教師「うるさくて授業にならないので、先生は職員室に戻ります!」ピシャッ
教師「……」イライラ
教師「あーもう、うるさぁい!」
教師「うるさくて授業にならないので、先生は職員室に戻ります!」ピシャッ
ガヤガヤ…
「先生行っちゃったよ」
「マジで?」
「追いかけた方が……」
「でも……」
女「そりゃあ、私たちも行った方がいいでしょ」
男「仕方ない、職員室に行くか。ったく、世話の焼ける」
優等生「ではボクも行きますよ」
不良「俺も行くぜ!」
「俺たちも……!」
男「いや、全員で行くことはない。とりあえず、この四人だけで行こう」
女「……」ゴクッ
優等生「あの中に……先生がいるはずです」
不良「おい、みんなビビってんじゃねえぞ!」
不良「こういうのは勢いで行くもんよ! 入るぜぇ!」
男「ま、待て!」
ガラッ!
男「あ……!」
校長「たかが平教員の分際で、私に意見するなど……」
教師「ぐ……!」
校長に首を掴まれた状態で持ち上げられ、息も絶え絶えになっている教師の姿があった。
男「……!」
男「せ、先生ーッ!!!」
教師「あまりに校長の歌がうるさい……ので……やめさせようとしたら……」
教師「この……ザマだ……」
校長「まだ下らぬことをほざく体力があったか」ググッ…
教師「ぐえっ……!」メキッ
男「先生!」
女「やめてよ!」
そう、校長は職員室で毎日のように歌を披露していたのである。
学校中に響く音量で――
女「その授業ができないから、先生がこうしてあんたを止めに来たんでしょうが!」
女「あんたのヘッタクソな歌にはみんな迷惑してんのよ!」
優等生「そうです、あなたの歌がある限り、この学校では授業が成り立ちません!」
不良「俺みてえなワルでも、さすがにこんなことはやらねえぜ!」
男「お願いします。学校はあなたのカラオケ場じゃないんです。歌をやめて下さい!」
校長「おいおい、何を勘違いしてるか知らんが――」
校長「つまり、校長は何をしてもいいんだッ!」
校長「学校内で誰を殴ろうが、誰を殺そうが、歌を歌おうが、な……」
女「なんて奴なの……」
優等生「こんなことをしていたら、今に教育委員会に処罰されますよ」
校長「教育委員会? ああ、そこで転がってるよ」
教育委員会の人「あうう……なんて歌だ……」ピクピク
男「教育委員会の人ーッ!!!」
男「ううう……」
不良「く、くそっ!」
校長「そろそろ出ていってもらおうか。私の歌を聴けェ!」
校長「ヴォエエエエエエエエエエエエエエッ!!!」
ビリビリ…
男「うわっ!」
女「きゃっ!」
優等生「ぐうっ!?」
不良「うおおおおおおっ!」
音圧で追い出される四人。
女「どうする……?」
優等生「先生を放ってはおけませんね。瀕死の状態であの歌を聴き続けたら間違いなく死ぬでしょう」
不良「だったらもう一回乗り込んで――」
優等生「いえ、無策で乗り込んでも同じことになるだけでしょう」
不良「ぐ……!」
女「耳栓をつけましょうよ! そうすれば校長の歌も防げるよ!」
男「おお、それいこう!」
優等生「……」
男「校長、覚悟ォ!」ダッ
校長「ん? どうやら耳栓をつけているようだが……」
校長「耳栓など無駄だァ!」
校長「ヴォエエエエエエエエエエエエエッ!!!」
男「がああっ!?」
女「な、なんで……!?」
不良「頭が……割れる!」
優等生(やはり、耳栓などで防げる甘い歌ではない!)
男「なんだこれ?」
優等生「NASAで開発された吸音素材です」
優等生「ジェット機が間近を通っても、音が聞こえなくなるという代物です」
不良「すげえの持ってんじゃん!」
女「もはや優等生の域を超えてる気がするけど……」
男「今度こそ、先生を助け出すんだ!」
男「校長、今度こそ――」
校長「なにやら防具をつけてるが無駄なことだ」
校長「ヴォエエエエエエエエエエエエエエエエエエエエエエエ!!!!!」
メキメキメキ…
バリィンッ!
男「ダ、ダメだ! あっという間に素材がぶっ壊れた!」
優等生「なんてことだ……!」
校長「ハハハハハァ! 無駄無駄無駄ァ!」
女「NASAでさえ通用しないなんて……」
優等生「ご安心を。さっきの攻撃は布石に過ぎません」
女「布石?」
優等生「実はさっき、校長の歌をスマホで録音していたのです」
優等生「これを聴かせれば、校長を自滅させることができるはず!」
男「さすが優等生! NASAは最初から捨て駒で、二段構えだったのか!」
優等生「ただし、録音した歌を聴かせる人にも覚悟がいりますが……」
不良「だったらそれは俺がやるぜ! この中で一番体力あるだろうしな!」
不良「校長……」
校長「ん?」
不良「自分の歌を喰らえェ!」
スマホ『ヴォエエエエエエエエエエエエエエエエエエエエ!!!!!』
不良(きっつ……! だが、校長もダメージあるはず……!)
校長「フッ……」
不良(通用してねえ!?)
校長「フグが自分の毒で死ぬかァ! ヴォエエエエエエエエエエエエ!!!」
不良「ぎゃあああああっ……!」
女「生きてる!?」
不良「ああ、なんとかな……」ゼェゼェ
優等生「自滅させるのはいい手だと思ったのですが……無念です」
優等生「“歌には歌を”という単純な考えで挑んだボクが浅はかでした……」
男「歌には歌を……!? そう、それだよ!」
優等生「え?」
男「みんなで歌を歌って、校長にぶつけるんだ! そうすればきっと校長にだって勝てる!」
女「みんなってクラスメイトってこと?」
男「いや……もっと大勢集めなきゃ勝てないだろう」
校長「さて、歌うか」
校長「全校生徒たちよ、我が歌を聴けェ!」
ガンッ!
校長「……ん?」
校長「なんだ? 窓に石が投げつけられたが――」
校長「誰だ、こんなことをしたのは!」ガラッ!
ズラッ…
男「校長先生、今から俺たちがあんたに歌を聴かせてやる!」
校長「なにっ!?」
男「みんな……校歌斉唱だ!!!」
~♪ ~♪ ~♪ ~♪
校長「ぬうっ!?」
我が母校~♪ 我らが学び舎~♪ 清く美しく~♪
校長「ぐうっ!?」
校長(おのれ……全校生徒で私の歌を打ち破るつもりか!)
校長「舐めおって! ……返り討ちにしてくれる!」
校長「ヴォエエエエエエエエエエエエエエエエエエエエエエエエエエエエ!!!!!」
全校生徒の斉唱(ユニゾン)と校長の独唱(ソロ)――二つの歌がぶつかり合う!
ヴォエエエエエエエッ!!!
グググッ…
男「押される!」
男「みんな、もっと声を出すんだ!」
不良「精一杯やってるぜ!」
女「だけど、これ以上は――」
男(みるみる、俺たちの歌が押し返される!)
校長「生徒全員まとめて、私の歌で押し潰してやる! 校庭の肥料になるがいいッ!」
ヴォエエエエエエエエッ!!!
グググググッ…
男「ダ、ダメだ……もう持ちこたえられない……!」
男(みんなの力を合わせたら……最悪の結果になってしまった……!)
男(みんな、ごめん……!)
校長「もごっ!?」
校長の口を何者かが手で押さえた。
校長(キサマ……!)モゴモゴ
教師「ふふ……あれだけ歌を聴かされれば、多少は慣れる……」
教師「まして、生徒が頑張ってるのに教師が何もしないわけにはいかないだろう……」
教師「みんな、やれーっ!」
校長(や、やめ……)モゴモゴ
男「先生……!」
男「今だーっ!!!」
ズオッ!!!
校長「ぐわあああああああ……!!」
校長「こ、こんな……バカ……なァ……」
ボシュゥッ!
教師「よく……やった……みんな……」
男「いえ、先生がいなければ俺たちは負けてました……」
女「ありがとうございました!」
優等生「これで、この学校は救われました!」
不良「俺、今度からは真面目に授業受けるぜ……!」
教師「ふふ……先生思いの生徒たちだ……」
教師「さあ……教室に戻ろう!」
校長は教育委員会の地下深くにある牢に幽閉された……。
校長「ま、待ってくれえ! 閉めないでくれえ……!」
校長「こんなところじゃ、誰にも歌を聴いてもらえない……!」
校長「いやだぁぁぁぁぁ……!」
ギィィィ…
バタンッ!
教師「……ここは、こうなるのである!」カリカリッ
教師「みんな、今日も静かでよろしい!」
女「先生の授業楽しいもん!」
優等生「ボクは元々静かですしね」フッ
不良「真面目に授業受けるっていう約束は守るぜ」
男「先生、もう授業中に職員室に戻ることはなさそうですね!」
おわり
コメント一覧 (3)
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- 2020年11月12日 01:16
- 予 想 外
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- 2020年11月12日 02:28
- ジャイアン?
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- 2020年11月12日 10:52
- 長い