女商人「どんなものでも斬れる剣とどんな攻撃も防ぐ盾はいかがですか~?」マッチョ「両方とも破壊する」
女商人「こちらはどんなものでも斬れる剣、何でもスパスパ斬れちゃいまーす!」ブンブン
女商人「一方、こちらはどんな攻撃でも防ぐ盾! どうです硬いでしょう!」コンコン
女商人「さあ、いかがですか~?」
ワイワイ…
「買おうかな……」 「もうすぐ戦争始まるっていうしな」 「自衛しないと」
女商人(よしよし、反応は上々だわ……)
マッチョ「面白い」
女商人「あ、お買い上げですか?」
マッチョ「両方とも破壊する」
女商人「へ?」
マッチョ「むんっ!」
パキィン!
「すげえ! 腹に刺したら剣が砕けたぞ!」
マッチョ「盾はこれだな」
マッチョ「むんっ!」
ズボッ!
「あっさりと穴あけやがった!」
女商人「えええええええ!?」
ゾロゾロ…
女商人「ああ……みんな待って!」
マッチョ「どうだ」
女商人「どうだ、じゃねええええええ!」ドンッ!
マッチョ「うわっ」
女商人「あんたのせいで商売あがったりじゃないのよぉぉぉぉぉ!!!」
マッチョ「しょ、商売……?」
マッチョ「俺はてっきり、剣と盾を打ち破れる挑戦者を求めてたのかと……」
女商人「もう……いいわよ」
女商人「おかげで、よぉく分かったわ。あたしには武具を作る才能も、商売する才能もないってね」
マッチョ「なぜ、お前は剣や盾を売っておったのだ?」
女商人「いいわ、教えてあげる」
女商人「二つの国は昔から仲が悪くてね。いつ戦争が起こってもおかしくない状態なの」
マッチョ「そうなのか」
女商人「あたしはこう見えて平和主義者でね」
女商人「なんとか戦争を止めようと、両国で色々と働きかけたんだけど全然ダメ」
女商人「あたしの話なんか聞いてくれやしない。やっぱり理屈じゃ戦いは止められないのよ」
女商人「そこであたしは考えたの」
女商人「そしてそれを、A国B国のみんなが持ってしまえば……」
女商人「お互い“俺はすごい剣持ってるけどあっちもすごい盾持ってる”“俺はすごい盾あるけど向こうもすごい剣がある”ってなって」
女商人「うかつに手出しできなくなるでしょ?」
マッチョ「そういうものなのかもしれないな」
女商人「そう考えて、剣と盾と作って試しに商売してみたんだけど、結果はこのザマ」
女商人「あんたなんかにあっさり壊されちゃった」
マッチョ「?」
女商人「どっちの国の人もいい人ばかりなの。だけど戦争が起こったらきっとみんな死んじゃうわ」
女商人「あたしじゃ……戦争止められないのかな……」ポロッ…
マッチョ「そんなことはない」
女商人「え……」
マッチョ「戦争を止めたいというお前の気持ち、しかと受け止めた!」
マッチョ「俺が協力する!」
女商人「トレーニング……? あたしが……?」
マッチョ「うむ、お前はたしかに武器作りや商売の才能はなかったのかもしれんが」
マッチョ「肉体的な才能は素晴らしいものがある!」
女商人「そうかなぁ?」
マッチョ「さっき、俺が商売を台無しにした時、俺を突き飛ばしただろう」
マッチョ「あの時、気づいたのだ。女性にしてはかなりの腕力の持ち主だと」
マッチョ「お前の秘められた才能――俺が開花させてみせる!」
女商人「うん……それじゃよろしく、先生!」
女商人「うん」グッグッ…
マッチョ「まだまだ」
女商人「……」グッグッ…
マッチョ「もうひと押し」
女商人「くっ……」グッグッ…
マッチョ「しっかりと肘を曲げろ。フォームがおろそかになってはいかん」
マッチョ「楽をしようとしたり、数を稼ごうとして、フォームが崩れると効果が半減してしまうぞ」
女商人「ふっ、ふっ、ふっ」グッグッグッ…
マッチョ「勢いをつけてはいかん。腰や背中を痛めてしまうぞ」
女商人「あくまでお腹の力でってことね……」グッ…
マッチョ「スクワットだ」
マッチョ「背筋をしっかり伸ばして、息を吸いながらゆっくり腰を落としていけ」
女商人「……」スゥゥ…
マッチョ「よし、ゆっくり上げるのだ」
マッチョ「よくやった、初日にしては上出来だ」
マッチョ「さあ、運動の後はプロテインだ!」
女商人「プロテイン……!」
マッチョ「俺特製のプロテインを、知り合いのミルク農家からもらった牛乳に混ぜ……」
マッチョ「ほら、飲んでみろ」
女商人「……」ゴキュゴキュゴキュ
女商人「おいしい……体じゅうにタンパク質が染み渡るわ……」
女商人「うん!」
マッチョ「筋トレに近道はないが、お前には時間もない」
マッチョ「高山を駆け上がるつもりで鍛え上げていくから、覚悟しておけ!」
女商人「望むところ!」
――――
――
女商人「……」
女商人「むぅんっ!!!」グンッ
マッチョ「見事! ベンチプレス500kgクリアーだ!」
女商人「や、やったぁ!」
マッチョ「だが、これは通過点に過ぎん! お前は人間を超えなければならぬ!」
女商人「超えてみせる……人だろうと、獣だろうと、怪物だろうと!」
猛牛「モォォォォォォォォォッ!!!」ドドドドド…
ズガァンッ!!!
女商人「……」
マッチョ「おお……重さ1トンの牛のタックルを片手で……」
女商人「……」ヒョイッ
猛牛「ブモォッ!?」バタバタ
女商人「ありがとう、いい鍛錬になったわ」スッ
猛牛「モォ~……」ペロペロ
女商人「やだ、くすぐったい」
マッチョ「フフ、懐かれおったな」
村人「い、いや……」
女商人「……」ズンズン
マッチョ「……」ズンズン
村人「男と女が……岩山を運んでるんだ……! あいつら、神の使いかなんかか……!?」
女商人「いかが?」
マッチョ「全身に濃密な筋肉が搭載され、体重200kgオーバーながらも動作は羽根よりもかろやか」
マッチョ「剛柔一体――という言葉ですら相応しくないと感じてしまう極上のバランスに仕上がった」
マッチョ「よくぞ……よくぞここまで鍛え上げた」
女商人は高山を駆け上った。
女商人「……ええ!」
猛牛「モォ~……」
女商人「心配しないで。必ず帰ってくるから」ナデナデ
いざ、戦場へ……!
両国ともトップ自ら出陣し、今まさに戦争が始まろうとしていた。
A国陣営――
国王「よいか、B国の奴らを皆殺しにするのだ!」
オーッ!!!
B国陣営――
大統領「この戦で全ては決まる! 必ずやA国を討ち滅ぼすぞ!」
オーッ!!!
ワアァァァァァ……!
ウオォォォォォ……!
両国の軍隊がまさに激突せんとするその瞬間――
女商人「ちょっと待ったァ!!!」
マッチョ「我々を倒してからにしろ」
A国兵士「な、なんだこいつら……」
B国兵士「おもしれぇ……」
B国兵士「俺はB国きっての槍の使い手なんだ! そっちの男から貫いてやるよォ!」
ズドォッ!
マッチョの体に槍が突き刺さった。
B国兵士「え……槍が折れた……」ボロッ…
マッチョ「その程度では百万回突いたところで、俺に傷は与えられんぞ」
B国兵士「~~~~~~!」
この兵士は、当時のことをこう述懐する――
「槍がね……こう、ポキンと折れちゃったんですよ、ポキンと」
「象に噛みついた蟻って……きっとこんな気分なのかなって思っちゃいましたね、ハハ」
A国兵士「や、やる気か!?」
A国兵士「やれるもんなら、やってみろ! この鋼鉄の盾にはどんな攻撃も通じないぞ!」サッ
女商人「鋼鉄? あたしには、ペラッペラの布の盾にしか見えないけど……」
~
A国兵士「そういうと、彼女は盾を折り畳み始めたんですよ」
A国兵士「まるで洗濯物を畳むお母さんのように……」
A国兵士「戦争しに来てるのに、“故郷のお袋元気にしてるかなぁ……”ってノスタルジックな気分に浸っちゃいました」
兵士A「ダメだ……剣が折れた!」
兵士B「弓矢も通じねぇ!」
兵士C「大砲喰らってもケロッとしてやがる!」
女商人「ふんっ!」ピンッ
兵士D「うわああああっ!」
兵士E「ぎゃああああっ!」
兵士F「いやぁぁぁぁぁ!」
女商人「あー……ちょっと力入れすぎたわ。先生に比べるとまだまだ未熟ね」
大統領「私に聞かれても知るかァ! 誰なんだあいつらは!?」
女商人「……」ズンズンズン
マッチョ「……」ズンズンズン
国王「ゲッ、こっち来た!」
大統領「ど……どうしよう、どうしよう!」
抱き合う二人。
国王「ひゃ、ひゃいっ!」
大統領「そうですっ!」
女商人「このかすり傷を御覧なさい」チラッ
二人「へ……?」
女商人「両国の兵士たちが協力して、あたしにほんのちょっとだけど傷をつけたのよ」
女商人「A国とB国が手を取り合えば、これほどのことができるというわけ」
女商人「人が大勢死ぬだけの戦争なんかもうやめなさい。さもないと――」メキメキ…
国王「や、やめますッ!」
大統領「すぐに全軍撤収しますぅ!」
以後、両国は真剣に共存の道を模索し、一大連合を組み、世界屈指の勢力へと成長していくこととなる……。
女商人「やったーっ! 戦争止めれたーっ!」
マッチョ「よくやった」
女商人「だけど、悔しいな。あたしはかすり傷負ったけど、先生は無傷だもん」
マッチョ「さすがにまだまだ、弟子に後れは取れんさ」
女商人「あまりにも高い壁だけど……いつかあなたを超えてみせる!」
マッチョ「期待しているぞ」
女商人「それと、あたしようやく分かったことがあるの」
マッチョ「何がだ?」
マッチョ「フッ……たしかにそうかもしれんな」
マッチョ「では、剣と盾に更に磨きをかけるため……プロテインを飲むとしようか」
女商人「はーいっ!」
― 完 ―
元スレ
女商人「どんなものでも斬れる剣とどんな攻撃も防ぐ盾はいかがですか~?」マッチョ「両方とも破壊する」
https://hebi.5ch.net/test/read.cgi/news4vip/1590311110/
女商人「どんなものでも斬れる剣とどんな攻撃も防ぐ盾はいかがですか~?」マッチョ「両方とも破壊する」
https://hebi.5ch.net/test/read.cgi/news4vip/1590311110/
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コメント一覧 (27)
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- 2020年05月24日 20:57
- この二人の姿のイメージがバキだわ
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- 2020年05月24日 21:07
- 艦隊相手にこっちにはハルクが居るって返したのもあるし、究極無敵銀河最強男もマッチョらしいし、マッチョは最強の剣であり鎧なのかもな
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- 2020年05月24日 21:20
- この二人がセックスしたらどっちが勝つの?
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- 2020年05月25日 04:00
- >>4
終了時点では恐らくマッチョ
女商人が更に修行を重ねたならば…わからん
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- 2020年05月28日 13:42
- >>4
セックスの勝敗とは
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- 2020年05月24日 21:21
- メンタル弱そう
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- 2020年05月24日 21:25
- でもこじるりに粘着するんでしょ
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- 2020年05月24日 21:54
- 筋肉無双ネタは正直もう散々やりつくされたから今更やっても寒い
武器や魔法や超能力で戦うブームの時に、カウンターで筋肉無双したからウケただけであって、
未だにそれで笑いを取れると思ってるギャグセンスの無さがヤバイ
紳士的なオークや痴女の女騎士とかにも言えることだけど、邪道や逆張りやアンチテーゼはあくまでメインのブームに対してカウンターでしかけるから意味があるのであって、そっちが量産されるようになったら何の面白味もなくなるんだって気付け
まるで時代の変化についていけてない
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- 2020年05月24日 23:25
- >>7
めっちゃ早口で喋ってそう
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- 2020年05月25日 03:42
- >>7
SS全盛期ならその批評に返す言葉もないけれど、
SS絶滅危惧期の今ならノスタルジックに浸れて良いと思うの。
時代はもう2020年。まだまだ書いてくれる作者に感謝。
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- 2020年05月25日 06:36
- >>7
SSなんて金貰えるわけでもねーし、書きたい物書いてなんぼだろ
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- 2020年05月24日 23:04
- 悲しいかな
暗殺奇襲には無力
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- 2020年05月25日 04:03
- >>8
こいつらを暗殺奇襲で殺せるレベルの強者なら正々堂々戦っても勝てそう
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- 2020年05月24日 23:21
- マッチョクチビル
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- 2020年05月24日 23:53
- よいしょやな
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- 2020年05月25日 00:42
- 1レス目で完結してるからどうなるかと思ったらいいノリで話が進んでよかった
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- 2020年05月25日 04:07
- 結局マッチョの皮膚は誰一人として傷つけられてないのが最高
人間が辿り着ける場所として無敵を貫いてくれたのがすごくいい
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- 2020年05月25日 05:45
- いくらマッチョでも皮膚の硬度までは変えられないぞ
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- 2020年05月25日 06:37
- >>17
でも事実傷ついてないし…
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- 2020年05月25日 06:38
- >>17
毎日肌に粗塩や砂こすりつければちょっとは固くなるんじゃね?
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- 2020年05月25日 06:26
- 帰還して猛牛との再会エンディング描いてない時点で駄目だわ
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- 2020年05月25日 11:20
- 実際に剣と楯を作れてしまった場合、お互いの国がもう片方を奪おうとする
それを作った商人を囲って作らせようとする
「うちの剣(盾)の方がすごい!」とお互いマウントを取って戦争になる
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- 2020年05月25日 21:40
- このサイトの筋肉無双ネタは正直好き
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- 2020年05月28日 02:54
- バーサル最強の剣盾
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- 2020年05月28日 13:49
- ネタとオチの割にはちょっと長いというか回りくどいけど
こういう奇を衒わない素直な話っていいなと思いました(小並感)
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- 2020年05月30日 02:53
- 何年も鍛えた一般兵より強い女商人て筋肉とか関係なくただの天才じゃん
あれ、矛と盾じゃねぇの?って思ったがタイトルからして剣と盾だった