審査員「これは美味い!!!」料理人「ここからが本番です! これをかけてみて下さい!」
モグモグ…
審査員A「うーん……?」
審査員B「これかけない方がよかったような……」
審査員C「せっかくの味が台無しだわ」
料理人「え……え!?」
料理人(あんだけ褒めてくれた審査員たちのテンションがみるみる下がっていく……)
料理人 35 ― 48 ライバル
司会者「ライバル選手の勝利です! 下馬評に反してかなりの差がつきました!」
ワアァァァァァ……!
ライバル「フッ、まあこんなもんだろ」
料理人「あぐうう……」
料理人(余計なことをしなければ……!)
女「あまり落ち込まないでよ」
料理人「だけど……」
女「あんな見世物みたいな対決に負けたからってなんだっていうのよ」
女「料理人はタレントじゃないんだから!」
料理人「ありがとう……。お前は料理は下手だけど、励ますのは上手いよな」
女「なによそれ!」
料理人(ああ、また余計なことを……!)
料理人(余計なことするのは、これだけじゃない。自分の店でも――)
肥満女「まぁ、おいしい! おかわりいただくわ!」
料理人「どうもー!」
料理人「お客さんみたいな食べっぷりを見てると、こっちも嬉しいですよ」
肥満女「ありがとぉ~!」
料理人「だからそんなに太っちゃうんでしょうね!」
肥満女「ひっどーい! やっぱりおかわりは無し!」
料理人「そんなぁ……」
会社員「おおっ……」
会社員「このスープ……うまいねえ」
料理人「でしょう?」
料理人「ですが、唐辛子をかけるともっと……」パッパッ
会社員「ちょ、ちょっと何するんだ! 私は辛いのが苦手なのに!」
料理人「す、すいません! つい!」
料理人「どれどれ」モグ…
料理人「ほう……なかなかの味だ」
弟子「ホントですか!」
料理人「お前も成長したな!」
弟子「やった!」
料理人「ホントはもっと早くこの域に達して欲しかったが」
弟子「ですよね……」
料理人(また余計なことをいっちまった!)
女「なにが?」
料理人「料理が下手だなんていっちまって」
女「別に気にしてないって」
料理人「よかった……。胸はあまり大きくないけど、心は広いんだな」
女「喧嘩売ってんの!?」
料理人「ち、違うんだ! つい口から……!」
料理人「“そこで止まっとけ”ってところで止まれず、余計なことをしたり口走ったり……」
料理人「どうすればこの悪癖を直せるんだ……」
女「……」
女「だったら、治療してみる?」
料理人「どうやって?」
女「一つ、心当たりがあるのよ」
料理人「お前も最近忙しくて疲れてるだろうに、悪いな」
女「それこそ余計な心配ってやつよ」
料理人(エスニックな雰囲気が漂う場所だな……)
僧侶「おや、いらっしゃい」
僧侶「今日はなんの用かね?」
女「この人の悪いクセを矯正して欲しくて……」
料理人「いつもいつも、つい余計なことをしちゃうタチなんです」
僧侶「それはそれは。ではさっそく取りかかりましょう」
料理人「はい……」
料理人「……」
僧侶「むんっ!」グサッ
料理人「!?」
料理人(頭に指を押しつけられ――)
僧侶「喝ッ!!!」
料理人「うわあああああ!?」
僧侶「“念”を込めました」
料理人「ねん……?」
僧侶「今後はあなたが余計なことをしようとすれば、頭が痛くなり、それを防ぐでしょう」
料理人「まるで孫悟空が頭につけるアレですね」
僧侶「本来は、ダイエットしたい人が食べるのを抑えるため、といった使い方をする術なのですが」
僧侶「あなたにも効果があるはずです」
料理人「へぇ~……」
料理人「まだなんともいえないけど……すごい人を紹介してくれてありがとう」
女「どういたしまして」
料理人(ああいう妙な知り合いが多いよな、お前って)
料理人「うっ……!?」ズキッ…
料理人「いででででで……!」
女「まーたなにか余計な一言いおうとしたみたいね」
料理人「ふんふ~ん」ジャッジャッ…
料理人「よし、できた!」
料理人(だけど、ここらで隠し味入れたらもっとおいしくなるかも……)
料理人「ぐおっ!?」ズキッ…
料理人「や、やめとこう」
弟子「?」
息子「こっちの卵料理もおいしい!」
料理人「ありがとうございます」
料理人(親子で鶏肉と卵食べるって、ギャグみたいな光景……)
料理人「ぐうっ!?」ズキッ…
父「?」
息子「?」
料理人(また余計なこというのを、止めてくれた……)
料理人「もっとだ! もっと生地を練る!」
弟子「はいっ!」グニグニ
料理人(女の子の胸を揉むイメージで――)
料理人「くあっ!?」ズキッ…
料理人「えぇと……優しく揉んであげなさい」
弟子「? はいっ!」グニグニ
料理人「おかげさまで上手くいってるよ。余計なことをしなくなったし、いわなくなった」
女「ホント、よかった! ……だけど」
料理人「だけど?」
女「こんな方法で、性質を変えちゃってよかったのかな」
女「“余計なことをしちゃう”ってのも、あんたの個性だったわけだし」
料理人「個性なんて立派なもんじゃないよ。ただの欠点だよ、欠点」
料理人「それよりさっき、また料理対決のオファーがあったんだけど……」
女「こないだの対決、結構評判よかったらしいからね。どうするの?」
料理人「もちろん出る! 今度こそライバルに勝つ!」
ライバル「よく怖気づかずに出てきたな」
料理人「怖気づく? どうしてだ?」
ライバル「こないだ、あんな惨敗したばかりだってのに……また恥をかくつもりか?」
料理人「欠点は克服した……今日はお前に勝つ!」
ライバル「フッ、やってみろ! 今日も叩き潰してやる!」
料理人「行ってくる!」
弟子「頑張って下さい!」
女「頑張ってね……」
料理人「どうした? 顔色が悪いけど……」
女「ううん、なんでも……ちょっと疲れ気味なだけ……」
料理人「そうか、ならいいんだけど」
ワァァァァ……!
ライバル(前回はあいつの自爆に救われたからな……今度こそ完璧に勝つ!)
料理人(もう余計なことはしない! ブレーキをかけた料理を作って勝つ!)
料理人「ここでオリーブオイル入れて……」タラーッ…
料理人(味見……)モグッ
料理人「よし、これでいい!」
料理人(これ以上余計なことはしない! この料理を出せば勝てる!)
弟子「……あの」
料理人「なんだ? 対決中だぞ」
弟子「実は……」
弟子「はい……本人が思う以上に具合が悪かったみたいで……それで救急車で……」
料理人「……!」
弟子「すいません! 終わってから伝えた方がいいと思ったんですけど……」
ライバル(なんだ? 何があった?)
料理人「もし、終わってから伝えられてたら、俺はお前を怒鳴りつけてただろう」
弟子「師匠……」
料理人「火を止めて、と」カチッ
料理人「俺は行く! あいつのところに! たとえ何もできなくても!」
料理人「……!」ズキッ
料理人(やっぱりこれも……余計なことになるのか!)
料理人「あいつのところに駆けつけるのが、余計なこととは思わない!」
料理人「どんなに頭が痛くても、戦いを放り出しても、俺はあいつのところに駆けつける!」
料理人「うおおおおおおおおおおおおおおおっ!!!」ドドドドドッ
弟子「師匠ーッ!」
司会者「なんだァ!? 料理人選手、どこかへ走り去ってしまいました! 試合放棄か!?」
ライバル「……!?」
料理人「おい、大丈夫か?」
女「あれ……? あんた、なんでここに……。料理対決は……?」
料理人「放り出してきちまった」
女「どうして……せっかくリベンジの機会だったのに……」
料理人「別に。俺はタレントやってるわけじゃないしさ」
女「バカ……」
料理人「また余計なことしちまったな」
女「ホントだよ……。だけど……ありがとう」
料理人「お医者さんに聞いたら、色々疲労が溜まってたみたいだな。ゆっくり休めよ」
女「うん……」
料理人「あ……!」
ライバル「さっきの勝負は俺の勝ちだ」
料理人「当然だ。俺はお前から逃げ出したんだからな」
ライバル「――なんてな」
料理人「?」
ライバル「お前の料理を味見した……。あれがあのまま完成していたら、おそらくお前の勝ちだっただろう」
料理人「そんなのどうなってたか分からないだろ」
ライバル「とにかく、俺たちの決着はまだついてない! またいずれ勝負だ!」
料理人「ああ!」
ライバル「ちなみに、俺とお前の料理は会場で振る舞われたから安心しろよ」
料理人「そりゃどうも」
料理人(くそっ、俺と違ってあえて粋なことをするのが得意な奴め!)
料理人(対決を放り出した件は、ライバルのおかげもあってある種の美談で片付けられ――)
料理人(俺はペナルティを負わずに済んだ)
料理人(だが、その代償に――)
料理人「すいません、また元に戻ってしまったんですけど……」
僧侶「まさか、あの術を自力で解除するとは……驚きです」
僧侶「あの術は、本人が強引に解除してしまうと、もはや二度かかることはありません」
料理人「ってことは……」
僧侶「はい、元通りということで」ニコッ
料理人「そんなぁ……」
料理人(結局、俺は元通りになってしまった。だけど――)
肥満女「おいしいわぁ~!」
料理人「いい食べっぷりですけど、また太りましたね!」
肥満女「なによそれ! だけどおかわり!」
会社員「あれ以来、辛いものも食べれるようになったんだ」
料理人「へぇ~、ひょっとして二枚舌なんじゃ?」
会社員「私はウソなどつかないよ!」
女「ありがと」
女「おいしい! やっぱり料理に関しては大したもんだわ」
料理人「これをかけるともっとおいしくなるぞ!」パッパッ
女「また勝手なことを……!」
料理人(しまったぁ!)
女「ん? だけど、珍しくホントにおいしくなってる! うん……やるじゃん!」モグモグ
料理人(これが……俺の“味”だもんな)
おわり
元スレ
審査員「これは美味い!!!」料理人「ここからが本番です! これをかけてみて下さい!」
https://hebi.5ch.net/test/read.cgi/news4vip/1604487910/
審査員「これは美味い!!!」料理人「ここからが本番です! これをかけてみて下さい!」
https://hebi.5ch.net/test/read.cgi/news4vip/1604487910/
コメント一覧 (11)
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- 2020年11月04日 23:10
- リンカーンで見たなこんなの
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- 2020年11月05日 00:19
- マグマは?
-
- 2020年11月05日 00:19
- ソーマの熊メンチやんけ
-
- 2020年11月05日 00:32
- 中華一番のジュチやん。
-
- 2020年11月05日 00:34
-
面白かった
-
- 2020年11月05日 00:48
- ジャンは審査員が敵だから頻繁にいかに食わせるかみたいな展開やるよな
-
- 2020年11月05日 11:23
- ながい
-
- 2020年11月06日 00:34
- おもしろいね
余計なものを加えてしまう、というクセの描き方がよかった
-
- 2020年11月06日 07:53
- 料理の鉄人という番組で、
鉄人は、本番中に暴言をはきまくりだったと暴露されてたなw
女性審査員「これは、あまり・・・・」
超有名料理人「てめーなんかに何がわかるんだよ。」
と、本番中に、ガチで言ってたらしいwww
そりゃ、番組おわるわなw
-
- 2020年11月06日 08:59
- ※9
らしいってソースは?
終わったの鹿賀丈史の病気と鉄人交代で人気なくなっただけだろ
-
- 2020年11月06日 09:30
- ※10 すまん、普通に、表にでてる話だった。道場六三郎が高田万由子・・・。
それぐらい真剣にやっていたというエピソードだったw
終わったのも別な理由なんだな。
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