営業マン「もっと安くしろ! サイズ小さくしろ! 早く作れ!」技術「……」
取引先「いや、その話なんだがね……」
営業マン「は?」
取引先「実はね……他社さんがこれよりもっと安い値段で、ほぼ同じ製品を勧めてきてね」
営業マン「な、なんですって!?」
営業マン「しかし、商談は九割九分進んでたんです! それを今さら……!」
取引先「だったら、この話はそちらに回すしかないねえ」
営業マン「わ、分かりました! もっと安くしてみせます!」
社員「ん?」
営業マン「例の製品を担当してる技術の人にお会いしたいんですが」
社員「ああ、あれ……あそこにいるよ」
営業マン「……え」
技術女「……」
営業マン(マジかよ……女かよ。技術部にはほとんど来ないから知らなかった)
営業マン(こりゃあ無理そうだなぁ……)
技術女「ご用件は?」
営業マン「実はですね、例の製品なんですけど……もっと安くしてもらいんですけど」
技術女「安く、とは?」
営業マン「ざっとこのぐらい」
技術女「……」
営業マン「もちろん、無理なお願いってのは分かってますよ? でもね? とりあえず聞いて?」
営業マン「こっちだってそれなりに苦労して話を取ってきたんだし。客先に何度足を運んだことか」
営業マン「この世界“こういう製品がありますよ、値段はこうですよ”だけじゃやってけないのよ」
営業マン「だからなんとか――」
技術女「出来ますよ」
営業マン「そりゃ出来ないってのは分かる! 分かりすぎる! 分かるけど……え!?」
技術女「はい」
営業マン「いよっしゃあああああ!!!」
営業マン「ありがとう、君のおかげで商談は成立だ!」
技術女「頑張って下さい」
営業マン「おう!」
取引先「うーん……」
営業マン「まだ何か?」
取引先「それなんだがね……他社さんはさらに小型化できるという提案をしてきたのだよ」
営業マン「こ、小型化!?」
取引先「サイズが小さいに越したことないし、このままだとやっぱり他社さんの方が……」
営業マン「お任せ下さい! 何とかしてみせます!」
技術女「なんでしょう」
営業マン「実は先方が小型化を要求してきまして……」
技術女「どのくらいですか?」
営業マン「このくらい……」
技術女「出来ますよ」
営業マン「出来る!?」
技術女「はい」
営業マン「ありがとう! ありがとう! これでこの話は決まったァ!」
営業マン「小型化できました! これが新しい仕様書です!」
取引先「ほう……」
営業マン「これでぜひ弊社の製品を……」
取引先「いや……実は他社さんは最速で一ヶ月で納入できるといってきたんだ」
営業マン「い、一ヶ月!? たったの!?」
取引先「そうなんだよ。こりゃやっぱり他社さんで決まりかなぁ」
営業マン「お待ち下さい! 絶対に納期を縮めてみせます!」
技術女「なんでしょう」
営業マン「もっと早く納入できないかって注文があって……」
技術女「どのくらいですか?」
営業マン「ライバル社は一ヶ月でいけるらしい……。だから、それよりも短く」
技術女「出来ますよ」
営業マン「マジで!?」
営業マン「君の技術力、決して無駄にはしない! 次こそ決めてみせる!」
取引先「うむ、よくやってくれた」
取引先「……といいたいところなんだが」
営業マン「え、まだなにか?」
取引先「他社さんはそちらの製品の5倍の性能を出せるといってるんだよ」
営業マン「5倍……!?」
取引先「やはり、性能が高いに越したことはないのでねえ」
営業マン「むむむ……」
営業マン「だったら10倍だァーッ!!!」
営業マン「はい……」
営業マン「ライバルのことを考えると6倍でもいいんだけど、ついでかいこといっちゃって……」
営業マン「いくらなんでもこれは無茶振りかなぁと……思うんですけど……」
技術女「出来ますよ」
営業マン「出来ちゃうの!?」
技術女「はい」
営業マン「よし……もはや勝利は目前だ!」
取引先「ホント!?」
営業マン「はい、もちろん口先だけじゃありませんよ。新しい仕様書です」
取引先「す、すごい……」
取引先「私の要望をことごとく叶えてくれるとは、君のところの技術部は実に優秀なようだ」
営業マン「いやぁ~」
取引先「ところで」
営業マン「?」
取引先「ここまで来たら、いっそどこまで出来るのか興味がないかね?」
営業マン「……ある」
取引先「だよね!?」
取引先「私にもぜひ、その技術者を紹介してくれたまえ!」
営業マン「いいですよ!」
取引先「この製品がどこまでいけるのか試してみたい!」
営業マン「やりましょう!」
取引先「どうぞよろしく」
技術女「はじめまして」
取引先「ところで……今回の製品、昭和なレトロな雰囲気にすることは可能かね?」
営業マン(プッ、どんな注文だよ。そんなの出来るわけ……)
技術女「出来ますよ」
二人「出来るの!?」
技術女「はい」
営業マン「じゃあ次は俺から」
技術女「どうぞ」
営業マン「この製品に音楽を奏でさすことは可能? 流行りの音楽とかを最高音質で……」
取引先(おいおい、ふざけすぎだろう。専門外だろうし、絶対怒られる……)
技術女「出来ますよ」
二人「出来ちゃうの!?」
技術女「はい」
営業マン「え~、マジっすか~?」ゴニョゴニョ…
技術女「……」
取引先「以前、性能を10倍にしてもらったと思うんだが……」
取引先「性能をさらに100倍にしてもらえないかね?」
営業マン(つまり最初の1000倍ってことじゃないか。絶対不可能――)
技術女「出来ますよ」
取引先「なにいいいいいいい!?」
営業マン「技術革新ってレベルじゃねーぞ!」
営業マン「今、AIが流行ってるだろう? AIを搭載して勝手に最適な仕事を……」
技術女「出来ますよ」
営業マン「あっさりと!」
取引先「だったら人を乗せて空を飛ぶようにできる?」
取引先「いや空どころか、いっそ深海や宇宙にも行けるように!」
技術女「出来ますよ」
取引先「バカな……」
技術女「出来ますよ」
技術女「出来ますよ」
…………
……
取引先「ど、どうしよう!? なんだか怖くなってきたよ!」
取引先「口だけじゃなく、ちゃんと具体的な仕様やプランを出してくるし!」
営業マン「私もです……。完全にここだけ25世紀ぐらいになってますよ」
取引先「もし、“核ミサイルを搭載してくれ”っていったらどうなるかな?」
営業マン「“出来ますよ”って返される未来しか見えません」
取引先「もし“宇宙を滅ぼせるようにして”なんていったら……」
営業マン「それでもきっと……」
営業マン「なんでしょう?」
取引先「やはり高望みはよくないね! 過ぎた欲望は身を滅ぼす! 普通が一番!」
営業マン「おっしゃる通りですね!」
取引先「というわけで……君のところの製品、一番最初の仕様に戻してくれるかな?」
取引先「値段とかサイズも全部!」
営業マン「かしこまりましたァ!」
技術女「なんでしょう?」
営業マン「大変申し訳ないのですが……大変申し上げにくいのですが……」
技術女「はい」
営業マン「私たちは悪ノリをしすぎていました!」
営業マン「今までいった希望は全部無しにして、一番最初の仕様に戻して頂けないでしょうかぁ!」
技術女「……」
営業マン(お、怒られる……! いや殴られたって文句はいえない……!)
技術女「出来ますよ」
営業マン「ありがとうございまぁす!」
営業マン「いえ、私の力ではありませんよ。技術部の協力があったからこそです」
営業マン(これにて一件落着、といいたいところだが……)
営業マン(あの技術の人には迷惑かけまくっちゃったからな……)
営業マン(菓子折りでも持って、詫びを入れにいくか……)
技術女「ご用件は?」
営業マン「先日はご迷惑をおかけしました。おかげさまで契約を取れました」
技術女「よかったですね」
営業マン「お詫びの印として、これ菓子折りです。最高級のカステラ……」
技術女「これはどうも」ムシャムシャ
営業マン(食うの早っ!)
技術女「別に気にしてませんので」
営業マン「……」
営業マン「で、これだけで済ますのもなんなんで……よかったら今晩お食事でも……」
営業マン「ご一緒……出来ないかなー、なーんて」ハハ…
技術女「出来ますよ」
営業マン「聞いてみるもんだ!」
技術女「ここのお店、美味しいですね。特にケーキが」
営業マン「営業という仕事柄、色んな情報を集めてますから」
営業マン「と、ところで……」ゴクッ
技術女「なんでしょう?」
営業マン「あそこにホテルがあるでしょう?」
営業マン「これから二人で……あそこでご一緒……出来ませんか?」
技術女「出来ますよ」
営業マン「あんた最高だ!」
営業マン「ハァ、ハァ、ハァ……も、もう……ダメ……」
技術女「あら、もう出来ないんですか」
営業マン(夜の技術も一流だった……!)
― 完 ―
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コメント一覧 (28)
-
- 2019年09月29日 09:38
- 出来ますよ(危険日)
-
- 2019年09月29日 09:46
- オチが弱い
-
- 2019年09月29日 09:53
- 戻すことはできません、パンドラの箱はもう開けられてしまったのです
-
- 2019年09月29日 10:29
- オチがおもんない
-
- 2019年09月29日 10:30
- 値段とか納期は生産管理に相談する内容じゃねぇかな・・・
-
- 2019年09月29日 17:55
- >>6
そこはできませんっていうから直接技術に聞きに行くんだよ
-
- 2019年09月29日 10:42
- オチ……
-
- 2019年09月29日 12:28
- そこまで引っ張るんだったらもう少しマシなオチをつけてください
出来ないんですか?
-
- 2019年09月29日 17:55
- >>8
出来ませんよ
-
- 2019年09月29日 12:35
- 出来る範囲で、構わないから
-
- 2019年09月29日 13:13
- ザ・無能営業
-
- 2019年09月29日 14:14
- カステラでオチをうまく付けれないかな
-
- 2019年09月29日 15:10
- 一週間位前に上がってた会社が現場に無茶な仕事と短納期押し付けるSSの派生かと思ったら、全然違ってて安心したわ
-
- 2019年09月29日 18:46
- やはり最後は「出来っちゃった」だろう
-
- 2019年09月29日 18:54
- 下ネタ落ちじゃなければ大いに評価した
-
- 2019年09月29日 18:56
- クソみたいな下ネタでした。
これで落ちたと思ってるなら大したもんだ(笑)
-
- 2019年09月29日 19:28
- 社畜の愚痴系かと思ったら普通のSSで困惑した。
けどオチが弱い。
-
- 2019年09月29日 20:06
- 先方の言われるがまま社内に迷惑かけるだけなら小学院生でもできるよね
-
- 2019年09月29日 20:07
- まだ冒頭しか読んでないけどたまにある会社が社員に無茶振りしまくるノンフィクション系かと思ったら全然違った
-
- 2019年09月29日 20:29
- 他部署に話通す時は職制通してやれ
帰れ馬鹿
-
- 2019年09月30日 08:14
- 気持ち悪い
無根拠無意味な超有能女キャラ
安易極まりない下ネタオチ
才能ないから二度と書くな
-
- 2019年09月30日 08:22
- これは僕の望んだ話じゃない
-
- 2019年09月30日 08:27
- オチが良かったら質のいい星新一ssになってたのに惜しい
-
- 2019年09月30日 18:33
- 子どもはできないんですか?
できますよ
だと思ったのに
-
- 2019年09月30日 21:50
- 営業「子供つくれますか」
女「作れますよ」
-
- 2019年10月16日 23:53
- なんかキレてる奴いて草
ガ、イジかな
-
- 2019年10月18日 05:11
- 営業マン「あっやばい、中に出しちゃった…」
技術女「出来ますよ」
君の仕事は、人類滅亡だよ?