就活生「さっき助けたジジイが面接受ける会社の社長だった……ってことは内定確定じゃん!」
- 2019年02月19日 12:10
- SS、神話・民話・不思議な話
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老人「う、ううっ……!」
就活生「大丈夫ですか、おじいさん!」
老人「薬を……。懐に入ってる薬を……」
就活生「これを飲ませればいいんですね? はい、どうぞ!」
老人「……」ゴクンッ
老人「おかげで助かったわい……。本当にありがとう……」
就活生「いえいえ、お年寄りを助けるのは当然のことですから!」
とある会社
就活生(今日は社長と一対一の面接だっけ……絶対モノにしてやる!)
就活生「……よし」
コンコン
就活生「失礼します」
ガチャッ
老人「あっ!」
就活生「あなたはさっきの……!」
老人「君は……!」
就活生「よかった、ご無事だったんですね!」
老人「ああ……君のおかげじゃよ」
就活生「……」
就活生(さっき助けたジジイがこの会社の社長だった……ってことは内定確定じゃん!)
就活生(俺はなんてツイてるんだ!)
就活生「○×大学の△△と申します」
老人「よろしい」
老人「では本日の面接はここまでです。お引き取り下さい」
就活生「は?」
就活生「え、ちょっと待って下さいよ! もう終わり? 合否はどうなるんですか!?」
老人「もちろん不採用、とっととお帰り下さい」
就活生「なんだって!?」
老人「ちゃんとやりました。お帰り下さい」
老人「あなたは弊社とはなんの縁もゆかりもありません」
就活生「……!」
就活生「さっき……俺あんたのこと助けたじゃないか! あんたは俺に恩があるだろ!」
老人「はて? なんのことやら……」
就活生「とぼけやがってぇぇぇ……! ジジイがぁぁぁ……!」
老人「知らんよそんなことは」
就活生「俺は未だに無い内定で、今日の面接には全てをかけてきたんだ!」
老人「だからなに? 帰れっていってんだからとっとと帰らんかい」
就活生「いや、帰らない! 絶対帰るもんか! 俺を採用してくれぇぇぇ!」ガシッ
老人「コ、コラッ! はなれんか、バカモン!」
就活生「絶対離さないぞ! 内定くれるまで!」
ガタンッ!
就活生(あ、しまった! 机倒しちまった!)
就活生「……え?」
就活生「あの、あなたは? 面接官さん? ……じゃないですよね」
迷彩男「見られてしまったか。これでこの小僧も逃がすわけにはいかなくなったな」ジャキッ
就活生「じゅ、銃!?」
老人「くっ……!」
就活生「ど、どういうこと!? これはどういうことだ、ジイさん!?」
老人「実は今このビルは……テロリストに占拠されておるのじゃよ……」
就活生「なんだってえええええ!?」
就活生(だから俺を巻き込むまいと、さっさと帰らそうとしてたのか……!)
就活生(しかも、“俺はこの会社と縁がない”って強調してくれて……!)
就活生(ジイさんはちゃんと、俺に必死で恩を返そうとしてたんだ……!)
迷彩男「ん?」
老人「彼はなんの罪もない就活生じゃ! ここを出ても警察に駆け込んだりはせん!」
老人「どうか今すぐ帰してあげてくれ!」
就活生(ジイさん……)
迷彩男「……まあ、いいだろう。命拾いしたな、小僧。とっととビルから出ていけ」
迷彩男「名前は覚えたし、もし警察に駆け込んだら、命はないからな」
就活生「は、はい……」
老人「……」ホッ
就活生(ジイさんのおかげで助かった……)
就活生(だけど、このままでいいのか? このまま助けられたままで――)
就活生(――いや!)
就活生「就活七つ道具の一つ、四季報!」ジャキッ
迷彩男「む?」
就活生「てやぁぁぁっ!!!」ブンッ
ガンッ!
迷彩男「ぐっ!?」
ドサッ…
就活生「はぁ、はぁ、はぁ……」
就活生「さっきもいったろ? 年寄りを助けるのは当然のことだって」
就活生「それに、ジイさん見捨てて一人帰るなんて俺の性分じゃないんでね!」
就活生「戦おう、ジイさん!」
老人「……うむ!」
老人「にしても、今時の学生は四季報なんて洒落たもんを持っとるのう」
就活生「色んな会社のデータが載ってるからね、まあぶっちゃけほとんど読んでないけど」
老人「買って満足しちゃうタイプね」
就活生「とりあえず、懐にしまっとくか」スッ
「派手な音がしたぞ!」 「なにかあったのか!?」 「どうした?」
老人「まずい、仲間が来よったぞ!」
就活生「あわてないあわてない」
就活生「就活七つ道具、潤滑油!」バシャーッ
「うおあっ!?」 「す、滑る!」 「うわぁぁぁ!」
ツルツルッ スッテーンッ ドザァッ
老人「す、すごい! しかし、なぜ潤滑油なんて持っとるんじゃ?」
就活生「就活本に書いてあったから」
老人「多分それ違う意味だと思うよ」
老人「他の社員は全員、最上階の大会議室に閉じ込められているはずじゃ」
就活生「じゃあ、俺たちで助けに行こう!」
タタタッ…
就活生「……ゲ!」
テロリストA「あ~、腹減った。見張りなんてつまらんぜ」
老人「どうする?」
就活生「回り道はできないし、こうなったら――」
就活生「ねーねー、テロリストさん」
テロリストA「ん?」
就活生「スルメあげるからここ通してくんない?」
テロリストA「いいよ!」
就活生「サンキュー!」
テロリストA「おほっ、噛めば噛むほど味が出る!」クチャクチャ
就活生「行こう、ジイさん!」クチャクチャ
老人「おう!」クチャクチャ
就活生「ぐっ!」
老人「しまった!」
テロリストB「二人まとめて射殺してやる!」
就活生「……ま、待て!」
テロリストB「?」
就活生「この手帳……見てみないか?」
就活生「俺が100以上の会社説明会で収集した、色んな会社のデータが記してある」
テロリストB「ほう? どれどれ……」
就活生(ダメか……?)
テロリストB「これは解読しがいがある……」
テロリストB「ふむ……ふむ……読める、読めるぞ!」
就活生「どうやら暗号マニアかパズルマニアだったようだな」
老人「おかげで助かったわい」
就活生「ゲ!」
老人「女性のテロリストもおったんか!」
女テロリスト「当然でしょ? うちの組織は男女平等なの」
女テロリスト「可哀想だけど死んでもらうわ」
就活生「こうなったら……」
就活生「就活七つ道具、証明写真!」サッ
女テロリスト「やだ、なにこのイケメン! 誰なの、紹介してよ!」
就活生「俺です」
女テロリスト「うわ、全然別人じゃない!」
女テロリスト「うーん……」ドサッ
老人「ショックで失神した!」
就活生「写真屋に頼んで、ちょっと修正しすぎたか……」
老人「ていうか、履歴書に貼る写真を美化しすぎたらいかんじゃろ」
就活生「就活七つ道具、自己分析シート!」サッ
テロリストC「なんだこれ……」
就活生「俺の長所短所やアピールポイントをまとめたものだ」
テロリストC「……」
テロリストC「なんて……ろくな取り柄も思い出もない、哀れな人生を送ってる奴なんだ……」
テロリストC「行け……」
就活生「ども」
老人「だんだんおぬしが気の毒になってきたわい」
老人「あと少しで大会議室じゃ」
就活生「ここらで就活七つ道具のラスト、ビールでも飲もうか」
老人「へ? なんでビールが七つ道具なんじゃ?」
就活生「酔っ払って面接受けると案外受かるって聞いたことあって」
老人「ずいぶんリスキーな手段じゃのう。酒の匂いがしたら一発アウトじゃろうし」
就活生「ほら、ジャックダニエルもあるぞ」
老人「おぬしが未だに無い内定の理由、なんとなく分かったような気がする……」
老人「うんうん」
就活生「いくぞぉ~、ジイさーん!」
老人「おーう!」
就活生「酔拳だぁ~!」
ドカッ! バキッ! ガッ! ベキッ! ガツッ!
「うぎゃ!」 「ぐえ!」 「ふぐ!」 「ぐはっ!」 「ごふっ!」
老人「ほっほっほ、敵が全滅したわい」
就活生「よっしゃ、一気に大会議室になだれ込むぞ~!」
就活生「うわっ!」
老人「なっ!?」
リーダー「もう敵はいないと思い、不用意に飛び込んできたんだろうが、詰めが甘かったな」
就活生「くっ……! 酔いが覚めちまった……」
老人「ま、待て! 彼はただの就活生で……」
リーダー「ただの就活生? ハッ、ただの就活生がここまでたどり着けるか!」
リーダー「就活の続きはあの世でするんだな……地獄の閻魔様相手にな」
就活生「ううっ……」
就活生「ぐ、は……っ!」
ドサッ…
老人「就活生くううううんっ!!!」
老人「おのれっ……!」
リーダー「あばよ……」
ムクッ
リーダー「?」
就活生「詰めが甘いのは……」
リーダー「な、なんで!? たしかに胸に――」
就活生「お前だぁぁぁぁぁっ!!!」
ガツンッ!
ワァァァァ……!
「助かった……!」 「社長たちが助けてくれたんだ!」 「すぐ警察に連絡を!」
老人「よかった……。しかし、たしかに胸を撃たれてたのにどうして助かったんじゃ?」
就活生「今武器に使ったこれさ」サッ
就活生「懐に四季報を入れてなきゃアウトだった」
老人「おお……! さすがのぶ厚さ!」
就活生「なんのなんの、俺が勝手にやったことだし」
老人「この恩はきっちり返さねばなるまいな」
就活生「ってことは、もしかして? ……もしかして!?」
老人「うむ……」
老人「もちろん、不採用じゃ!」
就活生「!!!」ガーン
老人「いや……勘違いしないで欲しい」
老人「おぬしにはぜひある企業を紹介したい。うちよりもずっと待遇はよく、高給じゃ」
老人「そしてなにより、絶対おぬしに向いておる!」
就活生「どういうこと?」
老人「おぬしには背広着たサラリーマンなどもったいない……ということじゃよ!」
就活生「……へ?」
……
コソコソ…
ビル荒らし「へっへっへ……おお、お宝がいっぱいだ!」
ビル荒らし「こういう小さなビルはセキュリティ甘いからなぁ~」
ビル荒らし「思う存分、荒らしまくってやるぜ!」
「おーっと、そうはいかないな」
ビル荒らし「!?」ビクッ
警備員「お前、最近ここらのオフィスを荒らしてるビル荒らしだな?」
警備員「だが、お前の悪行もここまでだ。なにしろ俺の賊撃退率は100%を誇る!」
ビル荒らし「くっ……!」
警備員「さあ、警備七つ道具を見せてやるぜ!!!」
― 完 ―
元スレ
就活生「さっき助けたジジイが面接受ける会社の社長だった……ってことは内定確定じゃん!」
http://hebi.5ch.net/test/read.cgi/news4vip/1550504380/
就活生「さっき助けたジジイが面接受ける会社の社長だった……ってことは内定確定じゃん!」
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- 2019年02月19日 19:09
- >>5
市街地迷彩ってのがあってだなぁ。
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- 2019年02月20日 07:50
- 胸ポケットに入れた四季報が弾丸を止めた‼
というありがちな展開になるかと思ったら
予想よりもっとおもしろかった。ありがとう。
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- 2019年02月20日 13:58
- ニートの妄想ってすごいなw
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- 2019年03月14日 15:31
- >>8
こういうアホなの書く奴ほど実社会だとまともなんだよなあ……
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- 2019年05月02日 16:13
- 撃退率100%っていうけど、そんなに賊がおるんか…
この国の治安やべーな