男「ドッキリ仕掛けられてキレる奴は心の狭いゴミなんだよ」
仕掛け人「大丈夫、娘さんはご無事ですよ」
芸人「え?」
仕掛け人「実はこれ……ドッキリなんです!」
芸人「なんやねーん、もーう! 悪趣味すぎるわ~!」
仕掛け人「ドッキリ大成功~!」
男「よし、このドッキリも上手くいったな。視聴率を稼げるぞ」
部下「はい!」
男「ドッキリは未だに視聴率を稼げるコンテンツだからな。ドッキリを制す者がテレビを制するんだ」
部下「ただ……」
男「?」
部下「この間、痴漢冤罪ドッキリのターゲットにした俳優さんが激怒してるらしいんですよ……」
部下「どうしましょう?」
男「ちっ、面倒だな。実害があったわけじゃないだろうに」
男「ドッキリ仕掛けられてキレる奴は心の狭いゴミなんだよ」
部下「で、ですよね」
男「仕方ないから、菓子折りでも送って謝罪しとけ」
男「ほら、飲めよ」
部下「いただいてます……」
男「過激なドッキリはやめろなんて世間の声もあるが、ドッキリなんて過激なぐらいでちょうどいいんだ」
男「なんたってドッキリなんだからな。ターゲットになーんも迷惑かけてねえ」
部下「おっしゃる通りです」
男「ってことでほら、お前……これ飲めよ」
部下「え、煙草の吸殻入ってますけど……」
男「いいから飲めよ。飲まなきゃクビにしちまうぞ」
部下「そんな……」
部下「え……」
男「ドッキリだよ~ん!」ベロベロベロ
部下「な、なんだ……」
男「ハハハ、驚いたか? アハハハハ!」グビグビ
部下「飲みすぎじゃ……」
男「俺はドッキリの天才だ~~~~~~~~~~!!!」
――――――
――――
――
――
男「……ん」
男「いてて……頭痛がする……昨日は飲みすぎたな」
男「おーい、水くれ、水!」
男「二日酔いがひどいんだ……水くれ!」
妻「……」
男「朝っぱらから、そんな神妙なツラしてどうしたんだよ」
妻「あなた……」
男「?」
妻「離婚しましょう」
男「へ?」
妻「毎晩午前様で帰ってきて……もう愛想尽きちゃったのよ」
男「俺は一流テレビマンだぞ!? 人付き合いってもんがあって……」
妻「もう決めたことなの。はい、離婚届」スッ
男「……!」
妻「早く判子押してよ」
男「待ってくれ……もう一度話し合おう! な、頼む!」
男「は?」
妻「ぜーんぶウソ! ドッキリでしたー!」
男「お、お前ふざけるなよ! 朝からこんなイタズラ――」
妻「あら、ドッキリなのに怒るの? 実害ないのに怒るの?」
男「!」ハッ
男「い、いや……うわぁ~、やられちゃったな~!」
妻「ドッキリ大成功!」
バタンッ!
キンコーンキンコーン!
男「!? なんで改札が閉じるんだよ……」
駅員「お客さん……この定期、偽造ですね?」
男「は? なにいって……」
駅員「ちょっと事務所まで来てもらいましょうか。警察も呼びますんで」
男「俺は偽造なんてしてないって!」
男「……へ?」
駅員「ドッキリでした~!」
男「なに考えてんだ! 人の定期券を偽造呼ばわりしやがって!」
駅員「おやおや、ドッキリにキレるんですか?」
男「ぐ……!」
男「いやー、いいドッキリだったよ……。やられちゃったー……」
駅員「ドッキリ大成功!」
男(お、電車が来た……)
ドンッ!
男「うわっ!」グラッ
会社員「……」ニヤッ
男「あっぶねえ! 何しやがる!」
男「はぁ? 死ぬとこだったんだぞ!」
会社員「もちろん、ちゃんと死なないように手加減して押しましたよ」
会社員「それなのに、怒るなんて……」
男「うぐぅ……」
会社員「ドッキリ大成功!」
パチパチパチパチパチ…
男(周囲の奴らまで……!)
部下「どうしました? 二日酔いですか? 昨日は飲みまくりましたからね~」
男「いや、酔いはもう覚めたけど……」
男(なんなんだ、さっきから……。今日は何かおかしい……)
男「悪いけど、コーヒー淹れてくんねえか?」
部下「分かりました」
男「ありが……」グビッ
男「ブッ!?」
男「ごほっ、げほっ! なんだこりゃ……青汁じゃねえか!」
部下「コーヒーと見せかけて青汁を飲ませるドッキリをやってみました!」
男「やってみましたじゃねーよ! 俺をナメてんのか!」
部下「あれ? 怒るんですか? ドッキリされてキレる奴はゴミっておっしゃってましたよね」
男「確かにいったけどさぁ……」
部下「ドッキリ大成功!」
上司「このところ、君のドッキリ企画、過激すぎるんじゃないかね?」
男「しかし、視聴率を取るためです。実際、数字は取れています」
上司「それなんだがね、これからのテレビはもっと健全な内容を放送する時代なんだよ」
上司「というわけで、君はクビだ」
男「は?」
上司「懲戒免職だ。今日中に荷物をまとめて、ここから出ていってくれ」
男「そんな……いきなりクビって……」
男「は?」
上司「ドッキリだよ~ん」
男「……」
上司「ビックリした? どう? ビックリした?」
男「しました……」
上司「ドッキリ大成功!」
男(なにもかもおかしい……)
男(今朝から皆が俺にドッキリをかけてくる……一体どうなってんだ?)
男「とりあえず一服して、心を落ち着けて……」シュボッ
警官「コラーッ!」
男「え?」
警官「こんなところでタバコを吸ってはいかーん!」
男「いかんって、ここ喫煙所ですよ?」
警官「黙れ黙れ! 喫煙所で吸うのも違法になったんだ! 判決、死刑!」チャッ
男「ちょっ、拳銃!?」
男「ひっ……!?」
警官「ドッキリでしたー!」
男「……!」
警官「さ、気にせず吸ってくれたまえ」
男「いえ、もういいです……さよなら……」
警官「ドッキリ大成功!」
男「わ、笑ってません!」
チンピラ「ドッキリでしたー!」
ドライバー「タクシーで轢き殺してやる!」ブロロロ…
男「わーっ!」
ドライバー「なーんちゃって! ドッキリタクシーだよーん!」
主婦「この子、あなたの子なのよ!」
男「だ、誰!?」
主婦「ドッキリ大成功!」
子「やったね、ママ!」
男「ドッキリやだ……ドッキリ怖い……」
黒服「……」ザッ
男「どなた……?」
黒服「あなたを拉致らせてもらう」ガシッ
男「へ……?」
ドタバタ…
男「わっ! なにをする――」
バタンッ! ブロロロロロ…
男「もご……もご……」
男(これもおそらくドッキリなんだろうが――)
男(一体どうしてこんなことになったんだ……!?)
男(俺がドッキリを仕掛けすぎたから、神様がバチを与えたのか……!?)
男(どうすればこの状況から抜け出せるんだ……!?)
ブロロロロロロロ…
男「う、うう……」
ズラッ…
男(どこだここ……?)
男(暗くてよく見えないが、大勢が俺を囲んでるってことは分かる)
代表者「待っていたよ」
男「俺をどうするつもりだ……」
代表者「これより、この全員で君をリンチする。覚悟してもらおう」
男「は……?」
代表者「自分のやってきたことをよく考えるんだな。せいぜい後悔するがいい」
男(ドッキリを繰り返してきたことか?)
男(あれは仕事でやったんだ! 視聴率のためにやったんだ! 俺は悪くねえ!)
男(それに、どうせこの状況だって……)
男「……ふん。覚悟だと? 後悔だと?」
男「そんなもんするわけないだろうが!」
男「する気もないリンチなんて怖くもない!」
代表者「……ドッキリ?」
代表者「そんなわけないだろうが、君は本当に死ぬのだ」
男「え……?」
バキィッ!
男「うげっ!」
代表者「さあ、みんな。こいつを殺そう。楽には死なせず、徹底的に苦しめてからな」
男「あ……ああ……」
妻「楽しみだわ~」
部下「あんたにゃずっとムカついてたんだ!」
上司「やっと局の問題児を処分できるよ」
男「ひいい……!」
代表者「諦めたまえ。君の味方はもはや一人もいない」
男「ま、待って下さい!」
代表者「ん?」
男「私は長年ドッキリを仕掛けてきたせいか、それで自分が偉くなったと勘違いしてしまい――」
男「調子に乗ってました! 傲慢になってました!」
男「ドッキリを仕掛けられるってことがこんなにキツイことだとは思いませんでしたぁ!」
男「だからぁ……だから!」
男「どうか許してくださぁいいいいいい!!!」
代表者「……」
男「……え」
代表者「その謝罪を聞きたかったんです」
代表者「あなたの口から、その言葉を……」
男「あ……あなたは……! 俺がドッキリを仕掛けて激怒させてしまった俳優……!」
代表者「そうです。全ては私が仕組んだこと……これであなたへのお仕置きは終わりです」
代表者「みんなで仲良く帰りましょう!」
男「はいっ!」
男「え?」
代表者「あんな謝罪ぐらいでお前を許すと思ったのか?」
代表者「今お前を許してやった茶番劇はドッキリだ。つまり――」
男「つまり……?」
代表者「お前は本当に死ぬんだ。今ここでな」
男「ひっ……!」
代表者「さぁ、みんな。こいつを叩きのめせ。警察にも手を回してあるから罪にはならない」
男「や、やめて……嫌だ……」
ワァァァァァ……! ウオォォォォォ……!
男「うぎゃぁぁぁぁぁぁぁ……!!!」
――――
――――――
男「……ん」
男「いてて……頭痛がする……」
妻「あら、あなた。起きたのね。ずいぶんうなされてたけど……」
妻「今、お水持ってくるわ」
男「……」
男「!」ビクッ
男「ヒ、ヒヒヒ……分かってるぞ。この中には水じゃなく別なもんが入ってんだろ?」
男「そういうドッキリなんだろぉ? 俺にはちゃんと分かってんだ!」
妻「なにいってるのよ、寝ぼけてるの……?」
男「寝ぼけてなんかいないさ。もう俺は騙されない。ドッキリの天才だからなぁ!」
男「ヒ、ヒヒヒ……ヒヒヒ……」
妻「はぁ?」
男「今時の変装技術はすごいからな! そういうドッキリも十分あり得る!」
男「となると、隠しカメラも仕掛けてあるに違いないな! ここか? ここか? ここかぁ!?」
妻「どうしちゃったの……」
男「さぁ、ドッキリを仕掛けてこい! 俺は逃げも隠れもしないからよォ!」
男「クビにされようが、銃で撃たれようが、リンチされようが、笑って許してやるからよォ!」
男「早くドッキリを仕掛けてこいよォ!」
男「俺はドッキリの天才だ! だからどんなドッキリが来るかもちゃーんと分かってるんだ!」
男「絶対キレやしないから、安心して仕掛けてこいってぇ!」
男「ヒャ~ッハッハッハッハッハッハッハ……!」
― 完 ―
コメント一覧 (15)
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- 2020年10月18日 21:03
- 世にも奇妙な物語感あるな
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- 2020年10月18日 21:40
- 世にも奇妙なでありそうだよなぁ
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- 2020年10月18日 21:46
- ドッキリとかサプライズ仕掛けるやつはマジでクソ。
あんなもん、仕掛ける側の自己満足でしかない。
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- 2020年10月18日 22:02
- 最後壊れちゃうと途端につまらなくなる
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- 2020年10月18日 22:44
- 開幕からオチを予想できる話を作るな
予想通りのオチにするな
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- 2020年10月18日 23:56
- 実際世にも奇妙な物語であったろ
最終的に主人公のドッキリディレクターが死ぬやつ
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- 2020年10月19日 03:45
- 文句言うなら自分で書けば良いのに
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- 2020年10月19日 10:27
- 越えちゃいけない一線てのはあるわな、娘が誘拐されたとかはダメなやつwww
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- 2020年10月19日 17:44
- >>8
やる相手も選ぶべきだと思うよ。
お笑い芸人なら許されるとは言わんがあの人らはそういうのをされてチャンスと思うようなのばっかだろうけど、役者さんとかは笑いを取るために演技力磨いたりアドリブできるようにしてる訳じゃないだろうし、やられて不快通り越してガチギレするの居てもおかしくないだろうし。
狭量だと言うのも居るだろうが、みんながみんなお笑い芸人メンタルじゃないし。
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- 2020年10月19日 12:09
- こういうのって事前に知らせが来るやらせばかりだと思ってた。
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- 2020年10月19日 12:11
- こういうのって事前に知らせが来るやらせばかりだと思ってた。
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- 2020年10月20日 09:43
- 芸人は金もらえるし注目される機会だからな
俺も金もらえて次の仕事に繋がるならドッキリ許容するわ
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- 2020年10月23日 14:39
- 日本のドッキリがつまんないのはわかる
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- 2020年10月28日 22:07
- 地獄少女みたい
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- 2020年11月02日 13:16
- お笑い芸人だと違うかもしれないけどそれだって謝るべきだし
役者とか相手ならなおさら
テレビ局員のプロデューサーとかには仕掛けないんだよね。そっちのほうがおもしろくないかな
あくまでも自分は保身ってやり口が気持ち悪いんだよ