男「西部劇の荒野でコロコロ転がってるアレを手に入れたぞ!」
コロコロ…
女「なにこれ?」
男「西部劇の荒野でコロコロ転がってるアレだよ!」
女「ああ……アレね! 正式な呼び名は……えぇと、なんだっけ。ド忘れしちゃった」
男「まあ、アレでいいよ」
女「そうね、アレでいっか」
女「どうやって手に入れたの?」
男「ネット通販で購入した」
女「西部劇なのにアマゾンなのね」
男「ふんふ~ん」
コロコロ…
女「アレに紐なんかつけて……なにしてるの?」
男「今日はアレを散歩させてるんだ」
女「本当のペットみたいに可愛がってるのね」
男「うん、どんどん愛着が湧いてきちゃって」
男(つい職場まで持ってきてしまった)
課長「む!」
男(しまった、いきなりバレた!)
課長「それは……西部劇の荒野でコロコロ転がってるアレじゃないか!」
男「ええ、アレです」
課長「そんなものを会社に持ってくるとは……」
男「う……」
課長「実にいい心がけだ! 君は出世するぞ!」
男「ありがとうございます!」
男「ほらアレ、ご飯だぞー」
コロコロ…
男「食べないか」
コロコロ…
男「って、食べるわけないよな。植物だもん」
コロコロ…
コロコロ…
男「じゃ、おやすみ……」
男「ぐぅ、ぐぅ、ぐぅ……」
…………
……
少女「おい、起きろ」
男「むにゃ?」
少女「起きろ」バキュンッ!
ビシッ
男「いてっ! なんだこれ……オモチャの弾丸……!?」
少女「起きたか」
男「うわっ!? 誰!?」
男(まるで西部劇に出てくるガンマンみたいな格好をしてる……!)
少女「分からないか?」
男「全然分からないです」
少女「えいっ」コロコロ…
男(この転がり方は……ッ!)
少女「そうだ」
男「なんで女の子になったの?」
少女「私自身よく分からんが、お前から想いを注がれた結果だろうな」
少女「気づいたら、この姿になっていた」
男「なるほど……」
男(鶴の恩返しみたいなもんだと思っておけばいいのかな)
少女「そうか、受け入れてくれるか」
男「もちろん。じゃあよろしくな、アレ」
少女「アレって……私にはもっとちゃんとした呼び名が……」
男「アレじゃ嫌なの?」
少女「嫌ということもないが……むしろ気に入ってるけど……」モジモジ
男「じゃあアレでいいね」
少女「うん」
アレ「西部の女たる者、拳銃ぐらい持ってなければな」
男「へぇ~、ちょっと拳銃さばきを見せてよ」
アレ「いいだろう」
ザッ バババッ クルクルクルッ
アレ「フッ……」
男「お~……」
アレ「おっとっと……」ボトッ
男「まだちょっと未熟みたいだな」
アレ「ぐぬぬ……」
アレ「食べる! ホットドッグ食べたい!」
男「だったらちょうどコンビニで買ったのがあるよ」
アレ「センキュー!」モグモグ
男「どうだ?」
アレ「うん、うまい!」コロコロ…
男「ホットドッグ持ったまま転がるなって!」
男「……というわけで、アレは人になっちゃったんだ」
女「へぇ~」
アレ「……」
女「よろしくね、アレちゃん」
アレ「……」
女「? どうしたの? 握手しよ?」
アレ「触るな!」パシッ
女「いたっ!」
男「どうしたんだ、アレ!」
アレ「……」ムスッ
男(なんでいきなりこんなに機嫌悪くなったんだ……?)
男「きっと……人見知りしてるんだよ。元々植物だし」
女「そ、そうよね」
アレ「……」
女「そうね!」
アレ「ほ、本当か!」
男「じゃあ、あそこの洋服屋に寄ろう」
女「私も一緒に選んであげるね!」
アレ「……」ムスッ
男「おおっ、可愛い!」
アレ「……ありがとう!」
女「よく似合ってるよ、アレちゃん!」
アレ「お前なんかに褒められても嬉しくない」
女「ご、ごめんね」
男「アレ!」
アレ「……」
グツグツ…
男「楽しみだな~、なぁ、アレ」
アレ「別に……」
男「テレビでも見ようか」ピッ
TV『刃物を持った強盗が逃走中……。付近住民に注意を呼びかけ……』
男「物騒だなぁ」
アレ「ふん、私がいればこんな奴怖くない」
男「ご飯とみそ汁! うまそう!」
アレ「……いらない」
男「え、なんで?」
アレ「私は食べなくても生きていけるし、そもそも西部の女はホットドッグかハンバーガーしか食べない」
女「そ、そうなんだ……」
男「アレ……!」
男「うん、じゃあね!」
バタン…
アレ「……」
男「アレ、今日はどうしたんだ? お前らしくなかったぞ」
アレ「別に……」コロコロ…
男(心なしか、転がり方も荒れてるな……)
女「こんにちはー!」
男「やぁ」
アレ「……」
女「アレちゃん」
アレ「なんだ」
女「ハンバーガー買ってきたの。よかったら食べて」
アレ「……!」
女「アレちゃん……」
アレ「お前なんか撃ってやる!」サッ
女「きゃっ!」
男「アレッ!!!」
アレ「!」ビクッ
男「いい加減にしろ! なんでそんなことするんだ!」
アレ「う、ううう……」
男「アレ!」
女「アレちゃん!」
男「さすが、西部劇の荒野でコロコロ転がってるアレだっただけのことはある……。すごい速さだ……!」
女「そっか……私、やっと分かったわ」
男「なにが?」
女「アレちゃん……ヤキモチ焼いてたのよ」
男「ヤキモチ……。そうか……そういうことだったのか……」
女「私もあの子は精霊みたいな存在だと思ってたから、気がつかなかったわ……」
男「……一緒に捜してくれるかい?」
女「もちろん!」
女「アレちゃーん!」
女「すいません、女の子を見ませんでした?」
通行人「どんな?」
女「西部劇の荒野でコロコロ転がってるアレみたいな感じの……」
通行人「見た! あっちで猛スピードで転がってたよ!」
女「ありがとうございます!」
女(もしかして……アレちゃんかな?)
女「もしもし……」
「なんだお前はァ……!」ギロッ
女「えっ!」
アレ(それにしてもあの二人……私を捜してくれないのか)キョロキョロ
アレ(ふん、別にいい……。私はしょせん“根なし草”なんだからな)
アレ(このままどこか遠くへ……)
ザワザワ… ドヨドヨ…
アレ「ん?」
女「ひっ……!」
男「やめろ! やめてくれぇっ!」
ザワザワ… ドヨドヨ…
アレ(あれはもしかして……ニュースでやっていた強盗か!?)
女「いやぁっ……!」
ザワザワ… ガヤガヤ…
アレ「……」
アレ(もし、あのままあの女が刺されれば、男は“私のもの”になるかもしれない――)
アレ(だが、それでいいのか?)
アレ(いいわけないだろう! 何を考えている!)
アレ(西部の女は、困ってる人を見捨てない!)
強盗「?」
女(あれは……)
男(アレ!?)
強盗「なんだあのガキ? 西部劇の荒野でコロコロ転がってるアレみたいな転がり方してやがる」
アレ(私に意識が集中してる! 今だッ!)ババッ
バキュンッ!
ビシッ!
強盗「ぐあっ!」
アレ「包丁を弾いてやった! 逃げろ!」
女「う、うん!」ダッ
強盗「……しまった!」
強盗「このガキ、ブッ殺してやる!」タタタッ
アレ「わっ!」
女「アレちゃんッ!」バッ
アレ(えっ、私をかばって……)
――バキィッ!
男「よくも二人を怖がらせたな……」
強盗「ぐ、うう……」
男「みんなで取り押さえるんだ!」
ワァァァァ……!
強盗「や、やめろォォォォォ!!!」
ドタンバタン! ドタンバタン! ワァァァァァ…
女「アレちゃん……ありがとう」
アレ「こっちこそ……ありがとう」
女「ホント! すごい腕だったわ!」
アレ「……」プイッ
男「アレ……!」
女「どこ行くの!」
アレ「私はさっき……一瞬だけど、最低なことを考えてしまった」
『あのままあの女が刺されれば、男は“私のもの”になるかもしれない』
アレ「もうお前たちと一緒にはいられない……さらばだ」コロコロコロコロコロ…
男「アレ!」
女「待って、アレちゃん!」
女「アレちゃーん!」
男女「カムバーック!!!」
アレ「……」コロコロコロ…
女「おいしいホットドッグ作ってあげるからー!」
アレ「!」ピタッ
アレ「……」コロコロコロ…
男「あ、戻ってきた」
アレ「ふん……」
男「腹が減っては西部劇はできぬ、か」ニヤッ
アレ「う、うるさい!」
女「じゃあ、おうちに帰ったらおいしいホットドッグ作ってあげるからね!」
アレ「……いや」
女「アレちゃん……」
アレ「勘違いするなよ! 私とお前の女の戦いは始まったばかりだ!」
女「ふふっ、よろしくね、アレちゃん!」
男(俺と彼女と西部劇の荒野でコロコロ転がってるアレの奇妙な日々は、まだまだ続いていきそうだ)
~おわり~
◆以下、おまけ(小ネタ)になります。
靴の後ろの付いてる裁縫なんかのトゲ付きコロコロ
あれは乗馬の時に馬に対してコロコロやって合図送るやつ
そうなんか
補助輪だおもってたわ
拍車をかけるって言うだろ
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コメント一覧 (12)
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- 2020年04月11日 21:22
- タンプルウィードの事やな。株はボール状に成長し、秋に果実が成熟すると風によって茎が折れ、原野の上を転がる。タンブルウィード(tumbleweed、直訳すると「回転草」)の一種である。日常的にはロシアアザミ(オカヒジキ属)を、種名などでは呼ばず漠然と「タンブルウィード」と呼んで済ませてしまうこともある(だが正確に言うと、ロシアアザミだけをタンブルウィードと呼ぶのではなく、風に吹かれて転がる草 全般をそう呼ぶ)。転がって動いてゆくことにより種子をまき散らす。風に乗って地面を転がる姿は西部劇の定番イメージであるが、後述のように外来種であり、元々北米大陸には生息していなかった。
-
- 2020年04月11日 21:31
- プルプルウィードのことやんな
-
- 2020年04月11日 21:44
- >>2
タンブル・・・な
-
- 2020年04月12日 08:02
- >>2
(((((´・ω・`)))))
-
- 2020年04月11日 21:36
- 銀牙伝説WEEDのことやね。
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- 2020年04月11日 21:41
- オーランド伍長の故郷
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- 2020年04月12日 19:03
- >>4
そーいやアレまだ連載してんのか?
サソリなんたらとかいう団体が攻め込んで反撃始まって可変戦車全機スクラップにしたあたりからグダって一歩並みに休載して読む気無くしたんだが……
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- 2020年04月13日 01:42
- >>10
その後なんやかんやあってサソリ側が用意した陸上戦艦が帝都に進軍してピンチだよ!ってとこまで(単行本派)
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- 2020年04月11日 21:54
- ぺんぺん草か。
-
- 2020年04月12日 05:50
- ホットドック食べたい
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- 2020年04月12日 09:37
- まあまあ面白かった
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- 2020年04月13日 02:51
- どうでもいいけどこの話アレでやる必要あった?