夫「今度の休み、家族でスラム街に行こう!」子「やったーっ!」妻「えー、危なくない?」
夫「そうだな……」
夫「よーし、今度の休み、家族でスラム街に行こう!」
子「やったーっ!」
妻「えー、危なくない? やめた方がいいわよ」
夫「大丈夫だよ。今の市長のおかげで、すっかり安全になって、観光地化してるっていうし」
子「行こう行こう!」
妻「……」
夫「着いた!」
子「ここがスラム街かぁ……」
妻「……」
夫「まだ心配? ほら、看板だって立ってるよ」
≪ようこそ、スラム街へ!≫
子「あ、モヒカンだ! 生モヒカン!」
夫「今日なにかイベントってやってませんか?」
モヒカン「あっちでまもなく銃撃戦をやるぜ。ヒャッハーッ!」
夫「ありがとうございます」
モヒカン「ヒャッハーッ!」
妻「やっぱり気が進まないわ……」コソコソ
夫「大丈夫だよ。さ、行こう!」
チンピラ「ご覧になる方は、こちらの列に並んでくださーい!」
チンピラ「流れ弾の危険がありますので、絶対この線より前には出ないでくださーい!」
ワイワイ… ワイワイ…
夫「お、いっぱい人がいるなー」
子「楽しみー!」
妻「……」
ガガガガ… パァン! パァン! ドキューンッ! ガガガガガ… パァンッ!
オオッ… ワァァ…
夫「お互い当てないように撃ってるけど、すごい迫力だな!」
子「みんな頑張れー!」
妻「なつ……」
夫「なつ?」
妻「あっ、夏みたいに暑いなっていったのよ」
夫「今日そんなに気温高いかなぁ?」
夫「お、やろうやろう」
子「僕もやりたーい!」
チンピラ「じゃあまず、坊やから」
子「えいっ! えいっ!」パンッ! パンッ!
夫「やるな、ちゃんと的に当たったじゃないか!」
子「やったぁ!」
子「パパ、ヘタクソ~! 全然当たってないじゃん!」
夫「うう、こんなはずじゃ……」
子「ママもやってよ!」
妻「私はいいわよ……」
夫「ま、いいじゃないか。一回ぐらい」
妻「うん、じゃあ……」
夫「ママ、そんな構えじゃ照準がぶれちゃう……」
妻「……」パンッ! パンッ!
子「ママ、うまーい!」
夫「全弾ど真ん中だ……!」
妻「やだ! マグレよ、マグレ!」
子「よーし!」カチャカチャ
夫「えぇと、これがこう……こっちはこうか?」モタモタ
子「パパ遅いよ!」
妻「……」シュバババッ ジャキンッ
子「ママ、はやーい!」
夫「えええ……!?」
妻「これは……お昼にやってた映画で、組み立て方やってたのよ~!」
夫「ああ、そういうことか」
夫「ん?」
売人「ヒヒヒ……いいクスリあるよ……。買ってかない?」
子「クスリだって!」
夫「よし、買っていこうか!」
妻「大丈夫……? 危ない薬じゃない?」
夫「大丈夫だよ。観光地で売ってるものなんだから」
子「なーんだ」
妻「よかった……」
夫「ほら、食べよう」ポリポリ
子「おいしい!」ポリポリ
妻「案外イケるわね、これ」ポリポリ
夫「買った!」
子「うわぁ、怪しいビデオテープだ」
夫「あっちで見られるみたいだ。さっそく中身を見よう」
妻「子供が見ても大丈夫かしら? もし猟奇的な内容だったら……」
夫「平気だって」
子「あ、ソケットモンスターのアニメだ!」
子「しかも、テレビでやってないオリジナルストーリーだ! 舞台がスラム街だし!」
夫「へぇ~、アニメ会社に頼んで作ってもらったんだろうな。よくやるなぁ」
子「いけーっ! ソケモン!」
妻「コラコラ、あまりはしゃがないの」
ムワァァァァ…
子「うえっ、すごいニオイ!」
夫「特殊な香水で、かつてのスラム街の匂いを再現してるらしいな」
妻「いい匂い……」
夫「え」
妻「あ、いや、臭いわー! もうたまらない!」
夫「いくら吸っても害はないらしいけど、さっさと通り抜けようか」
子「わっ!」
夫「カツアゲされる気分を味わえるアトラクションだってさ。あのナイフもオモチャだ」
妻「小銭でもあげときましょう」チャリンッ
ゴロツキ「毎度!」
レストラン――
子「いただきまーす」モグモグ
夫「いかにもスラム街っぽいひどい見た目だけど、味は美味いな!」モグモグ
妻「ええ、ホント」モグモグ
夫「ここに市長さんがいるんだね」
妻「ねえ、早く離れない? ビルなんて見ても退屈だわ」
市長「これはこれは、観光客のご家族ですか」
夫「あっ、あなたはもしかして市長さんですか?」
市長「はい」
夫「よろしければ、お話しを聞かせてもらうことってできますか?」
市長「ええ、かまいませんよ。ちょうど時間が空いてますので」
夫「ホントですか!」
子「やったー!」
夫「これはどうも」
妻「私は……遠慮しとくわ。ちょっと疲れちゃって」
夫「そうかい。じゃあ、俺たちだけでお願いします」
市長「分かりました」
子「カフェ、カフェー!」
市長「いかがですかな、我が街は」
夫「かつては犯罪都市として有名でしたが、それを逆手に取って観光地にしてしまうなんて……」
夫「今日一日楽しめましたし、市長さんの手腕を堪能できました」
市長「ええ、ですが……」
夫「?」
市長「ここまでスラム街を平和にできたのは、決して私一人の力ではないのです」
夫「とおっしゃいますと?」
市長「その戦士は凄まじい強さとカリスマ性で、たちまち街のならず者たちを抑えつけましてね」
市長「私はその戦士の戦いぶりに便乗したに過ぎません。感謝してもしきれませんよ」
夫「そんなすごい人が……」
子「その人は今、どこにいるの?」
市長「スラム街が平和になったのを見届けると、静かに去っていきました」
市長「きっと今頃、どこかで幸せに暮らしていることでしょう」
市長「雰囲気もずいぶん変わってるでしょうから、たとえこの街に来ても皆気づかないでしょうね」
夫「こんな裏話があったなんて……」
子「会いたかったなー」
夫「うん、色々興味深い話を聞けたよ」
子「楽しかったー!」
妻「じゃあ、今日はもう帰りましょうか」
夫「ああ、明日からはまた仕事だ!」
子「ぼくも学校だー!」
妻「懐かしかったわ……」
夫「ん? なにかいった?」
妻「ううん、なんにも」
スタスタ…
市長『ああ、君は普通の女としての幸せを掴め。後のことは任せろ』
女戦士『ありがとう……』
市長(よさそうな旦那さんじゃないか)
市長(よかったな、幸せな家庭を築くことができて……)
―おわり―
元スレ
夫「今度の休み、家族でスラム街に行こう!」子「やったーっ!」妻「えー、危なくない?」
http://hebi.5ch.net/test/read.cgi/news4vip/1582549598/
夫「今度の休み、家族でスラム街に行こう!」子「やったーっ!」妻「えー、危なくない?」
http://hebi.5ch.net/test/read.cgi/news4vip/1582549598/
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コメント一覧 (11)
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- 2020年02月25日 00:42
- なんの捻りも無いけど読みやすかった
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- 2020年02月25日 01:46
- ビデオテープw
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- 2020年02月25日 02:30
- 題名見た時点で「あ、これたいしたネタでもないのにダラダラ長引かせるやつだ」って判るのは凄いよな
同じ人がかいてんのかな
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- 2020年02月25日 05:08
- ( ;∀;) イイハナシダナー
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- 2020年02月25日 07:05
- 面白かった
最後がハッピーエンドなのもいいね
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- 2020年02月25日 08:11
- 実際にインドとかブラジル行けば
スラムツーリズムできるらしいけど楽しいのかねぇ
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- 2020年02月25日 09:33
- バッファロー・ビルのワイルドウェスタンショーみたいなもんか
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- 2020年02月25日 17:02
- 生モヒカンはちょっと見たいかもwww
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- 2020年02月25日 17:49
- 徹底して世紀末感に拘ったスラム街なら逆に行ってみたいわ
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- 2020年02月25日 22:04
- てっきりハガー市長が出てくるのかと思ったのに
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- 2020年02月29日 22:27
- 俺はてっきり子どもがバットマンになるもんかと