女「宇宙の真理に同調しませんか?」男「は?」
女「ええ、こういうものなんですけど」パンフレットスッ
男(ああ……宗教か……)
男(ネットの話では見たけどぶち当たるのは初めてだな……)
女「人は生まれたときから罪を背負っています」
女「ですが、我々の所有する本尊を拝めば福運を詰めるのです」
女「幸せになりますよ。こんなボロアパートすぐに高級マンションに早変わり」
男「入るどころか話する気すら起きねえよ馬鹿。詐欺師の空気駄々漏れじゃねえか」
男「宗教なんか知らない俺でも知ってるぐらいだ」
女「それはデマです」ズイ
男「近い近い近い」
女「正しいから批判されるのです。真に素晴らしいからそれを妬んでいるのです」ズズイ
男「地上波に悪行を流されていながらその台詞を口に出来る胆力だけは誉めてやる」
女「ではせめてこちらに名前を」
男「ざけんな殺すぞ」
男「いや帰ってくれよ。そしたら手を合わせるぐらいの気にはなるだろうし」
女「そうことを急ぐことも無いでしょう」
男「いや、害虫は即座に殺すもんだろ」
女「害虫!?」
男「害虫」
男「……あんたらみたいな人にすり寄ってくる害虫は嫌いなんだよ、正直な話。警察呼ぶぞ?」
女「私が警察ですが」手帳パカッ
男「逃げ場なしかよッッッ!!!」
女「同士はそこらに居るのです」
男「まさにゴキブリ」
女「仕方ない。今日のところは帰ります」
女「ではまたいつか。○○さん」
男「二度と来んな……」バタン
男「……え?」
男「んん?」
男「……何で俺の名前しってんだようわぁぁぁぁぁこえぇぇぇ……」
――一週間後
ピンポーン
男「……どちらさま?」
女「こんにちは」
男「またあんたか。言っとくけどあんたのとこの職場にクレーム入れたって……」ガチャ
取り巻き「こんにちは!」
取り巻き2「どうも!」
男「」
男(なんかマッチョな奴二人連れてきてて草も生えねえ)
女「宇宙の真理に以下略」
男「ねえよ帰れ馬鹿。マジでクレーム入れるぞ」
女「電話に出る警察官は確実に私たちの同士ですけどね」
男「逆に笑える」
取り巻き2「お茶だけでも!」
男「悪いな給料日前で懐が寂しいんだ」
女「私が持ちますのでご心配なく」ニッコリ
取り巻き「さあ!」
取り巻き2「さあさあ!」
男「うわぁぁ!!! 警察!警察呼んでー!」
三人「我々が警察ですが」
男「世も末だよ!!!!!」
女「さあさ、遠慮なく。なんならご飯も済ませていきますか?」
男「警察官だけあって金持ちだな」
女「それはどうも」
男「皮肉だよ。信者から搾り取ってんだろこの野郎!!!」
取り巻き「搾り取る等と!」
取り巻き2「とんでもない!あくまでも彼らの意思ですよ!」
男「んなこといって出さなかったら集団で虐めにかかるくせに良く言うぜ!」
女「それは罰が下ったのを認められない人たちのデタラメですよ?」ニッコリ
男「あんたらサイコパスだよ!!!!!!」
女「」グスン
男「む?」
取り巻き「ああっ、先輩!」
取り巻き2「ううっ、先輩!」
女「信仰とは辛いものね……目をかけた人を引き込むのがこんなに難しいなんて……」
男「嘘泣きがうめえな?」
女「そんなッ! 嘘だなんてッ!」
男「抜かす前にまず目薬しまいやがれブス」
取り巻き「目をかけてもらってるのに!」
取り巻き2「こんな幸せなかなか無いんだぞ!?」
男「じゃあこの場で一回限りあんたらの本尊に祈ってやるよ。今すぐお前らを俺の前から消してくださいってな」
女「祈ってくれるんですか!?」
男「都合のいいとこだけ抜きだしてんじゃねえ殺すぞブス!!!!!!」
女「チッ、ちゃっかりしてらっしゃる」
取り巻き「向いてますね」
取り巻き2「向いてますよ」
男「いやな適性だよ! ごちそうさま!」
男「二度と来んな!」
女「待ってください○○さん!○○さーーーん!」
男「人の名前を叫ぶなぁッ!!!!!!!」
取り巻き「……中々強情な……」
取り巻き2「どうします」
女「いえ、まだ手はありますから」
取り巻き「しかし、ターゲットはなにもあの男だけではない」
取り巻き2「いくらでも居ますよ、なんならあのアパートにでも」
女「ですが、ここで退けば我々の名折れになります。あとすこしばかり粘りましょう。――多少乱暴になってでも」
女「あくまでも、本当に――我々のために、ですから」
一週間後――――。
ピンポーン
男「ッがぁぁぁぁぁぁぁぁあああッッ!!!!」
男「来るな! 帰れ! 来るなああああああああ!!!」
少女「……すいません……」
男「ん?」
男「……なんだ、あいつらじゃねえのか……」
男「どしたガキンチョ。道にでも迷ったか?」ガチャ
少女「……」ボロボロ……
男「て、随分汚れてんな……擦り傷だらけだし……これはいわゆるあれかね?」
男「虐められたのか?」
少女「……はい、電車の定期も持ってかれてしまって……」
男「で、なんだってここに来た?」
少女「前通りかかったときお兄さんがここに入るのを見たんです……」
少女「やさしそうな人だなって、覚えてて……」
男「少女漫画かな? もうちょい練ってこいガキンチョ。――子供まで使うのかよ、宗教ってなぁ……」
男「お前ら本気で狂ってるよ。御本尊とやらに願うなら頭の病気を治してくださいってのにしたらどうだ?」
少女「姉貴の言う通り口の減らない野郎だ」
男「そいつはどうも。腹が立つならとっとと消えろ。お互いそいつが幸せだ」
少女「ああっ! やめてお兄さんっ! 服を脱がさないでぇっ! 中学生に興奮するなんてっ!」
男「このキ○ガイどもがああああああああああああああああああああ!!!!!」
少女「ああっ!部屋に引き込まれるぅっ!」
男「テメーが勝手に入ってんだろ!!!!!」
少女「ああっ! 私これからめちゃくちゃにされるのね! 官能小説みたいに!」
男「黙れえええええ!!!」
少女「むぐっ」
男(流れで家に入れてしまった)
男(どうにかして追い出さねば……)
少女「信仰するって言うまで居座ってやる。追い出したら変なことされたって吹聴する」
男「あれ、これ詰んでね?」
男(そうこうしているうちにしばらくの時間が経った)
男(追い出すこともできず、かといって談笑などできるわけもない)
男(とりあえず風呂に押し込んでやったのだが、声一つあげないのだ)
男(しかし……)
少女「お前が信仰するって言うまで水の一滴も口にしない。これで私が死んだら」
男(……監禁して餓死させた犯罪者一丁上がりってか……!!!クソが!!!!!!)
男(計画的すぎる。確実にあの女が絵図を書いている)
男(自分の妹を犠牲にしてまで信者を引き込もうとするその精神、素直に吐き気がするぜ……!)
男「……宗教にハマってる親は子を虐待することに躊躇いがない……だったか……」
男「姉妹でもそれは変わらず……か!」
男「ワケが解らねえ……! 何がこいつらをそこまで動かしてんだ!!??」
ピンポーン
男「」ビクッ
女「こんにちはー」
女「すぐにでもお縄にかけられる準備ができてます。完全に手ぶらになって玄関まで出てきて貰えますか」
女「録音などされると困るので」
男「……ビョーキだよ、おめーら」
ガチャ
女「宇宙の真理と同調しませんか?」ゴゴゴゴゴゴ
男「答えは変わらず。NOだよ。捕まえりゃいいだろ」ギリリッ
女「強がっちゃって。未成年略取なんかしたら檻から出たあとも地獄ですよ?」
男「ああ強がりだ。でも信仰するよりよっぽどマシだね。とっととワッパを出してみな」
女「――本当に捕まえますよッ!!?」
男「やれよオラァ!!! 玩具かその手錠はよォ!!」
男「別に俺一人の人生がどうなろうが構わねえがな、テメーらに対してプラスなんか与えてやらねえ!」
男「気が狂ってるぜ! 今風呂場で寝ころがって飯も食わずに耐えてるのはてめえの妹だぞ!!??」
女「それは信仰のためで、本人も了承済みで――」
男「しるかァッ!!!! 了承済み!? モノも知らねえガキ言いくるめてるだけだろうが! 嘘でも男に襲われたなんてレッテルがついたら、あいつの人生にだって闇が落ちるだろうが!!?」
男「てめえらは幸せなんか何一つ産み出してねえだろ――」
男「不幸を世代を越えて伝染させてるだけの、この世のガンだ!!!!!!!!」
女「………………」
女「………………」ボロボロ
女「………………」ボロボロボロボロ
男「……また嘘泣きか? はやく手錠……」
少女「ガチだよ、馬鹿。芯を食ったんだ」
少女「なにも知らない奴はいつもそうだ。過去も知らずに私たちを批判する」
少女「確かに宗教なんてのは嘘っぱちで、なんのためにもならない。金だけを持っていく不幸のシステムでしかない」
少女「皆で不幸を分割して生きていこうってだけの、終わりの無いサイクルだ」
少女「――だけど、あんたがた普通の人間は、それに救われてる人間がいるって事に気づかないんだ」
男「……馬鹿か? 払う必要もないものを払って、手に入る即物的な関係が幸せ?」
少女「そうだよ。たとえそれが金だけで出来上がった薄っぺらなものでも、ほしくて仕方なかった人たちがいる」
少女「障害者、部落民、老い先短い老人たち……その性格ゆえに、社会に馴染めなかったものたち……」
男「そこにつけこまれてるだけなんだぜ? 悔しくないのかよ」
少女「解ってるし、悔しいって思うこともある。――けど、義務を果たし続ければ、皆優しくしてくれる」
男「それは家畜に対する愛情と変わらないぜ」
少女「『それでも欲しくてしかたなかった』――私も、姉貴も、そうだった」
少女「あんたは忘れてる」
少女「あんた自身が、社会に馴染めなかった姉貴に、どれだけひどいことをしたか」
少女「そういうものから身を守れる唯一の救いが、宗教だったんだ」
少女「それしかすがるものも無いくらい、不幸な奴等しか居ない」
男「――くだらねぇ」
男「俺にはわかんねえな。カネだしてまで蝶よ花よと愛でられたいお前らの甘ったれた考えは」
男「一生理解できねえよ。する気もねえし、それだけだ」
男「お前らは結局自立できなかっただけじゃあねえか」
男「生活的な問題じゃねえ、心の意味で、自分をはっきりと見つけられなかっただけだろうが」
男「そんなやつらが集まって人に嫌がらせをしてる。それでいざ芯を食ったら俺たちだって、てか」
男「ワラかすな。人間そんなに甘くねえんだよ」
男「興味もねえ。してやれることもねえ。――自分で自分立たせるしかねえ」
男「そこに最後まで気づけなかった大馬鹿ばっかだよ、お前らは」
男「――帰れ。二度と来んな」
男「もう二度と言わせんなよ、この台詞を」
男(案外と、素直に帰った)
男(――誰にでもあることだ。あそこの子とは遊んではいけないよとか、何気なく言われたことを)
男(律儀に守って、結果的に誰かの心に傷を残す、なんてことは)
男(俺にもたった一回だけそれがある。そして、その相手は女の子だった)
男(――――ちょうど、俺と同じぐらいの――――今なら働き盛りであろう――女の子だったのだ)
男(世界はあやふやなように見えてはっきりと境界を分けている。当たり前のことだが、こうして実感を伴うとその残酷さにため息をつかざるを得なかった)
男「……一つまみ、憐れんでやる……」
男(また、チャイムが鳴った)
男(郵便です、と響いてくる声に、ほんのすこし寂しさを覚えたのは、気のせいだと思いたい)
今日も、どこかで不幸が連鎖している。
――もしであってしまったのなら、目を反らし、無言に徹しろ。彼らは歴史の暗部なのだ。
彼らと共に歩まなくても生きていける自分の幸せを噛み締めよう。それがマトモな人間の唯一出来ることだ。
了
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コメント一覧 (16)
-
- 2019年05月29日 23:18
- わかるわ
-
- 2019年05月29日 23:25
- コメディチックなSSだと思っていたら
-
- 2019年05月30日 08:47
- 弱い立場に酔ってるだけじゃん
まとめて海の底にでも沈んでくれないかな
-
- 2019年06月02日 01:21
- >>4
そういうお前は強い立場に酔ってる
-
- 2019年12月23日 22:41
- >>9
そうは見えないけど
オウム返しはつまらんぞ
-
- 2019年05月30日 22:48
- いや、いいところ突いてるし
実際それで救われている人間もいるからな
俺は宗教を否定はしない
-
- 2019年05月31日 07:57
- 宗教はアヘンとよく言ったものである
-
- 2019年06月02日 01:17
- >>6
マルクスなー
読んだことある?
-
- 2019年05月31日 23:01
- お前も空飛ぶスパゲッティ・モンスター教に入らないか?
-
- 2019年06月07日 07:04
- 前半と後半の温度差wwwww
-
- 2019年06月14日 04:14
- 宗教に救われることと、その宗教を嫌がる他人に押し付けることとは全く別の話だろ
入信させるために他人を犯罪者に仕立てあげようとして、批判されたら被害者ヅラかよ
馬鹿じゃねーの
-
- 2019年07月02日 03:16
- イキリキモオタ
-
- 2019年07月02日 03:33
- 宗教勧誘は本当にうざい。
-
- 2019年07月20日 03:32
- 嫌がる他人を無理矢理引き込もうとするのは良くない
拒まれただけで致命傷、世界中の皆がひとりも違わずに揃ってないと嫌だ
弱いとか強いとか関係なく問題なのはその姿勢だろばかちん
-
- 2019年07月30日 06:19
- ただのドMだろ
冷たい扱いを受けた信者は「世間の人は分かってくれない」と更に宗教への依存を深めるから
モーニングに載ってた「テロール教授の~」みたいな題名の漫画にそんなことが描かれてたよ