【ワンピース】ゼフ「航海日誌」
おれの名前はゼフ。
クック海賊団の船長をしている。
今日から航海日誌をつけることにした。
航海士の真似ごとだが、船長となってしまったからには付けた方がいいだろう。
今さらだとは思うが。
本日晴天なれど波高し。
食糧の在庫が乏しい。
次の島では多めに補給しよう。
根本的な問題だが、何を書けばいいのかよく分からない。
船員に聞いてみれば、とりあえずその日あったことを書けばいいとのこと。
航海に必要な情報はこちら記録するから安心してメシを作ってくれと言われた。
それじゃあただの日記じゃねえかと思うが、たしかにこの手のモノは素人が手を出すものじゃない。
この間、素人船員に調理を手伝わせたら、ジャガイモの芽を取らずに調理したもんだから何人か死にかけた。
料理も航海も一緒だろう。限られた人員で船を進めていくんだ。役割分担はあった方がいい。
とりあえず、気が向いたらこの日誌をつけることにしよう。
今日の夕飯はじゃがいもとチーズでイモのモチを作ってみた。
なかなか好評、やはり船旅にジャガイモは欠かせない。
今日はフーシャ村にて物資を補給した。
この村の内地にはゴア王国の城下町があるが、あそこはどうも嫌だ。
海賊をやる前に訪れたことがあるが、どいつもこいつも「料理人風情が」という目で見てきて腹が立った。
人間みな平等。腹が減ったらメシを食う生き物だってのに、貴族連中はなんであんなに偉そうなんだか。
その点、ここの村人たちはそんな目を一切しない。
いい連中たちだ。
ある程度物資の補給が済んだ。
この村の連中は怯えるどころか気さくに話しかけてくる。
気をよくして船員一同酒場で宴会を催した。
騒ぎに気づいた住民一同も加わって大盛り上がりとなった。豪胆な住民たちだな。
おれがコックだと知ると、何か作ってみろと騒ぐので、おれも厨房を借りて2品ほど提供した。
キアジとアカミソとアオネギを叩いて焼いたサンガ焼き。
フラワーマグロのニンニクソテー。
あっという間に平らげられたので満足だ。
ここの酒もまた絶品だったが、1番いい酒を頼もうとしたら、別の海賊にキープされていると言われた。
どこのどいつだと聞いてみれば、なんと赤髪のシャンクスだと言う。
かつての海賊王のクルーがこんな村の酒場に来るわけねえとは思ったが、店主がウソをついているようには見えない。
たしかにそんな大物海賊が拠点にしているなら、住民たちがおれたち海賊に寛容なのも納得だ。
仕方ないのでその酒は諦め、別の酒を頼んだ。
帰り際、店主にヤングコーンのフライのレシピをもらった。これはツマミにぴったりだった。
最悪だ。連日の大雨で食糧の大半にカビが生えた。
船も揺れ続けるし、たまったもんじゃねえ。
字を書いてたら気持ち悪くなってきた。
また後日。
ココヤシ村というところに、なんとかたどり着いた。
現地でミカンを大量に仕入れて船員に食わせた。
なんとかなりそうだが、栄養失調気味の者も多い。
しばらくここに駐留することにした。
海で物資を補給できればいいんだが、そんな都合のいい話はねえよな。
海賊が駐留していると、村の住民たちは気が休まらんだろう。
小遣い稼ぎと住民たちとの交流を兼ねて、簡易レストランを開いてみた。
海賊のレストランなんざ危なくて近寄らないだろと船員にからかわれたが、意外にも反響は良かった。
豚肉のソテーにミカンソースを合わせてみたが、我ながら上出来、住民の反応も上々。
やはり自分の腕を他人に評価してもらうのは嬉しいものだ。
おれは昔レストランを経営していた。
だが、大海賊時代の到来に伴い、客層もどんどんガラが悪くなり、最終的には放火されちまった。
強盗に来た海賊ゴロツキその他諸々を毎度の如く半殺しにしてたら逆恨みされちまった。
犯人を蹴り殺して、やることもなくなって、絶望していたところに、常連だった前船長が仲間にしてくれた。
コックとして仲間になったんだが、生来の血の気の多さと負けず嫌い、ケンカの強さで気づいたら副船長の立場にいた。
その後、船長が病死。
栄養失調により傷が治らず、手足が腐っちまった。
介錯なんざ二度としたくねえ。
その後はおれが船長として一味をまとめている。
そして、海賊をやってるからには夢と野望がある。
オールブルーの発見。
4つの海に住んでいる魚がすべて住んでいる海。すなわち、海に生きるコックの夢。
船員たちにゃあ馬鹿にされちまったが、どっかにあると信じている。海は繋がってるんだ。
そんな野望を胸に抱いて、海賊稼業と料理の腕自慢を繰り返し、今や2700万の賞金首。
赫足なんて二つ名までついちまった。
思えば遠くに来たもんだ。
酒の勢いでくだらねえこと書いちまった。寝る。
船員たちから思わぬ提案が出た。
グランドラインに入らないか、と。
曰く、世界を見たい。
曰く、宝を得たい。
曰く、もっと色んなものが食べたい。
行く理由は様々だが、あそこは航海の難易度がケタ違いな上に1度入ったら東の海に帰ってくることは困難だ。
船員の命を預かっている身としては中々決断できない。
だが、話し合ってる最中にこんな言葉が出た。
船長こそ、オールブルーを見つけるんじゃねえんですか?
人のことさんざん馬鹿にしといてこの野郎。
だが、グランドラインにオールブルーがある可能性は非常に高い。
夢を諦めないなら行くべきだろう。
そうと決まれば、下準備。何事も準備が大事だ。明日から忙しくなる。
今日はイカの肝入りパスタ。
コクがあって最高なんだが、このコクがダメだというヤツもいた。
そいつにはペペロンチーノを作ってやった。
今日、難破している海賊船に遭遇した。
マストは破れ、船首は砕けていた。
近づいてみたところ、かろうじて生きていた海賊たちがいきなり白旗を振っていた。
どいつもこいつも空腹で飢えていたので、取り急ぎ保存食を分けてやって、スープを作ってやった。
船員の中にゃ反対するヤツもいたが、食いてえ奴にゃ食わせてやる。話はそれからだ。
人心地ついたあとに話を聞いてみたところ、海軍に急襲されて敗走した後だったという。
敗走の最中に大砲を撃ち込まれ、舵輪は破壊され、マストも破れ、流されるがままに漂流していたそうだ。
積荷の6割をもらう条件でうちの船に乗せてやった。
近くの島で降ろす予定だ。
明日、グランドラインに入る。
ローグタウンでログポースを手に入れた。
前に助けた海賊の宝のおかげで資金には困らなかった。
ローグタウンは海賊王処刑の地とあって、大賑わいの街だった。
残念ながら海軍本部付の海兵がわんさかいるんで長居は出来なかった。
いよいよグランドライン。
ガキのころに夢見た海を求める日が来るなんざ夢にも思わなかった。
人生何が起きるか分からんな。
やたらとウイスキーが回る。
ツマミに食ってるスモークサーモンが旨すぎるせいだ。
酒が進んでしょうがない。
よほどいい煙で燻したんだろう。
記念すべきクック海賊団の進水式の日を二日酔いで迎える訳にゃいかねえ。
そろそろ寝るとしよう。
前から仕入れていた情報通り、山を船で登った。
貴重な体験だが、2度としたくねえ。
山を下ったあと、ログとやらを貯めるためにしばらく停泊した。
そうしたら、体長100メートルはあるんじゃないかという巨大なクジラが現れた。
さすがグランドライン、最初から大困難が待ち構えているとは。
だが、クジラはおれたちに見向きもせずに海に潜っていった。
なんだか分からないが、クジラが海に潜るときの潮の流れで船が傷ついてしまった。
幸いすぐに直せるようだが、出発は明日以降にしよう。
凄い
大発見だ
興奮が覚めやらない
やはりオールブルーはグランドラインにあるに違いない
今日、クジラの飼い主にあった
おれがオールブルーを探しにきたと言うと、何故か海水を煮詰めてみろと言われた
できた塩を舐めた
焦げ臭い
だが、今まで味わったらことのない深い味わいの塩だ
それはそうだ
ここは4つの海水がリヴァースマウンテンを越えて合流しているんだ
すなわち、オールブルー
だが、あの山を普通の魚は越えられない
一部の海獣だけだ
だが、可能性はある
やはりオールブルーはグランドラインにある
クジラの飼い主から、ここの海水で作ったという藻塩を大量に買った。
グランドライン、腕が鳴る。
とんでもない悪天候を乗り越え、ひとつ目の島に着いた。
見たところ、平和な島だ。
ここは酪農が盛んらしい。
ミルクを飲んでみたが、なるほど上等だ。
砂糖でも入れてるんじゃないかと思うほど甘いが、砂糖じゃこのコクも深さも出ない。
搾りたてというのもあるだろうが、恐らくグランドライン特有の牛だからだろう。
小型ながら、いや、小型だからこそ旨味が凝縮しているのか。
たしかに、グランドラインの航海で乳製品の輸出は現実的ではない。
島内のみで乳製品を出荷するなら、量より質だ。
この乳牛も時間をかけてそういう風に進化させていったのだろうか。
今日はまた簡易レストランを開いてみた。
手に入れたミルクでシチューを作ってみたが、これがまた上々。
いい野菜にいい塩、先日釣り上げた海イノシシもいい味を出してくれた。
住民たちもけっこう訪れてくれた。
ウェイターが海賊なんでガラが悪いのが難点だが、まあそこは勘弁してもらう。
資金集めと準備のために、もうしばらくこの島に留まることにした。
何もラフテルに行こうってんじゃねえんだ。
ゆっくり航海して行こう。
レストランに海賊が現れた。
横柄な態度くらいなら大目にみてやったが、ソテーの付け合わせの野菜を食わねえどころか床に叩きつけやがったんで、そいつの顔も床に叩きつけてやった。
後で聞いたが、南の海で4300万の賞金首だったらしい。
ケリ一発で沈んだが。
逆恨みでこの島の住民を傷つけられても後味が悪いので、海賊どもを一網打尽にして全員捕まえた。
住民たちに引き渡し、海軍に通報するよう伝えた。
G-2基地という海軍本部の基地が近くにあるようなので、明日には来るだろう。
俺たちは船を隠し、無事に引き渡しが終わったら出航するとしよう。
世話になった酪農家のおやっさんたちに挨拶をした。
モーダという娘さんが無事に成長することを祈る。
あのミルクがあれば、いらん心配か。
本日、降雪なるも風弱し。
今回の航海は最初の航海ほど酷くはない。
情報通り、あそこまで荒れ狂うのは最初の海だけのようだ。
ただ、巨大なセイウチが船にかぶりつこうとしたので蹴り殺してやった。
海の生き物はできる限り蹴り殺したくない。味が落ちる。
やはり丁寧にシメて捌くのが一番なのだが、命には代えられん。
セイウチの毛皮を全部剥いで、着物にするよう指示した。
脂は燃料とした。
肉は……まあアク抜きすればそれなりに食えるだろう。
保存食でいくらか干し肉にしたいが、この天気で上手いこと干せるかどうか……。
ドラム王国にたどり着いた。
とんでもなく寒く、恐ろしいほどの積雪だ。
船員の半分を船に残し、雪下ろしを命じた。
気を抜くと雪で船が沈みかねない。
村の灯りを目指して進んだが、雪が多すぎて歩くのも一苦労だ。
どうにかこうにか村にたどり着き、飲食店で暖を取らせてもらった。
今日ほどニンジンのスープが旨いと感じた日はない。
雑貨屋でカンジキや厚手の服に手袋、スコップにソリその他諸々を必要分購入して船に戻った。
こりゃ長く停泊しない方がいいかもしれん。
が、ここのログを貯めるのに2月半はかかるという話だ。
とんでもねえ島に来ちまった。
鰯の大群を釣り上げたので、おやっさんのチーズを使ってピザにした。
寒いせいか、鰯に脂が乗っていて最高の一品となった。
まさか海賊をやりながらマタギの真似ごとをするハメになるとは。
今日、村の住人が決死の表情で船を訪ねてきた。
なにかと思えば、連日の大雪で食糧が乏しいためおれたちに山狩りを手伝ってほしい、と。
なんでそんなことをと思ったが、破格の報酬を出すという。
村人にしてみりゃあ、カネがあったって買うモノがなきゃ意味がない。
カネに目がくらむたぁ、おれも一端の海賊になったもんだ。
とは言え、おれたちが持ってる銃は乱戦用の短銃だ。とてもじゃないが狩猟で狙撃できるような代物じゃない。
なので、山の下から大声を出し、獣を追い立てる役をやった。
寒さでどうにかなりそうになったが、その甲斐あって大漁だった。
全員腹を空かせていたので、その中からクマ肉をもらってクマ汁を作り、船員村人に振る舞った。
村人たちはおれのクマ鍋食って驚いていた。
いつものクマ鍋じゃない、と。
クマ肉はちょっとしたコツと丹念なアク抜きで格段に旨くなる。
まあ、おれもこんなに脂の乗ったクマ肉は初めてだったが。
ここまで寒いと蓄えてる脂の質も違うようだ。
明日は脳みそも食ってやろう。
今日、村人と歩いていたら、服を着た牛が突っ込んできた。
猛獣かと思ったが、なんと悪魔の実の能力者だった。
グランドラインにゃ多くいると聞いてはいたが、実際に見るのは初めてだ。
牛は人間へと姿を変え
私はドルトン。この国の守備隊長をしている。
先日は私の故郷を助けていただき、ありがとうございました。
ときた。
礼を言って終わりかと思えば、なんと我らクック海賊団に、アラバスタ王国へ一緒に来てほしいと依頼してきた。
折からの豪雪で食糧難であるため、同じ世界政府加盟国のアラバスタに援助を求めに行くと。
今、この国の国王は病に倒れ、さらに守備兵は雪害対策で大半が国を離れられない。
おまけにドルトンを含む大多数の兵は、あくまで守備兵であるため、航海技術に乏しいそうな。
つまりは渡航の援助と護衛を頼みたいってことだ。
それなら王族が頼みに来んのがスジだろう、テメェみてえなペーペーの若僧よこしてどういうつもりだ。
と、もっともらしい口実で追い返した。
世界政府加盟国が表立ってチンピラ海賊の協力なんざ得る訳ねえ。
秘密裏に話をつけたかったんだろうが、こっちだって面倒なおつかいなんざ御免こうむるってんだ。
残念そうなツラして牛は帰って行った。
今日、あの牛が船を訪ねてきた。
報酬ならお支払います。だから協力してください。
と、土下座せんばかりに頭を下げて前払い分だとカネを差し出した。
大したことない額だが、察するにこの牛個人の財産から工面したモンだろう。
そりゃあ、国が海賊の援助なんかする訳ねえ。
残りのカネはどうすんだと聞いてみれば、
航海が成功すれば、必ずや王を説得して、言い値でお渡しします。
と。
先に王を説得してから来いこのバカ。
だが、最終的には国を想う若い兵士の熱意にほだされちまった。
歳を取るとどうしてもこういうのに弱くなる。
船員たちには不満も出たが、この極寒の島から出られるとなったら、渋々応じてくれた。
ログポースは村人たちが預かってくれるというので、戻ってきたときにはログが溜まっているだろう。
おれの船にドラム王国の国旗が翻っている。
そりゃ国の船と海賊船が仲良く並んでちゃあ、海賊と協力関係にあると思われちまうが。
どーもいつもの海賊旗じゃねえと落ち着かねえ。
そもそもどうやってそのアラバスタに行くんだ、と今更ながら尋ねてみた。
エターナルポースというモノがあり、常に1つの島を指し続けるコンパスがあるとか。
まだまだ知らねえモンがいっぱいある。
こういう未知のモノに興味を抱いちまうのは、まだまだ若い証拠だな。
本日、ドラム王国を出航し、アラバスタ王国へと向かっている。
雪が止まないが、次第に晴れてくるだろう。
アラバスタへの航海は順調だ。
数日前、数キロ先にサイクロンを発見したときは肝を冷やしたが。
今日、暇つぶしに船員たちと釣りをしていたら、なんとネコのような巨大な海獣が現れた。
字面にするとおかしな生き物だが、旨そうなので仕留めることにした。
が、なんとそこに巨大なハヤブサが乱入してきた。
おかげで魚を逃がしちまった。
それならハヤブサをと思ったが、ハヤブサは次の瞬間には人間になっていた。
またもや悪魔の実の能力者だ。
非礼をお詫び致します。
私はアラバスタ王国の護衛隊副官、ペルと申します。ドラム王国の船とお見受けしました。
今の海ネコはアラバスタでは神聖な生物とされています。この海で漁業は控えられよ。
仰々しい口振りで鳥人間は挨拶と警告までしてきた。
慌ててドルトンがこっちの船に飛び移ってきた。
心配しなくても礼儀を弁えてる若僧にまでケンカ売ったりしねえよボケナス。
ドルトンが鳥人間に事情を説明し、ドラムの国王からの手紙を渡した。
鳥人間はアラバスタの王宮に手紙を届け、港の警備兵に話を通しておくことを約束したが、援助できるかどうかは分からないと言っていた。
ドルトンは守備兵を引き連れて王宮へ行くと言ったが、どうやら港から王宮までは砂漠を越えねばならないらしい。
日数もそれなりにかかるという。
悪いがおれたちは港で待機させてもらおう。
アラバスタの港に到着した。
ドルトンたちは砂漠越えの荷物を持ってすぐに出立した。
夜の寒さはともかく、昼の暑さはあいつらにゃ地獄だろう。
おれたちは舟番兼小遣い稼ぎだ。
とりあえず今日は港の市場を冷やかした。
珍しい香辛料や豆の類いが並んでいて中々に旨そうだ。
だが、暑さのせいか魚はイマイチと見た。これなら自分たちで釣った方が良さそうだ。
ハヤブサ男の忠告を思い出し、港の警備兵に釣っちゃならねえ魚を聞きに行った。
口で言っても分からないだろうから、釣りに行くときは現地の船に乗ってくれと言われた。そりゃそうだ。
今日の晩飯はアラバスタ風ピラフ。
砂漠米に香味マカロニ、ニワトリ豆、揚げたソルト玉ねぎに古代トマトを加えたモノだ。
知らない食材がわんさかある。
やはり歴史ある国は食の文明も進んでいる。
数日前から例によって簡易レストランを開いた。
港の連中には大ウケだ。
中でも評判がいいのはバナナワニだ。
上質な鶏肉のような味にフルーティな香り。
焼いても炒めても煮ても茹でても揚げても良し。
おれに言わせりゃなんでこんないい肉を使わねえんだと思ったが、どうやらワニそのものが強すぎて漁師じゃ手に負えないらしい。
ウチの船員も1人食われかけたので納得だ。
労働のあとはエールと揚げたニワトリ豆で一杯やった。
この組み合わせはクセになりそうだ。
面白えことが起きた。
ホールが騒がしいので顔を出してみると、ウェイターが絡まれていた。
なんと相手は王下七武海のサー・クロコダイルだった。
話を聞いてみれば、日替わりスープがバナナワニのテールスープだったことを当て付けかなんかだと思ったらしい。
こんな手間のかかるモンを当て付けや嫌がらせでポンと出せる訳ねぇだろ。
いいからとっとと飲みやがれ。
そう言ったらやっこさん、おれを睨み付けながらスープを口にしやがった。
一瞬で表情が変わった。
瞬く間に飲み干しておかわりまで要求しやがったんで、ウェイターが笑いを堪えていた。
いたく気に入ったと見えたので、バナナワニの上等なところをステーキにして出してやった。
注文と違うと言われたが、値段は注文の料理のままでいいから食ってみろと勧めた。
ひと口食べてツギハギのツラが満面の笑みになったところでウェイターが吹き出した。
客の反応で笑うたぁどういう了見だとその場でウェイターを叱り付けた。
今書いてて思ったが、これ逆にやっこさんを煽ってねえか?
まあとりあえず七武海は大満足で帰っていった。
やはりどんな人間でも旨いモンを腹一杯食えば満たされるもんだ。
ドルトンたちが物資を大量に持って帰ってきた。
無事にアラバスタ王国の援助を受けられたそうだ。慈悲深い王もいるもんだなと感心した。
物資を積み込む際にウチの船員が食糧に手を付けたんでシバき回した。よそ様の食糧に手を付けんなって何度言ったら分かるんだ。
積み込みの最中、ハゲタカに乗ったラッコが船に突撃してきた。
何かと思えば、ラッコは小包をおれに手渡してきた。
何が何だか分からないまま、小包を開けた。
バナナワニのレシピを教えろ。 サー・クロコダイル
こう書かれたメモと、拳大のダイヤモンドが入っていた。
どんだけ気に入ったんだ。
せっかくなので、バナナワニの血抜きの方法と捌き方、肉の保存方法から熟成期間、部位ごとの調理レシピまで書いてラッコに持たせた。
こんだけ気に入ってんなら、その内自分でバナナワニを繁殖させ始めてもおかしくねえな。
ついでにハゲタカに海ブタの切れ端、ラッコには大振りのバカガイをやった。
無表情だったが、持って帰ったってことはきっと食べたんだろう。
本日は快晴、風も穏やか。
再びドラム王国を目指し、アラバスタ王国を後にした。
今日、海賊の襲撃を受けた。
大砲を撃ってきやがったんで、砲弾にワントラップ入れてそのまま蹴り返した。
上手いこと敵戦の火薬庫か何かに命中したようで、敵戦は爆発炎上した。
意気揚々と金品を奪いに行こうとしたが、ドルトンから
正当防衛ならまだしも、ドラム王国の旗で略奪行為はやめてもらえないか。
と、止められた。
まあ、わざわざ寒い海でサルベージするのも面倒なので、良しとした。
今日はバナナワニの干し肉に孤高ワカメのサラダ。
アラバスタの気候のおかげで保存食を大量に作れたのはありがたかった。
すぐにドラム王国を出発した。
港に着き、村でログポースを受け取った後、別れの一品としてメシを作った。
だが、せっかく作ったメシをどこの誰とも分からん仮面野郎がひっくり返しやがった。
流石に頭にきたので原型がなくなるまで蹴り込んでぶち殺してやった。
仲間の連中が銃を撃ち込んで来たが、ものともせずに蹴り飛ばした。
村の連中に聞いたら政府の役人だという。誰であろうとメシを粗末にするヤツは許さん。
ついでにコイツら大金を持ってたので全部頂いた。
海軍に狙われても困るのですぐにドラム王国を出発した。
王からの報酬は得られなかったが、元々アテにしてねえ。このカネで良しとしよう。
マストはしっかりクック海賊団のものに変えた。
やはりこっちの方がしっくりくる。
とうとう億越えの賞金首になっちまった。
なんと1億7000万ベリー。
今日の朝刊にゃあこう書いてあった。
クック海賊団船長【赫足】のゼフ、1億7000万ベリーの賞金首へ
クック海賊団は【東の海】の海賊だが、先般グランドライン入りが確認された。
船長の【赫足】のゼフはグランドラインに入って以降、名のある海賊を多数討ち取っていた。
さらには先日、ドラム王国にてCPの役人を殺し、同国の天竜人への天上金を強奪したため、懸賞金が跳ね上がる結果となり……
なんと知らぬ内に天竜人にケンカを売っちまったようだ。
それでも船員のバカどもは陽気に騒いでやがる。
天竜人なんざ意にも介さぬバカどもだ。
だが、そんな連中を頼もしく思ってしまっているおれがいる。
上手いこと釣れた極寒ブリを刺身としゃぶしゃぶで振る舞った。
ドラムで仕入れた群生コンブがいい出汁を出してくれた。
カマバッカ王国にたどり着いた。
なんというか、すごい国だ。
あたり一面、どぎついピンク色。
で、住民なんだが、漏れなく全員オカマと来た。
どうやって子孫繁栄してきたんだこの国。
とりあえず港に停泊した。
なんとなく宿に泊まるのが怖い。
気候は穏やかなので、これは不幸中の幸いだ。
なんてこった。
ここのメシは旨すぎる。
海ブタのスープはおれも何度も作ってきたが、今日飲んだホルモンスープには度肝を抜かれた。
人を見た目で判断しちゃいけねえもんだ。
せっかくなんでレシピを教えてもらおうと思ったが、門外不出だという。
知りたいなら、なんたら拳法の花嫁修行を受けろ、なんて訳のわからんことをのたまい始めた。
御生憎だが今さら花嫁にも花婿にもなるつもりはねえ。
教えてもらえねえんなら仕方ねえ。
盗むしかねえ。
ログが溜まるまでに色んな店に通い続け、味を覚え、自分なりに近づけていく。
コックの見習い時代を思い出す。いっちょ初心に返るとしよう。
考えが甘かった。
船員がどんどん??????になっていく。
なんだってんだ。
クソ。
このままじゃ、おれも、
わたしゼフ!
今日は◾️◾️◾️◾️◾️◾️◾️◾️◾️◾️◾️◾️
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(以下、破れていて読めない)
何も見てねえ。
何も聞いてねえ。
何も覚えてねえ。
料理の腕は上がった。
地獄とはこういうことか。
早く早く早く次の島へ行こう。
美食の町プッチにたどり着いた。
美食の町というだけあって、街はキレイだし、いい香りがそこかしこから漂ってくる。
まずは偵察と街を冷やかしてきたが、やはり飲食店の数が多い。
ディスプレイにゃ盛り付けまで見事な料理が所狭しと並んでいた。
露天でサンドイッチを買ったところ、目の覚めるような旨さだった。
パンはキオテラ麦だと思うが、もしかしたらこの島の固有種かもしれない。
具材は牛系統の肉に、ミネラルレタス、ピリからし菜のマスタードまでは分かったが、ピクルスがなんの野菜か分からねえ。
もしかしたら木の実の可能性もある。
前の島は散々だったが、ここは楽しめそうだ。
この島でも簡易レストランを開いた。
出だしから上々だったのだが、どうも客に違和感を覚える。
数日レストランをやって、その違和感がようやく分かった。
コイツら、このおれの料理を風変わりなB級グルメとしか認識してやがらねえ。
たまには海賊の出す珍妙な料理でも食べてみるか。
ぐらいにしか見てやがらねえ。
性格が悪いわけじゃねえ。
だが、明らかに見下してやがる。
このままじゃ看板を下ろせねえ。
おれの料理人としての意地とプライドにかけて、コイツらにおれの料理を認めさせてやる。
差し当たって、小さな空き店舗を間借りし、調理器具を今までの3倍に増やした。
今に見てやがれ。
おれのフルコースが市長賞を受賞した。
長く苦しい戦いだった。
船員たちと祝杯を上げた。
そこでふと誰かがひと言。
あれ? おれらなんでレストランやってんだ?
そうだ、おれたちは海賊だった。
イヤでもここでレストランをやるのもいいんじゃないかとも思ったが、おれは賞金首だった。
おまけにプッチは海軍本部からかなり近い。
むしろよく今まで気づかれなかったな。
海賊が堂々とレストランをやってるなんて夢にも思わないか。
しかし、レストランをやっている日々は、日誌をつけることを忘れるほどに楽しかった。
おれは根っからの料理人らしい。
これまでの航海、特に海賊に成り立てのころはよく食糧を腐らせちまっていた。
その度に海上で物資の補給が出来ればと思っていた。
それならいっそ、海上でレストランを開いたらどうだろうか。
海の上で腹が空いたヤツに旨いメシを食わせてやる。なかなかやりがいのある商売じゃねえだろうか。
……少なくともグランドラインじゃ実現不可能だな。サイクロン海獣その他諸々で一ヶ月もたないだろう。
コレはスゴい。
船の何倍もの速さで、風も波も天気も気にすることなく他の島へ行ける。
世界にゃあとんでもない発明をする者がいたもんだ。残念ながら発明者は故人のようだが。
列車に揺られること数時間、水の都ウォーターセブンに到着した。
海列車誕生の地だけあって、大工稼業、取り分け造船業が盛んに行われていた。
街の内部は水路だらけのため、ブルという生き物に小さいボートのようなヤガラというものを引いてもらって移動する。
こういう生き物を見ると、まず最初に味を想像して次に捌き方を考えてしまうのが料理人の悪いサガだな。
水水肉という肉が名物とのことなので、早速買って食った。
歯応えも何もあったもんじゃなかったが、味は旨かった。
塩と胡椒だけであそこまで旨いというのは、素直に肉がいい証拠だ。
明日はひと通り観光して、明後日にはプッチに戻ろう。
妙なモンを拾っちまった。
なんと、背中から翼が生えた3人家族。
ウォーターセブンで道に迷ってしまい、路地裏に入ったところで、先述の家族に捕まった。
すいません、名のある海賊の方とお見受けします。
後生の頼みです。船に乗せてください。すいません。
初対面のヤツの後生なんざ知るかボケナス。
そう言って帰ろうとしたが、よく見れば3人ともやつれている。
この顔は何度も見てきた。栄養失調の顔だ。
腹が減ってんならまずはメシだ。
食いてえ奴にゃ食わしてやる。話はそれからだ。
生憎、調理器具の類いは持ってなかったので近くの売店でスープを奢ってやった。
ガキが一気に食おうとしたので、大声を出して静止させた。栄養失調のヤツが一気に食うと死んじまうんだ。
ガキはなんとか思い留まり、ゆっくりとスープを飲んだ。
詳しい話を聞くと、コイツらなんと空から来たという。
空から地上に来て、悪い人間に捕まり、天竜人に奴隷にされ、数年前のフィッシャー・タイガーが起こした暴動で脱出したそうな。
そして、故郷に帰れず、行くところもなく、役人の目を恐れながらここまで来たと。
にわかには信じがたい。だが、腹の減ってる人間を見捨てるのも夢見が悪い。
とりあえずプッチに連れて行って、船に乗せるとしよう。
長く料理をしたプッチを出発した。
ログポースはなんと下を指している。次は魚人島だという。
だが、海に潜る前に、空に行くことにした。
例の3人家族を空島へ送り届ける。
ここからコイツらの故郷である空島はとても遠いらしい。
だが、空島にも色々あり、この海域付近を飛んでいるウェザリアという空島があるそうな。
上手いことその島に接近し、電伝虫で連絡が取れれば回収してくれるだろうという。
目標地点が移動しているので、ゴールのない航海をするようなもんだ。難易度はべらぼうに高いだろう。
だが、空に浮かぶ島などこの機会を逃したら2度とない。
是非とも空の食材で料理をしてみたい。
今日は巨大なカニが現れたので叩き割ってカニづくしとした。
カニミソカニ汁カニメシ焼きカニ茹でカニ蒸しガニどれも大好評。
ガキも大喜びだ。
最後は甲羅を砕いて盃にしてカニ酒を楽しんだ。
船員2人を船から突き落とした。
このバカども、例の家族の嫁さんに暴力働こうとしやがった。
男は女に手を出しちゃなんねえ。
こんなのは恐竜の時代からのしきたりだろうが。
だがまあ、男しかいねえ船に安易に女を乗せたおれにも責任がある。
とりあえず反省したバカどもを引き上げて謝らせた。
早く空島を見つけねえと船の秩序が乱れるな。
おれの船が空を飛んだ。
とうとうウェザリアを見つけた。
そうと分かっている人間がいなきゃ見逃しちまうだろう。下から見た分には、思っていた以上に普通の雲だった。
電伝虫をかけてみたところ、本当に何者かが応答した。
この海のど真ん中で船はおれたち1隻のみ。となれば、本当に空の人間が応答したのだ。
幽霊を感じたような、悪魔を見つけたような、なんとも奇妙な興奮に襲われた。
電伝虫でやり取りを続けていると、雲のから貝殻とフックがついたワイヤーを何本も垂らしてくれた。
いよいよ雲の上に人がいる実感が湧いてきた。
すべてのフックを船に結着させると、同時に貝殻の天辺を押せと言われた。
言われるがままに押したところ、なんと貝殻から考えられない勢いの風が噴出し、船が持ち上がった。
ガラにもなく変な声を出しちまった。
ゆっくりと船は上昇していき、風に煽られ、グラグラと揺れた。
波に揺られるのと風に揺られるのじゃあ、えらい違いだ。
そして、吊り上げられること数十分、どうにかこうにか、おれたちは雲に上陸した。
ワイヤーは大型のクレーンに巻き上げられていた。
雲の上を歩いた。雲を触った。雲の上を跳んだ。飛び込んだ。寝転んだ。
信じられねえ、雲の上に乗っちまった。
そうこうしている内に、何人もの長身の老人がいたことに気がついた。
ウェザリアの住人だという。
交渉の末、この家族の故郷、エンジェルランドにおれたちも行くことになった。
ここからさらに高い場所に島も海も人もいるという。
期待に胸が膨らむ。
グランドラインに来て何度も思うが、世界はおれの想像をはるかに超える。
どうやら、このウェザリアはあの海域に限らず色んな空を飛んでいるらしい。
ただ、フィッシャー・タイガーの一件以来、逃げ延びた空の住人を救うため、レッドライン付近を飛ぶことが多くなったという。
なんと救われた奴隷たちはこの家族を入れて10名にのぼるらしい。
元々天候を科学的に解明するための人工の空島だというが、難しい話にゃ誰もついていけなかった。
ただ、揺れはなく、日差しと風は心地よい。それだけ分かりゃあそれでいい。
ここの老人たちは茶菓子が大好きだというので、プッチ風スコーンとグランドベリーのジャムを作った。
老人たちから茶葉をもらったんで、おれたちも紅茶を楽しんだ。
味もさることながら、バツグンの香りだった。
空島食材への期待が高まる。
天国を見た。割と俗っぽい天国だが。
今日、ウェザリアの老人たちの案内でエンジェルランドに入国した。
なんと高度は1万メートルを超える。ケタが違いすぎてよく分からん。
本来なら入国料を払わねばならないらしいが、事情を話してタダで入れてもらった。
そして、本当に、雲の上に海が、陸が、国があった。
船員がたまらず雲の海に飛び込んだので、おれも飛び込んで泳いじまった。
抵抗が少なく泳ぎやすい。塩分は地上の海と大差ない。
ここ数日は驚きすぎて頭がついて行かねえ。
港に船を停め、国の警察に事情を説明すると、例の家族の親族が迎えに来た。
涙の再会に、すっかり情が湧いていたおれたちも泣いてしまった。
良かったな、コニス。
祝賀会として盛大に宴を開いた。栄養失調だったコイツらは今や腹一杯食えるようになっていた。
まだ空の食材を把握してなかったので、おれはいつもの食材で一品作った。
青海に帰る前に空島料理を振る舞うとコニスに約束した。
明日から楽しくなりそうだ。
神に会った。ほとんど農家のじいさんだったが。
今日、神の使いとやらが、国民を救った礼をしたいので、神の社に来てもらえないかと宿を訪ねてきた。
いやはや、神に礼を言われるとは、おれも偉くなったもんだ。
さすがに神様相手にテメェが来いとは言えず、むしろ神の社の方に興味が湧いたのでこちらから出向くことにした。
どんな土地かと思えば、巨大な森だった。そして何より、大地が、土がある。
木の長さは100メートルを超え、幹の太さは円周で10メートルをゆうに超える。そんな木々で出来た森だ。
森の生物はどれも巨大で、鳥の大きさはアラバスタのハヤブサ男よりも大きかった。
なんとも雄大な光景だった。
島の中を雲の川が巡り、その川を風貝という動力がついた船で奥へ奥へと進み、程なくして神の社に辿り着く。
出迎えた老人に、神はどこだと聞いてみれば、ワシが神だという。
我が名はガン・フォール。
この度はよくぞ我が国の民を助けてくださった。
本当にありがとう。心から礼を言わせてくれ。
そう言って深々と頭を下げるじいさんは、どう見ても神様とは言えなかった。
思わずホントの神様はどこにいんだと問い詰めたら、向こうの臣下が激怒した。今にして思えばそりゃそうだな。
神などと大層な称号を得ているが、実際はただこの国の長というだけだ。
それならこんなジジイでも務まるだろうよ。
なんだか妙に納得がいった。
案内された神殿は、キレイではあるものの豪勢とは言い難く、過度な装飾品は一切なかった。
ただ、なんとなく文化的であることは学のないおれでも分かった。
神殿で新鮮な野菜や空魚を使った料理を馳走になった。
なんと野菜は神が栽培したものだという。
ただすり潰しただけでジュースになってしまう程の野菜を育てるとは、コレが神の御業ってヤツか。
帰りに土産として、黄金を袋いっぱいにいただいた。
黄金を略奪するのではなく、譲り受ける海賊なんざ、おれたちくらいだろう。
気を良くして宿に戻った。良き1日だった。
空島はとても良いところだ。
海軍はおらず、海賊もおらず、素材はどれも一級品ときた。
だが、おれたちは青い海に生きる海賊だ。あまり長いこといると刺激がほしくなる。
何より、どう考えてもここにオールブルーはない。そもそも海がブルーじゃなくホワイトだしな。
空の食材は珍しく、味も食感も香りもたまらないが、狭い島である分、種類は限られてしまう。やはり青海の食材が恋しくなる。
なので、空島から降りることとした。
ログポースは書き換えられ、魚人島ではなく別の島を指してしまったが、なに、その内たどり着けるだろう。
約束どおり、コニスたちに空島フルコースを振る舞ってやった。
神カボチャのムース、特急エビのクリームスープ、空魚のパイの包み焼き、コナッシュのソルベ、怪鳥の白ワインステーキ、太陽野菜のサラダ、夕焼けプリン
どれも飛び切り自信作で、どれもおかわりを頼まれるほどに大好評だった。
空島最後の料理は満足いくものとなった。
本日は晴天なり。夕焼けが目に染みた。空は今日も平和である。
最悪だ。
グランドラインから東の海に戻ってしまった。
あのタコのせいだ。
コニスたちの見送りを受け、白海から風船のようなタコに吊られて青海に戻るはずだった。
だが、どうやらタコに方向転換は出来なかったようで、嵐に捕まった。
引きちぎられそうな嵐に揉まれ、死を覚悟した瞬間、嵐が止んだ。
嵐が止んだあとも、そのまま慣性で飛ばされ続け、ようやく青海に落ちた。
ほっとしたのも束の間、落下地点はカームベルトだった。
なんてことはない、嵐に吹き飛ばされてカームベルトのど真ん中まで来てしまったのだ。
かなりの高さから落下したため、海王類が気づいていた可能性があったので、方向転換もせずに全員で必死にオールを漕いだ。
再び風を感じ、全員が安堵したそのとき、海軍がやってきた。
息もつけぬ怒涛の展開だったが、どうにかこうにか戦闘には勝利した。
そして、気づいてしまった。海兵の手応えのなさと、マストの数字。コイツら本部の海兵じゃねえ。東の海の支部連中だ。
おれたちは奇跡的にグランドラインからの生還を果たしてしまったのだ。
なんてこった。まだまだ野望は潰えてねえってのに。
腹いせにタコを塩茹でにして食ってやった。身がほとんどなかった。船員が泣きながら食べていた。
しょうがねえ、振り出しだ。人生なんざ理不尽の連続。どうにもならねえもんはどうにもなんねえ。
しばらくは東の海で態勢を整えることとする。
差し当たって、嵐のせいで備品がほとんどイカレちまったので、どっかの商船から一式略奪するのがいいだろう。
それでも空島の黄金はほとんど無事だったんだから、やっぱりおれたちは海賊だな。
この日誌を読んだ者へ。
すぐ近くにジジイとガキの死体、宝があるだろう。
ジジイの死体といっしょにこの日誌を海へ流せ。
ガキ遠く離れた海に流せ。
報酬として宝はくれてやる、死体にゃ無用の長物。
ここにクック海賊団の航海、その終焉を記す。
.
生きてた。人間死なねえものだな。
商船を襲った日、おれたちは再び嵐に巻き込まれた。
つくづく嵐に嫌われているらしい。
船員も船も藻屑と消えた。海に生きた連中だ、埋葬より故郷の海の方がよっぽど良かろう。
おれはと言うと、悪運が強いのか、サンジというガキと岩場に漂着していた。
持ち物は宝と日誌が入った袋、食料が入った袋だけだった。
泳ごうにも岩を削ろうにも、荒海に揉まれて蹴り脚がバキバキに折れちまっていた。立つのが精一杯の脚、最早再起不能だっただろう。
なので、食料はサンジに渡し、おれは自分の蹴り脚を食って生き延びた。
人肉なんざ最悪だ。味は悪いし血生臭いし腐っていくし2度と食いたくねえ。
インクもほとんどなかったんで、前のページには最低限しか書かなかった。
仲間は全員死んだ。
オールブルーこそ信じなかったが、いい連中だった。
ここに冥福を祈る。
いつかおれがそっちに行くときゃ、食材揃えて待っててくれ。腹一杯旨いモン食わせてやる。
そして、この日誌は今日で最後とする。
この航海日誌は我らクック海賊団の航海日誌。
そしてクック海賊団は壊滅した。
おれは海賊稼業から足を洗い、これからサンジと海上レストランを開く。
オールブルーの他にできた、おれのもうひとつの夢だ。
それを叶えるため、これからも航海を続けていく。
我ながら、いい海賊人生であった。
海上レストラン【バラティエ】オーナー室
ゼフ「……」ペラ…
ゼフ「……ふん」パタン
ゼフ「ったく、こんなモン手に入れたって航海の役にゃあ立たねえと思うがな……」
ガチャ
パティ「あ、あれ? オーナーまだ起きてやしたんで?」
ゼフ「あ? あー、まあな。つーかノックくらいしろテメェ」
パティ「へ、へぇ、すいやせん……やっぱり、今日サンジが出てったのが心配で?」
ゼフ「はっ、アイツにそんな心配がいるか?」
パティ「いらねえですね。……あ、あー! なんだアレ!!」
ゼフ「ああ?」クルッ
パティ(今だ行け!)
カルネ(よし!)
ゼフ「? なんもねえじゃねえか」
パティ「あ、あれ~?なんか見えたんですけどねえ~?」
ゼフ「なんかってなんだ」
パティ「さ~~、鳥のような~~魚のような~~人のような~~」
ゼフ「なんだそりゃ。おうカルネ、そこにあった酒なら今おれが飲んでるぞ」
カルネ「おわっ!?き、気付いてましたか!?」
パティ「あちゃー……」
ゼフ「ったく、酒が飲みてえなら先にそう言え。欲しけりゃくれてやる」
カルネ「ええ!?いいんですか!?」
パティ「ラッキー!!流石オーナー太っ腹!」
ゼフ「ほざけ。……テメェらあと何人起きてやがる?」
カルネ「え?そうっすね~、10人くらいいたかな?」
ゼフ「よし、なんかツマミでも作ってやろう」
パティ「お、オーナー直々に!?いいんですか!?」
ゼフ「なあに、気にすんな。食いてえんだろ?」
パティカルネ「「ぜひ!!!」」
ゼフ「それならいい」
ゼフ「食いてえ奴にゃ食わせてやる。話はそれからだ」
ゼフ「航海日誌」
これにて終幕。
どっちも長々書いてしまって申し訳ない。
ほな。
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コメント一覧 (16)
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- 2019年12月13日 01:08
- いいね!
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- 2019年12月13日 01:14
- これもう公式のSSじゃん
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- 2019年12月13日 02:26
- そういやゼフは覇気を身につけていたんだろうか
悪魔の実なしで偉大なる航路に通用したってのはそういう事だと思ってたんだけど
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- 2019年12月13日 07:06
- 本スレで足食えガイがいて草生えた
荒らしを相手にしないで名作投稿する姿勢は素晴らしいやで
モリアSSといい、ワンピ世界の過去に妄想膨らませるのは楽しいやな
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- 2019年12月13日 08:08
- クロコダイルが可愛い
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- 2019年12月13日 12:15
- モリアの人か、この人の作品クオリティが高くていいな
ゼフが東の海に帰ってきたのは空島の帰還に失敗したって考えはなるほどなと思った
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- 2019年12月13日 12:26
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やっぱモリアの人だったか
既存キャラと絡めたりするのクソ上手いな
まぁ、確かにゼフの航海日誌には食い物と調理方法しか載ってないだろうなw
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- 2019年12月13日 12:32
- モリアのやつも面白かったしこれも面白かった
他のキャラのも書いてほしいな
個人的に見てみたいのは赤犬がどうしてあそこまで正義に拘るのか、とか
公式でいずれはやるかもだけど
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- 2019年12月13日 18:21
- ゼフが東の海に戻った理由は公式設定でも違和感ない説得力があるな。
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- 2019年12月13日 18:56
- アニメでルフィ達が空島から降りてきたところが海軍基地だったって話なかったっけ
あのタコ役立たねぇなw
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- 2019年12月14日 19:30
- 人の思いは形になる。
それを見せて頂いてありがとう。
作者に敬意を。
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- 2019年12月15日 00:26
- 最近はクソスレからガチスレ小ネタスレとワンピSS絶好調やな。
ワノ国編の影響か?
ゼフの少ない情報をほぼ完璧に網羅して、遭難したときのなんで岩壁砕いて食料取りに行かねえんだっていう疑問へのアンサーもあってよかった。
そりゃ足折れてりゃムリだわな。
あとは鉄板に蹴り跡残したって伝説も入れてほしかった。六式の鉄塊を蹴りで破ったみたいな
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- 2019年12月15日 17:16
- ほんと良いSS書く人だな、もっと読みたい
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- 2019年12月31日 22:08
- 公式でありそうなレベルだった
ゼフ好きだから嬉しい
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- 2020年07月13日 20:07
- おもしろい
こういう日誌系のss好きだ
バナナワニwww