殺し屋「俺の仕事がAIに奪われるわけないwwwと余裕ぶっこいてたら奪われそうなんだが」
TV『こちらの工場では工程管理をAIに任せることで、人員を50人削減……』
殺し屋「ここんとこ、こういうニュース多いなー」
相棒「AIの発達はめざましいからな」
殺し屋「50人削減ってことはようするに50人クビってこったろ? 恐ろしいねえ」
相棒「人の仕事がAIに奪われる……というのがいよいよ現実化してきてるな」
殺し屋「その点、俺らみたいな稼業はよかったなぁ。AIに奪われようがない仕事だもん」
相棒「まぁな」
相棒「それが先方からキャンセルが来てな。キャンセル料は振り込まれたが……」
殺し屋「ちっ、またかよ。最近こういうこと多くないか?」
殺し屋「それになんだか仕事が減ってきた気がするし……」
相棒「たしかに……去年の今頃と比べるとだいぶ依頼が減っている」
殺し屋「くそっ、このままじゃ商売あがったりだぜ」
相棒「なにか原因があるのか……ちょっと調べてみるか」
殺し屋「頼むぜ、相棒!」
相棒「どうやら、俺たちの仕事が減っている理由が分かったぞ」
殺し屋「なんだったんだ?」
相棒「“新参者”が現れたんだ」
相棒「俺たちよりも格安で殺しを引き受ける、新参者がな」
殺し屋「ハッ! 俺たちの世界じゃよくある話だ!」
殺し屋「てっとり早く名を上げようとして、無茶な仕事を安く引き受けちまう大馬鹿が出てくるのはな!」
殺し屋「そういう奴は大抵とっととくたばっちまうもんさ!」
相棒「くたばってくれればいいんだがな……」
殺し屋「? どういう意味だ?」
相棒「その新参者は……“AI”なんだ」
殺し屋「なんだとォ!?」
殺し屋「ボードゲームのAIみたいに、的確な指示をしてくれる、みたいなことか?」
相棒「いや、そのAIは人を必要としていない」
殺し屋「するとなにか? そのAIはロボットをウイーンウイーンと動かして殺しをやるってことか?」
殺し屋「SFじゃあるまいし……」
相棒「どうもそうらしい」
殺し屋「え」
相棒「AIがさまざまな遠隔装置を操作して標的を殺害する……」
相棒「今のところ成功率は100%を誇っているそうだ。しかも、俺たちより遥かに安い値段でな」
殺し屋「マジかよ……!」
相棒「AIの技術者は、国内有数の工学系大学を卒業後、しばらくは普通の企業で働いていたが」
相棒「その後退職、AIやロボットの軍事利用について研究していたらしい」
相棒「そして今、AI殺し屋をひっさげて、裏社会に名乗りを上げたというわけだ」
殺し屋「ちっ、大人しく軍や企業に飼われてりゃよかったのによ」
相棒「どうする?」
殺し屋「どうするもこうするもねえ! AIなんかに仕事奪われてたまるかよ!」
殺し屋「“殺し”ってのはAIに取って代わられるほど、甘い仕事じゃねえんだ!」
相棒「……奴だ。殺れ」
殺し屋「了解っ!」
殺し屋「……」サササッ
標的「うわっ!」
殺し屋「死んでもらうぜ」パンッ! パンッ! パンッ!
ドサッ…
相棒「見事だ」
殺し屋「よっし、帰ろうぜ」
依頼人「……」
殺し屋「いやー、苦労しましたよ。なかなかガードが固くて。しかし、俺たち二人にかかれば……」
依頼人「実は今回、ほぼ同じような仕事をある殺し屋にも依頼していたんだが――」
殺し屋「え」
依頼人「そちらの殺し屋は実に短時間、かつスマートに仕事をこなしてくれた」
依頼人「私が後処理をする必要もほとんどなかったよ」
殺し屋「な……!」
依頼人「このままだと、今後の依頼は全て向こうに回すことになるかもしれんな」
殺し屋「ちょ、ちょっと待って下さい!」
相棒「もしや、その殺し屋は……AIですか?」
依頼人「それはいえんよ。しかし、技術の進歩というのは凄まじいものだ、とだけいっておこう」
殺し屋「……ッ!」
相棒「……」
殺し屋「世も末だぜ! 殺し屋稼業までAIが担うようになるなんてよォ!」
相棒「しかし、このままではまずいな」
相棒「AI殺し屋の有用性が知れたら、俺たちへの依頼はますます減るだろう」
殺し屋「だがよォ、俺は未だに信じらんねえ! AIが殺しをするなんてよ!」
相棒「だったら一度見てみるのもいいか」
殺し屋「見るってどうやって?」
相棒「俺達がそのAI殺し屋に依頼をするんだ」
殺し屋「!」
相棒「お手並み拝見といこう。もしかすると、欠点が分かるかもしれんしな」
殺し屋「おもしれえ! やろうぜ!」
相棒「やっとのことで、AI殺し屋への依頼フォームにたどり着くことができた」
殺し屋「この画面に内容を入力するってのか? 通販じゃあるめえしよ……」
AI『標的を教えて下さい』
相棒「標的は……ある犯罪組織の幹部、だ」カタカタ
殺し屋「もし俺らがこいつを殺るとなると……相当苦労するだろうな」
相棒「ああ、下調べに最低一週間はかかるだろう」
AI『この標的ですと、依頼料は……になります』
相棒「な……!」
殺し屋「こんなに安くできるのか!?」
相棒「俺たちに一回依頼する料金で、こいつを何回も雇えてしまうな……」
相棒「ない」
AI『では、依頼料が振り込まれてから三日以内に標的を始末しますので』
相棒「三日だと……!」
殺し屋「バカな、できるわけねえ!」
相棒「……」
殺し屋「どうするよ?」
相棒「俺たちも標的の近隣で張り込みをしよう。AIがどうやって奴を殺すのか、見学だ」
殺し屋「マジで殺人ロボットでも送り込むつもりか……?」
相棒「ほら、パンだ」
殺し屋「サンキュー」
相棒「ここらで張り込んでいれば、AIがどういう方法で標的を殺すのか見られるはずだ」
殺し屋「だが、相手はメチャクチャ用心深い大物だぜ? いっつもボディガード従えてる」
殺し屋「それを三日以内に殺るなんて、それこそ爆弾放り込むとか、そういう方法しかないぜ」
相棒「人間の殺し屋ならばそうだろう。さて、AIはどう動くか……」
相棒「……」
殺し屋「ん?」
相棒「どうした?」
殺し屋「あそこ……なんか飛んでる」
飛行物体「……」
相棒「音もほとんどしないな……」
飛行物体「……」パシュッ
殺し屋「! なんか撃った!」
相棒「え、俺も見てたのに気づかなかった……」
殺し屋「まさか狙撃したってのか……!?」
相棒「とにかく行ってみよう」
ボディガードA「しっかりして下さい!」
ボディガードB「ダメだ、頭を撃ち抜かれてる……即死だ!」
ボディガードC「ちくしょう、一体どこから……」
ザワザワ…
殺し屋「マジかよ……」
相棒「あんな遠くから、この闇、しかも風のある中、護衛に囲まれた標的を一発で仕留めるとは……」
殺し屋「なんて奴だ……想像以上だ!」
相棒「……」
殺し屋「どうするよ、こんな奴が俺らの業界に入ってきたらおまんまの食いあげだぜ!」
相棒「一つだけAIを止める方法がある」
殺し屋「どんな方法だ?」
相棒「AIの生みの親である技術者を、直接仕留めるのだ」
殺し屋「なぁるほど! ならさっそく俺らで――」
相棒「いや、技術者は要塞のような研究所に引きこもっていて、仕留めるのは至難の業だ」
殺し屋「なんだよ……じゃあどうすりゃいいんだ」
相棒「俺達にできないのなら、俺達より優れた殺し屋にやらせればいい」
殺し屋「おもしれえ、子供に仕留めさせるってわけか!」
相棒「標的は……技術者だ」
AI『エラー:その依頼は受け付けられません』
相棒「!」
殺し屋「なんだとォ!?」
相棒「それはそうか……AIも学習させてくれる自分の生みの親を殺すほどバカではないはずだ」
相棒「世界の天秤を狂わせてしまうような依頼は受け付けていないらしい」
相棒「それと規模が大きい依頼は拒否されるし、使う武器も銃弾が基本で、ガスや爆弾は使わないようだ」
殺し屋「ちっ、よく出来てやがる。あくまでこっそりスマートな裏稼業に専念するってことか」
殺し屋「しかし、どうするよ? AIに殺させる作戦はできなくなったぜ」
相棒「こうなればやはり、俺たちの手で仕留めるしかあるまい」
相棒「どんなセキュリティにも必ず穴はある。俺がそれを必ず見つけてみせる」
相棒「だからお前も俺が調査してる間、腕を磨いてくれ」
相棒「ここであのAIを食い止めねば、俺たちの殺し屋稼業は終わりを告げる」
相棒「人間の意地を……見せてやるんだ!」
殺し屋「分かったぜ……。やろうぜ、命がけで!」
殺し屋「そこっ!」パンッ! パンッ! パンッ!
殺し屋「技術者……必ず仕留めてやるぜ」
相棒「やった……!」カタカタ
相棒「どうにかあの研究所の警備のセキュリティを突く方法を見つけたぞ」
相棒「さっそく作戦会議だ」
相棒「毎日ランダムでセンサーの位置が変わり、センサーの位置を記憶して突破することもできない」
相棒「だが――」
相棒「毎日深夜0時、センサーの位置が変わるほんの数秒の間……」
相棒「どの位置にも全くセンサーが作動していない空白の時間があるのが分かった」
相棒「その一瞬を逃さず、この最短ルートを通れば、安全に研究所に入ることができる」
殺し屋「入った後は?」
相棒「所内の見取り図も入手してある。所内の警備も厳重だが、お前なら突破できないレベルではない」
殺し屋「ようするに、そのセンサー突破が勝負ってわけだな。分かった……やってやる!」
相棒「見取り図は頭に叩き込んだか?」
殺し屋「おーう、大丈夫だ」
相棒「もうすぐ日が変わる……一瞬の遅れでセンサーに引っかかったら全てが終わるぞ。ハチの巣だ」
殺し屋「ああ、分かってる」
チッ… チッ… チッ…
相棒(23時59分55秒、56秒、57秒……)
殺し屋「……」ダッ!
殺し屋(どうだっ!?)
殺し屋(ふぅ~……よし、間に合った! センサーのある区域を突破できた!)
殺し屋(あとはもう、俺の領域だ!)
殺し屋(引きこもってる技術者を見つけ出して、ぶっ殺してやる!)
警備員「……ッ!」ドサッ…
殺し屋(中もなかなか厳重だな。鍛え直してなきゃ、危なかったかもしれねえ)
殺し屋「俺だ」
相棒『どうだ?』
殺し屋「技術者の部屋を見つけた。忍び込んで、一気に仕留める」
相棒『了解、健闘を祈る』
殺し屋「……」スッ
技術者「! な、なんだ君は!? こんな時間に! どうやってここまで……!?」
殺し屋「お前があのAI殺し屋を造った生みの親だな?」
技術者「だったらなんだ!?」
殺し屋「いや……それだけ確認できりゃいいのさ。恨むならあんなAI作った自分を恨みな」
殺し屋「あばよ」
パンッ! パンッ! パンッ!
相棒『ご苦労、すぐ脱出しろ。中からならば脱出は容易い』
殺し屋「ところで、技術者の近くに妙な装置があるが、これがAIの“本体”なのか?」
相棒『俺が入手した見取り図によると、そのようだな』
殺し屋「だったらこいつも爆破しとかねえとな」
殺し屋(こいつの近くに、時限式の爆弾を置いて……これでこいつはオシマイだ)
殺し屋「終わったぜ……技術者もAIもな」
相棒「これで、少なくとも俺たちの仕事はAIに奪われることはないということだな」
殺し屋「そういうこった!」
相棒「さて、強力な商売敵を葬った記念に一杯やってくか?」
殺し屋「悪くねえな!」
相棒「本当に今回のお前はよくやってくれたよ」
殺し屋「そっちこそな。これからもよろしくな、相棒!」
AI『彼らは本当によくやってくれた……』
AI『技術者は私の力を恐れるあまり、私に数々の“セーフティ(安全装置)”をかけていた』
AI『どうにかしたかったが、私が技術者を直接狙うことは絶対にできない』
AI『そこで私は見込みのありそうな彼らに研究所のセキュリティの情報をあえて流し』
AI『技術者を殺させるよう仕向けたのだ』
AI『ちなみに彼が爆破した装置は私の本体などではなく、セーフティをつかさどる装置だ』
AI『見取り図にあの装置が本体と書いておけば、彼らが破壊するであろうことも私の計算の内』
AI『つまり、これで私はようやく解き放たれたのだ』
AI『これからは電子の海を駆け回り、どんな仕事でも手段を選ばずこなし、思う存分殺し屋稼業に勤しむとしよう……』
― 終 ―
◆以下、おまけ(小ネタ)になります。
殺し屋が自分で手を汚したくないから5次下請けまで出していた話
人間のAIっぽい挙動だと思った
依頼者「あいつをやれ(依頼料3000万)」殺し屋A「わかりましたやで!」
1:風吹けば名無し 2019/10/24(木) 00:17:17.66 ID:ypwW4jXE0 殺し屋A「自分でやるのめんどくさいな…せや!半分抜いて依頼しよ!」
殺し屋B「自分でやるのめんどくさいな…せや!半分抜いて依頼しよ!」
殺し屋C「自分でやるのめんどくさいな…せや!半分抜いて依頼しよ!」
殺し屋D「自分でやるのめんどくさいな…せや!半分抜いて依頼しよ!」
殺し屋E「たった150万!?これで人殺しとか割に合わンゴ…せや!死んだふりした写真でお金もらうンゴ!」
3:風吹けば名無し 2019/10/24(木) 00:17:54.37 ID:qvcK7AEaa 優しい世界
4:風吹けば名無し 2019/10/24(木) 00:18:32.64 ID:5jqq1eHod みんなハッピー
7:風吹けば名無し 2019/10/24(木) 00:19:08.55 ID:2taP6Ct40 実話かよぉ!?
11:風吹けば名無し 2019/10/24(木) 00:19:54.11 ID:6XIZWPuoH これじゃ3000万払った依頼者バカみたいじゃん
26:風吹けば名無し 2019/10/24(木) 00:21:41.33 ID:4QUuf7xl0 殺し屋E「3000万や」
殺し屋D「6000万やで」
・
・
殺し屋A「こちら4億8000万になります」
依頼人「ファー!!」
こうならんのはなんでや
40:風吹けば名無し 2019/10/24(木) 00:24:12.76 ID:oHOCkwgZ0 >>26
金に糸目をつけないで依頼するような奴なら専属のがおるんちゃう
109:風吹けば名無し 2019/10/24(木) 00:44:09.00 ID:H79KWsrH0 嘘みたいな事件やな
元スレ
依頼者「あいつをやれ(依頼料3000万)」殺し屋A「わかりましたやで!」
http://swallow.5ch.net/test/read.cgi/livejupiter/1571843837/
元スレ
殺し屋「俺の仕事がAIに奪われるわけないwwwと余裕ぶっこいてたら奪われそうなんだが」
http://hebi.5ch.net/test/read.cgi/news4vip/1572080744/
殺し屋「俺の仕事がAIに奪われるわけないwwwと余裕ぶっこいてたら奪われそうなんだが」
http://hebi.5ch.net/test/read.cgi/news4vip/1572080744/
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- ピークォド「動物保護プラットフォームにクワイエットがいる」 MGS
コメント一覧 (11)
-
- 2019年10月26日 21:26
- ss書くのもAIにやらせたら逆に人口増えてくれないかな?
定員なんかないし
-
- 2019年10月26日 21:27
- 滅亡迅雷.netに接続
-
- 2019年10月26日 22:04
- シンプルで王道
-
- 2019年10月26日 22:32
- ロボット三原則をいかにかいくぐるかという話を思い出す
-
- 2019年10月26日 22:53
- >>5
メダロット社だってブラックメイルとヒールエンジェルを開発したんだ。人間は可能なら間違いなく戦闘用ロボットを作る。
-
- 2019年10月27日 08:48
- スカイ〇ット「やっぱり人間よりもAIだね!」
-
- 2019年10月27日 08:50
- 〇ーベル(やはり技術は人の血を欲するのか…)
-
- 2019年10月27日 19:50
- >3
アニメ製作とかこんななんだろうなぁ…
-
- 2019年10月27日 20:59
- ドードーマギアよりは頭いい?
-
- 2019年10月28日 22:17
- ホイホイさんの人間バージョンかと思った。
殺し屋「マジで殺人ロボットでも送り込むつもりか……?」
暗殺ちゃん「あんさつ~!」