男「バッティングセンターでクソガキに滅茶苦茶なアドバイスするの楽しすぎワロタwwwww」
カキーン…
カキィーン…
男「……」
男(俺の趣味はこうして、バッティングセンターで腕組みしながら他人のバッティングを見ること……)
男(なぜならこうしてると、まるで自分がバッティングの達人になったように思えてくるからだ)
男(野球経験? もちろんない。ていうか、ここで一番遅い90km/hのボールもまともに打てない。文句あっか)
男「ん?」
少年「いっつもここにいるけど、もしかしてニートなの?」
男「む!」
男(なんだこのクソガキ……失礼すぎるだろ。だいたいニートじゃねえよ! フリーターだよ!)
男(バイトまでの時間ヒマだから、いつもここでバッティング見物ごっこしてんだよ!)
男(……なぁんて正直に説明したら、下手すりゃさらにバカにされるかもしれない)
男(そうだ!)
少年「え、そうなの!?」
少年「だけどお兄さんなんて見たことないよ……」
男「そりゃそうさ。プロになった年に大怪我して、あっという間に引退しちゃったからね」
男「だけど野球には未練があるから、いつもこうやってバッティングを見させてもらってるのさ」
男(どう考えても無理のある設定だが……)
少年「すっげ~!」キラキラ
男(どうやら騙されたようだ)
男「え!? え、と……確かセカンドだったかな。二塁二塁」
少年「バッティングは?」
男「ああもう……凄かったよ。“打撃の申し子”“ホームラン製造機”と呼ばれたくらいだ」
少年「すっげ~!」
少年「あ、あのっ!」
男「なんだい?」
少年「僕にバッティングを教えて下さい!」
男「!」
少年「僕、少年野球やってるんですけど、守備はともかく打撃が下手で……」
少年「いっつもチームに迷惑かけちゃってるんです」
男「たしかに……野球は点を取らねば勝てないスポーツだからな。打てなければ話にならない」
少年「だからお願いします! ぜひご指導を!」
男「わ、分かった……とにかくフォームを見てみよう。打席に入るがいい」
少年「分かりました! じゃあとりあえず90km/hの打席で……」
少年「えいっ!」カキーンッ
少年「ていっ!」スカッ
少年「半分ぐらいしか当てられませんでした……」
男(俺よりよっぽどすごいじゃねえか)
少年「じゃあ、次はお手本を!」
男「え!?」
男「いや! 俺は怪我してるといったろう? もうバッティングできる体じゃないんだ……」
少年「失礼しました!」
男「だから、俺がフォームを直してやろう、うん!」
男(ここはひとつ……からかってやるか)
男「俺が素晴らしい打法を教えてやろう」
少年「ぜひ!」
男「まずこうやって片足を上げるんだ」
少年「これはまさか……一本足打法!?」
男「いや、あれの進化系ともいうべき打法だ」
少年「なんですって!?」
男「続いて、この上げた足を後ろに曲げる。こうすると、まるで尻尾みたいになるだろう?」
男「この姿勢のまま、バットを振るんだ。これぞまさに“尻尾打法”!」
少年「尻尾打法……!」
少年「はいっ!」
スカッ スカッ スカッ …
少年「ダメだ、全然当たらない! この姿勢じゃ力入らないし!」
男(そりゃそうだ)
男「それはまだ、君が未熟だからだ」
男「“尻尾打法”は理論上、最強の打法なのだ! 練習を繰り返せば必ず打てるようになる!」
少年「分かりました!」
男(ぷくくく……完全に信じ込んでやがる)
少年「尻尾打法!」
少年「ていっ! えいっ! てやっ!」スカッ スカッ スカッ
少年「ダメだ……ちっとも当たらない」
男「うーむ、理論上は最強のはずなのだが……君には難しすぎたかな?」
少年「す、すみません!」
男「だったら仕方ない。さらに上の打法を教えてやろう」
少年「上があるんですか!」
男「こうすることで空気の渦が発生し、ホームランを打ちやすくなる」
男「これぞ名づけて尻尾グルグル打法!」
少年「すごい! なんて科学的なんだ!」
男「じゃ、やってみな」
少年「はいっ!」
少年「でいっ! うりゃ! ええいっ!」スカッ スカッ スカッ
男(ホントにやってるよこいつ、ヤバイ笑いそうになっちゃう)プププ…
少年「あ!」
少年「やった! 当たりました! ゴロだけど……」
男「おお~、すごいじゃないか。だが、ゴロで満足してちゃダメだ。もっと練習しなきゃ!」
少年「はいっ!」
男(そりゃあんだけやってりゃ、たまには当たりもするわ)
少年「……」ショボン
男「どうした?」
少年「実は試合で尻尾打法をやったら……監督に怒られて……」
少年「“そんなふざけた打ち方するな”って……」
男(そりゃそうだ)
少年「!」
男「君は元プロの天才である俺と、そこらの少年野球チームの監督、どっちを信じる?」
少年「もちろんあなたです!」
男「よくいった」
男「ならば誰になんと言われようと、尻尾ブルブル打法を極め……」
少年「尻尾グルグル打法ですよね?」
男「あ、ああそうだった。尻尾グルグル打法を極めるのだ!」
少年「そうします!」
男(あーあ、どんどん泥沼にはまってるよ、こいつ)
少年「てやっ!」スカッ
少年「えいっ!」キンッ
少年「だりゃ!」スカッ
男(さすがに気の毒になってきたな。金も相当使ってるだろうし)
男(そろそろ本当のことを……)
カキィーンッ!
男「……え!?」
少年「もいっちょ!」カキィーンッ!
男「……ホームラン!? あの打ち方で!?」
少年「やっと……やっと尻尾グルグル打法のコツを掴めました!」
男「コツ……!?(んなもんあるのかよ)」
少年「グルグルのやり方さえしっかりすれば、たしかにこれホームランどんどん打てますね!」
カキィーンッ! カキィーンッ! カキィーンッ!
ザワザワ… スゲエ… マジカヨ…
男「えええ……!?」
ワァァァ…… ワァァァ……
実況『さあ、今年の夏の甲子園はとんでもない怪物が誕生しました!』
実況『今までになかった独特すぎる打法で、なんと予選大会から全打席ホームラン!』
実況『この打席はどうなるでしょうか……』
カキィーンッ!!!
実況『またもホームラン! 白い打球が鮮やかな放物線を描きました!』
記者「甲子園優勝、おめでとうございます」
球児「ありがとうございます」
記者「今年の甲子園は、まさにあなたの年でした」
球児「チームに貢献することができて、嬉しいです」
記者「ところで、あの不思議な打法はどうやって身に付けたんですか?」
球児「地元のバッティングセンターで知り合った人が教えてくれたんです」
球児「あの人には本当に感謝しかありません……」
「いたぞ!」 「彼だ!」 「彼があの打法を伝授した……!」 「元プロらしいぞ!」 「ぜひ一言っ!」
男「!」ギクッ
男(あの子が大活躍したのはよかったが、やっぱり俺んとこまでマスコミが押し寄せてきやがった!)
男(ここは尻尾巻いて逃げるしかねえ!)ダッ
~おわり~
元スレ
男「バッティングセンターでクソガキに滅茶苦茶なアドバイスするの楽しすぎワロタwwwww」
http://hebi.5ch.net/test/read.cgi/news4vip/1572519151/
男「バッティングセンターでクソガキに滅茶苦茶なアドバイスするの楽しすぎワロタwwwww」
http://hebi.5ch.net/test/read.cgi/news4vip/1572519151/
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コメント一覧 (10)
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- 2019年10月31日 22:31
- ホームラン製造機じゃないけど数年前の千葉代表に似たようなのいた気がするわ
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- 2019年10月31日 22:44
- バッセンにおいては90が一番打ちづらいと思う、と元バッセン店員が言って見る
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- 2019年11月02日 00:46
- >>2
初心者は100〜110が一番安定するよな
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- 2019年10月31日 22:52
- 最後言いたかっただけだろw
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- 2019年10月31日 22:58
- ダジャレやないかい
-
- 2019年10月31日 23:39
- 薄い本
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- 2019年11月01日 08:28
- 足を上げて後ろに曲げたら実質ただの片足立ちじゃね?
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- 2019年11月02日 09:49
- >>6
後ろに曲げ上げた足をバットのインパクトに合わせて前に振り出せば、一本足打法や振り子打法以上に重心移動のモーメントが働くから、従来のバッティングより強い打撃で打ち込めるぞ。
理論上は。
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- 2019年11月01日 10:25
- うまくまとめやがってww
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- 2019年11月04日 01:44
- 最後の一言のための長〜い前フリという落語みたいなSSすこ