男「寝てねえわ~、全然寝てねえわ~」女(寝てない自慢ウッザ……)
女「……」
男「あ~……寝てねえわ~」
女「……」
男「ぜんっぜん寝てねえわ~」
女「……」
男「寝てなさ過ぎてつらいわ~、つらすぎるわ~」
女(寝てない自慢ウッザ……)
女「あーはいはい。どうぞどうぞ」
男「じゃあ、キリよく昨日の夜0時からにするか」
男「休みだったし、俺は借りてきた映画を3本ほど見た」
男「一本目はコメディ、二本目はサスペンス、三本目はアクション」
男「明け方にアクションなんて見るもんじゃないな」
男「朝ののんびりした雰囲気とテンションが全然釣り合わなくなった」
女「ふうん、つまり徹夜したってことね」
女「なに食べたの?」
男「トーストと目玉焼き」
男「トーストの上に目玉焼き乗せるやつやったら……ずり落ちて大惨事になっちまったぜ」
女「あれ食べるの結構難しいよね」
男「んで、午前中は町をぶらぶらしてた」
男「買い物したり、DVD借りたり、コーヒー飲んだりしてな」
女「わぁお、炭水化物+炭水化物」
男「まだ若いからいいんだよ」
男「午後は寝ころんでスマホいじりだ」
女「ラーメン食べて寝転んでって、今に太るよ。……ってちゃんと寝てるじゃん」
男「意識がなくなったとはいってないだろ。ずっと動画見てた」
男「……で、今に至るってわけだ」
女「なるほど」
女「あれ? ちょっと待って、一睡もしてなくない?」
男「そうなんだよ」
男「俺は……寝てないんだよ!」
男「なのに全く眠くならないんだ!」
女「……!」
男「あれから……もう……どのぐらいになるか……」ガタガタ
女「あれから?」
男「最初のうちはよかったけど、眠れないってことがこれほど苦しいもんだと思わなかった!」
男「寝るってことがどれだけ人間にとって大事かよぉっく分かった!」
男「寝たいのに眠れない……俺の心と体のバランスはもう限界なんだ!」
女「なんで、そんなことになったのよ。ちゃんと説明してよ!」
女「悪魔……?」
男「悪魔が出る映画を見たのをきっかけに色々と調べてさ……本当に軽い気持ちだった」
男「悪魔はいった。もし、自分とゲームをして勝ったら、どんな願いも叶えてやると」
男「ただし、お前が負けたら“睡眠”を頂くと」
男「そして俺は負けて……“睡眠”を奪われた」
女「……!」
男「どんな薬を飲んでも、医者にかかってもダメだった」
男「俺はもう……一生眠れないんだぁぁぁぁぁっ!!!」
女「一体どんなゲームをしたの?」
男「それは――」
男「考え込んで、どうした?」
女「私なら……もしかしたら何とかしてあげられるかもしれない」
男「ええっ!?」
女「とにかく……もう一度悪魔を呼び出してみてよ」
男「分かった……それなりに準備がいるから、深夜にまた会おう」
男「深夜2時ジャストに“悪魔よ”と唱える」
男「悪魔よ!」
女「悪魔よ!」
男「成功だ! 来るぞ……!」
フハハハハハ…
悪魔「うん? 貴様は見た顔だな」
男「久しぶり、だな……」
悪魔「どうだ? “睡眠”を失った気分は? 24時間起きていられて得した気分だろう!」
男「ぐ……!」
悪魔「フハハハハ……いい表情だ!」
女「ねえ、悪魔さん。彼に“睡眠”を返してあげてよ」
悪魔「それはならぬ。我とゲームをして負けた以上、この男はずっとこのままだ」
悪魔「その通りだが」
女「だったら私とゲームをして、私が勝ったら返してあげてよ」
悪魔「……よかろう。ただし、貴様が負けたら貴様の“睡眠”も頂くぞ」
女「オッケー」
男「は!?」
男「ちょっと待ってくれ! 俺はてっきり君が悪魔祓いの方法でも知ってるのかと思って、呼び出したんだぞ!」
女「んなもん知るわけないでしょ」
男「もし、君まで“睡眠”を奪われたら……!」
女「そうなったらそうなったで、どうなるか興味あるし」
男「バカ! 寝ないってのは本当に辛いんだ!」
女「どうぞ」
悪魔「場所を移す。女だけ我についてこい!」
ブワァァァァァ…
男「……」
男「行ってしまった……」
悪魔「我が作り出した異空間だ。邪魔者は入らぬ」
悪魔「食事に関してはここに漂う瘴気で賄えるから、心配せんでよい」
女「瘴気で栄養補給って仙人にでもなった気分」スゥ…
女「彼からも聞いたけど、一応ゲームの内容を教えてくれる?」
悪魔「ここにボタンが二つある。我の物と、貴様の物だ」
悪魔「このボタンは30分ごとに、小さくアラームを鳴らす」
悪魔「そのアラームが鳴ってから、10秒以内にボタンを押せなかった方の負けだ」
悪魔「ちなみに、お互いに妨害行為は一切認められない」
悪魔「会話するぐらいならいいが、露骨にボタン押しを阻害するような行為は即負けだ」
悪魔「我は悪魔だが、ゲームにはフェアに挑むと誓おう」
女「オッケー、分かったわ」
悪魔「ゲーム……スタートだ!」
ピーピー
女「あー、これがアラームね。音量は大きくないけど、普通の会話程度で聞き逃すほどのもんでもないわね」
女「ほいっ」ポチッ
悪魔「ふん」ポチッ
女「なるほど、これを繰り返すわけだ」
悪魔「そういうことだ」
ピーピー
女「ほいっ」ポチッ
悪魔「……」ポチッ
3時間経過……
女「えいっ」ポチッ
悪魔「……」ポチッ
6時間経過……
女「また鳴った」ポチッ
悪魔「……」ポチッ
女「よっと」ポチッ
悪魔(ここからだ……)ポチッ
悪魔(このゲームは……30分ごとのアラームを聞き逃さないでいられるか、を競うものではない)
悪魔(つまるところ、“眠気”との戦い!)
悪魔(さあ、人間よ。どこまで我と根比べできるか、見せてもらおうではないか!)
ピーピー
女「だんだんとこのアラーム音が可愛く思えてきたわ」ポチッ
悪魔「余裕だな」ポチッ
悪魔(たしか、この女と一緒にいた男はこのぐらいで脱落していたか)
悪魔(こいつ……なかなか粘るではないか。こうでなくては面白くない)
ピーピー
女「お、鳴ったわ」ポチッ
悪魔「……」ポチッ
悪魔(人間の寝ないでいられた世界記録は、たしか11日間……)
悪魔(もうそろそろ、限界のはずなのだが……)
悪魔(ふん……悪魔が人間に負けるはずがない!)
女「ちょっと瘴気吸おうっと」スゥ…
悪魔(この女はまるで眠りに落ちる気配がない……。なんなんだ、この女は!?)
悪魔「……」ウト…
悪魔「ぐっ!?」
ピーピー
悪魔「うわっ!」ポチッ
女「ほいっ」ポチッ
悪魔「ZZZ……」
女「お、きたきた」ポチッ
悪魔「――ハッ!」
女「10秒経過~、私の勝ちね」
悪魔「あああ……そんなバカな……!」
女「約束通り、彼の“睡眠”は返してもらうわ、悪魔さん」
悪魔「ぐぞぉぉぉぉぉぉぉ!!!」
…………
……
男「あ、戻ってきた!」
男(といってもこっちはほとんど時間経過してないけど)
男「どうだった?」
女「勝ったわ。大勝利!」
男「ホントかよ!?」
女「あの悪魔、フェアなのは間違いないから、もうあなたぐっすり眠れると思うよ」
男「あ、ありがとう……!」
女「んー、ちゃんと数えてないけどかなりかかったよ」
男「しかし、よく勝てたな……悪魔相手に」
男「眠くなった時はどうやって目を覚ましてたの?」
女「眠くなるもなにも、私そもそも起きてないし」
男「……え?」
女「ようするに、今私は眠ってるの。こうして喋ったりしてるのはある種の夢遊病みたいなもん」
男「いつから……?」
女「生まれてからずっと。一瞬たりとも起きてたことがないの」
男「だけど、こうやって意思疎通できてるし、どう見ても起きてるじゃん!」
女「そうなんだけどさ。脳波とか調べると、完全に睡眠状態にあるんだってさ。不思議でしょ?」
男「……!」
女「だから正直、あなたの寝てない自慢にイラッともきたの。こっちは起きてないのにさ」
男「君が起きたら……君はどうなっちゃうの?」
女「分かんない。起きたことないから」
女「あの悪魔だったら、もしかしたら私を起こせたかもしれないね。もう会うつもりもないけど」
女「どういたしまして」
女「あ、そうだ! せっかくだから私の今までの人生について語らせてよ!」
女「助けてあげたんだから、それぐらい聞いてくれるでしょ?」
男「も、もちろんいいよ」
男(彼女のおかげで、俺は久しぶりに“睡眠”を取り戻せたけど……)
男(彼女の“起きてない自慢”を聞くため、まだしばらく眠れそうにないな……)
―おわり―
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コメント一覧 (9)
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- 2020年07月17日 21:00
- 寝てない自慢は繰り返しアピールしてくるから自慢なのであって起きてない自慢は自慢じゃないだろ
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- 2020年07月17日 21:00
- 人は その人生を全うするまで 何者でもありません 終わって初めて人として完成するのです
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- 2020年07月17日 21:59
- 休みなのに仕事の日と同じ時間に目が覚めるのは悪魔のせいなの?
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- 2020年07月17日 22:59
- なにこのキモい文章。もはや病気でしょ。
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- 2020年07月17日 23:26
- ナスD「寝てない」
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- 2020年07月18日 00:53
- 話が長くてつまらない人みたいなSSだな
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- 2020年07月18日 14:20
- なるほど
面白かった
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- 2020年07月20日 22:23
- まあ、うん
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- 2020年07月30日 01:53
- おもろっ、オチに一本取られたわ