【モバマス】卯月「神様、翡翠の瞳をください」
デレマスの二次創作SSです
人によっては百合に感じられる描写があるかもしれません
よろしくお願いします
卯月「ライブで歌詞が飛んでしまった時」
卯月「緊張してダンスの振りを間違えた時」
卯月「私には私をフォローしてくれる心強い仲間がいる」
卯月「彼女たちは、困った時はお互い様と笑って許してくれるけど」
卯月「私が彼女たちを助けられる日はやってくるんだろうか」
──ライブ会場──
未央「ふぅーっ。おつかれー!」
凛「うん。おつかれ2人とも」
卯月「……」
未央「ライブ大成功だったね!」
凛「うん。すごい盛り上がりだったよ。ね、卯月」
卯月「……ごめんなさい」
凛「え?」
卯月「ごめんなさい、私、途中で歌詞が飛んだりダンスを間違えたりしてしまって。2人に迷惑をかけてしまいました……」
未央「あははっ。何を言いだすかと思えば! 落ち込まないでしまむー。終わり良ければすべて良しだよ」
凛「今回の反省はもちろん大事だけど、今はライブの成功を喜ぼう」
卯月「……」
未央「暗いぞしまむー! うりうり」ツンツン
バイバーイ
凛「プロデューサーからのメール見た? 打ち上げは明日やるって」
卯月「……」
凛「……本当、落ち込まないで卯月。少し失敗が重なっただけじゃん。気持ちはわかるけど、後悔したって仕方ないよ」
卯月「後悔じゃありません……」
凛「?」
卯月「むしろ、先のことを考えてしまうんです。私には、凛ちゃんみたいに緊張しないで歌うことも、未央ちゃんみたいに堂々と踊ることもできない……」
凛「できるよ。卯月は頑張り屋さんなんだから、いつかきっとできるようになる」
卯月「いつかできたとしても、その時凛ちゃんや未央ちゃんは私の一歩先にいるんです。私はいつまでも2人に迷惑をかけてしまう……」
凛「そんなこと言わないでよ。人によって得意不得意、良いところ悪いところがあるなんて、当たり前のことだと思うな」
卯月「私の良いところ……」シュン
凛「もう……卯月」ムギュ
卯月「ふぇ? なんでひゅか?」
凛「ほら、笑った顔」
卯月「?」
凛「……誰よりも可愛いって私は知ってるから」
卯月「……!!」
凛「……ほら、帰るよ」ニコ
卯月「は、はいっ……」
──卯月の部屋──
ドキドキドキ
凛『……誰よりも可愛いって私は知ってるから』
卯月(ありがとう凛ちゃん)
卯月(でも、やっぱり私は……)
凛『……ほら、帰るよ』ニコ
卯月(……凛ちゃんの笑った顔の方が可愛いって、そう思ってしまうんです)
卯月(クールで優しい凛ちゃんの顔も、細めた時により光る翡翠色の瞳も……)
卯月(全部全部可愛くて、何より羨ましいって……)
──事務所──
未央「おぉ~」ペラリ
未央「これがこの前の水着の撮影のやつ? いい出来じゃん!」
凛「ふふ、ありがと」
未央「出来が良すぎて隠し場所に困るね。ベットの下じゃありきたりかな」
凛「もう。そういう本じゃないから」
卯月「……」ジー
未央「しまむーなんて食い入るように見ちゃってるよ。よく撮れてるよね?」
卯月「よく撮れてます」
未央「セクシー?」
卯月「セクシーです」
未央「エ口い?」
卯月「エ口いです……」
凛「未央。卯月に変なこと言わせないで」
未央「しっしっしっ」
凛「……じゃあ私、奈緒たちとミーティングがあるからもう行くね」
バタン
卯月「私もプロデューサーにところに行ってきますね」スッ
未央「ん? 何か用なの?」
卯月「……水着の仕事がもらえないか、プロデューサーさんに掛け合ってきます」
未央「え……? きゅ、急にどうしたのさ。今水着の写真見てたからってそんな突拍子もなく」
卯月「私も凛ちゃんみたいに……」
未央「よそはよそ、しまむーはしまむーでしょ。それにしまむーはこの後、ゆるキャラとのコラボの打ち合わせがあるってスケジュールボードに……」
卯月「……」
未央「しまむー?」
卯月「……そうですね。やっぱりやめておきます」
──渡り廊下──
卯月(……私、何してるんだろう)
卯月(私には、プロデューサーさんが一生懸命とってきてくれたお仕事ある)
卯月(アイドルとしてお仕事ができてる……それだけで何よりも幸せなはずなのに……)
あかり「あの~」
卯月「わっ」ビクッ
あかり「んごっ!?」ビクッ
卯月「あっ、ごめんねあかりちゃん。急に話しかけられてびっくりしちゃって」ペコ
あかり「う、ううん。こちらこそすみません……」ペコペコ
卯月「うふふ。事務所にはもう慣れましたか?」
あかり「いやぁそれがまだまだでしてぇ。今も実は迷子中……なんですよ」
卯月「来たばっかりだもんね、しょうがないよ。あっ、それで私に声をかけてくれたんですね」
あかり「はい。このB会議室なんですけど……」
卯月「B会議室? 私も今からそこに行くところですよ。山形のゆるキャラとのコラボイベントの件で……」
あかり「そうなんご? じゃあきっと一緒にお仕事させてもらうことになります。私新人なので、”しっかりした先輩”と組ませてくれるってプロデューサーさんが言っていたので」
卯月「!! しっかりした先輩……!」パアアッ
あかり(……あれ。『しっかりした先輩と組ませる』じゃなくて、『しっかりと先輩と組ませる』って言ってたんだっけ)
卯月「あかりちゃん! 私に任せてくださいっ。島村卯月、頑張りますっ」ギュッ
あかり「あっ(察し)。よ、よろしくお願いするんご……」
──ファミレス──
凛「へぇ、そんなことがあったんだ」
卯月「はいっ。私嬉しくなっちゃって……なんだか先輩みたいだなぁって」
凛「みたいじゃなくて、本当に先輩なんでしょ」クス
卯月「あ、そうでした。えへへ……」
凛「しっかりしてよね。卯月先輩」
卯月「はいっ。これからはちゃんと後輩さんに頼ってもらえるよう、しっかりしたお姉さんになりますっ」
店員「ご注文をどうぞ~」スッ
卯月「私は……ミルクティーをください」
凛「私はアイスコーヒーで」
卯月「……!」ハッ
店員「ご注文は以上でよろしいですか?」
卯月「あ、えっとその……やっぱり私もアイスコーヒーで」
店員「かしこまりました」
テクテク
凛「……なんでミルクティーやめたの?」
卯月「なんでって……き、気分です」
凛「ふーん……」
卯月「……」
凛「……卯月。私は今の卯月のままでも、十分頼れるお姉さんだって思ってるよ」
卯月「え?」
凛「誰かの真似なんかしなくても、卯月は卯月らしくしてれば良いんだよ」
凛「コーヒーを頼むとか水着の写真を撮るとか、そんなことが重要だなんて私はちっとも思わないな」
卯月「……未央ちゃんから何か聞きました?」
凛「まあ……ね」
卯月「すみません」
凛「な、なんで卯月が謝るのさ」
卯月「……私は2人に迷惑をかけたくないんです。それに、後輩さんたちにも幻滅されたくなくて」
卯月「それで、今のままじゃダメだって考えていて」
凛「今のままじゃダメ? 何言ってるの卯月。今も十分卯月は頑張ってるじゃん」
卯月「そうですかね……」
凛「卯月には良いところがいっぱいある。その1つが、前にも話した卯月の笑顔だよ」
卯月「……でもその笑った顔も、本当は凛ちゃんの方が」
凛「卯月。怒るよ」
卯月「……」
凛「少し話す場を設けようか。未央とプロデューサーも呼んでさ」ニコ
卯月「……いいえ。大丈夫です。いつまでもみんなに甘えていられません。私はもう……先輩なんですから」
ガタッ
凛「卯月……」
──事務所──
あかり「おはようございますっ」
卯月「あかりちゃん。おはよう~」
あかり「今日は山形のパンフレットを持ってきたんです。来週の山形行きに向けて、色々と作戦を練りましょう」
卯月「うんっ。……でもこれ、全部観光用のパンフレットじゃ……」
あかり「私は地元ですけど、卯月さんはあんまり来たことが無いと思ったので!」
卯月「そうじゃなくて、私たちはお仕事で……」
あかり「ほらっ。このページみてください! 『アイドル神社』ですって。こんなのあるなんて知らなかったんご~」
卯月「あ、あかりちゃん……」
あかり「なになに、アイドル神社……昔から芸能にご利益がある場所なんだとか」
あかり「芸能人もお忍びで通い、取り分けアイドル業に根深い因縁があり……」
あかり「アイドルがそこにお詣りするとどんな願い事も叶うと言われています……ですって!」
卯月「どんな願い事も叶う……」
あかり「ここ行きたいんご!」ワクワク
卯月「ぷ、プロデューサーさんと相談してみましょうかっ」ソワソワ
──夜・帰り道──
テクテク
未央「やっほーしまむー」
卯月「わっ。未央ちゃん!」
未央「元気そうでよかった。ゆるきゃらコラボ企画の方は順調かい?」
卯月「はいっ。打ち合わせも何回かやって、いよいよ来週から山形に行きます。あかりちゃんと一緒に!」
未央「おー。すっかりしまむーも先輩だねっ」
卯月「はい。先輩ですっ。しっかりと後輩さんを導けるよう、島村卯月頑張りますっ」
未央「うんうん。それでこそしまむーだ! ……でも、頑張りすぎちゃダメだからね」
卯月「えっ?」
未央「ごめん。ファミレスであったことしぶりんから聞いたんだ」
卯月「……」
未央「ライブでの失敗のことなら、私たちは本当に気にしてない。それはしまむーも分かってくれてるよね」
未央「分かった上で、しまむーが自分自身に物足りなさを感じているのなら、私たちがあれこれ口出すつもりはないよ」
未央「だってそれはもう、しまむー個人の問題だから」
未央「だから一言……頑張りすぎないようにねって。友達として、それだけはちゃんと伝えたくて、今日はここまで会いにきたんだ」
卯月「未央ちゃん……ありがとうございます」ニコ
未央「……」
未央「……この前は『よそはよそ』なんて言ったけどさ、誰かみたいに可愛くなりたいって気持ち自体は誰でも持ってるものだと思う」
未央「私にもあるし、きっとしぶりんにも……。アイドルを目指す女の子なら、みんな感じたことがあるんじゃないかな」
卯月「……」
未央「だけど……私たちはもう目指す側じゃ無い。目標とされる側なんだ」
未央「しまむーを見て、しまむーに憧れる女の子はこの世界にいっぱいいる」
未央「しまむーが自分を否定することは、しまむーに憧れる人を裏切ることでもある。そのことも、絶対に忘れないでね」
──新幹線──
あかり「お弁当おいしいんご!」
パシャ
卯月「写真?」
あかり「SNSにあげるんです。ハッシュタグは何が良いと思います?」
卯月「うーん……お弁当なう」
あかり「……」
卯月「……」
あかり「あっ。窓の外みてください。りんご農園が見えます」
卯月「わぁ。本当ですね。たくさんあって綺麗です」
パシャ
あかり「わっ!?」
卯月「えへへ。撮っちゃいました。りんごとあかりんごちゃん♪」
あかり「も~。お返しですっ。えい」パシャ
卯月「わっ」
あかり「うづりんご先輩です♪」
アハハハハ
──旅館──
卯月「お仕事は明日からです。今日は自由に行動して良いってプロデューサーさんが言っていましたが……」
あかり「なら、アイドル神社に行くんご!」
卯月「そ、そうですね」ドキドキ
あかり「? どうかしましたか?」
卯月「う、ううん……」
──神社──
あかり「私から先にお願いしていいんですか?」
卯月「うん。どうぞどうぞ」
あかり「それじゃあ──」
ピポンピポン♪
あかり「スカイプ? ……はい」
りあむ『ぼくを1人にしないで~!!』
あかり「りあむさん!?」
りあむ『Pサマ連れてどこ行っちゃったんだよ~』
あかり「お仕事んご!」
りあむ『そんなの聞いてないよ~。寂しいからだる絡みして~』
あかり「あぁもう……すみません、ちょっと話してくるのでお先にお願いしてください」
卯月「えっ!」
タタタッ
卯月「お願い……」
あかり『アイドルがそこにお詣りするとどんな願い事も叶うと言われています……ですって!』
卯月「……私は」
凛『人によって得意不得意、良いところ悪いところがあるなんて、当たり前のことだと思うな』
未央『よそはよそ、しまむーはしまむーでしょ』
凛『誰かの真似なんかしなくても、卯月は卯月らしくしてれば良いんだよ』
未央『しまむーが自分を否定することは、しまむーに憧れる人を裏切ることでもある。そのことも、絶対に忘れないでね』
卯月「……」
卯月「それでも……私は……」
凛『ほら、帰るよ』ニコ
卯月「…………」
ガランガラン
卯月「……神様」
卯月「私に──翡翠の瞳をください」
────
未央「今頃しまむー山形かなぁ」
凛「だろうね」
未央「今頃りんご食べてるのかなぁ」
凛「それは知らないけど」
あきら「りんごをバックに写真は撮ったようデスが」
凛「わっ、あきら」
あきら「凛サン、未央サン。おはようございます」
未央「おはよーん。ていうか写真って?」
あきら「メールで送られてきたんデス。うちの同期と仲良くしてもらってるみたいで」スッ
未央「おー。うづりんご! めっちゃ良い写真じゃん!」
凛「楽しそうで良かった」
あきら「で、その同期からSOSが届きました。何やらりあむサンが延々とスカイプで粘着してくるみたいで」
あきら「友達救いにりあむサンとこ行こうと思うんデスけど、良かったら先輩方も一緒に来てくれませんか?」
未央「おー行く行く! 後輩とのコミュニケーションって大事だよね♪」
凛「私も行くよあきら」
あきら「良かったデス。場所は分かってるんでついて来てください」
未央「よっしゃ! レッツゴーだねしぶりん!」
凛「うん……」スッ
ズキッ
凛「……!?」
未央「ん? どったのしぶりん」
凛「なんか、目が……あれ?」
ズキン!
凛「うっ!」
未央「……も~、しぶりんったら座り込んじゃって」
未央「緊張してるのかい? 案外人見知りなところもあるんだ……ね……?」
ボタッ
未央「これ……血……!?」
凛「……見えない」
未央「えっ……」
凛「目が……見えない……」
──神社──
卯月「……」
あかり「おまたせんご~」パタパタ
卯月「あかりちゃん」
あかり「やっと解放されました。……お願い事はもう済みましたか?」
卯月「あ、うん……」
あかり「なにをお願いしたんですか?」
卯月「えーと……秘密! さ、次はあかりちゃんの番だよっ」
あかり「え~教えて欲しいんご~」
──旅館──
あかり「あれ、プロデューサーさんがいないですね」
卯月「本当だね。どこに言ったのかな」
あかり「うん? メールが届いてる……ええっ!?」
卯月「どうしたの?」
あかり「プロデューサーさん、急いで東京に帰るって……! 卯月さんも早くメールを……!」
卯月「えっ……なになに、東京に帰ります」
卯月「凛ちゃんが……目の……病院に……?」
────
あきら「……」
りあむ「やっと来た~。もう遅いじゃんか。ぼくが孤独死したらどうするんだよぉ」
あきら「ちょっと、色々ありまして」プイ
りあむ「冷たい~! 助けてPサマぼくの同期が冷たい~! もうやだ、なんで来週まで帰ってこないんだよぉ……」
あきら「……Pさんなら明日、あかりサンたちは明後日に帰って来ますよ」
りあむ「え? どうして急に?」
あきら「話してもいいデスけど……りあむサンって、血とかに耐性ある人デスか?」
りあむ「ないよ! いきなりなんの話してんの!? 怖い、まじでやむ……!」
──病院──
凛「……来てくれたんだプロデューサー。うん、まだ原因はわからないって」
凛「とにかく今は安静にしてなさいって、お医者さんが……」
凛「……うん。ちひろさんのところだね。大丈夫、行って来て。業務の調整とか大変なんでしょ」
凛「プロデューサーのことはちゃんと分かってるから……うん。じゃあねプロデューサー」
バタン
未央「しぶりん……」
凛「その声は未央……ありがとう、ずっとついて来てくれてたんだ。未央も仕事があるのに」
未央「こんな時なんて言えばいいか……その、目はやっぱり……」
凛「うん……全然見えない。光の明暗ぐらいしか……今は包帯を巻いてるから、それもわからないけど」
凛「心配かけるね」
未央「そんな……」
凛「……卯月は、もうこのこと知っちゃってるかな」
未央「多分ね。プロデューサーが何も説明せずにここに来たってことは無いと思うから」
凛「心配かけちゃうな。特に卯月は、優しい子だから……」
未央「今は自分の心配をしなよ」
凛「……そうだね」
────
卯月(凛ちゃんの瞳が欲しかった)
卯月(凛ちゃんみたいになりたかった)
卯月(凛ちゃんみたいになれれば、みんなに迷惑をかけずに済むから)
卯月(みんなに幻滅されなくて済むから)
卯月(でも神様。私は、奪いたかったわけじゃ無いんです)
卯月(ただ羨ましかっただけなんです……)
未央『誰かみたいに可愛くなりたいって気持ち自体は誰でも持ってるものだと思う』
未央『だけど……私たちはもう目指す側じゃ無い。目標とされる側なんだ』
未央『しまむーが自分を否定することは、しまむーに憧れる人を裏切ることでもある。そのことも、絶対に忘れないでね』
卯月(……私は、裏切ってしまったんだ)
卯月(羨ましいと思うのは当たり前のこと。だけど私は、神様にお願いしてしまったから)
卯月(だから裏切りの罰が下ったんだ)
卯月(……神様。罰なら私に下してください)
卯月(私の目をあげますから、凛ちゃんを助けてください……)
────
ゴー ……キッ
あかり「……着きましたよ、病院」
卯月「……」
あかり「……大丈夫ですか? 顔が真っ青ですけど……」
卯月「……あかりちゃん。悪いんですけど、少し凛ちゃんと2人きりでお話をさせてもらえませんか?」
あかり「え? それは別にいいですが……」
テクテク ガラッ
凛「! ……誰?」
卯月「……」
スッ
凛「!! ……あの、いきなり手とか握られても困るんだけど……誰なの?」
卯月「ごめんなさい」
凛「あ……卯月か」
卯月「ごめんなさい、凛ちゃん……」
凛「だから、なんでいつも卯月が謝るの。私なら、大丈夫だよ」ニコ
卯月「…………」
卯月(包帯で目が隠された凛ちゃんの笑顔は、それはそれは美しくて)
卯月(そのことが、私が間違っていたということの何よりの証明なのでした)
ポタポタ…
凛「……卯月は優しいね」
卯月「優しくなんてないです……」
凛「他人のために泣けるなんて、そうできることじゃ無いよ」
卯月「違うんです……だって、その目は私のせいだから……」
凛「え?」
卯月「私、神様にお願いしてしまったんです。凛ちゃんみたいになりたいって」
卯月「凛ちゃんみたいな瞳が欲しいって……」
卯月「凛ちゃんは、私は私らしくいればいいって言ってくれたのに……私はその言葉を信じることができなくて」
卯月「だから罰が下ったんです。そして矛先が私ではなく、凛ちゃんに向いてしまったんです……」
凛「落ち着いてよ卯月。神様からの罰なんて、そんなわけないでしょ」
卯月「でも……」
凛「目が見えなくなった原因は、単にばい菌が目に入ったことだって、今日の朝お医者さんが言ってたよ」
凛「プロデューサーは、多分水着の撮影の時に使ったプールでばい菌をもらっちゃったんじゃないかって」
凛「だから、卯月のお願いとは関係のないことなんだよ。ただ、タイミングが悪かっただけ」
凛「1週間もあれば、視力も戻るって言ってた」
卯月「……」
凛「でも……そっか。そんなお願いをしてたんだね」
卯月「ごめんなさい。私……」
凛「ううん。この前は、私も偉そうに言ったけどさ……誰かみたいになりたいって憧れることは、ごくごく普通のことだよ」
凛「事務所のみんなだって同じ経験があるはず。だって……私もそうだから」
卯月「……」
凛「だけど、無理なことは無理なんだ」
凛「卯月はどんなに努力したって、目の色は変えられないよ」
凛「そして私も卯月みたいに可愛く笑うことはできない」
凛「だからこそ、私たちはユニットを組んでるんだ」
凛「お互いにできないことを補い合うために……私たちは、一番近くにいるんだよ」
卯月「…………」
──1週間後──
未央「やっほー! しぶりん退院おめでとー!」
凛「ふふ。ありがとう未央」
未央「えへへ! 目はもう大丈夫なのかい?」
凛「うん。視力も完全に元に戻ったよ」
未央「よかったよかった! ほんと心配しちゃったよっ」
凛「未央には色々とお世話になって……」
未央「いいってことよ~。それより早く事務所に行ってあげて。みんなすごく心配してたんだから」
凛「うん。今から行くよ」
──渡り廊下──
凛「ん、あれは」
あかり「また迷ったんご……」
凛「あかり」ポン
あかり「きゃあ!」
凛「わっ!」
あかり「びっくりした……」
凛「ごめん。そんなに驚くとは」
あかり「いえ……あっ! 退院おめでとうございます!」ペコッ
凛「あ、うん。ありがとう。あかりにもたくさん迷惑をかけたね」
あかり「いえいえ。ご無事で何よりですよ」
凛「……卯月は一緒?」
あかり「? 今日は違いますが……何か用でした?」
凛「いや……先週病院で話したっきりだから、少し挨拶をと思って」
あかり「卯月さんなら多分レッスン室にいます。行ってくるといいんご!」
──レッスン室──
キュッキュ
卯月「はぁ、はぁ……」
凛「精がでるね卯月」
卯月「あ、凛ちゃん!」
凛「邪魔しちゃったかな?」
卯月「そんなことないです。すみません……自主トレが終わった後、みんなと一緒に事務所でお出迎えしようと思ってたんですが」
凛「ううん、私が勝手に覗きに来ただけだから」
凛「さっきあかりにあったよ。あかりとは順調?」
卯月「はい。山形には日を改めてもう一度行くことになりました」
凛「そっか。ちゃんと先輩らしく振る舞えてる?」
卯月「どうでしょう……それはまだちょっと難しいかも」エヘヘ
凛「ふふふ。卯月のペースで進んでいけばいいよ」
卯月「はい。ありがとうございます」
凛「卯月が山形行ってる時、私もあきらと少し話したんだ」
卯月「へぇ。あきらちゃんと……」
凛「あかりも、あきらも、りあむも、みんなそれぞれ個性的で魅力に溢れてる」
凛「後輩に負けないよう、私たちも頑張らなきゃね」
卯月「はいっ。そうですね」
凛「って、ごめんね。こんな堅い話をしにきたわけじゃないんだけど」
卯月「うふふ。凛ちゃんは、もう目は大丈夫なんですか?」
凛「うん。すっかり元通りだよ。ほら見て、充血もしてないでしょ?」
卯月「本当だ。……綺麗な目」スッ
凛「……」
卯月「……あっ、ごめんなさい」
凛「いや、別にいいけど……」
凛「……」
卯月「……」
凛「……ねえ卯月」
卯月「は、はい」
凛「今日は、少し暑いね。この後ジュースでも買いに行こうか」
卯月「ふふ。いいですね」
凛「自主トレのご褒美に奢ってあげよっか?」
卯月「何を言ってるんですか。退院のお祝いに、私が奢りますよ」
凛「じゃあ、お互いにお互いの飲み物を奢り合おう」
卯月「なんですかそれ。うふふっ」
凛「……卯月は何を飲みたい?」
卯月「……私は」
卯月「ミルクティーが飲みたいな」
おわり
お疲れさまでした
見てくださった方、ありがとうございました
「シンデレラガールズ」カテゴリのおすすめ
- 渋谷凛「今はまだ子供だけど」
- 紗枝「法子ちゃんのドーナツは食べるけど、うちの京みやげはいらんのどすかー」
- モバP「アイドルと仮面の戦士達、の休息」
- ちひろ「プロデューサーとの意思疎通が不可能になった」
- 馬鹿「くそ...今年だけでデレステのガチャに10万円もかけてしまった...」
- P「向井拓海、趣味、特になし、か…」
- 【モバマス】「橘ありすの電脳世界大戦」
- モバP「比奈をデレッデレにさせてみたい」
- 高垣楓「勘違いっをっ♪しただっ♪けなのっ♪お・さ・け♪」橘ありす「は?」
- 和久井留美「みんなのブログをチェックしようかしら」
- モバP「アイドル三者面談だ!」菜々「え゛っ」
- 【モバマスSS】 蟲喰う幸子外伝 卯月、昆虫食も頑張ります!!
- モバP 「佐久間まゆに逆襲する」
- モバP「海のいる部屋」
- モバP「雫は可愛いなぁ!」
「ランダム」カテゴリのおすすめ
- 【モバマス】 泰葉「…」千鶴「…」
- アイアンマン「おいブルース!コロッケパン買って来い」
- エレン「奇行種が現われた!?」江頭2:50「ドーン!」
- える「奉太郎、大学行きますよ」 奉太郎「うーん……」
- まゆ「まゆは今日からクール属性になります!」
- 越前「帝光中学校バスケットボール部?」
- 依田芳乃「趣味は石川集めでしてー」
- 彡(゚)(゚)「死んでしもうた」チーン
- 菜々「今日は何の日でしょうかっ!」
- 巧「カイザのベルトだと…?」真理「その声…まさか」両津「そうだワシだ!」
- 菜々「体調不良で…明日の収録お休みします」瑞樹『あら』
- 島村卯月「THE3名様」
- ゆかり「キューティーラジオ♡」杏「ラジ、オ?」
- メイ「ほんとにトトロがいたんだもん!」
- メグ「チノちゃーん!」マヤ「ラビットハウスに遊びに来たよー!」ガチャ
コメント一覧 (6)
-
- 2019年04月13日 21:46
- #このSSすこんご!
-
- 2019年04月13日 21:58
- すこふこ
-
- 2019年04月13日 23:58
- 一瞬ホラーかと思って薄目になりながら見たわ
-
- 2019年04月14日 03:36
- 近年稀に見る、物理属性無しのしまむーであり
近年稀に見る、変態属性無しのしぶりんであり
普段よく見る、仲間想いのちゃんみおでしたね
良いお話をありがとうございました
-
- 2019年04月14日 04:12
- 寝る前にいいもん読めた
-
- 2019年04月14日 10:36
- やはり卯月は爛漫の笑顔の裏に一寸の闇が隠れている所が良い…。