女「汁物専門店だって」男「こんなの絶対すぐ潰れるだろw」

1:以下、5ちゃんねるからVIPがお送りします 2020/08/12(水) 21:00:13.396 ID:xOWOl2q90

第一話『汁物専門店』



女「あの店見てよ、≪汁物専門店≫だって」

男「うっわ……思いつきで建てちゃったって感じの店だな。こんなの絶対すぐ潰れるだろ」

女「即飽きられて、半年後には閉店コースだよね」

男「ま、だけどせっかく見つけたんだ……冷やかしついでに入ってみようぜ」

男「話のネタくらいにはなるかもしれないしさ」

女「うん、入ってみよう!」



6:以下、5ちゃんねるからVIPがお送りします 2020/08/12(水) 21:03:24.475 ID:xOWOl2q90

―汁物専門店―

店主「いらっしゃい」

女店員「いらっしゃいませー! お好きな席へどうぞ!」

男「へえ、店内は意外と……」

女「うん、わりとオシャレ」

男「ここは汁物の専門店なんだって?」

女店員「はい、そうです!」



8:以下、5ちゃんねるからVIPがお送りします 2020/08/12(水) 21:06:20.047 ID:xOWOl2q90

男「なんで汁の専門店なんて始めたわけ?」

女店員「店長、どうぞ」

店主「生命は汁から誕生したとされている」

店主「地球の表面は70%が汁で出来ている」

店主「人体はおよそ60%から70%が汁で出来てるとされている」

店主「汁を知ることは、この世の真理を知ることにも通じる――と知ったからだ」

女店員「……だそうです」

男「はぁ……」

女「よく分からない……」

女店員「ほらー店長、引いちゃってますよ、この人たち! ドン引きですよ!」

店主「一言でいうなら、俺が汁を好きだからだ」

男「最初からそういって欲しかった」



10:以下、5ちゃんねるからVIPがお送りします 2020/08/12(水) 21:09:12.796 ID:xOWOl2q90

男「だとしたら……味噌汁とか、けんちん汁とか、豚汁とか出すわけだ」

店主「そうなる」

女店員「汁と名がつくものなら、だいたいいけますよ! 店長、汁を知り尽くしてますから!」

男「……ぷっ」

男「ぶはははっ! マジでこんな店があるとは思わなかった! 汁だけで勝負って!」

男「こんな店がやってけると思ってんの? 無理でしょ~! ぶはははっ!」

女「ちょっと笑いすぎだって……」

女店員「むう……」

店主「…………」



12:以下、5ちゃんねるからVIPがお送りします 2020/08/12(水) 21:12:07.125 ID:xOWOl2q90

女店員「だったら一杯飲んでみますか?」

男「ああ、どうぞ。オススメを頼むよ」

女店員「じゃあ店長、こういう人たちには≪思い汁≫なんてどうです?」

店主「分かった」

男「へ? なに、思い汁?」

女「私たちが“思い知る”ってこと?」

男「おもしれえ! 思い知らせてもらおうじゃんか!」



13:以下、5ちゃんねるからVIPがお送りします 2020/08/12(水) 21:15:07.840 ID:xOWOl2q90

店主「どうぞ」

男「マジで汁だけかよ。お新香すら無いのかよ」

男「いただきます」ジュルッ

女「私も」チュル…

男女「…………」

男「うま……!」

女「おいしい……!」



14:以下、5ちゃんねるからVIPがお送りします 2020/08/12(水) 21:18:32.183 ID:xOWOl2q90

女店員「またお越し下さいませー!」

男「…………」

女「…………」

男「思い知ったな……」

女「そうだね……」

男「変な店だったけど、また来よっか」

女「うん」





―おわり―



18:以下、5ちゃんねるからVIPがお送りします 2020/08/12(水) 21:22:13.696 ID:xOWOl2q90

第二話『一を聞いて……』



―会社―

上司「この仕事やっといてくれ」

新人「えぇと、これはどうやれば……」

上司「昨日教えた仕事と同じだよ! 考えればすぐ分かるだろう!」

新人「す、すいません」

上司「何でも質問するんじゃなく、一を聞いて十を知ろうとしなくちゃ!」

新人「はい……」



19:以下、5ちゃんねるからVIPがお送りします 2020/08/12(水) 21:25:08.991 ID:xOWOl2q90

―汁物専門店―

新人「ハァ……」

女店員「サラリーマンも大変ですねえ」

新人「いえ、しかしこの要領が悪いのはどうにかしなくちゃ……」

新人「昔から、覚えたことを他の場面でも応用するってのがどうも苦手で……」

店主「だったら……≪一を聞いて十を汁≫がいいかもしれない」

新人「え?」

店主「この汁を飲めば、頭が冴え、覚えた物事を要領よく活用することができるようになる」

店主「どうする、飲んでみるか?」

新人「飲みます! 飲ませて下さい!」



20:以下、5ちゃんねるからVIPがお送りします 2020/08/12(水) 21:28:33.009 ID:xOWOl2q90

―会社―

上司「新人君、これ……頼まれてくれるか」

新人「はい、お任せ下さい!」

上司(どうせまたすぐ聞きにくるんだろう……)



新人「どうぞ!」

上司「む……」

上司「ほう、よくできてるじゃないか。感心感心」

新人「前に教えてもらった知識を生かしたんです!」



21:以下、5ちゃんねるからVIPがお送りします 2020/08/12(水) 21:31:47.559 ID:xOWOl2q90

上司「なんでもいいから、コーヒー買ってきてくれ」

新人「分かりました」



上司(おやつにアンパン食べるから、やっぱりお茶の方がよかったかな……)

新人「お茶とコーヒーを買ってきました!」

上司「おお、お茶も買ってきてくれたのか」

新人「アンパンが机の上にあったからもしかして……と思いまして」



22:以下、5ちゃんねるからVIPがお送りします 2020/08/12(水) 21:34:03.156 ID:xOWOl2q90

新人「この見積もりは、と……」カタカタ

上司「なにか分からないことはないか?」

新人「今のところ問題ありません」

上司「そうか……だが、分からないことがあったら遠慮なく聞くんだぞ」

新人「ありがとうございます!」

新人(大丈夫、今の僕ならもう課長の手を煩わせることはない!)



23:以下、5ちゃんねるからVIPがお送りします 2020/08/12(水) 21:37:08.943 ID:xOWOl2q90

―汁物専門店―

新人「いやー、おかげさまで絶好調ですよ!」

女店員「よかったですね!」

新人「だけど、これってあの汁のおかげですよね? ドーピングみたいなものなのかも……」

店主「そんなことはない。≪一を聞いて十を汁≫はきっかけを作ったに過ぎない」

店主「元々君はそれぐらいの能力を持ってたってことだ」

女店員「ズルしてるわけじゃないですよ~」

新人「それを聞いて安心しました。ありがとうございます!」



25:以下、5ちゃんねるからVIPがお送りします 2020/08/12(水) 21:40:16.663 ID:xOWOl2q90

―会社―

上司「うむ、この仕事も完璧だ……すっかり仕事に慣れてきたね」

新人「ええ、この調子で早く一人前になりたいです!」

上司「…………」



上司「…………」フゥ…

先輩「最近、あの人元気ないんだよな。どうしたんだろ?」

新人「…………」

新人(もしかして……!)



27:以下、5ちゃんねるからVIPがお送りします 2020/08/12(水) 21:43:14.022 ID:xOWOl2q90

―汁物専門店―

女店員「いらっしゃいま――」

女店員「あら、こんばんは!」

新人「こんばんは」

上司「ほぉう、汁物専門店なんてあったとは。初めて来たよ」

女店員「お好きな席へどうぞー!」

上司「しかし、折り入って話がしたいとはどういう風の吹き回しだ?」

新人「はい、実は色々と相談がありまして……」



28:以下、5ちゃんねるからVIPがお送りします 2020/08/12(水) 21:46:20.810 ID:xOWOl2q90

上司「ワッハッハ、そんなことで悩んでおったのか、君はなーんにも知らんなぁ!」

新人「これからも課長を頼りにしてます!」



女店員「……あれ? あの人は一を聞いて十を知ることができるようになったのに……」

店主「だからこそだろう」

女店員「え?」

店主「時には、ああやって相手を頼ったり、立ててやることも必要だってことを知ったんだろうさ」





―おわり―



29:以下、5ちゃんねるからVIPがお送りします 2020/08/12(水) 21:50:15.202 ID:xOWOl2q90

第三話『苦汁』



―汁物専門店―

店主「いらっしゃいませ」

女店員「いらっしゃいませ……うわ」

陰気女「…………」ドヨーン

女店員(見るからに負のオーラ漂わせてる人、きたー! 属性でいったら絶対“闇”とか“毒”!)

陰気女「ここ……汁物専門のお店……らしいわね」

女店員「は、はい」

陰気女「私、死にたいの……。こんな私に相応しい汁を出してちょうだい……」



30:以下、5ちゃんねるからVIPがお送りします 2020/08/12(水) 21:52:07.164 ID:xOWOl2q90

店主「どうぞ」

陰気女「これは……?」

店主「≪苦汁≫だ」

女店員「え」

女店員(よりによって……なんで?)

陰気女「ふふ……ナイスチョイス……私に相応しい一杯だわ……」グビッ



31:以下、5ちゃんねるからVIPがお送りします 2020/08/12(水) 21:55:32.855 ID:xOWOl2q90

陰気女「……ぐえっ」

陰気女「ぐをおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおお!!!!!」

陰気女「ごあああああああああああああああああああああああああああああああ!!!!!」

陰気女「あがああああああああああああああああああああああああああああああ!!!!!」

陰気女「ぐぼおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおお!!!!!」

陰気女「ぎゃばあああああああああああああああああああああああああああああ!!!!!」

陰気女「にげええええええええええええええええええええええええええええええ!!!!!」

女店員「ひえええ……!」

店主「…………」



32:以下、5ちゃんねるからVIPがお送りします 2020/08/12(水) 21:58:29.039 ID:xOWOl2q90

陰気女「ハァ、ハァ、ハァ……」

陰気女「よかった……私、生きてる……」

陰気女「生きてるって、なんて素晴らしいの……」パァァァ…

女店員「店長の≪苦汁≫はホント地獄みたいに苦いですからねえ、よかったよかった」

店主「ほら」

陰気女「え……?」

店主「もう一杯、飲んでみろ」

陰気女「でも……」

店主「心配するな、口直しの一杯だ」

陰気女「…………」チビ…



34:以下、5ちゃんねるからVIPがお送りします 2020/08/12(水) 22:01:33.882 ID:xOWOl2q90

陰気女「甘い……甘くておいしい……!」

店主「苦汁ばかり嘗めさせられてきた人間は、甘い汁を飲む機会がめぐってくる」

店主「逆に甘い汁ばかりすすってきた人間は、いつか苦汁を飲むはめになる」

店主「俺は人生ってのは、そういうもんだと思っている」

店主「あんたはきっと、今まで苦汁ばかり味わってきたんだろう」

店主「だから……たまには甘い汁を飲んだっていいんだ」

陰気女「…………」

陰気女「ありがとう……」



35:以下、5ちゃんねるからVIPがお送りします 2020/08/12(水) 22:04:35.085 ID:xOWOl2q90

女店員「ふぅ~、冷や冷やした」

女店員「どうやらあの人、死ぬのを思いとどまってくれたみたいですね」

店主「そうだな」

女店員「それにしても、店長も甘いですよねー。≪甘い汁≫なみに」クスクス

店主「…………」

店主「≪苦汁≫だ……飲め」

女店員「え」

店主「飲まなきゃ給料抜き」

女店員「そんなぁ~! パワハラですよ、こんなのぉ~!」



36:以下、5ちゃんねるからVIPがお送りします 2020/08/12(水) 22:07:26.602 ID:xOWOl2q90

その後――

陰気女「今日も≪苦汁≫と≪甘い汁≫のセットを……」

店主「はいよ」

陰気女「ぐげえええええええええええええええええええええええええええええ!!!!!」

陰気女「だけどこの苦しみの後に甘みがああああああぼげえええええええええ!!!!!」

店主「…………」

店主(しかしながら……毎度毎度この苦しんでる姿を見るのは、俺にとっても苦汁だな)





―おわり―



38:以下、5ちゃんねるからVIPがお送りします 2020/08/12(水) 22:11:51.400 ID:xOWOl2q90

第四話『マナー』



―汁物専門店―

男「うん、この豚汁うまい!」

女「とろろ汁も最高!」

女店員「ありがとうございます!」

男(≪思い汁≫の一件以来、すっかり常連になっちゃった俺たちだけど……)

男「あ、そういえばさぁ」



40:以下、5ちゃんねるからVIPがお送りします 2020/08/12(水) 22:14:26.508 ID:xOWOl2q90

男「こないだ会社でマナー研修があってさ」

女「あー、マナー講師ってのが来るんでしょ? めんどくさそ」

男「汁物にもこういうマナーってあるのかな?」

店主「色々あるが……もっともよくいわれるのが――」

店主「汁物は右、ご飯は左というやつだ」トンッ

女「あ、ご飯とお味噌汁出てきた!」

男「この店、ご飯出るんだ!」

店主「さすがに白米ぐらいは出せる」

女店員「ちなみにあたしが炊いてまーす!」



41:以下、5ちゃんねるからVIPがお送りします 2020/08/12(水) 22:17:39.473 ID:xOWOl2q90

女「どうして、汁物は右で、ご飯は左なの?」

店主「ご飯の方がより多く手をつけるから左側に置いているとか」

店主「日本では右より左の方が偉いとされるからとか、中国の陰陽五行説に由来するとか」

店主「色々な説があるが……確かなことはいえないな」

店主「個人的にはそれぞれ食べやすい位置にすればいいと思うが」

店主「公的な場で食事をするような局面に出くわしたら、マナーを順守するのがベストだろう」

女「なるほど」



42:以下、5ちゃんねるからVIPがお送りします 2020/08/12(水) 22:20:44.455 ID:xOWOl2q90

男「ま、ご飯と味噌汁が出てきたらやることといえば――」

女「まさか」

男「やっぱこれだよなー、ご飯に味噌汁ぶっかける猫まんま!」バシャッ

女「うわっ、最悪! やると思った!」

男「うまいじゃん。猫まんま」ムシャムシャ

女「だからって、せっかくのご飯と味噌汁が台無しじゃない! ねえ!」

女店員「そうですよ! あたしのご飯はともかく味噌汁は味噌汁で味わってくれないと、店長激怒しちゃいますよ!」

店主「…………」ゴゴゴゴゴ…

男「ひっ!」

男「ご、ごめんなさい……。せめて残さず食べますので……」



43:以下、5ちゃんねるからVIPがお送りします 2020/08/12(水) 22:23:12.730 ID:xOWOl2q90

……

……

閉店後――

店主「…………」

店主「…………」バシャッ

店主「いただきます」

店主(なんか言い出しづらかったけど……俺も好きなんだよな、猫まんま)ムシャムシャ





―おわり―



45:以下、5ちゃんねるからVIPがお送りします 2020/08/12(水) 22:27:17.484 ID:xOWOl2q90

第五話『禁じる』



中年男「検査の結果は……?」

医者「どこもかしこもよくないという状態ですな」

中年男「そ、そんな……」

医者「今すぐにでもお酒とタバコを控えて下さい。でないと、いつ倒れてもおかしくありませんよ」

中年男「はぁ……」

中年男(かといって、やめられたら苦労しないんだよなぁ……)



46:以下、5ちゃんねるからVIPがお送りします 2020/08/12(水) 22:30:34.310 ID:xOWOl2q90

―汁物専門店―

店主「なら、≪禁汁≫をどうぞ」

中年男「禁汁……?」

女店員「あまりおいしい汁ではないですけど、禁止したいものを念じながら汁を飲むんです」

女店員「そうするとあら不思議! 念じたものをやめられるんです!」

中年男「へぇ~」

女店員「あたしもこれで男遊びをやめられたんですよぉ! これでも夜の女王だったもんで」

店主「すぐ作るんで」

中年男「お願いします」

女店員「突っ込んで下さいよぉ!」



47:以下、5ちゃんねるからVIPがお送りします 2020/08/12(水) 22:33:35.131 ID:xOWOl2q90

中年男「禁止したいものを念じながら、飲むんだよね?」

女店員「そうです! 強く強く念じて下さい! 念じるといえばこの前やってた超能力者の番組が面白くて……」

店主「誰かさんもおしゃべりを禁止してもらいたいな」

女店員「店長!」

中年男(酒とタバコを……やめたい!)

中年男「…………」グビッ

中年男「ぷはっ!」

店主「味はイマイチだろうが、効果は出るはずだ」

女店員「これでおいしければ言うこと無しなんですけどね~」

中年男(味がイマイチ……そんなことはなかったけどな)



49:以下、5ちゃんねるからVIPがお送りします 2020/08/12(水) 22:35:47.549 ID:xOWOl2q90

―会社―

同僚「今夜、一杯どうです?」

中年男(不思議だ……いつもだったら迷わず行くのに。全然飲みたい気がしない)

中年男「いや、やめておくよ。酒は控えるようにいわれてね」

同僚「そうなんですか」

中年男「また今度、誘ってくれよ」



50:以下、5ちゃんねるからVIPがお送りします 2020/08/12(水) 22:38:39.327 ID:xOWOl2q90

―家―

中年男「ごちそうさま」

中年男「さて、野球見るか」

妻「あら? いつも食事後は一服するのに、今日は吸わないのね」

中年男「ああ……タバコはやめたんだ」

妻「そうなの? あなたもやっと健康管理に目覚めたのね!」

中年男(これが≪禁汁≫の効果か……)



53:以下、5ちゃんねるからVIPがお送りします 2020/08/12(水) 22:42:37.616 ID:xOWOl2q90

―汁物専門店―

中年男「いやー、禁汁のおかげですっかり健康になったよ」

中年男「ほら、今回の健康診断……全部異常無しだもの。こんなの20代の頃以来だ」

女店員「わぁっ、おめでとうございます」

女店員「汁物専門店をやってるかいがあるってもんですね、店長!」

店主「ああ」

女店員「で、今夜は?」

中年男「もちろん禁汁!」



55:以下、5ちゃんねるからVIPがお送りします 2020/08/12(水) 22:45:16.587 ID:xOWOl2q90

中年男「禁汁……たまらんねえ!」



中年男「今夜も禁汁を一杯」



中年男「いやぁ、私の味覚にぴったりなんだよね、この禁汁!」

店主「…………」

女店員「…………」



56:以下、5ちゃんねるからVIPがお送りします 2020/08/12(水) 22:48:49.917 ID:xOWOl2q90

中年男「禁汁うまぁい!」

店主「禁汁に依存性はないんだが……」

女店員「よっぽどあの味が好物みたいですね」

店主「今度は≪禁汁を禁じる汁≫を作らなきゃいけなくなるかもな」

女店員「イタチごっこになりそう……」





―おわり―



57:以下、5ちゃんねるからVIPがお送りします 2020/08/12(水) 22:52:32.172 ID:xOWOl2q90

第六話『口走る』



―汁物専門店―

金髪「ったく、なんなんだよオメェはよ!」

ギャル「なによー! アンタが悪いんでしょ!?」

金髪「ンだとォ!?」

ギャル「大声出さないでよー!」



客A「さっきからなんなんだあの二人……」

客B「ワルそうだし、あまり関わらない方がいいよ」



59:以下、5ちゃんねるからVIPがお送りします 2020/08/12(水) 22:55:27.651 ID:xOWOl2q90

女店員「まあまあ、お客さん」

金髪「あ? なんだてめえ!?」

ギャル「なんなのよォ!」

女店員「他のお客さんのご迷惑ですので、ケンカなら外で……」

金髪「うっせえ、口出すな!」

ギャル「あんたが外行きなさいよ!」ベーッ

女店員「むうう……どうやらあたしの恐ろしさを思い知らせる時が来たようですね」

店主「ちょっと待った」



60:以下、5ちゃんねるからVIPがお送りします 2020/08/12(水) 22:58:34.124 ID:xOWOl2q90

金髪「なんだよ? あんたも口出す気か?」

店主「口は出さないが、汁は出させてもらう」

店主「これを飲んでもらおう。≪口ば汁≫だ」

金髪「≪口ば汁≫……?」

ギャル「どういうこと……?」

女店員(この汁の効能はたしか名前通り……)



61:以下、5ちゃんねるからVIPがお送りします 2020/08/12(水) 23:01:24.333 ID:xOWOl2q90

金髪「!」ビビビッ

ギャル「!」ビビビッ

金髪「……お前が好きだ」

ギャル「アタシも……!」

金髪&ギャル「ハッ!?」

女店員「あれ?」

女店員「これはどういうことです?」

店主「口ば汁は本音を口走ってしまう汁だが、結局のところ二人とも愛し合ってたってことだ」

女店員「喧嘩するほど……ってやつですか」



62:以下、5ちゃんねるからVIPがお送りします 2020/08/12(水) 23:03:25.612 ID:xOWOl2q90

金髪「ここの味噌汁……美味いよな」イチャイチャ

ギャル「二人で同じお椀で飲もっか」イチャイチャ



店主「ふぅ……イチャイチャすんならよそでやってくれないかな……」

女店員「店長も口走っちゃってますよ!」





―おわり―



63:以下、5ちゃんねるからVIPがお送りします 2020/08/12(水) 23:06:39.588 ID:xOWOl2q90

第七話『汁の神様』



―汁物専門店―

男「≪ほとば汁≫を飲むと……」グビッ

男「ほとばしるぅぅぅぅぅぅぅぅぅ!!!」シュインシュインシュイン

女「私もぉぉぉぉぉぉぉぉぉ!!!」シュインシュインシュイン

女店員「お二人とも、ほとばしってますねえ」

男「あー、楽しかった」

男「ところでさ、この店ってなにか秘密のメニューみたいなのないの?」

女「あー、まかないのご飯みたいなやつ? あるなら飲みたーい!」

店主「…………」



65:以下、5ちゃんねるからVIPがお送りします 2020/08/12(水) 23:09:52.143 ID:xOWOl2q90

店主「あれを作るか」

女店員「あれですか! 店長、よっぽど機嫌よくないと作らないのに!」

男「あれって?」

女店員「店長が修行時代、辛くて辛くてくじけそうになったことがあるんですって」

女店員「そしたら、どこからともなく一杯のお味噌汁が目の前に置かれてたそうです」

女「なにそれ、心霊現象?」

女店員「かもしれません。とにかく店長はそのお味噌汁を飲んだそうです」

女店員「そしたらもう、それはそれはおいしかったと」

男「へぇ~、どこかの昔話にありそうなハナシだ」

女店員「店長は修行の末、ようやくその味を再現できるようになって、たまに作ってくれるんですよ」



66:以下、5ちゃんねるからVIPがお送りします 2020/08/12(水) 23:12:24.449 ID:xOWOl2q90

店主「どうぞ」

男「おお、豆腐だけのシンプルな味噌汁だ」

女「いただきまーす」

グビッ チビ…

男「おお……ホッとする。なんというか、お袋の味って感じだ」

女「分かる! お母さんの味噌汁って感じ!」



67:以下、5ちゃんねるからVIPがお送りします 2020/08/12(水) 23:15:22.848 ID:xOWOl2q90

女「いったいなんだったんだろうね、そのお味噌汁」

男「あ、分かった!」

男「きっと汁の神様が飲ませてくれたんだよ!」

女「たしかに!」

女店員「いいですね、汁の神様。神様が修行を頑張る店長にプレゼントして下さったんですよ」

店主「だといいがな」

女店員「アハハ、照れてる」

男「店主さん、この味噌汁にもなにか名前つけたらどう?」

店主「そうだな。じゃあ……」



68:以下、5ちゃんねるからVIPがお送りします 2020/08/12(水) 23:17:20.479 ID:xOWOl2q90

店主「……≪神の味噌汁≫で」

男「まんまじゃん!」

女「神様はこの名前、どう思うかな?」

女店員「うーん……神のみぞ知る、といったところじゃないでしょうか」





―おわり―



70:以下、5ちゃんねるからVIPがお送りします 2020/08/12(水) 23:21:33.202 ID:xOWOl2q90

第八話『ブラジル』



―汁物専門店―

学生「あーあ、ブラジル行きたいなぁ」

女店員「どうしてです?」

学生「自分、昔から南米に憧れがあって、どうせ行くならブラジルって決めてるんスけど」

学生「予算的にも距離的にもなかなか……ねえ」

女店員「なにしろ日本の裏側ですからねえ」



71:以下、5ちゃんねるからVIPがお送りします 2020/08/12(水) 23:24:22.896 ID:xOWOl2q90

学生「穴掘っていったらいつかブラジル行けるッスかね?」

女店員「きっと行けますよ!」

店主「日本の裏側は大西洋なんだがな」

女店員「店長ってば夢がない!」

店主「それはさておき、ブラジル気分を味わいたいなら……こんな汁がある」

学生「え?」



72:以下、5ちゃんねるからVIPがお送りします 2020/08/12(水) 23:27:29.740 ID:xOWOl2q90

店主「≪ブラ汁≫だ」

学生「ブラ汁……!」

店主「飲むか?」

学生「飲んでみるッス!」グビッ

学生「おおっ、なんとなくブラジルの風味がするッス!」

店主「だろう」

女店員(ブラジルの風味ってなんだろう……)



73:以下、5ちゃんねるからVIPがお送りします 2020/08/12(水) 23:30:19.149 ID:xOWOl2q90

学生「……ん」

学生「ブラジル、正式名称はブラジル連邦共和国。首都はブラジリア」

学生「人口はおよそ2億人、公用語はポルトガル語、国技はカポエイラ」

学生「ブラジルの由来は植物“ブラジルボク(パウ・ブラジル)”に由来する」

学生「あれ? ブラジル知識がすらすらと……」

店主「ブラ汁の効果が出てきた証拠だ。そのうち君はもっとブラジル的になれる」

学生「ありがとうッス!」



74:以下、5ちゃんねるからVIPがお送りします 2020/08/12(水) 23:33:23.835 ID:xOWOl2q90

学生「……」グビッ

学生「う~ん、うまい!」

友人「あれ、お前コーヒー飲むんだ」

学生「ああ、最近好きになっちゃって」

友人「しかも豆から挽いて……本格的だなオイ」

学生「やっぱりコーヒー豆はブラジルが一番!」



75:以下、5ちゃんねるからVIPがお送りします 2020/08/12(水) 23:36:15.650 ID:xOWOl2q90

学生「あ、サッカーボールだ」

学生「よっ、ほっ、はっ」ポンポンポーン

JD「すごーい、リフティング上手!」

学生「まあね」ポンポンポーン

JD「サッカーやってたの?」

学生「やってたわけじゃないけど……ブラジル大好きだし」ポンポンポーン



76:以下、5ちゃんねるからVIPがお送りします 2020/08/12(水) 23:39:21.330 ID:xOWOl2q90

学生「サンバ!」

学生「サンバ! サンバ! サンバ!」

学生「イェ~イ!」

ワァァァァァ… キャーキャーッ

友人「いいぞー!」

JD「すっごーい!」



80:以下、5ちゃんねるからVIPがお送りします 2020/08/12(水) 23:41:21.779 ID:xOWOl2q90

―汁物専門店―

女店員「いらっしゃいませ――あ、ブラ汁を飲んだ学生さん!」

学生「Boa noite!」

女店員「へ……ぼあ・のいち?」

学生「やだなぁ、ポルトガル語の“こんばんは”ッスよ~」

女店員「ああ、ブラジルの公用語でしたっけ」

店主「だいぶブラ汁を楽しんでるようだな」

学生「ええ、おかげさまで俺ついに――」



81:以下、5ちゃんねるからVIPがお送りします 2020/08/12(水) 23:43:45.757 ID:xOWOl2q90

学生「自分で発電できるようになったッス!」バチバチバチッ

学生「どこでもスマホ充電できるッス!」バチバチバチッ

女店員「……これ、ブラジルなんですか?」

店主「どこぞの格闘ゲームで出てきそうだな」





―おわり―



83:以下、5ちゃんねるからVIPがお送りします 2020/08/12(水) 23:47:50.725 ID:xOWOl2q90

第九話『いじる』



―汁物専門店―

チャラ男「おいおい、汁飲んだら湯気でメガネまで白くなってんじゃん!」

チャラ男「目が見えなくなってんじゃん! メガネだけに目がねえってか! ギャハハハハ!」

メガネ「ア、アハハ……」

チャラ男「カーッ! ノリわりぃなぁ!」

チャラ男「せっかく俺がいじってやってんだからよぉ~。もっとノッてこいってぇ~」

メガネ「ご、ごめん」

チャラ男「このTシャツもなんだよ、どこで売ってんだよこんなダサイの~。ダサすぎて逆にかっこいいわ!」

メガネ「ハハ……」



84:以下、5ちゃんねるからVIPがお送りします 2020/08/12(水) 23:50:28.270 ID:xOWOl2q90

チャラ男「やっぱ、人間つーのはいじられてこそ輝くよなぁ」

チャラ男「なぁ、なんか俺にオススメの汁ってねえの?」

店主「だったら≪い汁≫なんてどうだ?」

チャラ男「い汁? もしかしてこれ飲んだらもっといじり方が上手くなるとか?」

チャラ男「飲む飲む~!」グビグビ

チャラ男「うまぁい! これからはもっともっとお前のこといじってやるからな!」

メガネ「う、うん」

店主「…………」



85:以下、5ちゃんねるからVIPがお送りします 2020/08/12(水) 23:53:37.114 ID:xOWOl2q90

……

ピアス「あれ? お前、ヒゲのそり残しあんじゃん」

チャラ男「ホントだ」

ピアス「うわ、すげえ! 三国志の関羽みてえ!」

チャラ男「は? 関羽って……あんなボーボーじゃねえだろ」

ピアス「怒るなって~! ちょっといじっただけだろ~!」

チャラ男「ちっ……」



87:以下、5ちゃんねるからVIPがお送りします 2020/08/12(水) 23:56:54.031 ID:xOWOl2q90

バイト先――

店長「おい、手が止まってるよ!」

チャラ男「あ、すんません」

店長「ったく君の給料泥棒っぷりと来たら……まるでルパンだね」

チャラ男「……そんないい方ないんじゃないんですか」

店長「冗談だよ、冗談。ちょっといじっただけだろう? ムキになるなって!」

チャラ男「はぁ……」



88:以下、5ちゃんねるからVIPがお送りします 2020/08/12(水) 23:59:21.780 ID:xOWOl2q90

―駅―

チャラ男「やべっ、電車来てる……走らなきゃ」タタタッ

通行人A「あいつ猛ダッシュしてるよ!」

通行人B「ウサイン・ボルトじゃねーの?」

チャラ男「!?」



チャラ男「くそっ、間に合わなかった……」ハァ…ハァ…

会社員「アウトォォォォォ!!!」

チャラ男「なんだと!?」

会社員「ごめんごめん、慌てぶりが面白くてついいじってしまったよ」

チャラ男「…………!」



89:以下、5ちゃんねるからVIPがお送りします 2020/08/13(木) 00:03:22.727 ID:Yr0cpNRN0

チャラ男(これは……まさか……)

チャラ男(あのい汁ってやつの効果……!?)

「あそこ歩いてる人まるで……」

「ウケる~」

「ハハハ、いじりがいあるな」

チャラ男「…………ッ!」

チャラ男「や、やめろ……。やめてくれ……」

チャラ男「俺をいじらないでくれえええええ……!!!」



90:以下、5ちゃんねるからVIPがお送りします 2020/08/13(木) 00:05:38.184 ID:Yr0cpNRN0

―汁物専門店―

チャラ男「……すまなかった」

メガネ「へ?」

チャラ男「いじられる側になってよく分かった。俺は今までひどいことをしてきたようだ」

チャラ男「いじりってのはいじる方もいじられる方も楽しくなきゃ意味ねーわ」

チャラ男「本人が嫌ならそりゃ“いじり”じゃなくて“いじめ”だよな……」

メガネ「かもしれない。だけど……」

チャラ男「?」

メガネ「僕は嬉しかったよ。君みたいな人気者がさ、僕みたいなあまり目立たない人間にかまってくれて」

チャラ男「…………!」



91:以下、5ちゃんねるからVIPがお送りします 2020/08/13(木) 00:08:24.870 ID:Yr0cpNRN0

メガネ「これからも僕をいじってくれよ」

チャラ男「ふん、お前も……俺のこといじってくれていいんだぜ!」

メガネ「じゃあ、そうさせてもらおうかな!」

アハハハハ… ハハハハ…



女店員「あの二人、いいお友達になれそうですね」

店主「ああ」





―おわり―



92:以下、5ちゃんねるからVIPがお送りします 2020/08/13(木) 00:11:49.805 ID:Yr0cpNRN0

第十話『肉汁』



TV『噛むと肉汁が染み出てきて……おいし~……! 口の中にジュワァ~っと広がります!』

男「うまそうだな」

女「うん」

男「特にこの肉汁がうまそうでさ……」

女「“汁”といったら……」

男「あそこしかないよな」

女「決まり!」



93:以下、5ちゃんねるからVIPがお送りします 2020/08/13(木) 00:15:32.142 ID:Yr0cpNRN0

―汁物専門店―

店主「肉汁? 出せるぞ」

男「出せるの!?」

女「やったぁ!」

女店員「そりゃ汁物専門店ですから、肉汁くらい出せないと看板に偽りありですよ!」

店主「すぐ用意するから待っててくれ」

男女「はーい!」



94:以下、5ちゃんねるからVIPがお送りします 2020/08/13(木) 00:18:18.292 ID:Yr0cpNRN0

店主「どうぞ」

男「うおお……お椀に肉汁が……」

女「いい匂い……」

男「…………」ジュル…

女「…………」チュル…

男「うわぁ~……とろけるぅ~……!」

女「ものっすごい濃厚……このまま天国行けそう!」

女店員「店長の出す肉汁はそれはもうすごいですから」



95:以下、5ちゃんねるからVIPがお送りします 2020/08/13(木) 00:21:35.080 ID:Yr0cpNRN0

男「で、肝心の肉は? 汁でこんだけすごいんだから、肉本体はきっと……」

店主「出せない」

男「へ? なんで?」

店主「汁物専門店なんだから、肉なんか出せるわけないだろう」

女「豚汁出せるのに? ご飯は出せたのに?」

店主「あれが限界ギリギリだ。ギリギリチョップだ」

男「時々あんたのキャラが分からなくなるよ」

女「肉汁出せるんだから、肉出してくれてもいいじゃない!」

店主「出せない」キッパリ





―おわり―



97:以下、5ちゃんねるからVIPがお送りします 2020/08/13(木) 00:25:22.261 ID:Yr0cpNRN0

第十一話『異世界からの客』



―汁物専門店―

女店員「いらっしゃいませー!」

勇者「…………」チャキッ

女店員「え?」

勇者「はあっ!」ビュオッ

女店員「ひゃあっ!」サッ

勇者「む……なかなかの身のこなし。やるな……」

女店員「なんなんですか、いきなりぃ!」



99:以下、5ちゃんねるからVIPがお送りします 2020/08/13(木) 00:28:51.805 ID:Yr0cpNRN0

女店員「剣を持って、鎧なんかつけて……あなたいったい誰ですか!? 新手の強盗ですか!?」

勇者「私は勇者」

女店員「勇者……!?」

勇者「魔王を倒すためには、伝説の世界樹“ユグドラシル”の力を借りねばならん」

女店員「ユグドラシル……?」

勇者「ユグドラシルは私の住む世界には生えてないゆえ、ワープ魔法でこうして異世界にやってきた」

女店員「もうなにがなんだか……」

勇者「私の勘ではユグドラシルはここにあるはずなのだが……」キョロキョロ

女店員「このお店には木なんか一本も生えてませんよ!」

女店員「店長、どうしましょう?」

店主「この店にはユグドラシルはないが……」



101:以下、5ちゃんねるからVIPがお送りします 2020/08/13(木) 00:32:12.240 ID:Yr0cpNRN0

店主「≪ユグドラ汁≫ならある」

勇者「なに?」

店主「どうぞ」サッ

勇者「いただこう」グビッ

勇者「む!? むむむ……!?」パンパカパーン!

女店員「謎のファンファーレが鳴り響いた!」

勇者「おお……この力、まさしくユグドラシルの力! これならば魔王を倒せる!」ゴゴゴ…

勇者「ありがとう、店主さん、お嬢さん。君たちは私の大恩人だ!」タタタッ…

女店員「…………」

店主「…………」



102:以下、5ちゃんねるからVIPがお送りします 2020/08/13(木) 00:34:06.427 ID:Yr0cpNRN0

女店員「なんだったんでしょう、あの人……。本当に勇者だったんでしょうか……?」

店主「さあな」

店主「なんにせよ、俺の汁がどこぞの世界を救うかもしれないってのは悪くない気分だ」





―おわり―



103:以下、5ちゃんねるからVIPがお送りします 2020/08/13(木) 00:37:54.952 ID:Yr0cpNRN0

第十二話『三者三汁』



―汁物専門店―

力士「ふぅ……」

ボクサー「くそっ……」

柔道家「はぁ……」

女店員「なんだか今日のお客さんは……皆さんゴツイですね」ヒソヒソ

店主「ああ、心なしかいつもより店が狭く感じる」



105:以下、5ちゃんねるからVIPがお送りします 2020/08/13(木) 00:40:26.082 ID:Yr0cpNRN0

力士「勝てない……あんなに稽古してるのに……」

ボクサー「ちくしょう……! 俺のがパンチは当ててるのに……!」

柔道家「なぜすぐ投げられてしまうんだ……」

女店員「皆さん、どうもスランプ気味みたいですね。どうします?」

店主「…………」

店主「お三方、今からあんたたち三人に、それぞれ違った汁を出そう」

三人「え?」

店主「ぜひ飲んでみて欲しい」



106:以下、5ちゃんねるからVIPがお送りします 2020/08/13(木) 00:43:20.006 ID:Yr0cpNRN0

店主「お相撲さん、あんたには健康食品としておなじみの≪青汁≫」

力士「青汁……」

店主「ボクサーのあんたには柑橘類を絞った≪黄汁≫」

ボクサー「黄汁……」

店主「柔道家のあんたには唐辛子の入った≪赤汁≫」

柔道家「赤汁……」

店主「さ、飲んでみてくれ」

三人「いただきます」ゴクッ



107:以下、5ちゃんねるからVIPがお送りします 2020/08/13(木) 00:46:14.211 ID:Yr0cpNRN0

力士「にがぁぁぁぁい!」

ボクサー「すっぱ! すっぱぁ! すっぱぁぁぁ!」

柔道家「か゛ら゛い゛ぃぃぃぃぃ!」

女店員「そりゃこうなりますよね」

店主「今度試合する時は、もう一度ここで味わった汁の味を思い出してくれ」

店主「そうすれば、なにか手助けになるかもしれない」

力士「はぁ……」

ボクサー「よく分からんけど……」

柔道家「そうしてみようか……」



108:以下、5ちゃんねるからVIPがお送りします 2020/08/13(木) 00:49:28.006 ID:Yr0cpNRN0

―土俵―

ワァァァァ… ワァァァァァ…

行司「はっけよい!」

力士(始まった!)

力士(あの苦さを……! ≪青汁≫を思い出せ……)

力士(“青”……そう前に進むんだッ! 恐れず相手にぶつかっていけッ!)

力士「うおおおおっ!!!」バッ

ドゴォンッ!

対戦力士「ぐわぁっ!」



109:以下、5ちゃんねるからVIPがお送りします 2020/08/13(木) 00:51:37.594 ID:Yr0cpNRN0

―リング―

ボクサー(あの酸っぱさを思い出すと……唾液が出てきちまうぜ……)

ボクサー(≪黄汁≫、そうか……“黄”は注意しなきゃならねえ!)

ボクサー(ボクシングはただ手を出せばいいってもんじゃねえ。注意深く……相手を見る!)

敵ボクサー「……」ササッ

ボクサー(こいつ、明らかに脇腹をかばってる……嫌がってる!)

ボクサー「ここだァッ!」シュッ

ボスッ!



110:以下、5ちゃんねるからVIPがお送りします 2020/08/13(木) 00:53:22.211 ID:Yr0cpNRN0

―試合場―

柔道家(あの辛さを……思い出すのだ)

柔道家(≪赤汁≫……“赤”は止まれ)

相手(こいつ、いつもなら技をかけようとすると、すぐ慌ててスキができるのに……!)

柔道家(動かず、動じず……相手の技を返す!)

柔道家「でやぁっ!」

ブオンッ!

ドザァッ…

審判「一本ッ!」



111:以下、5ちゃんねるからVIPがお送りします 2020/08/13(木) 00:57:23.568 ID:Yr0cpNRN0

―汁物専門店―

女店員「力士さんは恐れず前に出るようになり、ボクサーさんは注意深くなり、柔道家さんは動かなくなった」

女店員「店長が汁をオススメしたあの三人、みんな大活躍してるじゃないですか!」

店主「そうみたいだな」

女店員「さては店長って……武道や格闘技の心得があるんじゃ?」

店主「そんなもんあるわけないだろ」

店主「俺はあの三人を見て、なんとなく必要そうな汁を勧めてみただけだ」

女店員「だけど、もしかしたら隠れた才能があるってこともあり得ますよ?」

店主「……どうだかな」

店主「…………」



112:以下、5ちゃんねるからVIPがお送りします 2020/08/13(木) 00:59:39.304 ID:Yr0cpNRN0

店主「アチョーッ!」ブンッ

店主「うっ!」ビキッ

店主「……筋を痛めた」ズキズキ…

女店員「店長も自分を知ることができましたね……」





―おわり―



114:以下、5ちゃんねるからVIPがお送りします 2020/08/13(木) 01:02:53.114 ID:Yr0cpNRN0

最終話『本日も営業中』



―汁物専門店―

男「こんばんは」

女「こんばんはー」

女店員「いらっしゃいませー! お好きな席へどうぞ! ……といってもあまり空いてないですけど」

男「いやー、今日は繁盛してるね。ほぼ満席だ」

女店員「えへへ、おかげさまで!」



116:以下、5ちゃんねるからVIPがお送りします 2020/08/13(木) 01:05:36.592 ID:Yr0cpNRN0

ワイワイ…

新人「給料出たし、今日はたくさん汁飲むぞ!」

陰気女「うげええええええええええええええええええええええええええええええ!!!!!」

中年男「はぁ……禁汁うまい……おかわり」

金髪「今日もお前は可愛いぜ……」

ギャル「ありがと……」

学生「この味噌汁……gostosa(おいしい)!」

チャラ男「今度みんなでキャンプでも行かね?」

メガネ「行こう行こう!」

ガヤガヤ…

男「俺らがいうのもなんだけど……」

女「変わったお客さんが一杯いるねー」



118:以下、5ちゃんねるからVIPがお送りします 2020/08/13(木) 01:09:11.340 ID:Yr0cpNRN0

店主「はいよ、豚汁としじみ汁」サッ

男「いただきまーす」

女「おいしそ~!」

男「店主さん、初めて来た時は色々失礼なこといって、本当にすいませんでした!」

女「私もごめんなさい!」

店主「別に気にすることはないさ。自分が変わった店をやってることぐらい自覚してる」

女店員「といいつつ、本当は店長、結構デリケートなんですよ」

店主「苦汁飲ませるぞ」

女店員「ごめんなさぁい!」



119:以下、5ちゃんねるからVIPがお送りします 2020/08/13(木) 01:11:27.564 ID:Yr0cpNRN0

男「ところで、俺たち……今度結婚するんです」

女「お二人にもご報告をと思いまして……」

店主「ほう」

女店員「おめでとうございます!」

男「結婚しても、この店には二人で来るんで」

女店員「あたしたちもしちゃいます? ……結婚」

店主「しません」

アハハハハハ…

店主「よし、今日は特別に、二人のためにお祝いの汁を出してやるかな」

男「お、やったぁ!」

女「嬉しい!」



122:以下、5ちゃんねるからVIPがお送りします 2020/08/13(木) 01:14:25.205 ID:Yr0cpNRN0

女店員「またお越し下さいませー!」

男「…………」

女「…………」

男「今日も汁、おいしかったな」

女「うん、おいしかった」

男「だけどこの店については、まだまだ知らないことも多いな」

女「うん、常連になったとはいえね。メニューは無数にあるし、あの二人も謎が多いし」

男「この店は……まさに“知る人ぞ知る名店”だな」

女「たしかに!」



123:以下、5ちゃんねるからVIPがお送りします 2020/08/13(木) 01:17:19.177 ID:Yr0cpNRN0

女「ねえ、もしかしたら≪知る人ぞ汁≫なんて汁もあるんじゃない?」

男「あの店主さんのことだ……絶対あるぞ」

女「今度来たら、頼んでみようよ!」

男「飲んだらどうなっちゃうんだろうな。楽しみだ」



≪汁物専門店≫、本日も営業中――







―おわり―



124:以下、5ちゃんねるからVIPがお送りします 2020/08/13(木) 01:17:47.499 ID:Yr0cpNRN0

以上で完結です
ありがとうございました



元スレ
女「汁物専門店だって」男「こんなの絶対すぐ潰れるだろw」
https://hebi.5ch.net/test/read.cgi/news4vip/1597233613/
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         コメント一覧 (11)

          • 1. 以下、VIPにかわりましてELEPHANTがお送りします
          • 2020年08月13日 06:38
          • ガマン○○
          • 2. 以下、VIPにかわりましてELEPHANTがお送りします
          • 2020年08月13日 08:44
          • 謝罪〇〇
          • 3. 以下、VIPにかわりましてELEPHANTがお送りします
          • 2020年08月13日 09:17
          • 〇〇ク・ド・ソレイユ
          • 4. 以下、VIPにかわりましてELEPHANTがお送りします
          • 2020年08月13日 09:35
          • まんじる専門店
          • 5. 以下、VIPにかわりましてELEPHANTがお送りします
          • 2020年08月13日 09:45
          • 臭マン女の見分け方を教えて下さい
          • 6. 以下、VIPにかわりましてELEPHANTがお送りします
          • 2020年08月13日 09:47
          • つまらないSS書いて欲しいって誰かに依頼されたの?
          • 7. 以下、VIPにかわりましてELEPHANTがお送りします
          • 2020年08月13日 12:03
          • 5 神話カテゴリだな
          • 8. 以下、VIPにかわりましてELEPHANTがお送りします
          • 2020年08月13日 12:13
          • 週刊ストーリーランドっぽさがあって割と好き
          • 9. 以下、VIPにかわりましてELEPHANTがお送りします
          • 2020年08月13日 12:44
          • Soup Stock Tokyoが
          • 10. 以下、VIPにかわりましてELEPHANTがお送りします
          • 2020年08月19日 02:23
          • 良かった
            こういうので良いんだよ
          • 11. 以下、VIPにかわりましてELEPHANTがお送りします
          • 2020年08月21日 21:10
          • めちゃ良かったです
            面白かった

        はじめに

        コメント、はてブなどなど
        ありがとうございます(`・ω・´)

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