女上司「終電……行っちゃったね」若手社員「追いかけましょう!」
- 2020年07月09日 00:10
- SS、神話・民話・不思議な話
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女上司「あっ……」
若手「あっ……」
女上司「終電……行っちゃったね」
若手「追いかけましょう!」
女上司「それしかないか」
若手「電車より速く走れますか?」
女上司「ナメないでくれる?」
ダッ!
若手「追いつきましたね」
女上司「よーし、飛び乗るわよ」
若手「はいっ!」
バッ
ガシィッ!
女上司「ガラスを割って……」パリィンッ
女上司「失礼しまーす」
若手「間に合いましたね! これで家に帰れます!」
女上司(同じ車両に……私たちの他に客は四人か)
グラサン「……」ジロッ
女「なにあれ……」
男「見ない方がいいぜ」
酔っ払い「ウイ~……」ヒック
女上司(いかにも悪そうな奴に、若いカップル、酔っ払いのおっさん……)
若手「……」
女上司「どうしたの?」
若手「この電車、網棚に荷物が多くないですか?」
女上司「たしかにね……」
女上司「どれ、一つ開けちゃいましょうか」ヒョイッ
若手「あっ、駄目ですよ!」
女上司「いいのいいの」ベリッ
若手「白い粉……ですね」
女上司「小麦粉じゃないってことは確かね。他のも開けてみましょう」
ガサガサ…
若手「こっちには銃が!」
女上司「これは……象牙だわ。ほら、一本丸ごと入ってる」
若手「象牙の取引は厳しく制限されてるはず……!」
グラサン「てめえら……見ちゃいけねえもんを見たな……」
二人(銃!?)
パパンッ!
グラサン(かわしやがった!)
若手「はあっ!」バキッ!
グラサン「ぐほあっ……!」ドサッ
女上司「ナイスパンチ!」
女「シャアッ!」バッ
女上司(こいつら……爪を装備してる!)
男「キョアアアアアッ!」シュババババッ
女「キエエエエエッ!」シュババババッ
女上司「なるほど、コンビネーションってわけ……だけどそんな稚拙なコンビネーションじゃ」
女上司「私の首は獲れないわよ」ガシッ
男女「!?」
若手(二人の頭を掴んだ!)
ゴツンッ!
男「が……」
女「は……」
ドササッ…
若手「やったぁ!」
酔っ払い「やれやれ、三人ともだらしねえ。俺の出番かい」コキッ
若手(こいつも!?)
若手「ぐっ……!」
若手「これは……酔拳!?」
酔っ払い「そうよ、俺は酔拳の達人よ!」
酔っ払い「うぅぅぅっぷ!」ドカカカッ!
若手「ぐあああっ!」
女上司(手出しはしないわ……)
女上司(ここで殺られたら、所詮それまでの男だったということ!)
バキィッ!
若手「あぐぁ……!」
若手(どんどん動きが鋭くなる!)
酔っ払い「俺様は酔えば酔うほど強くなるのよぉ~!」
若手「……!」
若手(そうか! こいつの攻略法が分かったぞ!)
若手(俺のカバンの中には、飲み会のためにアレが入っている!)
若手「“ウコンの力”を喰らえッ!」
酔っ払い「ごもっ!?」
グビグビグビ…
酔っ払い「ううう……」ビクビクッ
酔っ払い「し、しまった! 酔いが弱く……」
若手「今だッ! 駆け込み乗車タックル!」ダッ!
ドゴンッ!
酔っ払い「ぐはぁぁぁ……!」
女上司「よいサラリーマンのみんなは決して真似しちゃダメよ」
若手「なんなんでしょう、この電車は」
若手「ヤバイ荷物があったり、客が襲いかかってきたり……」
女上司「……」
女上司「こんな噂を聞いたことがあるわ」
女上司「日本には、普通の電車を装って違法な商品を運搬する犯罪組織があると」
女上司「その組織の名は……≪トレイン≫!」
若手「トレイン……!」
『その通り!』
二人「!!!」
女上司「あなたが組織の長ね!」
放送『我らの秘密を知ってしまったからには、君たちには消えてもらわねばならない』
放送『全構成員に告ぐ! この二人を抹殺せよ!』
放送『私は運転席にいる……君たちの健闘を祈っているよ』プッ…
若手「おい、待てっ!」
女上司「気をつけて……来るわよ!」
「敵はどこだ!」 「ブッ殺せ!」 「始末しろォ!」
女上司「ざっと30人ってところか」
若手「……」ゴクッ
女上司「ここから先、あなたのフォローをしてる余裕はないわよ」
若手「俺とて企業戦士……自分の身は自分で守ります!」
女上司「いい返事だわ」
ザクッ!
ドシュッ!
グサッ!
「うぎゃっ!」 「ぐげっ!」 「うぎゃあっ!」
構成員A「あの女、つええぞ!」
構成員B「だったら男の方からだ!」
若手「こういう時は結構いい武器になるんだ」シュルルッ
若手「ネクタイウィップ!」ヒュンッ
ビシッ!
バシッ!
ズバシュッ!
「ぐはっ!」 「ぎゃっ!」 「いでえっ!」
女上司(へえ、なかなかやるようになったじゃない)
若手「なんだこいつ!?」
ヒュッ
若手「消えた!?」
若手「しまった、狙いは俺じゃない!」
女上司「後ろ!?」
痴漢「尻はもらったァ!」サワッ
痴漢「な……!? 尻で俺の手を挟んで……!」
女上司「痴漢なんか、こちとらピー年前からとっくに対策済みなのよ」
若手「ピー年前……」
女上司「女性の年を詮索すると、長生きできないわよ?」
若手「失礼しました!」
女上司「痴漢返し!」グインッ
痴漢「ぐはぁっ!」ズダンッ!
若手「お尻で投げ飛ばしたァ!」
若手「手強そうなのが来たな……」
殺し屋「今宵の相棒はよく切れる……」サッ
若手(ナイフを繰り出してきた!)
ザシュッ!
若手「ぐっ……!」
女上司「若手君!」
殺し屋「若造に、真の殺しというものを教えてやろう」
若手「……!」
若手(だけど付け入るスキは……ある!)
殺し屋「えっ」
殺し屋(メモ帳……こいつ本気か! 本気で学ぼうというのか!)
殺し屋「まず、刺すべき急所だが、素人は心臓を狙いがちだがこれは意外と狙いにくい――」
若手「スキありィ!!!」
ドゴォッ!
殺し屋「ぶへぇっ!」ドサッ…
若手「ふぅ……なんとかなった」
女上司「メモ帳を取り出すことで、殺し屋の“教えたがり”の心を突いたのね」
若手「ええ、人は得意分野の話になると、つい早口になってしまいますから」
スキンヘッド「だが、ガトリングガンにはかなうめぇ!!!」
ガガガガガガガガガガッ!
ガガガガガガガガガガッ!
ガガガガガガガガガガッ!
若手「うわっ、ずっと撃ち続けてますよ!」
女上司「弾切れも期待できそうにないわね……」
女上司「大丈夫、私たちは会社員よ。あの程度の弾幕、どうってことないわ」
若手「えっ!」
女上司「思い出すのよ……あの満員電車を!」
若手「そうか……あのギュウギュウに比べれば!」
サッササッ サササッサッ
サササッ サッ サッ
スキンヘッド「なにいいい!? 弾丸をかわしてるだと!?」ガガガガガッ!
若手「応!」
二人「とりゃあっ!!!」
ドゴォンッ!!!
スキンヘッド「ぶぎゃあああああっ!!!」ドサッ…
若手「ここまでだ!」
女上司「もうこの電車にはあなたしか残ってないわ!」
運転士「日本のビジネスマン・キャリアウーマンは日々軍隊並みの訓練をしているようなもの……」
運転士「――という噂はあながち笑い話でもないようだな」
運転士「だが、私も犯罪組織≪トレイン≫の長……」
運転士「そうやすやすと屈服はせん! 行くぞっ!」
女上司「……来るわよ! 気を引き締めて!」
若手「はいっ!」
運転士「よっと」ヒョイッ
若手(吊革につかまって……!)
運転士「ほれっ」
バキィッ!
若手「ぶっ!?」
若手(なんて身軽さだ……! 雑技団かこいつ……!)
運転士「ほいっと」ヒョイッ
運転士「そりゃっ!」
ドゴォッ!
女上司「きゃあっ!」
若手「大丈夫ですか!」
運転士「吊革は“倒れないようつかまるもの”としか思っていないお前たちにこんな芸当はできまい」
運転士「加えて、この電車は私にとって自宅のようなもの!」
運転士「お前たちは私に触れることさえできないッ!」
若手「揺れた!」ヨロッ
運転士「この勢いを利用して……」バッ
ドボォッ!
若手「うげっ……」
若手「揺れさえも……自分の武器に……!」
女上司「このっ!」ビュオッ
運転士「甘いッ!」ドガッ!
女上司「あ、ぐう……!」ガクッ
運転士「お前たちのたどり着く終点は……≪地獄≫だ。むろん折り返しなど不可能」
女上司「くっ……!」
若手「さ、最後に一つ……聞いていいか……」
運転士「……?」
若手「あんたは長年、電車を走らせ続けてきたんだろう。でなきゃ≪トレイン≫なんて組織は運営できない」
若手「あんたの攻撃からは、電車への愛がビンビン伝わってくる!」
運転士「!」
若手「なぁ……なぜこれほど電車を愛してるあんたが、違法商品の運搬なんて悪事を働くんだ!」
運転士「うぐっ……!」
若手「いや……電車の方だって、あんたがこんな犯罪するなんて望んでないはずだ!」
運転士「いきなり何をいう! お前に私の何が分かる!」
若手「分からないさ。だが……」
若手「電車が悲しんでることだけは分かる!」
運転士「!」
若手「耳を澄ましてみろ……電車の音に!」
運転士「くっ……!」サッ
ガタンゴトン… ガタンゴトン…
若手「聞こえたか?」
運転士「聞こえてないッ! なにも聞こえてなどいないッ!」
若手「まだ意地を張る気かッ! お前にはパンタグラフの嘆きが聞こえないのかッ!」
運転士「だまれええええッ!!!」ダッ
女上司(突っ込んできた!)
ミシ…
運転士「カウンター……か」
運転士「み、ごとだ……」ドサッ…
若手「はぁ、はぁ、はぁ……」
女上司(相手の拳を冷静に見切って、自分の拳を叩き込んだ……)
女上司(まるで手強い得意先との“打ち合わせ”における理想像ね)
女上司(成長したわね……)
運転士「だが、乗客は来る日も来る日もトラブルやクレームを引き起こす……」
『いつになったら運転再開すんだよ! もう一時間も待ってんだぞ!』
『この人痴漢でーす!』『違う、やってない!』
『今足踏んだだろうが!』『うるせえええええ!』
運転士「いつしか嫌気がさした私は、電車を悪用した犯罪に手を染めるようになっていたんだ……」
若手「……」
女上司「……」
運転士「そんなことをしても、電車が悲しむだけだというのに……」
若手「運転士さん……」
運転士「たしか、次の駅の近くには、警察署があったな……」
運転士「私は自首するよ」
「お供します!」 「俺も」 「私も!」
ザワザワ…
運転士「みんな……ありがとう」
若手「≪トレイン≫の部下たちも……!」
女上司「やってきたことはどうあれ、この人は皆に慕われていたのね」
女上司(私もこういう上司にならないとね)
女上司「終電を追いかけたら、まさか犯罪組織一つ潰すことになるとはね」
若手「社会人ってホント何が起こるか分かりませんね」
女上司「ここまで極端な例はなかなかないけどね」
若手「あっ、見て下さい。空が少し明るくなってますよ」
女上司「完全に徹夜しちゃったわね」
若手「目はギンギンに冴えちゃってますけどね。このまま会社に戻ってもへっちゃらです!」
女上司「若いっていいわね~」
若手「30分後ですね」
女上司「終電を追いかけた次は……始発を待つことにしますか!」
若手「はいっ!」
― 完 ―
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コメント一覧 (9)
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- 2020年07月09日 00:45
- 駅員さんこの二人無賃乗車です
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- 2020年07月09日 01:41
- 駅員さん私が痴漢です
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- 2020年07月09日 02:02
- そして取り残される鉄の塊
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- 2020年07月09日 03:14
- 最初の数スレで終わらせておけば面白かった
あとは蛇足
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- 2020年07月09日 03:15
- はぁ?
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- 2020年07月09日 08:25
- 駅員さん、器物破損の現行犯がいます。
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- 2020年07月09日 09:04
- 数スレもかけてたらえらいこったろ
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- 2020年07月09日 12:08
- おっ予想と違う、面白いんかな?→ん?→つまらん。読むの途中で終了
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- 2020年07月09日 20:23
- 出落ち