【アズレン】指揮官「裏切るのか、アークロイヤル」
指揮官「ふう、今日の仕事はこれで終わりだ。お疲れ様、ジャベリン」
ジャベリン「はい、お疲れ様でした。んーっ、書類が多くて本当に大変でしたね」
指揮官「このところ出撃ばかりで事務仕事をする時間が取れなかったからね。夜遅くまで手伝わせてすまなかった」
ジャベリン「いいんですよ。出撃だけでなくこういったお仕事も大事だってちゃんと分かってますから」
指揮官「ありがとう。明日は他の者に秘書官を任せるからジャベリンはゆっくりしていてくれ。そうだ、これを」
指揮官「もちろん、喜んでもらえて良かったよ。4枚あるから誰か誘って行くといい」
ジャベリン「ありがとうございます!えへへ、秘書官の役得ですね」
指揮官「俺も偶然手に入っただけだよ」
ジャベリン「うれしいなあ、ニーミちゃんたち誘って行こうかな」
指揮官「……」
指揮官「ああそうだ、ジャベリン、1つ聞いてもいいかい?少し聞きづらい事なんだけど」
ジャベリン「はい、いいですよ。今ならなんでも答えちゃいますよ!」
ジャベリン「はい?」
指揮官「ロイヤルのアークロイヤルってロリコンなの?」
ジャベリン「……違うと思いますけど」キョトン
指揮官「うん、俺もそう思う。はは、深い意味はないんだ。ただちょっと小耳にはさんで」
ジャベリン「そのロリコンっていうのはジャベリンあまり詳しくないですけど、アークロイヤルさんは頼りになるお姉さんだと思いますよ」
指揮官「ああ、優しくて面倒見の良い人だよね」
ジャベリン「はい、戦闘中も駆逐艦の子たちを気にかけてくれて、私も何回も助けて貰っています」
指揮官「へえ、それは初耳だ。知らなかったよ」
指揮官「うん……少しでも疑ってしまった自分が情けないよ。やはり噂などあてにならないものだ。アークロイヤルは素晴らしいな」
ジャベリン「もしかして指揮官……アークロイヤルさんのことが……」
指揮官「違う違う、そういうわけじゃないよ。変な噂に流されて誤解を招くようでは俺も小さい奴だなっていう話さ」
ジャベリン「今度じっくり二人でお話してみると良いですよ」
指揮官「うん、是非そうするよ。ジャベリン、引き留めてすまなかった、おやすみ」
ジャベリン「はい、おやすみなさい」
指揮官「……」
指揮官「俺もまだまだだな……ちゃんと話をしてみるか」
「失礼します」
指揮官「おはよう、アークロイヤル。今日は出撃全休の日で申し訳ないが秘書官業務をよろしく頼む」
アーク「おはようございます閣下。このアークロイヤル、全力で業務にあたります」
指揮官「閣下はよしてくれ、指揮官でいいよ。それと口調も普段通りでかしこまらなくていい」
アーク「では指揮官、今日は何をするんだ?」
指揮官「うん、量は多くないがこの書類の束を崩していく。お茶でも飲みながらのんびりやっていこう。アークロイヤルはこっちの机を使ってくれ」
アーク「承知した。正直書類業務はあまり得意ではないが頑張るよ」
アーク「はは、大した事じゃないさ。やれる事をやっているだけだ」
指揮官「そうか、つい先日も誰とは言わないが駆逐艦の子からアークロイヤルに助けてもらったという話を聞いたよ」
アーク「なっ!?駆逐艦の子が!」ガタッ
指揮官「いきなり立ち上がって……どうした?」
アーク「い、いやなんでもない。あまり言われると恥ずかしいな、ははは」
指揮官「褒められる分にはいいじゃないか。俺も本当に頼りにしている。だが出撃が続いて疲労が溜まっているという事はないか?」
アーク「心配ないとも。私はこう見えて戦闘には自信があるんだ。それが皆の助けになるならば願ってもないことだ。喜んで出撃するよ」
指揮官「そうか。それは指揮官の立場としてはありがたいが本当にしんどくなったらすぐに言ってくれ」
アーク「ありがとう。思えばこうして指揮官と二人で話すのは初めてのことだ」
指揮官「そうだな。俺は以前からアークロイヤルとゆっくり話をしてみたいと思っていたよ。残念なことに中々その機会に恵まれなかったけれど、どんな人かすごく興味があった」
指揮官「美人で、凛としていてあまり女性に言うべき形容ではないが格好良い、そんなイメージだった」
アーク「美人で格好良い、だった……む、実際は違うというのか」
指揮官「違わないさ。加えて、それでいて気さくでとても話をしやすいよ。今日はアークロイヤルを秘書官に選んで良かった」
アーク「え……指揮官。そ、そそ、そうだ紅茶を入れよう!こう見えて私もロイヤルの一員だからな得意なんだ待っていろ!」
指揮官「はは、では頼む」
アーク「委託の帰り道にラフィーが眠たそうにしていて、ついに海上で立ったまま寝てしまったんだ」
指揮官「あはは、随分と器用な奴だ」
アーク「委託を中断するわけにもいかないから私がラフィーをおぶって母港まで帰ってきたよ」
指揮官「そうかそうか、アークロイヤルは本当にいいお母さんになりそうだな」
アーク「え……」
指揮官「失礼……あまり軽々しくこういう事を言うべきではなかった」
指揮官「アークロイヤルは子供の面倒見が良いから、つい口を滑らしてしまった」
アーク「小さい子を見ていると心が癒やされる。そして同時に何かしてあげなくちゃという気持ちに駆られるんだ」
指揮官「分からないでもない。俺もとうに子供がいてもおかしくない歳だからね、父性とでも言うのかな」
アーク「分かってくれるか?もう出撃の時に駆逐艦がいるだけでヒヤヒヤソワソワしてくる」
指揮官「はは、ならばあまり出撃時に駆逐艦と組ませない方がいいか?落ち着かないだろう」
指揮官「え……?」
アーク「あっ、すまない。違うんだ!編成にはほら、何隻か駆逐艦が必要だろう?それに私が命にかえてでも守るから心配ないっ!」
指揮官「あ、ああ……俺は本気で駆逐艦と組ませないと言ったわけではないんだ」
アーク「そ、そうだよな」
指揮官「だが……命に替えてでもか……アークロイヤルが駆逐艦たちを本当に大切に思っているのはよく分かったよ。さあ、いい時間だ。昼飯にしよう」
アーク「私に任されていた分は終わった。そちらを手伝おうか?」
指揮官「すまないが頼む。ただ残っている書類がちょっと厄介でね。資料がいるんだ」
アーク「それはどこにある?私が取りに行ってこよう」
アーク「予備の資料室だな。行ってくるよ」
指揮官「あまり急がなくていいぞ。その間に他の書類を済ませておくから。気分転換に少し散歩してきてもいいし、なんならお菓子でも食べてきたらいい。お金を渡そうか?」
アーク「いらないよ。分かった、のんびり探しに行くとしよう」バタン
指揮官「ふう………よし、やるか」
指揮官「えーとここに俺の名前を記入してから決済の印鑑を押して終わり。次の書類はっと」
指揮官「あっ!漢字間違えた間違えた。修正液はどこにあったかな?」
『きゃーーーーーーーーーーーっ!!!』
指揮官「!?」
指揮官「悲鳴?警報音は鳴っていないから敵襲というのは有り得ない。声のした方向は寮か?向かってみよう」ダッ
ダッダッダッ
フッド「指揮官様、そこでお待ち下さい!」
指揮官「フッドか。待てばいいんだな、分かった。ここは?KAN-SEN用のロッカールームか」
指揮官「中で何があった!?」
フッド「はい、今説明いたします。指揮官様、もう入って頂いて結構です」
指揮官「入るぞ……フッドと……シグニット?座り込んで、怪我をしているのか?」
フッド「いえ、怪我はございません」
シグニット「っ…………うっ」
指揮官「泣いているのか。ひとまずシグニットを落ち着かせてからだな」
指揮官「覗き?ここにはKAN-SENの女性しかいないはず……部外者の侵入か」
フッド「いえ、寮は暗証番号を打ち込まないと入れませんわ。その可能性は低いかと」
指揮官「では誰だ……内部の者?」
『私は子供が好きだ』
指揮官「……」
フッド「指揮官様、どうされました?」
指揮官「いや、なんでもない」
指揮官「シグニット、辛かったな、もう大丈夫だ。ナイーブな問題であるから俺はこの場を外してフッドに任せようか?」
シグニット「いえ、あの、うちが着替えていたら、後ろから人の気配がして、カメラみたいな音がして」
指揮官「盗撮……ということか」
シグニット「分かんな……ですけど、多分」
指揮官「シグニット、立てるか?ひとまずここを離れよう」
シグニット「……はい」
フッド「分かりましたわ」
??「どうしたんだ?指揮官、資料は……」
指揮官「……アークロイヤル」
アーク「シグニット、どうした?」
フッド「シグニットが着替えを覗かれたと」
シグニット「……」
アーク「な、なんだと!?こんないたいけな駆逐艦になんてことを!いったい誰が!?」
指揮官「それは……今から調べる。俺は指令室に向かうから……アークロイヤルもフッド達と一緒にいてくれ」
アーク「わ、わかった」
フッド「……」
指揮官「結論から言えば不審者は見つからなかった」
アーク「そうか。いずれにしても許してはおけない。駆逐艦に対してなんて非道な真似を」
指揮官「……そうだな」
コンコンコン
フッド「指揮官様、少しお時間よろしいでしょうか?」
アーク「フッドか、シグニットは?」
フッド「シグニットはベルたちと一緒に、少し落ち着いたのか今は眠っていますわ」
指揮官「それで、フッドはどうした?」
フッド「少しお話したいことが……」
指揮官「分かった聞こう……………フッド?」
フッド「申し訳ありません。できれば別室がよろしいかと」
指揮官「分かった。アークロイヤルはここにいてくれ」
アーク「な、私には聞かせられない話なのか」
指揮官「すまない……ちょっと行ってくる」
フッド「まず初めに謝罪致します」
フッド「申し訳ありません。報告はしておりませんでしたが実はこのような事は初めてではありません」
指揮官「なに?」
フッド「以前にもシグニットが、その際は本人も気のせいだったかもしれないと言っていたので」
指揮官「そう、だったのか。これで2回目という事か。可哀想に」
フッド「また、改めて他の子にも確認しましたところ、同じような例が数件」
指揮官「つまりシグニットだけでなく、多発的に起こっていると?」
フッド「その通りです」
指揮官「フッド、本件について何か気付いた点はあるか?」
フッド「はい、いずれも被害にあったのは駆逐艦などの小型KAN-SENです。また場所はロッカールームに限られています」
指揮官「小型艦そしてロッカールーム、いずれも着替えの最中に視線を感じたという事だな」
フッド「はい、また犯人と思われる者を正確に現認した子はおりませんわ」
指揮官「それにしても妙に手口に一貫性があるな」
フッド「ですから当面の対策はすぐに打てます。すでに駆逐艦の子たちにはロッカールームに近づかないように指示を出していますわ」
指揮官「ありがとう。それを受ければ犯人は手口を変えるか、もしくは犯行を諦めざるを得ない」
フッド「ええ、そうだと思いますわ」
フッド「指揮官はどうか艦隊指揮と執務に専念して下さい。本件については信頼のおける大型艦で対処致します」
指揮官「ああ、俺は男だしこの件において、あまり込み入った調査は難しい。寮内については任せるよ」
フッド「承知致しましたわ」
指揮官「ただ一つ最後に聞きたい。何故、この話をするために執務室ではなくここに場所を移した?」
フッド「それは……アークロイヤルは駆逐艦の子たちを大切に思っていますから冷静にお話するのが難しいと」
指揮官「……かもしれないな。分かった。対象と場所が絞られている。なるべく小さい子たちから目を離さないようにしてくれ」
フッド「分かりましたわ」
指揮官「アークロイヤル、戻ったよ」
アーク「!!」
アーク「指揮官!犯人は分かったのか!」
指揮官「いや、まだだ」
アーク「悠長に構えている場合ではない。一刻も早く捕まえないと!」
指揮官「寮内に関してはフッドに一任した。我々は執務に戻ろう」
アーク「閣下!!!」
指揮官「君が駆逐艦の子たちを大事に思う気持ちは理解している。だからこそ今は冷静になりなさい。そんな取り乱した姿を駆逐艦の子たちに見せるつもりか?」
アーク「っ……」
指揮官「……依頼していた資料は見つかったかい?」
指揮官「いやいい、ありがとう。なんとか手元の資料を参照してやってみるよ。あとはこちらの書類を日付順に並べてもらえるか?」
アーク「分かった、古いものが上でいいんだな?」
指揮官「ああ、頼む…………そうか、あの資料、見つからなかったか」
指揮官「さっぱり収まった。どうやらあれ以来犯行は行われていないようだ」
指揮官「やむを得ない場合を除き小型艦単独でのロッカールーム使用を制限、そして可能な限り巡洋艦以上の者と共に使用するよう促した」
指揮官「これは少しやり過ぎかと懸念したが、予想外に良い結果も生んだ。小型艦と他艦種とのコミュニケーションが活発になっている」
指揮官「以前は同じ艦種、艦型の親しい者同士で固まる事が多かったが、まさかこんなきっかけで彼女たちの交流が深まるとは怪我の功名と言うべきか」
指揮官「何事もなく1週間が過ぎて、シグニットを含め駆逐艦たちの恐怖心も薄らいできている。もう安心だろう。と……噂をすれば帰って来たな」
指揮官「お、やったなあ。お疲れ様、今日はロイヤル艦隊での演習だったな」
ジャベリン「はい、なんだか最近うまく味方との連携がとれるようになったと思います」
指揮官「それは頼もしい。思い切ってQEを旗艦にしたがうまくいっているようだね」
ジャベリン「以前よりもよくお話するようになりましたからね。互いに何を考えているか、何をしたいかが掴めてきました」
指揮官「それは何よりだ。シグニットの様子はどうだった?演習は久しぶりだろうから」
ジャベリン「すっかり元気になりましたよ。今日も相手の弾幕をするするとうまく躱していましたし、なんだかあの件以来フッドさんと仲良しになったみたいです」
ジャベリン「えへへ、何はともあれいいことですよ」
指揮官「よーし、ジャベリンは夕飯に行ってこい。俺は切りのいいところまでやってから行くよ」
ジャベリン「はーい」タタッ
指揮官「ふう…………さてと待たせたな」
指揮官「フッドも演習お疲れ様、シグニットはもう大丈夫そうだな?」
フッド「ええ、おかげさまで元気そうです。そして私はシグニットさんにべったりですわ」
指揮官「はは、聞いていたのか」
フッド「とてもいい子ですから仲良くできて私も本望ですけれど」
指揮官「あまり熱を入れすぎるなよ……それで掴めたのか?」
フッド「ええ、シグニットさんの件、その際の目撃情報を総合しまとめました」
指揮官「ふむ……結果は?」
フッド「部外者の可能性を否定するのでしたら事件当時、ロッカールームの近くにいたのは私とアークロイヤルのみですわ」
指揮官「そう、か。フッド、君の予想通りとなったな。もう綺麗さっぱり忘れて無かった事にしてしまいたいが、責任者としてはこのまま有耶無耶にする訳にはいかないんだ」
KAN-SEN寮
コンコンコン
フッド「フッドですわ。アークロイヤルさん、少しよろしいでしょうか?」
アーク「フッドかなんだ?鍵なら開いているぞ」
フッド「では失礼致しますわ……準備はよろしいですか?」ガチャ
アーク「ん、フッドとエンタープライズ?それに、し、指揮官!?来るなら事前に言ってくれ!急にどうしたんだ!?」
指揮官「……すまないが部屋を改めさせてもらう」
指揮官「命令だ。アークロイヤルは部屋の外に出ていなさい。エンタープライズはそっちを、俺は机周りを探す」
エンプラ「了解した。作業に取り掛かる」
フッド「さ、アークロイヤルさんはこちらに」
アーク「エンタープライズ!お前、人のタンスを勝手に!やめてくれ!指揮官、やめさせてくれ!」
指揮官「もう一度言う。アークロイヤル、部屋の調査が終わるまで外に出ていなさい」
アーク「しきか……私は別に見られて困る物はないが、しかし!」
指揮官「出ていなさい」
アーク「……分かり……ました」
エンプラ「指揮官、見たところこちらには無い」
指揮官「では続いてクローゼットを、いいや、ここにあった……デジタルカメラだ」
アーク「そのカメラがなんだと言うんだ!?」
指揮官「電源は……入った。では中身はエンタープライズが確認してくれ」
エンプラ「分かった…………無い。駄目だ指揮官、ここには写真が1枚も入っていない」
指揮官「という事は別にメモリーカードがあるはず」
アーク「指揮官、説明をしてもらえるか?」
指揮官「アークロイヤル、本当に申し訳なかった。俺は君を疑っていた」
アーク「な、何の事だ?」
指揮官「シグニットの件、そしてロッカールームで起こった一連の事件についてだ。この犯行にはカメラが使われた可能性があった」
アーク「あれは単なる覗きではなかったのか?」
指揮官「アークロイヤルには話していなかったがシグニットがシャッター音を聞いている」
指揮官「同じようにフッドの部屋も調べたが、事前情報の通りカメラの類いは出てこなかった」
アーク「それで私が一番疑わしいということか。しかし、私は神に誓って盗撮などしていない」
指揮官「ああ、他のメモリーカードも含めて疑わしい写真は見当たらなかったよ」
アーク「当たり前だ。ともかくそれで私は無実を実証できたという---」
指揮官「いいや、発覚を恐れて画像を消したという線は拭えない」
指揮官「俺はこの艦隊の責任者として、この件を無かった事にして素通りはできないんだ。徹底的に追及しなければ、二度と同じ事を起こさせないために」
アーク「私だって駆逐艦の子たちが怯えるような事は二度と御免だよ」
指揮官「……アークロイヤル、君はやっていないんだな?」
アーク「私はやっていない」
指揮官「分かった、信じよう。俺だって信じたい。駆逐艦たちに慕われ、駆逐艦を大事に思う君は美しかった」
指揮官「ああ、今回の調査については必要最低限の者しか知らないから心配するな。もちろん駆逐艦の子たちは誰が疑われたかさえ知らないままだ」
アーク「……」
指揮官「アークロイヤル、重ねて本当にすまなかった。このような手段をとった俺に幻滅しただろうが仲間には変わらず接して欲しい。寮内の安全管理を怠り、このような事態を招いた責任は全て俺にある」
アーク「謝らないでくれ。指揮官はみんなを守るためにやる事をやっただけだろう?心配しなくていい、指揮官は正しい事をしたと思う」
指揮官「そう言ってもらえるとありがたい」
アーク「日常に戻ろう。ただ一つお願いをしてもいいだろうか?」
指揮官「なんだ?」
アーク「今後も調査を続けるのならば私も加えて欲しい」
指揮官「もちろんだ、よろしく頼むよ」
フッド「……」
指揮官「馬鹿な……」
指揮官「何が起きた?どうなっている?どこから漏れた?」
指揮官「艦隊全体に今回の調査に関する詳細が知れ渡っている。そこに断片的な尾ひれが付いて、いまやアークロイヤルは犯人扱いも同然だ」
指揮官「ひとまず漏洩先を突き止めるのは後にして事態の収拾を急がねばならない」
ジャベリン「指揮官、大変です!こんなビラが大量に」バタン
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『ロイヤルのアークロイヤルは小児性愛者、ロリコンである。今まで非道な手段を用いて幾多の駆逐艦をその手にかけてきた。駆逐艦諸君は自らの身を守るため団結しアークロイヤル追放の声を上げよ!』
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-
ジャベリン「指揮官……」
指揮官「ジャベリン、これを見た駆逐艦の子たちの反応はどうだった?」
ジャベリン「えと……なんて言うんでしょう?手にかけるどうこうというのは有り得ない話として、まともに受け取っている子はいません。ただ盗撮程度ならやりかねないよねって話は耳にしました」
指揮官「そうか、ビラはどこにあったんだ?」
指揮官「騒ぎが広がる前に急いで回収しよう。ジャベリン、手伝ってくれるか?」
ジャベリン「それでしたらフッドさんと大型艦の人たちがすでに回収作業を始めています。終えたらこちらに向かうとのことです。またアークロイヤルさんは自室に」
指揮官「フッドか。対応が早いな、本当に助かる」
ジャベリン「こんなのひどいです!アークロイヤルさんがそんな事するわけないのに!」
指揮官「……」
ジャベリン「艦隊にはこんな事信じてる人は誰もいません!ただこれじゃあアークロイヤルさんが可愛そうです!」
ジャベリン「どうしたら……いいんでしょうか?」
指揮官「このままでは話が広がり、あらぬ誤解を生む可能性がある。何か起こる前に一度俺から皆に話をした方が良さそうだ」
ジャベリン「……お願いします」
指揮官「……うん」
コンコンコン
フッド「失礼します。指揮官様、ビラの回収を終えましたわ」
フッド「はい、手分けをして作業をしましたが全てを回収できたかどうかは。既に誰かの手に渡っている可能性は否めませんわ」
指揮官「あまりにも悪質だ」
フッド「申し上げにくいのですがこれは……」
指揮官「ああ、はっきりしたな。内部の者の犯行で間違いない」
ジャベリン「そんな……まさか」
フッド「……」
指揮官「シグニットの件を受けて警備はさらに厳重にした。もはや外部の者が入り込む余地はないよ」
指揮官「……何者かがアークロイヤルを貶めようとしている。しかも俺が思うにロイヤル艦隊の誰かが」
ジャベリン「え……」
フッド「……」
指揮官「このビラのここにある単語、これはユニオンで使われるものではなくロイヤル特有の表現だ」
ジャベリン「そんな……」
フッド「可能性はありますわね。ですけれど何故ロイヤルに属する者がこんな事を」
指揮官「分からない。イタズラか怨恨かそれ以外か」
指揮官「ただその者はアークロイヤルの部屋の調査が行われた事を何らかの方法で知っていた」
指揮官「……」
指揮官「いや、こんな話は後にしよう。ひとまず俺はアークロイヤルに会ってくる。フッド、迅速な対応を本当に感謝する。ご苦労だった」
フッド「いいえ、当然の事をしたまでですわ。指揮官様、私もアークロイヤルのところに同行してもよろしいでしょうか?」
ジャベリン「私も行きます!」
指揮官「あまり多人数で押しかけるのも……いや、そうしよう。分かった」
KAN-SEN寮アークロイヤル居室
アーク「閣下、まったくどうなっているんだよぉ?私が外に出る度に駆逐艦の子たちに指を差されて笑われるんだ」
指揮官「すまない。どこからか調査に関する情報が漏れたようだ」
アーク「え?もうなんなんだよこのビラぁ!?ロリコンなんてあんまりだよ!私は艦隊の仲間として駆逐艦の子たちが好きなだけなんだぞ!私は純粋な気持ちで愛でているだけなのにこんな仕打ちはあんまりだ!」
指揮官「あまり大声を出すな。だが思ったより落ち込んでいないようで少し安心したよ」
ジャベリン「あはは、そうですね」
フッド「わ、私ですか?」
アーク「最近シグニットと仲良いだろう?羨ましいぞ!」
フッド「えっと私はこの間の件もありましたから彼女を見守るという事で、つまり成り行きですわ」
アーク「そう、それは私と同じじゃないか!つまりそういうことだ!」
指揮官「よく分からんが話を元に戻そう。アークロイヤルはあまり気にしてないようで何よりだが、艦隊全体としての話だ」
ジャベリン「伝言ゲームでいつの間にか内容が変わっちゃうということですね」
指揮官「そう、人の興味を引くように面白可笑しく単純に、より下世話な内容へと変化していき易い」
フッド「得てして噂というのはそういうものですわね」
アーク「閣下……」
指揮官「はは、閣下はやめろと言っただろう。俺はこの艦隊を誰もが心から笑える、そんな艦隊にしたいってだけさ」
指揮官「心配しなくていい。後日、KAN-SEN全員に対して話をするつもりだ。君は何も恥じる事はないと、そして君を貶めた者を決して許さないと」
アーク「閣下……頼みます」
指揮官「ああ、君はロリコンなんかじゃない。優しい素晴らしい女性だ」
ジャベリン「そうですよ!それはジャベリンが保証します!」
アーク「ジャベリン、お前はいい子だなあ。お菓子食べるか?」
ジャベリン「わあ、いただきます!」
フッド「ふふ」
母港大講堂
指揮官「……」
指揮官「KAN-SEN全員、集まったな。これからこの艦隊の責任者、指揮官として重要な事を伝える」
「先日、このようなビラが母港のあちこちでまかれていた。当然、このような稚拙なものを信じる者はこの中に誰一人としていないだろう」
「あえて名前を出して述べるが私はアークロイヤルロイヤルの身の潔白を信じている」
アーク「……」
指揮官「それは俺個人の心情としてだけでなく、彼女が過ちを犯したという客観的な証拠は今日まで一切出ていないからだ!」
「よって、皆はこのような煽動に惑わされる事無く日々の仕事にあたって欲しい。この件に関しては以上だ」
ジャベリン「……」
「君達はこのような卑劣極まる行為に対して激怒しなけれはならない。この艦隊の一員として」
フッド「……」
指揮官「もしこのビラを見て何も思わないのであれば、それは作ってバラ撒いた者と大差ないと言える」
「俺は、いいや私はこの艦隊の指揮官として君たちに宣告する!」
「むやみに人の品位を貶めようとする者は出ていけ!」
「そのような者はこの艦隊には必要ない!」
「どれだけ出撃で活躍しようが、どれだけ性能が良かろうがそんな事は関係ない!」
「1つの陣営が欠ければ、1つでも艦種が欠けてれば決してセイレーンに立ち向かう事はできないと」
「我々は理解している。この多様性こそが我々の力の源なのだと!そしてこの多様性こそが我々そのものなのだと!」
「つまり今回の事は一個人対してに留まらず、この艦隊に対する侮辱だ!」
-
「もう一度言おう!他人を敬い、尊重する事ができないのならば、今すぐこの艦隊から出ていけ!」
-
-
執務室
アーク「ありがとう」
指揮官「……ん」
アーク「閣下は本気で私の名誉を守ろうとしてくれた。私は別にロリコンと呼ばれようと何とも思わないよ。駆逐艦たちを皆を守れればそれでいい」
指揮官「良くなんてないさ。勇敢で誇り高くそして優しい、そんな君をロリコンと形容するなんて馬鹿のやる事だ」
アーク「閣下、勇敢だの誇り高いだのそっちの方がよっぽど恥ずかしいよ。はは、それに私だけじゃない。駆逐艦たちの事も、そしてこの艦隊全体の事も守ってくれた」
アーク「いいや、そう呼ばさせてくれ。私はいつまでも貴方についていくよ。貴方の事がもっと知りたい。気兼ねなくまた秘書官にして欲しい」
指揮官「……うん、近い内にな」
アーク「閣下、戦闘も駆逐艦たちも好きだけれど私は……………」
アーク「な?……あはは、そうだった。今行くよ、ジャベリン。では閣下、行ってくるよ」
指揮官「頑張ってこい。その、今日の夜にでも二人でゆっくり話をしよう」
アーク「え……それって?」
ジャベリン「まだですか?アークロイヤルさん、時間ですよ!」
アーク「待ってくれ。では……今度こそ」
指揮官「ああ」
指揮官「!?」
指揮官「来ていたのかフッド、驚かさないでくれ」
フッド「これで一件落着ですわね」
指揮官「今回の事でつくづく学んだよ。互いの誤解とはほんの小さなすれ違いから生まれかねないと」
フッド「ええ、異なる艦種、異なる陣営について皆が考える良い機会になったかもしれませんわね」
フッド「期待していますわよ」
フッド「ところでよろしいんですか?誰があのビラを作ったか指揮官様は分かっていらっしゃるのでは?」
指揮官「いいや、分からないさ。けれどあの場で言うべき事は言った。本気で犯人を見つけて艦隊から叩き出すなんてのは俺の本意ではないよ」
フッド「……そうですか。では私も出撃しますので失礼しますわ」
指揮官「ああ、旗艦として艦隊を頼むよ」
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果たしてそこにあるのは
https://i.imgur.com/K0tz18D.jpg
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指揮官「計算通り」ニヤリ
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おわり
「SS」カテゴリのおすすめ
「ランダム」カテゴリのおすすめ
コメント一覧 (25)
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- 2019年06月18日 12:40
- >>1
釣れますか?
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- 2019年06月17日 13:37
- 〇〇のパクりだからやめるわ、とか言ってる奴って浅はかだよな〜
どんだけ薄っぺらな人生送ってんだろ
まあ俺も普通飽きたからもうアズレンやってないけど
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- 2019年06月17日 15:07
- 裏切るのかロ◯コン共…
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- 2019年06月17日 15:10
- 後味悪すぎて引くわ
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- 2019年06月17日 16:46
- でもお前らアプリインストールしたことないじゃん
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- 2019年06月17日 18:28
- 艦豚は巣にお帰り
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- 2019年06月17日 21:08
- >>6
よう艦豚
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- 2019年06月17日 19:43
- 提督さん… クソイベが脳にまで達しちゃったか…
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- 2019年06月17日 23:48
- つまらなかった。
4行位しかみてないけど。
見る価値ある?
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- 2019年06月18日 00:58
- >>9
国境の長いトンネルを抜けると雪国であった。
夜の底が白くなった。
信号所に汽車が止まった。
向側の座席から娘が立って来て、島村の前のガラス窓を落した。
ここの部分だけ読んで面白いか?
お前はバカか?
-
- 2019年06月19日 00:30
- >>10
お前俺のことさんざんバカにしてるけど
そのくっそキモいポエム何?
つまらないを通り越してサムいんだけど
何が「夜の底が白くなった。」だよwww
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- 2019年06月19日 00:58
- >>18
川端康成の「雪国」という小説の冒頭
知らないにしても勘を働かせて何かの引用を疑うものだけど
君本当に相当底抜けのバカだね
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- 2019年06月18日 01:48
- >>11
尤もな指摘だ。おかげで目が覚めた。ありがとう。
>>9
疑ってすまなかったな。
冒頭4行だけ読んでつまらないと決めつける時点でお前は紛れも無くバカだ。今までどんな本読んできたんだ?
-
- 2019年06月18日 16:28
- >>9
文章と話の面白さはそんなに関係無いけど、多少内容がよくても苦手なタイプの文体を見続けるのは結構な苦行だから出だしで自分には合わないと思ったら基本的に読まなくていい
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- 2019年06月18日 23:32
- >>15
馬鹿に馬鹿真面目に語りかける必要ないよ
時間の無駄
-
- 2019年06月18日 01:11
- ※10
お前そういうこと言うなよ失礼だろ
※9は正真正銘のバカなんだよ、疑うなんてもってのほかだ、ちゃんと謝んなさい
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- 2019年06月18日 09:18
- 最後の指揮官の宣告、Youtubeにある米軍のいじめに対する上官のやつのパクリ?
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- 2019年06月18日 23:30
- アズレンSS流行れー
でもこのSSはあんまり好きじゃないかな
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- 2019年06月19日 01:19
- 1行目をコピペでググるだけで川端康成の雪国がヒットするにも関わらず自分の無知を棚にあげる大バカがいる記事はここですか?
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- 2019年06月19日 23:17
- やっぱアズレン嫌い
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- 2019年06月22日 06:45
- 艦これもアズレンも両方好き
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- 2019年06月23日 10:46
- 指揮官ただのクズやんけ
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- 2019年06月23日 12:08
- 指揮官がクズなのは置いといて、ロッカールームでシグニットが聞いたシャッター音は誰の仕業?
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- 2019年10月05日 09:33
- とくさんワラワラで草
アズレン絶好調なのがそんなに悔しいのかよwwww
長門の結婚イラストがパクリ絵のパーツの集合体って知って辞めたわ