商人「今日も……売れませんでしたね」奴隷少女「もっと工夫しろ……」
奴隷少女「もっと工夫しろ……」
商人「工夫しろ、とおっしゃいますと?」
奴隷少女「商品(わたし)の横で突っ立ってるだけなら、案山子でもできる」
奴隷少女「売り方を考えろ! どうすれば私が売れるのかを!」
商人「は、はいっ!」
商人「なんとか考えます!」
奴隷少女「私を失望させるなよ……」
商人「いらっしゃいませー!」
商人「奴隷はいかがですかー!」
商人「いらっしゃいませぇぇぇ!!」
商人「奴隷はいかがですかぁぁぁ!!」
商人「いぃらっしゃいませぇぇぇぇぇ!!!」
商人「奴隷ィはいかがぁですかぁぁぁぁぁ!!!」
奴隷少女「……」
奴隷少女「やめろ」
商人「え」
奴隷少女「工夫というのはまさか、ただでかい声を張り上げるだけのことか?」
商人「ええ、まあ……」
奴隷少女「これなら猫でも鳴かしておいた方がまだ宣伝効果があるわ! このたわけがッ!」
商人「申し訳ございません!」
奴隷少女「おい」ギョロッ
商人「ひっ!」
奴隷少女「例えば宝石を捨て値で売れば、誰にだって売れるし、誰だって買うだろう」
奴隷少女「それでは意味がないのだ!」
奴隷少女「よいか……奴隷にとって、どこの誰に買われるかというのは死活問題だ」
奴隷少女「いわば、就職活動のようなもの……」
奴隷少女「安売りすればいいというものではないッ!」
商人「おっしゃる通りです……」
奴隷少女「ならばもっと真剣に考えろ! どうすれば私をより高く売り込めるかを!」
奴隷少女「砂漠で砂を高値で売れるぐらいでなければ、真の営業マンとはいえんのだ!」
商人「ははーっ!」
商人(金持ちっぽい奴が来たぞ……よーし、営業トークをかましてやる!)
商人「いらっしゃいませ、奴隷はいかがですか?」
紳士「今、間に合ってるから……」
商人「あ、そうですか……」
奴隷少女「粘りが足らん! お前はろくに混ぜてない納豆か! 100回は混ぜろ!」
商人「ひいい、ちゃんと混ぜます……」
商人「あの、試しに抱っこはいかがです?」
青年「へぇ~、いいの?」
商人「どうぞどうぞ」
青年「じゃあ、どっこいしょ」ダキッ
奴隷少女「……」ニィッ
青年「ひっ! あ、あのまた今度で……」タタタッ
商人「ああっ!」
客「いや……」
商人「タワシもつけます!」
客「いらない……」
商人「なんなら私もつけちゃう!」ウフッ
客「だから買わないって! 気持ち悪いな!」
商人「そうですか……」
奴隷少女「おまけをつければいいというものではないわ!」
商人「奴隷を買うごとに1ポイント、10ポイント集めれば、粗品がもらえまーす!」
奴隷少女「商品が私しかいないのに、そんなもん始めてどうする!」
商人「神様……!」
商人「どうか、彼女が売れますように……!」パンパンッ
奴隷少女「とうとう神頼みか……!」
奴隷少女「……」
奴隷少女「お前には失望したぞ」クルッ
商人「え!」
奴隷少女「今日までご苦労だった。後は勝手にしろ」
商人「……!」
奴隷少女「!」
奴隷少女「見苦しいぞ……」
商人「時間を……少しだけ時間をください!」
商人「必ずや、あなたを高く売れる商人になってみせます!」
奴隷少女「……その目、本気のようだな」
奴隷少女「いいだろう、しばしの暇をやろう」
奴隷少女「見捨てられたくなくば、必死で努力しろ。蟻地獄に落ちたアリのようにあがけ」
商人「は……ははーっ!」
商人(こうなったら、優れた商人にアドバイスを聞くしかない……)
商人「あなたはなぜ、国内武器シェアNo.1商人に上り詰めることができたのですか?」
武器屋「私は鍛冶師も兼ねているが、やはり他の剣に比べて切れ味がいいことがウリだね」
武器屋「他の商品に負けない、絶対的な価値!」
武器屋「これが私が武器市場で天下を取れた理由だと思っているよ」
商人「なるほど……」
薬師「“プレゼン”だろうね」
商人「プレゼン?」
薬師「プレゼンテーションさ。僕の傷薬がいかに優れてるか、資料を渡してしっかり説明してやったのさ」
薬師「商品がいいだけではダメだ。どう優れてるかをちゃんとアピールしなければ売れないよ」
商人「ふむふむ……」
商人「味だけじゃダメですか」
料理人「ダメです」
料理人「どんなにおいしくても、見た目がイマイチなら、料理は流行りません」
料理人「昔の私は“味がよければいい”と、盛り付けや色合いを軽視してしましたから」
商人「勉強になります」
……
……
商人「ただいま戻りました」
奴隷少女「さて、さっそく私を売ってもらおうか」
商人「その前に……」
奴隷少女「?」
商人「あなたに、これを着てもらいましょうか」サッ
商人「あなたを売るためです。着て下さい」
奴隷少女「ふざけるなよ。私は奴隷、こんな上等なものが着れるか!」
商人「シャラップ!!!」
奴隷少女「!」
商人「私は悟りました……。ビジネスは私だけ張り切っても無意味なのだと」
商人「商品も磨かねばならないと!」
商人「あなたには絶対これを着ていただきます!」
奴隷少女「ふん……一皮、いや十皮は剥けたようだな」ニィッ
奴隷少女「うむ」
商人「メイクを雇いました。軽く化粧もしましょう」
奴隷少女「うむ」
商人「それから、歩き方の練習……礼儀作法……」
…………
……
商人「美しい……」
奴隷少女「世辞はよせい」
商人「お世辞なものですか。許されるなら、今すぐあなたを抱きしめたいですよ」
奴隷少女「別にかまわんぞ」
商人「ふふ、ご冗談を……。売り出す前の商品に手をつけるような真似はいたしませぬよ」
奴隷少女「心得ておるな」
商人「私を試しましたね。さっそくあなたを売り出すショーを開催しましょう!」
商人(でかい会場を貸し切って……いよいよ奴隷ショーの開始だ!)
商人「皆さま、大変お待たせいたしました!」
商人「私が発掘し、手塩にかけて磨き上げた珠玉の奴隷の入場です!」
奴隷少女「……」ジャン!
オオオオオオオッ!!!
奴隷少女「……」スッスッ…
「なんて美しい……!」 「綺麗だ……」 「神々しさすら感じる!」
商人(お見事です! まるで一流モデルのような風格! 否――それ以上!)
ワァァァ… ピーピー!
商人(さぁ、決めるのです! 練習したあの――)
商人(必殺必中の投げキッスを!)
奴隷少女「うふ~ん」チュパッ
ウオオオオオオオオオオオオオオオッ!!!
商人(この瞬間、会場はまるで活火山が噴火したかのような盛り上がりを見せたのだった)
商人「彼女にいったいいくら値をつける!? 客人(セレブ)たちよ!」
奴隷少女「さぁ……私を買って。損はさせないわ」チュパッ
ウオオオオオオオオオオオオッ!!!
「100万G!」
「200万!」
「500万!」
「1000万出すぞ、ワシは!」
商人(どんどん値が釣り上がる! この時点ですでに投資の元を取れる額!)
商人「10億出たァ!」
商人「さあ、他にいないか!? 他にいないかァ!?」
ザワザワ…
商人「商談成立ゥ!!!」
商人「持ってけドロボー! ……じゃなかった持ってけセレブ!」ビシッ!
奴隷少女(ふん……成長したものよ)
奴隷少女「うむ、お前のおかげだ」
商人「いえいえ、商品がよかっただけのことです」
奴隷少女「元気でな」
商人「あなたこそ……お幸せに」
ガシッ!
握手を交わす二人。
商人と奴隷の別れに涙はいらない――
多角的ビジネスを手掛ける国内有数の大商人となっていった。
商人「秘書君、今日の予定は?」
秘書「午前中はグループ社員への訓示、午後はギルドでの会議、夜は武具協会会長様と会食が……」
商人「ありがとう」
商人(やれやれ、今日も忙しいな)
秘書「商人様」
商人「なんだ?」
秘書「どうしてもお会いしたいという来客の方が……」
商人「アポも無しにか? すぐ追い払え」
秘書「それが……“奴隷”といえば、すぐ分かると」
商人「!」
商人「す、すぐ通したまえ! 最高のお茶を出してな! 早く!」
商人「お久しぶりです!」
奴隷少女「あのひよっ子が……立派になったものだ」シュボッ
奴隷少女「……」フゥ~
商人「葉巻がお似合いですよ。あなたの年齢で吸うのは推奨されてませんが」
奴隷少女「お子様向けの健康志向の葉巻だ。案ずるな」フゥ…
商人「フッ……威厳を出しつつ、健康にも配慮する。流石です」
奴隷少女「大富豪に才能を見出され、財閥のビジネス部門を任されている」
商人「おおっ!」
奴隷商人「ついては、海外にも手を広げようと考えていてな」
商人「それはよいことですな。しかし、海外はなかなか一筋縄ではいかないでしょう」
奴隷少女「うむ、今までのセオリーが通用する相手ではない」
奴隷少女「そこでどうだ……。私たち、手を組まないか」
奴隷少女「私に10億の価値をつけ、今なお成長を続けるお前の力を借りたい」
商人「!」
奴隷少女「お前ならば断らぬと信じていた」
商人「私とあろう者が、久しぶりにワクワクしてきましたよ! こんな昂ぶりはあなたを売ってた時以来だ!」
奴隷少女「だいぶ退屈しておったようだな」
商人「私たち二人で、ビジネス界にさらなる革命を起こしましょう!」
奴隷少女「うむ……工夫することを忘れるなよ!」
― 完 ―
コメント一覧 (13)
-
- 2020年10月14日 23:51
- 面白いな
-
- 2020年10月14日 23:56
- どこが面白いん?
クソゴミやんけ
奴隷を題材にしてるクズや
-
- 2020年10月15日 02:41
- >>2
狭い世界に生きてんな
-
- 2020年10月15日 02:58
- 100円のコーラを1000円で売らんといかんね
-
- 2020年10月15日 03:41
- ゴルゴ13の娘と言われても信じる
-
- 2020年10月15日 04:15
- この手の物にしてはかなり面白いな。
漫画かアニメで見てみたくなった。
-
- 2020年10月15日 04:58
- 奴隷商人ってどっちやねんw
-
- 2020年10月15日 10:23
- 話の雰囲気的に奴隷の身分がそこまで低くないっぽいな
-
- 2020年10月15日 12:46
- 最初から奴隷が高圧的で商人がヘコヘコしてる理由がわからん……
-
- 2020年10月15日 17:58
- 力関係がイマイチわからんなwwwそういうプレイならわかるけどwww
-
- 2020年10月15日 22:36
- 奴隷ってなんだっけ
-
- 2020年10月16日 17:54
- ※9
そこは大事ではないしどうとでも理由付けられる
例えば奴隷は商人の所有物ではなく商人の更に上からの命令で売っていて扱いとしては商品である奴隷よりもこの商人のほうが立場が低い、とかな
-
- 2020年10月20日 19:38
- 奴隷の笑い方がこわいっぽいので商人だけの問題ではない
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