男「フードコートでメシ食ってる家族連れ見てると涙が止まらねえw」女「趣味悪……」
夫「ほら、ラーメンだぞ」
妻「熱いからフーフーしてね」
子「うん!」フーフー
男「涙が止まらなくなるよな。家族でフードコートって……」
女「なにそれ、もっといいレストラン行けよ的な意味? 趣味悪……」
男「……」ポロッ
女「え?」
男「……」ボロボロ
女「ちょっと……泣きすぎじゃない!?」
男「悪い……」ゴシゴシ
女「どうしたの? なんで泣いたの?」
男「気になる?」
女「そりゃ気になるって」
男「分かった……全てを話そう」
…………
……
兄「そらっ!」ヒューンッ
弟「よっ」パシッ
兄「ナイスキャッチ!」
兄「もう日も暮れるし……キャッチボールはこの辺にしよう」
弟「うん、分かった!」
兄「じゃあ……帰ろうか……」
弟「うん……」
母「どこほっつき歩いてたの、まったくぅ!」
バシッ! ビシッ! バシィッ!
兄「いだっ! いたいっ!」
弟「いたいよ……」
父「ガキ二匹でビービーわめいてんじゃねえ! うるっせえな!」
ドカッ! バキッ! ガッ!
兄「あぐっ! やめてよっ……!」
弟「うわぁん……!」
弟「……うん」
兄「父さんも母さんも……何かあるとすぐぼくらを殴って……」
弟「ひどいよね……」
兄「もっと大きくなったら、二人でこんな家出ていこう!」
弟「……そうだね、兄ちゃん!」
叔父「やぁ、お久しぶり」
叔母「こんにちは」
兄「こんにちは!」
弟「こんにちはー!」
叔父「ほら、おこづかいだ」
兄「ありがとう!」
兄(おじさんの夫婦は、ぼくらの親とちがってすごく優しい……)
父「ああん? うちのガキのどっちかを養子に欲しいって話か」
叔父「ああ、うちは子供がいないし、兄さんも大変だろうし……」
父「まあな。いつもやかましいし、どっちか消えればちょうどいいや!」
叔父「だったら……」
兄「……!」
兄(ぼくと弟のどっちかだけは、この地獄から抜け出せる……)
叔母「やっぱり弟君じゃない?」
叔父「そうだなぁ、兄さんも長男は手元に残したいだろうしな」
叔母「私もそう思うわ」
兄(このままじゃ、弟が選ばれてしまう……!)
兄(つまり、この家に残されるのはぼく……!)
兄「うん!」
兄「ところで、お前はいっつもおねしょばかりでホント大変だよな!」
弟「え……?」
兄「算数もろくにできないしさ、すぐ物を壊すし、泣くし、暴れるし……」
弟「……?」
兄「なぁ、そうだろ?」
弟「う、うん!」
叔父「……」
叔父「兄君を引き取らせてくれるかい?」
父「いいぜ」
母「その代わりお金の方は……」
叔父「ええ、大切な我が子を譲って頂くんです。それなりの謝礼は……」
母「ありがとうございますぅ~!」
弟「うん……」
兄「これからは一人になっちゃうけど、しっかりやるんだぞ!」
弟「大丈夫だよ、兄ちゃん」
叔父「それじゃ、行こうか」
叔母「今日からは私たちが両親よ」
兄「はいっ!」
ブロロロロロ…
叔父「ほーら、クリスマスプレゼントだ!」
兄「クリスマスに何かもらうなんて生まれて初めて!」
叔父「ハハハ、そうかそうか」
しかし――
兄「……」
兄(弟はどうしてるんだろう……)
兄「家が……なくなってる!?」
兄「あ、あのっ! おばさん!」
隣人「おや、久しぶりだね。どうしたんだい?」
兄「弟たちがどうなったか知りませんか!?」
隣人「たしか……お父さんがものすごい借金をこさえちゃって……悪い人たちと揉めて……」
隣人「夜逃げみたいな形で逃げちゃったってのは聞いてるけど……」
兄「夜逃げ……!」
隣人「さぁ……」
隣人「ただ、あの様子じゃ、とてもまともに子育てできると思えないし……」
隣人「どこか施設にでも入ることになってればいいんだけど……」
兄「……!」
兄(あんな親は生きようが死のうがどうでもいい……。だけど、弟は……弟は……)
兄(弟はどこ行っちゃったんだ……!)
兄「依頼をしたいのですが……」
探偵「人捜しをしたいとのことでしたね? どなたを?」
兄「俺の……弟です。子供の頃に生き別れた……」
兄「自分では無理だったので、こうしてプロにお願いしようと……」
…………
……
女「そんな過去があったなんて……」
女「それで? 弟さんは見つかったの?」
男「見つかったよ」
女「よかった、生きてたんだ! で、どこにいるの?」
男「あそこで家族連れてラーメン食ってるよ」
女「えっ!?」
男「ああ……」
女「それで、もう再会したの?」
男「しないよ。こうして遠くから見てるだけさ」
女「どうして……!」
男「今更会えるわけないだろ。俺は嘘までついてあいつを見捨てた、最低のクズ兄貴なんだからよ……」
女「向こうは会いたがってるかも……」
男「ありえねえよ、そんなの!」
男「!?」
女「フードコートの店員さん……?」
店員「あの家族はよく来るが、あの人はあんたを恨むような人じゃねえ」
店員「涙を流したら、塩分が不足してるだろう。こいつはおごりだ。食いねえ」ゴトッ
男(塩ラーメン……)
男「ありがとうございます!」ズルルッ ズズッ
男「よ、よし……食ったら勇気が湧いてきた」
妻「よく食べたわねえ」
夫「よしよし」
男「……」スタスタ
男「あ、あの……」
夫「はい?」
夫「――ッ!」
夫「兄ちゃん!? もしかして兄ちゃんか!?」
男「!」
男「お前どうして、すぐに俺だって……」
夫「だってずっと会いたかったんだもん! だけど兄ちゃんの幸せ壊しちゃいけないと思って……」
男「お前……!」
男「俺は……俺はずっと謝りたくて……! あの時ウソをついて……!」
夫「いいんだよ、兄ちゃん。俺は兄ちゃんにはもっといい暮らししてもらいたいと思ってた」
夫「だから、あの時も……」
男「全て分かってて、俺のウソを否定しなかったのか……」
夫「……うん」
男「ううう……すまんっ! すまんっ! こんな出来た弟を俺は……ッ!」
夫「兄ちゃんこそ……!」
子「……」キョトン
妻「これはいったい……?」
女「えーと、詳しくはあとで説明しますんで」
男「実はさっき食べちゃったけど……久しぶりにお前とメシ食いたいな」
夫「俺もだよ!」
店員「だったらサイドメニューはどうだい? おつまみぐらい食えるだろ」
男「それなら食べれそうだ」
夫「じゃあお金は二人で……」
男「そうだな」
子「ぼくも食べるー!」
妻「コラコラ、邪魔しないの」
女(よかったね……)
夫「うん……!」
モグモグ… パクパク…
客(なんであそこの二人、フードコートで涙流しながらメシ食ってんだろ……?)
― 終 ―
元スレ
男「フードコートでメシ食ってる家族連れ見てると涙が止まらねえw」女「趣味悪……」
https://hebi.5ch.net/test/read.cgi/news4vip/1604320231/
男「フードコートでメシ食ってる家族連れ見てると涙が止まらねえw」女「趣味悪……」
https://hebi.5ch.net/test/read.cgi/news4vip/1604320231/
コメント一覧 (5)
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- 2020年11月03日 00:10
- もうひと捻りほしかったな
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- 2020年11月03日 00:44
- ステーションバー怪人みたいなやつかと思ったらぜんぜん違った
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- 2020年11月03日 00:55
- 不味くはない、けどもう一度食べたいほど美味しくはない。そんなラーメンのようなSS
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- 2020年11月03日 12:51
- 読んでないけど感動した!
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- 2020年11月03日 15:24
- フードコート便利だからいいじゃんねwww
まあ嫁も子供もいねえから行く機会ねえけど…