男「俺さー、死ぬまでに一度でいいからニュースに出たいんだよね」
- 2019年03月28日 21:10
- SS、神話・民話・不思議な話
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友「夢?」
男「俺さー、死ぬまでに一度でいいからニュースに出たいんだよね」
友「そんなの今日にでも実現できるじゃん」
男「どうやって?」
友「そこらで誰か刺してくればいい。あ、俺は勘弁な」
男「犯罪じゃダメなの!」
友「ああいうのに応募しまくれば?」
男「そういうのもなんか違うんだよなぁ……」
男「あくまで向こうから興味を持って取材に来るというか……そういう形じゃないとやだ」
友「ワガママな奴だなぁ」
友「だとしたら、なんか凄いこととか、面白いことをやるしかないな」
男「それしかないか」
友「なんだよ」
男「ニュースの語源っていうのは――」
男「方角を表すN(North)、E(East)、W(West)、S(South)の頭文字から来てるんだぞ」
友「それウソだぞ」
男「ウソォ!?」
男「……」スタスタ
男「ん、あれは!?」
リポーター女「今度可決した法案についてどう思われますか?」
会社員「んー……そうだなぁ……」
男(街頭インタビューきたー!)
男(どんな質問されようとトンチンカンな答えをすることはない!)
男(さあ、インタビューしてくれ!)チラッチラッ
男(さあ!)チラッチラッ
リポーター女(な、なにあいつ……)
男「あああ……」
男「行っちゃった……千載一遇のチャンスだったのに」ガクッ
男「ああ……」
男「もし俺がインタビューに答えてたら、完璧に的を射た回答をして」
男「きっとスタジオのニュースキャスターやコメンテーターにもベタ褒めされてただろうに……」
男「ひょっとしたら、朝まで生テレビあたりに出てくれって話になったかも……」
友「……逃がした魚はでかいっつうしな」
男「こうなりゃ仕事だ! ニュースになるような大きな仕事をするしかない!」
男「……本当ですか!?」
課長「ああ、君に一任する。しっかりやってくれたまえ!」
男「はいっ!」
男(俺にこんな大役が……よぉっし頑張るぞ!)
男「絶対間に合わせて下さい! お願いします! でないとプロジェクトがぽしゃるんです!」
男「あー……今日も終電帰りだな……」
男「よし、これの準備はなんとかなった。次は――」
男(イケる! このプロジェクトを成功させれば、きっとニュースに……!)
課長「ありがとうございます、社長」
社長「正直あまり関与できていなかったんだが、MVPといえる社員は誰なのだね?」
課長「は、私です! 全て私の主導と指示で行いました!」
男(え……!?)
社長「そうなのか、引き続きプロジェクトの進捗を報告してくれ。むろん、ボーナスは弾むよ」
課長「かしこまりました!」
課長「ん?」
男「なんで……なんであんな独り占めのようなマネを……」
課長「なにをいう。このプロジェクトを君に任せたのは私だ」
課長「当然、全ての責任と手柄は私のものになる。違うかな? ん?」
男「責任って……プロジェクトがぽしゃりそうになった時、あなた、助けてくれなかったじゃないですか!」
課長「ん~? そんなことあったっけ? 忘れてしまったよ、ハッハッハ」
課長「ま、部下の失敗は部下のもの、部下の手柄は上司のもの。これが会社というものだよ」
男「課長……!」
友「ひでえ上司だな」
男「あんなに頑張ったのに……ちくしょう……」
友「だけど、周囲の人はお前が頑張ってるとこを見てたはずだろ? だったら――」
男「ダメだよ……うちの課長、強引な人だから。こうなった以上、全部課長の手柄だ」
友「……」
男「おかげでニュースのインタビューには課長が出るはめに……」
友「そこを悔しがってるのかよ!?」
男「当然だろ」
友「ハハ……長生きするよ、お前」
男(いくら寝ても、酒を飲んでも、愚痴を吐いても、憎悪は解消されるどころか増幅される)
男(結局、頑張っても報われない、汚い奴が勝つって、世の中が嫌になった)
男(思い詰めた俺は――)
男(最初にあいつがいった“提案”に乗る気になっていた)
男(課長が歩いてきた……)
男(後はこの包丁で刺せば……恨みを晴らせるし、ニュースにも出ることができる)
男(この包丁で刺せばっ……!!!)
男(殺してやるっ!!!)
スタスタスタ…
男「……」
男(なーんて。できるわけないじゃん。俺に人殺しなんて……)
男「うっ、ううっ、うっ……」グスッ
男「ああ」
友「で、どうなったんだよ?」
男「どうなったって……刺してたら今頃俺はここにいないだろ」
友「そりゃそっか」
男「だけど、一度刺し殺してやるってところまでやったら、なんか不思議とスッキリしたよ」
友「自殺しようと遺書を書いてたら自殺がバカバカしくなった、みたいな感じか」
男「そうそうそんな感じ」
男「ニュースに出ないような人生……いわゆる平凡な人生を送るのが人間にとっては」
男「一番の幸せなんじゃないかって」
友「かもな」
友「ニュースに出るような時の人になることが幸せだとは限らないしな」
友「マスコミに注目されて騒がれたせいで人生壊れちゃった、なんて人もいるし」
男「そうそう」
友「?」
男「俺はまだニュースに出るのを諦めないぞーっ!!!」
友「すげえよ、お前」
………………
…………
……
リポーター「わぁっ、まだお元気そうですねー!」
リポーター「長寿世界一おめでとうございます! 一言ご感想をどうぞ!」
男「やっと……出れた」ニコッ
― おわり ―
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