殺し屋「あっ、これ進研ゼミで殺ったのと同じだ!」
- 2020年07月14日 00:10
- SS、神話・民話・不思議な話
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殺し屋「それがそのぉ……ガードが固くて……なかなかチャンスがなくてですね……」
依頼人「この役立たずが! もういい! 他の殺し屋に頼む!」
殺し屋「ま、待って下さい! もう一度チャンスを……」
依頼人「自分でチャンスも作れぬ奴に、チャンスなどやるか! このグズがっ!」
スタスタスタ… バタンッ!
殺し屋「はぁ……」
殺し屋「ああ……ダメだった」
殺し屋「赤ん坊の頃親に捨てられ、少年時代は教師に見捨てられ、ついに裏社会に足を踏み入れ」
殺し屋「最後の手段で始めた殺し屋稼業だけど……ここでもダメかぁ……」
殺し屋「もう野垂れ死にするしかないのか……」
女暗殺者「……」
女暗殺者「だったらさ、進研ゼミ始めてみない?」
殺し屋「進研ゼミ?」
殺し屋「まあ、一応な。通信教育だろ?」
女暗殺者「そう。ようはあれの殺し屋バージョン」
女暗殺者「最後までこなせば、伝説の殺し屋“ブラッド”級の実力になること間違いなしよ!」
殺し屋「マジかよ」
女暗殺者「かくいう私も、進研ゼミのおかげでメキメキ腕を上げてね」
女暗殺者「この一週間で、三件も仕事こなしちゃったもん。おかげでしばらく豪遊できるわ」
殺し屋「すげえ」
殺し屋「だけど……高いんだろ? 通信教育やる金なんて……」
女暗殺者「それが今なら、無料キャンペーンやってるんだって!」
殺し屋「ええ!?」
女暗殺者「どうする?」
殺し屋「そりゃあ……やらない理由がないだろ。このままじゃどうせ生きていけないんだし」
女暗殺者「決まりね」
殺し屋(教材が届いた……さっそくやってみるか)
殺し屋(なになに? ……標的が以下のような条件で夜道を歩いてます、どう殺害しますか?)
殺し屋(暗いし、正面から一気に心臓を……!)カリカリ
殺し屋(よし、次の問題!)
殺し屋(次のうち、神経毒はどれでしょう……ヤバイ、分からん)
殺し屋(えぇっと……)
女暗殺者「じゃあこれを採点してもらうから」
殺し屋「誰に?」
女暗殺者「そりゃ決まってるでしょ。進研ゼミといったら“赤ペン先生”よ」
殺し屋「ふうん」
女暗殺者「赤ペン先生の採点が終わったら、また届けに来るから」
殺し屋「悪いな」
殺し屋「ゲ」
殺し屋(添削されまくりじゃねえか……。0点といっていいぐらいだ)
殺し屋(ふむふむ、こういう時は背後から忍び寄って首を狙うのがベストか……)
殺し屋(他の問題も、分かりやすく正解が書いてあるな)
殺し屋(よーし、きっちり復習しよう! なにしろ後がないんだ!)
殺し屋「うわっ、また間違いだらけ……」
~
殺し屋(屋内にいる標的数人を、効率的に殺害するには……)
殺し屋(あ、ガスが使えるんじゃないか!?)
~
殺し屋「おお、褒められてる! 珍しい!」
殺し屋(だけどガスから逃れた奴への対処も必要か……なるほど、勉強になる)
殺し屋(それにしても、不思議なもんだ……)
殺し屋(こうして問題を解いてるだけで、自分がどんどん殺しに成熟してってる感覚がある)
殺し屋(きっと問題や、赤ペン先生の添削の仕方が上手だからだろうな)
殺し屋(だけど、そろそろ物足りなく……)
殺し屋「え」
女暗殺者「なんと“実際の仕事”をこなしてもらうわ」
殺し屋「マジで……!?」
女暗殺者「仕事内容はこれ、成功すれば報酬も支払われるわ」
殺し屋「……!」
女暗殺者「どうする? やる?」
殺し屋「やるさ。ここまで勉強した成果を試したい!」
護衛A「お疲れ様です」
護衛B「お車へどうぞ」
中年男「今日の会合も上手くいったわい」
殺し屋(深夜0時、標的はあの中年……ボディガードが二人……)
殺し屋(あ、これって……進研ゼミでやったのとほぼ同じ状況じゃないか!?)
殺し屋(なら殺れる!)
殺し屋(首に毒針……これで終わりだ)チクッ
中年男「ううっ……」ドサッ
護衛A「え?」
護衛B「どうしました、先生!? ……大変だ、息してない!」
殺し屋(仕事完了)
殺し屋(まさか、こうまで鮮やかに上手くいくとは……恐るべし進研ゼミ)
殺し屋(今日の問題は難しいな……)
殺し屋(屈強のボディガード10人に囲まれた国の重鎮クラスか……)
殺し屋(うーん、あらかじめこの区画に武器を隠して……)
~
女暗殺者「はい、お返事」
殺し屋「お、来た来た」
殺し屋「あー……俺のプランだと射撃される可能性が高いか……。考えが浅かった」
女暗殺者「部下を10人ぐらい引き連れてるから気をつけてね」
殺し屋「了解」
~
ザシュッ! ザクッ! ズシャッ!
殺し屋「これで……部下は全滅」
殺し屋「まさか、あんたが標的になるとはな……。運命を感じるよ」
依頼人「お、お前は……あの時のヘタレ殺し屋!?」
依頼人「だから見逃してくれないか! 頼むっ!」
殺し屋「関係ない。あの時はあの時、今は今。今、俺の標的はあんた。それが全てだ」
ドスッ!
依頼人「ぐふっ……!」
依頼人「ク、クク……人というのは、変われば変わるものだな……」
依頼人「この手並み、この冷酷さ……まるで、噂に聞く“ブラッド”の、ようだ……」ドチャッ…
殺し屋「……」
殺し屋「ありがとう」
殺し屋(いくら俺でも、この段階になってくるとさすがに気づく)
殺し屋(本家の進研ゼミをやってるのはベネッセという会社だが)
殺し屋(あれほど有名な企業が裏では殺し屋向けの通信教育事業を行っている?)
殺し屋(やるわけがない)
殺し屋(バレたら会社の経営が危うくなるぐらいじゃ済まない。リスクしかないのだから)
殺し屋(現に、俺がいくらベネッセを調べても、そんな証拠は一切出てこなかった)
殺し屋(俺はいつも、ある人物から教材を受け取り)
殺し屋(ある人物から採点結果をもらい、仕事もある人物から受けている)
殺し屋(もはや疑う余地はなかった)
殺し屋(“赤ペン先生”の正体は――)
殺し屋「なんだ」
女暗殺者「最終試練だってさ」
女暗殺者「“町外れの廃工場に夜9時に来て”だって」
殺し屋「分かった」
女暗殺者「心してかかった方がいいよ。生半可な気持ちだと……死ぬよ」
殺し屋「ああ」
<廃工場>
殺し屋「……」ザッザッザッ…
殺し屋「赤ペン先生、いるんだろ」
殺し屋「……」
ゾワッ
殺し屋(背後に強烈な殺気ッ!)
シュバッ!
殺し屋「……」ザッ
赤ペン先生「……」ザッ
殺し屋(全身赤づくめの……暗殺者!)
殺し屋(こいつが……赤ペン先生かッ!)
赤ペン先生「……」ジリ…
殺し屋(恐ろしく強い……捕縛は不可能)ジリ…
殺し屋(ナイフで急所を的確に狙ってくる――)
赤ペン先生「……」ヒュッ
殺し屋(針! おそらく猛毒!)
殺し屋(受け止めたり、弾いたりしたら隙が生まれる! だから――)
殺し屋(受け流す)スルッ
赤ペン先生「!」
ドゴォッ!
赤ペン先生「……っ!」
殺し屋(心臓ががら空き! まっすぐに突く!)シュッ
赤ペン先生「……」サッ
殺し屋(と見せかけて、足を踏みつけ!)
グシャッ!
赤ペン先生「うぐっ……!」ミシ…
ザンッ!
赤ペン先生「あ、ぐ……!」ブシュゥッ…
ドザァッ…
殺し屋(やった、が……)
殺し屋(こいつの正体は俺の予想と違う……。“女暗殺者”じゃないッ!)
殺し屋「!」
女暗殺者「殺し屋……それと“ブラッド”」
殺し屋「ブラッド?」ハッ
赤ペン先生「……」
殺し屋(赤ペン先生の正体は――伝説の殺し屋“ブラッド”だったのか!)
殺し屋「なぜだ!? なぜ、あんたほどの殺し屋が俺のためにこんな回りくどいことを……!」
赤ペン先生「……大きく、なったね」
殺し屋「!」
赤ペン先生「ええ……私はかつて、あなたを、捨てた……」
赤ペン先生「殺し屋、だった私にとって……あなたは足手まといに、過ぎなかったから……」
赤ペン先生「だけど、この体は病にむしばまれ……余命いくばくもないことを知った……」
赤ペン先生「そしたら、どうしてもあなたを一目見たくなって……」
赤ペン先生「あなたも殺し屋になってること……知った……」
女暗殺者「私がこの人に教えを受けたのは本当の話よ」
女暗殺者「そして、頼まれたの」
女暗殺者「息子であるあんたに殺しの全てを教えたいけど、直接教えることはできない」
女暗殺者「だから、通信教育を装うから、仲介役になってくれ……って」
赤ペン先生「本当に……ごめん、ね……」
殺し屋「母さん……!」ギュッ
赤ペン先生「母さん……と、呼んでくれる、の……」
赤ペン先生「あり……が、と……」
殺し屋「……!」
…………
……
……
政府高官「というわけで、この組織の首領を潰さねば、我が国の治安は著しく悪化する!」
政府高官「ぜひ力を貸して欲しい!」
殺し屋「分かった。報酬と仕事の話に移ろう」
政府高官「……!」
政府高官(並みの……いや腕の立つ殺し屋でもまず断るだろう依頼をあっさりと……)
政府高官(さすが、現代最高の職業暗殺者ともいわれている男だ……)
殺し屋「ああ、ちょっとある組織の首領を殺ってくる」
女暗殺者「大仕事じゃないのよ。くれぐれも気をつけてよ」
殺し屋「問題ない」
殺し屋「進研ゼミで殺ったのと同じだ」
END
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コメント一覧 (7)
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- 2020年07月14日 00:18
- 短くまとまってて割と面白かった
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- 2020年07月14日 01:54
- はぁ…?
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- 2020年07月14日 15:32
- 進研ゼミの漫画、女性がとにかく可愛いことが多いよな。
時によっては主人公マッマも可愛かったりするし。
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- 2020年07月14日 20:09
- まあまあよかtったうyぽ
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- 2020年07月14日 20:34
- 真剣蝉時雨
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- 2020年07月14日 23:54
- 最期までちゃんと殺りきれるの?がなかった
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- 2020年07月15日 03:57
- ※2はどうしたの?もしかして話が理解できなかった?