医者「すいません体内にメス置き忘れちゃいました」テヘッ 患者「テヘじゃねーだろ!!!」
- 2020年07月04日 00:10
- SS、神話・民話・不思議な話
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患者「ありがとうございます!」
医者「しかし、一つだけ気がかりなことが……。まあ、些細なことなんですが……」
患者「なんでしょう」
医者「すいません、体内にメス置き忘れちゃいました」テヘッ
患者「テヘじゃねーだろ!!!」
患者「大失敗じゃねーか! どこが成功なんだよ!」
医者「いやー……30分にも及ぶ大手術だったものでつい気が緩んで……」
患者「大して長くねーし!」
患者「わざわざ本名でいうなよ」
医者「ちなみにブラックジャックで一番好きな話は?」
患者「『上と下』かな」
医者「私は『人間鳥』です」
患者「また変わり種を……」
患者「ってブラックジャック談義してる場合じゃねーだろうが!」
医者「おそらく、カルシウムとかがメスを覆って……」
患者「だからブラックジャックはもういいよ! 俺はどうなるんだ!?」
医者「一年以内にメスが重要な臓器を傷つけ貴方が死に至る可能性は……95%といったところでしょうか」
患者「高い! ほぼ確実に死ぬじゃねーか!」
医者「メスって刃物ですしねえ」
患者「今すぐもっかい手術して取り除けよ! 俺はまだ死にたくねーよ!」
医者「うーん……」
患者「何か問題があるのか? 取りにくい場所にあるとか……」
医者「だからもうちょっと待ってもらえないかなと」
患者「待てるか!」
医者「そこを何とか」
患者「何とかして欲しいのはこっちだよ!」
医者「もう一声!」
患者「隠蔽してもらいたいなら、せめてもう少し態度考えろ!」
医者「やるがいいさ!」
患者「!?」
医者「訴えるのなら訴えてみろ……私は法律などに屈しない! 医者のプライドにかけて最後まで戦う!」
患者(うう……まるで医療ドラマの主人公のような迫力! こっちが悪役になった気分だ……)
…………
……
患者「ってわけで、俺の体内にはメスが入ったままなんだ」
同僚「へぇ~……」
同僚「なんで訴えないわけ?」
患者「あそこまで開き直られると、かえって感心しちゃってさ……」
患者「ま、いずれ再手術してくれるっていうし。しばらくはメスと共同生活するさ」
患者「もし突然死したら、仕事引き継いでくれな」
同僚「お、おう」
患者「なんだい?」
後輩女「体内にメスがあるってホントですか?」
患者「ああ、お腹のこの辺りにね」
後輩女「私、金属探知機をいつも持ち歩いてるんですけど、探知してもいいですか?」
患者「かまわないけど……」
後輩女「どれどれ……」サッ
ピーピー…
後輩女「あっ、すごい! ピーピーいってる!」
患者「ハハ……」
課長「コラ、ため息なんてついて! 最近たるんでるぞ!」
患者「そりゃたるみますよ。なんたって、一年以内に95%の確率で死ぬんですから」
課長「うむむ……」
患者「だけど、そうもいってられませんよね。ちゃんと仕事はしないと」
課長(なんと励ましたらいいのやら……)
患者(やっと仕事が終わった……まっすぐ帰ろう)スタスタ…
強盗「やい、てめえ!」
患者「なんだい?」
強盗「金出しな。出さなきゃ刺す」ギラッ
患者「あいにく手術して退院したばかりで、お金なんかないよ」
強盗「そうかい……だったら死になッ!」
グサッ!
患者「ぐあっ……!」
患者(まさか……こんな死に方することになる、とは……)
強盗「さ、刺さらねえ……」
患者(体内のメスが……俺を守ってくれたのか!?)
強盗「ひいい、バケモンだぁ!」タタタッ…
患者「あっ、待て!」
患者「……」
患者「ありがとう……メス……」
患者(メスだって好きで俺の余命を短くしてるわけじゃないんだ)
患者(ミスを憎んで……メスを憎まず!)
患者(これからは体内にメスがあることを嘆くんじゃなく、メスと前向きに人生を歩んでいこう!)
…………
……
患者「これ、できました!」サッ
課長「うむむ、すごい!」
課長「君ぃ、このところメキメキ仕事で調子を上げてきたねえ」
患者「ええ、意識改革したおかげで、体内にメスがあるという状況を楽しめるようになりましてね」
患者「いつメスに命を奪われても悔いはないですよ!」
課長「できれば奪われないようにした方がいいとは思うがね……」
後輩女「いいですよ!」
ピーピー…
後輩女「あれ、場所が変わってる!」
患者「だんだんとメスを自在に動かせるようになってきたんだ」
~
患者「隠し芸やりまーす! 体内のメスを動かしまーす!」
患者「よっ、ほっ」メコメコ…
オオー… スゲー… ウゴイテル…
パチパチパチ…
患者(明日は出張だから早起きしないと……)
患者(だけど、今から寝て起きれるかなぁ? 俺ぐっすり寝ちゃうとホント起きないし……)
患者「ええい、ままよ!」
患者「ぐぅ、ぐぅ、ぐぅ……」
…………
……
患者「いでぇっ!!!」ガバッ
患者「5時……ジャスト」
患者(今の痛みは……まさかメス?)
患者「そっか……メスが起こしてくれたんだ……」
患者「ありがとな」
患者「出張報告書です」
課長「ご苦労」
課長「ほぉ~、なかなか実りのある出張だったようだね」
患者「ええ、目覚めバッチリ。プレゼンも大成功しました」
患者「これもメスのおかげですよ!」
患者「メス……俺とお前はずっと一緒だ!」
<病院>
患者「お呼び出しを頂きまして……なんでしょう」
医者「私があなたの体内にメスを置き忘れてから、しばらく経ちましたよね」
患者「そうですね」
医者「なので、そろそろ取り出す手術をしようかと思いましてね」
医者「手術日程などを調整したいと……」
患者「……」
医者「断る? どういうことです?」
患者「このまま体内に入れておいていいということです」
医者「な、なにをいってるんだ! 入れておいたらどうなるかはちゃんと説明しただろう!」
患者「はい、その上でこういう結論を出したんです」
医者「このままだと死ぬぞッ!」
患者「このメスが原因であるなら、今すぐ死んでもかまいません」
患者「おっと、そんなことをしてみろ。俺はあんたの手術ミスを世間に公表するぞ」
医者「くっ……卑怯な……!」
患者「卑怯といわれようとなんだろうと、俺はこのメスを手放すつもりはありません」
患者「では、失礼します」バタン…
医者「やれやれ……こんなクレイジーな患者は初めてだ……」
患者「俺たちは……ずっと一緒だ……」
患者「ずううっと……」
患者「うっ!」
メコメコ…
患者(な、なんだ!? 体内のメスが……急に動き出して……!)
グニグニ…
患者(俺の体内を切り裂くなら望むところだが……これはそういう動きじゃない!)
患者「オエエエエエエエエッ!!!」
カランッ
患者「メスが……出て来ちまった……」
カランカラン…
患者「あっ、転がって……」
患者(あっという間に……どこかに消えちまった……)
患者「メスーッ!」
患者「メースッ!!!」
患者「メェェェェェスッ!!!」
患者「ンメェェェェェェェェェェェェェェェッス!!!!!」
…………
……
患者「……」ハァ…
ヒソヒソ…
同僚「おい、あいつなんであんなに落ち込んでるんだ?」
後輩女「体内のメスが、どこか行っちゃったらしいんですよ……」
同僚「それって命が助かったってことじゃないか。なんで落ち込むんだよ?」
後輩女「愛着が湧いてたんですかねえ……」
医者「ええっ、もう一度メスを体内に入れろ!?」
患者「はいっ、お願いします!」
医者「そんなことできるわけないじゃないですか!」
患者「どうしても入れて欲しいんです!」
医者「ダメですよ……実は私、あの一件が院長にバレてしまいましてね……」
医者「“今度同じことやったらてめえをバラして臓器総売りするからな”って脅されてるんです」
医者「いや、脅しじゃなく……マジでやる人だ、あの人は……」
患者「……」
ヒュゥゥゥゥ…
患者「メス……」
患者「なぜ突然俺から離れてしまったんだ……」
患者「俺はもう……メスが体内にない人生なんて耐えられない……」
患者「耐えられないならいっそ……」
患者「ここから身を投げて死のう……」グッ
患者「なんだお前」
女「死んでは、ダメ」
患者「止めても無駄だ。俺にはもう生きる理由がない」
女「そんなことない」
患者「あるさ。俺は大切なものを失ってしまった。だから死ぬんだ!」
女「あなたは……失ってなんかいない!」
患者「ハァ?」
女「それは……」
患者「名乗れないのか? 名乗れない奴のいうことに従う気なんかないね」
女「……」
患者「ふん」スタスタ
女「どこへ行く?」
患者「別の場所で死ぬ」
女「だったら私もついていく」スタスタ
患者「ついてくるな!」
患者(ったく、誰なんだよこの女は……)
強盗「……」
患者「お前は……! 以前俺を刺そうとした……!」
強盗「見つけたぞ、化け物……」
強盗「俺はお前と出会って以来、トラウマで強盗できなくなっちまった……」
患者「いいことじゃないか」
強盗「よくないッ! 強盗は俺にとって日課であり、生きがいだったんだ……」
強盗「だから今こそお前を刺し……強盗に返り咲いてやる!」ギラッ
患者「くっ……!」
患者(こんな奴に殺されるのはさすがに嫌だが、俺を守ってくれたメスはもういない……)
患者(ここまでか!)
女「この人に手は出させない」ババッ
患者「お前!?」
強盗「どけ、女ァ!」
患者「あいつはマジで刺すぞ! 逃げろォ!」
女「逃げるまでもない……」
女「成敗ッ!!!」
スパパパパッ
強盗「わっ!? 手刀で包丁がバラバラに……」
強盗「!?」ハラ…
強盗「ひいいいい! 俺の服が細切れに……!」
女「自首しろ」
女「さもなくば、次はお前の首を……」サッ
強盗「……!」
強盗「すいませんでしたぁぁぁぁぁ! もうシャバは嫌だぁぁぁぁぁ!!!」タタタタタッ…
患者「……」
患者「君は……」
患者(あの切れ味……間違いない!)
患者(俺が体内にずっと感じていた……あの鋭さだ!)
患者(この女……この女性の正体は……まさか、まさか……)
女「……そうだ」
女「私はあなたの身を案じ、自ら体から出た……」
女「あのままではいずれ、体のどこかを傷つけてしまう日が来ると分かっていたからだ」
女「だが、私はあなたのことを忘れられなかった」
女「それどころか、来る日も来る日もあなたを想ってしまった。そうしたら……」
患者「その姿に……?」
女「……」コクッ
女「こんな荒唐無稽な話、信じてもらえるとは思わなかったから……」
女「それに、怖かった……。この姿を受け入れてもらえるかどうか……」
患者「気を使わせてしまってすまない……!」
患者「ずっと会いたかった!」
女「私もだ!」
ギュッ…
患者(メスは……女性だったんだ。メスだけに!!!)
女「私もだ……」
患者「もう俺は君と離れたくない! ずっと一緒にいたい!」
女「私も、あなたの女になりたい!」
患者「ありがとう……」
患者「だけど、いいのかな……。君の元々の持ち主は――」
医者「かまわないさ」
患者「!」
患者「お医者さん……!」
医者「幸せに……してやってくれ」
患者「はいっ!」
女「ありがとう……」
…………
……
女「はっ!」
スパパパパッ
女「よし……今日もいい料理ができたぞ」
患者「おはよう」
女「おはよう、あなた」
患者「相変わらず、素晴らしい切れ味だね」
女「ええ、あなたと結婚してから、ますます磨きがかかっている」
女「あなたのヒゲも……」シュバババッ
患者「見事」ツルンッ
患者「行ってきます」
女「私のお弁当、いつも持っていって食べてくれてありがとう」
患者「当たり前だろ。愛する君の作った弁当を置き忘れたりするもんか」
おわり
元スレ
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https://hebi.5ch.net/test/read.cgi/news4vip/1593777619/
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コメント一覧 (18)
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- 2020年07月04日 00:25
- メスの顔になってやがる……
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- 2020年07月04日 00:52
- これがほんとの医療メス!なんちゃって!
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- 2020年07月04日 00:55
- イイハナシダナー
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- 2020年07月04日 02:11
- 縫合用のホチキス針とか結んである縫合糸とか
イロイロと肉に埋まったまま退院(表面からは見えない)
糸の方は後になってチクチク感じられた
釣り糸みたいな硬い糸で切り口鋭いタイプ
再手術何回か予定していたので後日別手術のついでに摘出
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- 2020年07月04日 02:25
- >>4 ステープラーを皮下に使う訳がないだろ 縫合糸なんてどうせ吸収糸ってオチだろ
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- 2020年07月04日 02:26
- つまんね
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- 2020年07月04日 03:11
- こいつウルヴァリンみたいな体質してんだろうな
痛みはあってもすぐに傷が治るから動くことに支障は無さそうだし
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- 2020年07月04日 04:39
- 途中の狂気VS狂気のと頃は面白かったわw
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- 2020年07月04日 05:49
- イイハナシダナー
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- 2020年07月04日 07:59
- ブラックジャック思い出した
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- 2020年07月04日 11:16
- ノリが激寒
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- 2020年07月04日 16:22
- これは本当松
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- 2020年07月04日 16:23
- 長いしツマラン
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- 2020年07月04日 21:09
- ※13
そうか?かなり綺麗にまとまっていたし、面白かったぞ?
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- 2020年07月04日 21:44
- 間黒男(マグロ男)
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- 2020年07月04日 21:58
- 正直羨ましい…
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- 2020年07月05日 00:26
- ずっと愛着持ってた物が美女になってそいつと結婚するってストーリーめっちゃ昔話でありそう
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- 2020年07月06日 00:48
- クレイジークレイジー