父「父さんな、ラノベ作家目指すことにしたんだ」
母「改まってどうしたの?」
父「実は……父さんな、ラノベ作家を目指すことにしたんだ」
息子「え……!?」
娘「ラノベって……ライトノベル?」
父「ああ、ライトノベルだ」
三人「……」
父「母さんもお前たちも、あまりよく知らんが今やそれぞれの道を歩んでいる」
父「だから父さんもここらで、自分の道というものを歩みたくなってな」
娘「だからって、なんでライトノベルなの?」
父「俺は若い頃小説家を目指していたんだが、結局会社員になった」
父「で、今はラノベってのが流行ってるんだろう?」
父「きっと傑作を生み出してみせるさ! ハッハッハ!」
三人「……」
娘「ホント、まさかあの堅物のお父さんがライトノベルだなんて……」
母「どうする?」
三人「……」
息子「父さんは今まで、家族のために自分を押し殺して頑張ってきた。やらせてやろうよ」
娘「そうだね!」
母「じゃあ、家族でお父さんを全力で支援しましょう!」
母「わっ、どうしたのよ、その格好!」
父「和服を買ってきた」
母「どうして……?」
父「文豪といえば、和服だからな」
母「ラノベ作家って、和服着るかしら……」
息子「原稿用紙!?」
娘「今時、小説ってパソコンとかで書くんじゃないの? お父さんパソコン使えるでしょ?」
父「いや、やっぱりこういうのは手書きじゃないと! 気分が出ない!」
娘「お父さんって、案外形から入るタイプだったんだ……」ヒソヒソ
息子「まあまあ、ここは黙って見守ってやろう」ヒソヒソ
父「どんなストーリーにするかな……」
父「そうだ! 悪い奴にさらわれた姫を助けに行くというのはどうだろう?」
母「ええ……」
息子「古い……」
娘「今時あまりなさそうだから、逆に新鮮かもしれないけど……」
父「主人公は最初は滅茶苦茶弱いんだ」
息子「え」
父「だけど、修行をして少しずつ強くなっていく」
父「修行の様子はみっちり丁寧に描写していきたいな。物語の2/3は修行シーンにしたい」
母「今時の若い子……いえ、若くない子にもウケなさそう」
娘「姫を助けに行くってシチュとも相性悪いよね。急がなきゃいけないのに」
父「いや、女の子は出さない」
娘「へ?」
父「俺は母さん以外と恋愛したことないし、女の子ってよく分からなくてな」
父「うまく描けそうにないし……姫以外の女キャラは極力出さない! ほとんど男でいく!」
息子「むさくるしいラノベになりそうだ……」
父「姫は最終的に主人公じゃなく他の国の王子と結婚する」
母「は?」
父「やっぱり主人公とヒロインは必ず結ばれるってのはなにか違うと思うし」
父「主人公の努力が必ず実るものではない、っていう無常さを出したいんだよ」
娘「ことごとく、今のトレンドを外してくるね」
息子「わざとやってるんじゃって気にすらなってくるよ」
三人「な……!?」
父「植物人間だった主人公が見てた夢、というところで完結となる」
息子「えええ……都市伝説かなにか?」
娘「どうしてそんなラストなの?」
父「物語の最後には、どんでん返しが必要だろ?」
母「返せばいいってもんじゃない気がするわ……」
父「よし、できた!」
父「読んでみてくれ!」
息子「うおっ……」
娘「ホントに私たちにいった構想が……」
母「そのまま小説に……」
父「さっそく、ラノベの新人賞に応募だ!」
息子「じゃあ……この出版社にしたら? ちょうど作品を募集してるよ」
父「うん、そうするか!」
父「やったぁ、俺の作品が大賞だ!」
息子「おおっ!」
娘「すごい!」
母「よかったわね!」
父「三人ともありがとう。今夜は豪勢にお祝いしよう! いやー、俺って才能あったんだなー……」
父「はい……はい、ありがとうございます!」
父「聞いてくれ! アニメ化も決まったぞ!」
息子「ホントかい!?」
娘「すごいじゃない!」
母「おめでとう!」
父「ありがとう」
父「コマーシャルもやってる!」
母「そりゃそうよ。あんなに面白いんだから」
TV『今大人気のライトノベルの特集を……』
父「おおっ、ニュースでも取り上げられてるぞ!」
母「よかったわね、あなた」
TV『ウオオオオオ! ヒメヲタスケニイクゼー! ザシュッ! ズバッ! ドゴォォォォォン!』
父「……」
父「アニメ、ずいぶん俺の原作と違うな」
父「主人公がいきなり強いし、女の子がいっぱい登場するし……」
娘「まあまあ、原作がアニメ化で改変されちゃうのはよくあることだから……」
父「そんなもんか」
母「ええ、お父さんには文才があったのよ」
娘「見直しちゃった!」
息子「で、今後はどうする?」
父「うーん……次の作品を、といいたいところだけど」
父「とりあえず、ラノベ作家には満足したよ。しばらく執筆はもういいかなぁ」
三人「……」ホッ
息子「ああ、ホッとしたよ」
娘「これで私たちも一段落ってもんね」
母「お父さんを支援するのも大変だったわねえ」
息子「本当に苦労したよ。ぶっちゃけ今までの仕事で一番キツかったと思う」
息子「俺は大手出版社の社長で……」
娘「私は大手アニメ製作会社の社長……」
母「私は広告会社の社長で、本当によかったわねえ」
おわり
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コメント一覧 (9)
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- 2020年02月26日 23:05
- 最後の落ちでどう反応すればいいか分からなくなっただろ!
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- 2020年02月26日 23:12
- これ父も文科省の次官や電通の会長クラスだったんやろなあ・・・
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- 2020年02月27日 00:43
- 年末
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- 2020年02月27日 04:35
- 金持ちの戯れ
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- 2020年02月27日 07:37
- なお売上
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- 2020年02月27日 12:30
- 普通に自費出版なら問題ないだろうに
親族のやらせ受賞の上(たぶん)人気も売り上げもないのにアニメ化、ってえらい問題になるんだろうな
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- 2020年02月28日 06:19
- 葬式のとき故人の紹介に困る職業は切実にやめてほしい
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- 2020年02月29日 01:42
- ちょっと面白い
そしてのび太のパパがヒップホップで食って行く宣言するAAを思い出した
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- 2020年02月29日 16:30
- この話そのものが植物状態になった父親の夢オチじゃなかったのか。