奴隷「今日も棒を押して器具を回す作業を始めるか!」女主人「回せ回せぇ!!!」ビシッ バシッ
ゴリゴリ…
奴隷「はぁ、はぁ、はぁ……」
ゴリゴリ…
女主人「ペースが落ちているぞ! もっと回せぇ!」ビシッ!
奴隷「ぐっ!」
女主人「回せ回せぇ!!!」バシッ!
奴隷「ぐっ……うおおおおおっ!」
ゴリゴリゴリ…
女主人「ほら、特製のドリンクだ」ポイッ
奴隷「あざっす」パシッ
奴隷「……」グビグビ
奴隷「うめえ~!」
女主人「いよいよ大会が間近に迫ってきたな」
奴隷「ええ」
女主人「うむ、なんとしても優勝しよう」
奴隷「じゃ、さっそく特訓を再開しましょう」
女主人「大丈夫か?」
奴隷「ええ……回したくてウズウズしてるんです!」
女主人「分かった……ならば手加減はしないぞ! 存分に鞭を振るってくれる!」
…………
……
ワイワイガヤガヤ…
奴隷「いよいよ大会ですね」
女主人「コンディションはどうだ?」
奴隷「バッチリです。あなたこそどうです?」
女主人「今日ほどいい鞭を打てそうな日はないといえよう」ヒュルンッ
奴隷「ゾクゾクしてきましたよ」
女主人「まったく……すっかり私の鞭に味をしめおって」
係官「本戦トーナメントに出場できるのは、あれを回せたペアのみとなります!」
ドン!
奴隷「あの器具を回すのは、かなりパワーがいりそうですね」
女主人「ああ、なかなか骨が折れそうだ」
「動かねえ……!」グッ…
「ち、ちくしょう……!」ググッ…
続々とペアが脱落する中――
係官「続いてのペア、どうぞ!」
奴隷「行きましょう」
女主人「ああ、予選などでつまずいておれんからな」
奴隷「むんっ!」ググッ…
ゴリゴリゴリ…
オオー… スゲー… アッサリト…
係官「合格! 本戦出場決定!」
奴隷「ありがとうございますぅん!」
奴隷「だけど他にも手強そうな奴はいます……油断はできませんね」
グラサン「リズムで回すYo!」ゴリゴリ…
マッチョ「楽勝だぜぇ!」ゴリゴリ…
ベテラン「奴隷歴40年の私にはなんてことはない」ゴリゴリ…
国王「奴隷と主人たちよ!」
国王「古来より、棒を押すと回る器具を回転させる作業は、奴隷にとっては基本かつ最高峰の労働とされてきた!」
国王「この大会は、おぬしたちにとってはまさに晴れ舞台!」
国王「悔いの残らぬよう、全力を尽くしてもらいたい」
ワァァァァァ…
パチパチパチパチパチ…
奴隷(対戦相手は、予選でも妙に目立ってたファンキーな奴か……)
グラサン「Oh、よろしくNa! 正々堂々戦おうZe!」
奴隷「ああ、もちろんだ!」
審判「では両者、器具の棒を持って!」
審判「時間内により多く回せたペアを勝利とする!」
女主人「さあ、回せっ!」ビシッ!
奴隷「はいっ!」グッ
ゴリゴリゴリ…
サンバ女「さあ、踊るわよ!」
グラサン「リズムなら負けないZe!」
ゴリゴリゴリ…
実況『両ペアとも、互角の滑り出しです!』
オオッ…
グラサン「Yo! Yo! Yo!」
ゴリゴリゴリゴリゴリ…
実況『おーっと、ここにきてグラサン・サンバ女ペアがリズムに乗ってきた!』
実況『ものすごい速さで回しております!』
奴隷「だけど、リズムじゃ俺たちも負けてませんよね?」
女主人「その通りだ!」
女主人「ほいっ!」ビシッ!
奴隷「さっ!」ゴリゴリ…
女主人「ほいっ!」ビシッ!
奴隷「さっ!」ゴリゴリ…
実況『こ、これは……!?』
観客B「モチツキ……!?」
観客A「容器に入ったもち米を、一人がハンマーで叩き、もう一人が手でこねるという作業を繰り返すのだが」
観客A「達人(マスター)クラスになると、目にも止まらぬ速度で行えるそうだ」
観客B「手を叩いたらどうすんだ……。正気の沙汰じゃねえ……!」
女主人「ほいっ!」ビシッ!
奴隷「さっ!」ゴリゴリ…
ワアァァァァァ……!
グラサン「まさか俺たちがリズムで負けちまうとはYo! 大したもんだZe!」
奴隷「いや……あんたたちのリズムもすごかったよ」
パチパチパチパチパチ…
奴隷(二回戦は……あの怪力マッチョ!)
マッチョ「ガハハ、しょせんこの大会は腕力を競う大会!」
マッチョ「つまり、俺が絶対優勝するに決まってんだ!」
奴隷「どうかな……やってみなければ分からないさ」
審判「始めっ!!!」
マッチョ「うおおおっ!」
ゴリゴリゴリ… ゴリゴリゴリ…
実況『両ペアともよく回しておりますが、やはりマッチョ選手が優勢です!』
女主人(こういう時は……私の出番だな)
女主人「おい、マッチョの主人」
アマゾネス「なんだ」
女主人「どうやらお前では、そのマッチョの怪力を十分発揮できないようだな?」
女主人「正直、失望したぞ」
アマゾネス「なんだとォ!?」
マッチョ「おう!」グンッ
ゴリゴリゴリゴリゴリ…
実況『マッチョペアの回す速さがどんどん上がっていくゥ!』
観客B「はええ! こりゃもうマッチョの圧勝だぜ!」
観客A「いや、これは――」
ベキィッ!
アマゾネス「あっ!」
実況『なんとぉ~! マッチョ選手、器具をぶっ壊してしまった! これは一発で失格です!』
審判「勝負ありッ!」
女主人「フッ……この作業は力だけではダメだ。器具を壊さぬようにする技と力加減もキモなのだ」
奴隷「挑発して力加減を誤らせるとは、さすがです!」
こうして二人三脚で勝ち進み……
実況『いよいよ決勝戦! 棒を押して器具を回す作業大会の栄冠はどちらに輝くのか!?』
ベテラン「いい試合をしよう」
奴隷「あなたの噂はかねがね……よろしくお願いします」
審判「では両者、器具の棒を持って!」
奴隷「ここまできたら、小細工は無用……全力でひっぱたいて下さい!」
女主人「分かっている」
女主人「回せ回せぇ!」ビシッ! ビシッ!
奴隷「うおおおおおおおおおお!!!」
ゴリゴリゴリ…
婦人「こっちもいくわよ」ビシッ! バシッ!
ベテラン「ふんぬううううううう!!!」
ゴリゴリゴリ…
女主人「いけっ! 回せっ!」ビシッ! バシッ!
奴隷「回して……みせますともぉっ!」
ゴリゴリゴリゴリゴリゴリゴリ…
ワアァァァァァ……!
奴隷「勝った……!」
女主人「よくやった!」
奴隷「あなたの鞭打ちのおかげです!」
ベテラン「君の若さが……私の経験に勝ったようだ」
奴隷「いえ……もう一度やったらどうなるか……」
国王「うむ」
奴隷「……」ザッ
女主人「……」ザッ
国王「君たち」
二人「は、はいっ!」
国王「君たちの戦いを見ていたら……我が五体に流れる血がうずいてしまってなァ」
奴隷「え……?」
国王「ぜひ……余と勝負してもらいたいッ!!!」
奴隷「どうします……?」
女主人「相手は陛下だ。手を抜いて、勝たせてやろう」
奴隷「それもそうです――」
国王「……」バサァッ
国王「……」ムキッ
奴隷「な、なんだあの筋肉はッ!?」
奴隷(太さや大きさこそマッチョに劣るものの、質は……マッチョ以上ッ!)
観客A「そういえば聞いたことがある!」
観客A「陛下は幼い頃、敵国に捕われ、奴隷以上の地獄のような強制労働を強いられてきたと……!」
観客A「そして、鍛え上げられた結果、陛下は自力で敵国を脱出し」
観客A「王位を継承し、敵国を打ち破った……!」
観客B「えええ……!?」
観客A「ちなみに陛下が脱出した時、パートナーだった女性が――」
国王「ゆくぞ、妃よ」
王妃「ええ」
国王「おぬしは消耗している。これは決してフェアな戦いではない。モチベーションも低かろう。だから――」
国王「余に勝てたら、どんな願いでも叶えてやるぞ」
国王「死ねといわれたら死んでやる。王になりたいといえば王にしてやる」
奴隷「ありがとうございます」
奴隷「ですが、そんな条件がなくとも、俺は本気でやりますよ」
奴隷「あなたのその筋肉を見てしまったらね……」
国王「これはこれは、いらぬことを言ってしまったかな」
王妃「私は元は敵国の監督官だった……だけど」
王妃「陛下の回しっぷりに惚れて、脱出を手助けしたのよッ!」ビシッ! バシッ!
国王「ゆくぞぉぉぉぉぉ!!!」
ゴリゴリゴリゴリゴリゴリゴリゴリゴリ…
実況『は、速いッ! とんでもない速さだッ! しかも器具を壊す様子もありませんッ!』
奴隷「ええ……全力で回すのみ!」
ゴリゴリゴリゴリゴリゴリゴリゴリゴリ…
実況『しかし、こちらも負けてはいない! 一体どこにこんなスタミナが残ってるのか!?』
グラサン「がんばRe!」
マッチョ「負けんじゃねえぞ!」
ベテラン「陛下は私以上の強敵……だが、君たちなら……!」
奴隷「はうっ!」
奴隷(俺は奴隷……だから逆境になればなるほど強くなる!)
奴隷(そして……この人の鞭で打たれれば打たれるほど強くなる!)
奴隷「もっと叩いてぇ! 俺は永久機関ン!」
ゴリゴリゴリゴリゴリゴリゴリゴリゴリ…
国王(こやつ……! なんという漢(おとこ)よ……!)
……
国王「……よくぞ余を打ち破った」
王妃「お二人とも、素晴らしい回しっぷりでしたわ」
奴隷「ありがとうございます」
女主人「ありがとうございます」
国王「さあ、望みを言うがいい。どんな願いでも叶えてやろう」
奴隷「では、私の願いは……」
国王「!」
奴隷「もちろん、急激に改革してしまっては、混乱も生じるでしょう」
奴隷「なので、少しずつ……陛下のお力で……」
パチパチパチパチパチ…
「異議なし!」 「すごい戦いを見せてくれたもんな!」 「奴隷が虐げられる時代はもう終わりだ!」
奴隷(市民からも拍手が……!)
女主人「お前の戦いぶりが認めてもらえたんだ」
奴隷「ありがとうございます!」
ワアァァァァァ……!
グラサン「やったYo!」
マッチョ「悔しいが、完敗だぜ」
ベテラン「たった一日で……時代を変えてみせたねえ」
王妃「ねえ、あなた」
国王「ん?」
王妃「たとえあの勝負に勝っていても、なんやかんや理由をつけて奴隷制をやめるつもりだったんじゃないの?」
王妃「“余とここまで戦えるとは~”だとかいって」
国王「さぁ? なんのことやら……」
王妃「ふふっ、とぼけちゃって」
国王「奴隷の辛さ苦しさは余もよく知っているからな」
国王「市民の反発が出ないタイミングで、奴隷制撤廃を宣言したかったというのは事実だ」
王妃「あのペアのおかげで、まさに最高のタイミングが生まれたというわけね」
男「今日から、俺たちは対等の関係になったわけですね!」
女「どれほどこうなる時を待ち望んだことか……」
男「俺もです!」
女「おっと、私はもう主人ではないんだ。対等なカップルなんだ。敬語はよせ」
男「そ、そう……だな」
女「まだ時間がかかりそうだな」
男「ああ、もちろんだ。俺の皮膚が叩かれたいとうずいている」
女「さあ、いくぞ」
男「来い」
女「回せ回せぇ!!!」ビシッ! バシッ!
男「うおおおおおっ!!!」
ゴリゴリゴリ…
おわり
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奴隷「今日も棒を押して器具を回す作業を始めるか!」女主人「回せ回せぇ!!!」ビシッ バシッ
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奴隷「今日も棒を押して器具を回す作業を始めるか!」女主人「回せ回せぇ!!!」ビシッ バシッ
https://hebi.5ch.net/test/read.cgi/news4vip/1593432003/
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コメント一覧 (19)
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- 2020年06月30日 01:34
- うーむ、どうすれば下ネタに繋げられようか…
-
- 2020年06月30日 01:39
- 吉田戦車の短編集に載ってそう
-
- 2020年06月30日 02:54
- 貴族が反発してそれを敵国が支援して内戦に。
物量と自国民を傷つけたくない想いからピンチに陥る王の前に、
颯爽と棒を押して器具を回す元奴隷が現れる・・・所まで想像した。
-
- 2020年06月30日 02:56
- 実際の所あの回すのは何に繋がっていたのだろう
-
- 2020年06月30日 03:02
- >>4
蕎麦みたいに大麦小麦を引いてたんじゃないかな
-
- 2020年06月30日 08:22
- >>4
無意味な作業を続けさせる拷問かと思ってたわ。
-
- 2020年07月01日 02:49
- >>4
死んだ超人が生き返るためのパワーを産み出しているんだぞ
-
- 2020年06月30日 05:16
- キタキタ親父も回してたな
-
- 2020年06月30日 05:39
- ※6
カセギゴールドだかに捕まったときだっけ?「特に意味はない」と明言してたな
-
- 2020年06月30日 06:35
- この手のシュール系はパっとやってパッと終わらせるに限るよ
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- 2020年06月30日 11:54
- イイハナシカナー?
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- 2020年06月30日 12:21
- >>10
イイハナシダヨー。
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- 2020年06月30日 13:39
- ※4
ジャコウ「発電機に決まってるだろ」
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- 2020年06月30日 19:05
- 次は宙吊りにして焼肉を食べる作業大会かな
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- 2020年07月01日 00:08
- あれってコナン・ザ・グレートって映画でシュワちゃんがまわしてたやつがはしりだと思ってるんだが。
ゲームの中では苦難の輪つって無意味に重労働を課して心をへし折って従順な奴隷にするための道具らしい。
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- 2020年07月01日 02:03
- コナンザグレートって、いきなり冒頭でモザイク有りのセックスシーンがある映画だよな
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- 2020年07月01日 06:37
- かっぱ寿司の地下では・・・
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- 2020年07月01日 10:56
- ゼルダの伝説~風のタクト~ではチンクル一味が回してたよな。
-
- 2020年07月06日 23:49
- 何気に名作だった…