女上司「終電の発車を確認しました。直ちに部下誘導モードへ移行します」男「え……え!?」
男「あー、行っちゃったか……」
女上司「直ちに部下誘導モードへ移行します」
男「え……え!? 誘導……!?」
女上司「始発は5:50予定、私についてくることをお勧めいたします」
男「いや、適当に漫喫とかに行くんで……」
女上司「漫画喫茶では体力の十分な回復は図れません。健康を損なう恐れがあります。さらに……」
男「わ、分かりました……ついていきます!」
女上司「3分20秒かかる見込みです」
男「はい……」
男(前々から思ってたけど……課長ってロボっぽいよなぁ)
男「あの……」
女上司「質問を受け付けます」
男「もしかして、課長ってロボットじゃありませんか?」
女上司「ロボットではなく、課長です」
男「いや、課長兼ロボじゃないかって聞いてるんですけど」
女上司「移動を開始します」ウイーン
不良「いーけないんだ、いけないんだ。こんな夜中に外うろついて」
男「!」
女上司「男性二名を確認しました。両者とも20歳前後と見られます」
男「見れば分かりますよ!」
DQN「俺たち、善意で夜のパトロールしててさ。不審者からは罰金もらうことにしてんの」
不良「罰金いただきまーす。財布出してくださーい」
女上司「虚偽の確率、95%」
男「100%ウソですよ、こんなの!」
男「わわっ!」
女上司「部下への攻撃を確認。戦闘モードへ移行します」
男「戦闘モード……?」
女上司「発射」シュボッ
ドゴォッ!
DQN「ぶげぁっ!」
男「ロケットパンチィ!?」
男「ス、スタンガン!」
不良「喰らえッ!」バチバチバチッ
女上司「ガガガ……大きくダメージを受けました……。損傷率22%……」プスプス…
男「あ、やっぱり電気に弱いんだ!」
男(って、納得してる場合じゃない。俺も戦わないと!)
男「だりゃあっ!」ドンッ!
不良「いでっ!」
男「わ……わわっ!」
女上司「アイビーム発射」ビッ!
ボォォォォォン!
不良「ぎゃああああああああ!!!」
プスプス…
男「え、と……やりすぎなんじゃ……」
女上司「殺傷力は抑えました。標的の生体反応を確認」
男「生きてるならいいですけど……」
ガチャッ
運転手「どちらまで?」
女上司「研究所までお願いします」
男「研究所って……やっぱりロボじゃないですか!」
女上司「ロボチガウ、ロボチガウ」
男「もう絶対ロボじゃないですか! ていうか、ロケットパンチの時点でアウトです!」
運転手「到着しました」
女上司「代金を支払います」ウイーン
男「どっからお金出してんですか」
女上司「研究所へ案内します」
男「はい……」
男(うわっ、漫画に出てくるような、一目で研究所って分かる研究所!)
男(色々な設備がある……)
男(ロボットだけじゃなく、生き物全般の研究をしてるって感じなんだな)
女上司「マスターを紹介します」
男「マスター? ああ、課長を作った人ですか」
男(どんな人だろう? やっぱり漫画に出てくるような、年取った博士が……)
女博士「ようこそ、私の研究所へ」
男「……!」
男(女性だった……! しかも、かなり美人!)
男(白衣を着てて、年齢不詳って感じだけど……なぜだか親しみも覚える)
女上司「私は充電モードに移行します」
女博士「ああ、ご苦労だった」
男「もうロボっての隠すつもりないですね」
男「あ、どうも、いただきます」
女博士「さっきの彼女……課長はどうだ? ちゃんと上司をやっているか?」
男(やっぱり……自分の作品の出来栄えが気になるんだな)
男「とても優秀で、指示も的確ですし、もちろんミスもしませんし……」
男「さっきもチンピラみたいな連中から助けてもらって……」
女博士「ふふっ、そうかそうか。製作した甲斐があったというものだ」
男「仕事……? そうですねえ。課長のおかげで……」
女博士「彼女のことは今はいい。君の話を聞きたいんだ」
男「え、あ、すみません」
男(今度は課長がちゃんと部下を育てられてるかどうか、チェックしたいのかな)
男「今は営業をやってるんですけど、無茶な要求をしてくるお客が多くて……」
女博士「なるほど」
……
……
女博士「ありがとう」
男(終始ニコニコしながら話を聞いてたな……とりあえず、悪い印象は持たれてなさそうだ)
男「今度は、俺からも質問いいですか?」
女博士「どうぞ」
男「あなたは……どういう研究をなされているんですか?」
女博士「色々やっているが、やはり一番は“人を造る”という研究だ」
男(やっぱり……)
女博士「男女の交尾から産まれた通常の人間と、なんら遜色のない人間を造りたいと思ったのだ」
男「……!」
女博士「神の領域を侵す研究……だが、私はどうしてもやり遂げたかった」
女博士「そのために、あらゆる学問を研究した。労力を惜しまなかった」
男「ロボット工学も、ですか?」
女博士「もちろんだ」
男(その結果……生まれたのが課長ってわけか)
女博士「社会生活に必要な環境や記憶、知識を与え、社会勉強をさせている」
女博士「どう育っていくかは、あとは本人次第というところだな」
男「それで会社勤めをさせてるわけですか」
男「研究に点数をつけるとするなら……何点でしょう?」
女博士「むろん、100点満点だ!」
男「……」
男(あんな露骨にロボっぽい課長で100点か……まあ言わないでおこう)
女博士「特にない」
男「え、ないんですか。例えば、“こういうことをさせたい”とか……」
女博士「私は人を造ったのだ。つまり、それは我が子も同然……」
女博士「我が子を“こういうことをさせるために産む”という親はいまい?」
男「そ、そうですね……」
男(まあ、実際には結構いそうな気もするけど。後継ぎにするとか、自分の叶えられなかった夢を叶えさせるとか)
女博士「元気に暮らしてくれればそれでいいんだ」
男(まるで母親みたいな表情だ……)
男「は、はい」
女上司「マスター、私は充電完了しました。100%です」
女博士「そうか、では私を手伝ってくれ」
女博士「他の研究所から依頼された実験をこなさねばならないのでな」
女上司「分かりました」
男(課長は寝なくてもいいんだな。そりゃそうか、ロボットなんだから)
男「おはようございます」
女博士「おはよう」
女上司「おはようございます」
女博士「朝食を用意してくれ」
女上司「分かりました。調理モードへ移行します」
男「調理モードなんてのもあるんですね」
女博士「ああ、気をつけてな」
男「ところで……近くに来たら、またここに来てもいいですか?」
男「あなたにはなんかこう、不思議と親しみのようなものを感じてしまって……」
女博士「……ああ、いつでも来てくれ」
女上司「では私が近くの駅までお送りします」
女博士「ご苦労だった」
女博士「これからも……あの子をよろしく頼む。上司として、あの子を成長させ、見守ってあげてくれ」
女博士「あの子は……大切な“我が子”だからな」
女上司「承知しました、マスター」
― 完 ―
元スレ
女上司「終電の発車を確認しました。直ちに部下誘導モードへ移行します」男「え……え!?」
https://hebi.5ch.net/test/read.cgi/news4vip/1588599022/
女上司「終電の発車を確認しました。直ちに部下誘導モードへ移行します」男「え……え!?」
https://hebi.5ch.net/test/read.cgi/news4vip/1588599022/
「SS」カテゴリのおすすめ
「ランダム」カテゴリのおすすめ
コメント一覧 (20)
-
- 2020年05月05日 00:15
- いいオチ
-
- 2020年05月05日 00:30
- 自分の正体を知ったらスーサイドマンになっちゃうかもな
-
- 2020年05月05日 00:45
- 人工知能に人間の脳みそ使ってそうですね…(蘇りし鋼の戦士感)
-
- 2020年05月05日 00:45
- 長いけど面白い
そして長い
-
- 2020年05月05日 07:30
- >>4
こんなんで長いの?
-
- 2020年05月05日 00:51
- 世にも奇妙な物語でありそう
-
- 2020年05月05日 00:52
- 星新一っぽくてグッド
-
- 2020年05月05日 02:33
- 我が子ってそういうことか
-
- 2020年05月05日 03:25
- オチそっちかー
子作りモードに移行しなかったかー
-
- 2020年05月05日 06:46
- 2回読める小節
-
- 2020年05月05日 11:29
- 思てたんと違う!
-
- 2020年05月05日 12:53
- 博士でいいだろ
なんでマスターなんだよ
-
- 2020年05月05日 13:02
-
面白かった
それこそライトノベル一冊ぐらいこんな設定で読んでみたいな
-
- 2020年05月06日 00:16
- 男もロボなんじゃなくて実子のつもりで書いてそうだが
-
- 2020年05月06日 04:49
- アウターゾーンで研究所に取材に来た記者が実は自分の事を人間だと思い込んでいるアンドロイドで実験の為に時間を起こしてアンドロイドの反応を見ている話が有ったな。
-
- 2020年05月06日 13:06
- ロケットパンティに空目したやつはいないのか?
-
- 2020年05月06日 13:23
-
※14
「男女の交尾から産まれた通常の人間と、なんら遜色のない人間を造りたいと思ったのだ」
「社会生活に必要な環境や記憶、知識を与え、社会勉強をさせている」
「我が子を“こういうことをさせるために産む”という親はいまい?」
「あの子は……大切な“我が子”だからな」
この辺みれば、彼女の被造物は「人と遜色のない人造の人間」な部下をの事を指してると思う。
だから100点満点といってるのもロボロボしい課長の評価ではなく、部下の方の評価。
ついでにロボ課長は護衛やフォローの為に送り込まれた存在の様だから場合によっては「我が子を“こういうことをさせるために産む”という親はいまい?」に反してて、ロボ課長は“我が子”の範疇じゃない可能性もある。
「~課長を作った人ですか」という質問に返答はないので被造物かどうかも曖昧だし、呼称がマスターなのもロボ課長の所有者であって製作者ではないからって可能性もある。
-
- 2020年05月07日 12:07
- 面白かった。思わず「お~」って声出たよ
-
- 2020年05月08日 20:31
- 26で気づいた
そうでなくてもそのつもりで40まで読んだ
-
- 2020年06月08日 19:22
- へー さいきんの物にしてはよくできてんじゃん
10年前くらいはこーゆー良ssいっぱいあったのになぁ
スポンサードリンク
デイリーランキング
ウィークリーランキング
マンスリーランキング
アンテナサイト
新着コメント
最新記事
スポンサードリンク