……」
フツ督「大淀、君にも手伝って欲しい」
大淀「え?」
大淀「あ、はい。私に出来る事なら手伝います」
フツ督「頼む」
フツ督「じゃあ、ついてきてくれ」
大淀「分かりました」
フツ督「それでは、失礼します」
大淀「失礼します、元帥閣下」
元帥「ああ」
ガチャ キィ パタン
元帥「…………」
元帥「……やっと分かった気がする」
元帥「フツメン提督が、あれだけブサイク提督に」
元帥「入れ込む理由が……」
元帥「…………」
元帥「一度、酒の席にでも誘ってみるかな?」
―――――――――――
大本営 屋上
フツ督「よし、ここならいいだろう」
大淀「こんなところで、いったい何を?」
フツ督「ブサイク提督と連絡を取る」
大淀「え!?」
大淀「負傷され、離島で療養中と聞きましたが……」
フツ督「それは表向きの話。色々あってな」
大淀「そう……だったんですね」
フツ督「……それと、通信する前に」
フツ督「君に龍田の事を話しておきたいと思って」
大淀「龍田さんの?」
フツ督「ああ……」
大淀「…………」
フツ督「君から見ると……」
フツ督「龍田があれだけ天龍に入れ込むのは変に思うんじゃないか?」
大淀「……少し思いました」
大淀「去年の合同観艦式で仲良くなってたのは見ましたが」
大淀「それ以降、会ってないはずですし……」
フツ督「だよな……」
フツ督「…………」
フツ督「実は……龍田は、前の天龍とかなり仲が良かったんだ」
大淀「前の……今の天龍さんの前、という事ですか?」
フツ督「そう」
フツ督「だが……ある日の戦闘で」
フツ督「前の天龍は龍田を庇い……」
フツ督「轟沈して【艦娘の墓】に居る」
大淀「!」
フツ督「……それ以降」
フツ督「龍田は自分を責め続けてな……」
フツ督「戦闘で自暴自棄になった事も一度や二度じゃなかった」
大淀「…………」
フツ督「そんな時……北方鎮守府で」
フツ督「新たな天龍が着任した事を知った」
大淀「…………」
フツ督「俺はそれを利用した」
フツ督「龍田に天龍は生きていた、と言い」
フツ督「その代りケガの後遺症で記憶を失っている」
フツ督「という事にしたんだ」
大淀「…………」
フツ督「……それを伝えて」
フツ督「合同観艦式を終えた後」
フツ督「龍田は……無謀な行動を取らなくなった」
大淀「……そうだったんですね」
フツ督「我ながら酷い男だと思うよ」
フツ督「何もかも全部……俺の我が儘での行動だ」
大淀「…………」
大淀「いいじゃないですか、それくらい」
フツ督「…………」
大淀「私の我が儘なんて……もっと酷い結果を招きました」
フツ督「…………」
フツ督「……興味はあるが、聞かないでおこう」
大淀「……そうしてくださると助かります」
フツ督「ははは」
フツ督「……じゃ、連絡を取るか」
大淀「そんな小さな通信機で南方まで通信可能なんですか?」
フツ督「こいつは端末にすぎん」
フツ督「詳しい仕組みは俺も知らんが」
フツ督「この端末で広域通信機を経由して通信できるんだ」
大淀「……すごいですね」
フツ督(……たぶん)
フツ督(イケメン提督もこういう物を使ったんだろうな……)
―――――――――――
ブサ督「こちらブサイク提督」
フツ督『……久しぶり』
フツ督『元気にしてたか?』
ブサ督「体調は問題ないが、いろいろとあった……」
ブサ督「それに、そっちでも何かあった様だな?」
フツ督『!』
ブサ督「電から新聞記者が押し寄せてると連絡があったんだ」
フツ督『……すまん』
ブサ督「謝る必要はない」
ブサ督「説明してくれ」
―――――――――――
フツ督『……という訳だ』
ブサ督「…………」
ブサ督「……こりゃ参ったね」
フツ督『だが、まだ諦めるのは早い』
ブサ督「こんな状況で、まだ打てる手があるのか?」
フツ督『その為に』
フツ督『お前にもひと働きしてもらう』
ブサ督「……何をすればいい?」
フツ督『南方鎮守府に戻り』
フツ督『広域通信機の通信記録を調べてもらいたい』
ブサ督「広域通信機の?」
フツ督『ああ』
フツ督『特に行方不明扱いになってる艦娘や』
フツ督『轟沈扱いの艦娘の通信記録を時系列で』
フツ督『俺に知らせて欲しいんだ』
ブサ督「……聞かない方が良い気もするが」
ブサ督「どういう事なんだ?」
フツ督『…………』
ブサ督「おい、フツメン提督」
大淀『ここからは私が説明します、ブサイク提督』
ブサ督「!?」
ブサ督「その声……大淀か?」
大淀『……はい』
大淀『お久しぶりです、ブサイク提督』
ブサ督「お、おう……」
大淀『……イケメン提督が着任して以降』
大淀『ブサイク提督の偉大さが……良く分かりました』
ブサ督「…………」
大淀『すみません。謝罪やお礼とか山ほど言いたいのですが』
大淀『時間が無い様なので手短に説明します』
―――――――――――
大淀『……という事でして』
大淀『南方ではどの様だったのか、調べて欲しいんです』
ブサ督「…………」
ブサ督「……分かった」
フツ督『俺だ』
フツ督『そういう訳だから急いでくれ』
ブサ督「任せてくれ」
ブサ督「ブサイク提督、通信終了」
フツ督『フツメン提督、通信終了』
ブッ…
ブサ督(……天龍)
榛名「ブサイク提督さん?」
ブサ督「……ん?」
榛名「大丈夫ですか?」
ブサ督「大丈夫だ……榛名」
ブサ督「あ」
榛名「どうしました?」
ブサ督「…………」
ブサ督「……何でもない」
榛名「?」
ブサ督(榛名の事を伝え忘れていた)
ブサ督(ここは西方海域……本来、榛名の所有権は)
ブサ督(フツメン提督にある……)
ブサ督(…………)
ブサ督(後で頼むしかないな……)
ブサ督「よし、南方鎮守府に戻るぞ」
榛名「はい!」
ピピー ガガッ
ブサ督「こちらブサイク提督」
ブサ督「南方鎮守府、応答してくれ」
電『こちら南方鎮守府・執務室』
電『ブサイク司令官さん、いかがされましたか?』
ブサ督「バカンスは終わった」
ブサ督「やる事が出来てな……至急迎えを寄こして欲しい」
電『分かりました』
電『すぐに高雄さん達を向かわせます』
ブサ督「頼む」
ブサ督「ブサイク提督、通信終了」
電『南方鎮守府、通信終了』
ブッ…
―――――――――――
関東沿岸部 某所
フード女「…………」
ガサゴソ…(ゴミ箱あさり)
フード女「…………」
フード女「……アッた」
バサッ(新聞広げ)
フード女「…………」
フード女(……イケメン提督、責任を痛感……)
フード女(南方戦線疲弊……大本営完全に否定せず)
フード女(…………)
フード女(…………)
フード女(……!)
フード女(イケメン提督、帝都ホテルで……)
フード女(よし……)
フード女(クソ野郎……まダ……)
フード女(帝都に居ル……!)
フード女(…………)
フード女(必ず……)
フード女(コロス……!)
フード女(…………)
―――――――――――
南方鎮守府 軍港
ザザザザザザザ…
電「ブサイク司令官さん、お帰りなさいなのです」
ブサ督「ただいま」
ブサ督「ブンヤどもは大丈夫か?」
電「監視下に置いて下がらせてます」
ブサ督「助かる」
ブサ督「高雄たちもご苦労だった」
高雄「いえ、お役に立てて光栄です」
ブサ督「そうだ、良かったら榛名に」
ブサ督「南方鎮守府を案内してやってくれないか?」
榛名「え? 榛名は、ブサイク提督さんと一緒がいいです」
ブサ督「えっ」
電「えっ」
高雄「えっ」
愛宕「えっ」
飛龍「えっ」
鳳翔「えっ」
榛名「……?」
榛名「どうして皆さん、そんなに驚くのですか?」
ブサ督「……ま、まあ、榛名がそう言うのなら」
榛名「はい♪」
ブサ督(調子狂うな……)
ブサ督「では……高雄たちは、ゆっくりしててくれ」
高雄「は、はい」
ブサ督「それじゃ、執務室に向かおう」
榛名「はい、ブサイク提督さん」
スタ スタ スタ…
高雄「…………」
愛宕「…………」
飛龍「…………」
鳳翔「…………」
高雄「……あれ、どう見ます?」
愛宕「う~ん……控えめに言って」
愛宕「ベタ惚れ?」
飛龍「ここへ来る道中でも、やけに仲良さそうでしたけど……」
鳳翔「どちらかと言えば……」
鳳翔「ブサイク提督さんの方が戸惑ってましたよね?」
高雄「…………」
愛宕「…………」
飛龍「…………」
鳳翔「…………」
4人(尊敬はしてるけど……)
4人(恋愛感情は……さすがに……)
南方鎮守府 執務室
ブサ督「ふう……帰って来たな」
ブサ督「さて、早速だが……技術主任を呼んできてくれ」
電「あの、ブサイク司令官さん」
ブサ督「ん?」
電「その前にですね、お手間は取らせませんので」
電「新たに補充された艦娘の着任を確認して欲しいのですが……」
ブサ督「補充か。それはありがたい」
ブサ督「すぐ呼べるのか?」
電「隣の作戦室に待機させてます」
ブサ督「分かった、呼んでくれ」
電「了解なのです」
電「許可が下りました」
電「入室してください」
ガチャ… ゾロ ゾロ
??「……っ」 ギョッ
??「……うわっ」
??「…………」 ギョッ
??「ひっ……」
ブサ督「…………」
榛名「…………」
電「……すみません、事前に話しておいたのですが」
ブサ督「……いいよ、別に」
ブサ督「これからは写真でも前もって見せておけばいい事だ」
電「……えと」
電「ご挨拶してください」
??「……く、駆逐艦、朝潮です」
朝潮「勝負なら、いつでも受けて立つ覚悟です」
??「……なんでこんな……満潮よ」
満潮「力は尽くすわ」
??「く、駆逐艦、大潮で~す」
大潮「小さな体に大きな魚雷! お任せください」
??「……霞よ」
霞「ガンガン行くわよ、ついてらっしゃい」
ブサ督「なかなか元気があってよろしい」
ブサ督「着任を確認した」
ブサ督「ようこそ南方鎮守府へ。よろしく頼む」
朝潮型4人「はい」
ブサ督「では、後の処理は電に任せる」
ブサ督「彼女たちに部屋を用意してやってくれ」
電「了解なのです」
電「その帰りに技術主任さんをお連れしますね」
ブサ督「ああ、待ってるよ」
電「失礼します」
ガチャ キィ
ゾロ ゾロ… パタン
ブサ督「ふう……」
榛名「…………」
榛名「……酷い」
ブサ督「ん?」
榛名「何なのですか、あの態度……」
榛名「いくら何でも失礼すぎです!」
ブサ督「…………」
ブサ督「……あれが普通なんだよ」
榛名「え……」
ブサ督「どちらかと言えば、榛名の方がおかしいんだ」
ブサ督「ああ、もちろん普通に接してくれるのは嬉しいんだが……」
榛名「…………」
ブサ督「……榛名は、俺の顔が気持ち悪くないのか?」
榛名「微塵も思いません」
ブサ督(それはそれで心配になるな……)
ブサ督「そ、そうか」
ブサ督「ええと……」
ガサゴソ ガサゴソ
ブサ督「あった」
榛名「?」
ブサ督「普通はな、こういう顔がモテ……好まれるんだ」つ(古新聞)
榛名「…………」
榛名「……榛名は、何とも思いません」
ブサ督「マジか……」
ブサ督「じゃあ榛名」
榛名「はい」
ブサ督「あそこの壁に貼ってるポスターの一番下の文字」
ブサ督「そこから読めるか?」
榛名「ええと……」
榛名「我が皇国の科学力は世界いち……ですか?」
ブサ督「うん、視力も問題ないな」
榛名「…………」
ブサ督(これはやっぱ……)
ブサ督(刷り込み、みたいなアレか?)
ブサ督「ともかく、だ」
ブサ督「俺がブ男ってのは分かってるし」
ブサ督「初対面では、嫌悪されるのもしょうがな――」
榛名「辛くは無いんですか?」
ブサ督「…………」
ブサ督「……もう慣れた」
ブサ督「物心ついた時から……こんな扱いさ」
榛名「ウソです」
榛名「こんな扱いをずっとされて……辛く無いなんて」
榛名「榛名には信じられません!」
ブサ督「…………」
ブサ督「無駄なんだよ」
榛名「……え?」
ブサ督「いまさら……辛いとか、嫌だとか言っても」
ブサ督「俺がブ男である事に変わりはない」
ブサ督「いや……変える事は出来ないんだよ」
榛名「でも……」
ブサ督「変わらないと言ってるだろ!」
榛名「っ!」 ビクッ
ブサ督「今までずっとそうだったんだ!」
ブサ督「止めろと言っても嫌だと言っても!」
ブサ督「来る日も来る日も……!」
ブサ督「俺の顔をキモイだのブタ面だの、誰かに言われ続けて来たんだ!!」
榛名「…………」
ブサ督「はあ、はあ……」
ブサ督「…………」
榛名「…………」
ブサ督「……怒鳴って……悪かった」
榛名「いいえ」
榛名「榛名、嬉しいです」
ブサ督「……何?」
榛名「ブサイク提督さんの正直なお気持ちを聞けました」
ブサ督「…………」 ポカーン
榛名「ブサイク提督さん」
ブサ督「お、おう」
榛名「榛名は、ずっとブサイク提督さんのお傍に居ます」
榛名「これからもどんどん正直なお気持ちを榛名にぶつけてください」
ブサ督「…………」 ポカーン
榛名「うふふ♪」
ブサ督「…………」
ブサ督「……なあ、榛名」
榛名「はい」
ブサ督「君は……もしかして――」
コンコン ガチャ
電「お待たせしました、ブサイク司令官さん」
電「技術主任さんをお連れしました」
ブサ督「っ!」 ビクッ!
電「……お取込み中でしたか?」
ブサ督「い、いや、大丈夫だ」
ブサ督「こほん」
ブサ督「では、技術主任、作戦室へ来てくれ」
技術主任「了解です」
ブサ督「それと……榛名、電」
榛名「はい」
電「はい」
ブサ督「悪いんだが、しばらく執務室と作戦室は立ち入り禁止にする」
ブサ督「これは命令だ」
榛名「えっ……」
電「わかりました」
榛名「待ってください!榛名はブサイク提督さんと一緒に……」
ブサ督「……そういう問題じゃないんだ、榛名」
電「榛名さん」
電「ブサイク司令官さんは『命令』と言ったのです」
電「どんなに親しい人でも……見せられない事が軍にはあるのです」
榛名「…………」
榛名「……榛名、分かりました」
ブサ督「電、榛名の事、よろしく頼む」
電「お任せください」
電「失礼します」
榛名「……失礼します」
ガチャ キィ パタン
ブサ督「…………」
―――――――――――
大本営 元帥の執務室
元帥「…………」
コンコン
元帥「誰だ?」
フツ督「私です、元帥閣下」
元帥「入ってくれ」
ガチャ キィ パタン
フツ督「失礼します」
元帥「時間にはまだ早いが、進展があったのか?」
フツ督「はい。それともう一つ」
元帥「む?」
フツ督「まず……ブサイク提督との話で思い出したのですが」
フツ督「ある事について、元大将と連絡を取り」
フツ督「かなり使えそうなネタを入手しました」
元帥「ほう……」
フツ督「奴を挑発するのに持ってこいのネタです」
フツ督「これは期待していてください」
元帥「うむ」
フツ督「次に天龍の動向ですが……」
元帥「何か掴めたのか?」
フツ督「北海道から東北にかけての」
フツ督「防衛網に異常が無いか調べましたが」
フツ督「ここ数日、特に変わった事は無いそうです」
元帥「そうか……」
フツ督「そこで沿岸部付近の街や村を調べてみたのですが」
フツ督「数件、ガソリン泥棒が発生していました」
元帥「なるほど……燃料狙いか」
フツ督「ガバガバとは思いたくありませんが」
フツ督「防衛網は天龍にとって大した障害では無かった模様です」
元帥「現在位置は分かるのかね?」
フツ督「おそらく……関東沿岸部付近に到達したくらいかと」
元帥「至急、関東沿岸部に注意喚起をせねばな」
フツ督「…………」
フツ督「それなんですが、元帥閣下」
元帥「む?」
フツ督「あえて、放っておくのはどうでしょうか?」
元帥「何?」
フツ督「天龍の狙いはイケメン提督一人」
フツ督「このまま泳がせておけば、切り札として使えるかもしれません」
元帥「…………」
元帥「……フツメン提督」
フツ督「はい」
元帥「今のは聞かなかった事にしておこう」
フツ督「分かりました」
元帥「関東沿岸地域に大本営直属の艦娘部隊を要所で待機」
元帥「連絡を受けたら急行出来るよう手配をしておけ」
フツ督「了解です」
元帥「もし忘れたりしたら」
元帥「今のやり取りを龍田に伝えるからな?」
フツ督「誠心誠意、やらせていただきます!」
元帥「よろしい。では、行ってよし」
ブツ督「失礼します」
ガチャ キィ パタン
元帥「…………」
元帥「ふう……」
元帥「あやつの冗談は笑えん上に」
元帥「心臓に悪いな……」
―――――――――――
南方鎮守府 談話室
ガヤ ガヤ
電「で、ここが談話室になります」
榛名「……はい」
電「…………」
電「少し、休憩しましょうか?」
榛名「……そうですね」
電(……さっきから上の空なのです)
電「な、何か……飲み物でも持ってきますので」
電「そちらに座っててください」
榛名「……はい」
榛名「…………」
榛名「…………」
川内「ねえ」
榛名「はい?」
川内「あんたかな?」
川内「ブサイク提督と一緒だった離島艦娘って」
榛名「はい。榛名の事です」
川内「ふうん」
川内「…………」
榛名「……あの、何でしょうか?」
川内「いやね、仕方なかったとはいえ」
川内「あのブサイク提督としばらく一緒だったんでしょ?」
榛名「はい。それが何か?」
川内「何か、さ」
川内「やらしー事でもされなかった?」
榛名「…………」
榛名「どうしてそんな事を聞くんですか?」
川内「だってあの見た目でしょ?」
川内「どう考えたって、女の子に飢えて良からぬ事を……」
ダンッ!!
川内「わっ!?」
榛名「…………」
川内「な、なに机叩いて怒ってんのよ?」
榛名「……本当は」
榛名「あなたの顔を叩きたかったのを我慢したんです」
川内「えっ」
榛名「ブサイク提督さんは……とてもお優しい方です」
榛名「少なくとも榛名は、一緒に居て不愉快だと思った事は」
榛名「一度もありませんでした」
川内「…………」
榛名「……それとも」
榛名「あなたは、ブサイク提督さんに何か嫌な事をされたんですか?」
川内「……そりゃ言われてみれば」
川内「無いけど……」
榛名「あなたのお名前は?」
川内「……川内」
榛名「川内さん、ですね」
榛名「あなたは人を見た目で判断する嫌な人だと」
榛名「榛名は覚えました」
川内「なっ!?」
榛名「用がお済みなら、もう榛名に構わないでください」
川内「この……!」
電「川内さん?」
川内「!」
電「ど、どうかしたのですか?」
川内「…………」
川内「……何でもない」
スタ スタ スタ…
電「……?」
電「榛名さん、何かあったのですか?」
榛名「…………」 ポロポロ
電「あえっ!?」
電「な、何で泣いてるのですか!?」
榛名「……榛名にも分かりません」
榛名「どうして……こんなに悲しいのか……」
電「…………」
電「……良かったら話してください」
榛名「…………」
榛名「上手く……話せるかどうか……」
電「少しずつでいいのです」
電「少しずつで……」
榛名「…………」
榛名「……ブサイク提督さんは」
榛名「自分がブ男である事実は変わらないと」
榛名「誰からそう言われても仕方ないと、これが普通なんだと」
榛名「言ってました」
電「…………」
榛名「でも榛名は知りました」
榛名「ブサイク提督さんは、心からそう思っている訳じゃないと」
電「…………」
榛名「榛名は……」
榛名「そんなブサイク提督さんのお気持ちを考えてしまって」
榛名「目の前でそれを言って来る人に……怒りを覚えました」
電「…………」
榛名「……ブサイク提督さんは」
榛名「今までずっと……そしてこれからもずっと」
榛名「誰かに、あんな風に思われ続けるのかと思うと」
榛名「悲しくて……悲しくて……」
電「榛名さん……」
電「…………」
電「ごめんなさい、榛名さん」
榛名「えっ?」
電「電も……少しそう思っている一人なのです」
榛名「…………」
電「もちろん、ブサイク司令官さんが酷い事をする人とは」
電「今はもう思っていません……でも」
榛名「でも?」
電「心のどこかで……見た目で判断してる部分があるのです」
榛名「…………」
電「ちょっとお聞きしたいのですが」
電「榛名さんは、どうしてそこまでブサイク司令官さんの事を」
電「信用できるのですか?」
榛名「え……」
榛名「…………」
電「あっ、その……答えにくい質問だと思います」
電「きっと……榛名さんは」
電「電の知らないブサイク司令官さんのお顔を知っているからだと思います」
榛名「電さんの知らないブサイク提督さんのお顔……」
榛名「……そうですね」
榛名「榛名、少し気分が良くなりました」
電「……きっと川内さんも」
電「心の底からブサイク司令官さんの事を」
電「悪く思っている訳ではないと思います」
榛名「……そうだといいですね」
電「電が後で川内さんに榛名さんのお気持ちを話しておきます」
電「誤解は、きっと解けるのです」
榛名「誤解、ですか……」
電「争いは誤解から始まるものも多いのです」
電「後で、どうしてこうなったのだろう?」
電「と、思う事も多いのです」
榛名「……そういうもの、ですか」
電「もちろん、何もかもがそう、という訳ではありませんが」
榛名「ふふふ」
電「あはは」
榛名「飲み物……もらってもいいですか?」
電「どうぞなのです」
榛名「いただきます」
―――――――――――
南方鎮守府 作戦室
ブサ督「…………」
ブサ督「……よし」
ブサ督「これらの文書化を頼む」
技術主任「分かりました」
ブサ督「それと、これらの情報は一切口外してはならない」
ブサ督「家族にもだ。漏らした場合、処罰の対象になる」
技術主任「心得てます」
ブサ督「よろしい」
ブサ督「…………」
―――――――――――
大本営 廊下付近
ピピー ガガッ
フツ督「!」
フツ督「……こちらフツメン提督」
ブサ督『こちらブサイク提督』
ブサ督『今、大丈夫か?』
フツ督「……ちょっと場所が悪い」
フツ督「移動するから、少し待っててくれ」
ブサ督『了解』
―――――――――――
大本営 屋上
フツ督「……待たせた」
フツ督「どうだった?」
ブサ督『……ビンゴだ』
フツ督「そうか……」
ブサ督『…………』
フツ督「これほど当たって嬉しくない事も珍しいな……」
ブサ督『同感だ』
フツ督「文書化はどれくらいかかる?」
ブサ督『もうすぐ終わる』
フツ督「仕事が早くて助かる」
ブサ督『…………』
ブサ督『……これは公表して良い事なのか?』
フツ督「本来は良くない……が」
フツ督「イケメン提督を罪に問えて民衆の目を覚まさせられる」
フツ督「最大のチャンスなんだ」
ブサ督『…………』
ブサ督『……では』
ブサ督『俺からも提案がある』
フツ督「提案?」
ブサ督『今、南方鎮守府にブンヤどもが来ていてな』
ブサ督『その取材を受けようと思う』
フツ督「……やめておけ」
フツ督「お前に対するイメージが下がるだけだぞ?」
ブサ督『だが……イケメン提督を油断させるのには』
ブサ督『最適だ』
フツ督「!」
フツ督「…………」
ブサ督『…………』
フツ督「……言っておくが」
フツ督「相当辛い事だぞ?」
ブサ督『一時的に土俵際へ追い込まれるだけだ』
ブサ督『堪えて見せる』
フツ督「…………」
フツ督「……分かった」
フツ督「こっちにはいつ来れる?」
ブサ督『……明日の夕方くらいか』
ブサ督『遅くとも明日中には会えると思う』
フツ督「分かった」
フツ督「決戦は明後日に予定しておこう」
ブサ督『強行スケジュールだな……』
フツ督「仕方ないだろう」
フツ督「余り各方面鎮守府を指揮官不在にしたくないしな」
ブサ督『……それもそうか』
ブサ督『天龍の方はどうなっている?』
フツ督「行方不明のままだ」
フツ督「一応、怪しい出来事は掴めたので」
フツ督「絞り込みをかけている」
ブサ督『……分かった』
ブサ督『詳しい事は直接会った時に』
フツ督「ああ、そうそう」
ブサ督『ん?』
フツ督「頭に包帯くらい巻いとけ」
ブサ督『……了解』
フツ督「それじゃ、大本営で待ってる」
ブサ督『ああ』
ブサ督『通信終了』
フツ督「通信終了」
大本営 元帥の執務室
フツ督「……という感じです」
元帥「ふむ……」
フツ督「いかがでしょうか?」
元帥「…………」
元帥「……正直を言えば」
元帥「海軍が無傷で済む方法が良かったが」
元帥「やむを得まい」
フツ督「では、このまま進めます」
元帥「ああ」
元帥「それにしてもブサイク提督には頭が下がるな」
フツ督「……元帥閣下から言われると恐縮するでしょうね」
元帥「ふん……私はそれほど賢い存在ではない」
元帥「議会工作ばかり上手くなってしまった」
フツ督「得手不得手は誰にでもありますよ」
元帥「…………」
元帥「そうか……」
元帥「では、そろそろ私は休むとしよう」
フツ督「はい。どうか、いい夢を」
元帥「うむ」
ガチャ キィ パタン
元帥「…………」
―――――――――――
翌日の朝
帝都 ホテル、ロビー付近の売店
ガヤ ガヤ
イケ督「〇×新聞を」
ハイ
イケ督「ありがとう」
イケ督「…………」
イケ督「んん?」
南方司令官 疲弊の事実認める!
イケ督(…………)
イケ督(……担当司令官・ブサイク提督は語る)
イケ督(南方戦線は非常に不安定……)
イケ督(その為の補給を要請)
イケ督(…………)
イケ督(イケメン提督の奪取した海域について語らず)
イケ督(本社記者の追及により、撤退の事実を一部認める……)
イケ督(くくく……)
イケ督(そうりゃそうだろうな……)
イケ督(ご苦労さん、ご苦労さん)
イケ督(すべての罪を被ってくれてありがとうよ)
イケ督(…………)
イケ督(これでようやく俺も大将か)
イケ督(結構あっという間だった)
イケ督(…………)
イケ督(大将になったら、何をするかなぁ)
イケ督(くくく……)
イケ督(…………)
イケ督(あーもう……上手く行きすぎて)
イケ督(怖いくらいだぜ……!)
―――――――――――
夕方
帝都 軍用空港エントランス付近
ガヤガヤ
龍田「…………」
龍田「……あ、あの人かしら?」
テク テク テク
龍田「わ……」
ブサ督「ん?」
榛名「…………」
龍田「……失礼しました」
龍田「ブサイク提督……ですね?」
ブサ督「そうだが?」
龍田「私はフツメン提督の秘書艦をやっております」
龍田「龍田、と申します」
龍田「以後、お見知りおきを」
ブサ督「君がフツメン提督の……それで」
ブサ督「肝心のフツメン提督はどこに?」
龍田「大本営で待ってます」
龍田「こちらの裏口に車を用意してますので、どうぞ」
ブサ督「……その車には榛名を頼む」
ブサ督「俺はこのまま空港玄関ロビーから車を拾うから不要だ」
榛名「!」
龍田「え……でも」
龍田「新聞記者が待ち構えてますよ?」
ブサ督「それも分かってる」
ブサ督「俺が到着時間を教えたからな」
龍田「なら、なおさら……」
ブサ督「あくまでイケメン提督の目を眩ませる為だ」
ブサ督「俺は囮にすぎん」
龍田「…………」
龍田「分かりました」
龍田「それじゃあ、榛名ちゃん?」
榛名「嫌です」
榛名「榛名は、ブサイク提督さんと一緒に……」
ブサ督「榛名」
ブサ督「俺を困らせないでくれ」
榛名「…………」
龍田「…………」
榛名「……分かりました」
ブサ督「うん……大本営でまた会おう」
榛名「はい」
ブサ督「それじゃ、龍田」
ブサ督「よろしく頼む」
龍田「了解です」
スタ スタ スタ…
―――――――――――
帝都 軍用空港玄関ロビー付近
ガヤ ガヤ
A「…………」
A「……あ!来たぞ!」
ダダダダダダ…
A「〇×新聞のA記者です!」
A「南方海域の撤退責任はどう取るおつもりですか!?」
ブサ督「ノーコメントです」
B「□〇新聞のB記者です!」
B「犠牲になった艦娘はどのくらい居るのでしょうか!?」
ブサ督「…………」
C「△△新聞のC記者です!」
C「皇国国民に対して」
C「何か言わなければならない事があるのではないでしょうか!?」
ワー ワー
ブサ督「ノーコメント!」
ブサ督「ノーコメント!」
榛名「…………」 ギリッ…
龍田「榛名ちゃん……堪えようね」
榛名「……はい」
龍田「…………」
龍田「さ……ここに長居は無用よ」
龍田「大本営でブサイク提督さんと合流できるわ」
榛名「……分かりました」
榛名「…………」
―――――――――――
宵の口
大本営の一室
フツ督「じゃ、正面玄関までブサイク提督を迎えに行ってくる」
龍田「はぁ~い」
パタン
龍田「それじゃ榛名ちゃん、改めて。私は龍田」
龍田「西方鎮守府の秘書艦をやってるわ」
大淀「初めまして」
大淀「北方鎮守府の秘書艦をやっている」
大淀「大淀です」
大淀「以前は、ブサイク提督の下で働いていました」
榛名「初めまして」
榛名「榛名は、南方鎮守府の秘書艦代理として来ました」
龍田「代理?」
榛名「事情がありまして……」
榛名「ブサイク提督さんが仰るには」
榛名「榛名は、フツメン提督さんの許可がないと」
榛名「一緒に居られないとかで……」
龍田「……もしかしたら離島艦娘?」
榛名「はい」
大淀「という事は、榛名さんは西方海域で発見された」
大淀「という事ですね?」
榛名「そうなります」
大淀「…………」
龍田「…………」
榛名「?」
龍田「……あのね、榛名ちゃん」
榛名「はい」
龍田「あなたって、ブサイク提督さんと、どのくらいのお付き合いなの?」
榛名「ええと……3日くらい、でしょうか?」
大淀「…………」
龍田「…………」
龍田「……そんな短期間なのに」
龍田「随分とブサイク提督さんの事、慕ってるわね?」
榛名「おかしいですか?」
龍田「だって、出会って3日でしょう?」
龍田「それであんなに怒りを見せるほどの仲になったの?」
榛名「……そんなに不思議な事なのでしょうか?」
龍田「そりゃ蓼食う虫も好き好き、とは言うけど……」
大淀「…………」
榛名「……実はブサイク提督さんにも不思議がられてます」
龍田「あら」
榛名「榛名は、最初からブサイク提督さんのお顔を見ているだけで」
榛名「何故か安心できるし、心が落ち着きました」
榛名「そして、この人のお傍に居られる事が、何よりも幸せで……」
龍田「榛名ちゃん」
榛名「はい?」
龍田「それちょっと怖い」
榛名「え?」
龍田「だって出会って間もなく好き好き~って言われるのよ?」
龍田「ちょっと引いちゃうわ……」
榛名「そ、そんな事……」
龍田「…………」
ガバッ!
榛名「!?」
龍田「きゃあ~榛名ちゃん!」
龍田「好き好き~」
榛名「えっ?ちょ……何ですか?いきなり!」
スッ…
龍田「……どう?」
龍田「程度に差はあるけど、榛名ちゃん」
龍田「あなたがブサイク提督さんにやってる事はこれよ」
榛名「!?」
龍田「あなたは嬉しく思った?」
榛名「…………」
榛名「……気持ち悪かったです」
龍田「そう正直に言われると少し傷つくけど」
龍田「言いたい事は伝わって嬉しいわ」
榛名「…………」
榛名「榛名は……間違っていたのですか?」
龍田「んー……誰かを好きになるのは間違いではないわ」
龍田「でも……相手の気持ちを考えないのは、よろしくないわね」
榛名「相手の……気持ち」
龍田「そう」
龍田「少しずつでいいの」
龍田「何をやったらダメで、何をやったら喜んでくれるのか」
龍田「好きな人とお話をいっぱいして、学んでいくの」
龍田「それが……大事な事なのよ」
榛名「はい!」
榛名「榛名、学びます!」
榛名「榛名はブサイク提督さんとたくさんお話します!」
龍田「す、少しずつ、を忘れないように、ね?」
榛名「はい!」
龍田(……本当に大丈夫かしら、この娘)
大淀(……離島艦娘は変わり種が多い、とは聞いてましたが)
大淀(明石さんとかで慣れてる私の方が異常なのでしょうね)
大淀「ごほん!」
大淀「それでは……本題に入ってよろしいでしょうか?」
榛名「あ、はい」
龍田「ごめんなさいね。いいわよ」
大淀「ありがとうございます」
大淀「とは言いましても……確認事項にすぎないんですけどね」
榛名「確認事項?」
大淀「まず……私は事情があって」
大淀「直属の上司である、イケメン提督に会わないようにしています」
大淀「そのため、ホテルではなく、ここ大本営の一室をお借りしているんです」
榛名「そうだったのですか……」
大淀「それから……フツメン提督によりますと」
大淀「私は明日、行われる緊急記者会見での切り札だと言われたんですが」
大淀「詳細は明らかにされませんでした」
龍田「……相変わらず腹黒いんだから」
大淀「そして、ブサイク提督なんですが……」
大淀「イケメン提督を油断させるために今はあえて」
大淀「好奇の目に晒される事を選びました」
榛名「…………」
大淀「以上が、現在の状況の確認事項となります」
大淀「榛名さんにとっては、辛い事でしょうが……」
大淀「どうか自重を心がけてください」
大淀「明日までの辛抱です」
榛名「……分かりました」
龍田「…………」
龍田(明日まで、か……)
コン コン
フツ督「龍田、いいか?」
龍田「あら、早かったわね」
龍田「どうぞ」
ガチャ
フツ督「待たせたな」
龍田「そんな事ないわよ」
キィ パタン
ブサ督「ふう……」
榛名「お疲れ様です、ブサイク提督さん」
ブサ督「ああ、疲れたよ、榛名」
大淀「ブサイク提督……」
ブサ督「大淀……」
大淀「本当に……本当にすみませんでした」
ブサ督「…………」
大淀「あなたが残してくれた戦術書」
大淀「あれが無かったら……私たち北方鎮守府の艦娘は」
大淀「大勢死者が出ていたと思います……」
ブサ督「…………」
大淀「どれだけ謝っても私の無礼は許される事では無いと思います」
大淀「それでも、それでも……どうか謝罪させてください」
ブサ督「…………」
ブサ督「顔を上げてくれ、大淀」
大淀「…………」
ブサ督「高雄たちにも似た様なこと言われたけどな」
ブサ督「わだかまりが無い、と言えばウソになるが……」
ブサ督「分かってくれたなら、嬉しく思う」
大淀「ブサイク提督……」
ブサ督「俺の残した戦術書が役に立って良かった」
ブサ督「また大淀の元気な姿が見れて、何よりだよ」
大淀「ありがとう……ございます……!」
榛名「…………」
ブサ督「さて、本題に入る前にフツメン提督」
フツ督「ん?」
ブサ督「榛名の事なんだが……彼女は例の離島で発見したんだ」
フツ督「…………」
フツ督「……ああ、そういう事か」
フツ督(所有権……こういうところは筋を通す男だが)
フツ督(自分から特定の艦娘を欲しがるのは珍しいな?)
ブサ督「…………」
フツ督「いいぞ。喜んでお前に所有権を譲ろう」
ブサ督「すまない」
フツ督「別にいいさ」
フツ督「今、南方は極端な戦力不足」
フツ督「戦艦級が喉から手が出るほど欲しいのは分かるさ」
ブサ督「……まあな」
榛名「これで、榛名は名実共にブサイク提督さんのものですね♪」
フツ督「…………」
フツ督(……なあ龍田)
龍田(何かしら?)
フツ督(榛名は……ブサイク提督に惚れてるのか?)
龍田(見れば分かるでしょ)
フツ督(いや、そうなんだが……まあいい)
フツ督「じゃあ……本題に入ろう」
―――――――――――
フツ督「――という感じだ」
ブサ督「…………」
榛名「…………」
龍田「…………」
大淀「…………」
ブサ督「……公開処刑か」
ブサ督「やる事がえげつない」
フツ督「不服か?」
ブサ督「あの情報を知らなければな」
ブサ督「あれを知った以上、異論はない」
フツ督「そう言ってくれるとありがたいよ」
フツ督「後は……」
大淀「天龍さんの事ですね……」
龍田「天龍ちゃんはどうなってるの?」
フツ督「その事なんだが……」
フツ督「茨城沿岸の漁村での燃料泥棒以降、騒ぎが途切れた」
龍田「行方不明って事?」
フツ督「そうなる」
フツ督「元帥閣下にも伝えて、関東沿岸部近海を」
フツ督「それとなく見張っている状況だ」
ブサ督「…………」
フツ督「燃料タンクを抱えながら夜間に移動しているのでは?」
フツ督「と推測して、対処を強化している」
龍田「対処、ね……」
フツ督「……願わくば、投降してくれる事を祈ろう」
龍田「…………」
大淀「…………」
榛名「…………」
ブサ督「…………」
フツ督「さて……そろそろいい時間だ」
フツ督「ホテルに部屋を用意してある」
フツ督「俺が案内しよう」
ブサ督「分かった」
ガチャ キィ
榛名「…………」
ブサ督「……何で榛名が付いて来るんだ?」
榛名「えっ?」
榛名「ご迷惑……ですか?」
ブサ督「いや、迷惑とかそういう話じゃ……」
フツ督「別に構わないだろ?」
フツ督「俺も龍田と一緒の部屋だし」
ブサ督「えっ……本当か?」
フツ督「ああ」
ブサ督「…………」
ブサ督「じゃあ……二人はそういう関係なのか?」
龍田「ええ。そうだけど?」
ブサ督「…………」
ブサ督「いやいやいや……流されそうになったけど」
ブサ督「俺と榛名はそういう関係じゃ……」
榛名「でも、ブサイク提督さん」
榛名「あの離島で榛名たちは、一つのテントで一緒に寝ましたよね?」
ブサ督「」
大淀「…………」
フツ督(ぷっ……くくくっ……!)
フツ督「なんだ……もうそういう仲じゃないか」
ブサ督「い、いや、それはマラリアとかを、だな」
大淀「……よろしいじゃないですか」
ブサ督「大淀!?」
大淀「きっと……榛名さんはブサイク提督の」
大淀「本質を見抜いている、という事なのでしょう」
ブサ督「…………」
大淀「それに」
大淀「女の子が了承しているのにそれを拒むなんて」
大淀「榛名さんに恥をかかせている様なものですよ?」
ブサ督「ええぇ……」
龍田「ブサイク提督さん」
龍田「諦めてエスコートしてあげた方がいいわよ?」
榛名「…………」
ブサ督「…………」
ブサ督「……分かった」
ブサ督「行こう、榛名」
榛名「はい!」
フツ督「それじゃ、大淀とはここで」
大淀「はい。お休みなさい、皆さん」
フツ督「ああ、君もな」
パタン
―――――――――――
夜
帝都 ホテルの一室
ブサ督「…………」
榛名「うわぁ、大きなベッドですね!」
榛名「二人でも余裕で寝れます♪」
ブサ督「は、榛名……あのな」
榛名「はい?」
ブサ督「その……男と女が一つの寝床を共にするって」
ブサ督「意味分かってるのか?」
榛名「……?」
榛名「一緒に寝る、という事でしょう?」
ブサ督「うん、知らないみたいで安心した」
榛名「教えていただけるのですか?」
ブサ督「いやその……俺の口からは……」
榛名「?」
ブサ督「と、とにかく!」
ブサ督「榛名は、俺と一緒に寝る、という事は」
ブサ督「一緒に睡眠をとる、と理解しているんだな?」
榛名「……違うのですか?」
ブサ督「……今はその認識でいい」
ブサ督(南方に帰ったら誰かに榛名の性教育を頼もう……うん)
ブサ督「それじゃ……風呂にでも行って来るか」
榛名「榛名も一緒に……」
ブサ督「だー! 一人で行くから!」
榛名「でも……」
榛名「!」
「相手の気持ちを考えないのは、よろしくないわね」
榛名「…………」
ブサ督「……榛名?」
榛名「……何でもありません」
榛名「榛名は、ブサイク提督さんがお嫌な事はしません」
ブサ督「……ん」
ブサ督「じゃ……」
スタ スタ スタ…
榛名「…………」
榛名(相手の気持ち……)
榛名(ブサイク提督さんは……榛名の事をどう思っているのでしょうか)
榛名(…………)
榛名(確かに……出会ったばかりだというのに)
榛名(こんな気持ちになるのは変かもしれません)
榛名(……でも)
榛名(榛名のこの気持ちは……ウソ偽りない本当の気持ち)
榛名(それは……真実)
榛名(…………)
榛名(ブサイク提督さん……大好きです)///
―――――――――――
翌日の朝
大本営、本日午前緊急記者会見!
疑惑釈明か?
釈明会見か?渦中はブサイク提督
イケメン提督、大将職へ昇進発表?
.
―――――――――――
大本営 廊下付近
テク テク テク
イケ督「ふふん♪ふ~ん♪」
イケ督(急な記者会見には多少驚いたが)
イケ督(世論は俺の味方)
イケ督(例の事を暴露出来ない海軍は)
イケ督(不合理な決断を俺に下す事は不可能)
イケ督(……くくく)
イケ督(いよいよ、俺を大将へ昇進させる気になったか)
イケ督(焦らしてくれるぜ、まったく)
イケ督(…………)
イケ督(……ん?)
大淀「…………」
イケ督「大淀?」
大淀「はい?」
大淀「!」
イケ督「どうして大淀がここに居るんだ?」
イケ督「北方鎮守府で何かあったのか?」
大淀「…………」
大淀「……申し訳ありません」
大淀「イケメン提督と話すな、と命令されてまして」
イケ督「!?」
イケ督「……誰にだ?」
大淀「それもお答えしかねます」
イケ督「なっ……!?」
大淀「失礼します」
テク テク テク…
イケ督「…………」
イケ督(どういう事だ?)
イケ督(…………)
―――――――――――
ピピー ガガッ
イケ督「こちらイケメン提督」
イケ督「北方鎮守府、応答せよ」
ガガガー ピピー
イケ督「……北方鎮守府、応答せよ」
ガガピー ピピーガガッ
イケ督「クソッ!」
ブッ…
イケ督(……何だこれは?)
イケ督(何が起こっている?)
イケ督(…………)
イケ督(俺の有利は変わらんが……気になるな)
イケ督(…………)
イケ督(チッ……もう時間が無い)
イケ督(記者会見場に行かないと……)
―――――――――――
大本営 記者会見場
ザワ ザワ
中尉「…………」
中尉「えー各紙、新聞記者の皆さん、お待たせしました」
中尉「時間になりましたので、緊急記者会見を始めたいと思います」
中尉「ご静粛に願います」
…………
中尉「ありがとうございます」
中尉「それでは、皆様にご紹介いたします」
中尉「皆さんから見まして右側から」
中尉「海軍総司令官であらせられます、元帥閣下でございます」
ザワッ…
元帥「よろしく」
中尉「元帥閣下、ありがとうございます」
中尉「そして、その横からまとめまして順番に」
中尉「西方方面艦隊・鎮守府司令官のフツメン提督」
フツ督「よろしく」
中尉「南方方面艦隊・鎮守府司令官のブサイク提督」
ブサ督「よろしく」
中尉「北方方面艦隊・鎮守府司令官のイケメン提督」
イケ督「よろしく」
中尉「以上になります」
中尉「えー司会進行はわたくし、中尉が行います」
…………
中尉「それでは、まず」
中尉「フツメン提督から、記者会見の概要を述べたい、との事ですので」
中尉「フツメン提督、どうぞ」
フツ督「ありがとう、中尉」
…………
フツ督「えーご紹介にあずかりました、フツメン提督です」
フツ督「まず、今回の記者会見の概要ですが……」
フツ督「ある指揮官について、非常に重大な事実が判明しましたので」
フツ督「それをお知らせするために急遽、開いたものである」
フツ督「と言っておきましょう」
ザワッ…
フツ督「それでは、焦らす様で申し訳ありませんが」
フツ督「少々前提となるお話をしておきます」
…………
フツ督「我々各方面艦隊司令官と大本営は、緊密に連携を取っていますが」
フツ督「さすがに緊急事態……急に出て来た敵の対処や」
フツ督「海域の攻略などに関して、現地指揮官に一任されています」
…………
フツ督「これはいちいち大本営の指示を仰いだりしていては」
フツ督「対処に時間が掛かり、手遅れになる場合もあるためと」
フツ督「ご理解ください」
…………
イケ督「…………」
イケ督(……何故そんな当たり前の事をいまさら?)
ブサ督「…………」
…………
フツ督「それでは、本題に入りましょう」
フツ督「先日、私と元帥閣下はイケメン提督と面談を行いまして」
フツ督「そこで奇妙な話を彼から聞いたのです」
イケ督「……?」
ブサ督「…………」
フツ督「それは、艦娘の遠征部隊の行方不明、というものでした」
イケ督「!?」
ザワッ…
フツ督「遠征は、ご存じの方も多いと思われますが」
フツ督「比較的安全が確保されたルートを通り」
フツ督「資源確保などの雑任務をこなす作業の為」
フツ督「深海棲艦との遭遇戦は多少あれど、行方不明や全滅などは」
フツ督「ほとんどありません」
イケ督「…………」
…………
フツ督「ですが……無かった事ではない」
フツ督「それもまた事実です」
イケ督(……さっきから何が言いたいんだ?)
フツ督「しかしながら……」
フツ督「少し気になった私は、イケメン提督がかつて指揮を執っていた」
フツ督「南方方面艦隊・鎮守府の記録を、ここに居る」
フツ督「ブサイク提督に調べてもらいました」
イケ督「!!」
イケ督(な、なに!?)
…………
フツ督「すると……」
フツ督「イケメン提督が着任していた時期だけで」
フツ督「実に2部隊……人数にしますと」
フツ督「12名もの艦娘が遠征任務で行方不明となっていました」
ザワッ…!
イケ督(くっ……!)
ブサ督「…………」
フツ督「しかし、先ほども言いましたが」
フツ督「遠征任務で部隊全員が行方不明になった事例はあります」
フツ督「イケメン提督の指揮の下、不幸な偶然が重なった」
フツ督「とも言えなくもない」
イケ督「おい……さっきから私をどう」
フツ督「だが!」
イケ督「っ!?」 ビクッ
…………
フツ督「ブサイク提督の調べで分かった事はこれだけでは無かった」
イケ督「…………」
フツ督「行方不明になった遠征部隊の艦娘はすべて」
フツ督「緊急規制が掛けられていたのです」
イケ督(!!)
イケ督(バカな!……あれは通常の調べ方では出てこないハズ)
ブサ督「…………」
イケ督(どうしてこのブ男はそこへ行きついた!?)
…………
フツ督「記者の皆さんには馴染みの無い言葉でしょう」
フツ督「軍事機密に関しますので簡単に説明しますが」
フツ督「司令官権限で艦娘の通信機能をオフにする」
フツ督「という処置だとご理解してください」
ザワッ…!
イケ督「…………」
ブサ督「…………」
フツ督「ここまで言えば、勘の良い記者さんは疑問に思った事でしょう」
フツ督「なぜ、比較的安全な任務で通信を出来なくさせていたのか?」
フツ督「と」
ザワ ザワ
中尉「皆さん、ご静粛に願います」
…………
中尉「どうぞ、フツメン提督、お続けください」
フツ督「ありがとう、中尉」
フツ督「えーこの緊急規制という機能ですが」
フツ督「通常は無線封鎖など、隠密作戦などで使うのが一般的です」
フツ督「私が知る限り、遠征任務では必要のない機能と認識しています」
イケ督「…………」
フツ督「そこでイケメン提督にお尋ねしますが」
フツ督「どの様な作戦意図があって」
フツ督「緊急規制を遠征部隊に使用したのでしょうか?」
…………
イケ督「…………ぐ」
イケ督「軍事機密に……関わるので」
イケ督「この場での回答は控えさせていただきます」
…………
フツ督「分かりました」
フツ督「それでは、それらを踏まえた上で」
フツ督「北方鎮守府の行方不明部隊を調べてみたのですが」
フツ督「そこでも重要な事が判明しました」
ザワッ
イケ督(クソッ!)
イケ督(これ以上何が分かったんだ!)
フツ督「ここでゲストを呼びたいと思います」
フツ督「中尉」
中尉「了解です」
…………
中尉「それでは、ご紹介します」
大淀「…………」
中尉「彼女は、北方方面艦隊鎮守府で秘書艦をやっている」
中尉「大淀、と呼ばれている艦娘です」
大淀「……よろしくお願いします」
…………
フツ督「紹介ありがとう、中尉」
フツ督「さて、大淀」
フツ督「行方不明になった遠征部隊に」
フツ督「緊急規制が掛けられた当時の状況を教えてくれ」
イケ督「!!」
イケ督「ま、待て!」
イケ督「それは軍事機密に抵触する!」
元帥「……私の権限で発言を許可しよう」
イケ督「っ!!」
元帥「続けたまえ」
フツ督「ありがとうございます、元帥閣下」
イケ督「…………」 ギリッ…
…………
フツ督「では、大淀。 話してくれ」
大淀「はい」
大淀「当時……我が鎮守府の主力艦娘は某敵泊地を攻略中でして」
大淀「想定よりも多い敵艦隊から攻撃を受けている」
大淀「と、連絡がありました」
フツ督「ほう」
大淀「行方不明になった遠征部隊に緊急規制が掛けられた時間は」
大淀「ちょうどその連絡の直後くらいになります」
イケ督「……っ」
フツ督「ほう……それで?」
フツ督「主力艦娘の方はどうなったのかな?」
大淀「彼女たちの話では……」
大淀「敵からの激しい攻撃を受けていたものの、突然」
大淀「何の前触れもなく攻撃がやみ、撤退に成功した、との事です」
ドヨッ…
イケ督「…………」
フツ督「ありがとう、大淀」
フツ督「下がってくれ」
大淀「はい」
…………
フツ督「さて、イケメン提督殿」
フツ督「何か間違いはあるかな?」
イケ督「…………」
フツ督「貴殿の戦術がどんなものか、それは私の知るところでは無いが」
フツ督「これでは遠征部隊を囮にでも使ったのかと疑っ」
イケ督「ち、違う!」
イケ督「断じて違う!」
…………
元帥「……落ち着きたまえ、イケメン提督」
元帥「軍事機密に関わるという貴君の意見を尊重しよう」
イケ督「はっ……」
元帥「だが、後で文書での回答は求めさせてもらう」
イケ督「…………」
元帥「フツメン提督」
元帥「貴君も想像でモノを言うのは慎みたまえ」
フツ督「はっ。申し訳ありません」
元帥「では……続けてくれ」
フツ督「了解です」
…………
フツ督「えーそれでは最後になりますが」
フツ督「新聞各紙で報じられている」
フツ督「ブサイク提督の指揮に対する疑惑について」
フツ督「ここからは本人に申し開きをしてもらいましょう」
…………
ブサ督「……どうも。ブサイク提督です」
ブサ督「一部、軍事機密に触れますが」
ブサ督「元帥閣下の許可を得たので、話せる部分だけ話します」
ブサ督「まず、私が南方鎮守府に着任した当時」
ブサ督「かの地は極端な戦力・物資不足をおこしており」
ブサ督「支配海域の戦線維持すらままならない状況だったと」
ブサ督「言っておきます」
ザワッ…!
イケ督「…………」
ブサ督「その為、やむを得ず」
ブサ督「一部支配海域を切り捨てる判断を下しました」
ブサ督「自分からは以上です」
…………
フツ督「ありがとう、ブサイク提督」
フツ督「……これはどういう事なのか?」
フツ督「南方はイケメン提督が平定間近まで押していたはず」
フツ督「私も今現在、記者の皆さんと同様の疑問を抱きました」
…………
フツ督「そして、内密に調べた結果」
フツ督「何と、イケメン提督の独断で南方鎮守府の主力艦娘を」
フツ督「北方鎮守府へと移動させていた事が判明したのです」
イケ督「っ!」
ザワッ…!
フツ督(このネタは元大将がイケメン提督を糾弾するために)
フツ督(したためていたものだがな)
フツ督(これだけは元大将に感謝しかない)
フツ督「……以上の事から」
フツ督「ブサイク提督に何ら落ち度はなく」
フツ督「むしろ主力艦娘不在でロクな戦力も物資も無い中」
フツ督「よく南方鎮守府を守り抜いたものだと」
フツ督「私としては畏敬の念すら抱いている次第であります」
イケ督「…………」
ブサ督「…………」
…………
元帥「……イケメン提督」
元帥「何か申し開きたい事はあるかね?」
イケ督「…………」
イケ督「こ、これは……大本営からの指示で」
フツ督「残念ながら」
フツ督「この当時、大本営が出した指示は」
フツ督「指揮官の交代だけで、戦力の移動は命令されていない」
イケ督「くっ……」
フツ督「冒頭で言ったが」
フツ督「大本営と各方面艦隊司令官は、連絡を取り合い」
フツ督「ある程度の信頼関係で成り立っている」
フツ督「貴殿のこの行為は、その信頼を裏切る行為に他ならないと」
フツ督「私は思うのだが?」
イケ督「そ、そういう事ではない!」
イケ督「そもそもは大本営の指示が原因で大打撃を受けた……」
!?
イケ督「あっ……」
ザワ ザワ…
元帥「……イケメン提督」
元帥「大打撃を受けた……とは、どういう事かね?」
元帥「私は何も聞いておらぬが?」
イケ督「!!」
イケ督(しまった……!)
イケ督(疑惑をこれだけ向けられた状態で)
イケ督(元帥にしらを切られたら……!)
イケ督(大打撃を受けた責任を俺のせいにされてしまう!!)
イケ督(ハメられた!)
ブサ督「…………」
イケ督「ま、待ってください!」
イケ督「そ、そもそもの問題なんです!」
イケ督「私は、大将閣下からの命令に従っ」
元帥「もう良い!」
元帥「くだらない言い訳は皇国軍人らしからぬぞ!」
イケ督「ぐっ……!」
ザワ ザワ…
中尉「静粛に、静粛に願います」
…………
中尉「……それではフツメン提督」
中尉「他に何かありますでしょうか?」
フツ督「……私からは以上です」
中尉「ありがとうございました」
中尉「えー続きまして」
中尉「元帥閣下より、総括してのお言葉がございます」
中尉「元帥閣下、どうぞ」
元帥「うむ」
…………
元帥「まず、新聞各社の皆さんの報道に関する熱意は」
元帥「十分すぎるほど理解している」
…………
元帥「しかしながら」
元帥「海軍総司令官としては今回、過剰に報道された部分もあり」
元帥「いささか憤りも感じるところであると、言わざるを得ない」
…………
元帥「よって、ここである程度の決定を発表しようと思う」
!?
元帥「まず、元大将の辞職に伴う大将職人事だが」
元帥「これの候補にイケメン提督は入れない事を伝える」
イケ督「……っ」
…………
元帥「次に」
元帥「イケメン提督とブサイク提督についてだが」
元帥「懸案についての文書の提出を求め」
元帥「その文書の内容によっては何らかの処分を下す」
フツ督「…………」
ブサ督「…………」
イケ督「…………」
元帥「以上が……海軍総司令官として」
元帥「現時点での決定事項であると宣言する」
…………
元帥「私からは以上だ」
中尉「元帥閣下、ありがとうございました」
中尉「……えーそれでは、これを持ちまして」
中尉「今回の緊急記者会見を終了とさせていただきます」
!?
中尉「各新聞社の記者の皆さん」
中尉「ご清聴、ありがとうございました」
えっ!?
ちょっと待ってくださいよ!
質問が有るのですが!!
中尉「会見は以上です」
中尉「質問は受け付けません」
ギャー! ギャー!
―――――――――――
ツカ ツカ ツカ!
イケ督(クソッ!)
イケ督(クソッ!クソッ!クソッ!)
イケ督(どうしてこうなったんだ!?)
イケ督(とにかく、北方鎮守府に戻って――)
ガシッ
イケ督「!?」
イケ督「な、何をする!?」
憲兵A「イケメン提督殿」
憲兵A「元帥閣下のご命令で、文書による回答があるまで」
憲兵A「ホテルにて身柄を一時、拘束させていただきます」
イケ督「なっ……」
憲兵B「こちらに車を用意してあります」
憲兵B「どうぞ」
イケ督「は、放せ!」
イケ督「北方鎮守府に……資料、そう」
イケ督「必要な資料があるんだ!」
憲兵A「元帥閣下は後で整合性を取れば問題ないと仰せです」
イケ督「くっ……」
憲兵B「書類作成に必要なものはこちらで用意します」
イケ督「…………」
憲兵B「さ、行きましょう」
―――――――――――
大本営 元帥の執務室
元帥「……やれやれ」
元帥「何とか上手く行ったな」
フツ督「彼は、私が思っていたより頭が悪かった様です」
フツ督「しらを切った場合も想定していたんですが」
フツ督「必要ありませんでした」
ブサ督「…………」
元帥「しかし……海軍も無傷では済まんな」
フツ督「ええ……まず考えられるのは」
フツ督「艦娘が行方不明となっている事を暴露しましたから」
フツ督「艦娘の家族から安否確認が殺到するでしょう」
元帥「……事実を伝えねばな」
元帥「イケメン提督のせいに出来たが犠牲は変わりない」
元帥「慰労金や一時金の支払いも準備しないと……」
フツ督「大蔵省が青筋立てるのは間違いないでしょうね」
元帥「これで一応の区切りとなるが、やる事は山積みだな」
元帥「あとの問題は……」
フツ督「天龍の事ですね」
元帥「その後の動向はどうなっている?」
フツ督「残念ながら掴めていません……」
フツ督「よほど警戒しながら沿岸部沿いを進んでいるのか」
フツ督「それともいったん沖に出て、大回りでもしているのか」
ブサ督「…………」
元帥「ブサイク提督」
ブサ督「はい」
元帥「貴君から何か……意見は無いかね?」
ブサ督「……申し訳ありません」
元帥「そうか……」
ブサ督「…………」
元帥「いや、気にしないでくれ」
元帥「君の働きはここに居るフツメン提督や大淀」
元帥「そして今回の機転で十分知る事が出来た」
元帥「ありがとう」
ブサ督「元帥閣下……」
ブサ督「もったいないお言葉です」
元帥「今度、機会があれば酒でも酌み交わそう」
ブサ督「ありがとうございます」
元帥「これからも海軍に対し、尽力してくれたまえ」
ブサ督「はっ」
フツ督「…………」
―――――――――――
帝都 大通り付近
男「号外!号がぁい!」
男「イケメン提督の大スキャンダルだよ~!」
ザワ ザワ
フード女「…………」
バサッ…
フード女「…………」
イケメン提督、裏の顔!
フード女「…………」
遠征任務艦娘の無線封じ!
フツメン提督は囮作戦を示唆
イケメン提督の黒い戦術!
行方不明艦娘、実に12名!
無許可の戦力移動
大本営、信頼を裏切る行為と糾弾
フード女「…………」
フード女「…………」
フード女「…………」
フード女「…………」
フード女「……!」
イケメン提督、ホテルにて拘束か?
他、2提督も同ホテルにて宿泊
フード女「…………」
フード女「…………」 ニヤリ…
―――――――――――
その日の夜
帝都 ホテル イケメン提督の部屋
憲兵A「…………」
憲兵B「…………」
イケ督「…………」
イケ督「……おい」
憲兵A「何でしょうか?」
イケ督「息が詰まる」
イケ督「少し出歩かせてくれ」
憲兵A「文書が完成するまではダメです」
イケ督「少しくらい、いいだろう?」
憲兵A「許可できません」
イケ督「そうかよ……」
憲兵A「…………」
憲兵B「…………」
イケ督(……クソッ!)
イケ督(これは本気だな……)
イケ督(…………)
イケ督(どうして俺がこんな目に……)
イケ督(クソッ!クソがッ!)
―――――――――――
同ホテル ロビー付近
フツ督「ほら、君の部屋の鍵だ」
大淀「……ありがとうございます」
大淀「ですが、本当によろしいのですか?」
フツ督「今さらだが、大本営のあの部屋は窮屈だっただろう」
フツ督「君への感謝の気持ちも含めての意味もある」
フツ督「今日くらいはゆっくり休んでくれ」
大淀「……分かりました」
大淀「お言葉に甘えさせていただきます」
フツ督「ああ」
テク テク テク…
フツ督「…………」
フツ督「さて、俺たちも行くか」
龍田「ええ」
龍田「と、言いたいところだけど……」
龍田「少し用事が出来たの」
フツ督「ん?用事?」
龍田「女の子の日よ」
フツ督「ああ……分かった」
フツ督「部屋は分かるな?」
龍田「ええ」
フツ督「じゃ、部屋でディナーを用意して待ってる」
龍田「あら」
龍田「それは急いで用事を片付けないといけないわね」
フツ督「ま、ご期待に添えればいいけどな」
龍田「うふふ」
龍田「それじゃ後で」
フツ督「ああ」
スタ スタ スタ…
ブサ督「…………」
榛名「…………」
ブサ督(……なんか次元の違うやり取りしてるなぁ)
ブサ督(あの二人……)
榛名(榛名も……ああいうのやってみたいです)
ブサ督「……榛名」
榛名「!」
榛名「は、はい!」
ブサ督「その……部屋でディ、ディナー?」
ブサ督「取るか?」
榛名「は、はい!」
榛名「榛名、ディナー?取ります!」
ブサ督「よ、よし」
フツ督「…………」
フツ督(微笑ましいなぁ)
―――――――――――
同ホテル ブサイク提督の部屋
榛名「わあ……」
榛名「ブサイク提督さん、窓の方、見てください」
榛名「夜景が綺麗です!」
ブサ督「うん。確かに」
ブサ督「でも料理が冷めてしまう」
ブサ督「景色を眺めるのは後にしよう」
榛名「はい」
スタ スタ スタ ストン
ブサ督「いただきます」
榛名「いただきます」
モグ モグ
榛名「ん……美味しいです」
ブサ督「確かに旨いな」
榛名「えと……どのお料理がディナーなのですか?」
ブサ督「え?……あーそのディナーって言うのはな」
ブサ督「英語……フランス語だったか?」
ブサ督「その、外国語で『夕飯』って意味だよ」
榛名「!?」
榛名「そ、そうだったのですか……」
榛名「榛名、知りませんでした……」
ブサ督「このくらい、そんな気にする事じゃない」
榛名「…………」
ブサ督「俺だって知らない事なんざ、たくさんある」
ブサ督「いちいち気にしてたら切りがない」
榛名「そうなのですか?」
ブサ督「ああ」
ブサ督「例えば……この食事だって」
ブサ督「テーブルマナーとかいうルールが存在するが」
ブサ督「俺は全く知らん」
榛名「お食事にルールがあるんですか?」
ブサ督「日本で言うとな」
ブサ督「お箸で豆腐をブスッと刺したり」
ブサ督「爪楊枝みたいに使ったりするのは、お行儀の悪い行為とされている」
榛名「そうだったんですか……」
ブサ督「でもこう言っちゃなんだけど」
ブサ督「そんなもん全部守ってたら、食った気がしないわ」
榛名「えっ」
ブサ督「……まあ、ある程度は仕方ないが」
ブサ督「知らなかった事はどうしようもない」
ブサ督「けど知ったあと、どうするかは……」
ブサ督「いや、どう生かすかは、自分次第かな」
榛名「はい!」
榛名「榛名、この失敗を生かします!」
ブサ督「そ、そう気張らなくていいから」
ブサ督「要は……楽しんで食事を取ればいいんだ」
榛名「はい!榛名は、もう楽しんでます♪」
ブサ督「ははは、良かった」
―――――――――――
同ホテル フツメン提督の部屋
フツ督「…………」
コン コン ガチャ
龍田「お待たせ」
フツ督「おっ、来たか」
キィ パタン
龍田「ディナーには間に合ったかしら?」
フツ督「帰りがいつになるか、聞いてなかったから」
フツ督「軽食にしておいた」
龍田「あらら」
龍田「豪華ディナーはサンドイッチですか」
フツ督「冷めたスープなんて旨くないしな」
フツ督「その代り……」
カラン…
フツ督「良く冷えたシャンパンを頼んでおいた」
龍田「うふふ、気が利くじゃない」
フツ督「食後にはコーヒーなんてどうだ?」
龍田「いいかも」
フツ督「じゃ、そうしよう」
フツ督「席についてくれ」
龍田「はぁい」
キュポン
トクトクトク…
フツ督「どうぞ」
龍田「いただきます」
ゴク…
龍田「うん……美味しいわ」
グビッ
フツ督「ふう……確かに旨いな」
龍田「結構するシャンパン?」
フツ督「ちょいとな」
龍田「あら、そこは最高級とか言わないの?」
フツ督「確かに飲みたかったけど、持ち合わせがな……」
龍田「ああ……」
龍田「銀行、もう閉まってるものね」
フツ督「そういう事」
フツ督「俺は……君が居てくれればそれでいいさ」
龍田「ふふふ」
龍田「安っぽいセリフね」
フツ督「……結構決めたつもりだったんだけどな」
龍田「冗談よ」
龍田「あなたから言われて嬉しくない訳ないじゃない」
フツ督「それはそれは」
フツ督「さて、メインディッシュの方に行きま……」
ドドーン… ドンッ ドンッ…
フツ督「ん?」
龍田「ん?」
フツ督「何の音だ?」
龍田「遠くで花火大会でもやってるのかしら?」
スタ スタ スタ…
フツ督「…………」
龍田「…………」
フツ督「……どこも花火なんてやって無さそうだが」
龍田「……!」
龍田「フツメン提督! あそこ!」
フツ督「…………」
フツ督「あっ、火の手が上がってるな」
フツ督「事故でもあったのか?」
龍田「何呑気な事を言ってるのよ!」
龍田「あの方角……大本営の方じゃないの!?」
フツ督「…………」
フツ督「あっ!?」
フツ督「天龍か!?」
龍田「すぐ向かいましょう!」
フツ督「よし!」
バタン!
タッ タッ タッ
フツ督「!」
フツ督「ブサイク提督!」
ブサ督「!」
ブサ督「フツメン提督」
フツ督「騒ぎは知ってるな?」
ブサ督「ああ、たぶん天龍だろう」
タッ タッ タッ
大淀「あ、ブサイク提督にフツメン提督!」
大淀「この騒ぎは……天龍さんでしょうか?」
ブサ督「タイミングからして、おそらくな」
フツ督「よし、俺は車を拾って来る」
ブサ督「いや、必要ない」
フツ督「何?走って行くつもりか?」
ブサ督「違う」
ブサ督「それよりもイケメン提督の部屋はどこか分かるか?」
フツ督「イケメン提督の?」
フツ督「それなら下の階だが……」
ブサ督「よし、俺はそこへ向かう」
フツ督「何故だ?火の手が上がったのは大本営だぞ?」
ブサ督「……天龍が今日の号外を見ているとしたら?」
フツ督「…………」
龍田「!」
大淀「!」
榛名「!」
フツ督「……良く分かった」
フツ督「イケメン提督の部屋へ急ごう」
タッ タッ タッ…
―――――――――――
イケ督「おい、どうなってるんだ?」
イケ督「何が起こっている?」
憲兵A「……ちょっと待っていてください」
ヒソヒソ…
憲兵B(ダメだ……通信が混線している)
憲兵B(下まで降りて、俺が確認してくる)
憲兵A(頼む)
憲兵B(イケメン提督は任せた)
イケ督「…………」
憲兵A「……ちょっとした事故が発生した様だ」
憲兵A「イケメン提督はここに居ろ、との事」
イケ督「ちょっとした事故ねぇ……」
イケ督「本当なのか?」
憲兵B「じゃ、ここは任せたぞ」
憲兵A「ああ」
ガチャ キィ パタン
イケ督「…………」
!?
ナンダ貴様… グアッ!
ドサッ…
憲兵A「!?」
イケ督「!?」
イケ督「お、おい……今の音は」
憲兵A「下がっていろ」
スチャッ…
憲兵A「…………」つ(拳銃)
イケ督「…………」
ドガアァァンッ!!
憲兵A「ぐあっ!?」
イケ督「ひ、ひいいいいいいっ!!」
イケ督(と、扉が……爆発した!?)
憲兵A「」
イケ督「お、おい、大丈夫か?」
憲兵A「」
イケ督「気絶とか止めろよ、おい!」
イケ督「誰が俺を守るんだよ!?」
ジャリ…
イケ督「!」
フード女「…………」
イケ督「…………」
フード女「……見ツケタ」
バサッ!
イケ督「!?」
天龍?「…………」
イケ督「し……深海…棲艦……!?」
天龍?「ふフふ……コロス」
イケ督「ひいいいいいっ!!」
大淀「天龍さんっ!!」
天龍?「!」
イケ督「!?」
イケ督(て、天龍……天龍だと!?)
大淀「もう止めてください!」
天龍?「……邪魔ヲするナ……オオよド」
大淀「気持ちは分かるつもりです……」
大淀「ですが」
大淀「イケメン提督は、これから社会的制裁を受け」
大淀「死ぬより辛い目に合う予定です!」
イケ督「」
天龍?「…………」
大淀「ですから、殺す必要は無いんです!」
イケ督(……いくら何でも酷くないか、その説得)
天龍?「……どケ……おオヨド」
大淀「!」
大淀「天龍さん!」
バキッ!
大淀「きゃあっ!」
フツ督「大淀!」
榛名「大淀さん!」
龍田「…………」
ザッ…
ブサ督「…………」
天龍?「…!」
天龍?「ブさイク……提督……」
ブサ督「…………」
天龍?「ドけ……俺ノ邪魔をスルナ……」
ブサ督「……もう許してやれ、天龍」
大淀「」
フツ督「」
榛名「」
天龍?「……何を言っテイる」
天龍?「このクズヲ許せル訳……無いダロ!」
ブサ督「違う」
ブサ督「イケメン提督の事じゃない」
天龍?「ナに?」
ブサ督「俺が言っているのは……」
ブサ督「お前自身の事だ、天龍」
天龍?「…………」
天龍?「意味が分からんゾ……」
天龍?「……どけ、くダラない話をスルな」
ブサ督「お前は……イケメン提督の口車に乗せられてしまった」
ブサ督「自分自身が許せないんだ」
ピクッ
大淀「…………」
フツ督「…………」
榛名「…………」
天龍?「……何を……言っている」
ブサ督「俺は……お前が文句を言いつつも」
ブサ督「言われた仕事はきっちりこなし」
ブサ督「低練度の艦娘の面倒見が良い事も知っている」
天龍?「…………」
ブサ督「大淀からおおよその話は聞いた」
ブサ督「あの状況で、お前がイケメン提督の要請を」
ブサ督「二つ返事で応じたとは思えない」
天龍?「…………」
ブサ督「たぶんだが……最初は断ったか、少なくとも」
ブサ督「低練度の艦娘を実戦投入する事に対し、安全確認をしたはずだ」
天龍?「…………」
ブサ督「だが……最終的に」
ブサ督「お前はイケメン提督の甘い言葉に乗せられる決断を下した」
天龍?「……黙れ」
ブサ督「お前が許せないのは……」
ブサ督「そんな決断を下し、仲間を死なせてしまった」
ブサ督「自分自身なんだろう?」
天龍?「黙れト言ってイル!!」
ブサ督「!!」
バキッ!
榛名「……ブサイク提督さんは」
榛名「この榛名が守ります……!」
天龍?「くっ……!」
ブサ督「天龍!」
天龍?「黙れ!」
天龍?「お前ニ……何が分カる!?」
天龍?「あいつらがどれだけ無念だったか……!」
ブサ督「俺には、お前の気持ちが良く分かる」
天龍?「!?」
天龍?「……ウソを付くナ!」
天龍?「こンな事を……簡単に分カラれてタマるか!!」
ブサ督「何故なら……俺は」
ブサ督「自分の命令が原因で何人もの艦娘を死なせているからだ!」
天龍?「っ!!」
フツ督「…………」
大淀「…………」
榛名「…………」
ブサ督「……立場は違えど」
ブサ督「自分の下した判断で仲間を死なせたのは同じ」
ブサ督「だから……お前の気持ちは痛いほど分かるんだ、天龍」
天龍?「…………」
フツ督「…………」
大淀「…………」
榛名「…………」
ブサ督「…………」
天龍?「……離れないんだ」
ブサ督「離れない?」
天龍?「アノ時の……あいつらの……最後の言葉が」
ブサ督「…………」
天龍?「俺の……くダラない……見栄のせいで……」
天龍?「みんな……ミンな……ううっ……」
天龍?「うっ……うううっ……う……」
ブサ督「…………」
ブサ督「……うらやましい」
天龍?「…!?」
天龍?「なん……だと……?」
ブサ督「俺は……その最後の言葉すら聞けなかった」
天龍?「…………」
ブサ督「きっと……俺に対して恨み言を言っていたに違いない」
榛名「ブサイク提督さん……」
フツ督「…………」
大淀「…………」
天龍?「…………」
天龍?「……俺は……そうは思わない」
ブサ督「?」
ブサ督「何故だ?」
ピシッ…
天龍?「あいつらは……無念を伝えたが……」
天龍?「誰も……恨み言は言い残さなかった」
ブサ督「……そうか」
天龍?「それどころか……」
天龍?「望月は、お前の下で……楽しかったと……言っていた」
ブサ督「!」
ブサ督「……望月が」
天龍?「ああ……」
ピキ… パキ…
天龍?「ブサイク提督……」
天龍?「教えてくれ……」
ブサ督「何をだ?」
天龍?「お前は……どうやって」
天龍?「自分を許したんだ……?」
ブサ督「…………」
ブサ督「……その気持ちを糧に」
ブサ督「一人でも多くの艦娘が死なないよう作戦を立てたり」
ブサ督「犠牲が出そうな場合は躊躇なく撤退する様にした」
フツ督「…………」
大淀(ブサイク提督……)
榛名(ブサイク提督さん……)
ブサ督「俺は……そうする事で過去の自分と向き合い」
ブサ督「今に至っている」
天龍?「過去の自分と……向き合う……」
ブサ督「……完全には許していないかもしれないが」
ブサ督「あの時の自分よりは、多少マシになった」
ブサ督「そう……思える様になってきた」
ブサ督「そんなところだ」
天龍?「…………」
天龍?「ふ」
天龍?「ふふ……ふ……」
天龍?「そうだな……それ……」
天龍?「……いい……な……」
ドサッ…
ブサ督「て、天龍!?」
大淀「天龍さん!」
天龍?「…………」
天龍?(過去は変えられない……)
天龍?(それなら、これからを変えて行けばいい)
天龍?(……そいう事……か……)
天龍?「…………」
ピシッ… パキパキ…
パアアアアアッンッ
ブサ督「うわっ!?」
榛名「うっ……!」
大淀「きゃっ!」
フツ督「眩しっ……!」
…………
ブサ督「て……天龍?」
榛名「……ブサイク提督さん、大丈夫ですか?」
大淀「天龍さんは……」
フツ督「…………」
天龍「…………」
大淀「!」
大淀「て、天龍さん!」
ダッ…
大淀「…………」
大淀「大丈夫、脈はあります」
大淀「それに艤装も……元に戻ってますね」
ブサ督「深海棲艦……みたいなパーツが」
ブサ督「すべて消えている……」
榛名「何が起こったのでしょう?」
ブサ督「……分からない」
フツ督「…………」
大淀「…………」
ブサ督「…………」
榛名「…………」
フツ督「……あ」
フツ督「イケメン提督は?」
ブサ督「!」
大淀「!」
榛名「!」
龍田「……逃げられたみたいよ」
フツ督「龍田!」
龍田「私もハッとして、そこら辺を探してみたのだけど……」
龍田「どこにも居なかった」
フツ督「……なんてこった」
ブサ督「仕方ないと言えば仕方ないが……」
ブサ督「やらかしてしまったな……」
フツ督「状況が状況だ」
フツ督「元帥閣下に報告はしておく」
ブサ督「頼む」
ブサ督「天龍は俺が軍病院へ連れて行こう」
龍田「私も付き添っていいかしら?」
フツ督「え……俺は?」
龍田「一人でも大本営へ行けるでしょ?」
フツ督「龍田ぁ……」
ブサ督「……役割を逆にしよう」
ブサ督「俺と榛名で大本営へ報告に行く」
ブサ督「フツメン提督、龍田。 天龍の事は任せる」
フツ督「心の友よ!」
ブサ督「……お前そんなキャラだったか?」
フツ督「冗談だ」
ブサ督「…………」
フツ督「それじゃ、大本営で落ち合おう」
ブサ督「……おう」
大淀「あのう……私も天龍さんに付き添ってもよろしいでしょうか?」
ブサ督「もちろんだ」
ブサ督「大淀はフツメン提督を手伝ってやってくれ」
大淀「分かりました」
……その後
攻撃された大本営は混乱状態だったが
後に時限式の爆発物で塀と建物の一部が
破壊されただけだけで被害は大した事は無かった。
死傷者も憲兵の二人だけで命に別状は無い。
深海棲艦化?した天龍の仕業なのは
俺を含めた一部の者しか知らないので
ホテルの襲撃含め、大目に見てもらう事が出来た。
表向きは、単体の深海棲艦が迷い込み
警報の不備で対応が遅れた事になっている。
.
元に戻った天龍は、後で詳しい検査を行ったが……
通常の艦娘と何ら代わりなく
別命あるまで北方鎮守府で待機する事となった。
イケメン提督は、襲撃後、完全に行方不明になった。
隙を見て逃げられたのは痛いが
公式に逃亡犯扱いとなり、少なくとも
皇国内でおいそれとは外を出歩けない事だろう……
.
―――――――――――
????
ピチョン…
ピチョン…
イケ督「…………」
イケ督「…………」
イケ督「……ん」
イケ督「…………」
イケ督「……ここは……どこだ?」
イケ督「……!?」
イケ督「な、何だ!?」
イケ督「手足を縛られてる!?」
ガチャ
龍田「あら……」
龍田「目が覚めちゃった?」
キィ パタン
イケ督「!」
イケ督「お前……確かフツメン提督の……」
龍田「龍田よ」
龍田「覚えてたみたいね」
イケ督「そ、それより……これはどういう事かな?」
イケ督「何故……俺は手足を縛られてるんだ?」
龍田「うふふ」
ザシュ
イケ督「」
イケ督「ぐあああああああああっ!?」
龍田「ああ……心地いい悲鳴……」
イケ督「ひっ、ひいっ……」
イケ督「や、止めろ……止めてくれ、龍田ァ……」
龍田「大丈夫」
龍田「これくらいでは死なないし」
龍田「痛いのは、これだけで済ませてあげるわ」
イケ督「な、何を……する気なんだ!?」
イケ督「て、天龍の事は、謝る!」
イケ督「だ、だから、許してくれ!」
龍田「ダ メ ☆」
スッ…
イケ督「な、なんだそれは!?」
イケ督「何を注射するんだ!?」
龍田「安心して」
龍田「ただの全身麻酔よ」
イケ督「全身……麻酔?」
龍田「分かりやすく言うとぉ、ちょーっと長時間」
龍田「ねんねしててもらうだけだから♡」
イケ督「や、止めろ……止めろォッ!」
龍田「うふふ」
プスッ
イケ督「ひっ、ひいいっ!」
龍田「だってさぁ」
龍田「痛みだけで死んじゃう人も……結構居るのよね」
イケ督「!?」
龍田「そうなったらぁ」
龍田「つまらないのよぉ」
チュー…
イケ督「ぐっ……!」
龍田「あなたにはぁ……」
龍田「天龍ちゃんが受けた苦しみをぉ」
チュー…
イケ督「あ……が……」
イケ督(い、意識……が……)
龍田「何倍にもして、受けて欲しいのよねぇ」
チュー…
イケ督「…………」
龍田「うふふ……」
スルッ
イケ督「…………」
龍田「これで準備良し」
龍田「さあ……イケメン提督さぁん……」
龍田「生まれ変わりを体験させてあげる……」
.
―――――――――――
????
イケ督「…………」
イケ督「…………」
イケ督「……!」
イケ督「…………」
イケ督「お゛……お゛お゛は……」
イケ督「!?」
イケ督(な、何だ!?)
イケ督(か、顔が……顔が熱い……!)
イケ督(いや、痛い!)
イケ督(それに声もおかしいし……腕も縛られてる)
イケ督(俺はまだ龍田に拘束されてるのか!?)
看護師「あ」
イケ督(!?)
イケ督(誰だ!?)
イケ督「う゛ーあ゛ー……」
看護師「クズ山さん、声を出さないで」
イケ督(……?)
イケ督(クズ山?何を言ってるんだ?この女)
看護師「落ち着いて聞いてください、クズ山さん」
看護師「あなたは……全身に酷いケガをされてて」
看護師「包帯でグルグル巻きの状態なんです」
イケ督「!?」
イケ督(包帯?……じゃあここは病院なのか?)
看護師「今、先生を呼んできますね」
スタ スタ スタ
イケ督「…………」
イケ督(……助かった)
イケ督(のか?)
―――――――――――
看護師「お待たせしました、クズ山さん」
看護師「先生……どうぞ」
医師「うむ」
イケ督「…………」
医師「あー……クズ山さん」
医師「落ち着いて聞いて欲しいのですが」
医師「あなたは今、全身に酷いケガをしてまして……その」
医師「命に別状はないのでご安心ください」
イケ督「…………」
医師「ですが……そのー……何と言いますか」
医師「お顔の方が、ですね……非常に、その……」
医師「酷い状況でして……」
イケ督(……はっきり言えよ)
医師「元のお顔に戻る事は、非常に困難であると……言えるでしょう」
イケ督「…………」
医師「それと、ですね」
イケ督(まだ何かあるのか?)
医師「右手、なの……ですが」
医師「手首から先が……もうありません」
イケ督「…………」
イケ督「……あ゛?」
医師「落ち着いて……それからしゃべらないでください」
イケ督(右手が……無い?)
イケ督(今……そう言ったのか!?)
イケ督「あ゛……があ゛あ゛……あ゛!」
医師「お、落ち着いて!クズ山さん!」
医師「君、鎮静剤を!」
看護師「はい!」
―――――――――――
医師「……どうだ?」
看護師「ようやく落ち着いたみたいです」
医師「そうか……」
看護師「やっぱり……事件なんでしょうか?」
医師「詳しい事は分からんが……」
医師「あれだけ執拗に顔を傷つけられ」
医師「右手を切り落とされ、左手も」
医師「指紋が取れなくなるほどの火傷を負わされているんだ……」
看護師「…………」
医師「身分証を持っていなければ」
医師「名前すら分からない状況だったからな」
医師「どう見ても……誰かからの恨みとか」
医師「何かの抗争に巻き込まれたとか」
医師「そういう風に見てしまう……」
看護師「厄介ごとは勘弁して欲しいですね……」
医師「……そうは言っても患者は患者だ」
医師「誰かからは分からんが、治療費も支払われてる」
医師「無下にはできんよ……」
看護師「そうですか……」
医師「まあ詳しい事は分かっていない」
医師「警察にも相談したし……」
医師「退院までは様子を見よう」
看護師「分かりました」
―――――――――――
天龍の襲撃から数日後の夜
とある旅館の個室
フツ督「……見るからに高そうなダルマだな」
ブサ督「約束だからな。酒屋で一番高いダルマを二本買った」
フツ督「肴(さかな)はナッツにチーズ、クラッカー」
フツ督「残念ながらここじゃ洋酒に合いそうな料理は用意できなかった」
ブサ督「別にいいさ」
キュポッ トクトクトク…
ブサ督「じゃあ……乾杯」
フツ督「おう、乾杯」
チンッ…
グビッ
ブサ督「んっ……」
フツ督「ふっ……んん」
ブサ督「これは……来るなぁ」
フツ督「いい酒だ」
ブサ督「よくストレートで飲めるな……」
フツ督「俺からしたら水割りやロックなんて邪道だ」
ブサ督「はいはい、邪道で結構です」
トクトクトク… グビッ
ブサ督「ふう……」
フツ督「これでようやくひと段落か……」
ブサ督「……ああ」
ブサ督「結局イケメン提督は逃亡を図ったとして指名手配」
ブサ督「どこへ雲隠れしたかは分からんが、もう皇国内を出歩けないだろう」
フツ督「だな……」
グビッ
ブサ督「ふう……」
ブサ督「北方の後任は誰がやるんだ?」
ムシャ ムシャ
フツ督「元帥閣下は、ショウユ顔提督か、ソース顔提督を」
フツ督「候補に考えてるそうだ」
ブサ督「……無難なところだな」
トクトクトク…
フツ督「俺からしたら問題ない様に思うが」
フツ督「お前は違うのか?」
ボリ ボリ
ブサ督「……俺が選ぶとしたら」
ブサ督「メガネ提督だな」
フツ督「メガネ提督?」
フツ督「……知らないなぁ。そんな名前の奴居たか?」
グビッ
ブサ督「ふう……」
ブサ督「新進気鋭の若者だからな」
フツ督「若者? もしかして今年、訓練模擬戦した奴か?」
ブサ督「ああ」
ブサ督「なかなか見どころのある戦い方をする奴だった」
フツ督「おいおい……」
フツ督「いくら何でも若すぎるだろ」
ムシャ ムシャ
ブサ督「たぶん……同戦力で戦ったら」
ブサ督「ショウユ顔提督もソース顔提督も勝てないと思う」
フツ督「……冗談だろ?」
ブサ督「ま……俺の贔屓目もあるかな?」
フツ督「…………」
グビッ
ブサ督「ふう……」
ブサ督「そういや大将職の人事は結局どうなったんだ?」
ムシャ ムシャ
フツ督「……そっちは大揉めに揉めて大変らしい」
フツ督「派閥争いの板挟みになって、元帥閣下は頭を抱えていたよ」
ブサ督「そりゃ気の毒に……」
フツ督「そういう苦労をするのが元帥閣下のお仕事さ」
ブサ督「……本人に聞かれたら怒られるぞ」
フツ督「ははは」
トクトクトク… グビッ
フツ督「ふう……」
ブサ督「……俺が元帥閣下の立場なら」
ブサ督「お前が大将にふさわしいと思うが」
フツ督「よせよ……あんな派閥争いに巻き込まれたくない」
ブサ督「それはまあ、俺も御免被りたいが」
ブサ督「人脈や人望とか考えたら、お前がいいと思う」
フツ督(実は元帥閣下から要請はあったが)
フツ督(どう考えてもこき使われそうで断ったんだよなぁ)
フツ督「……お褒めにあずかり光栄だが」
フツ督「俺が大将になると、お前に命令できる様になるんだぞ?」
フツ督「いいのか?」
グビッ
ブサ督「ふう……」
ブサ督「その分、こっちの要求も適正に聞いてもらうから」
ブサ督「構わないさ」
フツ督「そうじゃなくて、同期が上になって悔しくないのか?」
ブサ督「んー……」
ブサ督「お前だったら、全然ないな」
フツ督「なんだよそれ……」
ムシャ ムシャ
ブサ督「……だが、元大将みたいな事するなら」
ブサ督「見限るってだけだ」
フツ督「……それは怖いねぇ」
トクトクトク… グビッ
フツ督「ふう……」
ブサ督「……なあ」
フツ督「ん?」
ブサ督「あの時……天龍の事を元帥閣下へ報告していた時」
ブサ督「やたらと『沿岸部』を強調していたが……」
ブサ督「あれはわざとか?」
ピクッ
フツ督「…………」
フツ督「……何の事だ?」
ブサ督「責めるつもりはない」
ブサ督「あの時……俺は天龍が陸路を使う可能性を考えたが」
ブサ督「それを黙ってた俺も同罪だ」
フツ督「…………」
ブサ督「俺は……天龍を止められるものなら止めたかった」
ブサ督「そう考えたら、お前の策に乗った方が良いと思ったんだ」
フツ督「…………」
フツ督(……見抜かれていたか)
フツ督(という事は……俺の目的も当然分かっている)
フツ督(って事か……?)
ブサ督「…………」
ブサ督(おそらく……暴走した天龍を放置して)
ブサ督(イケメン提督を亡き者に……って算段だろうな)
フツ督「…………」
ブサ督「…………」
フツ督「……俺が間抜けだったって事にしといてくれ」
ブサ督「……分かった」
ブサ督「それでいい」
グビッ
ブサ督「ふう……」
ブサ督「少し酔ってきたかな」
フツ督「おいおい。早いな」
ブサ督「元々そんなに強くないんだ、俺は」
フツ督「そうか」
フツ督「そういやさ」
ブサ督「ん?」
フツ督「榛名、気に入ったのか?」
ブサ督「…………」
フツ督「黙るなよ」
フツ督「男なんだ。女の一人や二人好きになって何が悪い」
サク サク
ブサ督「……そうだな」
ブサ督「お前には話しておくか」
フツ督「ん?」
―――――――――――
ブサ督「――という事があったんだ」
フツ督「」
フツ督「ちょ、ちょっと待ってくれ……」
ブサ督「ああ」
フツ督「ディルプ……グレッズに」
フツ督「離島艦娘が深海棲艦の生まれ変わりとか」
フツ督「情報量多すぎだろ!?」
ブサ督「……離島艦娘に関して確信が持てたのは」
ブサ督「天龍があの状態から元に戻ったのを目の当たりにしたからだ」
フツ督「…………」
ブサ督「うかつに公表も出来ないし」
ブサ督「かと言って俺一人が抱え込むには大きすぎる」
フツ督「……で、俺を引き込んだって訳か」
ブサ督「そうとも」
ブサ督「これで一蓮托生だ」
フツ督「はあ……くそっ」
フツ督「酔いが覚めちまった」
トクトクトク… グビッ
フツ督「……で?」
フツ督「お前はそんな榛名の事、どう思ってるんだ?」
ピクッ
ブサ督「…………」
フツ督「また、だんまりか」
ブサ督「……好意は持ってる」
フツ督「ほう」
グビッ
ブサ督「ふう……」
ブサ督「けど……なんて言うか」
ブサ督「ずるい気がしてな……」
フツ督「ずるい?」
ブサ督「さっきも言ったが……榛名は」
ブサ督「深海棲艦だった頃の記憶は無くとも」
ブサ督「俺に好意的だった人格の生まれ変わり」
ブサ督「でなきゃ……俺の顔を見て普通に接してくれる訳無い」
フツ督「…………」
ブサ督「もし」
ブサ督「普通に艦娘として採用されてたり」
ブサ督「俺と何の関わりもない離島艦娘として生まれていたら」
ブサ督「榛名は……」
フツ督「……だから何だってんだ?」
ブサ督「え?」
ムシャ ムシャ
フツ督「あのなぁ……生まれとか、生い立ちとか」
フツ督「そんなのは後付けだ」
ブサ督「…………」
フツ督「大事なのは今、お前に、好意を持ってるイイ女が」
フツ督「目の前に居るって事」
ブサ督「…………」
フツ督「その女を好きなら好き、嫌なら嫌」
フツ督「極端な話、抱くか抱かないかの二択だろ?」
ブサ督「…………」
フツ督「迷ってんのなら、もう答えは出てるんじゃないのか?」
フツ督「さっさと抱いちまえ」
ブサ督「おま……簡単に言いやがって」
フツ督「ふん」
フツ督「言っとくが俺と龍田なんてなぁ……」
…ドドドドドドドドド
フツ督「ん?」
ガラッ!
榛名「ブサイク提督さぁん♪」
抱きっ
ブサ督「うわっぷ!?」
榛名「榛名、寂しかったので」
榛名「会いに来ましたぁ♪」
ブサ督「ちょ、榛名!?酔ってるのか!?」
龍田「ごめんなさい……」
龍田「女子会開いて飲ませたら」
龍田「平気そうな顔しててどんどん進めちゃって」
龍田「こうなっちゃったの……」
大淀「……うぷっ」
大淀「龍田さん……何でそんあに平気なんですか」
フツ督「あ~あ……龍田に付き合ったのか」
榛名「んふ~♪ブサイク提督さぁ~ん♪」
ブサ督「分かった、分かったから!」
フツ督「……こりゃもうお開きだな」
フツ督「んじゃ、部屋に戻るか」
龍田「はぁい♪」
ブサ督「おい!? 手伝ってくれよ!?」
―――――――――――
同旅館 フツメン提督と龍田の部屋
フツ督「あー疲れた」
フツ督「さて、さっさと寝るか」
龍田「あ、そうそう」
フツ督「ん?」
龍田「これ。忘れない内に渡しておくわね」
スッ
フツ督「!?」
フツ督「これって……通信機の端末か!?」
龍田「ええ」
フツ督「型番は……俺の知らない番号」
フツ督「これをどこで手に入れた?」
龍田「イケメン提督が持ってたものよ」
フツ督「」
フツ督「はあ!?」
龍田「声が大きいわよ」
フツ督「ぐ……イケメン提督はどうしたんだ?」
龍田「安心して」
龍田「生かしてあるわ」
フツ督「……その言い方だと」
フツ督「背乗り(はいのり)処理か」
龍田「正解」
フツ督「なんて事を……俺は」
フツ督「君にそんな事をさせたくなかったのに……」
龍田「ふふ……その気持ちは嬉しいんだけどね」
龍田「天龍ちゃんに酷い事をしたのを知ってから」
龍田「ずっと機会を伺ってたの」
フツ督「…………」
フツ督「あの日ってのもウソか……」
龍田「ごめんなさい」
フツ督「……やってしまった事はしょうがない」
フツ督「イケメン提督が名乗り出る事は無いのか?」
龍田「たぶん大丈夫でしょ」
フツ督「たぶんじゃ困るんだが……」
龍田「あれをイケメン提督と見破る人ほど」
龍田「手を引くと思うわ」
フツ督「……なるほど」
フツ督「でも、金輪際こういう事は止めてくれ」
龍田「それは約束できない」
フツ督「何?」
龍田「私だって感情があるんだもの」
龍田「自分の愛する人が酷い目にあわされて」
龍田「平気でなんて居られない」
フツ督「…………」
フツ督「……対艦娘暗殺組織を前の天龍と一緒にぶっ潰した」
フツ督「君ほどの力は俺には無いが」
フツ督「もう……俺に何も言わずに事を起こすのは止めてくれ」
龍田「……分かった」
フツ督「それならいい」
龍田「ところで……前の天龍って」
龍田「どういう意味?」
フツ督「!!」
フツ督「あ……それは……その……」
龍田「ふふふ」
龍田「……もういいのよ」
龍田「私、気が付いているから」
フツ督「え……」
龍田「実は……去年の合同艦監式で会った時に分かっちゃったの」
フツ督「!?」
龍田「本当に……よく似ていたわ」
龍田「前の天龍ちゃんに」
フツ督「…………」
龍田「だけど……同時にあなたに愛されてる事も再確認できた」
龍田「だから……あなたの優しいウソに騙されてあげようと思ったの」
フツ督「……そうだったのか」
龍田「もちろん今の天龍ちゃんへの気持ちも本当よ?」
龍田「だから行動したの」
フツ督「…………」
フツ督「……そろそろ寝るか」
龍田「うん。いっぱい愛してね♡」
フツ督「……さっきまでやる気満々だったんだけどな」
フツ督「色々と衝撃すぎて、息子が……ちょっと」
龍田「あら、残念」
龍田「それじゃ、お楽しみは西方に帰ってから」
フツ督「すまん」
龍田「……いいわよ」
龍田「あなたの気持ちも分からないでは無いし……」
龍田「お休みなさい」
フツ督「ああ、お休み」
フツ督「…………」
フツ督(……ったく)
フツ督(…………)
フツ督(…………)
フツ督(普段、俺のこと腹黒だの何だの言ってくれるが)
フツ督(俺の周りの奴も結構腹黒いじゃねーか)
フツ督(…………)
フツ督(やれやれ……)
フツ督(まだまだ修行が足りないって事か……)
フツ督(…………)
―――――――――――
約二ヶ月後
.
―――――――――――
帝都 〇×新聞社・社会部
ガヤ ガヤ
編集員「部長」
部長「ん?」
編集員「部長にお会いしたい、という人物が居るのですが……」
部長「……今日は誰とも会う予定はないはずだが?」
編集員「はい。分かってます」
編集員「ただ……」
部長「ただ?」
編集員「顔は酷い傷で似ても似つかないんですが」
編集員「イケメン提督と名乗ってまして……」
部長「…………」
―――――――――――
応接室
部長「……お待たせしました」
イケ督「!」
イケ督「ああ、待ちくたびれた」
部長(……酷い傷だ。これじゃ元の顔も分からんし)
部長(声も全然違う……)
部長「えー……イケメン提督、とお伺いしましたが?」
イケ督「ああ……軍にこんな姿にされたんだ!」
部長「…………」
部長「それで……私に何の御用ですか?」
イケ督「決まっている」
イケ督「この事実を報道してくれ」
部長「…………」
イケ督「足りなければ、俺が知っている軍の隠し事を」
イケ督「洗いざらいぶちまけてやる」
部長「…………」
イケ督「確かに顔も声も変わっているが」
イケ督「前にお前の息子の話をした事を俺は覚えている」
イケ督「確か……小学校へ上がったばかりだとか言っていたな」
部長「…………」
イケ督「さ、今こそ新聞の力を……」
部長「自称イケメン提督さん」
イケ督「!?」
イケ督「俺はイケメン提督だと言っているだろ!」
部長「まあまあまあ」
部長「そうですな……まずは」
部長「イケメン提督があの事件以降、どう扱われているか」
部長「お話ししましょう」
イケ督「そんな暇は……」
部長「聞く気が無いのなら、このままお帰りください」
イケ督「な……」
部長「いかがしますか?」
イケ督「…………」
イケ督「……聞こう」
部長「結構」
部長「まず……深海棲艦の単独襲撃事件後」
部長「イケメン提督は、そのどさくさに紛れて逃亡した」
部長「という事になってます」
イケ督「違う!」
イケ督「俺はあの時、当て身を喰らわされ、気絶させられたんだ!」
部長「まあまあまあ、落ち着いて」
イケ督「ちっ……」
部長「……その後、軍はですね」
部長「南方海域の大打撃は逃亡を図ったイケメン提督の責任とし」
部長「指名手配を大々的に行っています」
イケ督「違うんだ!」
イケ督「あの大打撃は、元は大将閣下の指示に従っていたら」
イケ督「深海棲艦の急襲を受けて……!」
部長「落ち着いてください」
部長「あくまで、軍の発表は、というだけです」
イケ督「…………」
部長「続けますよ?」
部長「その後は、イケメン提督のご家族に取材が殺到しまして」
イケ督「!?」
部長「イケメン提督のご家族は、ですね」
部長「息子の不祥事に申し訳ない、申し訳ないと繰り返すばかりでして」
部長「いくばくか経った後……ご自害なされました」
イケ督「」
イケ督「な……な……!?」
部長「大変……痛ましい事件でした」
イケ督「親父……お袋……」
部長「それで、ですね」
イケ督「…………」
部長「もし、今、イケメン提督が現れたとしても……」
部長「味方する世論は皆無だと思います」
イケ督「!!」
部長「まあ……あなたが本当にイケメン提督だとしても」
部長「それを示す証拠が無いのでは、お話にならないと思いますが」
イケ督「…………」
―――――――――――
編集員「さっきの人、お帰りになられたんですか?」
部長「ああ、帰ったよ」
編集員「しっかし、寄りにもよってイケメン提督だと名乗り出るなんて」
編集員「新聞を見てないんですかね?」
部長「……あの傷跡だから」
部長「治療に専念してて見る機会が無かったのかもな」
編集員「そういうもんですか」
部長「そういうもんさ」
編集員「何にしてもお疲れさまでした」
部長「ああ。たまにはいいさ」
部長「…………」
部長(……たぶんあれは)
部長(軍からの警告だろう)
部長(イケメン提督と繋がりのある報道関係者に対して)
部長(余計な事をしたら、次こうなるのはお前だ)
部長(という……)
部長(…………)
部長(今後は……海軍に目を付けられていると想定して)
部長(報道しないといけないな)
部長(くわばら、くわばら……)
―――――――――――
帝都 郊外
障碍者支援施設
イケ督「…………」
イケ督「……あの」
職員「はい?」
イケ督「病院から……ここを紹介されたんだが」
職員「はい、お名前は?」
イケ督「…………」
イケ督「クズ山……クズ夫……です」
―――――――――――
北方鎮守府 執務室
コン コン
ショウユ督「誰だ?」
明石「明石です」
ショウユ督「入れ」
ガチャ
明石「失礼します」
キィ パタン
ショウユ督「どうした?」
明石「新しい広域通信機が届きました」
明石「こちらがその関係書類になります。サインをお願いします」
ショウユ督「分かった」
サラサラ…
ショウユ督「これでいいか?」
明石「はい」
明石「後ですね。新しい広域通信機の設置なんですが」
明石「丸一日かかりますので、日程の調整をお願いします」
ショウユ督「それはいつでも問題ないだろう」
ショウユ督「今は厳冬期で深海棲艦も大人しい」
ショウユ督「明石の都合の良い日を大淀と決めてくれ」
明石「分かりました」
明石「ところで大淀はどこですか?」
ショウユ督「たぶん食堂だと思う」
明石「今頃?」
ショウユ督「少々書類仕事が立て込んでな……」
ショウユ督「遅くなってしまったんだ」
明石「分かりました」
明石「では、食堂に行ってみます」
ショウユ督「すまんな」
ショウユ督「大淀にもう少しゆっくりでもいいと伝えてくれ」
明石「はい」
―――――――――――
北方鎮守府 食堂
利根「む?大淀、今頃昼食か?」
大淀「そう言う利根さんも?」
利根「うむ」
利根「吾輩は演習の後始末に少々手間取ってな」
大淀「そうですか」
大淀「実は私も書類仕事が溜まってて……」
利根「そうか……お互い手際が悪かった様じゃの」
大淀「ははは……」
利根「……ブサイク提督は」
利根「こんな小さな事も手際よく用意してくれておったのじゃな」
大淀「そういう事ですね……」
利根「こうなると、南方への転属願いが認められた天龍と」
利根「転属命令があった金剛達がうらやましく思えるのう」
大淀「ふふふ、そうですね」
大淀「日々、ブサイク提督の有難さが分かる事ばかりです」
利根「今頃は……どうしておるのやら」
大淀「大丈夫ですよ」
大淀「きっと……利根さんのアドバイスを生かしてくれてるでしょう」
利根「そうじゃな……」
利根「吾輩らの轍を踏まぬ様、艦娘が育つじゃろう」
―――――――――――
南方鎮守府 談話室
霞「まったく……つまらない任務ばかりで退屈だわ」
霞「顔だけでなく作戦の作りも酷いものね、あいつ」
満潮「ほんと。なんであんなのが指揮官なんだか」
朝潮「……二人とも、言葉が過ぎるわ」
大潮「そ、そうですよ……」
大潮「まあ、気持ちは分からないでもないけど……」
霞「ふん」
テク テク テク
天龍「……朝潮型、そろってるな」
霞「何よ、天龍。何か用?」
天龍「次の任務だがな」
天龍「お前たちに決めさせてやるぞ」
霞「……はあ?」
バサッ(海図)
天龍「大体の戦況は分かっているな?」
霞「バカにしてるの?」
天龍「ほいほい」
天龍「この海図に書かれてる赤丸がブサイク提督お勧めの海域だ」
天龍「他の海域を選びたいのなら、そこでもいいし」
天龍「俺は確定だがあと一人、戦力も好きなのを連れて行っていいぞ」
霞「戦力……戦艦や空母とかでも?」
天龍「ああ」
天龍「どうだ? やってみるか?」
霞「ふん……面白そうね」
霞「やってやろうじゃない」
朝潮「えっ本気?」
朝潮「いくら何でも危ないのでは……」
満潮「あんなブ男に出来る事なのよ?」
満潮「実際の戦場を知らないあいつより私たちの方が」
満潮「よっぽど優秀だって事、見せつけてやるわよ!」
天龍「…………」
天龍「……旗艦は誰がやる?」
霞「私がやるわ」
天龍「分かった」
天龍「どこの海域を攻略するのか、敵戦力はどれだけか」
天龍「他にも知りたい情報があれば、俺が答えよう」
霞「ふん……そうねぇ」
―――――――――――
翌日
南方 某海域
ザザザザザザザ…
満潮「……くっ」
大潮「大丈夫? 満潮?」
満潮「これくらい……平気よ」
霞「…………」
天龍「さて、霞」
霞「……何よ」
天龍「敵に潜水艦が居て予想外のダメージを受けた訳だが」
天龍「これからどうする?」
霞「…………」
天龍「……対潜装備が無い以上」
天龍「俺は撤退をお勧めする」
霞「……っ」 ギリッ
朝潮「霞……気持ちは分かるけど」
朝潮「満潮と鳳翔が中破してる……敵の主力まで行けたとしても」
朝潮「相当のダメージを覚悟しないといけない」
霞「…………」
霞「……ブサイク提督に……撤退を打電するわ」
朝潮「うん……それでいいと思う」
朝潮「次、また頑張ろう」
満潮「待ってよ!」
満潮「私はまだ戦えるわ!」
霞「旗艦は私よ。従いなさい」
満潮「何でよ霞!」
満潮「あのブ男みたいに安易に撤退を選んで!」
霞「っ!!」
霞「…………」
天龍「…………」
天龍「満潮」
満潮「何よ、ブ男の腰巾着」
天龍「なら、お前が今から旗艦をやるか?」
満潮「……は?」
天龍「お前が旗艦をやって、この先、戦闘を続行させ」
天龍「誰かが轟沈した場合」
天龍「その責任はお前になるが……それでいいな?」
満潮「な……」
天龍「旗艦ってのは……指揮官ってのは、な」
天龍「そういった命令を下した全員の命を預かっているんだ」
満潮「…………」
天龍「その覚悟や自覚がお前にあるってんのなら……」
天龍「今からでも旗艦をやらせてやる。やってみろ」
満潮「…………」
天龍「……どうした満潮」
天龍「やってみろよ!! ああ!?」
満潮「ひっ……」
霞「天龍……その辺にして」
天龍「ふん……」
霞「満潮……私の命令に従って」
満潮「…………」
満潮「……了解」
朝潮「…………」
大潮「…………」
―――――――――――
南方鎮守府 執務室
ブサ督「よく帰って来てくれた」
霞「…………」
満潮「…………」
朝潮「…………」
大潮「…………」
鳳翔「…………」
天龍「……おうおう、行きしなの勢いはどうしたぁ?」
天龍「さっさと任務報告しろ、霞」
ブサ督「…………」
霞「……当該海域の主力部隊撃滅を目指すも」
霞「道中の敵から……予想外である潜水艦から攻撃を受け」
霞「満潮と鳳翔に中破のダメージを負い、目的達成は困難と判断」
霞「撤退の決断を……下したわ」
満潮「…………」
朝潮「…………」
大潮「…………」
鳳翔「…………」
ブサ督「……そうか。大変だったな」
ブサ督「では、損傷した艦娘は入渠、高速修復材の使用を許可」
ブサ督「あとは、ゆっくり休んで、次の戦闘に備えてくれ」
霞「!?」
霞「ま、待ちなさいよ!」
ブサ督「ん?」
霞「私は……ミスをしたわ」
霞「その罰を受けさせないの?」
ブサ督「……最終的に霞の作戦行動に許可を出したのは俺だ」
ブサ督「だから、そんな必要はない」
霞「で、でも……」
ブサ督「むしろ……この状況で速やかに撤退を決断したのは」
ブサ督「俺としては好感が持てるくらいだ」
霞「ブサイク提督……」
ブサ督「なので、お咎め無し。それでも何か罰を受けたいのなら」
ブサ督「今度、飯でも奢ってくれ」
霞「…………」
霞「ふん……いいわよ」
霞「食堂で一番高いメニューをご馳走してあげるわ」
ブサ督「ああ。楽しみにしておこう」
―――――――――――
南方鎮守府 談話室
天龍「これで分かったか?」
天龍「敵海域の情報、艦隊構成、分析、それに対する艦娘の種類と装備」
天龍「全部、ブサイク提督が1から10まで考え、揃えて」
天龍「お膳立てしてくれてたんだ」
霞「…………」
満潮「…………」
朝潮「…………」
大潮「…………」
天龍「お前たちはな、自分の実力で勝ってたんじゃねえ」
天龍「ブサイク提督に『勝たせてもらってた』んだよ」
天龍「それを肝に銘じておけ」
霞「……了解」
満潮「……分かったわよ」
朝潮「……朝潮、肝に銘じます」
大潮「……よく分かりました」
天龍「ん」
ゾロ ゾロ…
天龍「ふう……」
鳳翔「お疲れ様です、天龍さん」
天龍「鳳翔の方こそな……」
天龍「中破までさせちまった」
鳳翔「いえ……お気になさらず」
鳳翔「後方に増援部隊が控えているの知ってましたから」
鳳翔「安心してましたし」
天龍「……あのまま進んでても大丈夫な様にはしてあったが」
天龍「霞が撤退を決断するとは思わなかったよ」
鳳翔「きっと……根はいい娘なんでしょう」
天龍「……そうだな」
―――――――――――
南方鎮守府 執務室
天龍「――って感じで」
天龍「いい経験になったと思う」
ブサ督「そうか……」
ブサ督「でも天龍」
天龍「ん?」
ブサ督「わざわざお前が憎まれ役をやらなくても……」
天龍「……自分で決めた事だ」
天龍「あんな思いはもう……二度としたくねぇしな」
ブサ督「…………」
天龍「それにな、利根の言う通り」
天龍「ブサイク提督は優しすぎるんだよ」
ブサ督「そ、そうか?」
天龍「だから……かつての俺たちみたいに」
天龍「艦娘が付け上がっちまうんだ」
ブサ督「…………」
天龍「この利根が考えた方法は俺としても かなりいいと思う」
天龍「ブサイク提督のすごさを分からせるには」
天龍「自分たちで一から準備させて行動させればいい」
天龍「本当に効果的だ」
ブサ督「……イケメン提督指揮下での経験から学んだとか」
ブサ督「手紙には書いてあったな」
天龍「実際そうだろうさ」
天龍「この俺も……そうだからな」
ブサ督「…………」
天龍「ところでよ」
ブサ督「ん?」
天龍「前から聞きたかったんだが……ブサイク提督は」
天龍「どうして艦娘部隊の指揮官になろうと思ったんだ?」
ブサ督「……こ」
天龍「こ?」
ブサ督「こ、皇国の、海の安全を守るため……」
天龍「……ブサイク提督は嘘がヘタだな」
天龍「正直に言ってくれ」
ブサ督「……察してくれないか?」
天龍「ブサイク提督の口から聞きたいんだ」
ブサ督「…………」
ブサ督「……艦娘となら」
ブサ督「仲良く出来るかな……って……」
天龍「ふうん……」
ブサ督「十代後半の思春期真っただ中だったんだ」
ブサ督「今なら不純な動機だったって思ってるよ」
天龍「いいんじゃねーの?」
ブサ督「……へ?」
天龍「ブサイク提督も男なんだし」
天龍「そういう気持ちを抱くのも分からんでもないぜ?」
ブサ督「…………」
天龍「よく俺の胸ばっか見てたしな♪」
ブサ督「す、すまん……」
天龍「別にいいって」
天龍「それだけ俺に魅力があるって事でもあるんだからな」
ブサ督「…………」
天龍「何なら……揉ませてやろうか?」
ブサ督「」
天龍「ははは!」
ブサ督「……天龍」
天龍「すまん。冗談でも良くないよな」
ブサ督「分かればいい」
天龍「……でもよ」
天龍「本気だったら……どうする?」
ブサ督「…………」
ブサ督「……天龍」
ブサ督「もう、からかうのはそのくらいにしてくれ……」
天龍「……へいへい」
天龍「…………」
天龍「……なあ、ブサイク提督」
ブサ督「ん?」
天龍「この後……さ」
天龍「予定が無いのなら……二人で飯でも食わないか?」
ブサ督「ああ、いいぞ」
天龍「うっしゃあ!」
バタン!
榛名「ブサイク提督さん!」
榛名「この後、榛名と一緒にご飯を食べませんか?」
ブサ督「あ……」
天龍「悪いな、榛名」
天龍「ブサイク提督は、この俺と夕飯を食べる約束を、今、したんだよ」
榛名「なっ……」
榛名「ぐぐぐっ……榛名、我慢しますっ」
ブサ督「いや、俺は別にみんなと一緒でも……」
天龍「なんだよ……」
天龍「俺と二人きりは……嫌だってのか?」
ブサ督「」
ブサ督「だ、誰もそんな事は言ってないだろ!?」
ガチャ
電「失礼しま……」
ブサ督「…………」
天龍「…………」
榛名「…………」
電「……した」
パタン
ブサ督「いや!?ちょっと待ってくれ!電!」
ブサ督「大丈夫だから!?」
ガシッ
天龍「さ、俺と二人っきりで飯にしようぜ♡」
榛名「ぐぎぎぎぎっ」
ブサ督「」
―――――――――――
大本営 元帥の執務室
フツ督「……報告は以上です」
元帥「うむ」
元帥「後任のソース顔提督は、ちゃんと西方を守っているようだな」
フツ督「ええ……俺の代わりにしっかりと」
元帥「ふふふ……そう浮かない顔をするな」
元帥「私は貴様が大将になってくれて本当に感謝している」
フツ督「その代償で、俺の胃に穴が開きそうですよ……」
元帥「貴様なら大丈夫だ」
元帥「それでは明日の予定だが」
元帥「陸軍との合同演習に向けた調整を頼む」
フツ督「…………」
フツ督「……ひと月くらいかかりそうな案件なんですが」
元帥「これが済めば休暇を取らせよう」
元帥「秘書艦の龍田と共にな」
フツ督「…………」
元帥「頑張ってくれたまえ」
フツ督「……了解」
フツ督(うう……どうしてこんな事に)
元帥(…………)
元帥(ブサイク提督に彼を大将にする妙案は無いか相談したら)
元帥(一番の近道はフツメン提督に手柄を立てさせる事だと言われ)
元帥(あえて、脛に傷持つ敵対派閥の人物を先に大将職へ就かせた)
元帥(…………)
元帥(その後、フツメン提督にそいつを調べさせ)
元帥(そいつを引きずり降ろさせる事で手柄とし)
元帥(彼を大将へ昇進させる事に議会を納得させ)
元帥(私の派閥の大躍進となった……)
元帥(…………)
元帥(フツメン提督には悪い事をしてしまったが)
元帥(彼の人脈を私の派閥に組み込む事もできたし……)
元帥(ブサイク提督には、今度、何か贈り物でもしておこう)
元帥「ああ、そうそう」
元帥「以前、言われてた事だったが……」
フツ督「はい?」
元帥「メガネ提督」
元帥「貴様の指揮下に加える手続きが済んだ」
フツ督「!」
フツ督「あ、ありがとうございます!」
元帥「何でもブサイク提督のお墨付きだとか?」
フツ督「ええ」
フツ督「俺は全く知りませんでしたが」
フツ督「彼が言うには、同じ戦力で戦った場合」
フツ督「ショウユ顔提督もソース顔提督も敵わないだろうと」
元帥「……にわかには信じられない話だな」
フツ督「贔屓目もある、とは付け加えてましたけどね」
元帥「だが、その言葉を貴様は信じるのだな?」
フツ督「ええ」
フツ督「ブサイク提督の戦術、戦略は超一流ですから」
元帥「私も大いに期待しよう」
元帥「それと……」
フツ督「まだ何か?」
元帥「例の離島艦娘と深海棲艦についてのレポートだが」
フツ督「……ようやくお読みになられましたか」
元帥「厄介な事実を持ち込んでくれたな……」
元帥「こんなもの公表なんて絶対に出来ないぞ」
フツ督「でしょうね」
元帥「ふう……」
元帥「一部、公表したいものもあるが」
元帥「それをやると、どう考えても情報源を追及されてしまう」
元帥「そうなったら芋づる式に公表しなくては」
元帥「海軍の信用の失墜に繋がってしまうだろう」
フツ督「…………」
元帥「公表したらしたで、艦娘を敵視する連中も増えるだろうし」
元帥「対艦娘部隊創設派を勢い付かせてしまう」
フツ督「……全くもってその通りだと思います」
元帥「まあ、そういう訳だから」
元帥「海軍への情報提供には感謝するが」
元帥「私が元帥職である限り、この情報は秘匿し続ける事とする」
フツ督「ええ。それで構いません」
フツ督「私としても元帥閣下に知っておいて欲しかっただけですので」
元帥「ふん……」
元帥「抜け抜けと言いおって……」
フツ督「腹黒ですので」
元帥「よろしい。それでこそ私が見込んだ男だ」
フツ督「はっ」
元帥「では、明日からも頼むぞ」
元帥「フツメン大将」
フツ督「了解です」
こうして……
イケメン提督による一連の騒動は幕を閉じた。
彼によるとされる大損害での艦娘の犠牲に加え
大将職が短期間に二人も辞任するという
不名誉な出来事に見舞われ
海軍の信用は一時期、大きく失墜する事になった。
が、新たに大将へ就任した若手のフツメン提督は
その手腕をいかんなく発揮し
各方面艦娘艦隊は一部で新たな提督を迎え
戦力の再編と拡充、国民への信用回復を少しずつ進めている。
.
北方は厳冬期に入り、深海棲艦の活動が
一時的とはいえ鈍るため、当該主力である金剛と比叡は
南方へ転属。
さらに南方では、金剛型4番艦である霧島が加わり
金剛型4姉妹が勢ぞろいした、という事で
紙面を大いに賑わせ、これも海軍の信用回復に繋がる事となった。
しかし……深海棲艦との戦いは、まだまだ混迷を極め
人々が安心して海を渡るには時間が掛かりそうであった。
.
―――――――――――
数日後のある日
西方海域 例の離島の砂浜
ザザーン… ザザーン…
榛名「久しぶりですね、ここへ来るのも」
ブサ督「ああ……そうだな」
ザッザッザッ
榛名「灰色の髪の君さん」
榛名「お久しぶりです」
ブサ督「…………」
ブサ督「ここも温かいな……」
ブサ督「内地は真冬で雪が降っている頃だというのに」
榛名「不思議ですね」
榛名「緯度とか経度とか、地球の地軸とか」
榛名「そういう理屈は分かってても」
榛名「今、この瞬間、同じ星で、違う気候が存在するんですから」
ブサ督「……そうだな」
ブサ督「この世の中は不思議でいっぱいだ」
榛名「ふふふ」
ブサ督「…………」
ブサ督「榛名」
榛名「はい?」
ブサ督「その……こういうのは慣れてなくて」
ブサ督「正しいやり方かどうかも良く分からんのだが……」///
榛名「?」
ブサ督「……俺は」///
ブサ督「榛名の事が……好きだ」///
榛名「!!」
ブサ督「…………」///
榛名「ブサイク提督さん……」///
榛名「榛名……嬉しいです!」///
榛名「榛名もブサイク提督さんの事が、大好きです!」///
ブサ督「あ、ありがとう、榛名」///
ブサ督「そ、それで、だな」
ブサ督「これを……受け取って欲しい」
榛名「指輪……ですか?」
ブサ督「うん……海軍艦娘部隊の伝統で」
ブサ督「好意を寄せる艦娘に指輪を送って結ばれると……」
ブサ督「その二人はずっと幸せになれるっていうものなんだ」
榛名「まあ……うふふ」
榛名「とっても素敵な伝統ですね♪」
ブサ督「ははは……喜んでくれて良かった」
キラン☆
榛名「榛名、大事にします!」
ブサ督「うん」
ザザーン… ザザーン…
ブサ督「……近いうちに」
ブサ督「俺の両親に会って欲しいんだが、いいか?」
榛名「はい、構いません」
榛名「ブサイク提督さんのご両親ですから」
榛名「榛名、今から楽しみです♪」
ブサ督(……俺がこんな美人を連れて帰って来たら)
ブサ督(とーちゃん、かーちゃん、腰抜かすだろうなぁ)
ブサ督「……そうだ」
ブサ督「榛名、内地へ帰ったら、何かやりたい事はあるか?」
榛名「やりたい事、ですか?」
ブサ督「そう」
ブサ督「例えば美味しいものを食べたい、とか」
ブサ督「映画を見たい、とか……」
榛名「う~ん……」
ブサ督「…………」
榛名「……そうですね」
榛名「榛名は……桜が見たいです」
榛名「ブサイク提督さんと二人で!」
ブサ督「!」
「私は……自分の名前に使わせてもらった」
「桜の花を見たい」
「……ブサイク提督と二人で」
ブサ督「…………」
ブサ督「…………」 ポロポロ
榛名「えっ!?」
榛名「あ、あの、ブサイク提督さん!?」
グイッ…
ブサ督「……大丈夫」
ブサ督「大丈夫だ、榛名」
榛名「でも……」
ブサ督「悲しくて泣いたんじゃない」
ブサ督「嬉しかったんだ」
榛名「そう……なのですか?」
ブサ督「ああ」
榛名「…………」
ブサ督「来年……春になったら」
ブサ督「内地に戻って、桜を見に行こう」
ブサ督「必ず、榛名と二人で」
榛名「はい!」
俺は……自分の顔の醜さをずっと呪ってきた。
ガキの頃は、この境遇に何度も泣いて死にたくなった。
周りは俺をバカにする奴ばかりだったが
わずかながら友達も居た。
おかげで俺は道を踏み外さずにいられたが
友人に彼女が出来てからは疎遠になった。
.
悔しかった。
俺はかすかな希望にすがって
海軍艦娘部隊の士官学校へ入学した。
……艦娘の反応も同じだった。
でも俺は思い違いをしていた。
そこにある艦娘には命があって
浮ついた気持ちで扱っていいものでは無かったのだ。
.
……俺と話をしてくれた艦娘たちの命を
俺の命令で失ってしまった。
恐ろしかった。
悲しかった。
罪悪感が俺の心を苛(さいな)んだ。
この世の中は俺に悪意しかないのかと
絶望した。
.
俺は努力をした。
艦娘の命を二度と無駄にしない為に
作戦を考え、地形を調べ上げ
少しでも艦娘が傷つかない方策を
模索し続けた。
……気が付けば
鎮守府の司令官に上り詰めたが
一般の婦女子も艦娘の態度も変わらなかった。
.
それでもいいじゃないか
これで良かったんだ。
……そんな言葉で誤魔化していたが
現実は俺の心を
少しずつ蝕んで凍らせて行くのが
ひしひしと感じられて辛かった。
.
ただ……温かい話し相手が欲しかった。
安らげる相手が欲しかった。
心を癒してくれる人が
俺の傍に居て欲しかった。
日々、過ぎていくだけの現実の時間が
空しかった。
泣きたかった。
言葉で言い表せないほど
とにかく辛かった。
.
……でも
.
そんな辛い思い出も
出来事も
この日の幸せの為にあったのかもしれないと
初めて思えたのだった……
おしまい
実は昔、途中まで書いてて放置、発掘したものなんですが
久しぶりに読んでみたら、これ続き読みたいなぁ……と思い
続きを書き始めました。
楽しんで頂けたのなら幸いです。
お付き合いありがとうございました!
コメント一覧 (84)
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- 2020年11月15日 06:06
- 流石にこの量は無理
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- 2020年11月15日 08:29
- 漸くエレ速にも読み応えのあるSSが来たかー。
二度とSSじゃないものを掲載するな!とは、言わないけれど定期的にこういったSSを乗せてほしいものです。
-
- 2020年11月15日 09:02
- 早朝から一気読みしちまったぜ…素晴らしい
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- 2020年11月15日 09:23
- 面白くてつい一気読みしてしまったわ
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- 2020年11月15日 09:41
- ちょっとくどいところはあるけど面白かった。
悪役だったけど大将の引き際が絶妙だった。なぜか感心してしまった。
-
- 2020年11月16日 01:03
- >>5
育てた部下に振り回されながらも保身の為とはいえ物資の補給を即決で決めたり一番荒れないタイミングで退場したり
曲がりなりにも上官だったんだなと感心したわ
とはいえ、ここのコメント欄に用事があるようなSSも随分久しぶりな気がする
-
- 2020年11月15日 09:45
-
乙!
また書いてくれ
-
- 2020年11月15日 09:52
- 力先が読めて幸せだわ
-
- 2020年11月15日 10:21
- オリ設定は少々あれど素晴らしい力作
読後感も良かった
-
- 2020年11月15日 11:16
- いい作品だった
-
- 2020年11月15日 11:49
- おもしろかった
けど主要なキャラ以外が顔だけで相手を判断してるのが話の都合で知能レベル下げられてるみたいで
その不当な扱いからの逆転が話の主軸だからしょうがないんだろうけど
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- 2021年05月09日 09:06
- >>10
知能レベル下がるのは、差別的で偏見ではあるが
・女性はまず見た目で判断
・ブサイク提督が誰もが声を出すレベルの酷い顔
・ブサイク提督の支持や庇おうものなら周りから白い目
・女性は派閥作りたがり異物を排除したがる(イジメになるかは別にして)
・女性は共感性強く周りの影響受けやすい
で、「ブサイク提督はびっくりする程醜い」→「皆誰も支持しない」→「能力はそれなりにあるかもしれないが言い出せない」→「軽くでも支持すると皆は強く全否定する」→「むしろ能力低いという」→「そうかもしれない」→「(顔が醜いので)きっとそうに違いない」…こうなるのでは、と推測。
-
- 2020年11月15日 12:21
- ブサ提が元管轄の艦娘全員と罪悪感抜きに普通にコミュニケーションとれるようになった後日談とかあったらもっとよかったな(強欲)
あと榛名の感情が段階的に育つように書かれていると個人的に好みとかあるけど、とてもいいssでした
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- 2020年11月15日 12:25
- 桜も榛名も天使だった。龍田は堕天使。
異論は認めない。
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- 2020年11月15日 13:49
- 一気読みしたがなかなか良かった
ただ登場人物の名前がいけなかった
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- 2020年11月15日 14:36
- 好評やけどこの量読むなら
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- 2020年11月15日 18:08
- ちょうだいちょうだい
こういうのちょうだいもっと(杉谷)
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- 2020年11月15日 19:08
- メガネ提督って処女崇拝で挙げ句の果てに艦娘解体しまくって精神破綻したのしか思い付かないんだがw
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- 2020年11月15日 23:53
- 久々にいいもの読めたわー
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- 2020年11月16日 04:33
- 久しぶりに良いSSが見れて嬉しいよ……(泣)
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- 2020年11月16日 08:22
- 続きはいくら払えばいいですか
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- 2020年11月16日 11:15
- 劣化「豚と呼ばれた提督」だな
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- 2020年11月16日 22:28
- >>21
別に劣化でもなんでもないだろ。
あれはあれ、これはこれで普通に面白かったわ。
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- 2020年11月16日 23:40
- >>26
話の類いはあれはあれ、これはこれでいいのに、何で劣化とか上位互換とか言い出すの出てくるんだろうな?
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- 2020年11月16日 11:52
- ありがとう
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- 2020年11月16日 13:57
- 面白くて時間も忘れて一気に読んでしまった
-
- 2020年11月16日 16:33
- マスコミが結構アレな感じで書かれていて時代を感じる。
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- 2020年11月16日 20:37
- 久々に一気読みした、アタリだ
-
- 2020年11月16日 22:31
- 何だかんだ天龍ってみんなの愛されキャラよな
面倒見良いし、かわいいし、若干サバザバしてるけどずぼらな訳じゃないし、かわいいし
今度は天龍メインとか見てみたいな
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- 2020年11月16日 22:56
- 凄く面白かった!
此だけの量を1スレで、最後まで書ききるなんて素晴らしすぎる。
初めてコメントなんか書いたよ( ̄▽ ̄;)
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- 2020年11月17日 06:01
- 公式が設定を明言していないから二次創作の設定に幅があるな
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- 2020年11月17日 08:24
- ここ最近お目にかかれない良作だった。
文章量や轟沈などで人を選ぶとは思うが個人的にはアタリの作品。
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- 2020年11月17日 14:06
- 深海側が喋るのはちょっと受け付けなかったなー
内ゲバの話に留めておいてほしかった
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- 2020年11月18日 00:51
- 最後まで書ききった作者に感謝
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- 2020年11月18日 02:35
- やっぱこういうSSはいいな
桜、めっちゃ可愛かったです
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- 2020年11月18日 19:03
- 全部読んだ。面白かった
ただあまりにアホが多すぎて主人公が相対的に有能に見えるから、所謂なろうだと思った
-
- 2020年11月18日 23:24
- 久々に艦これで読み応えあった
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- 2020年11月19日 05:44
- 面白かったが、名前がソース顔とかしょうゆ顔とか酷すぎだろ。。顔で統一したい気持ちは分かるが、名付けのセンスは最悪だよ。クズ山クズ夫もいくら何でもやり過ぎだ。
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- 2020年11月19日 06:41
- >>37
キャラ名が役職で統一されてるのとどこが違うんだ?
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- 2021年01月16日 05:37
- >>37
SSなんて顔統一どころか男・女やらイケメン・ブサイクやら、果ては性癖統一もあるのに何を今更
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- 2021年05月09日 09:09
- >>37
せめてそれに因んだ方が良かったかな?
房山(ブサヤマ)とか池面(イケツラ)とか府津宇(フツウ)とか…
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- 2020年11月19日 21:22
- ssというジャンルにかつてのような勢いがなくなった今、このような力作を書き上げてくれたことがとても嬉しい
途中であっさり退場したけど恐らく優秀な大将とか、フツ提とか、ぎょっとする描写がない技術主任や施設の人とか、そういうオリキャラたちも含めて魅力的なssだった。
また何か書いてほしい
-
- 2020年11月20日 04:10
- 耐えてたけど最後で涙出たわ
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- 2020年11月20日 21:49
- 長さが気にならない位すごく面白かった。
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- 2020年11月21日 17:59
- 長いよwおもしろかったけどねww
くだらねぇネタスレ大量にまとめるくらいならこう言うssまとめろよ無能管理人
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- 2020年11月22日 10:54
- 途中からなんかSSの雰囲気変わったなって思ったら放置されてたのか。何故か時代を感じる
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- 2020年11月24日 22:01
- 桜の戦艦だから大和だと思っていたら榛名だったのが意外。
顔以外超有能提督だったけど、後悔の残る過去部分も書いて欲しかったかな。最後まで一気に読んでしまった。
書き始め当初は艦これ改のみプレイだったみたいだけど、その後本家も始めたのかな?
強制一隻教の世界観だけど、西北南鎮守府&大本営も含めて同一艦娘が存在出来ないとなると、どう転ぼうが手駒が足りなくて、途中の深海棲艦の大群とか対処出来ないんじゃとか野暮な事思ってしまった…。
-
- 2020年11月25日 10:06
- 天龍ちゃん…ブサ督に振られちゃったね
あんなブサイクに振られるってどんだけなのwww
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- 2020年11月25日 21:31
- まず、とても面白かった。お疲れ様。
ただ、作中で扱われてるほどイケメン提督無能とは思えないんだよな・・・。
部下をおだてて戦意高揚させて死地に放り込む才能って本来一番司令官に向いてる人材だと思う。
天龍の部隊をおとりに使い潰したのも、あのまま主力艦隊壊滅させられるよりはよっぽど有りな判断じゃね?
普通は人道的な理由で決断できないけど、俺だって「ゲーム」でならやるよ。
本当に無能なのはこの人に作戦参謀を付けてやらない大本営では?
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- 2020年11月26日 10:25
- >>46
あまり
詮索はするな
消されるゾ
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- 2020年11月29日 06:55
- >>46
作中に参謀付けても言うこと聞かないって書いてあったぞ。確かに部下をその気にさせる扇動家としては優秀かもしれんけど、自分で勝手に死地を作ってせっせと部下を放り込まれても困るだろ…
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- 2020年12月02日 12:26
- >>46
イメケン提督って大日本帝国のパロディでしょ?
民衆に人気があった近衛文麿とか、無謀の擬人化として知られる東條英機とか......
あいつらも人を扇動する才能はあったよ。結果はあのザマだけど。
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- 2020年11月25日 23:03
- マジで良い作品だった。
ここ最近で一番楽しい時間を過ごせた。感謝。
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- 2020年11月27日 08:22
- なげえからどうしようかと思ったけどここでまとめられてる中ではかなり面白かった
それはさておき艦これ改しか知らない提督って無茶苦茶レアじゃないか?
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- 2020年11月27日 08:57
- マトモで長編のSSを待っていたのでとても良かった。ストーリーも一気見出来るくらい楽しめた。
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- 2020年11月29日 03:41
- おもしろかったー
だいぶ掲示板SSも元気がなくなってきたけど、こういうSSがまだ存在していることにありがたみを感じる
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- 2020年11月29日 20:21
- そんなにイケメンが憎いかwww
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- 2020年11月30日 16:36
- 一気読みしてしまった。
読みごたえがあった!
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- 2020年12月02日 05:39
- ありがとう。
金出してでも読む価値のあるSSだった。
-
- 2020年12月04日 17:08
- 面白かった
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- 2020年12月13日 00:36
- 指摘あるけど所謂なろうのざまあ系の艦これ版やね
主人公が顔以外完璧超人のチーターで主人公以外が無能すぎるし
後この構成なら桜ってか榛名はいらん、普通に天龍一本のヒロインもので良かった
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- 2021年04月28日 02:39
- >>58
なろう系と同列は流石に草
BJ どろろ ドラえもん もなろう系になるぞ
ナルトもなろうだな?
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- 2020年12月17日 12:58
- イッチはイケメンに親でもコロされたのか?ってくらい憎しみがこもってましたね
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- 2020年12月18日 14:20
- そんなにブサイク顔が気になるならサンジに顔面蹴ってもらえばええやん
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- 2020年12月18日 19:44
- >>60
ブサイク提督からビセイネン提督に改名しなきゃな
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- 2020年12月19日 17:19
- 普通に面白かった
いい時間潰しになったよ
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- 2020年12月22日 13:15
- ※58
ビジュアルが原因で才能が認められなかった
この時点で鳳雛(ホウ統)を思い浮かべずなろうに行き着くのは単純にキミの教養不足と嗜好の問題や
叩きつつもそういうのが好きだからこそ誘導されてんねん
三国志演義の時代からある設定に今更なにこじつけようとしてんねん…アホかいなw
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- 2020年12月22日 14:33
- いやぁ、いい内容に落ち着いた話でよかった、指揮官がやっぱ中身が大事よな、戦線の継続は戦果より重要だ。
あと天龍が残って僕安心、いつか、轟沈してしまった彼女達が、また新しく出会えるといいなぁ・・・
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- 2020年12月30日 02:31
- こういうの嫌いじゃないわ!とりあえずブサイク提督は榛名のふかふかおっぱいと女体を堪能して子宝に恵まれてしまえ
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- 2021年01月02日 07:21
- わかりやすい内容でとても面白かった。きれいな悪役ムーヴするイケメン提督や深海化艦娘化のギミック、轟沈描写を利用したシリアス化については艦これというコンテンツのらしさを引き出していたと思う。
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- 2021年01月07日 05:25
- 面白かったわ!頑張ってくれ〜!
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- 2021年01月08日 15:54
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最後の方利根たちにこうしたらいいの案をもらわなかった場合ブサ督は同じ失敗(顔面を理由に一人で完結しようとする)をしたんじゃないかと思うと恐怖で指先が震える。
一歩前に進む終わり方ですごく良かった。
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- 2021年01月10日 12:51
- 長編であることを感じさせない、素晴らしいssでした!ありがとう!
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- 2021年01月25日 02:56
- 展開の都合のよさに、金剛「テートクのハートを掴むのは、私デース!」瑞鶴「!?」 の作者と同じな臭いを覚えます。
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- 2021年03月17日 01:46
- 読み応えがやべぇ…
やっぱりSSはこうでなくちゃ…
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- 2021年04月12日 16:23
- 面白かった!!
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- 2021年05月09日 09:15
- 個人的にはこの作品は、艦これ二次創作を行う者の教科書になる作品と思います。
艦娘が無条件で提督に好意を抱く事に納得する理由無ければ、自分みたいなブサイクもきっとこうなるだろうし。
だからここの艦娘の感覚にも納得(余談ながら自分はコレと、作者違う提督ディストピア見て創作意欲沸いた)。
とにかく、素敵で素晴らしい作品でした!!最後は泣けました…ブサイク提督の今後に幸あれ!!
作者さんありがとうございました!!
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- 2022年03月21日 06:44
- 単にブサイクだからってより、ブサイクを理由に虐げられてきた生い立ちからくるオドオドした態度が艦娘から嫌われてた最大の原因なのかもね
いくら優しくとも自身のなさそうな男って魅力的には見えないだろうし、司令官がオドオドしてたら部下が不信感抱くのは当然
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- 2022年07月22日 03:22
- おもろかったわガチ名作
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- 2022年10月06日 00:49
- こういう話は好きだから深夜なのにも関わらず一気に見てしまった。
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- 2022年12月26日 11:03
- これ系って環境一新するほうがスカッとするから元北側の艦むすは想定外の襲撃でキレイに一掃して沈んでほしかったな、または完全に深海側について日本を崩壊させるとか
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- 2023年01月03日 10:02
- 気づいたら朝やった。ありがとう。
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- 2023年05月08日 13:22
- 良いssだった
榛名が戦力として機能してないのは玉に瑕かな
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- 2023年07月02日 01:59
- 本当にいいSSだった
ありがたやありがたや