ドラえもん「ダンガンロンパ?」【前半】

1:ドクターKの人 ◆takaJZRsBc 2018/01/07(日) 22:24:05.92 ID:mdQ6AggF0


★エピローグ以外全て書き溜め済み。エタはなし。
★ダンガンロンパ及びスーパーダンガンロンパ2のネタバレあり。
★オリジナルの道具がたくさん出てきます。


  ― プロローグ ―


のび太「うわーん! ドラえも~ん! またスネ夫にバカにされたよ~!」

ドラえもん「今度はなんだい?」ハァ

のび太「17才以上じゃなきゃ買えない大人の人気ゲームをお兄さんからもらったんだって!
     それで、みんなには貸してくれるけどぼくだけ貸してくれないっていうんだ!」

ドラえもん「理由は?」

のび太「推理モノだからどうせバカなぼくにはクリアできるわけないって!
     それに過激な内容だからおこさまにはシゲキが強すぎるってバカにするんだ!」

ドラえもん「過激って……一体どんな内容なの?」

のび太「【ダンガンロンパ】っていうタイトルで、とじこめられた高校生たちが
     仲間同士でコロシアイをするっていうストーリーなんだ」

ドラえもん「やめときなさい、そんなゲーム」


のび太の保護者的存在であるドラえもんは当然すぎる反応を返す。


のび太「ドラえもんまでぼくをバカにするぅ~!」

ドラえもん「違う違う。ダンガンロンパでしょ? ぼくも知ってるよ。
       未来でもいまだに根強い人気があるゲームだからね」

のび太「どんなゲームなの?」

ドラえもん「詳しくは知らないけど残酷な表現があるって聞いたよ。のび太くんは楽しめないと思うな」



2: ◆takaJZRsBc 2018/01/07(日) 22:25:53.89 ID:mdQ6AggF0


のび太「でも、くやしいんだ! ぼくだけ仲間はずれなんて!」

ドラえもん「確か、何年か前にアニメをやっていなかったっけ。そんなに気になるなら
       まずはアニメを見てみたらどう? それで平気だったら貸してもらおうよ」

のび太「うん、そうする」


その日、ドラえもんとのび太の二人はダンガンロンパのDVDを借りて見ることにした。


のび太「楽しみだね!」

ドラえもん「パッケージを見る限り面白そうだけど、のび太くんは大丈夫かなぁ。
       人がたくさん死ぬけど本当に平気?」

のび太「正直ちょっとこわいけど、みんなをみかえしてやるんだ!」


二話視聴終了。


のび太「うわーん! 舞園さんが死んじゃったー!」


三話視聴終了。


のび太「うわーん! 江ノ島さんも死んじゃったー! オシオキこわいよー!」


四話視聴終了。


のび太「うわーん! 不二咲さんまで死んじゃったー!」


……色々あって最終話視聴終了後。




4: ◆takaJZRsBc 2018/01/07(日) 22:26:53.58 ID:mdQ6AggF0



のび太「とうとう、とうとう終わっちゃったよ……ド~ラ~え~も~~~ん!!」



http://www.youtube.com/watch?v=vh3ZFtVqzac




チャララララララララ タラララララ タラララ ♪

チャララララララララ タラララララ タラララ ♪

チャララララララララン ダンッ ダンッ ♪


こんなこといいな できたらいいな

あんなゆめ こんなゆめ いっぱいあるけど

みんなみんなみんな かなえてくれる

ふしぎなポッケで かなえてくれる

そらをじゆうに とびたいな

「ハイ! タケコプター」

アンアンアン とってもだいすき ドラえもん ♪





6: ◆takaJZRsBc 2018/01/07(日) 22:28:38.28 ID:mdQ6AggF0






          ドラえもん のび太の希望の学園



          ~   開    幕   ~







7: ◆takaJZRsBc 2018/01/07(日) 22:30:02.64 ID:mdQ6AggF0


ドラえもん「なんだよ、もう。どうかしたの?」

のび太「うわーん! 結局六人しか生き残れなかった……こんなことなら見なきゃ良かった……」

ドラえもん「ほら、言わんこっちゃない」

のび太「だって! せいぜい四人くらいで終わると思ったんだもん。オシオキはえぐいし、
     まさかこんなに死んじゃうなんて……。しかもうさんくさいウニ頭や性格の悪い
     メガネが生き残って他の子は死んじゃうんだよ? こんなのりふじんだ!」

ドラえもん「しょうがないよ。そういうアニメなんだから」

のび太「しかも、みんな元は仲が良いクラスメートだったんでしょ?! それが記憶を
     消されてコロシアイをさせられるなんてかわいそうだよ。助けにいこう!」

ドラえもん「のび太くん、きみのそういう優しいところは素晴らしいけどね…
       これはアニメなんだ。作り話なんだよ? 一体どこに助けに行くつもりなの?」

のび太「なに言ってるんだい、ドラえもん? 世界はとても広いんだよ。つまりぼくたちが
     知らない世界でいまもこの話と同じことが起こっているかもしれないじゃないか!
     そしてぼくたちはそこへ行くための道具を持ってるじゃない!」

ドラえもん「なるほど。もしもボックスか。今日のきみはめずらしく冴えてるなぁ」

のび太「よし、いこう! さあ、いこう! 今すぐいこう!!」

ドラえもん「ちょ、ちょっと待ってよ! 念のために聞くけど、のび太くんは
       希望ヶ峰学園に行ってどうするつもりなの?」

のび太「そりゃもちろん……」ホワンホワンホワーン




8: ◆takaJZRsBc 2018/01/07(日) 22:36:54.10 ID:mdQ6AggF0


  ~ 想像中 ~


モノクマ「オマエラにコロシアイをしてもらいます!」

苗木「そんなの嫌だ!」

舞園「いやー! 誰か助けてー!」

のび太「ちょっと待った!」

モノクマ「んー? 誰だオマエ?」

のび太「正義のヒーロー、野比のび太だ。モノクマ! ううん、江ノ島盾子!
     ぼくがやっつけてみんなを助けてやる!」


色々ひみつ道具でボッコボコ


江ノ島・戦刃「参りました」

のび太「もう悪いことしちゃダメだよ」

苗木「助かったよ、のび太くん」

石丸「君は僕らの救世主だ!」

霧切「流石のび太くんだわ」

舞園「ありがとう、のび太くん!」




10: ◆takaJZRsBc 2018/01/07(日) 22:39:49.65 ID:mdQ6AggF0


不二咲「のび太君って男らしいね!」

朝日奈「サンキューのび太!」

セレス「素敵ですわ、のび太くん」

大神「見事だ、のび太」

みんな「ありがとう! ありがとう!」


ちーやほーや


のび太「いやぁ、ぼくは当然のことをしたまでだよぉ。エヘッエヘッエヘッ」


  ~ 想像終了 ~


のび太「こんな感じになって~。エヘへヘヘッ」

ドラえもん「きみねぇ。確かにいったんはそうなると思うよ。でも、そのあとのこと考えた?」

のび太「あとってなにさ」

ドラえもん「わすれたのかい? 最終話で江ノ島が言ってたじゃないか。
       せっかく外に出れたって、外の世界は荒れ果てているんだよ?」

ドラえもん「自分の身にあてはめて考えてごらんよ。変な所に閉じ込められて、やっと脱出して
       帰ってきたのに家も町もめちゃめちゃ。家族や友達だって死んでいるかもしれない……」

のび太「そ、そんなのヤダ! ……そうだ。タイムマシンで過去に行って江ノ島さんが
     わるいことをする前にとめればいいんだ。えっと、じんるいしじょう……なんだっけ?」

ドラえもん「人類史上最大最悪の絶望的事件。……ところがねぇ、そうもいかないんだよ」

のび太「なんで?」




11: ◆takaJZRsBc 2018/01/07(日) 22:43:11.79 ID:mdQ6AggF0


ドラえもん「それがあの世界の正しい歴史だからだよ。覚えてるかい? 昔ぼくたちは島を作って
       絶滅動物達を助けたことがあるよね? あれが許されたのは規模が小さかったからだよ」

ドラえもん「例えば、もしぼくたちが恐竜が絶滅するのはかわいそうと言って、それをとめようとすれば
       ぼくたちはタイムパトロールに逮捕されるだろうね。小さな改変は歴史の誤差として
       見逃してもらえるけど、歴史に影響を及ぼすレベルの改変は許されないんだよ」

のび太「そんなぁ、じゃあどうすればいいのさ!」

ドラえもん「ちょっとは自分で考えなよ! まったく、結局ぼくに頼るんだから」

ドラえもん「……そうだねぇ。最終話でみんな絶望しかけたけど苗木くんの言葉によって立ち直った。
       でもあれはみんなで一緒に苦難を乗り越えたからこそだと思うんだ」

のび太「ふんふん、それで?」

ドラえもん「あの世界の正しい歴史は、事件は起こるけど苗木くん達によって江ノ島さんが
       倒されることだから、そのお手伝いをするくらいなら問題ないかな」

ドラえもん「具体的には、ぼくたちが希望ヶ峰学園に一緒に入って事件が起きないようにしたり、
       生徒達が真実を知っても結束して乗り越えられるように陰から手助けしたりとか、
       そのくらいなら許されると思うよ」

のび太「ようはぼくたちもみんなと一緒に生活して事件をくいとめればいいんだね!
     よし、わかった。じゃあ行こう」

ドラえもん「気が早いよ。向こうは危険なんだよ? ちゃんと準備していかないと」


パパパパッパパー!


ドラえもん「透明マントと空気ピストル~。いざという時逃げられるようにこの二つを渡しておくよ」

ドラえもん「それに、いきなり乱入したらみんなに怪しまれるから肩書きとか
       言い訳を事前にいろいろ考えておかないと……」

のび太「むずかしいのはぜんぶドラえもんにまかせるよ。ぼくは昼寝してるから。……ぐぅ」

ドラえもん「もう! きみが言い出しっぺなのにしかたないんだから!」




14: ◆takaJZRsBc 2018/01/07(日) 23:05:05.15 ID:mdQ6AggF0



  第一話 ダンガンロンパのせかいへ


僕の名前は苗木誠。
どこからどう見ても平凡なただの高校生だ。

それが何を間違ったか、あの才能ある優秀な生徒しか入れない希望ヶ峰学園に
入れることになった。理由は単に抽選で選ばれたからだけど……

まあでも、卒業すれば成功を約束されるという学校に行かない手はないよね!
そして僕は希望ヶ峰学園への第一歩を踏み出したのだ。超高校級の幸運として。


でも僕は知ることになる。

僕の本当の肩書きは、超高校級の幸運ではなく超高校級の不運だったということを――


グニャリ――


苗木「う……ここは……」

「お兄さん、だいじょうぶ?」

苗木「君は……」

苗木(僕が目を覚ましたのは教室のような所だった。目の前には小学生くらいの
    男の子と、あと何だろう? 変な生き物がいる)

のび太「こんにちは! ぼく野比のび太って言います。よろしくね!」

ドラえもん「ぼくはドラえもんです!」

苗木「僕は苗木誠って言うんだ。よろしく。えっと、ドラえもんは……」

ドラえもん「ぼくはネコ型ロボットです。のび太くんの保護者だよ」

苗木「ロボット?! ネコ、型……? そうなんだ……」


どこが猫なのか全くわからなかったが、コミュニュケーション能力の高い苗木は黙っていた。




15: ◆takaJZRsBc 2018/01/07(日) 23:07:13.50 ID:mdQ6AggF0


苗木(僕の知らない所で科学はだいぶ進歩していたようだ。それにしてもここはどこだろう?)

苗木「ここ、どこか知ってる? 何で窓に鉄板が……それにあれは、監視カメラ?」

のび太「ここは希望ヶ峰学園の中だよ」

苗木「そうなの?」

ドラえもん「そんなことより苗木くん、これを読んで。もうすぐ入学式があるみたいだ」つ【入学あんない】


入学あんない『あたらしいがっきがはじまりました。しんきいってんこの学えんがオマエラの
        あたらしいせかいとなります。入学しきは8じから。たいいくかんしゅうごう』


苗木「え? ……本当だ(オマエラ? きったない字。何か怪しいな……本当に普通の入学式なのか?)」

苗木「……って、うわ! あと五分しかない!」

のび太「お兄さん、ほかの人たちがまってるかも。早く行こうよ!」

苗木「う、うん」


  ― 体育館 ―


朝日奈「あ、新しい人が来たよ」

山田「これで15……いや、17ですか? と言いますか……」

桑田「おい、なんだありゃ?!」

大神「なんと面妖な……」

江ノ島(なにあの子達……どこから入ってきたの?!)




16: ◆takaJZRsBc 2018/01/07(日) 23:14:10.75 ID:mdQ6AggF0


石丸「みんな、こんな時こそ静粛に! 初めまして、僕の名前は石丸清多夏。君達の名前は?」

苗木「僕は苗木誠と言います」

ドラえもん「こんにちは! ぼくドラえもんです」

のび太「野比のび太です。よろしくお願いしまーす!」

石丸「うむ、元気でよろしい! ……ところでドラえもん君、君は一体何者かね?」

ドラえもん「ぼくはネコ型ロボットです。のび太くんの保護者としてこの学校に来ました」

腐川「……ネ、ネコ型じゃなくてたぬきかダルマの間違いじゃないの?」

ドラえもん「ぼくはたぬきでもダルマでもない! ネコ型ロボット!!」

桑田「ずいぶんブーデーなネコがいたもんだな」

山田「猫耳もしっぽもないネコ型なんて認められないですぞ!」

葉隠「つかなんで高校に小学生がいるんだべ? 三ダブの俺の反対で飛び級か何かか?」

のび太「ふふん、ぼくは超高校級の小学生だからね!」

大和田「いや、意味わかんねえよ。小学生で超高校級とか」

のび太「うわ、このお兄さんすっごく恐い……やっぱりアニメよりずっと迫力あるなぁ」

山田「(ピキーン)アニメとな?」

ドラえもん「のび太くん!」

のび太「はっ、ううん。なんでもない。こっちの話。えっとぼくたちは……なんだっけ?」


そこでドラえもんは事前に考えておいた設定を話し始める。




18: ◆takaJZRsBc 2018/01/07(日) 23:19:59.68 ID:mdQ6AggF0


ドラえもん「実は希望ヶ峰学園は宣伝のために今年から小学生を体験入学させることにしたんだ!
       のび太くんはその抽選に選ばれて、ぼくはお付き。ぼくは子守ロボットだからね」

江ノ島「えっ」

江ノ島(ちょっと盾子ちゃん! 私そんな話聞いてないよ!)

霧切「…………」

不二咲「そうなんだぁ。凄いね!」

石丸「成程、未来ある子供達に我々が学業に励む姿を見せようと言う訳だ。
    粋な図らいではないか。ならば一層気を引き締めねばな! ハッハッハッ」

苗木「じゃあ、僕の超高校級の幸運に対してのび太くんは超小学生級の幸運てことだね」

のび太「うん、まあそんな感じ(本当は超高校級が良かったんだけどなぁ)」

朝日奈「じゃあ苗木達三人のために、もう一回自己紹介しよ!」


次々と個性的な挨拶をしてくる超高校級の生徒達。


のび太(わあー、アニメより全然キャラ濃いよこの人たち!
     この人たちと生活するんだぁ。楽しみだなぁ。うふふ!)

十神「おい、何をジロジロ見ている」ギロ

のび太(でもこの人はきらい)




19: ◆takaJZRsBc 2018/01/07(日) 23:25:43.60 ID:mdQ6AggF0


不二咲「ところで、三人も教室で目を覚ましたの?」

苗木「うん、校舎に入った所までは覚えてるんだけど気が付いたら教室で……」

のび太「ぼくたちもそうだよ」

不二咲「そうなんだ。やっぱり……全員がそうなんだね」

セレス「全員が揃って気を失い教室で目を覚ましてここへ来た。妙な話ですわね」

桑田「まさか誘拐……とか? 俺達全員連れ去られた、なんて……」

葉隠「学校の用意したオリエンテーションか何かじゃねえのか?」


ガヤガヤザワザワ


舞園「あの、苗木君ですよね? 同じ中学だった」

苗木「え、舞園さん。僕のこと覚えててくれたの?」

舞園「当たり前じゃないですか。だって三年間も同じ学校だったんですよ」

のび太「知りあい?」

苗木「い、いや! 知り合いって言っても単なる顔見知りというか、中学が
    同じだっただけで僕みたいな地味な奴が舞園さんと知り合いだなんてそんな……」

舞園「そんな風に言われるとショックです……」

苗木「あ、ごめんなさい! 別にそんな意味で言った訳じゃ……」

舞園「ふふっ、アイドルだからって遠慮なんてしなくてもいいですよ。
    こんな所で知ってる人に出会えて少し安心しました」




20: ◆takaJZRsBc 2018/01/07(日) 23:32:20.15 ID:mdQ6AggF0



キィィィィン!


苗木「うわ、なんだ?!」

「あーマイクテスッ、マイクテストッ。大丈夫? 聞こえてるよね?」

「どうやらみんな揃ったみたいだね。えー、新入生のみなさん!
 今から入学式を執り行いたいと思います」


ピョーン!


モノクマ「ジャジャーン!」

葉隠「お? また新しいロボットが出てきたべ」

セレス「今度はクマ型のようですわね」

朝日奈「わかりやすくて良かった良かった」

モノクマ「え? なに、やけにみんな冷静なんだけど……まあいいか」

モノクマ「僕はモノクマ! オマエラのこの学園の学園長なのだ! よろしくね!」

苗木「学園長?」

のび太「アニメみてた時もおもったけど、あいつドラえもんと声が似てるね」ボソボソ

ドラえもん「やめてよ。ゾッとする」ボソボソ

モノクマ「じゃあ進行も押してるのでさっさと始めちゃいましょう。
      ……起立、礼! オマエラ、おはようございます!」

石丸「おはようございます!」

のび太・ドラえもん「おはようございまーす」




21: ◆takaJZRsBc 2018/01/07(日) 23:34:22.68 ID:mdQ6AggF0


腐川「なに普通に挨拶してんのよ……!」

モノクマ「えー、オマエラのような才能溢れる高校生は世界の希望に他なりません……って、アレ?」

モノクマ「…………」

全員「…………」

モノクマ「高校生じゃないヤツいるじゃん! てか、オマエラ誰だよっ?!」ガビーン!

のび太「あれー、学園長なのに知らないの?」

ドラえもん「ぼくたちは希望ヶ峰学園の体験入学生とその保護者だよ」

モノクマ「ハアアアアッ?!!」

江ノ島(ちょっと、盾子ちゃんどういうこと?!)

モノクマ(バカ、交互にこっち見んな。怪しまれるだろ! こっちが聞きたいよ!)

ドラえもん「その証拠にほら、ぼくたちは希望ヶ峰学園の電子生徒手帳を持ってる」スッ

ドラえもん(ほんとはとりよせバッグで事前に苗木くんの電子生徒手帳を借りて、
       フエルミラーで増やしたのをぼくが改造したんだけどね)

モノクマ「……!!」


― モニタールーム ―


真・江ノ島(……なになに、どういうこと?! 意味わかんない。でも超面白いじゃん!
       こんな予測不可能な事態が起こるなんて絶望的ィィィ!!)

真・江ノ島「いいよ。認めてやんよ、オマエラの入学。せいぜい絶望してよね!」




23: ◆takaJZRsBc 2018/01/07(日) 23:39:21.90 ID:mdQ6AggF0



場面は再び体育館に戻る。


モノクマ「あ、あー。失礼。忘れてました。ボクってばオッチョコチョイ。えーっと名前なんだっけ?」

のび太「野比のび太と」

ドラえもん「ドラえもんです!」

モノクマ「そういう訳だから。まあ、オマエラ仲良くしてやってよ。……で、話を戻すけど
      オマエラにはこの学園だけで共同生活を送ってもらいます。期限はありません!」

一同「ハア?!」

モノクマ「オマエラは一生この学園で生活するんです。まあ予算は豊富だから不自由はさせないよ」

大神「成程。窓に貼られた鉄板は我らを逃さぬためか……」

大和田「冗談じゃねえ! さっさとここから出せや!」

モノクマ「はいはい。そんなオマエラのためにあるルールを設けました。誰かを殺した生徒だけが
      ここから卒業……つまり出ることが出来るというそれだけの簡単なルールです」

モノクマ「殺し方は問いません。希望同士が殺し合うなんて
      絶望的なシチュエーション……ハア、ドキドキする」

山田「な、何と?!」

舞園「そんな……どうして私達が殺しあわなきゃいけないんですか?!」

のび太「そうだ! ぼくたちがいる以上絶対にコロシアイなんてさせないぞ!!」

ドラえもん「お前の望みどおりになんてさせない!」

モノクマ「フゥ、いつまで強がりを言っていられるかな?」

大和田「殺し合いだぁ? テメーの悪ふざけはドがすぎんぞ!!」

モノクマ「悪ふざけ? それって君の髪型のこと?」

大和田「んだとクソがっ!」




24: ◆takaJZRsBc 2018/01/07(日) 23:45:59.60 ID:mdQ6AggF0


モノクマの挑発に乗った大和田がモノクマの体を掴んで持ち上げた。


のび太「あ、お兄さん危ない!!」

大和田「ラジコンだかぬいぐるみだか知らねえがバッキバキにしてやんよ!」

モノクマ「ぎゃああ、学園長への暴力は校則違反だよー!」


ウィンウィンウィンウィン……


のび太「危ないよ! 早く投げて!!」

ドラえもん「遠くへ投げるんだ!」

大和田「ああ?」

霧切「その子たちの言う通りにして! 早くっ!」

大和田「チッ、うおらぁっ」


ブンッ

ドカアアアアアアアアアン!


「うわああああああああああああああ」


大和田「爆発しやがった……」

不二咲「あのロボット、死んだのかな……?」

モノクマ「ロボットって言わないでよ。モノクマ!」ピョーイ

「きゃああっ!」




25: ◆takaJZRsBc 2018/01/07(日) 23:50:01.74 ID:mdQ6AggF0


どこからともなく新たなモノクマが生徒達の前に現れる。


モノクマ「今回は初めてだから警告だけで許すけど、校則違反者を発見した場合は
      今みたいなグレートな体罰を発動しちゃうからねっ!」爪ジャキーン!

モノクマ「ではでは、入学式は以上でおしまいとなります。
      豊かで陰惨な学園生活をどうぞ楽しんでくださいねー」


そう言ってモノクマはどこかへ消えてしまった。


「…………」

のび太「やっと終わった。とんでもないヤツだ!」

ドラえもん「まったくだね!」

石丸「こんな馬鹿げた話が……」

不二咲「こ、殺し合いだなんて嘘だよね……」

十神「嘘か本当かが問題なのではない。俺達の中にこの話を本気にする奴がいるかどうかだ」

「…………」


気まずい空気の中、生徒達は手始めに体育館の中を探索する。


大神「……ムウ、我の力でもこの鉄板を破壊するのは無理だ」

桑田「こっから出てきたはずなんだよなぁ、さっきのロボット」ゴソゴソ

ドラえもん「見てごらん。ここだけ四角くなってる。恐らくここが開閉するんだ」




26: ◆takaJZRsBc 2018/01/07(日) 23:55:45.50 ID:mdQ6AggF0


大和田「じゃあここをぶっ壊せば、さっきのヤツの所に行けるんじゃねえか?」

ドラえもん「……やめておいた方がいいよ。多分頑丈に作られてると思うし、
       向こうは銃とか持ってるかもしれない。行くならそれなりの準備をしないと」

ドラえもん(今はダメだ。万が一通れちゃったら、きっと返り討ちにあって全滅しちゃう)

大和田「チッ」

石丸「諸君! 希望を捨ててはいけない。きっと脱出口があるはずだ。探索に行こう!」

十神「俺は一人で行くぞ。この中に、既に他人を殺そうと目論んでいる奴がいるかもしれんからな」

のび太(もうヤダ、この人……)

ドラえもん(始まったよ……毎回毎回この人が空気を乱すんだよね……)

舞園「そんなこと……」

十神「ないとは言い切れんはずだ」

大和田「待てやゴラァ! んな勝手はゆるさねえぞ!」

十神「どけよ、プランクトン」

大和田「ああん?! 転がされてえみてえだな……!」

苗木「ちょ、ちょっと待って」

のび太「あ!(この展開、覚えてるぞ。この後あのお兄さんはなぐられちゃうんだ!)」

ドラえもん「ま、待って! ケンカは良くないよ」


この後に起こることを知っているドラえもんとのび太は大和田の前に立ちふさがった。




27: ◆takaJZRsBc 2018/01/08(月) 00:02:57.52 ID:MlSOb+8k0


大和田「どけ、お前ら! 離れねえと巻き添えくらうぞ!」

のび太「どうしよう……ジャイアンよりもずっとこわい……う、うわーん! ケンカなんてやめてよー!」

ドラえもん「そうだよ! ケンカなんてダメだ!」


うわーんうわーん!


朝日奈「ちょっと、大和田! 子供が怖がってんじゃないの!!」

石丸「いくら十神君の態度に問題があるとはいえ、暴力で解決するのは反対だッ!」

江ノ島「そうよ! 子供の前なんだし、ちょっとは考えなさいよ!」

大和田「う、ぐっ……しょうがねえな」

十神「フンッ」


スタスタスタ……


大和田(あの野郎、覚えてろよ……!)

のび太「ふー、ケンカにならなくて良かったー」

舞園「まだ子供なのに真っ先に飛び出すなんて、のび太君とドラえもんさんは勇気があるんですね!」

のび太「え? そ、そんなことないよ。あのままだと苗木お兄さんまで
     なぐられちゃうから、ムガムチューで……」

苗木「え、僕のために止めてくれたの? 二人共ありがとう!」




28: ◆takaJZRsBc 2018/01/08(月) 00:10:21.93 ID:MlSOb+8k0


のび太「いや、その……えへへっ」

ドラえもん「どういたしまして!」

石丸「実に素晴らしい! 良い物を見させてもらった。この調子で協力していこうではないか!」

大和田「……チビすけのくせになかなか見どころあるじゃねえか」

朝日奈「よーし、それじゃあ探索にしゅぱーつ!」

霧切「…………」


― 寄宿舎 ―


ドラえもん「で、どうするの? ぼくたちの部屋ないんだけど」

苗木「僕らの部屋はあるけどのび太君達の部屋がないね。正規の学生じゃないからかな」

桑田「でもよ、校則によると個室以外で寝るのは校則違反なんだろ? ヤバくね?」

不二咲「誰かの部屋に泊めてあげるしかないね」

ドラえもん(あーあ、やっぱりこうなった。だから僕は事前に部屋も用意しておこうって言ったのに……)


ため息をつくドラえもんとは反対にのび太は怪しい笑みを浮かべている。


のび太(これでいいんだよ! きっとかわいそうに思ったお姉さんの誰かが部屋にとめてくれるはず。
     本当は男だけど優しくてかわいい不二咲さんでもいいなぁ。グヘヘヘ)

江ノ島「で、どーすんの?」

石丸「困っている子供を放っておく訳にはいかない! ここは風紀委員たる僕の部屋に泊めてあげよう!」

のび太「……え?」




29: ◆takaJZRsBc 2018/01/08(月) 00:17:27.65 ID:MlSOb+8k0


大神「うむ、石丸なら安心であろうな」

セレス「適任だと思いますわ」

朝日奈「良かったじゃん、のび太。これで大丈夫だね!」

のび太(え、えええええ?! 冗談じゃないよ! よりによって一番うるさそうなお兄さんの部屋なんて!
     このお兄さんなんかニガテなんだよなぁ。出木杉くんをママの性格にしたみたいだし)


だが予想外の出来事はこれで終わらなかった。


大和田「……おい。二人もいたら大変だろ。一人は俺の部屋に泊めてやるよ」

ドラえもん・のび太「ええええええええええ?!!」

のび太(ちょっと、やめてよ! なんでとつぜんそんなこと言い出すのこの人?!)

ドラえもん(いやぁ、たまげたなぁ。大和田くんは本当は面倒見が良くて優しい子なんだね)

セレス「あら、乱暴そうな大和田君に子供の面倒なんて見れますの?」

桑田「え、なに? 見た目は怖いけど実は子供好きとかそーゆーキャラなワケ?! 似合わねー」

山田「さては不良が野良猫に優しくする現象で好感度稼ぎをするつもりですか!」

葉隠「ハッハー、大和田っちはあざといんだな!」

大和田「バカ言ってんじゃねえ! 俺はな、さっきのこいつらの男気に感心したんだ。それに考えてみろ。
     もしこんなかに仲間を殺そうなんて不届き者がいた場合、真っ先に狙われるのはガキどもだろ」

大和田「俺だったら大神以外の誰が襲ってきても守ってやれるじゃねえか」

石丸「フム、一理ある。……が、僕はあえて反対するぞ! 先程の件を見ても、どうやら君は見た目通り
    非常に短気で乱暴なようだ。また子供の前で怒鳴って怖がらせたりするのではないかね?」




30: ◆takaJZRsBc 2018/01/08(月) 00:23:16.03 ID:MlSOb+8k0


のび太(そ、そうだそうだ。がんばってお兄さん! ほんとにじょうだんじゃないよ!)

大和田「もうガキの前で怒鳴ったり乱暴したりしねえよ!」

石丸「信用出来ないな」

大和田「……いいぜ。そこまで言うなら男と男の約束だ。もう絶対にガキどもを怖がらせたりしない。
     男の約束は絶対だ! もし破ることがあったら八つ裂きにしてもらってかまわねえ!」

不二咲(男の約束だって! かっこいいなぁ)キラキラキラ

石丸「フム……良かろう。そこまで言うなら君を信じる。ただしもし約束を破ったら僕は容赦しないぞ!」

大和田「よし、決まったな。じゃあ、二人のうちどっちかは俺んとこに来いや」

のび太「え、ええええええっ?!」

のび太(ちょっと、なに言いくるめられちゃってるのお兄さん?! そ、そんな~!)

ドラえもん「えーっと、のび太君が好きな方を選んでいいよ。ぼくは別にどっちでもいいから」

のび太「えぇー……」

石丸「さあ、どちらか好きな方を選びたまえ!」

大和田「どっちがいいんだ?」

のび太(キューキョクのセンタクすぎるよ……どっちもイヤだ! まったく、この二人が
     兄弟になるのはまだ先でしょ! なんでこんなところで足なみそろえちゃうのさぁ!)

のび太「ええっと、じゃあ……こっちの、うるさいお兄さんのほうにする……」シブシブ

石丸「う、うるさいぃぃっ?!」ガビーン!


思わず本音が出たのび太の言葉に石丸はショックを受ける。




31: ◆takaJZRsBc 2018/01/08(月) 00:33:24.39 ID:MlSOb+8k0


桑田「アッハッハッハッ! 確かにそいつマジでうるせーもんな!」

葉隠「ああ、石丸っちはうるさいべ!」

朝日奈「あんまり子供にうるさくしちゃダメだよ! 手加減してあげないと」

石丸「こ、心得た……」ヒクヒクヒク

大和田「おし、じゃあそっちの丸いのが俺のとこだな。ドラ……なんだっけか?」

ドラえもん「ドラえもんです。よろしくね、大和田くん!」

大和田「おう。よろしくな、ドラ公!」

苗木「予備の布団はあるのかな? おーい、モノクマ!」

モノクマ「はいはい。のび太君達の布団とか着替えとかでしょ? ハァ、仕方がないなぁ。
      本当はまだ開けないつもりだったけど、倉庫を開放しといてあげるから
      あとは全部自分達で勝手に調達してよ。じゃーねー」


― 男子トイレ ―


ドラえもん「よかった。上手くもぐりこめたねぇ」

のび太「これからのことをかんがえたらユーウツだけどね……」

ドラえもん「自業自得だろう! だから部屋を事前に用意しようってぼくは言ったのに」

のび太「返すことばもありません。トホホ」

ドラえもん「……ハァ。とにかく、最初の事件は動機が配られるまでは起こらないはず。
       そして、DVDは僕らが先に処分しちゃえばいいから今回は簡単だよ」




32: ◆takaJZRsBc 2018/01/08(月) 00:36:48.81 ID:MlSOb+8k0


のび太「じゃあ、それまではてきとうに遊んでいてもいいかな?」

ドラえもん「うーん。でもあんまり探索をサボると石丸くんが怒るんじゃないかな」

のび太「いいよ! ぼくは部屋に戻っておひるねしーよう」


バタバタ! ガチャ。


石丸「おお、こんな所にいたのか二人共!」

のび太「げっ、お兄さんどうしたの?」

石丸「仲間を疑うような真似はしたくないが、いかんせん今日会ったばかりだしな……
    子供達だけで行動するのはまだ危険だ。今日はずっと僕と行動を共にするように!」

のび太「ええー?! かんべんしてよー!!」

ドラえもん「あきらめなよ、のび太くん……」


               ◇     ◇     ◇


のび太「結局あのお兄さんに付き合わされて学校中を行ったり来たりするはめになった……
     どうせ今のだんかいではなにも出てきやしないのに」

ドラえもん「まあまあ。いい運動になったと思えば」

のび太「しかも、このあとはなにも発見がないほうこく会がえんえんとつづくワケでしょ?」




33: ◆takaJZRsBc 2018/01/08(月) 01:08:26.89 ID:oaDVlfIF0


ドラえもん「仕方ないよ。彼らは何も知らずにいきなり監禁されたんだよ?
       きみじゃあるまいし、のんきに昼寝なんてしてられないよ」

のび太「そうだけどさー……はぁ、明日はもう少しらくができるといいけど」


  ― 食堂 ―


石丸「全員揃ったな。それではここに第一回探索報告会の開始を宣言する!」

のび太「ムニャムニャグーグー」

苗木「の、のび太君起きて。寝たら石丸君に怒られちゃうよ!」


しかし疲れきったのび太は机に突っ伏してひたすら寝ていた。


舞園「全然起きませんねぇ」

朝日奈「石丸、あんた何やったの?」

石丸「……いや、僕は何もしていないが。子供達だけでは危ないから一緒に連れて行っただけだ」

不二咲「疲れちゃったんだねぇ」

大神「石丸よ、子供を大人と同じように動かしては駄目ではないか」

江ノ島「マジ無神経じゃね?」

石丸「……す、すまない。次から気をつけよう」

ドラえもん「そんなに気にしなくていいよ。のび太くんは同年代でも特別体力ないから」

石丸「彼には僕から後で説明しておくから、とにかく報告会を始めよう……」




34: ◆takaJZRsBc 2018/01/08(月) 01:20:47.37 ID:oaDVlfIF0


             ・

             ・

             ・


ドラえもん(まあアニメで見たのとほとんど同じだね。二階への階段はあるけどシャッターが
       閉まってて通れない。食料は毎日補給される。出口になりそうな所はない)

ドラえもん(一つだけ違ったのは霧切さんが学園内の見取り図を持ってきたことだね。流石記憶が
       ないとはいえ超高校級の探偵さんだ。……ぼく達の正体がバレないといいけど)

ドラえもん(そして例によって安広……いやセレスさんが、逃げ場がないことをみんなに
       再確認させて怖がらせ、夜時間の行動を禁止するというルールができたんだ)


報告会終了後、のび太をおぶった石丸とドラえもんが廊下を歩いていた。


ドラえもん「ごめんね、石丸くん。居眠りしたのび太くんを運ばせちゃったりして」

石丸「いや、とんでもない! 僕こそ子供相手に無神経だった。明日謝っておかねばな!」

ドラえもん(一見厳しくて口うるさい人だけど、本当はとっても面倒見が良くて優しいんだな。
       だから大和田くんとも仲良くなれたんだろうし。こんな人が殺されてしまうなんて……)

ドラえもん「ぼくがいるかぎり絶対、絶対! コロシアイなんてさせないぞ!!」

石丸「おお! ドラえもん君、その意気だ! 共に頑張ろうではないか。ハッハッハッ!」

ドラえもん「じゃあぼくは大和田くんの部屋に行くね。おやすみなさい、石丸くん」

石丸「グッドナイトだ、ドラえもん君!」




35: ◆takaJZRsBc 2018/01/08(月) 01:26:06.44 ID:oaDVlfIF0


  ― 大和田の部屋 ―


ドラえもん「おじゃましまーす」

大和田「お、来たかドラ公。相棒はどうだった?」

ドラえもん「多分明日の朝まで起きないと思うよ」

大和田「貧弱だな。俺が少し鍛えてやろうか?」

ドラえもん「きっと怒鳴りたくなるからやめといた方がいい。とにかくトロいし
       根性なしだし、もうグズなんてもんじゃないんだから」

大和田「すげえ言われようだな……」

大和田「ああ、そうだった。そんなことより、俺はオメェに聞かなきゃなんねぇことがある」

ドラえもん「聞きたいこと?」ドキリ


何やら大和田は真剣な顔をしている。ドラえもんはつばを飲みこんだ。が……


大和田「オメェ……犬派か? 猫派か? ネコ型ロボットってことはやっぱ猫派なのか」

ドラえもん「そりゃあもちろん猫派に決まってるよ!」

大和田「カーッ! やっぱりか。まあ、猫もかわいいけどよ……俺はやっぱ犬だな!」

ドラえもん「大和田くん、動物が好きなの?」

大和田「おうよ! 昔、犬を飼っててなぁ」




38: ◆takaJZRsBc 2018/01/08(月) 01:35:42.66 ID:oaDVlfIF0


ドラえもん(うーむ、人は見かけによらない。ジャイアンが大きくなったような感じかと
       思ってたけど、すぐカッとなるクセさえなければ普通にいい人だね)

ドラえもん(……まあ、そのカッとなるところが今回致命的なことになったんだけど)

大和田「マルチーズ飼ってたんだ。チャックって言ってなあ、かわいかったぜぇ」

ドラえもん(ちょ、えええ?! マルチーズってあの小さくてかわいいやつだよね? この顔で
       飼ってたの? まさかこの格好で散歩とか?! に、似合わない。ぷぷっ!)

ドラえもん(ああー、ダメだ。こらえなきゃ! 笑ったら絶対怒られる。ブフッ)

ドラえもん「か、かわいさなら近所のみーちゃんだって負けてないよ! ぼくのガールフレンドなんだ!」

大和田「ガ、ガールフレンド……だと?!(まさかロボットに負けるたぁ思わなかったぜ……)」


絶賛告白十連敗中の大和田はロボットにすら彼女がいるという事実に衝撃を受けていた。


大和田「……チッ、言うじゃねえか。じゃあ今日はお互いの好きなもんについて語ろーぜ!」

ドラえもん「負けないよー!」


こうして夜は更けていき、ドラえもんとのび太のダンガンロンパが始まったのだった。




46: ◆takaJZRsBc 2018/01/08(月) 23:24:27.52 ID:2f8MquAs0



  第二話 たのしいがくえんせいかつ (ひ)にちじょうへん


コロシアイ学園生活二日目。朝。


「……たくん……」

のび太「うーん、もうちょっとだけ……」

「……びたくん……のび太君!」

のび太「わっ! お兄さんだれっ?!」

石丸「いくら昨日会ったばかりとは言えもう忘れられているとは……僕はショックだぞ」

のび太「あ……そうか。ぼくはいま希望ヶ峰学園にいるんだった」

石丸「その通り。思い出せたかね? では改めて……グッモーニンだ、のび太君!」

のび太「おはよう、お兄さん」

石丸「ウム、気持ちの良い朝だな!」

のび太「きもちがいいもなにも窓がふさがれてて外が見えないのに……」

石丸「たとえ外が見えなくても、心の天気が快晴ならば気持ちが良いのだ!」

のび太「ああ、うん……て、まだ7時ちょっとじゃない! もう少し寝かせてよ!」

石丸「君は何を言っているのかね? 先程起床を知らせる放送が鳴ったではないか」

のび太「え~、7時に起きるの~?!」

石丸「ちなみに僕は5時には起きて運動していた。その時間に君を起こすのは
    悪いと思ったから、放送が鳴るまで寝かせてあげたのだよ?」

のび太(なんなのこの人。いちおう気はつかってくれてるみたいだけど……)




47: ◆takaJZRsBc 2018/01/08(月) 23:33:04.47 ID:2f8MquAs0


のび太「うーん、ありがとう……なのかな?」

石丸「うむ。それと先程唐突に思いついたのだが、親睦を深めるために毎朝みんなで共に朝食を
    食べるのはどうかと考えたのだ。報告やその日の行動指針を決めたりするためにな」

石丸「………という訳で、だ。さあ、早く起きて支度をするんだ! 急がないと朝食会に間に
    合わなくなってしまうぞ。初日から遅刻なんて……いや、そもそも遅刻自体僕は許せない!!」

のび太(そう言ってお兄さんはとにかくぼくをせかす。これが毎日つづくのか……
     おとなしくドラえもんのいうとおり部屋を用意しておけばよかった。ドラえも~ん!)


  ― 朝食会 ―


石丸「おはよう諸君! よく来てくれた。それでは第一回朝食会を開催しようではないか!」

十神「よく来たも何も、貴様が無理矢理連れてきただけだろうが」

腐川「まったく……朝っぱらからあの熱苦しい顔を見なきゃいけないなんて……これは嫌がらせ?
    そう……そうよ、根暗のあたしに対する新手の嫌がらせなのよ……!」

葉隠「ま、まあ腐川っち。全身から負のオーラが漂ってるべ」

腐川「葉隠にまで馬鹿にされた。キィィィ、あたしなんてどうせぇー!」

山田「葉隠康比呂殿! どう考えても逆効果ですぞ!」

十神「黙れ、腐川。貴様の醜い声でこの俺の耳を潰す気か?」

腐川「……!」

霧切「人には人のペースがあると思うわ。強制するものではないと思うけど」

石丸「だが集団生活である以上、最低限の協調性も必要だ! 君なんて隠し事をしているではないか!」




48: ◆takaJZRsBc 2018/01/08(月) 23:39:55.64 ID:2f8MquAs0


セレス「そうですわね。才能も教えてくださらないなんて、
     暗にわたくし達を信用しないと言っているのと同じですわ」

葉隠「もしかすっと、モノクマのスパイじゃねえのか?!」

山田「ス、スパイ?!」

霧切「…………」

苗木(ま、不味い。なんか空気が不穏になってきたぞ)

苗木「みんな、やめようよ! そういう……」

のび太「霧切お姉さんはいい人だよ!」

霧切「!」

十神「いい人? 何故そう言い切れる? 常識的に考えれば、
    コロシアイに有利な才能だから黙っていると取るのが普通だ」

のび太「そう思うのはあなたの性格が悪いからでしょ!」

十神「何?」ピキッ

不二咲「の、のび太君!」アセアセ

十神「では聞くが、貴様はどうして霧切が才能を言わないんだと思う?」

のび太「言わないんじゃなくて言えないのかもしれないよ。たとえば、その……ど忘れしたとか」

江ノ島「ブフッ! そそそ、そんなのあるワケないじゃーん! ねぇ?!」

大和田「のび太……」

桑田「いくらなんでもムリあるだろ、それ……」

のび太「うう、ドラえもーん!」




49: ◆takaJZRsBc 2018/01/08(月) 23:47:30.07 ID:2f8MquAs0


ドラえもん「ど忘れなんてするのはのび太くんくらいだけど、人には色々事情があるんだ。
       きっと霧切さんには何か深い理由があってぼく達に才能を言えないんだよ」

ドラえもん「なのに、なにも知らないぼく達がよってたかって責めるのは良くないと思うな」

腐川「ググ……正論かもしれないけど、謎のロボットに説教されるってどういう状況なのよあたし達……」

苗木「ぼくものび太君達の意見に賛成。確かに霧切さんに限らず、僕達みんなまだ出会ってばかりで
    お互いを完全に信じきるのは難しいと思う。でも、信じようっていう気持ちが大事じゃないかな?」

朝日奈「うんうん! 私も賛成!」

大神「同感だ」

石丸「素晴らしい意見だ! 僕も支持する!」

のび太(良かった~。なんとかまるくおさまった)

ドラえもん(まったく、アニメにないシーンが来る度にどう対応すればいいのかヒヤヒヤするね……)

朝日奈「倉庫にお菓子やドーナツあったんだー! 親睦を兼ねてドーナツパーティーしようよ!」

不二咲「いいねぇ!」

葉隠「なら特別に俺の占いも大盤振る舞いするべ! 今なら半額だぞ!」

大和田「のび太とドラえもんが男気見せてるってーのに、お前ぶっ飛ばすぞ?」

葉隠「それは勘弁してくれぇ!」

苗木「は、はは……(ホント個性が強いメンバーだな。僕はやっていけるのだろうか)」

舞園「大丈夫です。苗木君ならやっていけます。今も止めようとしてくれましたし」

苗木「読まれた?!」

舞園「だって私、エスパーですから」ニコ




50: ◆takaJZRsBc 2018/01/08(月) 23:50:10.19 ID:2f8MquAs0


苗木「でも、僕だけだったら止められなかったかもしれないよ。のび太君達がいたから……」

舞園「あの空気で最初に止めようとしたのは苗木君じゃないですか。大丈夫です。私は見てますから」

苗木「舞園さん……」ドキッ

桑田「ひゅー、さすが舞園ちゃんは今日もかわいいねぇ!」

大和田「うっせーぞ。朝からチャラチャラしやがって。俺は寝不足でイラついてんだ」

桑田「じゃあなんで俺より早く来てんだよ。あれか? 暴走族って時間にうるさいのか?」

大和田「ちげーよ。ドラえもんに起こされたんだ。寝直すワケにもいかねえしよ」

ドラえもん「昨日はいろいろ語り合ったからね。ふふふ」

桑田「ていうか、普通に飯食ってるし?!」

江ノ島「昨日も食べてたじゃん。いまさらなに言ってんの?」

桑田「昨日はいろいろありすぎてパニクってたんだよ!」

不二咲「すごいなぁ。シャワーにも入ったって言ってたし。どうなってるんだろう」

ドラえもん「当然だよ! ぼくは二十二世……いや、いまをときめく最新ロボットだからね!」

桑田「ホントかよ……新種の生物って言われた方がまだ信じられるぜ」

葉隠「ドラえもんっちはアトランティスのロストテクノロジーだべ。俺の占いがそう言ってる」

江ノ島「その占い三割しか当たんないんでしょ? デタラメ言わないでよ!」

のび太「それにしてもこの朝ごはんおいしい~。誰が作ったの?」

朝日奈「私とさくらちゃんだよ!」

大神「皆の口に合ったようで何よりだ」




51: ◆takaJZRsBc 2018/01/08(月) 23:53:31.18 ID:2f8MquAs0


朝日奈「お代わりあるからたんとお食べー。食べないと大きくなれないからね!」

のび太「わーい! ハフハフハフっ!」

石丸「のび太君、食事はよく噛んで食べなければ駄目だぞ!」

大和田「昨日から思ってたが保護者かオメェは!」

セレス「風紀委員の肩書は返上して保父さんになった方がよろしいのではないですか?」クスクス

山田「セレス殿の小悪魔スマイルキター。性格悪いの見え見えなのに
    でも悔しいそんな所に感じちゃう。ビクンビクン」

葉隠「ドラえもんっちはUMAだべ!」

桑田「さっきと言ってることがちげぇ!」

腐川「よく朝からそんなに食べれるわね……栄養が胸に吸い取られてるのかしら……!」

朝日奈「だって朝にたくさん食べないと午前中に運動する元気が出ないじゃん!」

石丸「この朝食会が終わったらまたみんなで探索をしよう!」

大和田「それに異論はねえがオメーが指揮をとるのはなんか気にいらねえ!」


ワーワーガヤガヤ!




苗木「…………」

苗木(やっぱりこのメンバーでやっていける気がしない。埋もれそうだ……)




52: ◆takaJZRsBc 2018/01/08(月) 23:57:31.28 ID:2f8MquAs0


  ― 男子トイレ ―


のび太「ふぅ、朝食会もブジにのりきったし今日こそはラクにすごすぞ!」

ドラえもん「まったく……まあ、最初の三日間は何も起きないし遊んでてもいいか」

のび太「とにかくあのうるさいお兄さんから逃げなきゃ。やかましいのは朝だけで十分だ!」

ドラえもん「きみがだらしないからやかましく感じるんじゃない? ぼくはいい人だと思うけどな」

のび太「そりゃわるい人じゃないけど……とにかくもうげんなりなんだ!」

ドラえもん「で、これからどうする?」

のび太「苗木お兄さんといっしょに行動しよう!」

ドラえもん「苗木くんか。まあ、あの中なら一番無難な性格してるしね」

のび太「それだけじゃないよ。苗木さんといっしょに行動すれば舞園さんともいっしょに
     行動できるし。超高校級のアイドルとおちかづきになれるなんて……うふふ」

ドラえもん(その超高校級のアイドルが苗木くんをだまして殺人を企むんだけどね)

ドラえもん「たしかに事件を防ぐために舞園さんの行動パターンや考え方を知っておくのは
       いいかもしれないね。どうして桑田くんを狙ったのかイマイチわからないし」


その言葉を聞いて、のび太は少し申し訳なさそうな顔をする。


のび太「ぼくはそれわかる気がするなぁ。だってあのお兄さん……」

ドラえもん「女ったらしでいつも舞園さんに鼻の下伸ばしてデレデレしてるから?」

のび太「うん」

ドラえもん「確かになぁ。ぼくもビックリはしたけど……でも、いくらなんでもそれで人を殺すかな?」




53: ◆takaJZRsBc 2018/01/09(火) 00:01:29.43 ID:VEtjUOmu0


のび太「どういうこと?」

ドラえもん「だって、舞園さんは仮にも天下のアイドルだよ? 桑田くんみたいな反応は
       それこそ毎日で慣れてるんじゃないかな。男の子なら仕方ないとも思うし」

のび太「まあね。ぼくもどっちかと言えばあのイジワルめがねの方が嫌いだし」

ドラえもん「十神くんだね。失礼かもしれないけど、確かに十神くんの方がよっぽど恨みを
       買いやすいと思うんだよなぁ。なのにどうして桑田くんなんだろう?」

のび太「原作のゲームをやれば動機もわかったのかな?」

ドラえもん「いや、舞園さんは裁判の時には既に死んでいるからね。
       はっきりとした動機は何もわからないはずだよ」

のび太「やっぱり性格じゃないの? ぼくも正直あのお兄さんそんなに好きじゃないんだよね。
     自慢ばっかりだし。せっかく才能があるのに野球がきらいなんてぜいたくだ。
     ぼくに才能をわけてほしいよ! あんな人に才能をあげるなんて神様は不公平だ!」

ドラえもん「確かにのび太くんは色々足りなすぎて神様に文句をいう権利があるよね」

のび太「……さすがにちょっときずつくよ。ほんとのことだけどさ」

ドラえもん「まあ、いいじゃない! のび太くんにもいいところはたくさんあるよ。
       それよりいつまでもトイレにいたら黒幕に怪しまれる。さあ、行こう」

のび太「じゃあ苗木お兄さんを探しに行こうか」


  ― 学園エリア廊下 ―


のび太「いたいた。苗木お兄さーん」

苗木「あ、のび太君にドラえもん。どうしたの?」




54: ◆takaJZRsBc 2018/01/09(火) 00:06:13.67 ID:VEtjUOmu0


舞園「苗木君と一緒に行動したいらしいですよ」

のび太「ぼくまだなにもいってないのに!」

舞園「エスパーですから……というのは冗談で、顔を見ればわかりますよ。
    私達のことを探していたみたいですし」ニコッ

苗木「(ドキッ)あ、はは……さすが舞園さん」

のび太(やっぱりキレイだなぁ)デレデレ

ドラえもん「二人でなにをしていたの?」

苗木「ああ、舞園さんの護身用の武器を探していたんだ」

舞園「私が無理を言って苗木君に付き合ってもらったんです」

苗木「む、無理なんてそんな! 狙われるとしたら多分女の子だし、僕で良ければ
    いくらでも付き合うよ。困ったことがあったらなんでも言って!」

舞園「はい、ありがとうございます」

のび太「仲がいいねぇ」ニヤニヤ

ドラえもん「二人は仲良しなんだねぇ」ニヤニヤ

苗木「ちょっと! からかわないでよ。僕なんかが相手じゃ舞園さんに迷惑が……」

舞園「迷惑じゃないですよ。むしろ、苗木君なら大歓迎です」

苗木「え? それってどういう……」


聞き返すが、舞園ははぐらかして話題を変えた。


舞園「それより、体育館に行きませんか? 入口にいろいろ置いてあったはずです」

のび太「そうだっけ?」




55: ◆takaJZRsBc 2018/01/09(火) 00:13:26.62 ID:VEtjUOmu0


ドラえもん「んもう、いろいろ変なものが置いてあったじゃないか」

のび太「じゃあ行こうー!」

ドラえもん「待ってよ、のび太くん!」

舞園「苗木君も行きましょう」

苗木「う、うん」

苗木(さっきのってどういう意味だったんだろう……い、いや気のせいだよ!
    うん、そうだ。そうに違いない……)


そう自分に言い聞かせながら苗木は平静さを取り戻し、三人を追うのであった。


  ― 体育館前ホール ―


のび太「みてみて! 金色の刀がおいてあるよ!」

舞園「本物ではなく、模擬刀のようですね」

苗木「これなら大きさも重さもちょうどいいし、護身用に……って、うわ!」

ドラえもん「あらー、手に金箔がべったり」

苗木「これじゃあ持ち歩くのには向かないな」

舞園「でも部屋に置いておく分にはいいかもしれませんね」

のび太「キラキラしてかっこいいなぁ」ジーッ

舞園「……あの、もしかしてのび太君。これほしいですか?」

のび太「うん! ほしい!」




56: ◆takaJZRsBc 2018/01/09(火) 00:22:38.66 ID:VEtjUOmu0


苗木「じゃあのび太君にあげようか? 思えば大和田君も言ってたけど、
    子供ののび太君が狙われる可能性だって十分あるんだし」

のび太「ほんとう?!」

ドラえもん「あー、せっかくだけどムリムリ。のび太くんにあげたって
       使いこなせないよ。バットもろくに振れやしないんだから」

のび太「それもそっかぁ。でも部屋がなんか殺風景だし、飾るくらい……」

ドラえもん「やめなよ。他に使う人がいるかもしれないじゃない」


諦めきれないのび太の姿を見て、なんとか出来ないかと苗木は考える。


苗木「……そうだ! 石丸君に使ってもらえばいいんじゃない?」

舞園「そうですね! 石丸君なら剣道くらいやってそうですし、
    のび太君を狙って暴漢が部屋に押し入らないとも限りません」

のび太「じゃあ持ってかえっていいの? ヤッター!」

苗木「子共が持つには少し重いし、新聞紙で包んで僕が持って行ってあげるよ」

のび太「ありがとう、お兄さん!」

ドラえもん「よかったね、のび太くん」


             ・

             ・

             ・


のび太(そして残り一日半、ぼくたちは楽しくすごした。動機がくばられるまでは事件も
     おきないって知ってたし、ほかのみんなは最初こそ緊張してたみたいだけど
     ぼくたちふたりのそんざいがいろいろといい方向にはたらいたみたいだ)




57: ◆takaJZRsBc 2018/01/09(火) 00:25:13.41 ID:VEtjUOmu0


  ― 体育館 ―


生徒達の何人かとドラえもんのび太はドッジボールをして遊んでいた。


ドテッ!

のび太「いったー!」

江ノ島「あんたねー……これで三回目だよ? マジで運動オンチってヤツ?」

桑田「ほんとーに呆れるほどトロくさいヤツだな……」

大和田「おいボールそっちにあんだからさっさと投げろよ」

桑田「へーへー」シュッ!

ドラえもん「のび太くん、がんばれー!」

大和田「気持ちはわかるけどよ、いまは敵だぜ。自分の身を考えろよ」

苗木「最初は渋ってたけど始まったら結構ノリノリなんだね、大和田君」

大和田「ったりめーだ。男なら勝負は常に全力よ!」

舞園「そうです! 手加減なんてしてあげませんよ!」

苗木「舞園さんまで?!」

朝日奈「あ、苗木危ない!」


ドカッ。


苗木「」キュー




58: ◆takaJZRsBc 2018/01/09(火) 00:33:39.33 ID:VEtjUOmu0


  ― 食堂 ―


生徒達はドラえもんが持ってきていたトランプでババ抜きをしている。


葉隠「ババはこっち! つまり反対側がセーフだべ」

のび太「わーん、また負けちゃった!」

葉隠「俺の占いを使えばなんのこれしき!」

セレス「何が占いですか。のび太君の顔色を見れば一目瞭然ではありませんか」

不二咲「ね、落ち込まないでもう一回やろ? 次はきっと勝てるよ」

のび太「うん、ありがとう不二咲さん」

山田「子供をさりげなく気遣うちーたんマジ天使」

ドラえもん「それにしてもセレスさんは強いなぁ。もう八連勝だよ」

セレス「当然ですわ。わたくしギャンブラーですから」

大和田「イカサマでもしてんじゃねえか?」

石丸「大和田君! 根拠もなく仲間を疑うなど最低の行為だぞ!」

大和田「ああ? 軽い冗談だろ。いちいち本気にしてんじゃねえよ! うぜーヤツだな」

苗木「け、喧嘩はやめてね……頼むから」




59: ◆takaJZRsBc 2018/01/09(火) 00:36:26.00 ID:VEtjUOmu0


朝日奈「ホント。のび太がぶっちぎりのビリだけど、その次は石丸と大和田だよ?
     ケンカする時間があるなら早く逆転しないと。下位三人は罰ゲームだからね!」

石丸「む、ゲームはやりなれていないものでな。次こそは勝ってみせるぞ!」

大和田「ちょ、罰ゲームとか聞いてねえぞ! おい、朝日奈テメェ!」

桑田「いーじゃんいーじゃん。このメンツになにやらせるよ?」

舞園「のび太くんがいるからあんまり酷いのはダメですよ!」

大神「一人ずつ歌でも歌ってもらうか」

江ノ島「ちょっとやめてよね……聞かされるこっちがマジヤバなんですけど」


             ・

             ・

             ・


のび太(一階しか解放されてないからスペースは限られてるけど、ぼくたちのために
     みんなで一緒に缶ケリやドッジボールをしてくれたり、退屈しのぎのために
     こっそりもってきてたトランプで遊んだりした。たのしかったなぁ)

のび太(アニメでは本当にみんなの一面しか知れてなかったんだってイタいほどわかった。
     舞園さんはすっごく優しくて、苗木さんと仲が良くて、二人はお似合いで……)

のび太(ほんとうに舞園さんは苗木さんをうらぎって人殺しなんてするのかな……?
     今回はぼくたちがいるから考えを変えてくれたりとか)

のび太(ぼく、イヤだよ……コロシアイなんて……)




64: ◆takaJZRsBc 2018/01/09(火) 20:01:37.18 ID:f4dScVjg0



  第三話 コロシアイをとめろ!


  ― 男子トイレ ―


コロシアイ学園生活四日目。朝。


ドラえもん「いよいよだね」

のび太「うん、いよいよだ」

ドラえもん「ぼくたちがやること、ちゃんと覚えてる?」

のび太「わすれるわけないよ。モノクマが視聴覚室の話をしたらまっさきに
     走っていってDVDをこわせばいいんでしょ? かんたんじゃない!」

ドラえもん「うまくいくといいけど……」


『校内放送、校内放送。全員体育館に集合!』


のび太「きた!」


  ― 体育館 ―


モノクマ「やあ、みんな元気? 三日ぶりだね」

苗木「僕達に一体何の用だ?」

モノクマ「オマエラがなかなかコロシアイをしないからだよ!」

セレス「あら、コロシアイをせずここで一生過ごす選択肢もあると初めにおっしゃったのは
     あなたではありませんか。わたくし達は適応しているだけですわ」

モノクマ「なんとでも言いなよ。とにかく、先生は考えました。人も環境も
      整っているのにコロシアイが起こらないのは動機がないからだと」

十神「動機だと?」




65: ◆takaJZRsBc 2018/01/09(火) 20:03:50.70 ID:f4dScVjg0


モノクマ「と言う訳で、視聴覚室にプレゼントを用意しました!」


言うやいなやドラえもんとのび太は駆け出す。


のび太「わああああ!」

ドラえもん「ぬおおおお!」

苗木「ド、ドラえもん? のび太君!」

大神「一体どうしたのだ?」

モノクマ「何だ、あいつら? まあ、いいや。とにかくそういう訳だから。じゃーねー」ピョーイ

苗木「二人を探さないと!」

霧切「その必要はないわ。彼らは私達が向かう場所を聞いている。
    視聴覚室に行けばそのうち合流出来るはずよ」

石丸「で、ではとりあえず視聴覚室に向かうとするか。そこで合流出来なかったら探しに行くとしよう」


  ― 視聴覚室 ―


ドラえもん「あった! これだ!」

のび太「よし! 壊そう! ……けっこうかたいな」

ドラえもん「机を使って折り曲げたり足で踏み付けるのがいいよ」


バキバキ!


モノクマ「ちょ、ちょっとおおお! 何やってんの君達?!」

のび太「なにって……こわしてるんだよ!」




66: ◆takaJZRsBc 2018/01/09(火) 20:05:58.63 ID:f4dScVjg0


モノクマ「だから何で?! 意味がわからないよ!」

苗木「あ、のび太君達がいたよ!」

大和田「なんだ、先に来てただけかよ。心配させんな!」

十神「そんなことはどうでもいい。それより貴様等、ここで何をしている?」

ドラえもん(マズイ、十神くんに目をつけられた。頭が回るから厄介だな……)

のび太「もう安心してよ! DVDはこわしちゃったから!」

霧切「……ここに置かれているプレゼントがDVDだとわかっていたの?」

ドラえもん「い……いや知らなかったよ! いま見つけたんだ!」

モノクマ「もう! せっかく君達が気になって気になって気になって
      仕方がない外の映像をいれてやったスペシャルDVDなのに!」

苗木「外の映像?」

舞園「外の様子がわかるんですか……?!」

のび太(ざーんねんでした。もうDVDはぜんぶこわしちゃったもんねー)ベー

モノクマ「そう。のび太君達によって壊されちゃったけど……ま、ここに予備があるんだけどね!」

のび太「へ?」

ドラえもん「そ、そんな……!」

モノクマ「もしかしたら勘の良い奴が壊すんじゃないかと思って二枚用意しといて正解だったよ。
      まさかそれがどんくさいキミ達だというのはちょっと予想外だったけどね。うぷぷ」

モノクマ「そもそもさー、DVDだよ? 元のデータがある限り何枚だって用意出来るに
      決まってるじゃん! 馬鹿なの君達? さ、みんな自分のDVDを受け取って」




68: ◆takaJZRsBc 2018/01/09(火) 20:15:51.62 ID:f4dScVjg0


結局、モノクマの手によって全員にDVDが配られてしまった。


のび太「あ、あ、みんな見ちゃダメ~!!」

苗木「のび太君?!」

のび太「それは見ちゃいけないんだ~! 見ないで~!」

霧切「……どうして見てはいけないのかしら?」

のび太「う、ぐぅ……それは……」

ドラえもん「く、黒幕の用意した映像なんてろくなものなワケないよ!」

のび太「そ、そうだそうだ! 催眠光線が出てコロシアイをしたくなるかもしれないよ!」

山田「催眠光線ですか……」

葉隠「サブプライム効果ってヤツか?」

霧切「サブリミナル効果ね」

のび太「とにかく! ダメなものはダメなんだよ! わかってよ! うわーん!!」

舞園「のび太君……」

石丸「……のび太君、君の気持ちはわかった。その通りだ! 黒幕の用意した映像など
    ろくな物ではないに決まっている! 君達の決死の思いを尊重し、僕は見ないぞ!」

苗木「僕も見ないことにするよ。だって二人とも本当に真剣に見えるし」

不二咲「子供だから、僕達より感受性が強いのかもしれないね。何か危険を感じたのかも」

大和田「俺も見ねーわ。ガキが泣いてここまで訴えてんだぜ? クるものがあるだろうよ」

のび太「みんな、ありがとう……舞園お姉さんは?」




69: ◆takaJZRsBc 2018/01/09(火) 20:19:55.17 ID:f4dScVjg0


舞園「え。私、ですか……?」


逡巡する舞園の後ろを江ノ島含め数名が通って行く。


江ノ島「子供のワケわかんない言葉信じるとかバッカじゃないのぉ?!
     外の映像なんてメチャクチャ気になるじゃん。アタシは見るから!」

十神「同感だ。くだらん」

腐川「と、十神君の言う通りよ! 私も見るわ」

セレス「見ないことには判断出来ませんものねぇ」

のび太「あ、ああ……」

ドラえもん(彼らは予想通り見てしまうか……でも、舞園さんさえ止められれば!)

桑田「お、おい。俺達はどうするよ……?」

山田「気にはなりますが、いざ見るとなると……」

葉隠「よ、よし! ここは俺の占いで決めるべ!」


悩む彼らの動きを制するように、霧切が一歩前に出た。


霧切「私は見るわ」

桑田「マジかよ……」

霧切「……あなた達、怖いのなら私の反応を見てから見るかどうか決めたらどうかしら」

葉隠「おお! そりゃ名案だな!」




70: ◆takaJZRsBc 2018/01/09(火) 20:32:48.78 ID:f4dScVjg0


苗木「なんだか霧切さんに嫌な役目を押し付けちゃうような気がするけど」

霧切「気にしないわ。もしこのDVDが本当に良くない物の場合、全員が見てしまうよりマシだもの」


そう言って霧切は席に座り、ディスクを入れた。その時、悲鳴が上がる。


腐川「ひ、ひぃぃぃっ!!」

石丸「な、何だ?!」

舞園「悲鳴?!」

十神「フン、こんなものか。予想の範囲内だ」

苗木「十神君! 君のDVDには一体何が……?」

十神「霧切に聞くんだろう? ……まあ、そうだな。貴様等精神の弱い愚民は見ない方が
    いいかもしれんな。この俺にとってはつまらんコケ脅しだが。クッ、クハハハ」

霧切「…………」スッ

舞園「あ、霧切さん! ……どうでしたか?」

霧切「見ない方がいいわ」

舞園「えっ」

霧切「のび太君達の言った通りね。このDVDには決して楽しい映像は入っていない。見ても
    気分が悪くなるだけよ。どうしてもと言うなら止めないけど、あまりお勧めしないわ」


スタスタスタ……




71: ◆takaJZRsBc 2018/01/09(火) 21:00:12.64 ID:f4dScVjg0


桑田「マジか……じゃあ、俺も見んのやめよー」

葉隠「あの冷静な霧切っちに言われるとなぁ」

山田「ぼ、僕もやめておきます。僕のゴーストが見ない方がいいと囁くので」

舞園「…………」

ドラえもん「舞園さん……」

苗木「舞園さんはどうする?」

舞園「……私も見ないことにします」

のび太「やったー! 良かったー!」

ドラえもん「良かったねぇ!」

苗木「舞園さん、なんか顔色悪いけど大丈夫? 部屋に戻ろうか?」

舞園「……大丈夫です。こんな所にいたら気分も暗くなっちゃいますし、行きましょう」



  ― 男子トイレ ―


のび太「やったね! これでひとつ目の事件はふせげたよ。かんたんかんたん」

ドラえもん「安心するのはまだ早いよ。一応タイムテレビで苗木くんの部屋を見てみよう」


二人はタイムテレビにかじりつく。




72: ◆takaJZRsBc 2018/01/09(火) 21:28:59.96 ID:f4dScVjg0


のび太「ほら、部屋の交換なんかしてない! ほんとにだいじょうぶなんだよ!」

ドラえもん「……待って。念には念をいれて次の日も見てみよう」

のび太「あ、あれ? 舞園さんが苗木さんの部屋にいる……で、苗木さんが出て行った」

ドラえもん「これは……部屋の交換だ!」

のび太「まさか……じゃあ!」

ドラえもん「場所はそのままで時間を犯行時刻まで進めてみよう!」


パッ。

そこに映っていたのは、ベットのすぐ横に仰向けとなって倒れた人間……
全身血まみれで虚ろな目のまま事切れた【桑田怜恩】の無残な姿だった。


ドラえもん・のび太「きゃあああああああああああああああああああああああああああああっ!!」

のび太「な、なんで?! どうして?!! 死ぬのは舞園さんのはずじゃ?!」

ドラえもん「わからないよ! 一体なにが?!」

「おい、なんだ今の悲鳴?!」バタバタバタ

ドラえもん「マズイ! 隠さないと!」ガチャガチャ


誰かがこちらに向かってくる音が聞こえた。慌ててドラえもんはタイムテレビをポケットに仕舞う。


桑田「おい! どうしたっ?!」

のび太「え、えっと……」




73: ◆takaJZRsBc 2018/01/09(火) 21:37:03.23 ID:f4dScVjg0


ドラえもん「何も……ないよ……」

桑田「ハァ? 何もなくてあんな悲鳴あげるかフツー? ……つーかなんだよ。
    幽霊でも見てるみたいな顔して人を見やがってさ」

ドラえもん「あ、いや、その」

のび太「ゴキブリ! こーんなおっきなゴキブリがそこにいたんだ!」

桑田「ハアァ?」

石丸「どうしたあああっ?! 何があったんだ! 大丈夫かね、二人共?!」

桑田「……ああ、大丈夫だ。ゴキブリだってよ。まったく人騒がせなヤツらだぜ」

石丸「む、虫だと? なんだ、良かった……しかし男子たるもの、たかだか虫程度で
    あのように盛大な悲鳴をあげるとは些か情けないぞ!」

ドラえもん「ご、ごめんなさい」

のび太「さっきのことで、ちょっとこわくなっちゃってて……」

石丸「ム……そうであったか。そうだな。あまり思いたくはないが、あの映像を見た誰かが、
    早まった行動を取らないとは断言出来ない。外で待っているから早く手を洗いたまえ」

ドラえもん「はい……」

のび太「どうしよう。これ以上トイレにこもれないよ。へんに思われちゃう」

ドラえもん「そうだ。もう一ヶ所監視カメラのない所があっただろう?」

のび太「そんな場所あったっけ?」

ドラえもん「個室のシャワールームだよ! シャワーを浴びるふりをして続きを話そう」

のび太「うん……」




76: ◆takaJZRsBc 2018/01/09(火) 22:49:37.48 ID:f4dScVjg0


  ― シャワールーム ―


のび太「それにしても、犯人はたぶん舞園さんだよね……?
     どうして?? DVDは見なかったはずなのに!」

ドラえもん「待って! 今舞園さんの行動を追っているから!」


タイムテレビを必死に操作するドラえもん。すると何かを見つけ驚愕した。


ドラえもん「これは……!」

のび太「視聴覚室? あ、舞園さんが!」

ドラえもん「DVDを見てる! そうか、やっぱり気になって見てしまったんだ……」

のび太「いますぐ視聴覚室にもどってこわしに行こう!」

ドラえもん「無駄だよ……モノクマが言ってただろう? 元データがある限り何度でも
       複製できるんだ。それに次の動機もある。舞園さん自体をとめないと意味がない」

のび太「そんな……」

ドラえもん「しかしそれは至難だろうなぁ。どうして舞園さんが桑田くんを狙ったのかの
       動機もよくわからないし、最初に殺人を企むくらいだからきっと舞園さんは
       すごく思いつめていて決意も固いだろうし……」

のび太「なんとかできないの?!」

ドラえもん「あきらめてくれるのが一番だけど、最悪直接のりこむしかないだろうね……」

のび太「あ、そうだった。ぼくらにはひみつ道具があるじゃない! ちょくせつ助ければいいんだ!」

ドラえもん「……気はすすまないけどしょうがない」


意気揚々となったのび太に対し、ドラえもんの表情はどこか暗かった。




77: ◆takaJZRsBc 2018/01/09(火) 23:00:19.03 ID:f4dScVjg0


のび太「ドラえもん……どうしてあんまりノリ気じゃないの? ふたりを助けるんだよ?」

ドラえもん「助けた後が問題なんだ。考えてもみなよ? あの感情的で短気そうな桑田君が、
       自分を殺そうとした舞園さんをただで許すと思う?」

のび太「そういえば、反撃して追い詰めたただけでじゅうぶんなのに
     殺しちゃったんだもんね……やっぱりそうとう怒ってたのかな……」

ドラえもん「そりゃあ怒るだろうよ! 間一髪で自分が死んでるんだし、しかも
       信じていた相手から裏切られたんだよ? 逆上するのもしかたないさ」

のび太「まあ、そうか……ぼくでいえばしずかちゃんにだまされたようなもんだしね。
     ……でも、ぼくだったらきっと殺せないなぁ」

ドラえもん「きみは優しいからね。虫一匹殺せないのがきみの長所だし。
       でもみんながみんなそういうワケじゃないんだよ」

のび太「……やっぱり、舞園さんにおもいとどまってもらうのがいちばんだね」

ドラえもん「事件までに全力をつくすほかないよ」

のび太「うん。……それにしてもさ、なんで桑田さんが死んでたんだろう?
     死ぬのは舞園さんだよね? 殺される場所も違うし」

ドラえもん「事件の直前まで見てみようか」

のび太「怖いな。ぼく見たくない……」

ドラえもん「……わかった。ぼく一人で確認するからきみはあっち向いてて」

のび太「ごめんね、ドラえもん……」

ドラえもん「気にすることないよ。みんなのためならこのくらいへっちゃらさ」


そしてドラえもんは深夜に起こる凶行の一部始終を目撃する。




78: ◆takaJZRsBc 2018/01/09(火) 23:12:04.83 ID:f4dScVjg0


桑田『お、おい舞園?! なにやってんだ、お前?!』

舞園『死んで! 桑田怜恩!』

桑田『や、やめろ! 話せば分かる! 来るな! 来るんじゃねええええ! ぐっ……!!』


ドラえもん「こ、これは……わかったぞ! 桑田くんが殺された原因!!」

のび太「な、なに?!」

ドラえもん「模擬刀だよ!!」

のび太「モギ刀って、この部屋にあるあの金ぴかの刀?」

ドラえもん「そう! あれは本来は苗木くんの部屋に置かれる物だったんだ!」

のび太「え? どういうこと??」

ドラえもん「思えば変だなって思ってたんだ。きみは寝てたから知らないだろうけど、
       報告会の時アニメになかった出来事があったんだ。つまりこの世界はアニメの
       ダンガンロンパじゃない。ゲームか、アニメとゲームが混ざった世界なんだ」

ドラえもん「アニメだと尺の関係でカットされて最初から苗木くんの部屋に模擬刀があったけど、
       恐らくゲームではあの時苗木くんが自分の部屋へ模擬刀を持ち帰るんだろう」

のび太「えっと……モギ刀が苗木さんの部屋にないとなんでダメなの?」

ドラえもん「裁判を思い出してごらん。漫画みたいなイラストで事件を振り返っていたけど、
       桑田くんは舞園さんの攻撃を咄嗟に模擬刀で防ぐんだ。でも今回その模擬刀は……」

のび太「あっ! ああっ!」

ドラえもん「のび太くんにもわかったようだね」

のび太「じゃあ、ぼくのせいで桑田さんは殺されちゃったってこと?! そんな……!」




79: ◆takaJZRsBc 2018/01/09(火) 23:25:13.81 ID:f4dScVjg0


ドラえもん「おちついて、のび太くん。まだ事件は起こっていないよ。
       これからぼくらがとめるんだ。いいね?」

のび太「ぼ、ぼくのせいで……ぼくのせいで……うう……」グスッ

ドラえもん「きみのせいじゃないよ。だって知らなかったんだから!
       おちこまないで、これからどうするか二人で考えよう!」

のび太「……うん」


しかし考えども考えども名案は出てこない。


のび太「ダメだ。ぜんぜんうかばないよ」

ドラえもん「こういう時は犯人の気持ちになって考えるんだ」

のび太「舞園さんの気持ちに? ……仲間が死んでるかもしれない。ゆめが叶えられなくなる。
     ……たしかにすごくこわいし、イヤだけど……でも、でもぼくはやっぱり殺せない……」

のび太「わからないよ、舞園さんの気持ち……すごく苦しいってことしか……」

ドラえもん「ぼくたち、誰かを殺したいなんて思ったことないからね……」

のび太「やっつけたいとか、いなくなっちゃえばいいならしょっちゅうだけどなぁ」

ドラえもん「いっそ、誰かに聞いてみる? 大人の方が色々知ってるだろうし」

のび太「そうだね。ぼくたちだけで考えるよりいいかも」


そしてシャワールームを出ると、真っ先に目に入った大人に意見を求めてみる。


石丸「……フム。今までに誰かを殺したくなったことがあるか、かい?」

のび太「お兄さんはある?」




80: ◆takaJZRsBc 2018/01/09(火) 23:35:19.92 ID:f4dScVjg0


石丸「ウム、ないなっ!」

ドラえもん「一度も?」

石丸「ないっ!」

のび太「実際に殺すとかじゃなくて、そのくらいハラが立ったとか……」

石丸「僕も人間だ。自分本位な人間や努力をしない怠惰な人間に腹を立てることもある。
    だが、他人に腹を立てるくらいならその時間を自身の向上に当てるべきだと思う」

石丸「僕が本当に許せないのはモノクマのような世の理不尽だ!」

ドラえもん「つまり、社会とか政治の理不尽に対しては怒るけど、
       特定の誰かに対して本気で怒ったりはしないということ?」

石丸「その通り。どんな人間でも、その人が悪事を行うまでに必ず何か原因があるだろう?
    それは周囲の環境だったり、挫折や苦労の経験がなかったり……だから、その人だけに
    責任を求めて責め立てるというのはどうにも肌に合わないのだ」

ドラえもん(まだ高校生だというのに、立派だなぁ)


ドラえもんは石丸の考え方に感心したが、まだ子供ののび太にはその言葉の意味がよくわからなかった。


のび太「もう! ぜんぜん参考にならない! お兄さんにきいたぼくがバカだったよ」

石丸「う、ぐぅ……役に立てないようですまない。それにしてもどうしてそんな質問を?」

のび太「えーと、それは……」

ドラえもん「コロシアイが起こらないようにするには、逆に人を殺そうとする人の気持ちを
       理解できればなにか手を打てるんじゃないかってぼくらは考えたんだ」

石丸「! そうだったのか! 君達は君達でコロシアイを止めようと動いているのだね?!」




81: ◆takaJZRsBc 2018/01/09(火) 23:52:22.32 ID:f4dScVjg0


健気な子供達の姿に石丸は深い感銘を受けたが、それと同時に自己嫌悪に陥ってしまった。


石丸「……子供達ですらこんなに頑張っているというのに、高校生で風紀委員の
    僕は役に立つ意見の一つすら言えない。どうにも僕は空気が読めないな……」

ドラえもん「あ、あの……そんなにおちこまないで。のび太くんはまだ子供だから、ね?」アタフタ

石丸「……いや、いいんだ。ありがとう。力になれなくてすまない……」

のび太「はやく行こうよ、ドラえもん。ぼくたちには時間がないんだから!」

ドラえもん「う、うん……」チラッ

石丸「…………」ブツブツ


後ろ髪を引かれながらもドラえもんは部屋を後にした。


ドラえもん「なんだか悪いことしちゃったなぁ」

のび太「しかたないよ。いまはあの人にかまってるヨユウはないんだし。
     それより急がないと! 全員に順番に聞いていってみる?」

ドラえもん「気をつけないと舞園さんに見つかるかもしれない。それに、あまり動きすぎると
       黒幕に怪しまれるよ。ぼくたちは今監視されているんだから」

のび太「じゃあ、とりあえず苗木さんに話を聞いたらまたそうだん会しよっか」


               ◇     ◇     ◇


のび太「どこにもいないね」

ドラえもん「部屋にいるんじゃないかな? そうなら好都合だ。行ってみよう」


苗木の部屋の前に来た二人はインターホンを鳴らす。




82: ◆takaJZRsBc 2018/01/10(水) 00:07:08.19 ID:oPpOdolR0


苗木「はーい。あ、どうしたの? 二人揃って」

のび太「その、ちょっと聞きたいことがあって……」

苗木「じゃあ立ち話もなんだし、中に入りなよ」

ドラえもん「いいの?」

苗木「うん? もちろん、いいよ。さ、どうぞ」

ドラえもん(……警戒心がないなぁ。だから舞園さんに利用されちゃったんだろうけど)

苗木「それで、どうかしたの?」

のび太「そのー、ちょっと聞きにくいんですけど」

ドラえもん「苗木くんは、誰かを殺したいほど怒ったことってある?」

苗木「え、ええ?! ないよ! 見ての通り僕って普通ど真ん中だし、普通の人は
    まずないんじゃないかなぁ。……もしかして、僕が誰かを殺しそうに見えた?」

のび太「い、いやいや!」

ドラえもん「そんなそんな!」

ドラえもん・のび太(殺すのは舞園さんだよ!)

のび太「じ、じつはね……」カクカクシカジカ

苗木「なるほど。殺人をする人の心理を調べる、か。すごいね、小学生なのに」

のび太「そんなたいしたものじゃないよ。ただ、人を殺そうとするくらいだから、
     きっとその人はあいてをすごい怒ってるしきらってると思うんだよね」

ドラえもん「嫌いな人を好きにさせるにはどうしたらいいと思う?」

苗木「嫌いな人に好感を持ってもらう方法かぁ。うーん、難しいな。とりあえず、
    やっぱりその人のいい所を根気よく伝えていくしかないんじゃないかな」

ドラえもん「いい所を伝える、か」

のび太「それいいね! 苗木お兄さんは石丸お兄さんと違って頼りになる」

苗木「え、まさかさっきの質問を石丸君にもしたの? なんて言ってた?」




83: ◆takaJZRsBc 2018/01/10(水) 00:17:58.12 ID:oPpOdolR0


のび太「なんだっけ。えーと、だれかにハラを立てるくらいならその時間勉強する。
     人にハラは立たないけど社会やせいじ?のリフジンにはハラが立つ、だってさ」

苗木「……そんなこと言ってたんだ。なんていうか、石丸君らしいな」

のび太「へんなお兄さんだよね」

苗木「いや、凄いと思うよ。僕は普通の人間だからとてもそんな考えは出来ないし」

のび太「ふーん、そうかな? でもぼくは苗木お兄さんの方がはなしやすいよ?」

苗木「ふふっ、ありがとう。でもそれは僕が平凡だからじゃないかな。思えば、石丸君だけ
    じゃなくて他のみんなも、天才だからこそ周りから理解されない所があるかもね」

ドラえもん「理解されない……お互いの不理解がコロシアイに繋がるのかもしれないな」

苗木「うん、それはあると思う。人間なんだから、長所も短所もあるのは仕方ないのに
    こんな所に押し込められてコロシアイを強制されて……余裕がないんだよね。
    十神君達だって、時間さえればきっと理解し合えると思うんだ」

のび太「えー、ほかの人はともかくあの人はムリじゃないかなぁ……」

苗木「わからないよ? 最初に無理だって決めつけちゃったら、どんなことだって
    無理になっちゃう。まずはなんでもやってみないとね」

のび太「お兄さん、前向きだね」

苗木「ハハ、よく言われるよ。前向きなのが平凡な僕の唯一の長所だからね」

のび太「かっこいいよ」

のび太(さすが主人公だなぁ。すなおに感心できる)

ドラえもん「ぼくもそう思うよ」

ドラえもん(苗木くんはやっぱり主人公なんだねぇ。すごい能力はないけど安心感がある)

のび太「ありがとうお兄さん。やる気も出たしヒントももらったし、ぼくたちガンバるよ!」

苗木「何をするのかわからないけど、無理はしないようにね。
    何か困ったり、僕達の手が必要になったらいつでも協力するから」

のび太「うん、わかった!」

ドラえもん「じゃあぼくたちこれで失礼します」

苗木「役に立てて良かった。二人共頑張ってね!」




90: ◆takaJZRsBc 2018/01/13(土) 22:01:12.70 ID:Xatsirjn0



  第四話 桑田くんのなやみ(前編)


  ― 男子トイレ ―


ドラえもん「さて、勢いに乗ったところで作戦を立てようか」

のび太「桑田さんのいいところを舞園さんにアピールするんだね!」

ドラえもん「そういうこと。じゃあ、桑田くんのいい所を挙げていって」

のび太「え? うんと……明るいところ、にぎやかなところ、おもしろいところ」

ドラえもん「他には?」

のび太「えーと、あとは野球がうまいところ」

ドラえもん「他には?」

のび太「えーっと……もううかばないよ! だって、たった四日しか会ってないし
     そもそもそんなに親しくないもの! ゲームの時に話したていどだよ?」

ドラえもん「意外と不良の大和田くんの方が面倒見が良くて話しかけてくれるんだよね……」

のび太「でも、いま言ったいいところのなかで一ついいのがあった!」

ドラえもん「なんだい?」

のび太「野球だよ!」

ドラえもん「野球? 野球がなんでいいんだい?」

のび太「だって、野球がうまいってそれだけでもうかっこいいじゃない!
     舞園さんだってきっと見なおしてくれるよ!」

ドラえもん「あのねぇ、のび太くん……もう忘れちゃったの? 桑田くんはね、超高校級の
       野球選手で天才だけど野球が嫌いってしょっちゅう自分で言ってるじゃない」




91: ◆takaJZRsBc 2018/01/13(土) 22:08:56.78 ID:Xatsirjn0


のび太「そんなの知ってるよ。でもほら、あの人って大の女の子好きでしょ?」

ドラえもん「ああ、なるほど。女の子にモテるとか適当なこと言って
       その気にさせるってこと? きみにしては考えたじゃない」

のび太「きみにしてははよけい。さっそくいこう!」


  ― 食堂 ―


のび太「おにーいーさん!」

桑田「あ? なんだよ」

のび太「さっきは心配してまっ先にかけつけてくれてありがとう」

桑田「……ん、まあな。そりゃガキの悲鳴聞こえたら駆け付けるだろフツー」

ドラえもん「いやぁ、かっこよかったよ!」

ドラえもん(まずはおだてて機嫌を取ろう)

桑田「んなオーゲサな……」

のび太「ほんとうだって! ピンチの時にあらわれるヒーローみたいだったよ! かっこよかった!」

ドラえもん「タイミングとかね。表情とか」

桑田「……え、マジで? いやいやホントにマジで??」

のび太「マジだよ」

ドラえもん「大マジだね」

桑田「え、ホント? いや、お前ら見る目あるわー! 俺ってやっぱかっこいいよな?!」

のび太「う、うん」

ドラえもん「そうだね!(色々言いたいことはあるけどがまんがまん)」




92: ◆takaJZRsBc 2018/01/13(土) 22:20:06.11 ID:Xatsirjn0


桑田「おしっ! なんだ、その……なんか遊んでやろうか? ヒマだから俺んとこ来たんだろ?」

のび太「うん! じつはね……」

のび太(よし、きたぞ。ほんとうにたんじゅんだなこの人……)


のび太に言われるようでは人として終わっている。


のび太「お兄さんと野球がやりたいなー」

桑田「……野球?」ピクッ

ドラえもん「なにせ、超高校級の野球選手だもんね!」

のび太「そう! 超高校級の野球選手と野球ができるキカイなんてそうそうないもの。
     帰ったらみんなにじまんできるしさぞかしうらやましがられるんだろうな~」

ドラえもん「野球が出来るとモテるでしょ?」ボソ

のび太「舞園お姉さんにいいところ見せちゃおうよ」ボソ

桑田「……確かに俺は野球の天才だし、野球やってた時はめっちゃモテた」

のび太「お?」

ドラえもん「お?」

桑田「でもやらねぇ」

のび太「え? え?」

ドラえもん「どうして……」

桑田「もう野球はやめたんだ。あんな泥くさくてダセースポーツはしねー。
    どうしてもやりてぇって言うなら大和田にでも頼め」

のび太「そ、そんなぁ……」




93: ◆takaJZRsBc 2018/01/13(土) 22:37:23.20 ID:Xatsirjn0


ドラえもん「そんなこと言わないで……ハッ(視線を感じる)」


振り向くと、そこには真顔でこちらを見ている舞園がいた。


ドラえもん(まずい! 舞園さんに今のやりとりを見られてた!)

舞園「(スッ)桑田君、子供のお願いですし……引き受けてあげたらどうですか?」

桑田「……わりぃけど、いくら舞園ちゃんの頼みでもそれはきけねえわ。
    あー、野球なんて言うからなんかテンション落ちちまったよ」

舞園「…………」

のび太「ア、アワアワアワ!」

ドラえもん「ま、舞園さん?」

舞園「すみません。お二人の力になれなくて……」

のび太「い、いや……急にいいだしたぼくらがわるいんだよ!」

ドラえもん「そ、そうそう! 気分が乗らない時って誰でもあるしね。ハハ!」

のび太(まずいことになっちゃったよ!)

ドラえもん(ど、どうしよう?!)


そこへ、更に運悪く大和田がやってきた。


大和田「うーっす、ガキ共。どうしたそんな顔して? 元気ねえな」

のび太「あ、いやそれは……」

ドラえもん「なんでもないよ!」

大和田「なんでもねえわけねえだろ。なんか顔色良くねえぞ?」




94: ◆takaJZRsBc 2018/01/13(土) 22:43:02.09 ID:Xatsirjn0


舞園「ちょうどいい所に来てくれました、大和田君」

大和田「あん? どうした、舞園?」

舞園「大和田君からも頼んでもらえませんか? のび太君達、野球がしたいって
    桑田君にお願いしてるんですけど、桑田君は嫌だって言うんです」

大和田「ああ? 野球? そんくらいやってやれよ。お前超高校級の野球選手だろうが」

桑田「だから……もう野球はやめたんだって。あんなダサいスポーツ元々好きじゃねーし」

大和田「ハァ? 別に試合するワケじゃあるめえし、少しガキどもに付き合うだけだろ?
     なんでそんな意地はってんだ。ちょっとくらいやってやりゃいいじゃねえか」

桑田「うるせぇな! やりたくねえっつってんだろッ! 俺は野球なんて大嫌いなんだよ!!」


ガタッバタバタバタ……


のび太「あ!」

ドラえもん「追いかけよう!」タッタッタッタッ

大和田「なんでぃ、変なヤツらだな」

舞園「……酷い人ですね。子供のお願いすら応えてあげないなんて……」


しかし、桑田の去った方向を見る舞園の目はとてつもなく暗くて冷たい。


大和田(なんだ……? 今こいつやべぇ目つきしてたぞ)ゾクッ


               ◇     ◇     ◇


のび太「どこいっちゃったんだろ」

ドラえもん「すぐに見つかるはずだよ。一階しか解放されてないんだから」

のび太「いってるそばから見つけた! お兄さ……」




95: ◆takaJZRsBc 2018/01/13(土) 22:50:27.28 ID:Xatsirjn0


ドラえもん「待って! なにか様子が変だ。トイレで透明マントをかぶって近付いてみよう」

のび太「でも、透明マントをかぶったらぼくたちもおたがいに見えなくなるよ」

ドラえもん「姿は見えなくても声は聞こえるし、はぐれないように手をつなげば大丈夫」

のび太「よし、じゃあ行こうか」


             ・

             ・

             ・


桑田「ああぁ、畜生……人の気も知らないで野球野球言いやがって……
    ガキどもがやりたいなんて言うから久しぶりにやりたくなっちまったじゃねえか」

桑田「いや! 違う! 俺は野球なんて嫌いだ。そうだ、大嫌いなんだ。夏は暑いし
    ユニフォームや部室はくっせえしボウズはダセエし監督はうるさいし」

桑田「野球なんて嫌いだ野球なんて嫌いだ野球なんて大大大嫌いだ」

桑田「……ボール、投げてぇなぁ。バット振りてえ……」

桑田「違う! 違う違う違う! こんなの本心じゃねえ。俺は野球に洗脳されてるだけだ!」

桑田「好きじゃない。好きなんかじゃない! あー! 畜生ー! ムシャクシャするー!」


ブツブツブツブツ……


のび太「……なにやってんの、あの人? さっきからずっとあんなかんじだけど」

ドラえもん「あぁ……そうだったのか。桑田くんは本当は野球が大好きだったんだね……」

のび太「え、まさか? きらいだっていってるじゃない?」

ドラえもん「悪いことをしちゃった。とりあえずトイレに戻ろう」




96: ◆takaJZRsBc 2018/01/13(土) 22:56:41.19 ID:Xatsirjn0


  ― 男子トイレ ―


のび太「好きだっていったりきらいだっていったり、ワケわかんないよ!」

ドラえもん「いや、本当は好きなんだよ! 理由はわからないけど、自分にウソを
       ついているんだ。嫌いだって言い聞かせているだけなんだよ」

のび太「なんのために?」

ドラえもん「……わからない。けど、きっとなにか深い事情があるんだろうね」

のび太「そっか。好きなことを好きっていえないんだ……なんだかかわいそう」

ドラえもん「うん。なんとかしてあげたいね」

のび太「でもどうすればいいんだろう……?」

ドラえもん「こればっかりはぼくにもわからないよ」

のび太「もう! かんじんなときに役に立たないんだから!」

ドラえもん「しょうがないだろ! どうせぼくは落ちこぼれのダメダメロボットだよ!」

のび太「べつにそこまでは言ってないけど……」


その時、二人の前に突然タイムホールが開く。


ドラえもん「な、なんだ?!」

のび太「なに?!」

「ちわーっす。未来デパートの者でーす。ドラえもんさんいらっしゃいますかー?
 ドラミさんからお中元の品のお届けでーす」

ドラえもん「あ、宅配の人か。ご苦労様です」

「じゃ、サインここにお願いします」

ドラえもん「はいはい」




97: ◆takaJZRsBc 2018/01/13(土) 23:05:53.77 ID:Xatsirjn0


のび太「なにがとどいたの?」

ドラえもん「わあ、ドラ焼きだ! あとで電話しないと」

のび太「……そうだ!」

ドラえもん「なに? どうしたの?」

のび太「おもいきってドラミちゃんに相談してみようよ!」

ドラえもん「ドラミに?」

のび太「そうだよ! ぼくたちにわかんないことでもあたまのいいドラミちゃんなら
     わかるだろうし、きっといい案をかんがえてくれるはずだ!」

ドラえもん「なるほど! じゃあ、久しぶりに会いに行ってみようか」

のび太「うん!」


  ― 未来 ―


ドラミ「お兄ちゃん! のび太さんも! 突然どうしたの?」

のび太「こんにちは、ドラミちゃん」

ドラえもん「やあドラミ。お中元届いたよ。ありがとう」

ドラミ「そんな、いいのに。わざわざお礼を言うために直接来てくれたの?」

ドラえもん「いや、それだけじゃないんだ」

のび太「実はね……」

ドラえもん「カクカクシカジカ、と言うわけなんだよ」

ドラミ「まあ。お兄ちゃん達ったら、また大冒険をしているのね!」

のび太「大冒険って言っても、今回はずっと学校の中にいるだけだけどね」




98: ◆takaJZRsBc 2018/01/13(土) 23:13:50.50 ID:Xatsirjn0


ドラミ「私そのゲーム知ってるわ」

のび太「え? 本当?」

ドラミ「ええ。レトロゲームって安いし良質な物が多いから、セワシさんもよくやるのよ」

ドラミ「それで私が、どうせゲームするなら推理物とか頭を使う物にしたら? って言って、
     今ちょうど裁判物にハマっているの。ダンガンロンパとか逆転裁判とか」

のび太「じゃあ、ドラミちゃんはぼくたちの知らないことも知っているんじゃ!」

ドラミ「あ、ごめんなさい。私はゲームを直接やった訳じゃないから深い内容までは
     知らないわ。セワシさんも出掛けているし……詳しく話してもらえないかしら?」

ドラえもん「わかった」


今までの状況をドラミに説明する。


ドラえもん「――ということなんだ」

ドラミ「……そうだったの。自分の好きなこと、それも世間から評価されている物を嫌いって
     言うなんてよっぽどよ。多分、野球関連で何か凄く嫌なことがあったんだわ」

のび太「いやなこと?」




99: ◆takaJZRsBc 2018/01/13(土) 23:24:16.67 ID:Xatsirjn0


ドラミ「ええ。それが何かはわからないけど、恐らく人間関係じゃないかしら? 高校生の
     悩み事なんて勉強、進路、あとは対人関係くらいしかないと思うし」

のび太「人間関係かぁ。……もしかして、チームのなかまとケンカしたとか?」

ドラえもん「ありうるね。ほら、さっき苗木くんが言ってたじゃない?
       天才は周りに理解されづらいみたいなこと」

のび太「じゃあ、げんいんはそれでいいとして……ぼくたちはどうすればいいの?」

ドラえもん「結局そこなんだよなぁ」

ドラミ「ムリにでもやらせてみたら?」

のび太「野球を?」

ドラミ「そう。仮に人間関係が原因だったとしてもそうでなかったにしても、少なくとも今の
     生活でまでウソをつく必要性はないでしょ? 好きだって気持ちを思い出させてあげれば
     案外素直になれるんじゃないかしら。そのきっかけを作ってあげたらいいと思うわ」

のび太「すごい! さすがドラミちゃんだ」

ドラえもん「いやぁ、優秀な妹を持ってぼくは幸せだよ」

ドラミ「どういたしまして! これで舞園さんも思いとどまってくれるといいわね」

のび太「…………」

ドラえもん「…………」

ドラミ「……どうしたの? 私、何かおかしなこと言った?」




100: ◆takaJZRsBc 2018/01/13(土) 23:33:10.34 ID:Xatsirjn0


のび太「いや、そうじゃなくてね……」

ドラえもん「桑田くんに気を取られていてすっかり忘れてたよ。そうだった。
       舞園さんをとめるのが元々の目的だった……」

ドラミ「……まあ、呆れた。まずは今晩起こる事件をなんとかしなくちゃダメじゃない」

ドラえもん「めんぼくない」

のび太「もう! ドラえもんはいつもかんじんな時にぬけてるんだから!」

ドラえもん「きみだって忘れてただろう! ぼくだけのせいにしないでよ!」

ドラミ「ケンカはやめて。お兄ちゃんとのび太さんにかかっているんだから頑張って! ね?」

ドラえもん・のび太「はーい」


 ― 現代・男子トイレ ―


ドラえもん「ドラミが気付いてくれて良かった。まずは今晩をなんとかしないとね。
       ちょっと反則だけど、今回だけソノウソホントで事件を防ごう」パパラパッパパー

ドラえもん「『今晩は誰も事件を起こさない』。よし、これで今日は大丈夫!」

のび太「もういっそこれで全部なんとかしたいけどね」

ドラえもん「それはダメだよ。前にも言ったけど生徒達が精神的な成長をなにもしてないじゃない」

のび太「わかってるって。……でもさあ、ムリヤリやらせるって言ってもどうやって?
     舞園さんはおろか、あのこわいお兄さんが言ってもきいてくれなかったんだよ?」

ドラえもん「うーん、ぼくに考えがあるんだけど……」

のび太「え?! なにか案があるの? おしえてよ!」

ドラえもん「今こそあの“うるさい人”に活躍してもらう時じゃないかな?」




104: ◆takaJZRsBc 2018/01/14(日) 19:06:36.36 ID:vQefG67b0


~ NGシーン ~


ドラえもん「ヤル気スイッチ~!」パパラパッパパー

のび太「なにそれ?」

ドラえもん「この装置を相手に向けてプラスのボタンを押せばヤル気が出るし、
       マイナスのボタンを押せば相手のヤル気を下げることが出来るんだ!」

のび太「それで舞園さんのヤル気を下げるんだね!」

ドラえもん「そういうこと!」

のび太「ぼくにやらせて」サッ

ドラえもん「あっ、ちょっと!」

のび太「えい」ポチッ

舞園「うおおおおおおおお! 桑田ぶっ殺してやる!!」

のび太「まちがえた~!」

ドラえもん「なにやってんだ?! 殺る気をだしてどうするんだ!!」

のび太「ごめんなさーい!」



~ まもなく再開 ~




105: ◆takaJZRsBc 2018/01/14(日) 19:23:50.77 ID:vQefG67b0



  第五話 桑田くんのなやみ(後編)


翌日。朝食会にて。


石丸「静聴せよ!! 今日は諸君らに重大な知らせがある!」

葉隠「重大?」

山田「なんなんですかね?」

石丸「この朝食会終了後、本日は全員で野球を行うっ!」

桑田「ハアアア?! なんでっ?! 冗談じゃねえ!」

十神「俺は参加しないぞ。お前達で勝手にやっていろ」

石丸「ちなみに女子はどうしても嫌なら見学でも良いが男子は全員参加だ。
    特に桑田君! 超高校級の野球選手である君は絶対に絶対に参加とする!」

桑田「だから! なんでだよっ! ありえねーし!」

石丸「これは決定事項だっ!!」

山田「ムチャクチャですよ!」

大和田「おい石丸、別に俺は構わねーがせめて理由くらい言えや」

石丸「ム、失礼した。実はこれには深い理由がある!」

葉隠「なるべく短めに頼むべ」

石丸「実は他ならぬのび太君の頼みなのだっ!」

朝日奈「え、のび太の?」




106: ◆takaJZRsBc 2018/01/14(日) 19:34:50.70 ID:vQefG67b0


舞園「……そういえば、昨日も桑田君を野球に誘っていましたね」

石丸「のび太君は現在友達がキャプテンをしている地域の野球チームに所属しているのだが」

石丸「その友達というのはジャイアン君と言ってとんでもないガキ大将なのだ!
    そして事あるごとにのび太君をイジメるらしい!」

葉隠「ジャイアン? ジャイアント馬場か?」

山田「ガキ大将でジャイアン……子供向け漫画のキャラクターみたいな安直さですな」

朝日奈「アハハ、ジャイアンだって変な名前!」

苗木「いや、アダ名だと思うよ?」

石丸「のび太君は元々運動が苦手で、今もこんな所に閉じ込められますます野球が下手に
    なってしまうことを危惧している。このままでは帰ってからイジメられてしまうだろう!」

大神「成程。つまりはここに閉じ込められている間に特訓したいということか」

石丸「そうだ! のび太君がイジメられないように僕達は年長者として協力する義務がある!
    そしてのび太君は超高校級の野球選手である桑田君を指名したのだ。わかったか!」

石丸(昨日はのび太君達が困っていたのに僕は何の役にも立てなかった。みんなを
    まとめる風紀委員として、いや人生の先輩として余りにも不甲斐ない……)

石丸(これはチャンスなのだ! 今日ここで僕は名誉を挽回し汚名を返上するぞ!!)


熱い決意と共に石丸の真っ赤な瞳が狂気的に爛々と輝く。


桑田「冗談じゃねえよ! 俺の意思は無視か?!」

石丸「無視に決まっているだろう! 子供の希望を優先する!!」

桑田「やめてくれよ……俺は本当に野球が嫌いなんだって……!」




107: ◆takaJZRsBc 2018/01/14(日) 19:46:27.75 ID:vQefG67b0


石丸「いいや、駄目だ! 僕が羽交い締めにしてでも君を参加させるぞ!」

桑田「勘弁してくれってマジで……」

のび太「すごい……あのお兄さんほんとうに強い! 頼んで正解だったね」ボソ

ドラえもん「なんという押しの強さ……さすが超高校級の風紀委員だ」ボソ

ドラえもん(自分が正しいと思ったら周りの目を一切気にしない石丸くんのKYさがプラスに
       働いたね。でも桑田くんも相当頑固だからなぁ。すんなり行くといいけど)

桑田「イヤだっつってんだろ! 力ずくでってんならやってみろよ! ああ?!」バン!

石丸「君も往生際が悪いな! 良かろう、そこまで言うならみんなの意見を聞いてみようではないか!」

桑田「え」

石丸「民主主義の法理に則り、多数決で決めれば文句はないな! 僕の意見が正しい、
    のび太君のために桑田君は協力すべきと思う人は挙手してくれたまえ!」

セレス「あら、単独では厳しいと判断してこっちを巻き込む策に出ましたわね」

苗木「流石、石丸君。政治家を目指してるだけあるなぁ……」

不二咲「でも、確かにのび太君達の手助けはしてあげたいよね。……僕は役に立たないかもしれないけど」

江ノ島「どーでもいいし。つか桑田をさっさと協力させて終わらせない?」

大和田「だな。なーにくだらねぇ意地はってんだか」


桑田以外全員挙手。


桑田「な……な……」

石丸「どうだね? これが民意だ! さあ、潔く協力したまえ!!」




110: ◆takaJZRsBc 2018/01/14(日) 20:10:50.60 ID:vQefG67b0


桑田「くっそぉ……つかなんで十神までちゃっかり参加してんだよ?!
    普段はこういうこと一切参加しねえくせによー!」

十神「決まっている。奴の馬鹿でかい声は俺にとって最も堪えがたい騒音なのだ。
    それを黙らせることが出来るなら手の一つや二つくらい、いくらでも挙げてやる」ノ

腐川「アンタのせいで白夜様が精神に大ダメージ受けてんのよ! いい加減諦めなさいよ」ノ

桑田「う、ぐ……」

朝日奈「ねー、なんでそんなに嫌なの? ちょっと付き合うだけでいいからさ!」ノ

舞園「……私からもお願いします。のび太君のためだと思って」ノ

大和田「おい、昨日は見逃してやったが二度もガキの頼みをムゲにしやがったら
     俺がテメェをブッ転がしてやるからな。どうする、桑田? アア?!」ノ

桑田「クソ……クソ……」

霧切「ねえ、桑田君。さっきからずっと聞いていたけど、あなた何か野球をしたくない
    特別な理由があるんじゃないかしら。そこまで嫌がるなんて尋常じゃないわ」ノ

桑田「……別に。野球なんて泥くさくてダセースポーツはイケてる俺には合わねーってだけだし」

石丸「成程! そんなつまらない理由しかないなら君が拒否する権利はないな!!」

桑田「…………わかったよ。ほんとうに少しだけだからな」

のび太「お兄さん、ほんとう? ヤッター! ひさしぶりに野球ができるよ!」

ドラえもん「よかったね、のび太くーん!」

苗木「おめでとう! じゃあこれから頑張ろうね」

石丸「ウム! 努力はおしなべて美しい。僕は努力する者全員を応援するぞ!」

桑田「…………」




111: ◆takaJZRsBc 2018/01/14(日) 20:17:47.39 ID:vQefG67b0


  ― 体育館 ―


ワーワー!


のび太「うわーん!><」スカッ

大和田「おいおい……今のはスローボールってレベルじゃねえんだが」

江ノ島「さっきからカスリもしないじゃん。男ならちょっとは根性見せなよ」


人数が足りないので、試合形式ではなくバッティング練習を行っている。ピッチャーは大和田だ。


朝日奈「腰が入ってないよ! それにもっと早く振らなきゃ!」

大神「何事も基礎からしっかり修めるのが肝要だ」

石丸「フーム、まず筋トレからと行きたい所だが筋肉は一日二日では出来ないからな。
    ここは少しでも正しいフォームを体に覚えさせるべきだ。桑田君、出番だぞ!」

桑田「……あ? なにすりゃいいんだよ」

苗木「その、のび太君にお手本を見せてほしいな」

朝日奈「うん! フォームの勉強は基本だしね。あんたのを見せれば参考になるはず」

不二咲「ぼ、僕も参考にしよう」ボソボソ

桑田「……しょーがねー。やるか」スクッ

桑田(ボールにバット……久しぶりだな……)

ドラえもん「じゃあぼくたちはしばらく見学してるね!」

石丸「ウム、しっかり見ていたまえ。見て学ぶと書いて見学だからな!」




112: ◆takaJZRsBc 2018/01/14(日) 20:25:49.38 ID:vQefG67b0


大和田「よし! 桑田ほどじゃねえが俺だってそこそこ肩には自信があるんだ。行くぜ!」


シュッ、カキーン! ドカッ!


山田「あらら。瞬殺されちゃいましたね」

苗木「開幕いきなりで天井直撃ホームラン……」

大和田「…………」

大神「次は我が投げてみるか」


ドシュッ、カキーン!


朝日奈「すごい! さくらちゃんの剛速球を打ち返しちゃった!」

葉隠「オーガの球を打ち返すなんて、あの体のどこにそんなパワーがあるんだ」

セレス「そこまで大柄でもありませんし、さほど筋肉質には見えませんのにね」

霧切「テクニックよ。彼の動きには全く無駄がないもの」

桑田「……どーしたよ。なんなら次は俺が投げるか?」

石丸「よし、僕が打ってみせる!」

大神「あやつの球を捕れるのは我くらいだろう。全力で投げても良いぞ」

桑田「なら、遠慮しないぜ。うらっ!」


バシンッ!


石丸「……う。全く見えなかった」




113: ◆takaJZRsBc 2018/01/14(日) 20:31:31.10 ID:vQefG67b0


朝日奈「あたしもやるやる! 打ち返すのはムリでもバントくらいならなんとか……」


ドギュンッ!


大神「ぬおっ?! 今のは変化球と言う奴か。危うく捕り損ねる所だった……」

朝日奈「あっれー? カスリもしなかった。一応野球部も兼部してるんだけどなー。あちゃー」

大和田「リベンジだ! 今度こそ……」


バシンッ!


大和田「くっそ。マジで見えねぇ……」

葉隠「じゃあ、次は俺が……」


シュンッ! スカッ。


葉隠「無理だったべー」

江ノ島「そりゃそうでしょ」

桑田「オラオラー! どんどん行くぞぉっ! ハハハハハッ!」

苗木「凄いね、流石超高校級の野球選手って感じ。ねえ、舞園さん」

舞園「……そうですね」

山田「練習ゼロでこの実力とかもはや周囲を馬鹿にしてるレベルですな」

腐川「そのうえあの態度だものね……まあ、あたしは人のこと言えた義理じゃないでしょうけど」

霧切「…………」




114: ◆takaJZRsBc 2018/01/14(日) 20:44:29.43 ID:vQefG67b0


舞園(これほど恵まれた才能を持ちながら何故……何故、野球を軽んじるんですか?
    どんなに努力したってあなたのようになれない人はたくさんいるんですよ?)

舞園(そのうえ軽々しく芸能界を目指すとか、私の努力を馬鹿にしているんですか?
    野球で、才能で得た知名度を使って私が今まで死ぬほど苦労して手に入れた物と
    同じ物をあっさり手に入れるつもりなんですか?)

舞園(……そんなの、絶対に許せませんよ)

石丸「ハァハァ、彼は本当に何の努力もせずあの実力なのか? 全く天才と言う存在は
    本当に憎たらしいものだな……。さてのび太君、どうだね? 参考になったかな?」

のび太「……ごい」

苗木「のび太君?」

のび太「すごい! ほんとうにかっこいい!」

桑田「……え?」


のび太は桑田に駆け寄る。


のび太「すごいよ、桑田お兄さん!」

ドラえもん「うん、とってもかっこいいよ!」

桑田「……お、おう」

のび太「そんなにすごいのに、どうして野球がきらいなの?」

桑田「!」

のび太「野球をやってる時のお兄さんのかお、すごく楽しそうだったよ?」

ドラえもん「そうだよ! 本当は野球のこと好きなんでしょ? どうして嫌いなんて言うのさ」

桑田「ち、違う……俺は……」




115: ◆takaJZRsBc 2018/01/14(日) 20:54:40.80 ID:vQefG67b0


苗木「桑田君?」

桑田「お、俺は野球なんて好きじゃねええええええッ!!」

大和田「ハァ?」

江ノ島「なに言ってんの。さっきまでノリノリだったくせに」

桑田「うるせー! あー、もうヤメだヤメ! ったく、せっかく付き合ってやったってのによ!」

朝日奈「ちょっと」

葉隠「おい、桑田っち」

不二咲「ど、どうしたのぉ……?」


桑田の突然の豹変に周りはついていけないが、去り行く背中に向かってのび太は叫ぶ。


のび太「桑田お兄さんのうそつきっ!!」

一同「?!」

のび太「お兄さんは大うそつきだ! ぼくたちほんとうは知ってるんだよ! 前にろうかで
     ひとりごと言ってるのきいたんだから! ほんとうは野球がしたいんでしょ!」

桑田「な……!」

舞園「?!」

葉隠「え、ちょ、どんな流れなんだべ今?」

十神「全く愚民はよくわからんな」

セレス「あら、いたんですか? 運動に自信がなくて逃げ出したのかと」

十神「馬鹿を言うな。フン、それであいつらは何をするつもりだ?」




116: ◆takaJZRsBc 2018/01/14(日) 21:04:25.48 ID:vQefG67b0


山田「一体なにが始まるんです?」

大神「静かにするのだ! のび太は今大事な話をしようとしている」

ドラえもん「ごめんね、桑田くん。盗み聞きをするつもりはなかったんだけど、
       どうしても気になってしまって。何故きみは自分にウソをつくんだい?」

桑田「ち、違う! 俺は嘘なんか……」

のび太「じゃあなんで野球がしたいなんて言ってたの! だれもいないところで
     言ってたってことは、それがお兄さんのホンネなんでしょ!」

桑田「お、俺は……俺は……」

石丸「えーい! 男ならハッキリしたまえっ!! 嘘なのか本当なのか、どっちだ?!」

桑田「…………」


ゴクリと、誰かのノドが鳴った。


桑田「……だよ」

石丸「ん? 何だ? もっと大きな声で話したまえ」

桑田「……きだよ。好きだよ。……そーだよ! 俺は本当は野球が大好きだよ! 文句あるかあああっ!!」

苗木「いや、野球選手が野球好きで文句言う人なんていないと思うけど……」

大和田「アイツさっきからなんであんなにわーわー騒いでんだ?」

葉隠「まったくワケわからんべ」

セレス「それをこれから話すのではなくて? わたくしは興味ありませんけど」

桑田「うるせー! お前らに俺の気持ちなんてわかるかっ!!」




117: ◆takaJZRsBc 2018/01/14(日) 21:15:48.55 ID:vQefG67b0


大神「落ち着け、桑田。好きなら何故その気持ちを隠していたのだ? お主は
    誰もが認める超高校級の実力を持つ選手……嘘をつく理由などあるまい」

桑田「それがあるんだなー、これが」

石丸「何なのかね、その理由とは?」

桑田「俺が『天才』だからだよ!」


シィーーーーーン。


一同「…………」

ドラえもん「えーとね、桑田君……」

のび太「お兄さん、いくらなんでもそれは……」

桑田「ほら! そういう反応するだろ! だから俺は言いたくなかったんだって!!」

江ノ島「あんたさっきから言ってることメチャクチャじゃない?」

霧切「……順を追って話してくれないかしら」

苗木「あれ、霧切さんいつからそこに?!」

霧切「ずっといたわよ? 野球に夢中になってて気付いていなかったみたいだけど」

苗木(霧切さんの視線が痛い。印象が悪くなったようだ)

桑田「……俺はよ、ガキの時はとにかく野球一筋でさ、毎日朝から晩まで馬鹿みたいに
    グラウンド走り回ってたワケよ。いくら俺が天才っつったって、ガキの時からなんでも
    出来るワケじゃないだろ? だから上手くなりたくてひたすら練習してたんだよ」

石丸「そんなまっとうな少年が、何故今はこんな変わり果てた姿になってしまったのだ?」

桑田「かわり果てたって言うな! ……そうさ、俺もガキの時は他のヤツらとなんら
    変わらねぇ普通の球児だった。ただ違ったのは……俺は天才だったんだよ」




118: ◆takaJZRsBc 2018/01/14(日) 21:23:51.26 ID:vQefG67b0


舞園「…………」

江ノ島「自分で自分のこと天才天才言うのって恥ずかしくない?」

腐川「ほんと、恥ずかしい男ね!」

ドラえもん「ま、まあまあ!」

のび太「それで! なにがあったの?」

桑田「他のヤツらがさ、何年もやらなきゃ出来ないこと……下手したら一生かけても
    出来ないことを俺はスラスラ出来ちまったんだよ。そうしたらもうダメさ」

桑田「あんだけ楽しかった練習が苦痛にしか感じなくなっちまったんだ。だってそうだろ?
    俺は全部出来ちまうんだから! 他のヤツらが出来ない横で俺だけ出来るんだよ!」

石丸「し、しかし……基礎をしっかり修めるのは何事も重要ではないかね?」

桑田「じゃあ努力努力うるさいお前に聞くけどよ、石丸! お前、高校生なのにいつまで
    経っても小学生の問題やらされて納得出来んの? 文句言わずにやれるか?!」

石丸「それは……」

桑田「朝日奈! お前一週間バタ足だけやれって言われたらどうする?!」

朝日奈「え、それはさすがにイヤかも……」

桑田「俺にとっちゃそういうことなんだよ! だから俺は練習が嫌いなの!」

大神「ならば自分のレベルに合った練習方法を探せば良いのではないか?」

桑田「……そこがチームスポーツの難しい所なんだよ。個人スポーツなら練習内容とか
    ある程度融通きくけどさ、チームで一人だけ毎回別行動するワケいかねえだろ」

桑田「実際にさ、監督が俺だけ特別メニュー組んだこともあったけど、チームの目が厳しいんだよ。
    ああ、またアイツだけ特別扱いか。そうか、アイツは天才だもんなって陰で言われてさ……
    逆にムリして周りに合わせようとすると今度は手を抜いてるって叩かれたりするし」

葉隠「まあ、よくある話だな」ウンウン

苗木「桑田君……」




119: ◆takaJZRsBc 2018/01/14(日) 21:35:00.98 ID:vQefG67b0


桑田「だから! 俺は考えたの。野球嫌いなことにして先生や監督に頼まれて嫌々試合に
    出てるって形にすれば、練習は最低限で済む。陰口も聞かなくて済む!」

桑田「俺が練習は嫌いだからしないって言うとみんなお前らみたいな、ああこれだから
    天才はって顔するけど、野球が嫌いならそれも仕方ないって思ってもらえるだろ!」

舞園「…………」

霧切「もしかして、ミュージシャンを目指しているというのもそれに関係があるのかしら?」

桑田「ああ。音楽は昔から好きだし、野球ほど才能ないだろ? だから、すぐに上手くなったりは
    しないけどそのぶんいくら練習しても飽きねえし、上手すぎて陰口叩かれることもないしな」

苗木「……え?! ちょっと待ってよ! ミュージシャンを目指してるのは、
    美容院のお姉さんと付き合いたいからって前に言ってなかったっけ?!」

桑田「ああ、その話は半分本当で半分ウソだ。お姉さんとお付き合いしたいってのは本当。
    でもそのためにミュージシャン目指したってのはウソ。だってさ、いくらお付き合い
    したいからって、俳優だのミュージシャンだのそうコロコロなれるワケねーだろ」

苗木「えー、うっそーん……(信じてたのに)」ガーン

桑田「それに、ほら! 俺に努力とかなんか似合わないじゃん! 練習してなくてもいつのまにか
    出来てるって方が俺のキャラに合ってるし。だからマジで目指してたのは秘密だったんだよ!」

江ノ島「あんたねぇ……」

セレス「まあ桑田君ですから」

石丸「では君は……自分が才能があり尚且つ大好きなものを
    諦めようとしていたというのか。そんな……」

石丸(天才というものは皆等しく才能に胡座をかいている……その代表例かと思っていた桑田君が、
    こんな悲しい選択をして陰で努力をしていたなんて。一体僕は彼の何を見ていたのだ!)

ドラえもん「……そっか、そんないやなことがあったんだね」

桑田「そうさ。だから俺は野球が嫌いになったんだ。嫌いだって何度も自分に言い聞かせてたら
    本当に嫌いになった気がして……今は野球なんて嫌いで嫌いで仕方ねえんだよッ!!」




120: ◆takaJZRsBc 2018/01/14(日) 21:45:23.98 ID:vQefG67b0


ドラえもん「でも、本当は好きなんだろう? 好きなものをむりやり嫌いになるなんて
       そんな悲しいことはないよ。もうやめにしよう」

桑田「仕方ねえだろ! 他にどうすりゃいいって言うんだよ!!」

のび太「……ごめんなさい」

苗木「のび太君?」

桑田「なんだよ、突然……」

のび太「ぼくね、すごくうんどうオンチでしょ? だから、天才のお兄さんがうらやましくて
     しかたなかったんだ。練習しなくてもうまいなんてずるいってずっと思ってた」

桑田「…………」

のび太「でも、才能がありすぎるっていうのもとてもツライことなんだね」

のび太「ぼくのクラスにも、すごく出来の良い天才みたいな子がいるんだ。あたまが良くて
     野球やサッカーもとくいで、おまけに顔も性格もいいし。でも、ぼくたちはいつも
     その子をあそびにさそわないんだ。……たぶん、シットしてるからだとおもう」

桑田「…………」

のび太「ぼくたち、お兄さんのチームメイトの人たちとおんなじことをしてたんだね……
     いやな思いをさせてごめんなさい。こんどからはその子もさそってみるよ」

桑田「……そうしてやれよ。きっと、そいつも喜ぶぜ」


シーーーン……


葉隠(おーおー、どいつもこいつも若いったらねえな!)グスッ

山田(まさかリアルで青春アニメみたいな展開を見るとは……子供恐るべし!)グスン

十神「フン……」




121: ◆takaJZRsBc 2018/01/14(日) 21:56:13.99 ID:vQefG67b0


大神(のび太……)ジーン

大和田(チッ、あークソッ。ちょっと、涙腺にきちまったじゃねえか。あーヤベェ。上見よ、上)

ドラえもん(桑田くんだけじゃない……今回のことで、きみも成長したねのび太くん!)グスグス

腐川「何よ……ちょっといい空気じゃない……」グスッ

不二咲「いい話だねぇ」グスグス

舞園(…………)

石丸「う、ひぐっ、グスッ。ううう……」ボロボロ

苗木(なんか凄いしんみりしちゃったな。桑田君はただのうぬぼれてる嫌な人じゃなくて、
    ちゃんと理由があってああいう発言をしてたんだね……まあ元の性格もありそうだけど)

霧切(まだ終わりじゃないわ。桑田君の野球嫌いを完全に直してはいない。
    ここからが正念場よ。のび太君、あなたの手腕見させてもらうわ)

のび太「ねぇ、桑田お兄さん」

桑田「なんだよ……」

のび太「野球をおしえてくれないかな」

桑田「それは構わねえが……」

のび太「ぼくだけじゃない。みんなにもおしえてあげるのはどう?」

桑田「!」




122: ◆takaJZRsBc 2018/01/14(日) 22:12:52.28 ID:vQefG67b0


のび太「自分ができることをえんえんとやらされるから練習がきらいなんでしょ?」

のび太「なら、練習するんじゃなくてみんなにおしえてあげるのはどうだろう? 超高校級の
     野球選手がおしえてくれたら、きっとみんな今よりうまくなれると思うんだけどなぁ」

桑田「……教える、か。そうだな。それなら、練習ほど嫌じゃないかもな……思えば、
    みんな真剣にやってるのに俺だけ身が入ってないから嫌われたのもあるし」

桑田「とりあえず、のび太。お前には、その……ここにいる間は俺がお前の専属コーチに
    なってやるよ。なんつったっけ? ジャイアンツ? そいつにイジメられないように
    これからこの俺が徹底的にしごいてやるから、覚悟しやがれ!」

のび太「……ほんと? ヤッター! 超高校級の野球選手がぼくのせんぞくコーチだって!」

ドラえもん「よかったね、のび太くん!」

苗木「おめでとう、のび太君。折角だし、僕も一緒に教わろうかな?」

朝日奈「私も私もー!」

不二咲「ぼ……私も教わっていいのかな?」

葉隠「俺にも教えてくれ! そんでそれを本にまとめて今度売らせてくれ!」

石丸「素晴らしい! 友情とはなんと美しいのか! 今ここに世代を超えた友情が
    生まれた! その立ち会いが出来て僕は本当に光栄だ!」


わーわー!


舞園「…………」

舞園(もし私がこの中から誰かを殺すのなら、桑田君……ずっとそう思っていましたが……
    桑田君はやめにしましょう。別に、桑田君のためじゃないですよ?)

舞園(のび太君から野球のコーチを奪ってしまえば、またのび太君が
    イジメられてしまう……のび太君のためです。本当にそれだけです)




123: ◆takaJZRsBc 2018/01/14(日) 22:27:46.79 ID:vQefG67b0


江ノ島「あー、なんかよくわかんないけど一見落着、みたいな?」

山田「そう思うとなんだからお腹が減りましたな!」

セレス「紅茶のお代わりが欲しいですわ」

朝日奈「あ、じゃあみんなでドーナツ食べようよ!」

山田「いいですねぇ、行きますか」

桑田「おら、のび太! 構え方が違う! こうだ!」

のび太「こう?」

桑田「違う! もっと背筋を伸ばしてだな」

のび太「こうかな?」

桑田「そうだ! それで、下半身に力を入れて…」

大和田「おお、さっそくそれっぽいことやってんじゃねえか」

ドラえもん「頑張るんだよ、のび太くん!」

石丸「僕も付き合うぞ!」

苗木「僕も。ここを出る頃にはみんな野球が上手くなってたりして。フフ」

大和田「違えねえな! ワッハッハッ!」

桑田「よし、行けっのび太!」

のび太「そんなきゅうにはムリだよ~」


ワハハハハハ!!




124: ◆takaJZRsBc 2018/01/14(日) 22:36:09.84 ID:vQefG67b0


ここまで。


次回予告(あの曲でhttp://www.youtube.com/watch?v=nXRaS_vGUpg




ドラえもん「いやあ、無事に解決して何より!」

のび太「舞園さんも桑田さんのことを見直したみたいだしもう大丈夫だね!」

ドラえもん「よーし、念のためにタイムテレビで確認を……」

のび太「えっ?! 事件?! 被害者は……」

ドラえもん・のび太「腐川さん?!」


次回もお楽しみに!



127: ◆takaJZRsBc 2018/01/17(水) 22:07:39.65 ID:tukZbStW0



  第六話 舞園さんのゆめ


のび太「はぁー、疲れた」

ドラえもん「でも思いきり運動すると気持ちがいいだろう」

のび太「そうだね。早くぜんぶかいけつして、こんどは外でやりたいな」

ドラえもん「うん。とりあえず、桑田くんはやっと素直になれたし、みんなの桑田くんに
       対する見方も変わった。これで舞園さんも思い直してくれればいいけど」

のび太「ひるねしたいところだけど、まずはタイムテレビでかくにんしようか」


  ― 男子トイレ ―


のび太「もうすっかりここでタイムテレビを見るのがおなじみになっちゃったね」

ドラえもん「しかたないさ。それが一番効率がいいんだから。さて……」

のび太「あ、部屋の交換してない! やったよ! やっとふせげた!」

ドラえもん「待って! 次の日の様子も一応見ておかないと」

のび太「なにもおこってないといいけど」

ドラえもん「……静かだね」

のび太「あれ、どこにもだれもいないよ?」

ドラえもん「こ、これはまさか?! 地下を映してみよう!」


バーン!


のび太「が、学級裁判だー!」




128: ◆takaJZRsBc 2018/01/17(水) 22:14:55.33 ID:tukZbStW0


ドラえもん「そんな……」

のび太「し、しんだのはだれ? まさか桑田さん?」

ドラえもん「いや、桑田くんはいる。いないのは……」

のび太「腐川さんだ!」


腐川の席には赤い×印がついた腐川の遺影が置かれている。


ドラえもん「そんな、腐川さんが死んでいるなんて……原作と違うぞ!」

のび太「犯人はだれ?!」

ドラえもん「飛ばすね。もしかしたらと思うけど……」


苗木『犯人は舞園さん……君しかいないんだ』


ドラえもん・のび太「やっぱり舞園さんだー!!」

のび太「なに? なに? どういうこと? あきらめたんじゃなかったの?」

ドラえもん「……つまりこういうことだ! 舞園さんは桑田君をターゲットにするのはやめたけど、
       外に出ること自体はあきらめていないんだ! だから別の人を殺したんだよ!」


苗木『舞園さん……どうして腐川さんを殺したの……?』

舞園『……誰でも良かったんです。ただ、外に出たかった。いえ、出なければいけないんです!』

舞園『私にはこんな所にいる余裕なんてない! 私達アイドルは、いつも誰かに飽きられてしまう
    恐怖を抱いて働いている。……私がここにいる間も、私達は忘れられてしまうんです!』




129: ◆takaJZRsBc 2018/01/17(水) 22:24:58.65 ID:tukZbStW0


ドラえもん「なるほど。桑田くんだけが問題じゃない。舞園さんの外に出たいという気持ち……
       これをなんとかしない限り舞園さんによる殺人が必ず起こってしまうんだ!」

のび太「そんなぁ。どうすればいいのさ! 外に出たってなにもないよって
     つたえるいがいにあきらめてもらう方法なんてあるの?」

ドラえもん「これは……難関だな。外のことを教えるのが一番簡単だけど、もし今
       教えてしまえば舞園さんはおかしくなってしまうかもしれない……」

のび太「そんな……いったいどうすればいいんだろう……」


タイムテレビで舞園の自供を聞きながらドラえもんはふとあることに気がついた。


ドラえもん「うーん……ん?」

のび太「どうかしたの?」

ドラえもん「ちょっと気になることがあって……巻き戻すね」


舞園『私達アイドルは……アイドルというものは……アイドル……』


ドラえもん「舞園さん、やたらとアイドルって言葉を使ってるね」

のび太「そりゃそーだよ。なにせ超高校級のアイドルだもん」

ドラえもん「それにしても、なんだかこだわりかたが普通じゃないというか……
       なんていえばいいんだろう。うーん」

のび太「気になるならたしかめに行けば?」

ドラえもん「確かめるってどうやって……ハッ、そうか」



のび太「そう、タイムマシンさ!」




130: ◆takaJZRsBc 2018/01/17(水) 22:31:43.22 ID:tukZbStW0


  ― 八年前・根黒六中 ―


二人は苗木に出身中学を聞き、過去の根黒六中にやってきていた。


ドラえもん「舞園さんは高校二年生の時にスカウトされて二年間希望ヶ峰に
       通っていた。つまり本当の年齢は19歳。ここは八年前だから…」

のび太「ぼくとおなじ小学五年生のはずだね。苗木さんもいるのかな?」

ドラえもん「同じ中学に通ってたということは家が近いはずだから、探せば
       苗木くんもいるだろうね。でも今は舞園さんを探すのが先だよ」

のび太「どうやって探すの?」

ドラえもん「そりゃもちろん、たずねびとステッキ~!」パパラパッパパー

のび太「それ、あんまり当たらないんじゃなかったっけ?」

ドラえもん「的中率は70%だね」

のび太「うーん。葉隠さんの占いよりはマシか。でもなー」

ドラえもん「しょうがないだろ! おおまかな方向だけでもわかればめっけものだよ」


スッ、パタン。


ドラえもん「こっちだ!」

のび太「大丈夫かなぁ…?」


1時間後。がむしゃらに探しまわった二人は、とうとう買い物帰りの舞園を見つける。


ドラえもん「い、いた! あの子じゃない?!」




131: ◆takaJZRsBc 2018/01/17(水) 22:38:00.29 ID:tukZbStW0


のび太「ホントだ! 間違いないよ。うわぁ、かわいいな~」デレデレ

ドラえもん「スゴイ美少女だねぇ。うふふふ……ってこうしている場合じゃないや。
       舞園さんを追いかけるために、スパイ衛星~。ゴー!」

のび太「よし、あとはのんびり見ていればいいね。ぼくちょっとねてるからあとはまかせるよ」

ドラえもん「もう! しかたないなぁ。……まあ、今日はよく頑張ったからゆるしてあげるか」


二時間後。


のび太「ふぁ~あ、よく寝た。なにかうごきあった?」

ドラえもん「いや、なにもないよ。宿題をしたり、あとは歌や踊りの練習をしてたくらいかな」

のび太「はたからみたらぼくたちストーカーみたいだね……」

ドラえもん「……それは言わないでよ。ぼくも悪いなって思いながら見てるんだから」

のび太「それにしても、あれ……まだお母さんは帰ってきてないの?」

ドラえもん「最初はお買い物かと思ってたけど、よくよく考えたらお買い物は
       舞園さんが自分で行っていたし、共働きなんじゃないかな?」

のび太「あれ、なんかごはんのシタクしてない?」

ドラえもん「おうちのお手伝いをよくやっているんだ。えらいね」


その後、日が暮れても舞園の両親は帰って来なかった。


のび太「い、いくらなんでも遅すぎじゃない?! もうこんな時間だよ!」

ドラえもん「もしかして……舞園さん、お母さんがいないんじゃないかな?」

のび太「えっ?」




132: ◆takaJZRsBc 2018/01/17(水) 22:44:21.39 ID:tukZbStW0


ドラえもん「変だと思ったんだ。さっき舞園さんが取り込んでた洗濯物、舞園さんのを除いたら
       男の人の物しかなかったし。家事は全部舞園さんがやってるみたいなんだ」

のび太「そんな……じゃあ、お父さんがかえってくるまで毎日おそくまでひとりぼっちなの?」

ドラえもん「だろうね……あ、テレビを見てる。これは……」

のび太「歌番組だ。あ、アイドルが出てる!」

ドラえもん「食い入るように見てるね」

のび太「いっしょにうたいだした。このころからうたは上手だったんだね」


さやか『みんなかわいいな~。さやかもこんなキレイなお洋服を着て、にぎやかな舞台に立てば
     もう寂しくないのかな。さやかも寂しい子を勇気づけてあげられるのかな……』


ドラえもん・のび太「…………」


さやか『今日も頑張る! いつか絶対さやかもあそこに立って見せるんだから!』

さやか『……お父さん、まだかな。遅いな……』


のび太「うわぁ……」

ドラえもん「そうか、舞園さんは寂しい気持ちをアイドルへの憧れに変えて今まで
       ずっと一人で頑張ってきたんだ。だから、それが奪われそうになって
       パニックを起こしてしまった。それが殺人の本当の動機なんだ!」

のび太「じゃあ、もうさびしくなんかないよっておしえてあげればいいのかな?」

ドラえもん「うーん、それは違うと思うな。だって、舞園さんはもうアイドルになって
       しまったんだから、アイドルという存在自体に執着してると思う」

のび太「じゃあ、アイドルかんれんじゃなきゃとめられないってこと?」




133: ◆takaJZRsBc 2018/01/17(水) 22:50:48.08 ID:tukZbStW0


ドラえもん「そうだねぇ。でも、アイドルっていうのは支えてくれるファンあっての
       ものだから、あの密閉された空間で説得するのはかなり難しいぞ」

のび太「それでも、やるしかないよ。だって、ぼく舞園さんにひとごろしなんてして
     ほしくないもん。あんなさびしそうなかおしてる女の子、ほっとけないや」

ドラえもん「時間はあまりないけど、頑張ろう!」


  ― 現代・男子トイレ ―


のび太「とりあえず、時間はどのくらいあるの?」

ドラえもん「犯行をタイムテレビで見てみよう」

のび太「場所は倉庫か。時間は夜中の1時くらい……」

ドラえもん「犯行場所と相手が変わっただけで、手口は桑田くんの時と
       ほとんど変わってないね。メモで呼び出して包丁でグサリ」

のび太「こんなたんじゅんな手口じゃすぐ霧切さんたちにみやぶられちゃうのに……」

ドラえもん「マズイな……あと半日しかないぞ。まったく策が浮かばない」

のび太「よしっ、もう一回苗木お兄さんに相談に行こう!」

ドラえもん「ちょっと待って。ま、まさか苗木くんに舞園さんが
       殺人を企んでるなんて言うつもりじゃないだろうね?!」

のび太「うん、それがいちばんじゃない? 苗木さんならきっととめてくれるよ!」

ドラえもん「ダメだよ! ムチャだ!」

のび太「どうして!」

ドラえもん「多分だけど、苗木くんは舞園さんのことが好きなんだよ?! それなのに
       そんなこと伝えたら、頭が真っ白になってすぐに止めに行くよ!」

のび太「それでいいじゃない。それのなにがいけないのさ?」




134: ◆takaJZRsBc 2018/01/17(水) 22:56:44.59 ID:tukZbStW0


ドラえもん「いいかい? 誰にも知られていないはずの殺人計画を、よりによって一番
       知られたくない人に知られて、舞園さんはきっとパニックを起こすだろう?」

ドラえもん「舞園さんが素直にあきらめてくれればいいよ? でもパニックを起こして、
       万が一口封じに苗木くんに襲い掛かりでもしたら……」

のび太「あ、そうか……舞園さんはさいしょの時点で苗木さんをだましてるんだし
     ゼッタイないとはいいきれないか……」

ドラえもん「今の段階だと学級裁判の存在は知らされてないけど、どの道苗木くんを見捨てて
       一人で脱出するつもりだったんだからね。そのくらいアイドルが大事なのさ」

のび太「でもぼくたちだけで話してたってなにもいいかんがえがうかばないのはたしかだよ」

ドラえもん「そうだねぇ……じゃあ、舞園さんの件は秘密にして相談してみるか」

のび太「うん、なにもしないよりはマシだろうし……」


  ― 苗木の部屋 ―


苗木「やあ、いらっしゃい」

ドラえもん・のび太「おじゃまします……」

苗木「どうしたの? 憧れの桑田君から野球を教われて、さっきはあんなに
    楽しそうにしてたのに。……何かあったの? 僕で良ければ相談に乗るよ」

のび太「苗木お兄さんはやさしいなぁ」ジーン

ドラえもん「ちょっとその、また質問したいことがあって……」




135: ◆takaJZRsBc 2018/01/17(水) 23:02:25.01 ID:tukZbStW0


苗木「コロシアイを防ぐための案かな? いいよ、何でも聞いて。役に立てるかわからないけど」

のび太「えーっと……」チラッ

のび太(ぼくがはなすとよけいなことをいいそうだし、ドラえもんがはなしてよ)

ドラえもん(わかった、任せて)

ドラえもん「あくまで例えば、の話だよ? もし、もしも何か凄い大切なものがあって、
       そのために人を殺してもいいくらい思い詰めている人がいるとしたら、
       どうすればその人を止められると思う?」

苗木「うわ、また難問だなぁ。というか、君達随分難しいこと考えてるんだね……
    僕でもそんなこと考えたことないよ。ちょっと待ってね。今考えるから」


そう言うと、うんうん唸りながら苗木は考え始める。


苗木「……うーん、ありきたりかもしれないけど『どんな理由があったって、人を殺して
    叶えようとするなんて間違ってる』って言うかな。それが大事なものであればあるほど、
    そんな手段で守ろうとするなんて僕は間違ってると思うんだ」

のび太「なるほど」

ドラえもん「その好きなものに対しての冒涜だって説得するんだね」

苗木「うん。本当にそれが好きであればあるほど、人殺しの無意味さとか
    残酷さで説得しようとしても意味がないんじゃないかって思ったんだ」

ドラえもん(確かに。もう人を殺そうと決意してしまっている人に、単に
       人殺しはダメだなんて言っても通じないだろうしね……)




136: ◆takaJZRsBc 2018/01/17(水) 23:10:32.07 ID:tukZbStW0


のび太「サンコウになったんじゃないかな?」

ドラえもん「ありがとう、苗木くん」

苗木「いやいや、あんまり悩まないでね。僕達も事件が起こらないように頑張るから」


苗木の部屋を出る。


のび太「よし! あとはいつ話に行くかだね!」

霧切「誰に何を話すのかしら?」

ドラえもん・のび太「うわああああっ!」

ドラえもん「き、霧切さん……」

霧切「凄い驚きようね。何か人に聞かれてはまずいことでも話していたの?」

のび太「そ、そんなことないよ!」

のび太(あちゃー、まずい人につかまっちゃったよ……)

霧切「ここ……苗木君の部屋ね。何を話していたのかしら?」

ドラえもん「ちょっと、ね」

のび太「そ、そうだんを少し」

霧切「相談?」




137: ◆takaJZRsBc 2018/01/17(水) 23:19:51.73 ID:tukZbStW0


ドラえもん「の、のび太くん!」

のび太「あ……(しまった!)」

ドラえもん(くっ、ここで変にごまかしたら恐らく霧切さんにマークされてしまう。
       しかたない。正直に話してしまおう。今なら話してもまだ問題ないはず)

ドラえもん「今後のことを考えて、もし目の前で事件が起こりそうになったら、どうやって
       犯人を説得すればいいかって話してたんだよ。霧切さんならどう説得する?」

霧切「私? 私なら、そうね……間違った手段で何かを手に入れても結局そんな物は幻だということ。
    それどころか、自分が今まで手に入れた物全てを失う、ということを実話を交えて話すわ」

のび太「じつわをまじえて……」

ドラえもん(さすが霧切さんだ……)

ドラえもん「あ、ありがとう! でもそんな日が来ないのが一番だけどね!」

霧切「そうね。私も出来る限りそう動くわ。何か困ったことがあったら言ってちょうだい」

ドラえもん(あれ? なんか協力的? アニメだと終盤までずっとクールなのに)

のび太「じゃ、じゃあさよなら~」スタコラサッサ

霧切「…………」

霧切(庇ってもらった時のお礼を言うつもりだったのに、また言いそびれてしまったわね……)

霧切(あなた達は一体何者なの?)




148: ◆takaJZRsBc 2018/01/20(土) 20:18:57.04 ID:KqIBAhZ20



  第七話 アイドルにえがおを!


  ― 男子トイレ ―


のび太「あー、ビックリした。いきなり現れるんだもん」

ドラえもん「探偵だからね。なんとか上手くごまかせて良かったけど」

のび太「まあ、せっとくの方法はこんなかんじでいいんじゃないかな。
     もんだいはいつ舞園さんにいうかだよ!」

ドラえもん「事件前がいいんじゃないかな。犯行に向かう直前がいいと思う」

のび太「……そのときって包丁もってるよね……ぼくたち、さされないかな?」

ドラえもん「さすがに子供を刺すことはないと信じたいけど……
       念のために、何か秘密道具を使おうか」

のび太「そうして。やっぱり、こわいしさ……」

ドラえもん「じゃあ夜ごはんまでまだ時間があるし、いったん部屋に戻ろうか。
       そうだ! 昨日ドラミからもらったドラ焼きを一緒に食べよう」

のび太「いいね! 今日はたくさん運動したし、ぼくおなかへっちゃった!」

ドラえもん「いつも同じ部屋でお世話になってる大和田くん達にも分けてあげようね」



  ― 大和田の部屋 ―


大和田「お、なんだ。ドラ焼きか。俺にくれるのか?」

ドラえもん「うん、大和田くんにはいつもお世話になってるからね」




149: ◆takaJZRsBc 2018/01/20(土) 20:24:35.70 ID:KqIBAhZ20


大和田「おう、サンキューな!」

のび太「あ、ぜんぶ食べちゃダメだよ。あとで石丸さんにも持っていかないとダメだから」

大和田「……おー、そっかそっか。のび太はあいつと相部屋だったっけな。どうだ?
     あいつうるせえんじゃねえか? なんならお前も俺んトコにきていいんだぜ」

のび太「うーん、さいしょはうるさいと思ってたんだけど、もうなれちゃった。
     言ってることはうちのママとあんまりかわらないし。今のままでいいかな」

のび太(それにこのお兄さん、ジャイアンほどおうぼうじゃないけど
     ときどきすごくこわいからやっぱりあの人のままでいい……)

大和田「お袋に似てる、か。ハハハ、確かにいちいち口うるさいのは一緒だな!」


ドラ焼きとお茶を飲みながら世間話をする三人。


のび太「そういえば、ぼく大和田お兄さんのことあんまり知らないや。
     えっと、ボウソウゾクのお兄さんがいたんだっけ?」

ドラえもん「のび太くん!」

のび太「あっ……」

大和田「ああ? 前にその話したっけか? ……まあ、いいか。そうさ。俺には兄貴がいたんだ」

のび太(よかった。気がつかれなかった……)

大和田「強くて、男らしくて、弟の俺から見ても本当にかっけえ男だったよ」

ドラえもん「……だった?」

大和田「ああ、死んだんだ。事故でな」

ドラえもん・のび太「…………」




150: ◆takaJZRsBc 2018/01/20(土) 20:39:02.09 ID:KqIBAhZ20


大和田「この話はシメっぽくなっちまうからヤメだ。そうだ。代わりに俺と兄貴の武勇伝なら
     いくらでも聞かせてやるぜ! 二人で散々暴れて荒らしまくったからよぉ!」


その後、大和田による武勇伝が延々と続く。


大和田「どうだ? すげーだろ? のび太、オメェももう少し大きくなったらうちに来るか?」

ドラえもん「のび太くんにはムリだよ。怖がりで根性なしだもん」

のび太「ひどい! ……まあ、じぶんでもムリだとおもうけどさ」

大和田「じゃあ、ここから出たら俺の後ろに乗せてやるよ!」

のび太「わあー、ほんとう?!」

ドラえもん「いいなぁ!」

大和田「ドラえもんもだ。順番に乗せてやるよ。『男の約束』だ」

のび太「男のやくそく……」

大和田「あ、どうした?」

のび太「ねえ、お兄さん……もし、もしもだよ? その男のやくそくのために、じぶんの
     大切なもののためにだれかをころさなきゃいけなくなったらどうする?」

大和田「!! のび太、おめぇ……!」

ドラえもん「のび太くん! あ、ごめんね。ぼくたち、その……コロシアイを止めるには
       どうすればいいかってさっきからずっと話してて! 別に大和田くんが
       人を殺しそうとかそんなこと思ってるわけじゃないから! 本当に!」

大和田「…………」


しばらく大和田は腕を組んで考え込んでいた。




151: ◆takaJZRsBc 2018/01/20(土) 20:47:31.27 ID:KqIBAhZ20


大和田「……いや、いいんだ。確かに、このメンバーで一番殺りそうなヤツは
     間違いなく俺だろうしな。……ガキの前で言いたくはねぇが、正直今もブルってる」

ドラえもん「大和田くん……」

のび太「もしお兄さんがまちがえそうになったら、ぼくたちはなんていえばいい?
     なんて言えば、お兄さんはとまってくれる?」

大和田「あァ、そうだなぁ……そんな真似して、本当に兄貴が喜ぶと思ってんのか!
     目を覚ませ、大バカ野郎! とでも言ってくれや……そんな日が来ねえといいがな」

のび太「うん、ありがとう……へんなこときいちゃってごめんね」

大和田「……いや、いいんだ。気にすんな」


  ― 廊下 ―


ドラえもん「のび太くん、どうして突然あんなことを言い出したの?」

のび太「……ほら、あの人と大和田さんてにてるんじゃないかなって思って」

ドラえもん「似てる?」

ドラえもん「うん、だってほら……二人ともどうしても守りたいものがあるでしょ? そのために、
       さつじ……アレをしてしまうわけでしょ? だから、にてるんじゃないかなって」

ドラえもん「なるほど。まあ、一番参考になったかもしれないね」

のび太「あとは、時間まで待つだけだ…」




152: ◆takaJZRsBc 2018/01/20(土) 20:55:18.48 ID:KqIBAhZ20


 ― 倉庫 00:40 ―


ドラえもん「バレなかった?」

のび太「うん、石丸さんはときどきおそくまでべんきょうしてるけど、キホン的に
     12時前にはぜったいねる人だから。ドラえもんこそだいじょうぶだった?」

ドラえもん「うん、大和田くんは最初のうちは夜更かし型だったけど、
       毎日早起きするようになって今は割りと早く寝てるからね」

のび太「あとはぼくたちのセットクがつうじるか、だね」

ドラえもん「うん」


舞園が腐川の部屋の扉の下に入れたメモは読まれる前に取り寄せバックを使って外に押し出し、
偶然を装ってのび太が発見した。今は二人で舞園を説得しようとしているという体裁を取っている。


ドラえもん「……来た!」


二人は倉庫の影に隠れる。


舞園「…………」

のび太「舞園さん」

舞園「っ! の、のび太くん……?!」

ドラえもん「ぼくもいるよ」

舞園「ドラえもんさんまで……こんな時間に二人共どうしたんですか?
    夜時間に出歩くのは禁止されていますよ。ただでさえ危ないのに」

のび太「あぶなくなんてないよ。だれもさつじんなんてしないもん」

舞園「……そんなの、わからないじゃないですか」ソワソワ




153: ◆takaJZRsBc 2018/01/20(土) 21:07:34.21 ID:KqIBAhZ20


ドラえもん「誰か待ってるの?」

舞園「(ビクッ)い、いえ、そういう訳じゃ……」

のび太「腐川さんならこないよ」

舞園「?!!」

ドラえもん「このメモ……見覚えあるよね?」

のび太「ぼく、たまたま舞園さんが腐川さんのへやにこのメモをいれるの見ちゃったんだ。
     それで、わるいとおもったんだけど、ついきになって見ちゃった」


メモの内容は『私はあなたの秘密を知っています。話があるので今夜1時に一人で倉庫に
来てください』だ。舞園は別に腐川の秘密を知っている訳ではないが、適当に書いたことが
たまたま腐川にとって致命的な内容で、もしこのメモを読んだら無視出来なかったろう。


ドラえもん「どうして、こんな時間にこんな人気のない場所に腐川さんを呼び出したの?」

舞園「それは……二人っきりで話したいことがあったからですよ。
    女性同士でないと話せないことってあるじゃないですか」

のび太「それなら、ひるまにじぶんのへやで話せばいいじゃない」

舞園「こんな状況ですから、部屋に人を入れたりするのは抵抗があるんですよ。
    腐川さんも同じだと思います。だから外に呼び出したんです」

ドラえもん・のび太「…………」

のび太(あくまでシラをきるきだ!)

ドラえもん(しょうがない……この段階で諦めてもらえたら一番良かったんだけど……)

ドラえもん「じゃあ、その手に持ってる包丁はなんだ?!」

ドラえもん(本当はぼくたちの位置からは包丁は見えない。でも舞園さんは
       今すごく混乱してるから簡単に引っかかるはず……)

舞園「! これ、は……」




154: ◆takaJZRsBc 2018/01/20(土) 21:19:33.30 ID:KqIBAhZ20


のび太「もういいのがれできないよ! ほんとうは腐川さんをころそうとしたんでしょう!」

舞園「わた、し……」


カラン……


のび太「さつじんなんて、そんなバカなまねはやめてよ!」

ドラえもん「そうだよ! 舞園さんが人殺しになんてなったらぼくたちは悲しい!」

舞園「……じゃあ、どうすればいいんですか? 私は……諦められないんですよ……」

舞園「ずっと! ずっと頑張ってきたんです! 夢を見続けるためには、昼でも寝ていない
    時でも夢を見続けないといけない! そうしないと夢は消えてしまうんです!」

舞園「消えるのは夢だけじゃない……私も、私達も消えてしまう! 忘れさられて
    しまうんです! その気持ちが、恐怖があなた達にわかるんですか?!」

のび太「わかんないよ! ぼくたちアイドルじゃないもん!」

ドラえもん「いくら夢が大事でも、そのために人の命を奪っていいのか?!
       その人の夢はいったいどうなるんだ!」

舞園「……わかって、るんですよ……そんなこと、頭ではわかってるんです!」


ガッ!


ドラえもん(包丁を拾いなおした! いけない、ヤケを起こしてるぞ!!)

舞園「そうですよね……見られてしまったんです。子供だからって命は平等ですよね……」

のび太「舞園さん、ダメだよ!」




155: ◆takaJZRsBc 2018/01/20(土) 21:31:58.08 ID:KqIBAhZ20


ドラえもん「君にとって、アイドルはその程度の存在なの?!」

舞園「その程度? その程度ってどういうことですか?! 私は人殺しまで決意したのに?!」

ドラえもん「好きなものを人殺しで汚せるなんて、所詮その程度の存在なんだ!
       本当に好きだったら、そのために殺人なんて出来ないよ!」

舞園「……!」

のび太(効いてるぞ! 苗木さんにアドバイスを聞いておいてせいかいだった!)

のび太「そうだよ! アイドルが好きで、そのためにずっとがんばってきたんでしょ?
     なのにいまの舞園さんは、アイドルをいいわけにして外にでたがってるだけだよ!」

舞園「違う! 違う違う違う! 私は……!」

のび太「いいかげん目をさましてよ! そんな方法でかえってきて、ファンの人たちが
     ほんとうによろこぶと思ってるの?! 舞園お姉さんの大バカッ!!」

舞園「ファン……」

ドラえもん「ファンだけじゃない! ご家族とか友達とか、応援してくれた人がたくさん
       いたでしょ? これはその人たち全員に対する裏切り行為だよ!」

のび太「大好きな舞園お姉さんがひとごろしになるなんて、ぼくそんなのイヤだ!!」

舞園「みんな……お父さん……」


舞園の脳裏に様々な記憶が蘇る。


さやか『お父さんお父さん! さやか、オーディションに受かったよ!』

舞園父『凄いじゃないか! 流石お父さんの子だ!』

さやか『いつか日本一のアイドルになってみせるからね! ファンクラブの会員1号はお父さんだよ!』

舞園父『ハハハッ、それは嬉しいな。期待してるよ、さやか!』




156: ◆takaJZRsBc 2018/01/20(土) 21:40:22.89 ID:KqIBAhZ20



希望ヶ峰スカウト時。


舞園『私一人だけ行くなんて出来ません……私達は全員で一つのグループです。
    なのに、私だけスカウトなんて……』

メンバー『なに言ってんのよ! さやかの歌あっての私達なんだよ!』

メンバー『さやちゃんのおかげで私達はここまで来れた。本当に感謝してる!』

メンバー『遠慮なんかしないで行ってきなよ! おめでとう、さやか!』

舞園『みんな、ありがとう……』


舞園「う、うう……」ポロポロ


舞園の手が震える。涙が溢れる。


舞園「でもっでも、私はっ! 戻らないと、帰らないと……!!」

のび太「人殺しになんてなったら、もうみんなのもとへは帰れないよ!!」

ドラえもん「みんなでここから出よう! みんなで帰るんだ!!」

のび太「お姉さんっ!!」

ドラえもん「舞園さんっ!!」

のび太「ぼくたちを信じて!!!」




157: ◆takaJZRsBc 2018/01/20(土) 21:51:11.59 ID:KqIBAhZ20




舞園父『お前は父さんの誇りだ、さやか。ただでさえ仕事が忙しいのに寮生活になると寂しいが、
     さやかのためならお父さんは平気だ。行ってきなさい。無理だけはするんじゃないぞ』

舞園父『……体だけは、本当に本当に大事にしてくれ。行ってらっしゃい――』



舞園「うわあああああああああああああああああんっ!!」ボロボロボロ…


カランカラン……


舞園「ごめんなさい……ごめんなさい……」

ドラえもん「じゃあ、舞園さん。もう人殺しなんて馬鹿な真似はやめてくれるね?」

舞園「……はい。私が馬鹿でした……私、みんなのことを忘れて……危うく裏切ってしまう所でした……」

のび太「……ある人がいってたよ。まちがった方法でてにいれたものは、しょせんまぼろし
     なんだって。しかも、今までもっていたものまでぜんぶなくしてしまうんだ」

舞園「私も、なくしてしまう所でした。いえ、もうなくしたんです!
    人を殺そうとした私には、もうアイドルの資格なんてないんだから……」

ドラえもん「…………」

舞園「……明日の朝、全部みなさんに報告します」

のび太「そんなことしたらただじゃすまないよ! だまっていればいいじゃない!
     ぼくたちもこのことはヒミツにするからさ!」

舞園「ダメなんです。私達のやりとり……全てモノクマに見られています。
    下手に隠し立てすれば、きっと最悪の形で暴露してくるはずです」

のび太「そんな……」




158: ◆takaJZRsBc 2018/01/20(土) 22:01:18.90 ID:KqIBAhZ20


舞園「ありがとう。のび太くん、ドラえもんさん。あなた達のおかげで、
    私は取り返しのつかないことをしないで済みました……」

舞園「失ってしまったものは大きいかもしれないけど……でも、これで良かったんです……」

ドラえもん「舞園さん……」

ドラえもん(仕方なかったんだ……犯行前に説得するのは不可能だったし。
       事件は食い止められたんだから、それでよしと思わなくちゃ……)

のび太「…………」

舞園「…………」

のび太「……舞園さん、わらってよ」

ドラえもん「のび太くん?」

舞園「笑う? どうして……」

のび太「ぼくもお姉さんのファンだからわかるけど、ファンは舞園さんのえがおが見たいんだよ。
     たしかに、こんなことがあったらファンのなんにんかはいなくなっちゃうかもしれない……」

のび太「でも、ぼくたちはこれからもずっと舞園さんのファンだから」

のび太「だから――わらってよ!!」

舞園「うう……うううう……」


ボタボタと涙を流しながらも、舞園は微笑んだ。




159: ◆takaJZRsBc 2018/01/20(土) 22:11:32.19 ID:KqIBAhZ20


舞園「…………はい」ニコッ

ドラえもん「うん、キレイだよ」

のび太「やっぱり、舞園お姉さんはえがおがいちばんかわいいや!」

舞園「ありがとう、ございます……」

舞園(私はバカだった……舞台になんて立たなくても、スポットライトがなくても、
    私の笑顔で喜ぶ人がいるなら、私はその人達のアイドルになれるんだから……)

舞園「あなた達に会えて本当に良かった……」

ドラえもん「なにか言った?」

舞園「いえ! なんでもないです」

のび太「ふぁ~、きがぬけたらねむくなっちゃった……」

ドラえもん「もう夜も遅いからねぇ。あ、ここで寝たらダメだよ! ほら、頑張って」

舞園「ふふ、私がお部屋まで連れて行ってあげます」

のび太「むにゃむにゃ、ねむいよ~」




  ― ??? ―


「ねぇ、どうするの?」

「なにが?」

「せっかく事件が起こりそうだったのに防がれちゃったよ。そろそろ彼女を使う?」

「姉さんは本当に残念ですね。私様はただ人が死ねば良いのではないのです。通常なら到底
 殺人など起こさない人間が葛藤の末に自主的に人を殺し絶望する。その姿が見たいのです」

「人質を取られて泣く泣く殺すとかそういうお涙頂戴は最終手段なんだよ!
 幸い、舞園が動いたってことは他の奴らもだいぶ精神的に来てるはず」

「多分、もう一つ動機を落とせば事件が起こるんじゃないかな~。うぷぷ。うぷぷ。うぷぷぷぷ!!」




163: ◆takaJZRsBc 2018/01/27(土) 20:40:13.18 ID:ZA+kMaR80



  第七話 お兄さんとのやくそく(前編)


  ― 食堂 ―


苗木「舞園さん……今の話、本当……?」

舞園「全て、本当の話です」

山田「ひえええええ! とうとう事件が起こってしまうとは……!」

石丸「な、何故だ! 何故そんな馬鹿なことを……!」

舞園「私、実はあのDVDを見てしまったんです。それで、ここから出なきゃ……
    帰らなきゃって、強く思って……馬鹿なことを考えました」

桑田「え、う、ウソだろ……よりによって舞園ちゃんがさぁ……」

十神「他ならぬ本人が認めているのに嘘も何もないだろう。それで、何故犯行をやめた?」

舞園「見られていたんです。私が腐川さんの部屋に呼び出しのメモを挟んだのを」

腐川「あ、あ、あたしぃっ?! あんた……あ、あたしを殺すつもりだったの?!
    こ、これだから美人は信用出来ないのよ! この鬼、悪魔、アバズレ!」

桑田「お、おい! 一応殺すのやめたんだし、そういう言い方は……」

舞園「いいんです」

桑田「でもよ……」

舞園「私、桑田君に庇ってもらう資格なんてないんです。だって……
    私が最初に殺そうと思った相手はあなたなんですよ?」

桑田「えっ?!!」




164: ◆takaJZRsBc 2018/01/27(土) 20:54:43.47 ID:ZA+kMaR80


舞園「桑田君の野球に対する複雑な気持ちを知るまで、私はあなたのことが
    大嫌いだったんです。思い上がりも甚だしい、嫌な人だと思ってました」

桑田「…………」

舞園「勿論今は本心を知っているのでそんなことは思っていませんが、
    私が桑田君に庇ってもらう資格なんてありません」

セレス「腐川さんを狙ったのは何故ですの?」

舞園「特に理由はありません。あまり親しくないのと、一番殺せそうだから。それだけです」

腐川「そ、そんな理由で人を殺そうとした訳?! グギギギ!」

十神「で、この女はどうする? 無罪放免とはいくまい」

葉隠「殺人犯をほっとくわけにはいかねえよなぁ」

苗木「……しばらく部屋に謹慎、でどうかな。鍵は僕らで預かって交代で監視すればいいでしょ?」

腐川「それだけじゃ甘いわよ! 椅子に縛りつけないと!」

江ノ島「そうだよ! また誰かを殺そうとするかもしれないじゃん!」

のび太「ひどいことはしないで!」

ドラえもん「舞園さんは改心したんだ! もう人殺しなんてしないよ!」

朝日奈「謹慎でいいんじゃない? 正直に言ってくれたんだし、あんまり厳しいのはちょっと……」

不二咲「そうだよ。舞園さんを信じてあげたいな」

大神「我が見張ろう。ならば文句はあるまい」

霧切「交代で見張ればいいと思うわ」


腐川はまだ何か言いたそうであったが、舞園はしばらく謹慎という処遇になった。




165: ◆takaJZRsBc 2018/01/27(土) 21:10:49.83 ID:ZA+kMaR80



  ― 男子トイレ ―


ドラえもん「では、例によっていつもの」

のび太「さくせんタイムだね!」

ドラえもん「一つ目の事件は無事防げたわけだけど、これによって未来が変わったからね。
       次はアニメ通りにいかないかもしれないよ。気をつけよう」

のび太「とりあえずアニメだと次はどうなってたっけ。えーっと……そうだ。大和田さんだ!」

ドラえもん「ハァ、今から胃が痛いよ」

のび太「そっか。ドラえもんはおなじへやだもんね……」

ドラえもん「確かにさぁ、ちょっと短気なところはあるし横暴なところもあるけど
       いいところもたくさんあるんだよ」

のび太「おうぼうっていってもジャイアンにくらべたらぜんぜんいい人だしね」

ドラえもん「……まあ、ジャイアンに比べたら大体の人はいい人だけど」


この二人はジャイアンのおかげでだいぶ感覚が狂っている。


のび太「それに不二咲さんを助けないと! あんなしにかたは二人ともかわいそうすぎる……」

ドラえもん「うん、絶対に止めないと。さて、タイムテレビ~」

のび太「まず動機だよね」

ドラえもん「そう。……あ、あと今思い出したけどもう一つ気をつけることがあった」

のび太「なに?」

ドラえもん「大神さんだよ」




166: ◆takaJZRsBc 2018/01/27(土) 21:19:47.61 ID:ZA+kMaR80


のび太「え、なんで? すごくいい人じゃない?」

ドラえもん「も~う、忘れちゃったの? 大神さんは内通者だったじゃない!」

のび太「あ、そうだった」

ドラえもん「アニメでは事件が起こったから大神さんが誰かを殺すことはなかったけど、ここでは
       ぼくらが事件を食い止めちゃったから、大神さんが動く可能性があるんだよ」

のび太「そっか……気をつけないと……」

ドラえもん「黒幕がどうするかだよなぁ。向こうの動きを知れたらいいんだけど……」

のび太「ねぇ」

ドラえもん「なんだい?」

のび太「タイムテレビで見てみればいいんじゃないの?」

ドラえもん「」

のび太「……ドラえもん?」

ドラえもん「あ」

のび太「…………」

ドラえもん「……それもそうだね」

のび太「もう! ドラえもんってへんなところでヌケてるんだから!」

ドラえもん「よし! じゃあぼくらが事件を食い止めたあたりを見てみよう」


<タイムテレビ視聴中>


ドラえもん「今回は内通者を使わないみたいだね」

のび太「でも、そのつぎはたぶん大神さんみたいだよ……どうすればいいかな?」




167: ◆takaJZRsBc 2018/01/27(土) 21:30:00.90 ID:ZA+kMaR80


ドラえもん「それはその時考えればいいよ。とにかく、今は大和田くんをなんとかしないと!」

のび太「やっぱり殺しちゃうのかな……」

ドラえもん「見てみよう」


不二咲『大和田君は本当に強い人だもんね!』

大和田『……俺が強い? そいつは皮肉かよ?』

大和田『そうさ……お、俺は強い。強い強い強い強い強い強い! 誰よりも!!』

不二咲『大和田、君?』

大和田『お前よりも! 兄貴よりもだああああああああああッ!!!!!』


ドラえもん「見ちゃダメだ!」

のび太「消して!」


ゴシュッ! ……ピッ。


ドラえもん「消したからもう大丈夫だよ」

のび太「……ハァ。きっとすごくいたかっただろうなぁ。きぶんがわるい……」

ドラえもん「ぼくもだよ……あんまり過ぎる」

のび太「でもさぁ、今回のジケンはかんたんにふせげるんじゃないかな?」

ドラえもん「大和田くんのお兄さんが亡くなったっていう例の事故だね」

のび太「うん。あのジコをぼくらがとめてお兄さんのお兄さんをたすけちゃえばいいんだよ!」

ドラえもん「そうだね。じゃあ、思い立ったら即実行というわけで、行きますか」

のび太「タイムマシンだ!」




168: ◆takaJZRsBc 2018/01/27(土) 21:43:00.05 ID:ZA+kMaR80


  ― 三年前 ―


ドラえもん「さて、準備をしないとね。タケコプター」

のび太「タケコプターと透明マントだけでいいかな」

ドラえもん「いいかい? 大和田君が反対車線に飛び出したらきみは右側から思いっきり
       引っ張って道路から出す。ぼくはお兄さんが飛び出ないように押さえる」

のび太「うまくいくかな……」

ドラえもん「心配ならクイックを飲んで動きを早くしておこう。大丈夫、きっと上手くいくよ」


真夜中、とある道路の上空。


のび太「いた! あれじゃない?!」

ドラえもん「急ごう!」


             ・

             ・

             ・


ブオオオブロロロロロロ……


大亜(……紋土のヤツ、焦ってるのかいつもより走りが荒いな。無茶しねぇといいが)

大和田(クソッ! 俺はまた兄貴に勝てねぇのか! 俺は結局兄貴の金魚のフンかよ。畜生……)

大和田(こうなったら……!)




169: ◆takaJZRsBc 2018/01/27(土) 21:53:43.91 ID:ZA+kMaR80


バッ!


大亜「! 馬鹿ッ!」

のび太「今だ!」

ドラえもん「それっ!」


グイィッ!


大和田「うおっ!」

大亜「なんだッ?!(何かが俺を掴んで……?!)」


プップー! ドッシャアアアッ!


大亜「紋土ォオオオオッ!」


ブロロロロロ……キィィ! ガシャン! ダダダダダッ!

大亜は急転換すると道路脇に突っ込んだ大和田の側にバイクを乗り捨て慌てて駆け寄る。


大亜「大丈夫か?! 怪我はねぇなッ?!」

大和田「あ、ああ。大丈夫だ……」

大亜「馬鹿野郎ッ! 勝ちを焦って対向車線に飛び出す馬鹿があるかッ!」

大和田「(ビクッ)すまねぇ、兄貴……」

大亜「……まあ、無事で何よりだ」

大和田「勝負は……」




170: ◆takaJZRsBc 2018/01/27(土) 22:02:58.93 ID:ZA+kMaR80


大亜「こんな状態で勝負もねえだろ。今日は終いだ」

大和田「でも……」

大亜「帰るぞ」

大和田「…………」


二人が去ってから透明マントを脱いで姿を現す二人。


ドラえもん「なんとか上手くいったみたいだね」

のび太「あー良かった。じゃあ、さっさと戻ろうか」

ドラえもん「うん」


             ・

             ・

             ・


のび太「これからどうしようか?」

ドラえもん「そうだ。舞園さんに会いに行ってみようよ」


舞園の部屋の前には苗木と大神が立っていた。


大神「ム、ドラえもんとのび太か」

苗木「どうしたの、二人共?」




171: ◆takaJZRsBc 2018/01/27(土) 22:11:35.23 ID:ZA+kMaR80


ドラえもん「ちょっと、舞園さんの様子が気になって」

のび太「はなしてもいい?」

苗木「いいよ」

ドラえもん「苗木くんも一緒にどう?」

苗木「えっと、ぼくは……」チラ

大神「構わぬぞ。元々見張りは我一人で十分だろうしな」

苗木「ありがとう、大神さん」スッ、カチャ

のび太「おじゃましまーす」

舞園「あ、のび太君にドラえもんさん、苗木君も。何かあったんですか?」

のび太「ううん、そういうわけじゃないんだけど」

ドラえもん「様子を見に来たんだ。大丈夫?」

舞園「心配して来てくれたんですね。ありがとうございます!」

苗木「ずっと部屋に篭りっきりだと気も滅入るでしょ? 僕達が話相手になるよ」

舞園「私のせいなのに……気を遣わせてしまってすみません……」

苗木「舞園さんのせいじゃないよ! 全部モノクマが悪いんだ。舞園さんは思いとどまったんだから」

舞園「……いいえ。自分でやめたんじゃなくて、そこのお二人のおかげです。
    もしのび太君達がいなかったら、私は取り返しのつかないことをしていました……」

苗木「舞園さん……」

舞園「そうだ! お礼をさせてもらってもいいですか?」

のび太「え、なになに??」

ドラえもん「こら、のび太くん! お礼なんていらないよ。好きでやったことなんだし」




172: ◆takaJZRsBc 2018/01/27(土) 22:19:57.66 ID:ZA+kMaR80


舞園「でもそれでは私の気が済まないので……そもそもこんなものがお礼になるのか
    わからないですけど、どうかお二人のために歌わせてくれませんか?」

のび太「え?! ぼくたちのためにトップアイドルの舞園さんがうたってくれるの?!」

舞園「はい。お二人のためだけの、舞園さやかファイナルステージです」

苗木「あ、僕ジャマかな?」アハハ

舞園「苗木君はいいんです。いつもお世話になってるので」

ドラえもん「でも舞園さん、ファイナルって……」

舞園「……アイドルとして歌うのはこれが最後です」

のび太「舞園お姉さん……」

苗木「本当にいいの、舞園さん? アイドルは舞園さんの子供の頃からの夢じゃ……」

舞園「そうです、人生を懸けてきた大切な大切な夢です……でも、だからといって
    人殺しをしてまで守るのは間違ってます。二人はそれを気付かせてくれました」

舞園「だから、アイドルとして歌うのはこれが最後……でも、舞園さやかとして
    歌うのはこれからも変わらないので、みなさん聞いてくれませんか?」

のび太「うん、ききたい!」

苗木「舞園さん……」

ドラえもん(切ないなぁ……まあ、脱出しても結局アイドルは諦めざるを得ないから
        早めに覚悟できたのは良かったのかもしれないけど。悲しいね……)

舞園「それでは歌います」


三人の拍手の中、舞園は力の限りパフォーマンスをした。
その最高の舞台が終わると同時に、校内放送が流れる。




173: ◆takaJZRsBc 2018/01/27(土) 22:27:31.49 ID:ZA+kMaR80



モノクマ『校内放送、校内放送! 生徒諸君はただちに体育館に集合して下さい。
      エマージェンシーエマージェンシー……』


苗木「ま、まただ!」

舞園「……そんな、まさかまた恐ろしい何かを配る気なんですか?」

ドラえもん・のび太「…………」←わかっているので冷静


ガチャッ。


大神「今の放送、聞こえたか?」

苗木「あ、大神さん。舞園さんは……」

のび太「たぶんぼくたちみんなをよんでるから、つれていったほうがいいよ」

大神「我も同感だ」

苗木「そうか……じゃあ、行こう。みんな」


  ― 体育館 ―


腐川「こ、今度は一体なんだって言うの?!」

山田「まさかまたなにか妙なことが起きるのでは?!」

石丸「ふ、腐川君に山田君! ここここんな時は落ち着いてだな!」

桑田「おめーがまず落ち着けよ」

のび太「どうせまたあたらしいドウキじゃないの?」

ドラえもん「ぼくもそう思うよ」

大和田「ガキの方が落ち着いてやがる……」

葉隠「きっと最近の子供はゲーム脳なんだべ」




174: ◆takaJZRsBc 2018/01/27(土) 22:40:15.99 ID:ZA+kMaR80


十神「さて、今度はどんな動機を持ってくるのやら」フッ

モノクマ「はいはーい。みなさんお待たせー!」

苗木「待ってなんていない! 僕達を呼び出して一体なんの用だ!」

モノクマ「もーお、苗木君たら短気なんだから。じゃあ行っちゃう? 行っちゃう?」

モノクマ「昨晩いよいよ事件が起こりかけたようですね? その時は邪魔が入ったようだけど、
      オマエラの中には外に出たい気持ちが見え見え隠れ、見え隠れ。むしろ丸見えな訳だ」

モノクマ「なので、僕はその気持ちを後押ししてあげようと思います!」スッ

霧切「今度こそコロシアイを起こすために、もう一度動機を配るということね」

山田「今回は封筒ですか」

朝日奈「また私達の名前が書いてあるよ!」

モノクマ「あ、そーれ」バサッ


宙にバラまかれるそれぞれの封筒。


モノクマ「今回のテーマは恥ずかしい過去や誰にも知られたくない秘密です。
      今から24時間以内に事件が起こらなければ、この秘密を世間に大公開ー!」


ナ、ナンデコレガー?!
キャーウソデショー?!
アリエネー!


のび太「ぼくたちのぶんはないの?」

モノクマ「君達は元々の生徒じゃないからね。まあラッキーだと思えば?」

ドラえもん「そもそものび太くんは知られて困る秘密なんて元々ないじゃないか。テストで
        いつも0点なのも運動がびりっけつなのも周知の事実だし、趣味が昼寝、
        特技があやとりで女の子みたいだとかも別に隠してないだろう?」




175: ◆takaJZRsBc 2018/01/27(土) 22:48:41.24 ID:ZA+kMaR80


のび太「そ、そうだけどさぁ……」

モノクマ「……君さぁ、若いんだからもうちょっと頑張れば? なんかもう色々と酷すぎて……」

のび太「モノクマに心配されたー!」ガーン

山田「まあ、その……ガンバ!」

セレス「あなたも人のことは言えませんが」

ドラえもん(そういえば死んでた組の動機は知らないんだった。あの二人なら
       大丈夫だと思うけど、念のために確認しておこうかな)チラ

ドラえもん「ん?」

大和田「…………」ワナワナ

ドラえもん「あれ……?」

石丸「み、みんな聞いてくれ! こんなものがあるからコロシアイなど起きるのだ!
    ならば今ここで先に言ってしまおうと思うのだが……」

苗木「いいね、そうしようよ!」

朝日奈「私も賛成。恥ずかしいけど仕方ないし」

桑田「え~マジかよ?」

大神「やむを得んだろう」

石丸「では、言い出しっぺである僕から……」

モノクマ「…………」スッ

江ノ島「(あ、合図だ!) もう耐えられない! アタシ、もうこんな生活イヤなんだけど!!」

苗木「江ノ島さん?」

大神「急にどうしたのだ、江ノ島?」




176: ◆takaJZRsBc 2018/01/27(土) 23:00:28.74 ID:ZA+kMaR80


江ノ島「モノクマだか学園長だか知らないけど、いい加減にしてくんない?」

江ノ島「アタシはもうイヤだから! もう呼び出しとかかけられても来ないし
     コロシアイとかなんとかはあんた達だけで勝手にやってよ!」

モノクマ「そんな勝手は許さないぞ! どうしてもと言うなら僕を倒して行け!」

のび太「あれ?(この流れどこかで見たような……)」

ドラえもん(た、大変だ! 予定が変わったんだ! ニセの江ノ島さんが殺されちゃう!)

ドラえもん「ま、まあまあ落ち着いてよ!」

のび太「そ、そうだよ! さからったらころされちゃうよ!」

江ノ島「ハ? なによ、あんた達……邪魔なんだけど! どきなさいよ!」

のび太「そういうわけには」ガシッ

ドラえもん「いきませんよ」ガシッ

江ノ島「ちょ……なにやってんの?! アタシはあのウザいヤツに一発くらわせなきゃ……」

のび太「お、大神さん! たすけて~!」

大神「ム! 江ノ島お主、モノクマに攻撃するつもりだったのか?!」

江ノ島「え? だって一発くらい平気っしょ? こっちだって不満が溜まってるんだし」

霧切「賢明な行動とは言えないわね。初日の爆発を見ているでしょう?
    モノクマにとって私達を殺すのは容易いことなのよ?」

江ノ島「……とにかく! それじゃアタシの気がすまないっての!」バッ

ドラえもん・のび太「ああっ!」

舞園「! 江ノ島さん、いけません!」

苗木「危ないっ!」




177: ◆takaJZRsBc 2018/01/27(土) 23:07:39.87 ID:ZA+kMaR80



全員の制止の声も聞かずにモノクマを踏み付ける江ノ島。


モノクマ「ムギュッ!」

江ノ島「フン、ほらたいしたことないじゃない。いい気味だわ!」

モノクマ「学園長に対する暴力は校則違反だよ! 助けて~グングニルの槍~!!」


カシャッ。


江ノ島「え」

大神「いかんっ!」


バッ! バシュバシュバシュバシュッ!


複数の槍が一瞬前まで江ノ島のいた所を貫く。


江ノ島「う、うそ……なによこれ……」

朝日奈「さくらちゃん! 江ノ島ちゃん!」

苗木「江ノ島さん! 大神さん! 怪我は?!」

のび太「だいじょうぶ?!」

大神「我は掠っただけだ。江ノ島よ、お主は無事か?」

江ノ島「…………」パクパク

霧切「大丈夫、ショックで放心しているけど怪我はないわ」




178: ◆takaJZRsBc 2018/01/27(土) 23:14:04.78 ID:ZA+kMaR80


葉隠「ひ、ひぃぃぃ! もしオーガが助けてなきゃ、江ノ島っちは今頃串刺しに……」

腐川「なんなのよ……なんなのよぉぉぉ?!」

モノクマ(あー、邪魔な残姉消すの失敗しちゃったなー。まあでもみせしめって
      意味なら成功してるからいいか。あいつら超ビビってるみたいだし)

モノクマ「今回は運が良かったね! でも次はないから。オマエラも気をつけるように!」

桑田「マジかよ……」

苗木「……とりあえず二人が無事で良かった」

石丸「向こうはどうやら本気のようだな……やはり秘密を告白してここは事件防止をした方が……」

大和田「待てよ!! どうせ明日には言うんだろ? なら、今言う必要はねえじゃねーか」

不二咲「う、うん。石丸君には悪いけど、ちょっと心の準備がほしいかな……」

腐川「そ、そうよそうよ! あんたにはデリカシーってもんがないの?!」

石丸「しかし、コロシアイを防ぐためには……!」

十神「まだわからんのか? 無理やりやらせても今度はそれが火種になるだけということに」

霧切「あなたは公開しても問題ない秘密なのかもしれない。でも他の人がそうだとは限らないのよ」

石丸「ヌゥゥ! ……わかった。それもそうだな。では明日言おう。とりあえず解散だ」


ゾロゾロ……


ドラえもん「のび太くん」

のび太「どうしたの、ドラえもん?」

ドラえもん「ちょっと……」




179: ◆takaJZRsBc 2018/01/27(土) 23:22:43.07 ID:ZA+kMaR80



  ― 男子トイレ ―


のび太「大和田さんのお兄さんもたすけたし、江ノ島さんもたすけた。なにかもんだいあるの?」

ドラえもん「いや、ね。胸騒ぎがするんだ。念のためにタイムテレビで今後を見ておこうよ」

のび太「きにしすぎじゃない?」


二人はタイムテレビで今日の深夜を見てみる。そこには……


大和田『俺は強い強い強い……兄貴よりもだー!!』グシャッ!


不二咲を襲う大和田の姿があった。


ドラえもん・のび太「えええええええええええっ?!」




189: ◆takaJZRsBc 2018/02/03(土) 21:53:21.72 ID:YHYwPjoO0



  第八話 お兄さんとのやくそく(後編)


ドラえもん「ああ、やっぱり……大和田くんの顔色が悪かったからこんなことじゃないかと思ったよ……」

のび太「そんな……どうして?! お兄さんはたしかにたすけたよね?!」

ドラえもん「大和田くんには悪いけど秘密を見せてもらおう」


二人はタイムテレビを操作して大和田の秘密を盗み見ることにした。

カチッカチッ……パッ。


のび太「えっと、なになに?」

ドラえもん「『本当は勝負に負けたのに勝ったと騙している』。……ああ! そういうことか」

のび太「どういうこと? まけたのに勝ったってウソをついたの?」

ドラえもん「いや、二人の性格から考えてきっとお兄さんも大和田くんもあの勝負の
       結果をみんなに言わなかったんだよ。それでいつのまにか色々と噂が流れて、
       それを否定しなかったから結果的にみんなを騙してしまったことに……」

のび太「ああ、なるほどね」

ドラえもん「どうしよう……お兄さんを助ければ全部解決すると思ったのに……」

のび太「かんたんじゃない。今度はちゃんと大和田さんを勝たせればいいんだよ!」

ドラえもん「大和田くんてああ見えてけっこう繊細だからなぁ……それで済むといいけど」

のび太「すむよ! だってまけたのにリーダーをやってるからはずかしいんでしょ?
     だったら勝ってどうどうとリーダーをやればいいじゃない!」

ドラえもん「それもそうだね。じゃあ次は大和田くんを勝たせてみようか」


タイムマシンで再びあの夜に戻ってくる。




190: ◆takaJZRsBc 2018/02/03(土) 22:05:15.39 ID:YHYwPjoO0


のび太「で、どうやって勝たせるの?」

ドラえもん「そのための道具は色々あるけどね。まあ今回はお手軽にソノウソホントでいくか」

ドラえもん「『大和田くんはすごい速さでお兄さんを追い抜いて勝負に勝った』」

大和田(クソッ! 俺はまた兄貴に勝てねえのか……ん?)


ビュオン!


大和田「な、なんだぁ?!」


ビュオオオオオオオオオオッ!


大亜(どうした、紋土のヤツ? ここで抜いてくるとは……そもそもあの速さはなんだ……?)


勝負後。


大亜「フッ、言い訳はしねえ。俺の完敗だ。人が変わったみたいにいい走りだったぜ」

大和田「お、おう……」

大亜「これなら暮威慈畏大亜紋土も安泰だな。俺も安心して引退出来るってもんだ。……頑張れよ」

大和田「……あぁ」


二人は並んで走り去って行く。




191: ◆takaJZRsBc 2018/02/03(土) 22:12:46.10 ID:YHYwPjoO0


のび太「これで大丈夫じゃない?」

ドラえもん「よし。早速タイムテレビで見てみよう」


大和田『俺は強い~兄貴よりもだー!』グシャ


ドラえもん・のび太「…………」

のび太「ちょっと……」チラリ

ドラえもん「動機を見てみようか。……『マグレで勝ったのを黙っている』」

のび太「マグレって……まあたしかにマグレだけど。むしろズルだけどさぁ……」

ドラえもん「本当は実力で負けてるのに道具で無理に勝たせちゃったからね。
       ちゃんと納得出来る勝たせ方をしなくちゃダメなんだ」

のび太「メンドくさい人だなぁ。勝ったんだからそれでいいじゃない」

ドラえもん「大和田くんは男気があるんだよ。誰かさんみたいにすぐ道具に頼ったりしないの」

のび太「どうせぼくはなき虫で根性なしですよーだ」

ドラえもん「さて、次はどうするかな」


更に一ヶ月ほど過去へ行く。


ドラえもん「実力で勝つには勝負の前に大和田くんを鍛えなくちゃいけない」

のび太「きたえる道具はたしかいろいろもってるよね」

ドラえもん「持ってることは持ってるけど、本人にバレないようにしなくちゃいけないからね。
       うーん、これなんかいいんじゃないかな。夢ふうりん~」パパラパッパパー

のび太「えっと、どんな道具だっけ?」

ドラえもん「眠っている人間を呼び出して操れるんだ。寝ている間に鍛えれば
       見つからないし、ちゃんと特訓してるから本人も納得出来るでしょ?」

のび太「なるほど、じゃあさっそくやろうよ!」




192: ◆takaJZRsBc 2018/02/03(土) 22:19:53.27 ID:YHYwPjoO0



チリーン。


大和田「ぐがー」

のび太「でてきたよ」

ドラえもん「よし! 真夜中の秘密特訓だ!」


ブロロロロロロロ……


のび太「それにしてもさぁ、ドラえもん」

ドラえもん「なんだい?」

のび太「これってまさしく『いねむりうんてん』だよね?」

ドラえもん「……細かいことは気にしちゃいけないよ」


勝負当日。


ドラえもん「さあ! 特訓の成果は出たかな?」

のび太「がんばれー!」

大和田(最近なんか知らねえが、どんどん実力が伸びてる気がする。今なら俺も……)

大亜(紋土の野郎、ちょっと見ねえうちに実力つけやがって……フッ、いい勝負が出来そうだ)


ブロロロロロロロ……!




193: ◆takaJZRsBc 2018/02/03(土) 22:34:34.22 ID:YHYwPjoO0



             ・

             ・

             ・


勝負の結果、僅差で大和田が勝利した。


のび太「やった! ギリギリだけど勝った! こんどはちゃんとじぶんの力で勝ったよ!」

ドラえもん「よし! 今度こそ!」ピッ


大和田『』グシャ


ドラえもん・のび太「えええええええええええええええっ?!!」

のび太「なにこれっ?! どういうこと?!」

ドラえもん「わからないよ! ぼくもなにがなんだか……!」

のび太「そうだ! どうきは?!」

ドラえもん「ええと、『兄を超えられないことを気にしている』……えっ」

のび太「こえられないって………しょうぶにはちゃんと勝ったじゃない!」

ドラえもん「わからない……ただ言えるのは、勝負の結果だけが問題じゃないんだ。
       大和田くんのお兄さんへのコンプレックスはもっと根深い所にあるんだよ」

のび太「ああもう……手のかかる人だなぁ……」

ドラえもん「こうなったら大和田くんをよく観察して、徹底的に可能性を潰していくしかない!」

のび太「はぁ、なんとかなるといいけど……」




195: ◆takaJZRsBc 2018/02/03(土) 22:45:05.47 ID:YHYwPjoO0



その後、二人は様々な可能性を試し歴史を改変してきたのだが、
いくら挑戦しても大和田が不二咲を殺すという結果は変わらないのであった……


大和田『俺はつよ……』


ブチッ(タイムテレビを消した音)。


のび太「もうなんなのこの人?! 不二咲さんにうらみでもあるんじゃないの?!」

ドラえもん「うーん、なにがいけないんだろう。ちゃんと鍛えて実力もつけたし、
       バイクだけじゃなくてケンカとか他の技術も全部鍛えなくちゃならないのかな……」

のび太「それじゃいつまでたってもおわらないよ! いっそ不二咲さんが
     大和田さん以外の人をたよるようにしてみたら?」

ドラえもん「それはあまりやりたくないんだよね。歴史を大きく変えすぎるとどんな副作用が
       現れるかわからないし、今後の人間関係にも影響が出そうだから……」

のび太「そんなこといって、ころされるよりはずっとマシでしょ! もう大和田さんはあきらめて……」

「おい」

ドラえもん・のび太「?!」ビクッ

「お前らか、最近やたら俺の周りを嗅ぎ回っていたのは」

のび太「あ……」

ドラえもん「あなたは……!」


コ゛コ゛コ゛コ゛コ゛コ゛コ゛コ゛コ゛コ゛コ゛コ゛


大亜「…………」


突然声をかけられ飛び上がった二人が振り向いた先には、黒髪の大和田こと大和田大亜が立っていた。


ドラえもん・のび太「ひ、ひええええええええっ?!」




196: ◆takaJZRsBc 2018/02/03(土) 22:53:59.36 ID:YHYwPjoO0


大亜「……まさかガキだとは思わなかったが。それに、そっちの丸いのはなんだ? 着ぐるみか?」


┣¨┣¨┣¨┣¨┣¨┣¨┣¨┣¨┣¨┣¨┣¨┣¨┣¨┣¨┣¨


ドラえもん(うっ……さすがお兄さん。大和田くんには悪いけど迫力がダン違いだ!)ガタガタ

のび太(顔は大和田さんとそっくりだけど、ふんいきがぜんぜんちがう! も、もれそう……)ブルブル

ドラえもん「ぼ、ぼくたちはですね……そ、その、あの、えっと……」

のび太「うわーん! ぼくたちころされちゃうよー! わーん!!」ビエーン!

大亜「おい……いくら俺が暴走族の頭(ヘッド)だろうが、ガキに手を挙げたりはしねえよ」

のび太「うそだー! きっとひどい目にあわされるんだー! こわいよー!! うわーん!!」

大亜「…………」


大亜は顎に手を当てて考えると、ドカッと座り込んで二人に目線を合わせた。


大亜「俺は一度言ったことは絶対に守る。お前らに暴力を振るったりはしねえ。
    ほら、俺の顔をよく見ろ。嘘を言っているように見えるか」ニッ

のび太「あ……」

ドラえもん「笑った顔が大和田くんと同じだ……」

大亜「お前ら、さっきも大和田って言ってたがそれは俺じゃなくて紋土のことか?
    カチコミに来たワケじゃねえだろうし……紋土の知り合いか何かか?」

ドラえもん「えっと、その……」

のび太「ぼくたち、未来からきた大和田さんの友だちです」

大亜「あ? 未来だ?」




197: ◆takaJZRsBc 2018/02/03(土) 23:04:21.60 ID:YHYwPjoO0


大亜(なんだ? そういうごっこ遊びか何かか?)

ドラえもん「のび太くん!」

のび太「もうほんとうのことぜんぶいっちゃおうよ!」

ドラえもん「でも、それは!」

のび太「だってあれだけやったのにダメだったし、大和田さんのことはぼくたちより
     お兄さんのほうがよく知ってるでしょ? もうぼくたちだけじゃ……」

ドラえもん「うーん……そうだね。仕方ないか……信じてもらえるかわからないけど、
       全部説明します。お兄さんは落ち着いて聞いてください」


             ・

             ・

             ・


大亜「……信じられねえな。未来では世界が滅亡してるだとか、紋土が希望ヶ峰に入学して
    閉じ込められた挙げ句仲間とコロシアイさせられてるとか……トドメは人殺しか」

ドラえもん「ですよね……」

ドラえもん(それにしても随分と落ち着いて聞いてくれたなぁ。大和田くんだったら
       途中で怒りだしそうな内容なのに。全体的にドッシリしてるというか
       余裕があるというか。きっと器が大きいんだろうね)

ドラえもん(……正直、大和田くんがコンプレックス感じちゃうのもわかる気がする)

大亜「今言った話が本当だというなら、証拠を見せてみろ」

のび太「しょうこ?」




198: ◆takaJZRsBc 2018/02/03(土) 23:14:00.40 ID:YHYwPjoO0


大亜「お前らが未来から来たってんなら、未来の道具か何か持ってるだろ?」

ドラえもん「あ、そうですね。じゃあとりあえず……スモールライト~! これは物の
       大きさを自由に変えることが出来るので、のび太くんを小さくしてみます」


ピカー! シュルシュルシュル……


大亜「ッ?! ……まさか、マジだとはな」

大亜(信じられん。本当に人間が縮みやがった。これはトリックなんてチャチなもんじゃねえ……)

ドラえもん「どうでしょう?」

大亜「信じたくはねえが、証拠を見せられて信じねえ訳にはいかねえだろうが……」

大亜「……詳しく話せ。お前らが知ってること全部だ」


             ・

             ・

             ・


ドンッ!


ドラえもん・のび太「ヒッ!」


話を全て聞いた後、大亜はこめかみに青筋を浮かべて地面を殴った。


のび太「ご、ごめんなさ~い!」

大亜「いや、すまねえ。お前らに怒った訳じゃねえんだ」




199: ◆takaJZRsBc 2018/02/03(土) 23:28:46.29 ID:YHYwPjoO0


ドラえもん「じゃあ、なにに腹を立てたんですか?」

大亜「決まってる。そんな糞みてえなことを考えた黒幕と、みすみすそれに乗っちまった紋土だ」

大亜「ダチを……それもテメエを信頼して大事な秘密を打ち明けてくれた親友をくだらねえ
    コンプレックスなんざで殺しやがって……しかもそれを正直に打ち明けられず
    他の仲間も殺しかけただ? 自分を兄弟とまで呼んでくれた親友を泣かせただ?」

大亜「あいつがまさかそんな女々しい男だったとはな……正直失望したぜ」

ドラえもん「あ、で、でも、いいところもたくさんあるんですよ!」

のび太「うん! ぼくたちとよくあそんでくれるし、いつもめんどうを見てくれます」

大亜「……そうか」グワシャ

ドラえもん・のび太「わっ」


大亜は立ち上がると、二人の頭に手を置いた。ゴツゴツとした大きな力強い手だった。


大亜「……お前ら、赤の他人の俺達を助けるために遠くから来て、色々してくれて
    ありがとよ。今まで二人っきりで大変だったろ。……あとは俺に任せな」ワシャワシャ

のび太「どこへいくんですか?」

大亜「なに、お前らはそこで待ってろ。俺があの野郎の女々しい根性を叩き直してきてやる」ザッザッ!

のび太「どうする、ドラえもん?」

ドラえもん「待ってろって言われたけどやっぱり気になるから、透明マントを
       つけてお兄さんの後を追いかけよう!」




200: ◆takaJZRsBc 2018/02/03(土) 23:42:36.81 ID:YHYwPjoO0



               ◇     ◇     ◇


紋土「なんだよ、兄貴。急に呼び出したりして」

大亜「……紋土、単刀直入に聞く。お前、俺にコンプレックスを持ってんのか?」

紋土「?! な、なんで突然んなこと聞いてくるんだよ……」

大亜「理由なんざどうでもいい。どうなんだ?」

紋土「いや、まあ、その……」

大亜「歯切れが悪りぃな。やっぱりそうなのか」

紋土「だ、だってよ……兄貴はなにやっても俺より上だし、実際俺から見ても
    すげえって言うか、ほんとカッコイイ男の中の男って感じだし……」

紋土「……俺じゃ到底敵わねえよ」

大亜「そうか、紋土……歯ァ食いしばれや!」


ドゴォッ!


のび太「あ、ああっ!」

ドラえもん「大和田くんが殴られちゃった!」

紋土「ゲホッ! い、いきなりなにしやがる?!」

大亜「俺は一人前の男としてお前を教育してきたつもりだったが、最後の仕上げが
    足りなかったみてぇだな。くだらねえ劣等感なんか持ちやがって」

紋土「くだらねえ? くだらねえだと? 俺が今までどんだけ悩んでたと思ってんだよ?!
    偉大な総長の後を継ぐことになって、周りからは弟だから二代目なんだろって
    目で見られて……どんだけプレッシャーがあったと思っ……」


ズガァッ!


大亜「……それがくだらねえって言ってんだよ」




201: ◆takaJZRsBc 2018/02/03(土) 23:54:32.64 ID:YHYwPjoO0


紋土「こ、この……!」


バシィッ!

大和田も反撃に転じるが、その拳は容易く大亜に止められた。


大亜「大の男が周りの目をうじうじ気にしやがって……オメーはオメーだろうが」

紋土「兄貴には……兄貴には俺の気持ちなんてわかんねーよ!!」

大亜「…………。どうやら相当重症みてえだな。いや、弟だと思ってお前のそういう
    情けねえ面から俺が今まで目を背けてきただけかもしれねえ」

大亜「来いよ、紋土。泣き言は許さねえ。オメーの不満を今ここで全部ぶつけてみろ」

紋土「いきなり人を殴ったと思えば偉そうなこと言いやがって……言われなくてもやってやらぁ!」


ドガッ! バキッ! ズドンッ! ゴシャッ! グオッ!


ドラえもん「殴り合いを始めちゃったよ……」

のび太「うわあ、ジャイアンがかわいく見える……。やっぱりお兄さんつよいね」

ドラえもん「でも大和田くんも本気になったからやられっぱなしじゃないよ。すごい戦いだ」


三十分後。


紋土「ゼェ……ハァ……ゼェ……ハァ……」

大亜「……ハァ……ハァ」


そこに立っているのは大亜だけだった。紋土は仰向けに倒れている。


紋土「くっそ……やっぱり、勝てねえじゃんか……」

大亜「……泣き言は許さねえって言ったはずだぞ」




202: ◆takaJZRsBc 2018/02/04(日) 00:15:21.26 ID:kMlSggZc0


紋土「だって、だって俺はどうすりゃいいんだよぉ……」

大亜「紋土……これを見ろ」


大亜は紋土の頭をガシッと掴んで傷ついた自分の顔の前に持ってくる。


大亜「見ろよ。オメーにこんだけやられて男前が台無しだぜ」

紋土「…………」

大亜「俺に勝てねえだ? そんなこと誰が決めた。周りが言ってるからか?
    周りが黒だって言ったらオメーの目は白も黒に見えんのか?」

大亜「オメーが俺に勝てねえんじゃない。オメーが俺に勝てねえって勝手に思い込んでるだけだ」

紋土「……!」

大亜「最近の走りはお前の勝ちだ。ステゴロだって、今は俺の方が上だがそのうち
    どうなるかわからねえ。他にもお前にはお前しか持ってないもんが色々あんだろ」

大亜「俺になろうとすんじゃねえ。人の猿真似をするからいつまで経っても上手くいかねえんだ。
    お前はお前だけのもんを探せ。チームのヤツらもな、お前がただ俺の弟だからって理由で
    ついてきてんじゃねえんだぜ……俺とお前で作ったチームの仲間をもっと信じろよ」

紋土「兄貴……」

大亜「なんで突然俺がこんなことを言い出したか教えてやる。名前は言わねえが、お前のことを
    とても心配してるあるダチが教えてくれたんだ。いつかお前がやらかすんじゃねえかってな」

大亜「あんないいダチに慕われてる……それはお前自身の実力だろうが。心配かけてやるな」

紋土「…………」

大亜「少し、そこで頭冷やしてけ」

紋土「…………」


ザッザッザッザッザッ……


大亜(何が兄貴には敵わねえだ。少し見ねえうちに随分強くなりやがって)フッ




203: ◆takaJZRsBc 2018/02/04(日) 00:40:33.45 ID:kMlSggZc0


大亜「……結構やられたな」ペッ


そう言って、大亜は口の中の血を地面に吐き捨てた。


のび太「お兄さん」

ドラえもん「大亜さん」

大亜「……何もねえトコから急に現れたな。それも秘密道具とかいうヤツか?」

のび太「うん、これは透明マントっていって……」

ドラえもん「それより大丈夫ですか?! すごい怪我ですけど」

大亜「なんだ、待ってろって言ったのに全部見てたのか。この程度のケンカならよくある。
    たいしたこたぁねえ。それより、見苦しいモンを見せちまったな」

のび太「そんなことないです! なんかその、すごかった……」

ドラえもん「大和田くん大丈夫かな?」

大亜「大丈夫だ」

のび太「どうしてわかるんですか?」

大亜「兄弟だからな。わかるさ。身内のヒイキ目に見えるかもしれねえが、
    あいつはこの程度でへこたれるタマじゃねえ。必ず立ち上がってくる」

ドラえもん「良かった! じゃあ、今度こそ問題ないかなぁ」

大亜「タイムテレビっつったか? 未来が見れる機械は。……俺も見てもいいか?」

のび太「もちろん!」


ドッカリと三人はタイムテレビの前に座る。




204: ◆takaJZRsBc 2018/02/04(日) 00:56:17.85 ID:kMlSggZc0


大亜「さて、見せてもらうぜ。紋土……」

ドラえもん・のび太「ドキドキ」

のび太(これでダメだったらどうしよう……)

ドラえもん(お兄さんも見てるんだ……頼むよ、大和田くん!)


不二咲『僕ね、大和田君みたいに強くなりたいんだ!』

大和田『ああ? 俺みたいに?』

不二咲『うん! だってそうしたらもう守られなくて済むし、みんなを守れるし……』

大和田『…………』

不二咲『僕なんてこんなちっぽけな秘密でうじうじ悩んじゃって……だから強い
     大和田君に憧れてるんだ。大和田は強いから、秘密なんてバラされても
     へっちゃらだよね? 僕も大和田君みたいに強くなれたら……』


のび太(ここからだね……)ギュッ

ドラえもん(お願いだ、大和田くん……!)


大和田『…………』

大和田『不二咲……オメーはとんでもねえ勘違いをしてるぞ。俺は本当はそんなに強くねえ』

不二咲『……え』


ドラえもん・のび太(え?)




205: ◆takaJZRsBc 2018/02/04(日) 01:07:13.14 ID:kMlSggZc0



大和田『今もこの状況にめっちゃビビってるし、俺なんて兄貴に比べたら全然だ。
     ホント、ここにいるのが俺じゃなくて兄貴だったら頼りになったろうにな……』

不二咲『大和田君……?』

大和田『でも、ないものねだりしても仕方ねえ。不二咲、よく聞いてくれ。俺はな……
     俺なんかよりずっと強くてすげえ兄貴に、いつもコンプレックスがあったんだ』

不二咲『…………』

大和田『なんとか兄貴を超えたくて、出来なくて、苦しかった。ある時、そんな俺の
     女々しい所を兄貴に見抜かれてこう言われたんだ。“俺になろうとすんじゃねえ。
     人の猿真似をするから上手くいかねえんだ。お前はお前だけのもんを探せ”ってな』

大和田『オメーが俺みたいになれるワケねーだろ。その代わり俺がオメーみたいに頭が
     よくなれるワケもねえ。ないものねだりするより、今自分が持ってるいいものを見ろよ』

不二咲『でも僕は……』

大和田『オメーは俺に秘密を打ち明けて、今だってこうして特訓してるじゃねえか。
     俺なんて往生際が悪いかもしれねえが、いまだに言いたくねえよ、秘密』

不二咲『…………』

大和田『もっと自分に自信持てよ。過去の弱い自分を乗り越えるなんて、最高に男らしいじゃねえか!』

不二咲『男らしい? ……僕が?』

大和田『ああ、今のお前は男らしいぜ!』ニカッ

不二咲『……ありがとう、大和田君。僕、ちょっと自信が持てた気がする』

大和田『よし! なら続きだ。スパルタで行くからな!』

不二咲『うん!』


ドラえもん・のび太「…………」

大亜「どうだ? これで終わりか?」

ドラえもん・のび太「や」

大亜「や?」




206: ◆takaJZRsBc 2018/02/04(日) 01:19:41.43 ID:kMlSggZc0



ドラえもん・のび太「やったああああああああああああっ!!」


二人は手を取り合って小躍りする。


のび太「やった! やったよ! ぼくたち、とうとう不二咲さんをすくえたんだ!」

ドラえもん「ここまで長かったねぇ! いやー良かった良かった!!」

大亜「そうか。紋土は殺さなかったか……」フゥー


流石の大亜も緊張したのか顔から冷や汗が流れていた。


のび太「ありがとう、お兄さん! ぜんぶお兄さんのおかげです!」

ドラえもん「本当にお世話になりました!」

大亜「いや、いいってことよ。未来に戻ったら紋土によろしくな」

ドラえもん「はい!」

大亜「困ったことがあればいつでも来いや。俺達はもうダチだからな。どんなことでも助けてやる」

大亜「“男の約束”だ」

のび太「うん! 男の約束だね!」

ドラえもん「ありがとうございました。未来でまた会いましょう。それではさよなら!」

のび太「さよーならー!」


タケコプターをつけた二人は、離れた場所に隠してあるタイムホールに飛んでいく。


大亜「達者でな。……ハア、行っちまった」


小さな友人達が去って行った空を仰ぎながら、大亜は静かに呟いた。


大亜「――また会おうぜ、兄弟」




211: ◆takaJZRsBc 2018/02/10(土) 22:59:16.11 ID:GBIclPKI0



  第九話 石丸くんと友だち


のび太「さて、ひさしぶりにもどってきたわけだけど」

ドラえもん「とりあえず今日と明日は事件は起こらないようだからのんびり出来るね」

のび太「うん。ふぁ~、ぼくつかれちゃった。へやにもどるね」

ドラえもん「うん、おやすみ」


  ― 石丸の部屋 ―


のび太「ただいまー」

石丸「……おかえり、のび太君」

のび太「あれ、お兄さん元気がないね? どうかしたの?」

石丸「……僕だってたまには落ち込んだりするのだよ」

のび太「えーっと……ハッ」

のび太(石丸さんがもってるのはあのフウトウだ! ……そういえば、なにがかいてあるんだろう?)

のび太「お兄さん……それになにがかいてあるか、きいてもいい?」

石丸「…………」

のび太「ぼくのこと、まさかころしたりとか……」

石丸「とんでもないっ!! 何があってもそれだけは絶対にありえないさ! 安心してほしい」

のび太「そう、よかった」

石丸「…………」

のび太「…………」

のび太(気まずいよ! いつもうるさいのにしずかにしないでよ!)




212: ◆takaJZRsBc 2018/02/10(土) 23:10:27.37 ID:GBIclPKI0


石丸「すまない。心配をかけてしまうな……」

のび太(まったくだよ。でも、なんだかまいってるみたいだしなぁ)

のび太「おもいきってだれかにそうだんしてみれば? はなせばラクになるかもしれないよ?」

石丸「風紀委員である僕がクラスメイトを不安にさせるような言動は出来ないだろう!」

のび太「あ、ごめんなさい……」

石丸「いや、いいんだ。声を荒げてすまない……相談する相手もいない僕が悪いのだから」ボソッ

のび太「え、今なにかいった?」

石丸「何でもない。僕がいるのにこんなに早く部屋に戻ってきたということは、
    昼寝がしたいんだろう? 僕は静かにしているから好きに寝るといい」

のび太「ど、どうも……」

のび太(うわ……いつもだったらひるねなんてナマケモノのすることだ! 勉強したまえ!って
     すごくうるさいのに、なにもいわないなんて……これってかなりマズイんじゃ……)

のび太(とりあえずねむいから、ひとねむりしてからドラえもんのところに行こう)ムニャムニャ


                  ╂


睡眠を取って休んでから、のび太はドラえもんを男子トイレに呼び出した。


ドラえもん「どうしたの、のび太くん? 今日は休むんじゃなかった?」

のび太「じつは、こんなことがあって……」


かくかくしかじか


ドラえもん「ああああっ!」

のび太「ど、どうしたのっ?!」




213: ◆takaJZRsBc 2018/02/10(土) 23:24:18.10 ID:GBIclPKI0


ドラえもん「ぼくは今大変なことに気付いてしまった……」

のび太「な、なに?」

ドラえもん「ぼくたちが未然に事件を防いでしまったから、現在解放されているフロアは、
       一階だけ。それも保健室と大浴場はまだ閉まってる」

のび太「それがどうかしたの?」

ドラえもん「お風呂場が開かないとサウナが使えない……。つまり、
       今のままだと石丸くんと大和田くんは友達になれないんだ!」

のび太「……それだけ?」

ドラえもん「それだけって……大変なことだよ! 見た感じ、大和田くんはコンプレックスを
       乗り越えて前より余裕が出来たぶん、みんなからも信頼されて良好な関係を
       築けてるみたいだけど、石丸くんは特に親しい友達がいないみたいだ」

のび太「そりゃあ、あのセイカクじゃねえ……」

ドラえもん「今のままじゃ可哀相だ。それに、価値観がまるで違う大和田くんと仲良くなることで
       視野が広がるというか、石丸くんは今よりも丸くなるんじゃないかな?」

ドラえもん「ぼくたちの目的はただ事件を防ぐだけじゃない。みんなが外に出てからも
       手を取りあって助け合えるようにしなくちゃいけないんだよ?」

ドラえもん「なのに、この生活で信頼出来る仲間が作れなかったら外に出ても意味がないじゃないか」

のび太「そうだけど、なにも大和田さんじゃなくてもいいんじゃないの。苗木さんあたりに
     ソウダンすればなんとかしてくれそうだけど。あの二人あつくるしいからなぁ」

ドラえもん「他人事なんだから! もしジャイアンやスネオがいなかったらきみはどう思う?」

のび太「ジャイアンやスネオがいないかぁ……イジメられなくていいんじゃないかなぁ。
     ……あ、でも大ぼうけんのとき二人がいないとものたりないかも?」

のび太「それになんだかんだいつもあそびにさそってくれたり、助けてくれたときもあったっけ……」

ドラえもん「イヤな思いもそりゃたくさんあるけどさ、それ以上に楽しい思い出もあったろう?」

のび太「そうだね。やっぱり友だちがいないなんてダメだ! なんとかしないと!」




214: ◆takaJZRsBc 2018/02/10(土) 23:32:56.50 ID:GBIclPKI0


ドラえもん「さて、どうやったらモノクマを説得出来るかなぁ」

のび太「おもったんだけどさぁ、べつにサウナじゃなくてもいいんじゃない? たしか、根性くらべの
     ショウブをしてたんだよね。なんでもいいからショウブさせればいいんじゃないの?」

ドラえもん「いやぁ、ダメだと思うよ?」

のび太「どうして?」

ドラえもん「あの二人、友達になれたのが不思議なくらい相性が悪いんだよ。それぞれ
       優等生と不良のトップみたいな人だし。石丸くんは視野が狭いし頑固で
       融通がきかない。大和田くんは優等生が嫌いだし凄い意地っ張り」

ドラえもん「サウナで極限状態にでもならないと、お互い意地を張って本音を出せないんだよ」

のび太「ホント、あの人達めんどくさいなぁ……高校生なんだからもっと大人に
     なってほしいよ。おだやかで大人な苗木さんをみならってほしい」

ドラえもん「高校生もまだまだ子供ってことだよ。とにかく、サウナが使えるように
       ぼくたちでモノクマに掛け合ってみよう」

のび太「そうだね」


             ・

             ・

             ・


モノクマ「ハ? ダメに決まってるでしょ、そんなの」

ドラえもん・のび太「ですよねー」

ドラえもん「そこをなんとか……この通り!」

モノクマ「キミ達が誰か殺してくれれば考えるけどさ。……ああでもキミ達じゃムリか。
      じゃあねぇ、せめて誰かをそそのかすとかさー。なんか面白いことやってよ」

のび太「そんなことできるもんか!」




215: ◆takaJZRsBc 2018/02/10(土) 23:46:43.47 ID:GBIclPKI0


モノクマ「あっそ。ならいいよ。じゃーね、バイバイ」

ドラえもん「ああ、待って!」

ドラえもん(マズイ! 何かモノクマを説得出来る材料はないかな……)

のび太「コロシアイがおきればいいんでしょ?」

ドラえもん「のび太くん?」

のび太「ほら! おフロに入ってあたまがスッキリすれば、サツジンケイカクを立てる人がいるかも……?」

モノクマ「スッキリしたらコロシアイする気が失せちゃうんじゃないの?」

ドラえもん「ギクッ。……えっと、ほら! お風呂場で殺人とかドラマでもよくあるし」

モノクマ「いや、ないよ。ミステリーでありがちなのは山奥の村とか孤島でしょ。あと絶壁。
      一昔前は混浴露天風呂とかよくあったけど最近は時代の流れか見かけなくなったねー」

ドラえもん「うーん……」

ドラえもん(ダメだ……ぼくたちの頭でモノクマを言いくるめるなんて所詮ムリだったんだ……)

のび太(こうなったらヤケだ! もうテキトーにいいかげんなことを言ってやる!)

のび太「えーとですね、おフロがカイホウされたらみんなが入ります。すると、はだかでムボウビな
     ジョウタイになるから、ふだんころせないような人もころしやすくなります」

モノクマ「ふむふむ。まあ、それはあるかもね。十神君やセレスさんといった警戒心の強い
      メンバーも、お風呂上がりの気を抜いてる時に不意打ちすれば殺せるかもしれない」

のび太「でしょでしょ?」

モノクマ「……でもそれだけじゃなぁ。もう一声欲しいトコロ」

のび太「えっと……ここのおフロって男女でわかれてないから、ムフフなハプニングが……
     ……あ! それではだかを見られた女の子が男子にフクシュウをするかも!」

モノクマ「いや、流石にないでしょそれは」




216: ◆takaJZRsBc 2018/02/10(土) 23:57:56.71 ID:GBIclPKI0


のび太「ああもう、うるさいなぁ! とにかくぼくはおフロに入りたいの!」

モノクマ「……逆に聞くけど、キミ達なんでそこまで浴場に固執してんの?」

ドラえもん「え、そ、それは……」

モノクマ「ハッ?! もしやキミ達……」

のび太(マズイ……バレちゃったかな?)

モノクマ「覗きたいの?! 女の子達のあられもない姿をバッチリ目撃しちゃいたいの?!
      心の中のセンテンススプリングでフライデーしちゃいたいの?!」

ドラえもん「えぇ~……?」

のび太「あ、そういう下心もちょっとだけあるけど……」

ドラえもん「のび太くん!」

モノクマ「素晴らしい!」

のび太「え?」

ドラえもん「ハ?」

モノクマ「小学生でもやっぱり男の子なんだね! そうだよねぇ。ここの女の子達って
      レベルが高いもんねぇ。ボクは学園長としてそういう邪な気持ちを応援します!」

のび太「えっと、あの……」

モノクマ「いいでしょういいでしょう。浴場は解放しました。バッチリ覗きなさい、少年よ!
      そして小学生と違って出るとこが出た大人の体をしっかり満喫するのです!」

のび太「あ、ありがとう」

ドラえもん「なんだかなぁー……」


女子高生がこの台詞を言っているのかと思うととにかく脱力するのであった。




217: ◆takaJZRsBc 2018/02/11(日) 00:08:47.45 ID:52NlgYcG0


  ― 同時刻 購買部 ―


山田「これはこれは苗木誠殿」

葉隠「オッス、苗木っち」

苗木「あ、山田君に葉隠君。二人もモノモノマシーンを回しにきたの?」

山田「もちろんですぞ! オタクとしてはコレクター魂といいますか、
    ここから出るアイテムを全部収集したいと思っていましてな!」

葉隠「俺は占いで購買部に行くといいことがあるって出たからちょっくら来た次第だべ」

苗木「へえ。何かいいものが出るといいね。僕はこれで終わりだから」


ガシャガシャ、ポン!


苗木「ん? なんだこれ?」

山田「風呂桶ですかな?」

葉隠「せっかく桶が出ても風呂がねえとなぁ」

苗木「あれ、紙が入ってる。『おめでとうございます! これは男のロマン券です。
    内容は大浴場が解放されてからのお楽しみ』……? 男のロマンってなんだろ」

葉隠「男のロマン~? そうだべなぁ。札束のプールに飛び込んで泳ぐとか……」

山田「いやいや、コスプレしたセクシーガール達に囲まれてキャーキャー言われる方が……」

苗木「二人とも欲望がだだ漏れなんだけど……」


数日後、彼等は男のロマンの目撃者となる。




218: ◆takaJZRsBc 2018/02/11(日) 00:13:41.48 ID:52NlgYcG0



  ― 脱衣所 ―


のび太「本当に解放されてる……」

ドラえもん「ハッ、早く勝負を終わらせないと夜の不二咲さんとの約束にかぶっちゃう。急ごう」

のび太「でもさあ、うまいぐあいにケンカしてくれるかなぁ?」

ドラえもん「……あまりやりたくないけど、ぼくたちがそれぞれ相部屋だってことを利用しよう」


                  ╂


夕食後、のび太は石丸を誘い出すことにした。


のび太「お兄さん、今日はずっとへやにこもってるね」

石丸「……今はあまり人に会いたい気分ではないのだよ」

のび太「じゃあさ、ちょっとキブンテンカンしない?」

石丸「気分転換?」

のび太「うん! さっきおフロ場があいてるのを見つけたんだ。いっしょにはいろうよ!」

石丸「何? 大浴場が解放されているだと? よくやった。新発見ではないか!
    では探索がてら入りに行くとするか。……ついでに気分もすっきりさせよう」

のび太「うん」


  ― 脱衣所 ―


大和田「あ? なんだオメーも来たのか」

石丸「大和田君か……ドラえもん君に聞いたのか?」

大和田「おうよ。そっちはのび太からか」

石丸「ああ、そうだ」




219: ◆takaJZRsBc 2018/02/11(日) 00:27:02.70 ID:52NlgYcG0


大和田「…………」

石丸「…………」

ドラえもん(行くよ、のび太くん)チラ

のび太(まかせて!)コクリ

ドラえもん「あ、見てみて! サウナもついてる。本格的だねぇ」

大和田「お、マジか。こりゃあいいな」

のび太「ねえねえ、お兄さんたちがショウブしたらどっちが長くいられるかなぁ」

ドラえもん「そりゃあ大和田くんじゃない? なにせ日本最大の暴走族のリーダーで
       ケンカは強いし体も大きいし。サウナなんてへっちゃらでしょ?」

大和田「へへっ、当然よ!」

のび太「でも、石丸さんだってドリョクだけで希望ヶ峰に入学してセイセキは
     日本一らしいよ? ドリョクと根性ならだれにもまけないんじゃないかな」

石丸「フフ、無論だ!」

ドラえもん「うーん、難しいなぁ。どう? 自信ある、大和田くん?」

大和田「そりゃあるに決まってるだろ! こんな勉強ばっかしてるもやしみたいなヤツに負けるかよ」

石丸「(カチン!)フン、馬鹿馬鹿しい。根性なしの君がこの僕に勝てるとでも?」

大和田「ああ?! 今なんつった?!」

石丸「君は根性なしだと言ったのだ! 気に入らないことがあればすぐ怒鳴る暴れる!
    社会のルールを許容出来ないからそんな頭の悪い格好をして人様に迷惑をかけるのだ!」

大和田「テメェ、俺の格好をバカにしやがったな?! 勝負しやがれ!」

石丸「いいだろう! 君のような不良にこの僕が負けるものか!」

大和田「ほざけ! 負かしてベソかかせてやらぁ!」

ドラえもん「あ! ちょっと、服はちゃんと脱がないとダメだよ!」

のび太「なにかあったらぼくらのせいになっちゃうんだからムリしないでよね!」




223: ◆takaJZRsBc 2018/02/11(日) 02:03:48.32 ID:asquw54r0


大和田「わかってらあ! すぐにケリをつけてやる!」バッ、ポイポイ

石丸「どうせ君がすぐ音をあげるだろうしな!」バッ、ポイポイ


ダダダダッバタン!


ドラえもん「子供じゃないんだから脱いだ服くらいちゃんとしまってよ……」

のび太「もう、ムキになっちゃって~」

ドラえもん「でも、ぼくらが煽らないうちにのってくれて良かった。
       演技とはいえ相手をけなすのは心苦しいからね」

のび太「うん。でもほんとにこれで仲良くなるのかなぁ」

ドラえもん「アニメを信じよう(原作で違う展開だったら目も当てられないけど……)」

のび太「ハァ。しばらくはヒマなんだよね? ぼくはへやにもどってねるか」

ドラえもん「えぇ?! さっきも昼寝してたじゃないか」

のび太「ここのところいそがしかったからつかれてるの! オニのいぬまにひるねってやつだよ」

ドラえもん「しょうがないなぁ。じゃあ二人のことはぼくが見ておいてあげるからおやすみ」

のび太「またあとでね」

ドラえもん「さて……一人になってしまった。どうやって時間をつぶそうかな」

ドラえもん「……そういえば、アニメでも疑問だったけどこの二人は一体どんな会話をしたら
       仲良くなれるんだろう……? 実はちょっと気になってたんだよね」

ドラえもん「そうだ! テキオー灯~! これで暑さなんてへっちゃら。ぼくも参加しよーっと」


ピカー。ガチャ。


ドラえもん「おじゃましまーす」




224: ◆takaJZRsBc 2018/02/11(日) 02:08:07.10 ID:asquw54r0


大和田「あ? どうした、ドラえもん」

ドラえもん「いや、外で待ってるのもヒマだからぼくもやろうかなと思って」

石丸「だ、大丈夫なのかね?! ドラえもん君はロボットだろう? 機械がこんな暑い所にいたら……」

大和田「へっ、この程度でもう暑いのか? 大したこたねえな」

石丸「な、違うぞ! 僕は鍋焼きうどんでも食べたいくらいだが、ドラえもん君は耐えられるのかと……」

ドラえもん「ご安心を。ぼく耐熱加工もされてるから」

石丸「……最近の科学は本当に凄いな」


そしてドラえもんは一部始終を目撃することになる。


             ・

             ・

             ・


大和田「……でよぅ、親父は酒乱の気があってそれに愛想つかしたお袋は俺と兄貴を置いて
     出てっちまった。俺は兄貴と愛犬のチャックと支え合ってずっと生きてきたんだよ」

石丸「なんという話だ!」ブワワッ

ドラえもん「そんな悲しい話があったんだね!」うっうっ

大和田「なのにチャックは寿命、兄貴も独立してもういねえしな……」

ドラえもん「一人でチームを守らないといけないんだね!」

石丸「……やはり不良も生まれが悪い訳ではなく環境が悪かったのだ。良かろう!
    こうなれば僕の生い立ちも聞かせようではないか!」




225: ◆takaJZRsBc 2018/02/11(日) 02:19:50.20 ID:asquw54r0


             ・

             ・

             ・

石丸「……総理だった祖父の汚職事件をきっかけに我が家の心はバラバラ! 家にはマスコミが殺到し
    母はノイローゼで倒れ、僕も学校で壮絶なイジメに遭い見返すために僕は勉強を頑張った!」

大和田「マジかよぉぉぉ! 単なる勉強大好きガリ勉くんじゃなかったのかよぉっ!」

ドラえもん「かわいそうにぃぃ! さぞかしつらかったねぇ!」

石丸「……しかもこの話にはまだ続きがあって、元々天才で世を舐めていた祖父は挽回しようと
    軽い気持ちで事業を起こしたのだが当然のように失敗。その借金は今も我が家に……」

大和田「借金持ちとかマジかよぉぉぉ! うちより貧乏とかぁぁぁ!」ブワワッ

ドラえもん「がんばって! 気を強く持つんだ!」うっうっ!

石丸「ふ、ふふ……わかっているさ。だから僕は努力という確実な力を手に入れ、世を舐めた
    天才が天才のために作る世界ではなく、真に弱者救済を考えた政治家となるのだっ!」

大和田「やるじゃねーか!」

ドラえもん「なんて立派なんだぁぁぁ! のび太くんに爪のアカでも飲ませたいよ!」

大和田「負けてらんねえええ! よし! 俺もここから出たら世界一の大工になるぞ!」

石丸「君ならなれる! 絶対に!」

大和田「次はドラえもん! お前なんか話せ」

ドラえもん「え? ぼく? きみたちに比べたら全然苦労なんてしてないけど」

石丸「いや、苦労してない人間なんていない! 君はロボットだが何かあるはずだ!」

大和田「遠慮すんなって! お前みたいなお人よしはぜってえなんか苦労してるぜ」

ドラえもん「じゃあ、苦労じゃなくて単なる愚痴かもしれないけど……」




226: ◆takaJZRsBc 2018/02/11(日) 02:30:49.29 ID:asquw54r0


             ・

             ・

             ・

ドラえもん「それでいつもいつものび太くんはぼくに頼ってばかりで……!
       ママもパパも自分達の責任は置いといて僕が甘やかすからって!」

大和田「……ああ、そりゃあ大変だなぁ」

ドラえもん「大体のび太くんがバカでドジでノロマで根性無しでナマケモノなのが悪いんだ!」

石丸「ウム。確かにのび太君は僕から見てもど~しようもないぐうたらだ」

大和田「まあ、言いたかないがどんくさいよなぁアイツ。そのうえ頭も俺と同じくらいってのは……」

ドラえもん「それなのに何か問題があるとぼくの責任問題に……」うっうっ

大和田「やっぱオメェ苦労してんじゃねえか!」

石丸「こうしよう! 僕達三人は内容こそ違うがみな同じように苦労をしてきている。
    サウナでその苦労を分かち合った僕らは今日から心の友だ!」

大和田「いいな! 心の友よ~!」

ドラえもん「……あの、言いにくいから兄弟にしない?」

石丸「それもいい! 兄弟!」

大和田「おう、兄弟! ウワッハッハッハッ!」


ガシッ!


ドラえもん「ぼくも~!」ガシッ




227: ◆takaJZRsBc 2018/02/11(日) 02:33:01.15 ID:asquw54r0



                  ╂


のび太「あ~、よくねた。サウナの決着はついたかな~」

ドラえもん「あ、のび太くん。目が覚めたの?」

のび太「うん。……て、どうしたのこれ?」

石丸「」キュ~

大和田「」キュ~

ドラえもん「それがね、ぼくもヒマだったからテキオー灯を使って勝負に参加したんだ。
       ……ただ、そのことを忘れておしゃべりが過熱したから二人とも倒れちゃって」

ドラえもん「いまお医者さんカバンで看病してる所だよ」

のび太「高校生が二人もこれじゃみっともない!」

ドラえもん「まあそう言わないで。……貴重な話がたくさん聞けたよ」

のび太「どんな話?」

ドラえもん「プライバシーに関わるから細かくは言えないけど、要は二人とも苦労人だったんだ」

のび太「ふーん、おたがい苦労してるから気が合ったってこと?」

ドラえもん「そんな感じだね。とにかく、これで外の状況を知っても二人は支え合っていけるはず」

のび太「じゃあ次のこと考えようか」

ドラえもん「でもいちいちタイムテレビで調べるの大変なんだよね。死体を見るのもイヤだし……
       と、いう訳で今回はこれを使おうと思う。○×うらない~」パパラパッパパー

のび太「それ、覚えてる。たしかしつもんすると○×でこたえてくれるんだよね?」




228: ◆takaJZRsBc 2018/02/11(日) 02:36:13.61 ID:asquw54r0


ドラえもん「そうそう。これに聞いてみよう。今夜事件は起こるかな?」


 ×ブッブー!


のび太「今日はだいじょうぶだね。よかったよかった」

ドラえもん「じゃあ質問を変えて、明日事件は起こる?」


 ○ピンポーン!


のび太「た、たいへんだ!」

ドラえもん「いつだろう……事件は昼時間に起こる?」


 ×ブッブー!


のび太「じゃあ明日の夜だ!」


 ○ピンポーン!


ドラえもん「少し面倒だけど、誰が犯人か一人ずつ確認していこう!」

のび太「犯人は大和田さん?」


 ×ブッブー!


ドラえもん「セレスさん?」


 ×ブッブー!




229: ◆takaJZRsBc 2018/02/11(日) 02:38:57.46 ID:asquw54r0



のび太「あれ? ちがうの? じゃあ山田さん!」


 ×ブッブー!


のび太「ええ? ほかにあぶない人なんていたっけ? あ、江ノ島さんとか?」


 ×ブッブー!


ドラえもん「本名で聞かないとダメなんじゃないかな? 犯人は戦刃むくろさん?」


 ×ブッブー!


のび太「じゃあ、ジェノサイダー翔だ!」


 ×ブッブー!


のび太「十神さん!」


 ×ブッブー!


のび太「そんな! もうほかにコウホなんていないよ! いったいだれが……」

ドラえもん「まさか……もしかして大神さんかな?」


 ○ピンポンピンポーン!


ドラえもん「な、なんと?!」

のび太「なんだってー?!」




236: ◆takaJZRsBc 2018/02/21(水) 21:43:13.40 ID:sIY+moil0



  第十話 ひとじちきゅうしゅつ大作戦!


ドラえもん「つ、ついに恐れていた事態が来たか!」

のび太「え? 大神さんが犯人?! あ、そうか。ひとじちのせい?」


 ○ピンポーン!


ドラえもん「まずいな……急いで人質を助け出して大神さんに知らせないと!」
 
のび太「でも明日の夜に事件がおこるんでしょ? ならまだいそがなくても平気じゃない?」


 ×ブッブー!


ドラえもん・のび太「え?」

のび太「なに? 今なににはんのうしたの?」

ドラえもん「急いだ方がいいってこと?」


 ○ピンポーン!


のび太「どうして?!」


シーン。


ドラえもん「ダメだよ。○か×で答えられる質問をしないと。ええと、黒幕に知られるから?」


 ×ブッブー!




237: ◆takaJZRsBc 2018/02/21(水) 21:53:59.68 ID:sIY+moil0


ドラえもん「ちがうのか……」

のび太「で、でもさ! こんどは大和田さんのときとちがってカンタンだと思うよ。
     だって、ひとじちさえ助ければいいんでしょ?」


 ×ブッブー!


のび太「あれ、ちがうの?」


 ○ピンポーン!


のび太「そんなぁ! なにがちがうっていうのさ!」

ドラえもん「人質を助けるだけじゃ終わらない……他にしなければいけないことがあるってことかな?」


 ○ピンポーン!


のび太「だから、それがわからないんだって言ってるのに」

ドラえもん「……人殺しなんてしなくていいって、大神さんを納得させなきゃダメってこと?」


 ○ピンポーン!


のび太「ワケがわからないよ。ひとじちを助けたらもう人殺しなんてしなくていいじゃない?」

ドラえもん「大神さんはとても冷静でいろいろと考えている人だからなぁ。
       中途半端な決意じゃ人なんて殺したりしないってことじゃない?」


 ○ピンポーン!


のび太「でも、じゃあぼくたちはどうすれば……」




238: ◆takaJZRsBc 2018/02/21(水) 22:10:39.58 ID:sIY+moil0


ドラえもん「とにかく今は人質を助けることが最優先じゃないかな?」


 ○ピンポーン!


ドラえもん「ほら、道具もこう言ってるし。それに……大和田さんのことは付き合いの浅い
       ぼくたちよりも大亜さんの方がずっとよくわかってた。大神さんのことは
       大神さんの家族の人に聞いた方がいいんじゃないかな?」


 ○ピンポーン!


のび太「なるほどね……じゃあ、行こうか」

ドラえもん「あ、待って。大亜さんの時と違って今回は今の時代なんだ。
       外は汚染されてるらしいからまずはテキオー灯を浴びて」


ピカッ。


のび太「この二人はどうしよう……」

ドラえもん「まだしばらく起きなそうだし、全部終わったらタイムマシンでこの時間に戻ろう」

のび太「そうだね」

ドラえもん「よし! ではどこでもドア~」


  ― 学園の外 ―


のび太「外に出たのはいいけどさ……ひとじちってどこにいるの?」

ドラえもん「あ……」

のび太「もう! かんじんなところでぬけてるんだから!」




239: ◆takaJZRsBc 2018/02/21(水) 22:23:31.45 ID:sIY+moil0


ドラえもん「えーっと……大神さんの道場はかなり古くて大きいって苗木くんが
       言ってたから、誰かに聞けばわかるんじゃないかな?」

のび太「そっか。あ、見て! あそこにテレビがあるよ!」

ドラえもん「……学園の中が映ってるね」

のび太「全国チューケイされてるって言ってたもんね。ということは、ぼくたちのかおも
     みんな知ってるのかな? このままあるくのってマズくない?」

ドラえもん「マズイなんてもんじゃない。ぼくたちの正体が江ノ島さんにバレちゃう!」

のび太「どうしよう! なにかでかおをかくさないと!」

ドラえもん「待って。……いいこと思いついたよ」


             ・

             ・

             ・


モノクママスク1「あーちっきしょー! なんでいつもいつも田中の奴ばっかり
         ソニアさんと組めるんだよ。不公平だろおい!」

モノクママスク2「男が決まったことにガタガタ文句言うんじゃねえよ。あんまりうるさいとバラすぞ」

モノクママスク1「あーソニアさんに会いたい。ソニアさーん!」

のび太「今だ! ショックガン!」


ビシュッ! ビシュッ!


モノクママスク1「ぎゃっ」

モノクママスク2「しまっ……!」


バタリ。




240: ◆takaJZRsBc 2018/02/21(水) 22:34:02.55 ID:sIY+moil0


ドラえもん「よし、この二人からマスクをはぎとろう」ゴソゴソ

のび太「わあ、見てドラえもん。この人カミの色がピンクだよ。服も黄色だし!」

ドラえもん「派手だねぇ。こっちの子はスーツ着てる。実はお金持ちだったりして」

のび太「ま、いいや。さっさとだれかに聞いてみよう」

モノクママスク3「退屈っすー。なんかおもしろいことないっすかねー?」

のび太「お姉さん、こんにちは!」

モノクママスク3「うっきゃー! なんか変なのいるっす! 青くて丸い変なのっすよ!」

ドラえもん「すみません、ぼくたち江ノ島さんに言われて大神さんの人質に
       差し入れするよう命令されたんですけど、場所を聞き忘れちゃって」

モノクママスク3「差し入れっすか! いいっすねー。唯吹達にもほしいっす! お腹減ったっす!」

のび太「それでお姉さん、場所を知りませんか?」

モノクママスク3「うーん。大神さくらの人質っすよね? なら飛騨山脈の奥深くにある
         大神道場にみーんないると思うっすよ。詳しい場所は地元の人に聞くといいっす」

のび太「ありがとう、お姉さん!」

ドラえもん「では、さようなら!」

モノクママスク3「気をつけるっすよー!」ブンブン


ダダダダ……


モノクママスク4「おい澪田、今誰と話していた?」ドスドスドス

モノクママスク3「え、仲間っすよ?」

モノクママスク4「フン、ならいいが」

モノクママスク3「上の命令で大神道場に差し入れに行くって言ってたっす!」




242: ◆takaJZRsBc 2018/02/21(水) 22:43:55.37 ID:sIY+moil0


モノクママスク4「差し入れか……。俺達にも欲しいものだな。この脂肪を保つのは大変なんだぞ」グギュー

モノクママスク3「タハー! 空腹で唯吹のお腹もロックンロールしちゃうよ!」ギュルルル


             ・

             ・

             ・


のび太「なんか、悪い人じゃなさそうだったね」

ドラえもん「いろいろな人がいるからね。暴力性が強い人と弱い人がいるんだろう。
       さて、じゃあ飛騨山脈の大神道場に向かうよ!」


               ◇     ◇     ◇


モノクママスク5「…………」

ドラえもん「すんなり辿り着いたのはいいけど……」コソ

のび太「なんか大きくてすっごくつよそうな人がいるよ!」コソコソ

ドラえもん「なに、また不意打ちしちゃえば問題ないよ。ショックガン!」


ビシュッ!


モノクママスク5「ム?! ……今なんか当たったかのう?」

ドラえもん・のび太「ショックガンが効かない?!」

のび太「な、なんなのあの人?!」

ドラえもん「わからない! けど、きっとすごく体を鍛えているんだ!」




243: ◆takaJZRsBc 2018/02/21(水) 22:55:34.57 ID:sIY+moil0


のび太「どうする? ショックガンがきかないなら空気砲を使う?」

ドラえもん「人間相手に空気砲を使うのはちょっとなぁ……万が一大怪我でもさせたら
       大変だし。それに効かないで反撃されるのが一番怖いよ」

のび太「じゃあどうするのさ!」

ドラえもん「……よし、これでいこう」


             ・

             ・

             ・


のび太「すみませーん」

モノクママスク5「なんじゃ、お前さんら見ない顔だのう?」

ドラえもん「江ノ島さんの命令で」

のび太「おじさんにさしいれに来ました!」

モノクママスク5「おう! そうじゃったか。わざわざ東京くんだりからすまんのぉ」

ドラえもん「いえいえ、これどうぞ! 芋ヨウカンです」

モノクママスク5「わしだけもらうのは気がひけるからお前さんらも食っていいぞ」ムシャムシャ

のび太「(え?! どうしよう……)あ、ありがとうございま……」

モノクママスク5「ム、これはっ?! ……クソじゃあああああああああああああ!」グギュギュギュギュ!


ダダダダダダダダ!


のび太「すごいね、あのクスリ。もうきいたよ!」

ドラえもん「そんなに強力な下剤だったかなぁ……?」




244: ◆takaJZRsBc 2018/02/21(水) 23:04:21.84 ID:sIY+moil0


のび太「いいじゃない! それより、とおりぬけフープだしてよ!」

ドラえもん「はいはい。とおりぬけフープ~」パパラパッパパー

のび太「みなさーん、助けにきましたよー!」

大神父「……何者だ御主ら?」

門下生「と、突然現れたぞ?!」

門下生「罠ではないか?」

ドラえもん「のび太くん! このマスク取らなきゃダメだよ」

のび太「あ、そうだった」


二人はマスクを外す。


大神父「御主達……さくらと共に希望ヶ峰にいるはずでは……?」


部屋の中央にはテレビが置いてあった。絶望させるためだろう。


のび太「くわしい話はあとでします!」

ドラえもん「今はとにかく脱出しないと。どこでもドア!」

門下生「こ、これは面妖な?!」

門下生「こんな不可思議なことがあっていいのか……師範、どうします?」

大神父「……どうせここにいても死を待つのみ。彼等を信じてみよう」




245: ◆takaJZRsBc 2018/02/21(水) 23:15:18.30 ID:sIY+moil0


             ・

             ・

             ・


ドラえもん「ここまで来れば一安心かな」

のび太「さっきの人はしばらくトイレからでられないだろうしね」

大神父「して、事情を聞きたい、御主等は何者だ?」

ドラえもん「えーっと、どこまで話せばいいのやら」

のび太「かくかく」

ドラえもん「しかじか」

大神父「……そうか。わざわざさくら達を助けるために遠くから。有り難いことだ」

門下生「欲を言うなら、ケンイチロウ殿も助けて欲しいんだがのう……」

大神父「これ、余計なことを言うでない。危険だ」

のび太「ケンイチロウ?」

ドラえもん「その人がどうかされたんですか?」

大神父「聞かれた以上は話すが……ケンイチロウはな、世界最強の男だった」

のび太「あれ? 世界最強って大神さんのことじゃないの?」

ドラえもん「それに『だった』って……」

大神父「ケンイチロウはさくらのライバルであり良き友人であった。……もしかしたら
     それ以上の想いもあったかもしれん。だが、病に冒されてしまったのだ」

のび太「病気になっちゃったの?」




246: ◆takaJZRsBc 2018/02/21(水) 23:34:03.41 ID:sIY+moil0


ドラえもん「それで、そのケンイチロウさんは今どこに?」

大神父「……少しでもさくらの側にいることを望み、希望ヶ峰病院に入院してたはず。
     今はどうしているかわからぬ。もしかしたら、もう既に死んでいる可能性もある」

大神父「希望ヶ峰学園周辺は絶望共の巣窟だ。行かなくても良い。危険過ぎる」

ドラえもん「……ちなみにその話を大神さんは?」

大神父「知らぬはずだ。既に希望ヶ峰はシェルター化していたし、なにより
     今のさくらは記憶がない。知っている訳がないだろう。もう終わった話だ」

ドラえもん「そうだったんですか……」

のび太「そんな……」

大神「気に病むことはない。我等を助けに来てくれただけで十分だ。感謝している。
    それより、何か力になれることはないだろうか? 礼がしたい」

のび太「そうだ! ドラえもん、大神さんをどうやってとめるか聞かないと」

ドラえもん「ああ、うん。実はですね……」


二人は事情を話す。


大神父「……成程な。まず御主等に聞きたいが、我等を救った後どうやって
     さくらに我等の無事を知らせるつもりだった?」

のび太「え、ふつうに口で……」

ドラえもん「ああ、そうか。大神さんは慎重な人だから、証拠を見せないと
       信じてなんかくれないか。むしろぼくたちが疑われちゃうかもしれない」

のび太「ぜんぶホントのことを言っちゃう?」




247: ◆takaJZRsBc 2018/02/21(水) 23:47:39.61 ID:sIY+moil0


ドラえもん「それが一番なんだけど、大神さんはいつも朝日奈さんと一緒だからなぁ。
       今回動機が発表されて朝日奈さんも不安がってるから話すチャンスがない」

のび太「もしかして、どうぐが言ってたひとじちを助けるだけじゃダメって
     これのことかな? せっかく助けてもつたえなきゃイミないもんね」

ドラえもん「これはうっかりしてたなぁ……」

大神父「我としては……」

ドラえもん・のび太「……ん?」

大神父「同胞のために我が身を犠牲にするという考えは素晴らしい。だが、他人を
     傷付けてまで生きたいなどと我は思わぬ。それも相手が元の学友では、な」

大神父「さくらに伝えてくれ。地上最強は我が一族の悲願。そのためならば元より
     我等は死など恐れぬと。仲間と共に試練を乗り越えてこそ最強だと伝えて欲しい」

大神「たとえ我の言葉だとわからなくとも、この言葉を聞いて何も思わぬさくらではないだろう」

ドラえもん「……わかりました」

大神父「後のことは我に任せよ。黒幕に悟られぬうちに戻るが良い」


タイムホールの中にて。


ドラえもん「さて、気付かれないうちに帰ろう」

のび太「まって。せっかくだし、ケンイチロウさんて人も探して助けない?」

ドラえもん「え? でも、その人は今回の事件とは無関係だよ?」

のび太「そうだけど、大神さんがかわいそうだよ。どうせぼくたち大和田さんの
     お兄さんも助けてるんだし、もう一人くらいいいじゃない」

ドラえもん「それもそうか。じゃあ、過去へ行こう!」




255: ◆takaJZRsBc 2018/03/03(土) 20:27:07.88 ID:Ol4mcOtQ0



  第十一話 大神さんとおとめごころ


  ― 一ヶ月前 希望ヶ峰病院 ―


ケンイチロウ「ゴホッゴホッ!」

ケンイチロウ(……俺もあまり長くはない。少なくともさくらが外に出るまでは保たないだろう。
     最期にさくらと一戦交えたかったが、約束を違えることになってしまったな……)

ケンイチロウ(お互い不本意な結果で終わってしまったが、これも天命か。致し方あるまい。
     せめて顔くらい見たかったが、こんな世の中ではな……)


コンコン、ガチャッ。


のび太「こんにちは」

ケンイチロウ「……何者だ?」

ケンイチロウ(この病院にはもうごく僅かな関係者以外誰もいないはずだが……
     そもそも、こんな治安の悪い場所に何故子供が?)

ドラえもん「ケンイチロウさんですよね? ぼくたちはあなたを助けに来ました」

ケンイチロウ「何だと?」

のび太「ぼくたち大神さんのおともだちなんです!」

ケンイチロウ「さくらの……だが、どうやって……俺の体は既に……」

ドラえもん「まあまあ、だまって見てて下さい! お医者さんカバン~」


ドラえもんはお医者さんカバンでケンイチロウの体を治療する。




256: ◆takaJZRsBc 2018/03/03(土) 20:47:23.97 ID:Ol4mcOtQ0


ケンイチロウ「体が、動く……馬鹿な! 本当に治ったというのか?! お前達は一体……」

のび太「ケンイチロウさんにはぜんぶ話しちゃってもいいよね?」

ドラえもん「そうだね。実は……」


二人は自分達が未来からやってきたこと、コロシアイ学園生活について等を話した。


ケンイチロウ「そんなことが……」

のび太「じゃあぼくたちもとの時間にかえります。大神さんを説得しないと」

ケンイチロウ「待て」

ドラえもん「どうかしましたか?」

ケンイチロウ「お前達の持つ道具の中に、相手の夢の中に行けるものはないか?」

ドラえもん「ありますけど……」

ケンイチロウ「それを貸してくれないか? 俺が直接さくらを説得すれば、あいつを止めることが
     出来ると思う。いや、絶対に止めてみせる。さくらを人殺しになどさせたくない」

のび太「ケンイチロウさん……」

ケンイチロウ「一ヶ月後の未来から来たと言ったな。夜、俺はこの病院の屋上で待っている。
     お前達はそのタイムマシンとやらで先回りしていてくれ」

ドラえもん「わかりました! あなたを信じます」

ケンイチロウ「未来で会おう!」




257: ◆takaJZRsBc 2018/03/03(土) 21:09:05.55 ID:Ol4mcOtQ0


ドラえもん「さて、この二人はまだ倒れてるね」

のび太「夜までまだ時間あるし、のんびりしていようよ」

ドラえもん「とりあえずこの二人を起こさないと。もしもーし! 起きてー!」

大和田「あー……」

石丸「うむぅ……」

のび太「起きてったら!」

ドラえもん「起きないなぁ……しょうがない。僕が部屋まで運んでおくよ」

のび太「……がんばって」

ドラえもん「うんせ、うんせ」

のび太「ドラえもんが力持ちでよかった」


  ― 同時刻 病院前 ―


モノクママスク6「坊ちゃんと左右田をやったのは貴様か?」

モノクママスク7「孤高の魔拳士よ。我が結界の中に一人でやって来たのは褒めてやる。
         だがこの俺様が魔力を解放した以上、貴様の命運はここまでだ」

モノクママスク6「我々は仲間を倒され気が立っている。貴様もつくづくついてないな」

モノクママスク8「オメエ弐大のオッサンと同じくらい強そうだな! オレが倒してやる!」

ケンイチロウ「……無駄な争いは好まんが、俺の邪魔をするなら容赦はしない」


ドガガガガガガガッ!




258: ◆takaJZRsBc 2018/03/03(土) 21:21:34.45 ID:Ol4mcOtQ0


モノクママスク8「な、なんだコイツ?! つええなんてレベルじゃ……」

モノクママスク7「ぐふっ! 馬鹿な?! 我が地獄の炎が効かないだと?!」

モノクママスク6「ほ、本部に応援を要請する……撤退だ!」


ダダダダダ……


ケンイチロウ「口ほどにもない」

ケンイチロウ(だが奴等は所詮絶望軍団の一部……これから大勢仲間が来るだろう)

ケンイチロウ「それでも俺は進まねばならん。全ては約束のために!」


  ― 希望ヶ峰病院屋上 ―


夜、そこには大量のモノクマに囲まれたケンイチロウがいた。


ケンイチロウ「自ら袋小路に飛び込んだようなもの……こうなることはわかっていた」


カッと目を見開く。


ケンイチロウ「だが、俺は約束を果たさねばならんのだ! 彼らが来るまで一歩も退かん!」


激闘が始まった。

ケンイチロウの正拳突きがモノクマを貫く。破壊されたモノクマを素早く持ち上げ
迫ってきていた別のモノクマにたたき付ける。背後からの攻撃は気配で察し、ケンイチロウは
振り向かずに跳躍して空振りをした敵の後頭部に踵を叩き込む。




260: ◆takaJZRsBc 2018/03/03(土) 21:35:53.88 ID:Ol4mcOtQ0


ケンイチロウ(一体一体はさほど強くないが、機械だから硬いし重い。
     長期戦になれば壊れるのは俺の体だろう)


だが、退く訳にはいかない。友の、いや愛する人の正念場なのだ!


ケンイチロウ「うおおおおおおおおおおおおおおおおっ!!」


             ・

             ・

             ・


ケンイチロウ「フゥ……フゥ……」

ケンイチロウ(彼らは、まだか……!)


世界最強の男たるケンイチロウだが、無限に湧き出る疲れを知らない人形相手に限界が来ていた。


ケンイチロウ(俺は……ここまでなのか……)

ケンイチロウ(……さくら)

「空気砲!」


ドカーン!


ケンイチロウ「来たか!」

のび太「おくれてごめんなさい!」

ドラえもん「さ、ケンイチロウさん。とりあえずぼく達に掴まって!」




261: ◆takaJZRsBc 2018/03/03(土) 21:45:47.95 ID:Ol4mcOtQ0



ヒュルルルル……


ドラえもん「ここならもう大丈夫かな?」

ケンイチロウ「待ちわびたぞ」

のび太「じゃあ、ドラえもんはやく!」

ドラえもん「うん。夢はしご~」パパラパッパパー

ドラえもん「この道具は、人の夢に直接はしごをかけて中へ入ることが出来るんだ!」

ケンイチロウ「理論は全くわからんが、要はそれを渡っていけばいいのだな?」

ドラえもん「はい。じゃあ大神さんの夢に繋げるので、ケンイチロウさんお願いします」

ケンイチロウ「よし。行くぞ」

ドラえもん「僕達はユメテレビで見てますね」


               ◇     ◇     ◇


夢の中。白いもやの中を大神は歩いている。どこか懐かしい場所へ出た。


大神「……ここは、どこだ?」

ケンイチロウ「俺とお前が初めて手合わせした場所を忘れたか」


振り向くとそこには懐かしい顔がいて、もやもすっかり晴れていた。


大神「お、お主は……」

ケンイチロウ「久しぶりだな、さくら」




262: ◆takaJZRsBc 2018/03/03(土) 22:02:07.17 ID:Ol4mcOtQ0


大神はすっかり元気になったケンイチロウの姿を見て目を開く。


大神「まさか……いや、そうか。これは夢なのだな。そうでなければ……」

ケンイチロウ「確かにこれは夢だ。だが、夢であって夢ではない」

大神「? どういう意味だ?」

ケンイチロウ「俺は現実でも病を治し、今は外の世界で元気に暮らしている。
     それも、お前のよく知る者達の手によってな」

大神「……そうか。それは何よりだ」

大神(夢は自身の潜在的欲求が出やすいと言うが、誠だったな。……だが夢でもいい。
    元気になったそなたと相見えることが出来たのなら、我はもう思い残すことはない)

ケンイチロウ「馬鹿なことを考えるなよ」

大神「……我を止めにきたのか?」

ケンイチロウ「そうだ。道場の人間達は無事だ。俺を救ってくれた彼らの手によって
     救出された。だからもうお前が手を汚す必要はない」

大神「ありがとう。たとえ夢でも、そう言ってもらえれば我は救われる」

ケンイチロウ「信じていないようだな。……当然か。ならば拳で語るのみよ」


構えるケンイチロウ。


ケンイチロウ「構えろ、さくら。俺がお前の目を覚まさせてやる」

大神(最期にケンイチロウに会えた上、手合わせもするか。我が考えていることといえ、
    都合の良すぎる夢だな。……だが、今は夢でもいい。醒めてくれるな)

大神「受けて立つ」




263: ◆takaJZRsBc 2018/03/03(土) 22:15:31.43 ID:Ol4mcOtQ0



             ・

             ・

             ・


大神「ぐっ! ハアハア……」

ケンイチロウ「お前の力はそんなものか!」

大神(なんという拳のキレ……最後に会った時と同じ。いやそれ以上だ)

大神「我も少しは強くなったつもりだったが……いや、見苦しい言い訳だな。完敗だ。お主の勝ちよ」

ケンイチロウ「弱いな」

大神「……そうか」

ケンイチロウ「お前の力はそんなものではないはずだ。いや、最後に会った時より
     確実に強くなっている。なのに何故こんなにも早く勝負がついたかわかるか?」

大神「お主が強くなったのだろう」

ケンイチロウ「違う。確かに俺も強くなったが、俺達が強くなる速さなどそう大して変わらん」

大神「…………」

ケンイチロウ「お前の目が濁ってしまったからだ。そんな目をしていては、俺の拳は見切れまい」

大神「……頼む、ケンイチロウよ。これ以上我を惑わせないでくれ」

ケンイチロウ「俺はお前の父上からも伝言を言付かっている。武人の誇りを忘れるなと」

大神「……!」

ケンイチロウ「さくら。モノクマとやらが、約束を守るという保障はどこにある。
     俺達の力は仲間を、それも非力な者を襲うためのものか?」

大神「我は……」




264: ◆takaJZRsBc 2018/03/03(土) 22:31:23.41 ID:Ol4mcOtQ0


ケンイチロウ「……そろそろ時間だな。俺はもう戻らなくてはならない」

大神「待ってくれ、ケンイチロウ!」

ケンイチロウ「仲間を……特にドラえもんとのび太の言うことを信じろ。彼等が何とかしてくれる」

大神「……何故お主がその二人のことを……?! それに信じろとは一体……」

ケンイチロウ「俺もお前を信じているぞ……」

大神「ケンイチロウ! 待って、待ってくれ! 我は、そなたとまだ……!」

大神「ケンイチロウ!」


バッ!


大神「ここは……」

大神(……そうか。やはり夢だったか。リアルな夢であった)

大神(誠であればどんなに良かったか……)ギュッ


               ◇     ◇     ◇


のび太「おかえりなさい」

ドラえもん「大神さん、思い止まってくれるかな?」

ケンイチロウ「言いたいことは全て伝えた。あとはあやつ次第よ。……だが俺はさくらを信じている」

のび太「ケンイチロウさん……」

ケンイチロウ「二人共、世話になったな。何と礼を言ったものか」




265: ◆takaJZRsBc 2018/03/03(土) 22:44:15.65 ID:Ol4mcOtQ0


ドラえもん「お礼なんていいです。喜んでさえもらえれば」

ケンイチロウ「絶望が蔓延る世の中になったが、主らはその中に降り立った一筋の希望かもしれないな」


しみじみとケンイチロウは呟く。


ケンイチロウ「子供にあまり夜更かしをさせる訳にもいかん。もう戻らねばならんだろう」

のび太「そうだね。そろそろかえらないと」

ドラえもん「じゃあケンイチロウさん、さようなら」

ケンイチロウ「次に会う時は脱出後だな。友よ、その時また会おう!」

のび太「さよーならー!」


ケンイチロウが去った後。


ドラえもん「さて、ぼく達も早く戻らないと江ノ島盾子に怪しまれる」

のび太「それにしてもさ、ドラえもん」

ドラえもん「なんだい?」

のび太「もしかして……大神さんてケンイチロウさんのことが好きなんじゃないかな?」

ドラえもん「え?! どうして?」




266: ◆takaJZRsBc 2018/03/03(土) 22:59:51.51 ID:Ol4mcOtQ0


のび太「だって、今まであんなカオ見たことなかったし。なんかちょっと赤かったし」

ドラえもん「言われてみれば……そうだよね。大神さんだって、年頃の女の子だもんね」

のび太「好きな人にとめられたんだもん。きっとやめてくれるよ!」

ドラえもん「そうだね。信じよう!」


                  ╂


大神「…………」


朝、珍しく早起きしたのび太とドラえもんが大神の元へ走り寄る。


のび太「おはよう、大神お姉さん!」

ドラえもん「おはようございます!」

大神「ウム、おはよう」

大神(二度目の動機でも結局事件は起こらなかった。恐らく、今日あたり
    いよいよ我に人を殺す命が下るだろう。こやつらと挨拶するのもこれが最後か……)

のび太「……ねえ、いいユメ見れた?」

大神「! 何のことだ?」

のび太「なんだか、うれしそうなかおしてると思って」

大神「嬉しそう……?」




267: ◆takaJZRsBc 2018/03/03(土) 23:20:50.42 ID:Ol4mcOtQ0


ドラえもん「夢に懐かしい人が出てきてたりして~?」ウフフ

大神「!!」

大神(まさか……知っている? 馬鹿な、そんなことがあるはずが……)


脳裏にケンイチロウの言葉がリフレインする。

『ドラえもんとのび太の言うことを信じろ』


大神(……まさか)

大神「知っているというのか……?」

のび太「なにが?」

ドラえもん「ぼく達はなーんにも知らないよ! 夢の中で起こったことなんてねー!」

のび太「ねえねえ、大神さんて好きな人とかいる?」

大神「想い人か……いるぞ」

のび太「大神お姉さんの好きな人ならきっとすごく大きくてつよい人だね!」ニヤニヤ

ドラえもん「ケンイチロウさんとお幸せに。……彼の言ったことを信じてあげて」ボソッ

大神「!! お主ら、やはり……!」

大神(方法はわからぬ。だが、あの夢はきっと正夢で人質は解放されたのだ!
    そしてそれはこの二人のおかげだとケンイチロウは伝えたかったのだろう)

大神(我の勝手な思い込みかもしれぬ。だが今はその“希望”を信じていたい……)

大神「ドラえもん、それにのび太よ……ありがとう」

のび太「ぼくたちなーんにも知らなーい」

大神「何となく、礼を言いたくなっただけなのだ」

ドラえもん「おかしな大神さん」フフッ

大神「そうだな……フッ」




280: ◆takaJZRsBc 2018/03/17(土) 22:29:52.94 ID:cQpvcNA00



  第十ニ話 腐川さんをすくえ!(前編)


のび太「そんなことよりはやく食堂に行こうよー! ぼくおなかすいちゃった」

大神「フフ、今日我はとても寝覚めが良い。お主らの好きな物を何でも作ってやろう」

ドラえもん「え、本当?! じゃあぼくドラ焼き!」

のび太「ぼくもー!」


パタパタパタ……


朝日奈「あ、こんなところにいた!」

のび太「お姉さん、おはよう」

ドラえもん「朝日奈さん、おはようございます」

朝日奈「二人ともおはよう! ……って、今はそれどころじゃないんだった。
     早く食堂に来て! すごく変なことになってるよ!」

のび太「へんなこと?」

ドラえもん「あー、もしかして……」


  ― 食堂 ―


『ウワーッハッハッハッハー!』


大和田「最高だぜ、兄弟!」

石丸「全くだ、兄弟!」

不二咲「いい感じだよ、二人とも!」

『ワッハッハッハッハッハッ!』

ドラえもん「やっぱりね……」




281: ◆takaJZRsBc 2018/03/17(土) 22:31:26.54 ID:cQpvcNA00


朝日奈「さっきからずっとこんな感じなの! ドラえもんとのび太は
     あの二人と相部屋でしょ? なにか知らない??」

のび太「思いあたることがありすぎてこまる」

石丸「おお! そこにいるのは心の友ドラえもん君ではないか!」

大和田「ほら! お前もこっち来いよ!」

ドラえもん「もう、人気者は仕方ないなぁ」

のび太「え?! ちょっと、ドラえもん?!」

不二咲「僕もいれてもらったんだよ! だからこれからよろしくね、ドラえもん!」

ドラえもん「はいはい、よろしく」

苗木「うわ! な、なに? なんで仲良く四人で肩組んでるの?!」

大神「……我にもわからぬ。食堂に来たら既にこうだったのだ」

舞園「何かのイベントでしょうか?」

葉隠「いや、俺が思うに儀式じゃねえかな?」

のび太「えーとですね、これにはいろいろふかいワケが……」

桑田「目ェ合わせるんじゃねえ! きっとなんか変な病気なんだ」

セレス「うつさないでもらいたいですわね」

石丸「失敬な! 僕達はただ血よりも濃い熱い男同士の友情に目覚めただけだ!」

大和田「サウナで熱く語り合ってな」

山田「男だらけで長時間サウナにこもり……アッー!」

腐川「不潔だわ……何やってるのよあんた達……」

苗木(お風呂に入ってない腐川さんがフケツって言っていいのかな……)




282: ◆takaJZRsBc 2018/03/17(土) 22:42:10.33 ID:cQpvcNA00


朝日奈「男同士って言っても不二咲ちゃんいるじゃん」

不二咲「あ、実は僕女装してただけで本当は男の子なんだぁー! 今まで騙しててごめんねぇ」


『?!』


「ファッ?!」

「えええええええええ?!」

「ヌフォッ?!」

山田「リアル男の娘ですとぉぉぉっ?!」

桑田「う、うそだろ……うそって言ってくれ……」

朝日奈「じょ、冗談だよね、不二咲ちゃん……?」

葉隠「そんな……不二咲っちにブロマイドを取らせてもらってファンに売る俺の計画が……!」

不二咲「ご、ごめん。本当なんだ。やっぱり気持ち悪いよね……」うるうる

腐川「気持ち悪いというかなんというか色々予想外すぎて反応に困るわよ!」

石丸「君達! 不二咲君が決死の告白をしたというのにその反応は何だ!! 女装を
    していたというのがそんなに悪いのか! ならばそんな記憶僕が忘れさせてくれよう!」


バッ!


石丸「忘れろ忘れろ忘れろビーム!!」

「ブフッ?!!」

苗木「え、な、何?! 石丸君?!」

朝日奈「いったいなにが起こったの……?!」

葉隠「う、宇宙人の仕業だべ! 全員仲良くキャトられたんだべ!」




283: ◆takaJZRsBc 2018/03/17(土) 23:00:11.45 ID:cQpvcNA00


大和田「ちげーよ、バカ!」


真面目な石丸の唐突なギャグは生徒達には少々インパクトが強すぎたようだ。


ドラえもん「ああっ! ぼく忘れろビームを見損ねちゃった! 密かに楽しみにしてたのに。
       もう一回ぼくに向かってビーム打ってよ、石丸くん!」

石丸「ム、親友のドラえもん君の頼みとあらば応えない訳にはいかないな!
    よし、では不二咲君も一緒にやろう!」

不二咲「えっ?! ぼ、ぼくも? ……えーと、こうかな?」

石丸「違う違う! 最初はこうだ! よし、それでは、せーの!」

石丸・不二咲「忘れろ忘れろ忘れろビーム!」

不二咲「過去のぼくのことなんて忘れろビーム! ビーム!!」

一同(かわいい……)

石丸「ハッハッハッ! 不二咲君は筋がいいな!」

桑田「ふ、不二咲ちゃんがそこまで言うならなぁ……」

山田「わ、忘れました! 僕は全部忘れましたぞ!」

大和田「さ、さすがだぜ不二咲!」

セレス「……もう呆れて口が塞がりませんわ。豚、紅茶のお代わり」

山田「ハイヨロコンデー!」


ハハハハハハ…

ピンポンパンポーン


モノクマ『オマエラ今すぐ体育館に来い!』

のび太「あ、よびだしだ」




284: ◆takaJZRsBc 2018/03/17(土) 23:11:18.75 ID:cQpvcNA00



  ― 体育館 ―


モノクマ「オマエラなに自分で秘密バラしてんだよ! さっさとコロシアイしろよ!」

苗木「誰がコロシアイなんてするもんか!」

「そーだそーだ!」

モノクマ「ムカーッ! いいよいいよ、じゃあお望み通り暴露してやろうじゃない」


そして暴露タイムが始まる。大半は大したことのない秘密だが、


モノクマ「はい。大トリは腐川さんだよ」

腐川「や、やめてやめてやめて! お願いよ!」

モノクマ「嫌でーす! 腐川さんの秘密。それはなんと……腐川さんの正体がジェノサイダー翔なことです!」

「は?」

「え?」

腐川「いやあああああああ!」

苗木「え、う、嘘でしょ?」

朝日奈「嘘だよ! だって腐川ちゃんは血液恐怖症じゃん! 人殺しなんて出来ないよ!」

十神「モノクマの言葉は本当だ。腐川は多重人格者なんだよ」

石丸「多重人格だと?!」

腐川「ああ、もう、終わり……終わりよ……」バタン!

桑田「おい! しっかりし……」


シュバッ!


ジェノ「呼ばれて飛び出てジェノサイダー! どーも、ジェノサイダー翔でーす!」




285: ◆takaJZRsBc 2018/03/17(土) 23:13:13.80 ID:cQpvcNA00


大神「な、なんだ?! 急に人が変わったようになったぞ!」

葉隠「ど、どうしたんだべ腐川っち? 舌がいつもより長いべ……」

ジェノ「アタシをあの根暗と一緒にすんじゃねえよ! アタシにはジェノサイダー翔っていう
     超イカした名前があるんだから!」

山田「ひ、ひぃぃぃ! 本物のジェノサイダー翔?!」

大和田「ガキ共は下がれ!」

ジェノ「……で、今どんな感じ? なにやってんの?」

のび太「ぼくたちね、あそこにいるモノクマっていうわるいやつにとじこめられて
     コロシアイをしろって言われてるんだ。もちろん、やらないけどね」

ジェノ「フーン、そうなんだ。で、坊やと……なんだその青いの? ダルマ?」

ドラえもん「猫型ロボット! えー改めまして、こんにちは。ぼくドラえもんです!」

のび太「ぼくは野比のび太!」

ジェノ「クールでナイスな殺人鬼翔ちゃんでーす! よろぴこ♪」

桑田「お、お前らなにフツーに話してんだよ! 相手は殺人鬼だぞ!」

石丸「子供の適応力というのは本当に目を見張るものがあるな……」

山田「もはやそういう次元を超えているような……」

ドラえもん「ねえ、翔さん」

ジェノ「はいはーい。なんすか? 質問?」

ドラえもん「ところで翔さんはここで誰かを殺す気はある?」

ジェノ「どーだろー? アタシは別にむやみやたらと襲ってる訳じゃなくてこだわりがあるからね」

のび太「なんだっけ? えーっと、たしか男の人しかコロさない?」

ドラえもん「のび太くん!」

十神「! 貴様どこでそれを……」




287: ◆takaJZRsBc 2018/03/17(土) 23:22:51.38 ID:cQpvcNA00


ジェノ「ピンポンピンポーン! 大正解! よく調べてんじゃん。でもそれだけじゃ
     全然ダメよん。アタシは男は男でも萌える男しか殺さない殺人鬼だから」

不二咲「燃える男?」

大和田「炎みたいに熱苦しい男ってことか? じゃあ兄弟ヤベーじゃねえか!」

石丸「なんと?! 僕か?!」

ジェノ「ちげーよ!! 汗くさサウナ兄弟は黙ってろ!」

苗木「そう言われても、普通は燃えるって言われたら熱いって意味じゃないの?」

ジェノ「あー、まこちんは割りと萌えるかも」

苗木「えっ?! どういうこと?!」

舞園「ダメです! 苗木君は殺させません!」

山田「あのー、ジェノサイダー翔殿。つかぬ事をお伺いしますが、萌えるとはあの萌えるですかな?」

ジェノ「イエース! ひふみんもよーくおわかりのあの萌えでーす! なにせアタシってば
     貴腐人コースまっしぐらな重度の腐女子ですからー! ゲラゲラゲラ!」

山田「な、なんと……文学少女の裏には真逆な性格の腐女子が潜んでいたとは、エ口ゲみたいな展開ですな」

葉隠「そこはまあ、ゲームみたいなくらいにしとこうや……」

セレス「意味はわからないですが、ろくでもないということはわかりましたわね」

石丸「ええい! つまりどういうことなのだ! 説明したまえ!!」


山田による萌えの講義。


江ノ島「えーっと、よくわかんないんだけど……」

舞園「私は同業者にオタク系アイドルがいるのでわかりました。萌え萌えキュンてことですよね!」

山田「アイドルによる萌えキュンとかご褒美キタコレ!」

大和田「わからねぇ……」




293: ◆takaJZRsBc 2018/03/17(土) 23:47:50.08 ID:cQpvcNA00


桑田「女の子ならわかるけど、男に萌えるって感覚はちょっとわかんねぇよなぁ」

ジェノ「わかんないならわかんないで結構。どーせあんたらむさいヤツらは対象外だからさ」

のび太「でも、写真にうつってた人たちそんなにかっこよくなかったような……」

ドラえもん「のび太くん、シッ!」

霧切「…………」

セレス「わたくしは彼女の気持ちがよくわかりますわ。イケメンをはべらせたいのは女性の夢ですからね」

朝日奈「私はそういうのはちょっと……好きな人と二人っきりの方が……」ゴニョゴニョ…

大神「朝日奈。我もわかるぞ、その気持ち……」フッ

モノクマ「え、なにこの空気」

モノクマ「みんな! ジェノサイダー翔は殺人鬼なんだよ? 確かにそこのむさいヤツらは
      対象外かもしれないけどさ、十神君や苗木君は殺されちゃうかもしれないんだよ?」

石丸「そ、そうだ! ジェノサイダーを放置しておく訳にはいかない! このままでは風紀が乱れてしまう」

葉隠「そうだべ! なんとかしねーと!」

葉隠(あーでも、苗木っちはどうせ内臓もらう予定だったしなぁ。殺された方が
    好都合かいな? でも流石に殺人はちょっとマズイような気もするし、ウーム)

ジェノ「あらん? アタシに攻撃しようってならこっちだって容赦しないわよ!」


ハサミジャキーン!


霧切「みんな、下がって! 大神さん、大和田君、お願い!」

大神「皆を傷つける気なら我も容赦はせぬ!」

大和田「女に暴力は振るわねえ主義だが、相手が殺る気ならこっちもこたえるぜ!」

のび太「わあ! タイヘンなことになっちゃった。ドラえもーん!」




294: ◆takaJZRsBc 2018/03/17(土) 23:49:01.78 ID:cQpvcNA00


ドラえもん「えっと、みなさん! 話し合いで解決しましょう!」

十神「話し合い? 殺人鬼とか? 馬鹿らしい」

ドラえもん「まあまあそう言わずに」

のび太「舞園さんの時みたいにみはりをつけたら?」

大神「名案ではあるが、こやつなかなか腕が立ちそうだ。暴れられれば厄介だぞ」

ジェノ「アタシだって監視されたり閉じ込められるのイヤだし」


ザワザワ……


ドラえもん(どうしよう……大神さんのことでいっぱいでジェノサイダーの対策を考えていなかった)

のび太(どうすればいいんだろう……)

ジェノ「閉じ込められちまったら白夜様の観察も出来なくなっちまうしなー」

苗木「あれ? ジェノサイダーは十神君が好きなの?」

ドラえもん「(! これだ!)そういえば十神くんはジェノサイダーさんの正体を知ってたよね?」

十神「それがなんだと言うんだ?」

ドラえもん「じゃあ、十神くんがジェノサイダーを見張ればいいんじゃないかな?」

十神「な?! 何だと、青狸! ふざけたことを言うな!」

ドラえもん「ぼくは狸じゃない! 猫型ロボット!」

不二咲「でも、もし十神君が殺されちゃったら……」

のび太「コロそうと思ってたらとっくの昔にできてたよね。でもいままで誰もコロしてないなら
     いまのところ、翔さんはだれかをコロす気はないってことなんじゃない?」

ジェノ「まあそうねん。まだ殺意が沸くほど萌えてないしアタシは基本的に面白いことが好きだからサ」




295: ◆takaJZRsBc 2018/03/18(日) 00:00:29.81 ID:Pe+kUqiB0


苗木「それに、十神君は腐川さんがジェノサイダー翔だって知ってたし、
    その殺す対象が萌える男だって知っていて側に置いていたんだよね?」

セレス「十神君はジェノサイダーのことをちっとも怖れていないようですが」

山田「僕達一般人は怖くて仕方がないので、ここは勇敢な十神白夜殿が是非!」

十神「な……ふ、ふざけるな?! 冗談ではない! 何故この俺が……!」

大和田「なんだ。いつも偉そうなこと言っといてやっぱりビビってんのかよ」

桑田「やーい、ビビり御曹司ー!」

朝日奈「怖がりー! 態度だけ大きい噛ませ―!」

ドラえもん・のび太「やーいやーい! かませメガネー!」

十神「(ブチッ)フン! いいだろう。貴様ら愚民が出来ないことをやってやるのも
    支配者の務めだ。十神の名にかけて、俺がこいつを監視してやる!」

(あ、チョロ)(こいつマジでチョロいな)(テラチョロすwww)


こうして、ドラえもん達の機転によってジェノサイダー監禁はなんとか免れた。
ついでに、出来るだけ大人数で固まっている方がいいとして舞園の監禁も解かれた。


十神「一つ言っておいてやる。不気味なことに、腐川は気絶以外にクシャミで人格が代わる」

山田「なかなか際どい設定ですな……」

十神「とにかく、殺されたくないなら胡椒を肌身離さず持ち歩くことだな。フン」


スタスタスタ。


ジェノ「なんだかんだツンデレな白夜様サイコー! アハハハハ!」


ダダダダダ!




296: ◆takaJZRsBc 2018/03/18(日) 00:07:41.05 ID:Pe+kUqiB0



「…………」


桑田「なんだったんだよ、まったく……」

大神「よくわからない人物であったな」

江ノ島「あんま関わりたくないね」

霧切「ただ、そこまで警戒することはないと思うわ。この閉鎖空間で人が死ねば、
    真っ先に殺人鬼である自分が疑われることくらいはわかるでしょうし」

石丸「とりあえず、十神君の情報は非常に有用だったな。みんな、胡椒を持つぞ!
    特に苗木君と不二咲君は何があっても絶対手放してはいけない!」

不二咲「う、うん」

苗木「わかった」


  ― 三日後 ―


ドラえもん(で、月日が経つのは早いものであれから三日が過ぎたんだけどね……)

ドラえもん(どうなったかと言うと、まあ腐川さんは仲間はずれになっちゃったんだ。
       そりゃあそうなるよね。だって裏の人格は猟奇殺人犯なんだもん)

ドラえもん(事件が起こらないのはいいけど、今の空気が続くとみんなまいっちゃうよ……
       そもそもこれが原因で事件が起こるかもしれないし)

腐川「…………」

「…………」ヒソヒソ

「…………」ヒソヒソ

のび太「ドラえもん、ちょっと……」

ドラえもん「うん」




297: ◆takaJZRsBc 2018/03/18(日) 00:14:04.64 ID:Pe+kUqiB0



  ― 男子トイレ ― 


のび太「なんとかしよう!」

ドラえもん「そうだね。今のままじゃ腐川さんが可哀相だ。前は食堂とか人の多い所には
       そんなに顔を出さなかったのに最近やけにやって来るのはきっと寂しいんだと思う」

のび太「かわいそう……でもどうすればいいかな? 二重人格をなおす道具ってある?」

ドラえもん「そんな都合のいい道具はないよ……それにジェノサイダーを消したって
       ジェノサイダーが過去にやったことは消えないんだから結局変わらない」

のび太「うーん、むずかしいなぁ。今までは事件をふせぐことが目的だったけど、今回はちがうし」

ドラえもん「みんなと仲良くなるような出来事があればいいんだけど……」

のび太「だれとでも仲がいいといえば、苗木お兄さんにそうだんしてみようか」

ドラえもん「そうだね。きっと同じこと考えてるんじゃないかな」


             ・

             ・

             ・


苗木「良かった。ちょうど僕も同じことを考えてたんだ」

のび太「やったね。じゃあ三人でなんとかしようよ!」

ドラえもん「三人寄れば文殊の知恵って言うし、何か方法があるはずだ」

苗木「それで、僕思ったんだけどさ……」

ドラえもん「お、さっそくなにか考えが」




298: ◆takaJZRsBc 2018/03/18(日) 00:19:42.79 ID:Pe+kUqiB0


苗木「うん。腐川さんのことが気になってるのって僕達だけなのかなって」

ドラえもん「そうか! いきなり全員はムリでも何人か交流を持てばそれがキッカケになるってことだね」

のび太「お兄さんあたまいい!」

苗木「ハハ、そんなたいしたものじゃないよ。それじゃあ、手分けして聞き込みしてみる?」

ドラえもん「じゃあ早速……」

のび太「相部屋の二人にききにいってみよう」


  ― 石丸の部屋 ―


のび太「というわけなんだけど……」

石丸「またそんなことを……君達は本当に感心な子供達だな! 日本の未来は安泰だ!」ブワッ!

のび太「いやそこまでじゃないけど……」

ドラえもん「石丸くん、落ち着いて」

石丸「それで、腐川君のことなのだが……僕も正直今のままでは良くないとは思っている」

のび太「じゃあ……」

石丸「しかし……駄目なのだ。腐川君がジェノサイダーという人格とは別人だというのは
    頭ではわかっているのだが、どうしても折り合いがつかないというか……正直怖い」

石丸「ジェノサイダーの存在もやったことも主義思想もけしからんことばかりで
    風紀委員として放置する訳にはいかんと考えてはいるのだが、僕の力では……」

のび太「そっかぁ」

石丸「……君達は勇敢だ。殺人鬼相手に平然と話をすることが出来るのだから。
    時に人はそれを無知や蛮勇と罵るかもしれないが、僕は心から敬意を払う」

ドラえもん・のび太「…………」




299: ◆takaJZRsBc 2018/03/18(日) 00:30:23.21 ID:Pe+kUqiB0



  ― 大和田の部屋 ―


大和田「ああん? 腐川についてどう思うかって?」

のび太「うん。どう思う?」

大和田「別に。なんとも」

ドラえもん「最近一人で過ごすことが多くて可哀相じゃない?」

大和田「あいつは元から単独行動が多かったろ。それになにより、あいつは殺人鬼なんだぜ?
     ゾクの俺ですらさすがに殺しはやらなかったっていうのによ……」

のび太「でも、腐川さんとはちがう人格なんだよ?」

大和田「俺にはその人格が違うってえのがよくわからねえんだ。結局は同じ人間だろうが」

ドラえもん「うーん、そういわれると厳しいなぁ。ぼく達も専門的な知識がある訳じゃないし」

大和田「……ただな」

のび太「なに?」

大和田「心の友であるお前らが、真剣になんとかしたいっていうなら俺は黙って協力するぜ」

ドラえもん「大和田くん……」

大和田「男としちゃ女が暗え顔してんのにほっとくワケにもいかねーしよ」ポリポリ

ドラえもん(ぼく達が特訓したり、大亜さんに叱られたのがちゃんと成果に出てるんだなぁ)ジーン


少し照れながら頭をかく大和田を見てドラえもんは密かに感動していた。


  ― 舞園の部屋 ―


舞園「腐川さんですか。……実は私も心配になってたんです」

苗木「本当?!」




300: ◆takaJZRsBc 2018/03/18(日) 00:38:34.92 ID:Pe+kUqiB0


舞園「はい。私が白い目で見られるのは自業自得なので仕方がありませんが、腐川さんは
    自分の知らない間に起こったことで責められるんですよね? きっと辛いと思います」

苗木「うん。……良かった。これでとりあえず四人味方が出来たよ」

舞園「四人? もしかして、あとの二人はドラえもんさんとのび太くんですか?」

苗木「そうだよ。元々二人から相談されたのがキッカケなんだ」

舞園「そうですか。……あの子達って、なんだか不思議な二人ですね」

苗木「ハハッ、本当にね」

舞園「私に何が出来るかわかりませんが、もし何かあったら気軽に声をかけてください」

苗木「ありがとう!」


  ― 体育館 ―


桑田「あー? 腐川? ないな」

のび太「お兄さん、そこをなんとか……」

桑田「いや、ムリっしょムリムリ……だって殺人鬼だぜ? 突然豹変して襲われるかもしんねーし」

ドラえもん「でもほら、ジェノサイダーになってもコショウがあれば……」

桑田「……そういう問題じゃねーだろ。過去に何人も殺してんだぞ?」

ドラえもん・のび太「……うーん」

不二咲「ぼ、僕は腐川さんとも仲良くしたいなぁ……」

のび太「お姉……いや、お兄さん、やさしいなぁ」

桑田「マジかよ! お前一番危ないって言われてんのに!」




301: ◆takaJZRsBc 2018/03/18(日) 00:44:59.46 ID:Pe+kUqiB0


不二咲「わかってるんだけどさ、やっぱり可哀相……折角お友達になったんだから仲良くしたいよ」

不二咲「みんなが仲良しなら、きっと楽しいと思うんだ!」ニコッ

ドラえもん(天使……)ジーン

のび太(天使だなぁ……)ジーン

桑田(ヤベー、男に萌えるって気持ちがちょっとわかったかも。つーか、マジこいつ殺される……)

のび太「ところで、なんでいっしょにいるの?」

不二咲「僕ねぇ、野球ってやったことがなかったから桑田君に頼んで教えてもらってたんだぁ」

桑田「おう。のび太に比べりゃ不二咲の方が全然筋がいいぜ」

ドラえもん「そりゃあのび太くんより下手な人なんて存在しないよ」

のび太「そんな、ヒドイ!」


アハハハハハ!


  ― 朝日奈の部屋 ―


朝日奈「腐川ちゃんかぁ……気になってはいるんだけどね……」

大神「難しい所だな。腐川本人に罪はないが、ジェノサイダーのやったことはけして
    許されることではない。そしてジェノサイダーは腐川でもある」

苗木「そうだよね……」

朝日奈「仲良くしたいんだけど、どうしても怖くて……」

大神「出来る限り力にはなるつもりだが、どこまで期待に添えるかはわからぬ」

苗木「あ、いいんだ。その気持ちが大事だから。ありがとう」




302: ◆takaJZRsBc 2018/03/18(日) 00:49:45.70 ID:Pe+kUqiB0



  ― 食堂 ―


 ・テーブル1


葉隠「ムリだべ」

のび太「えーっと」

葉隠「ありえないべ」

ドラえもん「もうちょっとこう、やる気をですね」

葉隠「あ、俺ちょっと用事思い出したんでわりいなー」スタコラ

「…………」

のび太「……お姉さんは?」

江ノ島「ギクッ。アタシ? いや、マジムリだから」

ドラえもん(いや、あなたに関してはわかってたけどね)

江ノ島「そう言う訳なんで、じゃあバイキュー!」

のび太(古いよ、それ)


 ・テーブル2


山田「な、苗木誠殿、正気ですか?! 相手は殺人鬼……それも連続猟奇殺人犯ですぞ?!」

苗木「でもほら、それは別人格の時の話だしさ! 普段はまあ……」

山田「普段もそれはそれで問題ありですが」




303: ◆takaJZRsBc 2018/03/18(日) 00:55:56.56 ID:Pe+kUqiB0


苗木「……ま、まあそうだけど」

セレス「お人よしの苗木君には申し訳ありませんがあの方と仲良く、というのは不可能ですわ」

苗木「不可能とまで言わなくても……」

セレス「元より地味で暗い方でしたが、人格が変わったら変わったでお下品になりまして……
     正直、視界に入るのも不快です。わたくしとは住む世界が違うのですよ」

苗木(うーん、これは厳しいなぁ……)


               ◇     ◇     ◇


のび太「あ、お兄さーん!」

ドラえもん「どうだった?」

苗木「僕は朝日奈さん、大神さん、舞園さん、山田君、セレスさんに聞いてみたよ」

のび太「ぼくたちは同じ部屋のお兄さんたち二人と、あとは……」

ドラえもん「あとは桑田くん、不二咲くん、葉隠くん、江ノ島さんに聞いてみたよ」

苗木「残ってるのは十神君と霧切さんか。十神君なら多分自室かな」

のび太「え、きかなくていいよ。時間のムダだし」

ドラえもん「なんて言うかわかりきってるからね」

のび太「あの人セイカクわるいもん。大人げないし。だいたいお金もちだかなんだか
     知らないけど、高校生にもなって支配者とか帝王とかふつう言わないよね」

ドラえもん「の、のび太くん! ……まあ、ぼくもちょっとないなーとは思うけど言い過ぎだって」

苗木(と、十神君……! 子供達にここまで言われてるよ?! いいの?!)汗


ドラえもんものび太も十神に厳しい。




304: ◆takaJZRsBc 2018/03/18(日) 01:05:24.90 ID:Pe+kUqiB0


苗木「……じゃ、じゃあ霧切さんを探そうか」

ドラえもん「霧切さんなら事情を言えば手伝ってくれると思うよ」

のび太「うん、ぼくもそう思う」

苗木(なにこの信頼の差)


  ― 苗木の部屋 ―


のび太「で、どうすればいいの?」

ドラえもん「まずは反応の差をまとめてみようか」


・好意的
舞園、不二咲

・協力はしてくれそう
石丸、大和田、霧切

・微妙(だけどノリはいいので持って行き方次第)
朝日奈、大神

・無理
その他


苗木「うーん、まあ協力してくれる人をいれれば半分いるだけいいと思おうかな。
    とりあえず霧切さんには僕が事情を説明するから、後で集まって話し合いしよう」

ドラえもん「じゃあ他のみんなに声をかけておくね」


こうして苗木の部屋に半数近くの人間が集まり対策会議を開くことになった。




324: ◆takaJZRsBc 2018/03/31(土) 22:41:55.05 ID:uwbNG8xM0



  第十三話 腐川さんをすくえ!(後編)


石丸「それではこれより、第一回腐川君を救おう会の開始をここに宣言する!」


ワーパチパチパチ!

呼ばれた側なのにいつの間にか議長となっている石丸の音頭によって話し合いは始まったのだった。


石丸「とは言ったものの、正直僕も腐川君のことはまだ怖いしさっぱり名案がわかない。
    なので、まずはこの会の主催者である苗木君に意見を求めるぞ!」

苗木「えっ、僕?! えっと……僕もみんなの案が聞きたくて呼んだから、特に意見は……」

大和田「おいおい、しっかりしろよ主催者」

不二咲「でも、こういうのはデリケートな問題だからちょっと難しいかも……」

のび太「霧切お姉さんはなにかいいかんがえない?」

霧切「……悪いけど、コミュニケーションに関しては私よりみんなの方が得意だと思うわ」

石丸「何ということだ。これだけの人数が集まって一つも案が出ないとは……」

大和田「あー、どうすんだよ」

舞園「あの……」

苗木「舞園さん? 何か思いついたの?」

舞園「案という程でもないんですが……この場に腐川さんを呼んだらどうでしょう?」

石丸「そんな! 腐川君を救うための会なのに君は本人自らに案を出させると言うのかね?!」

舞園「いえ、そうではなくて……自分に味方がいる、一人じゃないってわかるだけで、
    人は安心出来るものだと思うんです。……私がそうでしたから」

ドラえもん「ああ、なるほど……」




325: ◆takaJZRsBc 2018/03/31(土) 22:50:25.83 ID:uwbNG8xM0


苗木「そっか。僕達がいくらこうして頭を悩ませていても、本人に伝わらなきゃ意味がないもんね」

不二咲「まずはみんなに理解してもらうことより、僕達が味方だよって腐川さんに伝えるんだね!」

大和田「なかなかいい案じゃねえか? 最悪他のヤツらと和解できなくてもなんとかなるだろ」

のび太「じゃあ、ぼくがさっそく呼んでくる!」

ドラえもん「行ってきます!」


               ◇     ◇     ◇



腐川「なななな、なんなのよ一体?! アタシをどこに連れて行こうっての?!」

のび太「そんなこと言わないで!」

ドラえもん「きっといいことがあるから」

腐川「ウソ、ウソよ! どうせアタシを騙すための罠だわ。アタシにその手は聞かないわよ……!」

のび太(うたぐりぶかいなぁ……)

ドラえもん(なんというか、腐川さんの性格はアニメ以上だよね……)

腐川「こ、ここ苗木の部屋じゃない……?! こんな所に連れ込んで何を……?!」


ガチャリ。


「いらっしゃーい!」

腐川「……は?」




326: ◆takaJZRsBc 2018/03/31(土) 23:00:14.25 ID:uwbNG8xM0


苗木「いらっしゃい、腐川さん。飲み物はみんなと一緒のお茶でいい?」

腐川「は?」

舞園「そんな所に立ってないで、こっちに来て座ってください」

腐川「はあ?」

不二咲「みんなでお菓子を食べながらおしゃべりしてたんだぁ。腐川さんも一緒に話そうよぉ」

腐川「……え?」

のび太「どうしたの、お姉さん?」

ドラえもん「なんか固まっちゃってるけど」

腐川「…………」

大和田「おい、なにぼーっとしてんだよ。大丈夫か?」

腐川「……わよ」

霧切「腐川さん? どうかしたのかしら?」

腐川「許さないわよ!」

「えぇっ?!」

腐川「あ、あああ、あんた達……あ、アタシにこんな優しくして、許さないから!」


ガチャッ、ダダダダダ!


のび太「ど、どうしたんだろう? よろこぶと思ったのに!」

石丸「まさか怒らせてしまったのか?!」




327: ◆takaJZRsBc 2018/03/31(土) 23:10:12.58 ID:uwbNG8xM0


大和田「ハア? 優しくされて怒るとか頭おかしいんじゃねえかアイツ?」

苗木「いや、怒ってるというかあれは……」

舞園「照れてるんですね」

ドラえもん「つまり、急に優しくされて恥ずかしかったってこと?」

のび太「へんなの。イミがわからないよ」

舞園「そういう人もいるんですよ。そして、ここで引いては行けません! 全力で押すべきです!」

のび太「じゃあ、もう一度呼びに行こうか?」

霧切「今行ってもきっと開けてくれないわよ。少し時間を開けて冷静になってから
    連れて来た方がいいわ。そうね、夕食の後部屋に戻る前に確保が妥当かしら」

石丸「よし、腐川君捕獲作戦だな!」

苗木「動物じゃないんだから……」

舞園「今度こそ逃がさないでバッチリ料理しちゃいますよ!」

苗木「舞園さんまで……どうしたの、急に張り切って?」

舞園「だってかわいいじゃないですか。照れて逃げちゃうなんて。私、腐川さんのこと誤解してました」

不二咲「うん。もっと、キツイ人なのかと思ってたけど、素直になれないだけなんだねぇ」

大和田「あぁ~、そういう言い方をされると俺もちっと来るかもなぁ。俺もあんまり素直じゃねえし」

ドラえもん「根は良い子なんだよ」

ドラえもん(――みんなね)

のび太「よーし、じゃあまたばんごはんのあとにあつまろう!」エイエイオー!




328: ◆takaJZRsBc 2018/03/31(土) 23:28:35.23 ID:uwbNG8xM0



そして夕食後。


腐川「な、な、なんなのよあんた達?! さっきといい今といい、アタシの執筆の邪魔をしたいの?!」

のび太「ジャマだなんて、そんな」

ドラえもん「ぼく達はただ腐川さんと仲良くしたいだけだよ」

腐川「そ、そんな訳ないわ。あんた達みんなでアタシをハメるつもりなんでしょ!」

舞園「そんなことないですよ」

腐川「ウソ! ウソよ……だって……」


ここで腐川はとんでもない話をし始める。それは彼女自身の辛い経験だった。


腐川の悲しい過去①


腐川「か、過去にもあったわこんなこと……小学生の時、浮いてるアタシと一人だけ仲良く
    話してくれる男の子がいて、アタシは勇気を振り絞ってラブレターを書いたのよ」

石丸「小学生にしてラブレターなど不純d 舞園「少し黙っていてください」

腐川「でも次の日、そのラブレターは学校の掲示板に張り出されて晒し者にされたわ」

一同「…………うわぁ」


思わず変な声が出る。


石丸「なんと酷い輩だ! 僕がその場にいたら成敗してやったものを!」

苗木「さっきラブレターは不純とか言ってなかった?」




329: ◆takaJZRsBc 2018/03/31(土) 23:39:19.55 ID:uwbNG8xM0


石丸「それとこれとは別問題だ! 人が真心込めて書いた手紙を衆目に晒すなど論外だろう!」

大和田「まったくだぜ! そんな野郎はぶん殴るべきだ!」

腐川「……ア、アタシが悪いのよ……向こうが嫌がってたのに気付かなかったから……」

舞園「そんなことありませんよ……」

不二咲「そうだよ……酷い」ウルウル


  腐川の悲しい過去②


腐川「これだけじゃないわよ……アタシ、中学の時生まれて初めてデートに誘われたの」

石丸「デートだと?! 不純異性交遊は禁止… 舞園「石丸君は黙っていてください」

腐川「一緒に映画を見ていたんだけど、気が付いたらいなくなっていて……
    後から知ったけど、アタシを誘ったのは仲間内での罰ゲームだったの」

「あぁ……」


また変な声が出る。


のび太「ひ、ひどい……」

ドラえもん「なんて人達だ!」

石丸「あああ、許せん! 何故その場に僕はいなかった! そんな輩まとめて取り締まってやったものを!」

苗木「さっき不純異性交遊は禁止とか言ってなかった?」

石丸「それとこれとは別問題だ! 人の心を弄ぶなど言語道断! 更正するまで説教してやりたい!!」

大和田「まったくだぜ! ぶっ飛ばしてやる!」




331: ◆takaJZRsBc 2018/03/31(土) 23:57:54.82 ID:uwbNG8xM0


腐川「ま、まだまだあるわよ」

のび太「えぇ~?!」

苗木「まだあるの……?」

霧切「腐川さん、なかなかハードな経験をしているのね……」

ドラえもん(これは予想外だ……もしかしてアニメでは語られていなかっただけで、
       ゲームでは語られてるのかな? ゲームの知識もないと不味いかもしれないな)


その後も腐川の不幸話は延々と続いた。


             ・

             ・

             ・


腐川「と、とにかくあんた達があたしに優しくするなんて罠なのよ! わかったでしょ?!」

のび太「ぜんぜんわかんない!」

腐川「ハァ?!」

霧切「腐川さんが今まで酷い人間関係に悩まされていたのはよくわかったわ」

腐川「だったら、あたしのことはもうほっとい……」

霧切「でも見てちょうだい。苗木君、石丸君、大和田君、のび太君。この人達に嘘がつけるかしら」

舞園「そうですよ。正直四人組って言ってもいいくらいすぐ顔に出ますよ!」

苗木「なにその変なユニット名みたいなまとめ方」




332: ◆takaJZRsBc 2018/04/01(日) 00:15:34.96 ID:DWzWVao10


不二咲「今までは酷い人達ばかりだったかもしれないけど、ここのみんなは大丈夫だよ。だって、
     考えてみて。僕みたいな女装したなよなよした男子も受け入れてくれたんだよ?」

腐川「う、それは……」

ドラえもん「腐川さんは人と関わるのに臆病になってしまってるだけだ。
       もう一度、信じてみてよ。ぼく達は裏切ったりしないよ!」

腐川「…………」

苗木「ね、腐川さん?」

腐川「…………」

のび太「信じてよ!」ジッ

腐川(…………)

腐川「……わかったわよ」


子供の純真で真っ直ぐな眼差しに、とうとう腐川も根負けした。


苗木「やった!」

石丸「おお、腐川君! 君を信じていたぞ」

腐川「べ、別にあたしはあんた達を信じた訳じゃないわよ! た、ただあんまり
    しつこいからちょっと付き合うくらいならしてあげるって言ってんの!」

一同(素直じゃないなぁ……)

石丸「よし! では腐川君を迎え、改めて会を始めようではないか」

腐川「……そもそもこれなんの会なのよ」

舞園「腐川さんを救う会です!」

腐川「ハ?」




333: ◆takaJZRsBc 2018/04/01(日) 00:27:19.66 ID:DWzWVao10


苗木「あ、ええとね……」カクカクシカジカ

腐川「全員と仲良くなんてなれる訳ないでしょ。あたしはただでさえ嫌われ者なんだから……」

石丸「そんなことはない! 僕だって今まで友達はいなかったがここに来て親友が出来たぞ!」

不二咲「ぼ、僕も女装する前は男のくせになよなよしてっていじめられてたよ!」

大和田「俺はつええからイジメられたりとかはなかったけどよ、学校で浮くのなんざしょっちゅうだぜ?」

霧切「私もあまりみんなと仲良くしていなかったけど、この会に呼んでもらえたわ」

腐川「な、なによこの流れ……カミングアウト大会? あたしは傷の舐め合いなんてしないわよ!」

ドラえもん「まあまあ」

のび太(ほんとめんどくさいな、この人……)

苗木「舐め合いとかじゃなくて、みんな腐川さんに元気になってもらいたいんだよ」

腐川「なによ……あんた達、あたしが怖くないの? あたしは人殺しなのよ?」

不二咲「正直に言うと怖いよ。腐川さんには悪いけど、僕いつも胡椒を持ち歩いてるんだ」

腐川「は? ……じゃ、じゃあ、なんで?」

石丸「元々、今回の事を言い出したのはのび太君達なのだ。子供が頑張っているのに、
    高校生の僕が怖いからと見て見ぬ振りをする訳にはいかないだろう!」

石丸「そもそも、悩んでいるクラスメイトがいたら助けるのが風紀委員の務めだ!
    もし君のことを見捨てたら、僕はもう超高校級の風紀委員を名乗れなくなる」

大和田「俺も似たようなもんだ。正直、お前の中のアイツを許したワケじゃねえ。
     でも、俺はこいつらのダチだ。だからダチのやることには黙って協力する」

舞園「私ものび太君とドラえもんさんに助けてもらいました。だから今度は私が助けたいんです!」




334: ◆takaJZRsBc 2018/04/01(日) 00:50:29.54 ID:DWzWVao10


苗木「ほら! みんな腐川さんのこと心配してるんだよ。もうちょっと素直になったらどうかな?」

腐川「眩しい……」

ドラえもん「ん?」

腐川「眩し過ぎるわよ、あんた達! あ、あたしみたいな日陰者には、
    あんた達は眩し過ぎる。もう、見てられない!」


ガシッ!


舞園「逃がしませんよ、腐川さん」ニッコリ♪

霧切「私もどちらかと言えばあなた寄りだし眩しいという意見には同感だけど、
    ずっと見ていれば目も慣れるんじゃないかしら?」

舞園「今日は夜まで語り合いましょう!」

腐川(振りきってもしつこくしつこく食い下がってくる……
    もう、なんなのよなんなのよなんなのよ~?!)

腐川「わ、わかった。わかったわよ! この変な会に付き合えばいいんでしょ! ……ハァ」

苗木「でもどうしようか。元はと言えば人が集まれば何か名案が出るかもって言って集まったんだよね」

腐川「……やっぱり無理よ。あたしみたいな根暗と仲良くしたがる変わり者なんてあんた達くらいよ」

腐川「正直、あんた達だけでもあたしは十分……」


そう言って腐川は俯く。


舞園「実は、私に案があるんです!」

のび太「えっ、なになに??」




335: ◆takaJZRsBc 2018/04/01(日) 01:00:15.38 ID:DWzWVao10


舞園「なんだか、あの秘密暴露のせいですっかり私達の空気が悪くなってしまったじゃないですか。
    まずはその空気を何とかしないと腐川さんを受け入れる余裕も生まれないと思うんです」

ドラえもん「なるほど。それは確かにね」

舞園「そこで、まずは親睦会を開いて皆さんがリラックスしたあたりに、
    腐川さんの良い面を全面的にアピールしていくというのはどうでしょうか?」

のび太「いいね! 楽しそう!」

不二咲「パーティーだねぇ!」

霧切「それならみんなも協力するでしょうし、いい案じゃないかしら?」

腐川「で、でもあたしにはアピールする良い面なんてないわよ!」

ドラえもん「そんなことないよ! どんな人にだって必ずいいところはあるんだから」

腐川「じゃあ具体的に言ってみなさいよ……!」

ドラえもん「えーと、急に言われても……」

のび太「う~んう~ん……」

腐川「出ないんじゃない!」

苗木「ま、待って待って! 今考えるから……」

霧切「腐川さんは超高校級の文学少女。作家としての感性、執筆能力は誰にも負けないはず」

大和田「勉強はできるんじゃねえか? とりあえず国語は得意だろ?」

不二咲「色んな小説の知識を持ってそうだよね」

石丸「それは素晴らしい長所ではないか! 勉強が得意なのは良いことだぞ」

舞園「そうです。腐川さんと言えばやはり小説――」


舞園「だからみんなで劇をしましょう!」




336: ◆takaJZRsBc 2018/04/01(日) 01:12:35.08 ID:DWzWVao10


『劇?』


舞園「はい! 親睦会の出し物として劇を行うんです」

霧切「成程ね。その脚本を腐川さんに書いてもらうということかしら?」

舞園「そうです。超高校級の文学少女である腐川さんが書いた脚本なら
    必ずや皆さんの心を動かすはずです!」

ドラえもん「うん。いいんじゃないかな?」

のび太「おもしろそう! さすが舞園お姉さん!」

舞園「頑張って考えました!」フンスー!

大和田「劇かぁ。やったことねえなあ」

苗木「劇なら、朝日奈さんや大神さんも協力してくれるんじゃないかな?」

不二咲「いいねえ。恥ずかしいけど、みんなでやるなら僕もやってみたいな」

石丸「それはとても良い案だと僕も思う。……だが、まだ足りないな!」

ドラえもん「足りない?」

のび太「え? なにが?」

石丸「腐川君が素晴らしい脚本を書いたとしよう。それでみんなが感動している中、
    平然と水を差しそうな人間がここにはいるだろう!」

セレス『まあ、腐川さんは作家でプロなのですからこのくらいは書けて当然ですわね』

十神『酷い大根演技だったな。話が全く頭に入ってこなかった。
    これなら葉隠のくだらんオカルト談義を聞かされる方がまだマシだな』

ドラえもん・のび太「あぁー……」


容易に想像が付きすぎて思わずため息が出る。




338: ◆takaJZRsBc 2018/04/01(日) 01:29:29.86 ID:DWzWVao10


腐川「そ、そもそもあたしまだやるなんて言って……」

舞園「書いてくれますよね?」キラキラ

腐川「う……(断れる雰囲気じゃない……)」

苗木「でも、足りないってじゃあどうすればいいの?」

霧切「石丸君には何か考えがあるのかしら?」

石丸「ウム! 当然だとも!」

大和田「さすが兄弟だぜ! で、なにすんだ?」

石丸「一発芸だ!!」

腐川「は……?!」

石丸「普段の君が根暗で取っ付きづらいというなら、普段と違う面を見せてみんなに
    見直してもらえばいいのだ。忘れろビームでも撃って君の過去を忘れさせればいい!」

腐川「何言い出すの、こいつ……?!」


その時ドラえもんは気付いた。


ドラえもん(あー……もしかしてそのつもりであの時はふざけてたのかな?)

ドラえもん(確かに日頃から考えてないといきなりあんな動き出来ないよね。忘れろビームは、
       周りと仲良くするために石丸くんが前から考えてたギャグだったんだ)




339: ◆takaJZRsBc 2018/04/01(日) 01:37:43.13 ID:DWzWVao10


石丸「という訳で一緒に練習しようではないか! さあ、さあ、さあ!!!」

苗木「え、いやいや、いくらなんでもそれは……」

大和田「おお、名案だな! よし、腐川やってやれ!」

不二咲「僕も一緒にやるよぉ!」

腐川「え? えっ?! はいぃ?!」

のび太「うん。たしかに腐川さんがそんなことしたらぼくもビックリしちゃうな」

舞園「……アリかもしれないですね」

ドラえもん「ぼくも腐川さんの忘れろビーム見てみたい!」

苗木(え、なにこの異様なビーム推し)

霧切(ご愁傷様ね……)

腐川「や、やらない! 絶対やらないわよあたし!!」

石丸「忘れろ忘れろ忘れろビーム!」

腐川「だから無理だってぇーっ!!!」


一発芸をするかどうかはともかくとして、親睦会を開く方向に決まりその日の会は終了したのだった。




347: ◆takaJZRsBc 2018/04/12(木) 21:51:01.92 ID:NAMMexg10



  第十四話 とどけ、ゆうじょうのビーム!



親睦会当日――


舞園「舞園さやか歌いまーす!」

大和田「やっぱ舞園のヤツうめえな」

桑田「さやかちゃん最高ー! よし、次は俺が歌うぜ!」

のび太「お兄さん、ぼくのにがおえ描いて!」

山田「フフン、お安いご用ですぞ!」

ドラえもん「葉隠くん、ぼくを占ってよ」

葉隠「ロボットを占う日が来るとはちょっと予想がつかなかったなぁ」

朝日奈「私が作ったドーナツまだまだあるから!」

大神「どんどん食べてくれ」

苗木(親睦会を開いたのは大正解だったようで、大盛り上がりだった。
    やっぱり、みんなどこかストレスが溜まっていたんだね)

苗木(出し物をしようって話だけあらかじめしてあって、舞園さんと桑田君が歌を披露、
    僕は倉庫にあった手品セットを使ってドラえもんと一緒に手品をした)

苗木(ちなみにこれも全部作戦だ。この後のね)

のび太「ぼくたちは劇をします!」

不二咲「この劇は観客巻き込み型だから、みんなも参加していってねぇ!」

山田「巻き込み型? 遊園地のヒーローショー的なものですかな?」




348: ◆takaJZRsBc 2018/04/12(木) 22:02:09.44 ID:NAMMexg10


舞園「ガンガンアドリブしていきますよ~!」

江ノ島「へえ、面白そうじゃん!」

十神「くだらん。素人の大根演技など見てもな」

セレス「まあまあ、退屈凌ぎの余興と思えばよろしいのでは?」

のび太「バカにしないでよ! きっとぎゃふんと言わせてみせるからね!」

ドラえもん(ちなみに、脚本はみんなのアイディアを元に腐川さんに書いてもらったんだ)

苗木「それではスタートするよ! タイトルは、『桃の果実の割れぬ間に』」


完全なオリジナル作品より、誰もが知る国民的おとぎ話を元にした方が
とっつきやすいだろうと桃太郎をベースにしたのだが……
腐川が一人で考えたのではなく全員の思い付いたしっちゃかめっちゃかな
アイディアを全てつめ込んだため、その劇の内容はまさしくカオス――混沌を極めた。


苗木「さやかさん……僕、ずっと君を見ていたいんだ」

舞園「ダメです、誠さん。私、洗濯物を洗いに行かないと……」

苗木「僕だって芝刈りに行かないといけない! でも、僕には今しかないんだ!」

舞園「誠さんっ……!」


――ある時はラブロマンス!


のび太「グエエエエ」

苗木「拾った桃から手が! 手が!」

舞園「きゃああああああああ!!」


――ある時はホラー!




349: ◆takaJZRsBc 2018/04/12(木) 22:10:14.21 ID:NAMMexg10


朝日奈(ナレーション)「桃太郎はきび団子を使って猿と犬と雉、そして猪八戒を仲間にしました」

山田「え、猪八戒?!」

江ノ島「豚ですらないんだ……」

朝日奈「ほら、早く猪八戒来て! ほらほら!」

山田「ブヒイイ、僕?! 猪八戒ナンデ?!」

桑田(猿)「俺だって何故か参加させられたんだからオメーも来い!」

石丸(犬)「ハッハッハッ! これで鬼どもは一網打尽だな!」

不二咲(雉)「そだねー」


――唐突な無茶振り!


のび太「わあ! 鬼の襲撃だー!」

大和田「こいつらはさらっていくぜ!」

不二咲「桃太郎くーん!」


大和田は不二咲の腕と石丸の足を掴んで引きずっていく。

ズリズリズリ……ドゴッ!


大和田(あっやべ)

石丸「ゴハッ……」

苗木(大和田君、いくらなんでも足を持って引きずらなくても……
    というか今盛大に石丸君の頭をテーブルの脚にぶつけたよ?!)


ドッ!←気の毒なのだが思わず笑う一同の声。


――予想外のアクシデント!




350: ◆takaJZRsBc 2018/04/12(木) 22:19:34.51 ID:NAMMexg10


舞園「ああ、可哀想な桃太郎……鬼にやられて逃げ帰って来たのですね。
    西の山に大賢者がいるはずです。その方に助言を貰うといいですよ」

ドラえもん(流石舞園さんだ。長いセリフもスラスラと話すな。アドリブも難なくこなすし)←道具係

のび太「大賢者さん、どうすれば鬼を倒せますか?」

舞園(一人二役)「伝説の水晶玉とギャンブラーの勝利の指輪。その二つを手に入れなさい。
          勇者に道を示してくれるでしょう。世界を救いなさい、選ばれし少年よ」

のび太「伝説の水晶玉ってどこー?!」

舞園「龍の山へ向かうんです」

セレス(これはわたくしも舞台に上がる必要があるのでしょうか)ドキドキ

葉隠(後で水晶球のレンタル料もらわねえとな!)ウキウキ


――何故か始まる壮大なファンタジー!


ドラえもん「…………」スッ ←カンペも担当している。

のび太「えっと、アイテムも手に入れたしさらわれた二人も助けたし、いよいよ鬼ヶ島だね!」

猪八戒(山田)「ああ、あそこに鬼が! ……というか僕ずっとアドリブで凄くない?!」

桑田「それ言ったら俺もなんだけど。つーか、そのぉ……」

大神(E:角と棍棒)「…………」

大和田(E:道路標識)「…………」

霧切(E:鬼姫衣装)「…………」


 ズ ゴ ゴ ゴ ゴ ゴ ゴ ゴ ゴ ゴ ! !




351: ◆takaJZRsBc 2018/04/12(木) 22:25:55.99 ID:NAMMexg10


のび太「うえーん、こわいよ~!!」

((( 倒 す の 無 理 だ こ れ ! )))


――どう見ても倒せない強敵!


朝日奈(ナレーション)「ここは猿が一発ギャグを披露して先制攻撃だね! 行け、行くのだ猿よ~!」

桑田「お、俺?! いやいやいや、いきなり振られてもムリだし!」

舞園(舞台袖から)「出来ますよね、猿さん?」

桑田「いや、その……」

舞園「 や り ま す よ ね ? 」

桑田「あ、はい。じゃあ、えっと、その………………だっふんだ!」


シィィィン……


のび太「えっと……」チラッ

不二咲「あ、あの、その……」

石丸「…………」←無言の肩ポン。

桑田(俺がすべったみてーじゃんか……)グスッ


――スベる桑田!!


舞園「…………。あまりのつまらなさに鬼がダメージを受けてます!」

大和田「え?! ……つ、つまらねえ。おかげで俺の心臓(ハート)が凍(フリーズ)っちまったぜ!」

朝日奈「次は誰かにモノマネしてほしいなー!」

桑田「それ台本じゃなくておめーのアドリブだろ?!」

山田「ならば拙者が! 十神白夜殿のモノマネをしますぞ!」

十神「待て、ふざけるな貴様?!」




353: ◆takaJZRsBc 2018/04/12(木) 22:39:55.32 ID:NAMMexg10


山田「フン、愚民が」メガネキラーン☆

江ノ島「あはは! 似てる似てる!」

セレス「まあ、意外な特技があったものですね」

葉隠「そっくりだべ!」

十神「全然似ていない!」

山田「最後に勝つのはこの俺様だ。十神の名にかけて!」

十神「俺は俺様なんて言ったことは一度も……!」

舞園「次は苗木君がやります!」

苗木「え、僕?!」


――唐突に始まる仁義なきモノマネ合戦!


石丸「……知っている。僕達は知っているぞ」

のび太「きみは……青おにだったんだ! わざとワルモノのふりをしていたあの青おにだよ!」

不二咲「自分を犠牲にして、みんなを守ってくれていたんだね……」

霧切「ごめんなさい……ずっと黙っていて……」

苗木「そんなのってないよ……あんまりだよ!」

霧切「ありがとう……でも、いいの。鬼は嫌われ者なのよ。人間とは一緒にいられない……」

大神「我等の犠牲を無駄にするな。お主らが救うのは人間の世だろう」

苗木「ダメだ……そんなのダメだ! 君達だけを犠牲になんて出来ないよッ!!」


――そして、明かされる衝撃の真実と感動!

――物語はフィナーレへ……




354: ◆takaJZRsBc 2018/04/12(木) 22:47:45.61 ID:NAMMexg10


             ・

             ・

             ・


苗木「以上、オリジナル桃太郎でした」


『……………………』


シーーーン。


のび太(あれ、つまらなかったかな? そんなはずは……)

腐川(まさか……あたしの書いた台本がダメだったからあいつらに恥をかかせたんじゃ……?!)


パチ、パチ……


腐川「……?!」


パチパチパチパチパチパチパチパチパチ!!


江ノ島「めちゃくちゃ面白かったよ!」

葉隠「おうっ! すっげー良かったべ!」

山田「途中からアクター側になっちゃいましたけど、役に入り込んじゃいました!」

桑田「いやー、結末知らない分ラストの展開はマジで驚いたわー!」

セレス「正直まったく期待していなかったのですが、なかなか良かったですわね」




355: ◆takaJZRsBc 2018/04/12(木) 22:55:13.59 ID:NAMMexg10


十神「まあ、退屈凌ぎ程度にはなったな。フン……」

朝日奈「うんうん! 頑張った甲斐があったよ!」

大神「脚本が素晴らしかったな。誰が書いたのだ?」


朝日奈と大神には脚本を渡して手伝って欲しいとしか伝えていないため腐川が書いたことは知らない。


のび太「腐川お姉さんが書いてくれたんだよ!」

『えっ?!』


一瞬、場が静まる。


腐川「な、なによ……文句あるの? あたしは作家よ? 脚本くらい、別に……」

葉隠「別に文句はねえけど……」

江ノ島「フーン、腐川が書いてたんだ」

腐川(フ、フン……やっぱり空気が悪くなったわね……どうせあたしなんて
    ジメジメした根暗で嫌われ者で殺人鬼で関わりたくなんてないわよ……)

ドラえもん「そうだ。腐川さん、今こそアレだよ」ボソボソ

のび太「この空気をかえるにはアレしかないよ!」

腐川「ハァ?! アレって、ま、まさか……」


腐川の脳裏に閃くあの言葉。




『一発芸だっ!!』




357: ◆takaJZRsBc 2018/04/12(木) 23:08:14.77 ID:NAMMexg10



石丸『普段の君が根暗で取っ付きづらいというなら、普段と違う面を見せてみんなに
    見直してもらえばいいのだ。忘れろビームでも撃って君の過去を忘れさせればいい』

のび太『うん。腐川さんがそんなことしたらぼくもビックリしちゃうな』

ドラえもん『ぼくも腐川さんの忘れろビーム見てみたい!』


腐川(は? ないない、有り得ないわよ……冗談じゃないわ! このあたしが一発芸だなんて……)

舞園(腐川さん……)うるうる

不二咲(腐川さん……)うるうる

石丸(腐川君! 僕は腐川君のことを信じているぞ!)ジッ

大和田(お、おい。どうなんだ?! やるのか?!)

ドラえもん(腐川さん!)チラッチラッ

苗木(無理しなくていいんだよ!)

霧切(やるかやらないかはあなたが決めるべきだわ)


周りは腐川のことを心配そうに注視している。


腐川「…………」




358: ◆takaJZRsBc 2018/04/12(木) 23:21:31.63 ID:NAMMexg10



―ハ、ハハ……

―意味わかんない。なんでこんなことになったんだっけ?

―そうよ! アイツらが勝手に妙なこと言い出しただけであたしは関係ない。

―勝手にやってりゃいいじゃない……


―ホント、馬鹿よね。わざわざこんなパーティー開いて

―下手くそな大根芝居まで披露しちゃってさ……

―もう見てられないっての。


―……馬鹿みたい。



腐川「…………」スクッ

山田「腐川冬子殿?」

桑田「腐川、どうした?」



―馬鹿よ、馬鹿! どいつもこいつも馬鹿ばっかり!

―……でも、馬鹿があれだけやったのに


―あたしだけ何もしない訳いかないじゃないの!



腐川「……いいわよ。やってやるわよ」




359: ◆takaJZRsBc 2018/04/12(木) 23:31:10.38 ID:NAMMexg10


大神「腐川?」

朝日奈「ふ、腐川ちゃん。どうしたの?」

腐川「うっさいわね! あたしが台本書いたのが気に入らないなら忘れさせてやるって言ってんの!」

江ノ島「えっ? 忘れさせてやるって?」

腐川「あ、あたしも……一発芸を披露してやるって言ってんのよ」

桑田「えっ、マジで?!」

セレス「これは……面白くなってきましたわね」

十神「…………」

腐川(あぁ、ただでさえ白夜様には嫌われてるのに馬鹿達と一緒になってこんな
    馬鹿みたいなことしてたら、もっと嫌われるでしょうね……)

腐川(……違うか。馬鹿に乗せられてこんなことをするんだから、きっとあたしが)


―― きっとあたしが一番の大馬鹿者!!


腐川「あ、あんた達! 人生で一回しかやらないから、目ぇ見開いてしっかり見なさい!」

山田「何が始まるんです?」

葉隠「これは何か凄いものが来るべ。間違いない!」

腐川「い、いいい行くわよ……!」

苗木(腐川さん、まさか本当に……?!)


カッ!!




360: ◆takaJZRsBc 2018/04/12(木) 23:33:19.92 ID:NAMMexg10



「忘れろ」バッ!


「忘れろ」ババッ!


「忘れろ」シュババッ!


「ビィィィィィム!!」シュベェェアッッ!!!



  ド  ド  ン  ッ  ! ! ! ☆





361: ◆takaJZRsBc 2018/04/12(木) 23:36:26.70 ID:NAMMexg10




『……………………』


シィーンッ!


腐川(お、終わった……あたしの全てが……)ガックリ…

腐川「あ、あの……いいい今のはちょっとした気の迷いというか、その……!」

石丸「素晴らしい……」

石丸「心を洗われるようだ。感動したッ! 僕は感動したぞッ!」ドブシャアッ!

腐川「ハ?」

不二咲「凄かったよ、腐川さん!」ポロポロ

腐川(え、いや……なんで泣いてんのよ……)

大和田「良かったぜ、腐川!」

のび太「はくしんの忘れろビームだったよ!」

腐川「へぁっ?」

舞園「素晴らしかったです。掛け値なしに素晴らしかったですよ!」ポロポロ

苗木「お疲れ様! いい顔だったよ!」

霧切「よく頑張ったわね……」

ドラえもん「おめでとう! おめでとう!」

石丸「これにて一件落着だな! ハッハッハッ!」

山田「え、なにこの流れ」

江ノ島「アタシもよくわかんない」




362: ◆takaJZRsBc 2018/04/12(木) 23:46:06.56 ID:NAMMexg10


葉隠「え、えーと……よくわかんねえけどとにかくおめでとうだべ!」パチパチパチ

桑田「いや、なにがだよ……」

葉隠「シーッ! 俺に合わせろって。きっと腐川っち、ストレスでおかしくなっちまったんだ。
    あんまり追い詰めると自殺するかもしれねえぞ……流石にそれは不味いだろ?」

山田「エエエエエ?! じ、自殺ですか?!」

桑田「?! マジか……ヤバいじゃん、それ……」


殺人鬼が怖いという気持ちはあるが、自分達のせいで自殺されたとあれば寝覚めが悪い所ではない。


のび太「ねえ、お兄さん。今の良かったよね?」

桑田「お、おう! 意外と良かった……ぜ?」

朝日奈「すごい迫力だったよー!」

大神「ウム、見直したぞ」

江ノ島「なんか全然意味わかんないけど拍手した方が良さげな感じ?」

セレス「いいのではないですか? 腐川さんの変顔はなかなか笑えましたし。
     そうですね。今の衝撃で確かに全部忘れてしまいました」クスクス


やんややんや! ワー、パチパチパチ!!


腐川「ふ、ふふ……」

腐川(なんか、納得出来ないけど……こ、こういうのも悪くない……?)

十神「…………」


その後、この一件は生徒達に『ここまで腐川が追い詰められている!』という
凄まじい危機感を与え、みんな優しくしてくれるようになったそうな。




363: ◆takaJZRsBc 2018/04/12(木) 23:51:21.61 ID:NAMMexg10



また――


十神「おい」

腐川「白夜様?! なんでしょう?!」

十神「お前さっきのやつをもう一回やってみろ」

腐川「さっきのやつ、ですか?」

十神「さっきお前がやった石丸の奇行の真似だ」

腐川「わ、忘れろビームですかっ?!」

十神「やらないのか?」

腐川「い、いえ喜んでやらせて頂きます! それでは……忘れろ忘れろ忘れろビーム!!」クワッ!

十神「下がれ」

腐川「え」

十神「下がれと言ってるんだ」ギロリ

腐川「は、はひぃぃぃ!」ダダダ



十神「…………」

十神「…………」プルプル

十神「…………プッ! クククク!」机ドンドンドン!


意外なことに、腐川の忘れろビームが十神のツボにヒットしたのだった。




367: ◆takaJZRsBc 2018/04/21(土) 22:10:30.64 ID:SkstkMDJ0



  おまけ①


苗木(ちなみに劇のムチャ振りで、僕は葉隠君のモノマネをした)

苗木(正直全然似てないと思うんだけど、何故かみんなはバカ受けだった)


『一回十万円で占ってやるべ!』


『苗木っち~、保証人になってくれ~!』


『金は命より重いんだべ!!』


苗木(……多分、みんなも同じようなこと言われたことあるんだろうな)

苗木(あと、ドラえもんはモノクマのモノマネをしたんだけど……)


『オマエラ! コロシアイをするんだ!』


『イヤッッホォォォオオォオウ。アドレナリンが染みわたるゥーーー!!』


苗木(あれはもはや似ているという次元を超えていた……まるで生き写しのような……)

苗木(最終的には不気味なのでやめろと言われてたよ)




369: ◆takaJZRsBc 2018/04/21(土) 22:24:47.90 ID:SkstkMDJ0



  おまけ②


腐川「ふ、ふん……それにしても酷い演技だったわね!」

不二咲「ごめんねぇ。頑張ったんだけど……」

舞園「不二咲君はとても良かったと思いますよ!」

桑田「舞園ちゃん、俺は?!」

舞園「……まあまあですかね」

桑田「まあまあ……」

腐川「次は、こんなメチャクチャなのじゃなくてちゃんとした脚本を書いてやるわよ……!」

石丸「おお! 本当かね?! 超高校級の文学少女の書き下ろしなら期待出来る!」

腐川「あんたは大根だから裏方だけどね」

石丸「(´・ω・`)」

大和田「元気出せよ、兄弟!」

腐川「あ、あんた意外と上手かったわよ」

大和田「?!」

腐川「舞園と苗木と山田と不二咲の次くらいだけど。……そうそう、何気に山田は上手かったわね」

山田「……ついに僕の時代が来たようですな!!」( ̄ー ̄)ニヤリ


そして、確かに次回の話の主役は山田なのである。それが良い意味であるかは果たして――




374: ◆takaJZRsBc 2018/04/30(月) 20:20:42.97 ID:bBMD0Uzt0



  第十五話 がんばれ山田くん!


のび太「ねえ、ドラえもん。……そろそろいいんじゃないかな?」


ある時、男子トイレで用を足しながらのび太が切り出した。


ドラえもん「ああ、うん。そうだね。もうみんなだいぶ打ち解けたし、
       そろそろこの厳しい現実を乗り越えられそうだよね」

のび太「じゃあ、バラしちゃう?」

ドラえもん「そうだねぇ。いくら大神さんを説得したとはいえ、あんまりトロトロすると
       あの残念なお姉さんが動くかもしれないし、そろそろ潮時かな」

のび太「のこりの事件はセレスさんと山田さんだけど、二階に行けないからアルターエゴもないしね」

ドラえもん「セレスさんも外の状況がわかれば夢がどうのなんて言ってられなくなるでしょ。
       ……ただまあ、恒例のタイムテレビで先のことを少し見ておきますか」

のび太「念入りだねぇ。いつもそのくらいシンチョウだったらいいのに」

ドラえもん「失礼な! ぼくはいつも慎重だよ。大体きみ達が勝手なことをするんじゃないか」

のび太「主にジャイアンとスネ夫だけどね。……会いたいなぁ。さいきんゼンゼン会ってないし」

ドラえもん「そうだね。ここでの生活も楽しかったけど、いい加減みんなの顔も見たいよね」


カチッ、カチカチ。


ドラえもん「さあ、何も起こってくれるなよ」


画面に映っていたのは……




375: ◆takaJZRsBc 2018/04/30(月) 20:32:10.51 ID:bBMD0Uzt0


ドラえもん・のび太「が、学級裁判だー!」

のび太「そんな、どうして?!」

ドラえもん「裁判もそうだけど、犯人は誰だ!」


ガチャガチャガチャ!



セレス『わたくしですわ』



ドラえもん・のび太「 お ま え か ー ! !」


苗木『で、でもなんで山田君を……! セレスさんとは仲良くしてたじゃないか!』

セレス『わたくしの夢のためですわ。山田君はああ見えてなかなか使える
     便利な方でしたが、外には連れて行けませんもの。仕方ありませんでした』


のび太「えっ、これって……」

ドラえもん「殺されたのは山田君だ! ちなみに動機はやっぱり……」


セレス『わたくし、西洋のお城に暮らすのが長年の夢でしたの。イケメンの執事達に
     ヴァンパイアの格好をさせて仕えさせて……ああ、なんて耽美的でしょうか』


ドラえもん・のび太(アニメより更にひどかった)


のび太「おしろとか、イケメンに囲まれたいとか……そんな理由で友だちを殺しちゃうの?!
     もう、この人はたすけなくてもいいんじゃない? あんまりだよ!」

ドラえもん「まあ、そう思うけど……ほら、二年間の間に改心してた可能性が無きにしもあらずな訳で」




376: ◆takaJZRsBc 2018/04/30(月) 20:42:09.29 ID:bBMD0Uzt0


のび太「なんだっけ? 双子の心は百までだっけ? 人の性格ってそんなにすぐかわるかなぁ?」

ドラえもん「三つ子の魂百までだね。でも、山田くんは助けないとまずいし」

のび太「ああ、そっか。ヒガイシャだもんね」

ドラえもん「まずは事件の少し前に巻き戻して、概要を調べないと」カチャカチャ


セレス『わたくし、葉隠君にイタズラされましたの』

山田『なにー?! 許さーん!! 葉隠康比呂殿ブチ殺す!』

セレス『まあ落ち着きなさいな。わたくしも悔しいですが、殺すのはやり過ぎですわ。
     ……ですから、復讐を手伝ってくださりませんこと?』<●> <●>ギョロッ!

山田『なんなりと!』

セレス『うふふ……(計画通り!)』ニヤッ


のび太「なるほどね。だまされたんだ! かわいそう……」

ドラえもん「……可哀相は可哀相だけど、よくこんな下手な嘘に引っ掛かったなぁ」

ドラえもん「セレスさん、いつものポーカーフェイスはどこ行ったの? ってくらい露骨に
       顔に出てたし、それにこの話が本当だったらみんなにちゃんと話さないとダメだろう」

のび太「でも、内容が内容だからみんなには言えなかったんじゃないかな?」

ドラえもん「匿名にすればいい。この話が本当だったらまた別の被害者が出てたかもしれないし、
       女子達に警戒を促す効果もある。個人的に罰するのが正しいとは思えないな」

のび太「ああ、そっか。でも山田さんてぼくから見てもたんじゅんそうだし、
     そういうことは思いつかないんじゃない?」

ドラえもん「……本当にそれだけが原因なのかな?」

のび太「どういうこと?」




377: ◆takaJZRsBc 2018/04/30(月) 20:49:55.08 ID:bBMD0Uzt0


ドラえもん「ほら、山田くんて普段から割りとセレスさんの言いなりだったろう?
       だから、彼女に逆らうって発想自体がそもそもなかったんじゃない?」

のび太「セレスさんのことが好きだからじゃないの?」

ドラえもん「いや、山田くんが本当に好きだったのは不二咲さんのはずだ。だからこそ
       アルターエゴにあんなに執着したんだろうし。セレスさんのこともそれなりに
       好意はあると思うけど、いわゆる『好き』じゃないはずだよ」

のび太「ええ~? じゃあなんであんなにこき使われてるの? へんだよ!」


腕を組んで少し考えてからドラえもんは答える。


ドラえもん「……これはぼくの予想なんだけど、嫌われたくないんじゃないかな」

のび太「あー、それなんかわかるかも。ぼくってモテないからさ、しずかちゃんに
     きらわれると思ったらどんなことでもやっちゃうかも。さすがに犯罪はしないけど」

ドラえもん「今回はセレスさんだったけど、山田くんて基本的に女の子の頼みは
       断れないタイプなんだよね。嫌われたくないから。それって普段はいい人で
       済むけど一歩間違えれば今回みたいに取り返しのつかないことになると思うんだ」

のび太「たとえば?」

ドラえもん「今回と同じさ。悪い女の人に騙されるんだよ。いいかい? 外の世界は今、
       非常に荒廃してるんだ。つまり、悪い女の人だってたくさんいるはずなんだよ」

ドラえもん「今のまま外に出しても、また今回の二の舞になる時が来るよ、きっと」

のび太「そんなこと言われてもなぁ。モテない男のえいえんのナヤミだよ、それ」

ドラえもん「どうすればいいんだろう?」

のび太「また例によってだれかに聞いてみる?」

ドラえもん「今回は今までと違って今後のことも入ってくるからね。
       出来ればぼくらの事情を知っている人の方がいいんじゃないかな?」




378: ◆takaJZRsBc 2018/04/30(月) 20:56:59.43 ID:bBMD0Uzt0


のび太「うーん……ドラミちゃんとか?」

ドラえもん「ドラミは女の子だから、男心がわかるかなぁ?」

のび太「じゃあいっそ……」


               ◇     ◇     ◇


大亜「おう、お前ら! 今度はどうした? また何かあったのか?」

のび太「お兄さん! じつは今回はちょっとソウダンがあって……」

大亜「言ってみろ。力になってやる」


               ・

               ・

               ・


大亜「…………」

ドラえもん「どうすればいいですか?」

大亜「……難しいな」

大亜「力になってやりたいが、俺や紋土とは全く違うタイプだ。俺達みたいなタイプは
    ある意味単純で叩けば直る。だが、そういうヤツは叩くと壊れたりねじくれちまうんだ」

のび太「うっ……わかる気がする」

ドラえもん「他ならぬのび太くんがそういうタイプだからね。根性なしですぐ卑屈になるし」

のび太「う、うるさいなぁ! ぼくなんてカオもあたまもわるいしスポーツもまるでダメだし、
     ぼくみたいなサエない人間は神さまに文句いうケンリだってあるよ!」




379: ◆takaJZRsBc 2018/04/30(月) 21:05:39.43 ID:bBMD0Uzt0


ドラえもん「まあ、そうだね」

のび太「そこはフォローしてよ……」ガックリ

ドラえもん「でもさあ、きみの場合それだけじゃなくて怠けているのも大きいんだよ?
       だって、ぼくが一度未来に帰るってなった時にあのジャイアンを倒したじゃないか!」

ドラえもん「石丸くんを見習いなよ! 生まれ持った才能や性質は仕方ないけど、
       努力で伸ばせるものを伸ばさないのは自分の怠慢じゃないか!」

のび太「そうやってすぐお説教する~!」ビエーン

大亜「まあそう言うな、ドラえもん。努力も確かに大事かもしれねえが、家で勉強ばっかして
    仲間と遊ばねえのも不健全だぜ。ガキのうちはのびのび育つのが一番だろ?」

ドラえもん「だけど限度ってものがあります! 本当にのび太くんの怠けっぷりは酷いんだから!」

大亜「(よっぽど鬱憤が溜まってんだな……)それで、そのジャイアンてヤツは何者なんだ?」

ドラえもん「実はですね……」


             ・

             ・

             ・


大亜「ハッハッ! それでいじめっ子を倒したってんだな。なかなか男気あるじゃねえか」

のび太「男の中の男みたいな大亜さんにほめられるとうれしいなぁ」テレテレ

大亜「俺はな、男なら一度は魂懸けてなにかに取り組むべきだって思うんだ。出来れば
    でっかいことがいいが、別にちっぽけなことでもいい。そういう経験が男を磨くんだ」

大亜「確かにのび太は優秀じゃないかもしれねえし普段はだらしないかもしれねえ。
    ただな、目が死んでねえ。さっきみたいな経験がお前の中で生きてるからだ」

のび太「…………」

ドラえもん「経験かぁ」




380: ◆takaJZRsBc 2018/04/30(月) 21:14:38.46 ID:bBMD0Uzt0


のび太「……でも大亜さん、ぼくは勝てたからいいけど負けたら? 負けた時はどうするの?」

大亜「その時は、ああ失敗しちまったなぁっつって笑えばいい」

のび太「笑えないよ! こっちは大マジメなのに!」

大亜「まあ、最初は悔しいかもな。でもなぁ……本当に悔いがないくらい
    打ち込んだら、意外とその後はさっぱり諦めつくもんだと俺は思うぜ?」

のび太「そうかなぁ……」

大亜「ブツブツ周りに文句ばっか言ってたり、どうせ自分なんかって諦めてるヤツはなにかに
    命懸けて取り組んだことなんて一度もねえ。そういうのを本当の負け犬っていうんだ」

大亜「いいか? 必ずしも結果が出なくていい。たまには負けてもいい。ただ、自分にだけは
    負けるな。試合に負けても勝負に負けるんじゃねえ。男なら胸を張って生きろ」

のび太「うん……(うっ、なんだかすごいプレッシャーが)」

ドラえもん(大和田くんのやったことを考えると、この言葉胸に刺さるなぁ……)


  ― タイムホールの中 ―


のび太「で、結局どうするの?」

ドラえもん「うーん。少し荒療治だけど、自信をつけてあげるのが一番かなぁ」

のび太「どうやって?」

ドラえもん「なんでもいいからとにかくチャレンジさせて、周りから認められればいいんじゃない?
       超高校級の才能があるのに自信がないのは、やっぱりオタクってことに負い目があるんだ」

のび太「ぼくがジャイアンに勝ったみたいに、大和田さんとたたかうとか?」

ドラえもん「いや、ムリだろう。ガキ大将と日本最大の暴走族の総長じゃ天と地ほど違う」




381: ◆takaJZRsBc 2018/04/30(月) 21:21:00.12 ID:bBMD0Uzt0


のび太「……だよねぇ。みんな超高校級なワケだし。夢の中でもないと」

ドラえもん「夢か。……とりあえず夢の中で鍛えてみる?」

のび太「できるの?」

ドラえもん「そりゃあいくらでも。怠け者の君を鍛えるために特訓用道具はたくさんあるからね」

のび太「じゃあ、やってみようよ!」


               ◇     ◇     ◇


そしてその日の夜、二人はひみつ道具で山田の夢の中へと入った。


のび太「ここはどこだろう?」

ドラえもん「森の中だね」


女神『勇者ヒフミよ。あなたがこの世界を救うのです』

山田「僕が勇者ですか?! 異世界転生キタコレ。チートスキルください!」


のび太「女神さまに勇者? なんだかゲームの世界みたいだね」

ドラえもん「ハハーン、ファンタジーの夢を見ているんだな。だったら簡単だ。
       ぼく達はこの動物へんしんクッキーを食べて変装しよう」

のび太「森のなかまたちって感じだね」

山田「さあ、冒険に旅立つぞ!」

ドラえもん「山田くん、山田くん」

のび太「お兄さん」

山田「なんと! クマさんとタヌキさんが喋ってますよ!」




382: ◆takaJZRsBc 2018/04/30(月) 21:31:35.94 ID:bBMD0Uzt0


ドラえもん「ぼくはタヌキじゃ……!」

のび太「まあまあ。お兄さん、ぼくたちはお兄さんを助けるためにきたんだよ」

ドラえもん「きみは超高校級の才能があるけど、太ってることとか勉強や
       運動が出来ないことを本当はコンプレックスに思っているでしょう?」

山田「な、何故それを?!」

のび太「ぼくたち森のようせいだから。なんでも知ってるよ」

ドラえもん「ぼくたちがきみを強くしてあげるよ! それで一緒に世界を救うんだ!」

山田「ほ、本当ですか?! これほど嬉しいことはない!」


             ・

             ・

             ・


山田「もうムリ~! 動けないー! ヤダー!」

ドラえもん「な、情けない……」

のび太「もうちょっとがんばろうよ……」

山田「僕なんてどうせ絵が上手いだけのキモオタデブだもーん! 向いてないんだよ! 帰るー!」

のび太「うーん、高校生にもなってみっともないなぁ」

ドラえもん「でものび太くんは人のこと言えないよ。普段こんな感じなんだから」

のび太「え? ぼくってこんな感じなの?」

ドラえもん「むしろもっと酷いし見苦しいよ」

のび太「ガーン」



「まったく……みっともないですわね」




383: ◆takaJZRsBc 2018/04/30(月) 21:43:03.49 ID:bBMD0Uzt0


スタスタスタ。


セレス「…………」

山田「な、な、セレス殿?! 何故ここに?!」

のび太「あれは、確か……」ヒソヒソ

ドラえもん「ぼくが事前に用意したセレスさんのコピーロボットだよ。山田くんが上手く出来たらご褒美に
       褒めてもらうつもりだったんだ。いつもきついセレスさんに褒められたら嬉しいだろうからね」

セレスロボ「山田君が頑張っているから褒めてほしい、と言われここへ来たのにみっともなく
       泣き言をあげているとは……あなたプライドというものはありませんの?」

山田「う、それは……」

セレスロボ「だからあなたはいつまで経っても豚なのです。この豚!」

山田「ブ、ブヒィ……」

のび太「うわあ、きっつい」

ドラえもん「コピーロボットだからね。基本は本人そっくりなのさ」

セレス「大体あなた今まで何か死ぬ気になったことはありますの?」

山田「し、死ぬ気ならコミケの度に散々……」

セレス「そんなのてめえの趣味だろうがよ! 好きなことを好きなだけやるのが自慢になるか、豚あああ!」

山田「ヒィィ!」

セレスロボ「勉強も運動も出来ないならせめて痩せろよ見苦しいんだよ! どんな食生活したらそこまで
       太るんだ、ああ?! 部屋で横になってアニメや漫画見ながら食っちゃ寝してんだろが!」

山田「うっ……否定出来ない……」

セレスロボ「その醜い脂肪を半分にするまでわたくしの目の前に現れないでくださる? では」スタスタ

山田「…………」




384: ◆takaJZRsBc 2018/04/30(月) 21:53:20.00 ID:bBMD0Uzt0


ドラえもん「えっと、その……」

山田「……もうダメ」プシュー

のび太「あっちゃー……」


その瞬間、世界が白に染まる。


のび太「あれ?! きゅうにまっ白になっちゃった?! 山田さんはどこ?」

ドラえもん「恐らくさっきのショックで目を覚ましたんだ……」

のび太「山田さん大丈夫かなぁ?」

ドラえもん「大亜さんが、あの手のタイプは叩くとねじれるって言ってたのに
       モロに叩いちゃったからねぇ……ヤケを起こさないといいけど」

のび太「明日がこわいなぁ……」


               ◇     ◇     ◇


山田「ハッ! ……ここは僕の部屋。今のは、夢か」

山田(リアルな夢だったなぁ。セレス殿なら間違いなくああ言うでしょうし)

山田(夢は深層心理の現れという……)

山田(……僕だって、本当はわかってるんですよ。でも……)


  ― 翌朝 食堂 ―


のび太「お兄さん、大丈夫かなぁ」

ドラえもん「あ、来たよ」

山田「おはようございます……」




385: ◆takaJZRsBc 2018/04/30(月) 22:06:37.01 ID:bBMD0Uzt0


石丸「おはよう、山田君! 珍しく早いな。早起きは良いことだぞ! 続けたまえ。ハッハッハッ!」

のび太(うわ……よりによって……)

ドラえもん(努力の塊みたいな人が話し掛けちゃったよ。ていうか顔色見て察してよ!)

苗木「おはよう、山田君。……何かあったの?」

山田「あ、いえ、ちょっと夢見が悪くて……」

朝日奈「そういう時は運動がいいよ! 一緒に走ってさっぱりしよ!」

ドラえもん(ちょっと、朝日奈さん?!)

のび太(やめてよ! 今その話はまずいって!)

山田「運動……」

大神「そうだな。お主は少し運動不足に見える」

舞園「いいですね! 私も参加しようかな」

ドラえもん(こ、ここでやめておこうよ!)

のび太(おねがい、みんなよけいなことは……)

霧切「たまには私も参加しようかしら」

朝日奈「お、いいねいいね! ほら、山田も!」

山田「えぇ……」

桑田「ちょーどいーじゃん。せっかくだし女子にしごいてもらえよ、ブーデー」

大和田「ちったあ痩せろ」

石丸「ウム。肥満は健康の大敵だぞ!」




386: ◆takaJZRsBc 2018/04/30(月) 22:19:22.19 ID:bBMD0Uzt0


江ノ島「マジありえないって」

葉隠「内臓に脂肪がつくと価値が落ちちまうぞ?」

ドラ・のび(あ、あわわわわ!)

山田「…………」

セレス「おはようございます」

苗木「あ、おはよう。セレスさん」

山田「」ビクッ

セレス「おや、どうしたのです。山田君? そんな鬼でも見るような目でわたくしを見て」

ドラえもん(だって鬼だもん)

のび太(おにだよね)


鬼である。


朝日奈「あ、そうだ。セレスちゃんからも言ってやってよ」

大神「お主が言えば山田も言うことを聞くだろう」

セレス「何の話をしていたんです?」

桑田「山田がブーデー過ぎって話」

ドラえもん(ま、まずいぞこの展開!)

のび太「ね、ねえ! そんなにいそいで言うことないんじゃないかなぁ? きっとそのうちやるよね?!」

石丸「そのうちでは駄目なのだ! いいかね! そのうちそのうちと引き延ばすから
    夏休みの宿題をいつも最終日に泣きながらやる羽目になるのだ!」




387: ◆takaJZRsBc 2018/04/30(月) 22:27:13.72 ID:bBMD0Uzt0


不二咲「石丸君の言う通りだよ。僕も鍛えなきゃ鍛えなきゃって思って結局先延ばしにしてたし」

のび太「それはそうだけど……」

石丸「今は若いからいい。だが肥満は成人病を誘発し、将来恐ろしい目に遭うのだぞ!」

朝日奈「そうそう。みんなあんたのこと心配して言ってんだからさ!」

大神「仲間の忠告は聞いたほうが良いぞ」

不二咲「友達が病気になったら悲しいもんね」

セレス「話は分かりましたわ。まあ、せいぜい頑張りなさい」

ドラえもん「あれ? それだけ? いつもだったら罵倒……いや、もっと厳しく言いそうだけど」

セレス「だってわたくし、山田君にはまったく期待しておりませんもの。
     召し使いとしての仕事さえ出来ればそれで十分ですわ」ニコッ

山田「」ぐっさー!

のび太「うわ……」

ドラえもん「これは……」

ドラえもん(罵倒された方がまだマシだった)

苗木「は、はは……きついね、セレスさん」

セレス「うふふ。そうですか。では、いつものように紅茶をいれてくださいまし」

山田「は、はひ……ハァ」


トボトボ……




388: ◆takaJZRsBc 2018/04/30(月) 22:44:09.40 ID:bBMD0Uzt0


のび太「あちゃあ……」

ドラえもん「流石にちょっと気の毒」

石丸「ム、いじめに見えてしまったか? だが、厳しさは優しさの裏返しだ!
    甘やかすだけでは人間は駄目になるっ! だからのび太君もちゃんと勉強……」

のび太「ひ、ひえぇ~」

桑田「オメエは説教くさすぎ」

大和田「兄弟、朝から説教は勘弁してやれよ」

のび太(ホッ、助かった)

ドラえもん「とにかく、どうしたらいいんだろう……」

霧切「何か悩んでいることがあるのかしら? 例えば――」

霧切「……人に言えないこととか」

ドラえもん「えっ、あ、その……?!」

霧切「…………」ジー

ドラえもん「(嘘を言うとバレそうだ)なにもないよ! 山田くんに自信をつけてあげたいなって……」

霧切「山田くん? ……そうね。彼はもう少し頑張った方が良いわね」

ドラえもん「ですよねー!」

ドラえもん(うまくごまかせたみたいだ。……でもあんまり時間がなさそうだな。
       霧切さんもお父さんのこととか色々あるし。朝ごはんを食べたら作戦会議だ!)




ドラえもん「ダンガンロンパ?」【後半】
元スレ
ドラえもん「ダンガンロンパ?」
http://ex14.vip2ch.com/test/read.cgi/news4ssnip/1515331445/
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