先輩「新入社員がどう見ても暴力団の跡取りなんだが……」
新人「よろしくお願いしやす!」
先輩「よろしく」
課長「君は仕事もできるし、面倒見もいいから、彼の教育係を頼むよ」
先輩「分かりま……」
先輩「!?」
新人「どうしやした?」
先輩(袖から入れ墨が見えてるぅ~!)
新人「へい!」
先輩「いきなりで申し訳ないんだけど、ご実家はなにを……?」
新人「あまり大きな声で話せる商売じゃございやせんが、“組”を少々」
先輩「組……!?」
新人「どうしやした? 汗がハンパなく出てますぜ」
先輩「いや、今日は暑いからね。アハハハ……」ダラダラダラ
新人「カチコミですかい!?」
先輩「カチコ……いや、仕事だよ仕事」
新人「了解ッス!」
新人「なんか道具(エモノ)は持っていきやすか!?」
先輩「(エモノて)いや、僕はだいたい手ぶらだね。なにか持っていっても構わないけど」
新人「そッスか」ゴソ…
先輩「……」チラッ
先輩(懐にピストルあるぅ~!)
先輩「今日のところは、こんなものかな」
新人「いやー、先輩のお仕事ぶり、拝見させてもらいやした! すごかったッス! マジ尊敬ッス!」
先輩「いや、あれぐらいどうってことないよ」
先輩(さて、先輩として……初日に酒ぐらいご馳走した方がいいよな? 本当はあまり関わりたくないけど……)
先輩「えぇと、よかったらこの後飲みに行かない?」
新人「へい! 喜んでお供させてもらいやす!」
新人「いえ、とんでもないッス!」
新人「ところで先輩……」
先輩「?」
新人「俺と……兄弟盃交わしてもらえねェですか」
先輩「さ、盃!?」
新人「お願いしやす!」
先輩(嫌だよぉ、こんなおっかないのと兄弟分になりたくないよぉ。僕はカタギだし……)
新人「全然かまわねッス!」
先輩「じゃ、じゃあ……これからも先輩後輩として仲良くやっていこう」
新人「へい!」
先輩「……」グイッ
新人「……」グイッ
新人「改めてお願いしやす! 先輩!」
先輩「へ、へい……(うつっちゃった)」
先輩「えぇと……今日は君にも仕事を手伝ってもらうよ」
新人「マジッスか! あざっす! 気合入れやす!」
先輩「じゃあ、僕に同行してもらうからね」
新人「へい!」
課長(なかなかよくやってるじゃないか)
先輩「いや、いいんだよ。最初のうちはしょうがないさ」
新人「この上は、この上はァ、指を詰めて……!」ジャキン
先輩「ひっ!」
先輩「詰めんでいい! 詰めんでいい!」ガシッ
新人「先輩……なんって優しい……! あんた聖人だァ……! 仏様だァ……!」
先輩(これが普通なんだよ!)
新人「へい!」
先輩「僕に同行して、しっかり話を聞いておいてね」
新人「バッチメモりやす!」
先輩「それと、社会人の基本は時間を守ることだ。絶対に遅刻しちゃいけないよ」
新人「分かりやした!」
得意先「こちらこそ」
得意先「いつも守って頂いてありがとうございます」
先輩「いえいえ、とんでもないです。仕事ですし、当然のことをしているだけです」
ペチャクチャ… ペチャクチャ…
新人「……」
新人(先輩……かっけえなァ……!)
先輩「まあね。上手くいってよかった」
プルルル…
先輩「はい、株式会社カイタイ……あ、はい、分かりました。すぐ向かいます」
先輩「仕事が入った。一緒に行こう」
新人「忙しいッスね」
先輩「忙しい時はとことん忙しい、社会人ってのはそういうものさ」
新人「へいっ!」
先輩「今をときめくIT企業なんかの事務所がいっぱい入ってるからね」
先輩「もっとも……僕らの仕事相手はその隣だけど」
新人「そッスね」
先輩「じゃあ今日もはりきって行こう!」
新人「一発かましてやりやしょう!」
先輩「いや……二発かな」
新人「あの……先輩」
先輩「なんだい?」
新人「ウチの父親(オヤジ)が……ぜひ先輩に会いたいといってて……」
新人「一度、実家に来てくれませんかね?」
先輩「実家……!」
先輩(暴力団の本拠地なんか行きたくねえよ……怖いよ……)
新人「お願いしやす! どうかこの通りでござんす!」
先輩「……」
先輩「分かった……行こう!」
新人「あざっす!」
新人「さっそく迎えを来させるんで!」
先輩「いや、そんなことしないで――」
ブロロロロロ…
新人「来たッス!」
先輩(黒塗りの高級車来たァァァ!)
先輩(“お車”が“送る魔”に聞こえるよ……。僕、帰ってこれるかな……)
新人「いいか、この方に粗相したら、指じゃ済まさねえからな! 腕ごといくぞ!」
黒服「へい」
先輩(余計なこというんじゃないよ!)
ブロロロロ…
先輩(神様~、助けて~!)
黒服「到着しやした」
新人「ご苦労、オヤジを呼んできてくれ」
黒服「分かりやした」
先輩「大きなお屋敷だね……」
新人「大したことねッスよ」
先輩(こんなのどう見ても暴力団組長のお屋敷じゃん! 本当にありがとうございました)
新人「なんだ?」
黒服「組長(オヤジ)がぜひ、先輩さんとサシで話したいと……」
先輩(え!?)
新人「是非そうしてくだせえ! 俺みたいな半端モンがいるとかえって邪魔でしょうし!」
先輩(嫌だよ~! 組長とサシなんて嫌だよぉ~! 帰りたいよぉ~!)
先輩「……」ゴクッ
先輩(結局サシになってしまった……)
組長「あんたが……息子の先輩かい」
先輩「は、は、はい……」
組長「い~いツラ構えしてらっしゃる。きっと仕事もお出来になるだろう」
先輩「いや、そんなことは……」
先輩「……」ガタガタ
組長「おや、武者震いですかい?」
先輩(怖くて震えてるだけだよ!)
組長「なに考えてんだ、お前にゃ無理だ、と激昂(キレ)たもんですが……」
組長「あんたになら、息子を任せられる。どうか、息子を一人前に育ててやって下せえ」
先輩「……!」
先輩「分かりました……必ず息子さんを立派な社員にしてみせます!」
組長「ありがてえ……! ありがてえ……!」
先輩(思ったより怖い人じゃなくてよかった……)ホッ
先輩「いやー、おっかなくて、緊張したよ」
新人「おっかない? なんでです?」
先輩「暴力団の組長さんなんておっかないに決まってるじゃないか!」
プルルルルル…
先輩「あ、もしもし……はい、すぐ向かいます!」
先輩「仕事だ、現場に向かおう!」
新人「へい!」
先輩「体長100メートルってとこか……ま、三発ぐらいかな」
先輩「怪獣退治専門会社……僕たち、株式会社カイタイの腕の見せ所だ! 君は援護を頼むよ」
新人「へい! サポートしやす!」
新人「……って、怪獣を素手で殴り殺せる先輩が、なんで今更暴力団なんぞにビビるんスか?」
先輩「しょうがないだろ! 怖いもんは怖いんだよ!」
― 完 ―
コメント一覧 (12)
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- 2020年09月19日 20:14
- 静かだ…
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- 2020年09月19日 20:23
- つまんね
こんなやついねえよ
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- 2020年09月19日 20:45
- 静かだな・・・・・・
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- 2020年09月19日 20:51
- 夕飯の報告でもするか
カツカレー食ったよ
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- 2020年09月19日 22:38
- これ怪獣8号って漫画みたいなSSだな…
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- 2020年09月20日 01:02
- >>5
ウルトラマンでも見てろよ
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- 2020年09月20日 11:47
- >>5
「鬼滅の刃のパクリですか?」みたいなコメントやなw
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- 2020年09月20日 02:06
- なんか静かですねぇ
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- 2020年09月20日 04:35
- どんな会社だよww
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- 2020年09月20日 10:06
- ※6
ウルトラセブンの4K版はかなり期待してるわ
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- 2020年09月20日 18:32
- よくよく読んでみたら叙述トリックが仕掛けられてたじゃないの…面白かったよ
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- 2020年10月14日 16:12
- 推理小説で草