少女「魔女を受け入れる人間なんぞおるはずがない」 薬売り「そんなことはねえよ。あたいは魔女だなんだで差別しねえしな」

1:以下、5ちゃんねるからVIPがお送りします 2019/04/12(金) 22:20:48.418 ID:MjMWari/0

少女「うるさい。いらんと言うておるじゃろ」

薬売り「いーやダメだね。あたいはね、お前さんみてえな怪我人を見たら、放っちゃおけねえんだよ」

少女「ふん、すっ転んだだけじゃ。こんな擦り傷、唾でも付けとけば治るわ」

薬売り「そいつぁ良くねえ考え方だな。傷から悪いもんが身体の中に入っちまうんだ。甘く見てると大変なことになっちまうぜ?」

少女「まったく、しつこい奴じゃのう。大丈夫じゃ。妾は大丈夫。シッシッ!」

薬売り「こんの……! こうなりゃ力ずくだよっ! 大人しくしなっ!」ガバーッ

少女「なっ……!? 貴様っ……! やめ、ろ……!」ジタバタ

薬売り「へへっ、ここにこうして……っと」

少女「きゃうっ!?」

薬売り「染みるかい? そりゃあ効いてるって証拠さ。あっはっは! 悪いね、大人気なくってよ!」

少女「ぐぬぬ……! 我慢しておればいい気になりおって……!」

薬売り「悪かったって! それじゃあ、あたいはもう行くからよ!」

少女「待て! 妾を怒らせたこと、その身を以って後悔させてくれる! 地獄の業火に焼かれるがよいわ!」パチン

シーン……

薬売り「ああん? なんだい、そりゃあ? 突然指を鳴らしたりして……」

少女「くっ……! なぜ上手くいかぬ……! そりゃっ! おりゃっ!」パチッパチン

薬売り「あっはっはっは! よくわからねえがお前さん、下手糞なのかい!」

少女「違うわっ! 調子が悪いだけじゃ!」

薬売り「なんだって? 調子が悪い? そいつぁいけねえや。どれ、薬を見繕ってやろう」

少女「もう良いわっ! くそっ! 覚えておれ!」パチン

シュン──

薬売り「……なんてこった……消えちまった」



4:以下、5ちゃんねるからVIPがお送りします 2019/04/12(金) 22:24:11.101 ID:MjMWari/0

少女「あーっ、もーっ! イライラするぅ!」

少女「……お菓子でも食べるかの」

少女「ふんふんふーん♪」ガサゴソ

バーン!

薬売り「ここかーっ!」

少女「な、なんじゃなんじゃーっ!?」

薬売り「おっ、やっぱりいるじゃあねえか」

少女「……妾の家に勝手に入るな。失せよ」

薬売り「ツレねえこと言うなよ。あたいとお前さんの仲じゃあねえか」

少女「いたいけな少女を襲う外道と、それを滅ぼさんとする魔女、という仲じゃ。相容れぬ」

薬売り「へえ。お前さん、やっぱり魔女なのかい」

少女「ならばどうする。殺すか?」

薬売り「あっはっは! あたいが殺しなんてするわけねえだろう!」

少女「なんじゃよ……いちいち鬱陶しいのう……」

薬売り「お前さんの力になりに来た」

少女「はあ?」

薬売り「調子、悪いんだろ? ならあたいの出番さ」

少女「いらぬ世話じゃ。帰るがよい」

薬売り「まあまあ、そうツンケンしなさんな。ちょいとこの家に居候させてもらうぜ。お前さんの場合、薬作りの前に色々と識らなきゃならねえからよ」

少女「このっ……!」

薬売り「魔法。上手く扱えねえんだろ? お前さんの技量のせいじゃあねえよ。体質の問題だ」

少女「む……」



5:以下、5ちゃんねるからVIPがお送りします 2019/04/12(金) 22:27:31.709 ID:MjMWari/0

薬売り「魔女って奴のことはな、それなりに知ってるんだよ」

少女「……それならば、人間とは共に居られぬことも知っておるじゃろう」

薬売り「そりゃあお前さん、その魔女とその人間次第さね」

少女「馬鹿なことを。魔女を受け入れる人間なんぞおるはずがない」

薬売り「そんなことはねえよ。あたいは魔女だなんだで差別しねえしな」

少女「……後悔するぞ?」

薬売り「しねえよ」

少女「この分からず屋めぇっ! その身を焼かれながら後悔するが良いわ!」パチン

ゴォォォォッ!

薬売り「ぐっ……!? 熱っ……がぁぁぁぁっ!」

少女「あ……な、ぜ……上手くいく……?」

薬売り「ぐぅぅぅぅ……! ゔ、ぁぁぁぁっ!」

少女「も、もう良い……! 止まれ……止まれ……!」パチンッパチンッ

ゴォォォッ!

薬売り「あ゛ぅ……ぅ……」

少女「止まれぇぇぇぇっ!」パチン

フッ……

少女「や、やった……! おいっ! しっかりせい! おいっ!」

薬売り「……」

少女「な……死──」

薬売り「コヒュッ……カヒュッ……」

少女「生きておる……辛うじて……。じゃが……全身酷い火傷じゃ……。このままでは一刻も保たぬ……」



7:以下、5ちゃんねるからVIPがお送りします 2019/04/12(金) 22:31:17.446 ID:MjMWari/0

少女「す、すぐに手当てを……!」

少女「人体について理解はしておる……理論的にはできるはずじゃ……じゃがもし失敗したら……」ブツブツ

薬売り「……」

少女「いや……ぐずぐずしておる暇はない……。とにかく命を繋がねば……!」

薬売り「……」

少女「すー……はー……。頼むぞ……」パチン

薬売り「……」

少女「駄目……なのか……」

薬売り「い……や……」

少女「……!」

薬売り「よ、く……見……くれ……」

少女「見ろ、と……? う、うむ……!」

ゴソゴソ グチュッ……

少女「なんと……。体内だけは治っておる……のか……? じゃがこの火傷、放っておけばやはり死んでしまう……。あぅ……どうすれば……」

薬売り「へ、へへっ……あた……の、くす、り……塗……」

少女「な、なんじゃ? 薬? 貴様の薬?」

薬売り「う……」ガクリ

少女「ええい、侭よ! 貴様の薬、信じるぞ!」

ヌリヌリ ペタペタ



8:以下、5ちゃんねるからVIPがお送りします 2019/04/12(金) 22:34:44.152 ID:MjMWari/0

~ひと月後~

薬売り「……っ」

少女「!」

トテテッ

少女「目を覚ましたか! ……妾が分かるか?」

薬売り「ぅ……ぁ……」

少女「無理して喋らんでも良い。こうして生きているだけで奇跡みたいなもんなんじゃから」

薬売り「たす、け……て……」

少女「……ああ。妾がやったことじゃ。必ず元に──」

薬売り「助け、てく……れて……ありが、とよ……」

少女「……」

薬売り「へへへ……」

少女「馬鹿者が……」

薬売り「……」

少女「……また、眠ってしまったか」

薬売り「……」

少女「……妾も薬を作ってみるかの」

ゴリゴリゴリ コポコポ……



9:以下、5ちゃんねるからVIPがお送りします 2019/04/12(金) 22:38:17.662 ID:MjMWari/0

~三日後~

薬売り「ん……」

少女「くー……くー……」

薬売り「あ゛ー……。ん゛っん゛ー! あー……! よしよし、ちゃんと声が出るじゃあねえか。おい起きな嬢ちゃん」

少女「ふあっ……!?」ガバッ

薬売り「おう、おはよう」

少女「き、貴様……!」

薬売り「なんでえ、幽霊でも見るような面しやがって」

少女「なーにがおはようじゃ! 馬鹿みたいに眠りこけおって! 妾がどれだけ心配を……したと……」

薬売り「……なに泣いていやがんだよ。調子狂っちまうじゃあねえか」

少女「泣いてなど……」ゴシゴシ

薬売り「心配かけちまったな。それに、くんくん……この匂い。お前さん、あたいのために薬作ってくれたろう?」

少女「……ずっと寝られていても迷惑じゃったからな。貴様の薬を参考に妾なりのものを作ってみた」

薬売り「はー、たまげたねえ。薬はそう簡単に作れるもんじゃあねえんだぞ? お前さん、才能あるかもしれねえなあ!」

少女「ふ、ふん! 妾は賢いからの。なんだってできるんじゃから」

薬売り「魔法は上手く使えねえけどな! あっはっは!」

少女「……」

薬売り「凹むんじゃねえやい。あたいだって一端の薬売りだぜ? もうちっとばかし良くなったらお前さんのための薬、作ってやっからよ!」

少女「……良くなったらこの家から出て行くが良い。そして二度と顔を見せるな」

薬売り「あん?」



10:以下、5ちゃんねるからVIPがお送りします 2019/04/12(金) 22:41:44.535 ID:MjMWari/0

少女「身を以て知ったろう。妾は危険な魔女じゃ。やはり人間とは関わらぬ方が良い」

薬売り「はん! 怪我人を救う優しい魔女さんじゃあねえか!」

少女「違う……!」

薬売り「あんな事故みてえなもん、気にする必要はねえよ。お前さんはお前さんの意思で、あたいの命を救ったんだから」

少女「……あの時、たしかに妾は貴様を傷付けるつもりで魔法を使った。その事実は変わらぬ」

薬売り「なんでえ、お前さん、案外根暗な性格してやがんな。あん時のはな、あたいを傷付けるために魔法を使ったんじゃあねえよ」

少女「何を知ったようなことを」

薬売り「お前さんはお前さんの身を守ろうと思っただけだ。あたいがいきなり踏み込み過ぎちまったんだなあ」

薬売り「その結果がこのザマよ。ほんっとうに悪かった! この通りだ!」ペコリ

少女「な、なぜそなたが頭を下げる!? もう……訳が分からぬ……」

薬売り「そりゃあそうだよなあ? 碌に知りもしねえ相手が一方的に歩み寄ってきたらよ、恐ろしくってしょうがねえや」

少女「じゃが……妾は……」

薬売り「だけどな、これがあたいの性分だ。困ってる奴がいりゃあ放ってはおけねえ。結果あたいが傷付いたって、そんなもん薬で治しゃあいいんだ」

少女「治らぬ傷もあるじゃろう……?」

薬売り「そいつをなんとかするのが薬売り、ってなあ!」

少女「死んだらおしまいじゃ……。死んだら全て、無意味になってしまう……」

薬売り「心が死んじまったって同じことよ。だからよ、お前さん、無理に一人になろうなんてことするんじゃあねえよ」

少女「……」



11:以下、5ちゃんねるからVIPがお送りします 2019/04/12(金) 22:44:22.635 ID:MjMWari/0

少女「……そなたのこと、聞いても良いか?」

薬売り「おっ、いいぜいいぜ。何が聞きたい? 薬の作り方か? それとも薬の原料のことか?」

少女「薬馬鹿め。……魔女について、じゃ」

薬売り「なるほど、あたいがなんで魔女について知ってるかってことかい」

少女「……」コクッ

薬売り「簡単なことさ。あたいの母親が魔女だったのさ」

少女「む? じゃがそなたは人間じゃろう?」

薬売り「あー、悪い悪い。育ての親ってやつだ。あたいの記憶にある母親は、その人だけなんだけどな」

少女「そうか、ふむ……。その……生活は上手くいっておったのか……? 迫害されたりは……」

薬売り「そりゃあ少しはあったさ。迫害って言っても後ろ指さされる程度のもんだったが」

少女「それだけか ? 物を何も売ってもらえなかったり、住んでいる家を焼かれたりはせんかったのか?」

薬売り「……お前さん、苦労したんだなあ。あたいのところはなかったぜ。あたいが言うのもなんだがよ、母親も、父親も、そりゃあ優しい人たちだった」

少女「優しい……」

薬売り「街の人たちともそこそこ上手くやってたさ。魔女と人間の夫婦が、人間の街で幸せに暮らしたんだぜ? 絶対に分かり合えねえなんてそんなこと、あるはずがねえんだ」

少女「人間と暮らす、か。真剣に考えたことなんぞなかったかもしれんな……」

薬売り「でもな、そのためには力を上手く扱えなきゃいけねえ。それは……理解したな?」

少女「……できるものなら、な」



12:以下、5ちゃんねるからVIPがお送りします 2019/04/12(金) 22:47:39.320 ID:MjMWari/0

薬売り「そこで本題さ!」

少女「魔女が魔法を使えるようになる薬?」

薬売り「いいや、違う」

少女「では何の薬なのじゃよ」

薬売り「上手く流れねえ魔力の流れを整える薬さ」

少女「魔力? 魔力ならキチンと……。転移の魔法なんかはしっかりと使えるぞ?」

薬売り「へへっ、物は試しだ。その転移の魔法とやら、今ここで使ってみな」

少女「あ、ああ。部屋の隅から隅に移動する程度で良いか?」

薬売り「おうよ。……ただし、もしそいつが使えなかったらもう二度と魔法は使えないものと思いな」

少女「ごくり……」

薬売り「よし、やってみな!」

少女「いくぞ……。すー……はー……。うぅ……いくぞ……いくぞ……!」パチン

シーン……

薬売り「おいおい、どうした? まさかとは思うができないってんじゃあねえだろうな?」

少女「馬鹿な……そんなはず……。このっ! このっ!」パチンパチンッ

薬売り「はいよ、そこまでだ」

少女「わ、妾の魔法……なぜ……」ワナワナ

薬売り「あっはっは! 見立て通りじゃあねえか! ああ、ちなみに二度と魔法が云々ってえのは嘘な」

少女「は……?」



13:以下、5ちゃんねるからVIPがお送りします 2019/04/12(金) 22:50:24.231 ID:MjMWari/0

少女「ごほん……。まあ良い。それで? 見立てとは?」

薬売り「簡単な話さ。お前さん、緊張すると魔力が詰まっちまうんだよ」

少女「はあ? 緊張? 詰まる?」

薬売り「信じられねえか?」

少女「信じる信じないではなくて理解が追いつかぬよ」

薬売り「要はお前さん、気が小せえってこった」

少女「なんじゃ? 喧嘩売っておるのか?」

薬売り「器も小せえな」ニヤニヤ

少女「……はぁ。理屈はもう良い。つまりなんじゃ、それをなんとかする薬を作ろうというのか?」

薬売り「おうとも。実はもう構想はできてんだ。あとはあれだ、材料を揃えてねりねり練っていきゃあできあがりってなもんよ」

少女「材料か。ふむ、であれば妾が揃えよう」

薬売り「んなもん患者に任せられっかよ。あたいが行くさ」

少女「馬鹿め、そなたにはまだ休息が必要じゃ。いいから大人しくしておれ」

薬売り「こんな傷、大したこと──あいてててて!」

少女「途中で死なれたら妾の薬は完成せん。妾は妾のために行動するだけのことよ。ほれ、必要なものを書き記せ」

薬売り「いーや、駄目だね! 今のお前さんを外に出すわけにはいかねえ。例えぶっ倒れようとあたいが行くよ!」

少女「……馬鹿なそなたのことじゃ。どうせ魔法の使えぬ妾を案じてのことじゃろう?」

薬売り「ち、違えよ……!」

少女「心配せずとも魔法が使えないくらいでどうこうなる妾ではない。そうでなければ今まで生きておらん」

薬売り「……わぁったよ! あたいの負けだ! 書くものを寄越しな! お前さんに任せる!」



14:以下、5ちゃんねるからVIPがお送りします 2019/04/12(金) 22:53:22.635 ID:MjMWari/0

少女「えーっと……月光草に想雪花の蜜、それと鉄鋼カブトのツノ……は揃えたから……最後は……虹色ヤモリのフン……?」ブツブツ

少女「フン……? これ飲み薬じゃよな……?」

少女「ま、まあ良い。しかし虹色ヤモリはどうしたもんかの。貴族の家にしか生息せぬと言うが……」

少女「今の妾では魔法に頼るわけにもいかぬしのう。うーむ」

少女「とりあえず街まで行ってみるか。貴族の家を探さねばならぬしの」パチン

シーン……

少女「むぅ……やはり駄目か……。あやつの言葉を意識してしまっておるのかの……」

少女「仕方がない、歩くとするか」

トコトコトコ

少女「……遠い」

少女「す、少し休憩するかの。森を散策した後故、足が棒のようじゃ……」

少女「……」

少女「……くすん」

少女「いかんいかん……! 弱気になってどうする! 頑張れ妾! 行くぞー! おーっ!」

トコトコトコ



15:以下、5ちゃんねるからVIPがお送りします 2019/04/12(金) 22:56:41.571 ID:MjMWari/0

少女「あぅ……着いた……」

ガヤガヤ

少女「……喧騒はやはり苦手じゃ。早いところ用を済ませて家に帰ろう」

老人「お嬢さん」

少女「貴族の住む区画を探すか」キョロキョロ

老人「もし、そこのお嬢さん」

少女「むっ……?」

老人「ああ、お嬢さん」

少女「……なん、ですか」

老人「何かお困りですかな? よければ力になりますよ」

少女「どうも。ですが必要ありません」

老人「そうですか。ついついお節介を焼いてしまって。いけませんなあ、ほっほっほっ」

少女「……」

老人「それでは私はこれで。ご機嫌よう、お嬢さん」

少女「……待ってください」

老人「はて?」

少女「本当は困っています。途方に暮れて、どうにもならなくなってしまいました……だから……」

老人「ほっほっほ、私にできることなら力になりましょう」

少女「……ありがとうございます。実は──」



16:以下、5ちゃんねるからVIPがお送りします 2019/04/12(金) 22:58:40.820 ID:MjMWari/0

老人「力になれてよかった」

少女「本当にありがとうございました。まさかお爺さん、あなたが元領主様だったなんて」

老人「ほっほっほ、こんな老いぼれの肩書きが役に立つなんて、分からないものですなあ」

少女「……何も聞かないのですか? わら……私のことも、私がお願いしたこのヤモリのことも」

老人「聞いた方がよろしかったですかな?」

少女「あ、いえ……」

老人「ほっほっほ。良いのですよ」

少女「……」

老人「それでは私はこれで。お嬢さん、お気をつけて」

少女「……必ず! 必ずお礼をしにきます!」

老人「暇な老人のお節介ですよ。お礼なんていりません。ほっほっほ」

ガヤガヤ ガヤガヤ

少女「……帰ろうかの」



17:以下、5ちゃんねるからVIPがお送りします 2019/04/12(金) 23:01:59.391 ID:MjMWari/0

少女「あー……うー……着いたぁ……妾の家ぇ……」ヨロヨロ

ガチャッ

少女「ふへぇ……」

薬売り「おう、おかえり。……ってどうしたどうした!? ボロボロのぐでんぐでんじゃあねえか!」

少女「疲れた……。じゃが……」

ドサドサッ

薬売り「疲れた、ってお前さん──こいつぁ……薬の材料、全部揃えちまいやがったのかい!? 今日一日で全部!?」

少女「これで……」

薬売り「……あはは、そりゃあ疲れるぜ。しかしお前さん、このヤモリ──」

少女「くー……くー……」

薬売り「ったく、寝ちまいやがった。あーあー、これじゃああたいだけボサッと寝っ転がってるわけにはいかねえな」

少女「むにゃ……くー……」

薬売り「あっはっは、警戒心ってもんはないのかねぇ? って、んなわけねえわな。……ありがとよ。お前さんの信頼には必ず応えてやっからよ」

ガサガサ ゴソゴソ



18:以下、5ちゃんねるからVIPがお送りします 2019/04/12(金) 23:05:18.119 ID:MjMWari/0

~翌日~

少女「うにゅ……ん……」

薬売り「おっ! 起きやがったか! おはようさん!」

少女「……やかましい」

薬売り「喧しくもなるってもんよ! ほら見てみな! 完成だ!」

少女「完成……? なにが」

薬売り「かーっ! お前さん寝ぼけてやがんな!? 完成っつったら薬だよ。決まってんだろうが」

少女「なっ、そなた薬を作っておったのか!? 全身傷だらけのくせに!? 動くだけでも身体中に激痛が走るくせに!?」

薬売り「んなもん夢中になってたら忘れちまったよ。それよりほら、飲んでみな!」

少女「はぁ……呆れた奴じゃ……」

薬売り「ちぃっとばかし味は良くねえが、効き目は折り紙付きだぜ? そら、グイっと」

ムワァ……

少女「うっ……。これ……」

薬売り「目ぇ瞑って鼻摘んでよ、一気にグッといきゃあ問題ねえさ」

少女「……これを飲む前に聞いておこう」

薬売り「なんでえ、改まって」

少女「妾がこれを飲み、魔法が使えるようになった暁には。真っ先にそなたに魔法を使うぞ」

薬売り「おう。さあ、飲みな」

少女「妾は魔女。容易く人を殺せる。人を滅ぼすために力を振るうかもしれぬ。それでもそなたは──」

薬売り「ぐずぐず言うんじゃねえやい。あたいの薬の効果を信じてるお前さんを、あたいが信じねえわけねえだろうが」

少女「……」

グイッ ゴクッゴクッ

薬売り「へへっ、完治おめでとうってな」



19:以下、5ちゃんねるからVIPがお送りします 2019/04/12(金) 23:08:43.778 ID:MjMWari/0

少女「うぷっ……」

薬売り「あっはっは! 締まらないねえ! そらよ、水も飲みな」

少女「んくっ、んくっ、んくっ……ふぅ……」

薬売り「さて?」

少女「言った通りじゃ。そなたに魔法を使う」

薬売り「おう」

少女「……チッ」パチン

薬売り「……おっ? おっ? おお! 頭のてっぺんから足の先まで綺麗さっぱり治ってやがる!」

少女「そなたには……謝らねばならぬ」

薬売り「まーだ気にしてやがんのかい。お前さんも良くなった。あたいもこうして良くなった。これで終いじゃあねえか」

少女「妾が悪かった。この通りじゃ」ペコッ

薬売り「……やれやれ、意地っ張りだねえ」

少女「……」

薬売り「まあ、なんだ。謝られたとありゃあ、許してやるっきゃねえや。頭を上げな。仲直りといこうや」

少女「……ありがとう」



20:以下、5ちゃんねるからVIPがお送りします 2019/04/12(金) 23:12:15.159 ID:MjMWari/0

少女「ふふははは! 見よ! 妾の魔法の力を!」パチンパチン

薬売り「おうおう! 絶好調じゃあねえか! あっはっは!」

少女「やはり妾は凄い子じゃったんじゃのう……うむうむ……」

薬売り「ところでお前さんよ、ずっと気になってたんだが、その変わった喋り方はなんなんだ?」

少女「これか? 魔女っぽいじゃろ?」

薬売り「お、おう?」

少女「それに強そうじゃ! 力のある魔女のことは誰も虐めたりせんからの!」

薬売り「……へへっ、ははは! あっはっはっは! こいつぁいい! 傑作だ!」

少女「むぅ……なぜ笑う……」

薬売り「はー……おっかしい……! あーいやいや、別に馬鹿にしたわけじゃあねえよ? けどよ、お前さん、そりゃあちょっとかわいすぎだぜ!」

少女「馬鹿にしておるではないか……うぬぬぬぬ……! そなただって変な喋り方をしておるじゃろうに!」

薬売り「こりゃあ父親譲りのもんだよ。女が使うもんじゃあねえって窘められたもんだが、すっかり染み付いちまってなあ」

少女「ほーう? その上放蕩娘とくれば、両親はさぞ頭を抱えておるじゃろうな?」

薬売り「そりゃあねえな。二人とも、もうおっ死んじまったからよ」

少女「む……すまん……」

薬売り「流行病でよ。打つ手もなくあっさり逝っちまった。……だからあたいは薬売りになったのさ!」

少女「そなたが傷病にこだわる理由はそこにあるのか」

薬売り「ま、元々困ってる奴ぁ放っておけなかったしな。ただの切っ掛けって言っちまえばそれまでだ」

少女「……」

薬売り「でもよ、やっぱりどうにかしてえのさ。どうにもならねえ病ってやつをよ」

少女「……そうか」

薬売り「おっといけねえ、随分と湿っぽくなっちまったな。さて、飯でも食うかい? あたいが振舞ってやるよ」



21:以下、5ちゃんねるからVIPがお送りします 2019/04/12(金) 23:14:41.306 ID:MjMWari/0

少女「まっず! 苦っ!? なんじゃこれは!?」

薬売り「何って? そりゃあお前さん、失敗作さ」

少女「そなた……さては料理下手じゃな……?」

薬売り「おうとも。料理は昔からからっきしだぜ」

少女「なぜ自信満々で調理場に立ったのじゃ……」

薬売り「勢いに決まってんだろうが」

少女「ぐっ……この馬鹿者めが……」

薬売り「文句垂れながらでも全部食ってんじゃあねえか。さてはお前さん、あたいに気ぃ使ってやがんな?」

少女「そうではない。妾が食べておるのはそなたの気持ちじゃ。味は最低で見た目も消し炭のようじゃが、妾のために作られたものじゃからの」

薬売り「へっ、律儀だねえ。……いや、違えな。お前さん、優しいねえ」

少女「ばっ、そなたっ、恥ずかしいことを言うでないわ!」

薬売り「照れんな照れんな! いつもみたいにふてぶてしくふん反り返ってりゃあいいのさ!」

少女「妾のイメージ……」

薬売り「……ふぅ、ご馳走さん。突然だがそろそろ行こうと思ってんだ」

少女「行くって、どこへ?」

薬売り「旅、さ」



22:以下、5ちゃんねるからVIPがお送りします 2019/04/12(金) 23:17:28.944 ID:MjMWari/0

少女「……そうか、もう行くのか」

薬売り「おっ、なんだぁ? もしかして寂しいのか?」

少女「……」

薬売り「あっはっは! お前さんがその気になりゃあいつだって会えるじゃあねえか! とんでもねえ力を持ってるんだからよ!」

少女「……」

薬売り「そういやお前さんの名前を聞いてなかったな。なんて言うんだ?」

少女「名前は……教えぬ」

薬売り「へぇ? どうしてだよ?」

少女「……魔女にとって名前は命と同義。そう易々と人には教えられぬ」

薬売り「そういうもんかい」

少女「そういうもんじゃ」

薬売り「……なあ」

少女「……?」

薬売り「お前さん、捻くれてて粗暴でよ、子供っぽいくせに意地っ張りだ」

少女「な、なんじゃよ……。言ってくれるのう……」

薬売り「けどよ、馬鹿みてえに純粋で優しい子だ」

少女「あぅ……」

薬売り「だから、いつか絶対に現れる。お前さんを理解してくれる奴が。お前さんが自然と心を許せる相手が」

少女「そんなもの……おるはずが──」

薬売り「いるんだよ。どうしようもねえ馬鹿野郎が。いつだって、必ずな」

少女「……そうであれば良いなぁ」



23:以下、5ちゃんねるからVIPがお送りします 2019/04/12(金) 23:20:31.540 ID:MjMWari/0

薬売り「へへっ、あたいがお前さんに魔法をかけてやるよ」

少女「ま、魔法じゃと?」

薬売り「目、瞑りな」

少女「えっ……あぅ……」スッ

薬売り「……いくぜ?」

ビシッ

少女「きゃうっ!? お、おでこが! おでこが痛いっ!」

薬売り「お前さんを縛るものをぶち壊す魔法さ。これから少しずつ、変わっていけるはずだ」

少女「ふ、ふんっ! しょうもないことを言いおって。そんな魔法を使わなくたって……もう……」

薬売り「……へっ」

少女「じゃあの。いつかまた会おう。妾の初めての友よ」ニコッ

薬売り「……いい顔で笑えるじゃあねえか。あっはっは! じゃあな! いつかあたいの噂が風に乗って届くだろうぜ!」

少女「どうせ良からぬ噂じゃろうて。期待せずに待っておるぞ」

ガチャッ バタン

少女「……まったく。嵐のような奴であったわ」

少女「しかし、ふふ。お日さまのような奴でもあった」

少女「奴の征く道が、明るい道でありますように──」パチン



おしまい



25:以下、5ちゃんねるからVIPがお送りします 2019/04/12(金) 23:42:01.370 ID:MjMWari/0

やっぱりこれだけだと微妙か



26:以下、5ちゃんねるからVIPがお送りします 2019/04/12(金) 23:44:05.854 ID:EQXBAFy50

良かった



27:以下、5ちゃんねるからVIPがお送りします 2019/04/12(金) 23:52:50.384 ID:MjMWari/0

ありがとう
前に建てたスレの別のお話みたいなやつ

少女「魔女! 今日こそ倒してやるわ! 覚悟しなさい!」 魔女「どうじゃ小娘? 今日は茶でも飲まんか? お菓子もあるぞ?」



元スレ
少女「魔女を受け入れる人間なんぞおるはずがない」 薬売り「そんなことはねえよ。あたいは魔女だなんだで差別しねえしな」
http://hebi.5ch.net/test/read.cgi/news4vip/1555075248/
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          • 1. 以下、VIPにかわりましてELEPHANTがお送りします
          • 2019年04月13日 11:09
          • 久々SS見たが文章力が低下してるんだな
            わざわざ少女じゃなくてババアとかで勝負できる力をつけてほしい
          • 2. 以下、VIPにかわりましてELEPHANTがお送りします
          • 2019年04月13日 14:08
          • ※1
            ほとんどクソみたいなssや10レス以下で終わっているようなものになっていますよ
          • 3. 以下、VIPにかわりましてELEPHANTがお送りします
          • 2019年04月13日 19:15
          • 良かったで
          • 4. 以下、VIPにかわりましてELEPHANTがお送りします
          • 2019年04月13日 19:34
          • オリジナル書く人は応援するわ

        はじめに

        コメント、はてブなどなど
        ありがとうございます(`・ω・´)

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