スタッフ「美味しくいただきます」グパァァァ 男「うわあああああああああ!!!」
- 2019年04月18日 00:10
- SS、神話・民話・不思議な話
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男「……ん」
スタッフ「…………」
男「なんだお前?」
スタッフ「美味しくいただきます」グパァァァ
男「うわあああああああああああ!!!」
バリバリ… ムシャムシャ… ギャァァァ…
課長「……これで四人目だ!」
課長「まるで猛獣に食われたような痕跡を残し、殺人が行われた!」
課長「これ以上の被害はなんとしても食い止めなければならん!」
課長「四人はいずれも、あるテレビ局の大物だ」
課長「ライバル局や、このテレビ局の放送で不利益を被った者などを徹底的に洗い出せ!」
「はいっ!」 「はいっ!」 「はいっ!」
刑事「…………」
課長「なんだ?」
刑事「殺された四人に共通点はなかったのでしょうか?」
課長「さっきいっただろう! 四人ともテレビ局の役員やプロデューサーといった大物だと!」
刑事「いえ、ですから、もっと深い共通点はないかと」
課長「深い共通点だとぉ~?」
課長「そんな下らんことにこだわってる暇があったら、とっとと捜査に出向かんか!」
課長「こうしてる間にも、次の被害者が出るかも知れんのだぞ!」
刑事「あのさ……」
同僚「ん?」
刑事「一連の殺人事件、本当に猛獣かなにかの仕業だったりしないのかな?」
同僚「なにいってんだ。被害者にはまるで猛獣に食われたような跡があったが――」
同僚「検死の結果、既存のどんな動物の噛み跡とも一致しなかったんだ」
同僚「だいたい、そんな猛獣がいたら、目撃者がいなきゃおかしいだろ」
同僚「それともなにか? 未知の化け物が被害者を食い殺したとでもいうつもりか?」
刑事「そんなことはないけど……」
同僚「おっと、とっとと出かけようぜ。課長にどやされちまう!」
刑事「警察の者ですが」
受付「どのようなご用件でしょうか?」
刑事「この局の……生き字引的な方にお会いしたいのですが」
受付「生き字引……ですか?」
社員「ああ、だとしたらあの人がいいんじゃないかな」
受付「え?」
社員「ほら、社史編纂室の……誰にも相手にされてない……」ヒソヒソ…
受付「ああ、あの人……」クスッ
刑事「ぜひ、その人に会わせて下さい!」
老社員「こんなテレビ局の片隅に追いやられたジジイに用があるとは、変わった刑事さんだ」
老社員「どんなご用かな?」
刑事「こちらの局の社員が四人も殺された事件はご存じですね?」
老社員「ああ……もちろん知ってるよ。むごたらしい殺され方をしたとか」
刑事「この四人、いずれもこちらの局でそれなりのポジションについていますが……」
刑事「それ以上の深い共通点がないかどうか、調べて頂けないでしょうか?」
老社員「ふうむ……ちょっと調べてみよう。ここは資料だけは沢山あるのでな」
ガサガサ…
老社員「お待たせした」
刑事「いえいえ。丁寧なご対応、痛み入ります」
老社員「あの四人は全員、『ヒドメシ』という番組のスタッフだったよ」
刑事「『ヒドメシ』?」
老社員「私が説明するより実際に見た方が早いだろう」
刑事「テープが残ってたんですか……ありがとうございます」
テレビ『さらにプリンを混ぜちゃいましょうか!』
テレビ『グチャグチャグチャっと……』
テレビ『ワハハハ……ハハハハ……こりゃひどい……』
刑事「……なるほど、名前の通り、わざと“ひどいメシ”を作る番組か」
刑事(今じゃとても放送できないな……)
刑事「おなじみのテロップが……」
刑事(こんなのとても食えないだろ……きっと全部捨ててるんだろうな)
老社員「どうだね」
刑事「なんというか、良くも悪くも昔の番組といった感じですね」
刑事「今じゃ絶対放送できないと思います」
老社員「ところで、思い出したんだが……」
刑事「なんでしょう?」
刑事「なんですって? いったいなぜ?」
老社員「それが……事故として内々で処理されたから、よく分からないんだよ」
老社員「ただ……ひどくいじめられてたらしい、というのは聞いたことがある」
老社員「あくまで噂だがね」
刑事「…………」
刑事(あ、『ヒドメシ』のスタッフロールが流れる……)
刑事(やはり被害者の四人の名前が入ってるな)
刑事(テレビ局のポジションには詳しくないが、当時すでに全員そこそこの立場だったらしい)
刑事「!」
刑事「あっ……この名前は……!」
老社員「ああ、ウチの社長だね」
老社員「今でこそなりを潜めてるが、当時の彼は徹底した視聴率主義だったからねえ」
老社員「面白ければどんなことでもやる、やらせる、というスタンスだったよ」
老社員「実際、それで結果を残して社長にまで成り上がった人だから」
刑事「…………」
老社員「参考になったかい?」
刑事「ええ、ありがとうございます。おかげでなんとなく道筋が見えてきました」
刑事(次に向かうべきは……!)
刑事「失礼します」
社長「これはこれは、うちの社員を次々に殺した殺人犯の目星はつきましたか?」
社長「なんとしても逮捕してくれなければ……」
刑事「今日はその件もあって、こちらに伺ったのです」
社長「ほう。ま、どうぞ、おかけ下さい」
刑事「視聴率のためならどんなことでも……というタイプだったとか」
社長「誰に聞いたんだか……ですが、その通りですよ。否定することもない」
社長「今でも根っこは視聴率主義のままですしね」
社長「生放送中に殺人が起きればなぁ……なんてしょっちゅう思ってますよ」
社長「だから今の連続殺人も内心歓迎してたりして……」
社長「――なぁんて、冗談ですよ冗談。ハハハ」
刑事「…………」
社長「どうぞ」
刑事「この方をご存じですか?」スッ
社長「……これは?」
刑事「かつて『ヒドメシ』という番組でADをしていたスタッフの方です」
社長「!」
刑事「亡くなられたそうですが、詳しい死因は不明だとか……」
社長「し、知らん! こんな奴、私は知らない!」
刑事「私は今回の件、ただの人間の仕業ではないと思っています」
社長「なんですって?」
刑事「たとえば、『ヒドメシ』のスタッフであった彼がまるで怨霊のような存在となり」
刑事「恨みを晴らそうとしているとか……」
社長「バ、バカバカしい! 何を言い出すんだ、君は! 本当に刑事なのか!?」
刑事「自分でもバカげたことをいってるのは重々承知です」
刑事「しかし、今回の事件は『ヒドメシ』が絡んでる気がしてならないのです」
刑事「かつて『ヒドメシ』で何があったのか? このADはいったいなぜ亡くなったのか?」
刑事「あなたはご存じのはずだ!」
社長「知らんっ!!!」
刑事「社長――」
社長「帰れ」
社長「今すぐ帰りたまえ!!!」
刑事「……分かりました」
社長「しかし……まさか、あいつが……!?」
社長「……もしもし」
社長「社の警備員を増強してくれ! それとしばらく来客は全て断れ! いいな!」
社長「理由!? いちいちそんなこと聞くな! 分かったな!」
社長「ふぅ、これで安心だ……」
社長「――ん?」
スゥゥ…
社長「な、なんだ?」
ズズズ…
社長「何かが浮かび上がって……」
ズズズズズ…
スタッフ「お久しぶり……。今では社長だったか」
社長「……お、お前はっ!?」
スタッフ「俺は死人……いってみれば幽霊みたいなもんだからな。どこへでも入れる」
スタッフ「どんなに警備員を増やそうが、戸締まりをしようが、無駄なことだ」
社長「ひいい……!」
スタッフ「俺にしたことを忘れちゃいまい? 今こそ恨みを晴らしてやる……!」
スタッフ「美味しくいただきます」グパァァァァァ…
社長「うわああああああああああ!!!」
刑事「やめろ!」
社長「け、刑事君! 帰っていなかったのか!」
スタッフ「なんだお前は……」
刑事「警察としてこの人に手は出させない……大人しく引いてくれ」
スタッフ「……どけ!」
刑事「どかん!」
スタッフ「どけぇ!!!」
刑事「いや……『ヒドメシ』という番組で一緒だったということしか……」
スタッフ「なら、教えてやる!」
社長「う……!」
スタッフ「いつも『ヒドメシ』でできたひどい料理を、こいつら五人は――」
『うへぇ……ひでえ料理ばかりできたなぁ!』
『よしお前、一人で全部食えや』
『全部って……これをですか!?』
『たりめーだろ! “スタッフがおいしくいただきました”ってテロップ流してるんだからよ!』
『食わなきゃ詐欺だもんねえ、ハハハハ!』
『収録終わったし、お楽しみタイムといこうぜ』
『オラ、食えよォ! 押し込んでやる!』
『ぐ……うぷっ……』
『ハハハ……残すんじゃねえぞ。残したら蹴り百発な』
『うげっ、ううっ……ガハッ!』
『きったね! 吐いてぶっ倒れやがった!』
『……あれ? 動かねえぞ』
『おい、どうすんだよ? こんなの表ざたになったら……』
『局での出来事だ……口裏合わせて金ばらまけばどうにでもなる。ごまかすんだ!』
スタッフ「俺は殺されたんだ! こいつを含めたあの五人になァ!」
スタッフ「だからこうして、恨みを晴らすために現世に舞い戻ってきたんだ!」
刑事「…………」
社長「ううう……!」
スタッフ「なんでだよ!? しょせん死人は大人しく死んどけってことかよ!?」
刑事「そうじゃない。この人には……もちろん罪を償わせる」
スタッフ「どうやってだよ!?」
スタッフ「仮にこいつが全部自白したところで、証拠といえるもんはないんだ!」
スタッフ「今さら逮捕できるわけないだろうが!」
刑事「それは……」
スタッフ「もういい! 俺の恨みは俺自身で晴らすッ!」グパァァァァ
社長「わあああああああああっ!!!」
ザシュッ!
刑事「ぐ……!」
社長「あわわわわ……」
スタッフ「邪魔するなァ!」
刑事「社長に法の裁きを与えることは……たしかに無理かもしれない!」
刑事「しかし、社会的な制裁を与えることはできる!」
スタッフ「どうやってだよ!?」
刑事「たとえば、社長が君にやったことを全て公表した上で辞任する、とか……」
スタッフ「…………!」
社長「お願いだ! ぜひそうさせてくれ! 私に罪を公表するチャンスをくれぇ!」
スタッフ「…………」
刑事「頼む……!」
刑事「私は刑事としてこの人を見捨てることはできないし、君に罪を重ねて欲しくもないんだ!」
スタッフ「……分かった」
スタッフ「その男が自分から世間に全てを明らかにするのであれば……食うのはやめてやるよ」
刑事「……ありがとう」
社長「ああ、もちろんだ」
社長「もしもし、私だが……」
スタッフ「…………」
スタッフ「刑事さん、あんたに免じてこの男の命は奪わないでやろう」
スタッフ「死後とはいえ、あんたのようなまっすぐな人に出会えて、少し救われた気分だよ」
スタッフ「さようなら……」スゥゥゥ…
刑事「ああ、さよなら」
刑事「あとは……あなたの問題だ」
社長「分かってる……自分の罪はきっちり清算するよ」
<警察署>
同僚「例のテレビ局の社長が緊急記者会見をするらしいですけど、内容はなんでしょうね?」
課長「うむ、自分の罪を告白する、といっていたそうだが……」
同僚「連続殺人事件に関係あるんでしょうか? まさか社長が犯人?」
課長「いや、社長にはアリバイがあるからそれはありえないが……会見の内容は気になるな」
刑事「…………」
社長「それでは記者会見を始めさせて頂きます」
ワイワイ… ガヤガヤ…
社長「今回、記者会見を開きましたのは、あることを皆さまにお伝えするためです」
社長「それは――」
社長「新作ドラマについて、であります!」
ザワッ…
社長「なんでしょう?」
記者「事前に知らされていた情報では、何らかの罪を告白されるという話でしたが……」
社長「ああ、それですか」
社長「それはドラマに関する重大な情報をこれまで隠していた、という意味です」
記者「あー……なるほど……」
ドヨドヨ… ガヤガヤ…
同僚「てっきり事件の原因についてなにか知ってるのかと……わざわざ会見を開くほどのことか?」
刑事「バカッ!!!」
同僚「わっ!?」
課長「ど、どうしたいきなり!」
刑事「彼は全てを明るみにするから命は取らないといったのに……」
刑事「こんなことしちまったら……!」
社長(奴はもう消えたんだ……)
社長(罪は隠し通し、これからも社長の座に君臨する。これが最良の選択に決まっている!)
ヤクソク ヤブッタナ…
社長「え?」
社長「この声は……!」
ユルシテヤロウトオモッテタノニ…
社長「え、え!? ――どこだ!? どこにいるんだ!?」
ユルサン……!!!
社長「ひっ!?」
「なんだ!?」 「誰だ、あれ!?」 「いきなり現れたぞ!」
社長(この前より禍々しくなってる……!)
スタッフ「残念だ……。いやむしろ、これを望んでたのかもしれないな……」
社長「待ってくれ! 今から公表するから――」
スタッフ「美味しくいただきます」グッパァァァァァァァ…
社長「わっ、わあああああああああああっ……!!!」
バリバリ… メキメキ… バリボリ…
キャァァァァ… ウワァァァァァ… ヒィィィィィ…
テレビ『乱入者は社長を殺害後、まるで煙のように消滅……』
刑事「…………」
刑事「ひどい料理を美味しくいただかせてた人が、美味しくいただかれてしまったか」
刑事「生放送中に殺人が起きれば、といってた人だ。本望なのかもしれないがな……」
― 完 ―
元スレ
スタッフ「美味しくいただきます」グパァァァ 男「うわあああああああああ!!!」
http://hebi.5ch.net/test/read.cgi/news4vip/1555505229/
スタッフ「美味しくいただきます」グパァァァ 男「うわあああああああああ!!!」
http://hebi.5ch.net/test/read.cgi/news4vip/1555505229/
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- 会見はさぞ高視聴率だっただろう
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- 2019年04月18日 01:36
- まあまあ面白かった
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- 2019年04月18日 02:41
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おつ
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- 改心しないのが面白かった
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- 2019年04月18日 05:33
- 細谷も食われねえかなあwww
ついでにムクムクもwww
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- 2019年04月18日 07:59
- やっぱこういう話ってヒーローが悪人の改心を条件に復讐やめさせるより、悪人が最後まで屑できっちり報復される方が面白いな
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- 2019年04月18日 08:04
- あの騒動で料理に例えられる話は結構見るな
二期は食材を台無しにしたどころか劇物放り込んでるが
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- 2019年04月18日 13:05
- 悪は滅び無事成仏できそうなハッピーエンドすきラストはあっさりなのもいいね
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- 2019年04月18日 17:00
- 面白かった。
なぜかネウロが思い浮かんだ。
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