【鬼滅の刃】プロポーズ【ぎゆしの】
「こんな言葉、いつ使うのだろう」
と思った。
だって、気持ちを伝えないまま別れてしまうのはあんまりだろう。と続けた御館様の言葉に納得はした。
「そんな義勇には、こんな言い方もあるんだよ…」
と別の言い方を教えてくださった。
そんな話を義勇が思い出したのは、こともあろうに最終決戦で、胡蝶しのぶの訃報を聞いた時だった。動揺する炭治郎を叱責しながら、義勇は
(胡蝶は想いを伝えきることができたのだろうか)
と少しだけ考えを巡らせる。
考えても仕方がないことだ。死んでいった胡蝶の分も、自分は鬼を斬らなければならない。しかしなぜだろう。彼女のことが頭から離れない。心にモヤモヤと雲がかかる。胡蝶に惚れた相手がいようと関係のない話だ。
そういえば、結局御館様は『I love you』をなんと訳したのだったか…。
そうだ。確かそんな訳し方があるのだと御館様は教えてくださった。どこぞの文豪が、日本男児はそんなことは言わない。そんなものは『月が綺麗ですね』とでも訳しておけと言ったことが始まりだとか、そんな話をしていたのを覚えている。けれど、俺の脳内に響いたのは御館様の声ではなく、鈴を転がすような胡蝶の声だった。
俺でいいのかと、確認することだって今となってはできやしない。俺はあの時なんと答えたのだったか。多分俺のことだから、任務に関係がないと斬り捨ててしまったのだろう。それからも変わらず接してくれた胡蝶の器の大きさに感謝しなければならない。
目の前に鬼が現れた。どうやら上弦の鬼のようだ。纏っている雰囲気が違う。なぁ、胡蝶。今から返事をしても間に合うだろうか。もうお前は死んでしまったけれど、もしも次の世界で出会えたなら…その時には、俺が鬼なんていない未来を作るから…他でもないお前のために…そうだ、たしかあの言葉に対する返事は…
「死のうとしているのかと思った」
とまで言われるほどだった。
それはとっても悲しくて、とても素敵なプロポーズ。
今日はキメツ学園の卒業式。高校三年生の私は今日でこの校舎を去ることになる。
「…知っている」
友達にも、後輩にも、気持ちは伝えてきた。唯一の心残りと言えば、この恋心だけ。鬼のいないこの世の中ならば想いを伝えられるかとも思っていたが、蓋を開けてみれば私は生徒で彼は教師だった。前世程ではないが、どうやら今世でもこの恋は許されないらしい。いや、これはきっと前世で勝手に諦めた私に対する罰なのだ。
「…わかっている」
だから、別れてしまうのが名残惜しくて、こんな夜遅くまで学校に残ってしまうことくらいは許してほしい。少しだけ、これだけ言って前世のように諦めるから…
それは冨岡先生には絶対通じないだろうけれど、いえ通じないからこそ選んだのですが、私の自己満足なのだ。私はきちんとこう言って自分の気持ちにケジメをつけたいだけなのだから。
「はい?」
どうして呼び止めるのだろう。早く帰って泣きたいのに。貴方の目の前では泣きたくないのに。全くそんなんだから嫌われるんですよ…
「俺は『お前のために死ねた』ぞ」
「あぁ、俺たちは無惨を倒した。今、この世を平和にするために…だから」
「冨…岡先…生…」
「卒業したんだろう?前みたいに呼んではくれないのか?」
「冨岡さん…」
こんなことってあるのだろうか。あっていいのだろうか。前世でだって、伝わらないだろうと思って卑怯な告白をした私に、あまつさえそれを今世でも繰り返した私に、こんな幸せがあってもいいのだろうか…こんなのまるでお伽話じゃないか。
それはとっても幸せで、とても素敵なプロポーズ。
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- 響「自分、今日から吸血鬼だぞ!」
コメント一覧 (5)
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- 2020年03月26日 01:44
- ぎゆしのほんと好き
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- 2020年03月26日 08:05
- ちょっと待ってよ、しのぶちゃんには俺がいるじゃない?あの激しい戦いの中で敵味方を越えて生まれた愛を忘れたの?
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- 2020年03月26日 10:34
- とく糞
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- 2020年03月27日 09:50
- どこにでも湧きやがって…とく糞
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- 2020年03月28日 22:46
- 月が奇麗ですねネタ、手垢付きまくって陳腐で好きくない